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5 Japan Marketing Academy JAPAN MARKETING JOURNAL Vol.33 No.2 2013http://www.j-mac.or.jp 論文 1. 本稿の問題意識 市場変化の加速度化と複雑性の増大が進む 中,マーケティングには,膨大なビッグデータ の処理に代表される市場への適応能力と同時 に(Day 2011),新市場を創出し,持続的成長 を図るための別次元の能力も求められている (Coviello and Joseph 2012; Narver, Slater and MacLachlan 2004)。 本稿は,市場志向の戦略志向性としての側面 に注目し,イノベーションを創出するマーケ ティング戦略のあり方を考察する。日本企業の 場合,マーケティングの機能は,スタッフ部門 としてのマーケティング部門に集中せず,商品 企画・広告宣伝・営業等の部門に分散している (川上2005; 山下他2012)。そのため,各部門長 が執行役員を兼務することはあっても,CMO が強い権限とパワーを有する組織にはなってい ない 1) 。よって,革新的なイノベーションに求 められる全社的なマーケティング戦略の策定能 力が弱い。 日本では,こうした現場主導型のマーケティン グの戦略を理論化する試みが行なわれてきた 2) 非顧客戦略による市場ドライブ型 市場志向の実現 ブルー・オーシャン,マーケティング,そしてイノベーション 関西大学 商学部 教授 川上 智子 要約 本稿は,市場の構造と行動を変革する市場ドライブ型市場志向の概念に依拠し,ブルー・オーシャン 戦略の非顧客戦略の枠組みを用いて,ブルー・オーシャン戦略論,マーケティング論,イノベーション 論を融合したイノベーション・プロセス・モデルを提示する。 日本で 10 年以上の持続的競争優位を維持している 3 つの事例の分析を通じ,非顧客層を将来の顧客に 転換する方法を検討した結果,次の 3 点が明らかになる。すなわち,①非顧客層を探索し,新たなプレ イヤーを巻き込みながら,新しい市場構造を構築し,顧客の行動を変えていった点,②事業の進展に伴い, 市場の主要なプレイヤーが変化し,非顧客層の顧客化がいっそう進んでいった点,そして最後に,③非 顧客から顧客への転換は,事業の展開と共に市場のプレイヤーとの相互作用の中で決まる側面を持つ点 である。 日本企業は現場主導型のマーケティングを得意とするが,市場ドライブ型イノベーションの実現には, トップ・マネジメントのリーダーシップが不可欠である。国を問わず,市場ドライブ型市場志向のイノベー ションに必要なマーケティング能力の構築が求められている。 キーワード 市場ドライブ型市場志向,ブルー・オーシャン戦略,非顧客戦略,イノベーション・プロセス,複数事例分析
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Marketing Journal Vol.33 No

Mar 29, 2022

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JAPAN MARKETING JOURNAL Vol.33 No.2(2013)http://www.j-mac.or.jp

論文

1. 本稿の問題意識

 市場変化の加速度化と複雑性の増大が進む中,マーケティングには,膨大なビッグデータの処理に代表される市場への適応能力と同時に(Day 2011),新市場を創出し,持続的成長を図るための別次元の能力も求められている

(Coviello and Joseph 2012; Narver, Slater and MacLachlan 2004)。 本稿は,市場志向の戦略志向性としての側面に注目し,イノベーションを創出するマーケ

ティング戦略のあり方を考察する。日本企業の場合,マーケティングの機能は,スタッフ部門としてのマーケティング部門に集中せず,商品企画・広告宣伝・営業等の部門に分散している

(川上2005; 山下他2012)。そのため,各部門長が執行役員を兼務することはあっても,CMOが強い権限とパワーを有する組織にはなっていない 1)。よって,革新的なイノベーションに求められる全社的なマーケティング戦略の策定能力が弱い。 日本では,こうした現場主導型のマーケティングの戦略を理論化する試みが行なわれてきた2)。

非顧客戦略による市場ドライブ型市場志向の実現

─ ブルー・オーシャン,マーケティング,そしてイノベーション ─

関西大学 商学部 教授

川上 智子要約 本稿は,市場の構造と行動を変革する市場ドライブ型市場志向の概念に依拠し,ブルー・オーシャン戦略の非顧客戦略の枠組みを用いて,ブルー・オーシャン戦略論,マーケティング論,イノベーション論を融合したイノベーション・プロセス・モデルを提示する。 日本で 10 年以上の持続的競争優位を維持している 3つの事例の分析を通じ,非顧客層を将来の顧客に転換する方法を検討した結果,次の 3点が明らかになる。すなわち,①非顧客層を探索し,新たなプレイヤーを巻き込みながら,新しい市場構造を構築し,顧客の行動を変えていった点,②事業の進展に伴い,市場の主要なプレイヤーが変化し,非顧客層の顧客化がいっそう進んでいった点,そして最後に,③非顧客から顧客への転換は,事業の展開と共に市場のプレイヤーとの相互作用の中で決まる側面を持つ点である。 日本企業は現場主導型のマーケティングを得意とするが,市場ドライブ型イノベーションの実現には,トップ・マネジメントのリーダーシップが不可欠である。国を問わず,市場ドライブ型市場志向のイノベーションに必要なマーケティング能力の構築が求められている。

キーワード市場ドライブ型市場志向,ブルー・オーシャン戦略,非顧客戦略,イノベーション・プロセス,複数事例分析

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山下他(2012)では,戦略不在の日本企業といわれる中でも,食品・飲料を中心とする企業群では,STPを実行している企業の事業成果がより高いことが実証されている。 しかし,革新的なイノベーションは,STPの精緻化だけでは実現できない(Kim and Mauborgne 2005, 訳書新版155頁)。コトラーもSTPを補完する水平思考(Lateral Thinking)やイノベーション・プロセスのA-Fモデル 3)を提案している(青木・恩蔵2004; Kotler and Trias de Bes 2003, 2010)。 以上の認識に基づき,本稿では Jaworski, Kohli and Sahay (2000)の市場ドライブ型市場志向の概念に依拠し,ブルー・オーシャン戦略の非顧客戦略の枠組みを用いて,マーケティングとイノベーションを架橋することを試みる4)。

Ⅱ. 市場ドライブ型の市場志向

(1 )市場志向の2類型:市場ドリブン型と市場ドライブ型

 Jaworski et al. (2000) は,環境を所与ではな

く管理対象とみる先行研究に依拠し 5),市場志向の2類型を提示した(図−1)。既存市場の構造や行動を所与とする市場ドリブン型(market-driven),構造と行動の少なくとも一方を新たに創出する市場ドライブ型(driving markets)の2つである 6)。 Kohli and Jaworski (1990)は「現在と将来の顧客のニーズ」と明確に定義していたが,10年を経て,市場志向が既存顧客を重視する市場ドリブン型に偏ってきた。そのため彼らは,企業が市場に導かれるのではなく,企業が市場を導く側面を改めて強調したのである。 同じく 1990 年に市場志向概念を提起したNarverと Slater も,2000年代には反応型・先行型の市場志向という概念を提示した(Narver, Slater and Maclachlan 2004)7)。ただし,彼らは顧客ニーズを扱うに留まっている。よって本稿では,市場の構造と行動の変化という2次元で定義されるJawoski et al. (2000)の市場ドライブ型市場志向の概念を用いる。 

図 —— 1 市場ドリブン型と市場ドライブ型の市場志向

出所)Jaworski et al. (2000), 図1, p.46。

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(2 )市場ドライブ型市場志向の困難性 1990年代以降,市場志向に関する研究蓄積は進んだが,同時にそれは市場志向と顧客主導を混同する誤解も生んだ 8)。既存顧客の声に耳を傾け過ぎると破壊的イノベーションに立ち遅れるというクリステンセン他の議論がその例である(Christensen and Bower 1996; Christensen 1997)。これに対し,マーケティング学者は,市場志向と顧客主導とは違うと反発した (Daneels 2004; Day 1999; 川上2005; Slater and Narver 1998)9)。 顧客への受け身型の反応ではなく,顧客の創造こそが重要であるという議論は,古くはドラッカーに遡る (Drucker 1954, 39-40頁)10)。その後も,将来の顧客を重視することが企業の持続的発展に寄与するという主張は常に存在する

(Chandy and Tellis, 1998; Slater and Narver 1998)。 しかし現実には,既存顧客のニーズに応えつつ,新市場の顧客への備えを同時に行うことは難しく,既存顧客側へのバイアスが働きやすい。とりわけ,組織の慣性(inertia)が働き,新技術が提供する便益を顧客が理解しづらい場合,企業は既存事業に資源配分する近視眼に陥り(Mohr 2001),市場志向の実現は困難となる 11)。 この困難性を克服するには,STPの基本戦略を超える,イノベーション・マーケティングの戦略論が必要である。そこで本稿では,ブルー・オーシャン戦略論,マーケティング論,イノベーション論を融合したイノベーション・プロセス・モデルを提示する。

 

Ⅲ. 市場ドライブ型市場志向の イノベーション・プロセス・モデル

(1) 概念モデルの提示 イノベーション・プロセスの概念モデルとしては,ステージゲート法のように,開発段階で表すリニア・モデルが一般的である(Cooper 2011; Urban and Hauser 1993他)。一方,コトラーは,このようなモデルについて,製造ラインのようだと痛烈に批判している(Kotler and Trias de Bes 2010, 訳書32頁)。 イノベーション・プロセスを直線的なリニア・モデルととらえるのではなく,現場のミクロな相互作用という視点から概念化するノン・リニア・モデルは,日本では1990年代前半から存在する(石井1993)12)。冒頭で述べた通り,それはイノベーションやマーケティングが現場主導型で行われる日本企業の現実から導かれた理論である。欧米においても,1990年代後半以降,即興性(Moorman and Miner 1998),エフェクチュエーション (Effectuation)といった概念が提唱され,市場不確実性が高い状況下でのノン・リニア・モデルが注目されている(Coviello and Joseph 2012; Read et al. 2009; Saravathy 2001)。 とはいえ,ステージゲート法を始め,その有効性が実証研究によって厳格に裏付けられたリニア・モデルの理論体系にも意味がある。そこで本稿では,組織のメンバーが参照するリソースとして図−2の計画(モデル)が存在し,実際のプロセスはメンバー間の相互作用で進行するととらえる状況論アプローチを取る 13)。マーケティング部門と研究開発部門(R&D)との

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間の相互作用に焦点を当てた市場ドライブ型市場志向のイノベーション・プロセス・モデルが図−2である。

(2 )アイデア創出と戦略 図−2のモデルは,マーケティング・リサーチに基づき,STPが行なわれることを示している14)。ただし図−3のように,ファジー・フロント・エンド 15)の段階では事象は継起的に発生せず,試行錯誤が繰り返される(Griffiths-Hemans

and Grover 2006; Reid and de Brentani 2004)。 筆者が調べた限り,STPとアイデア創出との関係は,先行研究では明示されていない。ポジショニングの段階で競合と差別化するアイデアが出される場合もあれば,アイデア創出が先で,セグメンテーションの軸が後から考案される場合もある。 アイデア創出と事業戦略の関係も同様である。事業戦略には,環境を所与とするポジショニング戦略 16),自社の資源や能力を所与とする

図 —— 2 市場ドライブ型市場志向のイノベーション・プロセス・モデル

出所)Cooper(2011),Urben and Hauser (1993) 他を参考に筆者作成。

図 ——3 イノベーション・プロセスの現実

出所)Osterwalder and Pigneur (2010), 247頁。

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資源ベース戦略,そして両者を所与としないブルー・オーシャン戦略の3つがある。通常は,事業戦略の枠組みの中でアイデア創出が行なわれるが,思考の発散性を重んじる場合には,戦略との適合度は事後的に確認されることもある。 市場ドライブ型市場志向は,既存顧客を前提とする市場ドリブン型と異なり,技術をドライバーとすることが可能である。ただし,それは技術ドリブンへの逆行ではない。なぜなら,マーケティング・リサーチをベースとした市場の構造と行動の生成がモデルに組み込まれ,機能別戦略であるマーケティング・ミックス(4P)も確実に遂行されるためである 17)。 

(3)マーケティング・リサーチ 図−2の上部にはマーケティング・リサーチがある。顧客の声(Voice of Customers: VOC)を調査し,革新的なアイデアを出さなければ,市場ドライブ型のイノベーションは成功しない

(Griffin and Hauser 1993; Cooper 2011,訳書208頁)18)。 表−1に,対象顧客を既知/未知,顧客ニー

ズを顕在/潜在の2次元で類型化し,それぞれのケースにおける対処法を示した。 まず,現在の顧客の顕在ニーズは,顧客自身が言語化可能であり,形式知情報としても入手可能である。アンケート調査やフォーカス・グループ・インタビュー等の伝統的な市場調査手法はもちろん,近年ではデータ・マイニングやテキスト・マイニングの手法も利用可能である。 次に,現在の顧客の潜在ニーズ収集する方法としては,エスノグラフィー(合宿・観察),プロトタイプ・テスト,実験等の提案がされている。脳波測定や画像診断など,言語化できない情報を視覚的にとらえる手法も発達している。 一方,将来の顧客が有する顕在ニーズをとらえるには,リード・ユーザー法がある。リード・ユーザー法は,将来,一般的になるであろうニーズを有する先進的な顧客を探索し,発見する方法である(von Hippel 1986)19)。 最後に,将来の顧客の潜在ニーズに関しては,von Hippel他の一連の研究(イノベーションの源泉・情報粘着性・イノベーションの民主化)に基づき,顧客が自分でイノベーションを起こ

( )

表 —— 1 対象顧客,顧客ニーズの状態とマーケティング・リサーチの手法

出所)川上(2005),Cooper and Edgett (2008) を参考に,筆者作成。

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しやすい環境を作る方法がある 20)。 以上のように,既存顧客の場合には,顕在・潜在ニーズを問わず利用可能な調査手法があり,精緻化も進んでいる。しかし将来の顧客に関する手法は未開拓である。そこで本稿では,ブルー・オーシャン戦略論に基づき,非顧客戦略を提案する(Kim and Mauborgne 2005,訳書140頁)。 

Ⅳ. 非顧客戦略に関する複数事例分析

 ブルー・オーシャン戦略論では,既存顧客よりも非顧客層に,顧客間の相違点よりも共通点に注目することを強調する(Kim and Mauborgne 2005,訳書155頁)。 非顧客は,既存顧客との距離で3つのグループに分類される。第1グループは市場の境界に位置し,他の業界に去りやすい層である。第2グループは,あえて市場の製品やサービスを利用しないと決めた層である。第3グループは,市場から最も距離を置く未開拓の層である(訳書140-141頁)。 本節では,この非顧客戦略の枠組みを用い,日本で10年以上の持続的競争優位を維持している3つの事例(タイムズ24,出前館,カロリーコントロールアイスクリーム)を選択し,複数事例分析を行う。 

(1)タイムズの事例 ①タイムズの概要 タイムズを事業化したパーク24株式会社(現:タイムズ24株式会社)は,1971年8月設立の株式会社ニシカワ商会を前身とし,設立当初は駐車禁止看板の製造や販売を行っていた。その後,

1985年にパーク24株式会社を設立し,1990年に日本信号株式会社とパークロック 21)の販売代理店契約を締結,そして1991年12月にタイムズ上野をオープンさせている。2013年現在,同社は時間貸し駐車場事業タイムズ,カーシェアリング事業タイムズプラスを主力事業とする22)。  ②タイムズ24の駐車場事業  駐車場事業を始めるに当たり,創業者の西川清氏は,公共性の高い施設の駐車場の有料化をまず試みた。中でも迷惑駐車が多かった病院に注目したが,公共性の高い病院の駐車場を有料化することへの反発は大きく,説得は容易ではなかった。そこで西川氏は駐車場を撮影し,迷惑駐車の実情を粘り強く訴えた。それが功を奏し,病院駐車場の有料化に成功していく。 この経験を踏まえ,同社は1991年にパークロックの販売事業から駐車サービス事業へと転換した。当時の駐車場といえば月極が中心で,短時間駐車は大型の立体駐車場や路上のパーキングメーター位しかなかった。いずれも駐車スペースを探す手間や時間がかかり,目的地近くに停められるとも限らない。そのため,違法駐車や迷惑駐車が増え,社会問題化していた。 そこでタイムズ24は,誰でも簡単に停められるコンビニ駐車場をコンセプトとし,不動産業ではなくサービス業としての事業定義を行った。折しもバブル崩壊により,市場には地上げや再開発の途中の土地が出回っていた。同社は,他に用途がない街中の小さな土地を次々と駐車場に変えていったのである 23)。 

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 ③タイムズ24の非顧客戦略 タイムズ24は,病院や公共施設を訪れる患者や見舞い客,一般市民を最初のターゲットとした。これらの人々は駐車場が利用できないために車の利用を避けていた非顧客の第2グループである。 次に同社は,個人地主や月極駐車場のオーナーに働きかけ,商業施設の買い物客,配送する営業車等の消費者をターゲットとした。これらの人々は,不便な大型立体駐車場やパーキングメーターを利用するか,違法な路上駐車をせざるを得ず,市場の境界にいた非顧客の第1グループである。 さらに同社は,駅前立地の銀行や商業施設の駐車場の空き時間を時間貸しし,24時間営業する事業を始めた。その結果,バス通勤の人々が車に乗り換え,帰りに店舗に立ち寄って買い物するようになった。集客施設に付設されていた駐車場が,逆に顧客を吸引するようになったのである。こうして,未開拓であった非顧客の第3グループも顧客に転じていった。 

(2) 出前館の事例 ①出前館の概要 インターネットのデリバリー総合サイト「出前館」を運営する夢の街創造委員会株式会社

(以下,夢の街)は1999年に資本金1億円で創設された。翌2000年10月にサイトオープンし,2006年には株式を上場している。 2013年現在,同社は全国に約530万人の会員と約11,000店の加入店を有する。取り扱いジャンルは,ピザ・すし・カレー・弁当・中華のほか,クリーニング・リサイクル・マッサージからネットスーパーまで多岐にわたる。 

 ②出前館のネット出前事業 出前館が事業を始めるまで,消費者は1件ずつ店舗のチラシやウェブサイトを見て,電話で出前を頼むのが普通であった。かたや店舗側も,セキュリティが年々厳しくなる集合住宅へのポスティングに行き詰まりを感じつつ,売上の約1割をチラシ広告に充てていた。 こうした消費者と店舗の双方の課題を解決するために,夢の街は,住所を入力すると地区内で配達可能なあらゆるジャンルの店舗が表示されるシステムを構築した。データの鮮度がよく,待ち時間の比較も可能で,古いメニューを誤って注文することもない。一方,店舗が出前館に支払う費用は売上の5%と月額3,000円であり,チラシ広告よりも格段に節約できた。 出前館では,PCや携帯からの発注情報をFAXで店舗に送り,自動音声の電話をかける。店舗側がFAXを確認し,電話の操作を行わない限り,注文完了とならない。このプロセスをコールセンターでモニターし,受注後5分以内に確認できなければオペレーターが電話でフォローする。このシステムとカスタマーセンターの存在が,大手IT企業との競合にも関わらず,同社の持続的な競争優位を可能にしている。  ③出前館の非顧客戦略 出前館の事業は,当初,ピザや寿司など出前の典型的なジャンルから始まり,新たな顧客として,ネット・リテラシーの高い若年単身者の層が加わった。非顧客戦略の枠組みでは,市場の境界にいる非顧客の第1グループに当たる。 次に,出前館の認知度が高まるにつれ,イートイン中心の飲食店がデリバリーを強化し始めた。一般に飲食店は雨天時には売上げが下がる

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が,デリバリーは雨天の方が売れるため,店舗は売上を増加させることができる。しかし,ノウハウのないことを始める負担ゆえに,積極的に参入する店舗は多くなかった。 ところが出前館は,ネット出前専業ならではのノウハウを有し,店舗にきめ細やかな支援が行える。店舗側は雨天時の余剰人員を充て,配達用のバイクをレンタルすれば,初期投資も安く抑えられる。こうして,非顧客の第2グループである,出前事業を避けていた飲食店とその利用客が顧客に転じた 24)。 さらに同社は,現在,お好み焼きや洋食等の飲食の新カテゴリー,クリーニング・マッサージ・ネットスーパーといった新ジャンルの店舗を拡張している。非顧客の第3グループである未開拓であった新ジャンルの店舗とその利用者が顧客に転じようとしている。

(3 ) カロリーコントロールアイスの事例 ① カロリーコントロールアイスの概要 カロリーコントロールアイス(以下,カロコン)は,江崎グリコ株式会社(以下,江崎グリコ)が2003年6月に発売した,カロリーを半分以下に抑えたアイスクリームである。発売後,順調に売り上げを伸ばしている(図−4)。 カロコンは,砂糖や水あめを使用せず,乳製品の代わりに豆腐を使い,食物繊維を配合している。1個80kcal25)の低カロリーに抑えつつ,コクやなめらかさも同時に実現した点が特徴である。  ② カロリーコントロールアイスの開発経緯 カロコンのアイデアを発案したのは,元東京医科大学八王子医療センター勤務のF氏である。F氏は,管理栄養士として糖尿病患者に接するうちに,気を付けていても血糖値が上がってしまう患者を助けたいという思いが強まって

図 —— 4 カロリーコントロールアイスの売上と取扱い店舗数の推移

注)実数は企業秘密につき,非公開。出所)江崎グリコ株式会社社内資料より筆者作成。

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いた。ちょうどその頃,ある企業から食物繊維入りの飲料の開発が持ちかけられた。その開発は成功したが,販売ルートがなく,発売には至らなかった。 次にF氏は,別の企業から食物繊維の素材の提供を受け,代替甘味料と合わせてケーキを開発し,学会で発表した。このケーキはマスコミでも注目され,ケーキ店で発売された。ところが,ある患者から,ケーキよりアイスクリームが食べたいと言われてしまう。 それを聞いたF氏は,病院給食用の乳製品を売店に搬入していたグリコ乳業株式会社(以下,グリコ乳業)の営業担当者に,糖尿病患者用のアイスクリームの開発の話を持ちかけた。グリコ乳業と江崎グリコとは別会社だが,担当者はすぐに連絡を取り合い,F氏を訪問した。 打合せの席で,F氏は「食物繊維2g以上,80kcal,砂糖不使用,そして,どこでも買えること」という条件を示した。グリコの担当者は,豆腐をアイスクリームに入れる研究を行った経験があり,要求条件をクリアするだけでなく,豆腐を使い,口当たりの良さを実現した試作品をすぐに持参した。 開発は順調に進み,健常者での実験と血糖値の測定を重ね,発売された。味の検討ではアンケート調査を繰り返し,バニラ・ラムレーズン・抹茶の3種類に決まった。発売時には,糖尿病学会でサンプリングを行い,糖尿病の機関誌に記事を掲載した。 販売チャネルは,病院の売店から徐々に量販店へと展開した。病院の売店ではよく売れ,ダイエットを気にする若い世代の看護師にも好評だった。発売後数年のうちに競合製品は出現したが,すぐに消えていったという。

 ③ カロリーコントロールアイスの非顧客戦略 カロコンがターゲットとした非顧客は,アイスクリームが食べたくても食べられなかった糖尿病患者であり,あえて購買を控える第2グループに当たる。その後,低カロリーという属性により,ダイエットを意識する人々にも受け入れられ,病院の売店だけでなく,一般の販売チャネルへと拡張されていった。アイスクリーム市場の境界にいた第1グループの非顧客への展開であった。 

(4) 発見事項のまとめ 表−2が,3つの事例分析による発見事項を整理したものである。3つの事例に共通しているのは,非顧客層を探索し,新たなプレイヤーを巻き込みながら,新しい市場構造を構築し,顧客の行動を変えていった点である。事業の進展に伴い,市場の主要なプレイヤーが変化し,非顧客層の顧客化がいっそう進んでいったことも分かる。 一方,非顧客から顧客への移行順に一貫性はない。タイムズは非顧客グループの2,1,3の順,出前館は1,2,3の順,そしてカロコンは2,1の順であった。非顧客から顧客への転換は,事業の展開と共に市場のプレイヤーとの相互作用の中で決まる側面を持つのである。 

Ⅴ. おわりに

 本稿では,市場ドライブ型市場志向のイノベーション・プロセス・モデルを提示し,ブルー・オーシャン戦略論の非顧客戦略に基づく事例分析を通じて,非顧客層を将来の顧客に転換する方法を理解した。

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 ただし,本稿で取り上げた事例は技術志向のそれではないため,技術志向の強いイノベーションへの適用可能性については検証が必要である。また,本稿では持続的競争優位を有する成功事例のみに注目したため,非顧客戦略を取って失敗したケースもあるかもしれない。 以上の点で限界はあるものの,非顧客戦略の視点で発想し,市場ドライブ型の市場志向を実現することが,STPによる細分化の罠を避ける価値創造型のマーケティング戦略を構築する手がかりとなることは示された。 冒頭で論じたとおり,日本企業は現場主導型のマーケティングを得意とする。しかし,本稿で論じた市場の構造と行動の変化を伴う市場ドライブ型イノベーションの実現には,トップ・マネジメントのリーダーシップが不可欠である。これは日本だけの問題でなく,実はアメリカでも,イノベーションのためのマーケティング活動には経営資源が投入されていない

(Cooper 2012,訳書62頁)。国を問わず,市場ドライブ型市場志向のイノベーションに必要な

マーケティング能力の構築が求められている。  

【謝辞】本研究は,文部科学省科学研究費基盤研究(B)

(課題番号25285136)の助成を受けている。執筆に際しては,INSEADブルーオーシャン戦略研究所 所長W.チャン・キム教授,同研究所上席研究員ジ・ミ教授にご教示とご助言を賜った。取材にご協力頂いた皆様にも大変温かいご支援を頂いた。記して感謝申し上げる。 

【インタビュー・リスト】計7回,11名2011年9月12日14:00 ~ 15:00 夢の街創造委員会株式会社 代表取締役会長2011年12月6日13:00 ~ 14:30 江崎グリコ株式会社 マーケティング部2名2012年2月23日15:00 ~ 16:30 元東京医科大学八王子医療センター 管理栄養士2012年9月25日13:30 ~ 15:00

表 —— 2 市場ドライブ型市場志向の非顧客戦略に関する複数事例分析のまとめ

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 パーク24株式会社 取締役執行役員 同        グループ企画部1名2012年9月27日14:00 ~ 15:00 夢の街創造委員会株式会社 代表取締役会長 同 営業部マネジャー,広報担当者 2012年9月27日15:30 ~ 16:30 株式会社ターリー屋 代表取締役社長2012年10月9日14:00 ~ 15:00 株式会社フレッシュネス広報担当者3名注)役職は当時。

注1)筆者らの研究によれば,日本企業では CMO(Chief

Marketing Officer) だ け で な く CIO(Chief Information Officer)も専任として存在することは少ない(Kawakami et al. 2011)。職能の権限を全社的に集中させず戦略事業単位(事業部)ごとに分散させる傾向は,マーケティングに限らず,他の職能でも見られる日本の特徴といえる。

2)この点については,山下他(2012)の詳細なレビューを参照されたい。

3)イノベーションの A-F モデルとは,イノベーションに関わるメンバーの役割を定義し,役割間の相互作用からプロセスが生まれるという発想のモデルである。A-F は役割の頭文字であり,アクティベータ

(A),ブラウザ(B),クリエータ(C),デベロッパ(D),エグゼキュータ(E),ファシリテータ(F)である(Kotler and Trias de Bes 2010)。

4)なお,市場志向には行動的側面と文化的側面の 2 つがあるが,本稿では,行動的側面に絞って議論を展開する (Hurley and Hult 1998)。市場志向の文化的側面とは,市場を最優先とする規範や価値が形成され,組織のプロセスやメンバーの行動に影響することである (Deshpande, Farley, and Webster 1993; Hurley and Hult 1998)。

5)Clark, Varadarajan, and Pride (1994)等。6)市場(あるいは産業)構造とは,ポーターのバリュー

チェーン(Porter 1980)を構成するプレイヤーの組合せと役割のことである。もう 1 つの次元である市場行動とは,顧客を含む産業内のプレイヤーすべての行動を意味する。市場行動が所与とは,既存顧客の購買行動をそのまま受け容れ,顧客が重視する属

性に関して他社と競合することである。それに対して,市場行動の生成とは,それまで顧客が考慮していなかった属性に重点を置くことである(Jaworski et al. 2000)。

7)反応型市場志向とは顧客の顕在ニーズ,先行型市場志向とは潜在ニーズを対象とする市場志向である。

8)Kohli and Jaworski(1990), Narver and Slater (1990)が概念の操作的定義を行ったことがその端緒となった(川上 2005; 山下他 2012)。

9)マーケティング学者とクリステンセンとの論争については川上(2005)を参照されたい。

10)ドラッカーは,事業の目的は顧客創造であり,よって,すべての企業が有する基本的機能はマーケティングとイノベーションの 2 つのみであると論じた

(Drucker 1954, p.39-40)。11)Eisenhardt and Tabrizi (1995), Garcia and

Calantone (2002), Leonard-Barton and Rayport (1997), Leonard-Barton (1995)他参照。

12)リニア・モデルとノン・リニア・モデルに関するレビューは川上(2005)を参照されたい。

13)状況論アプローチによるリニア・モデルとノン・リニア・モデルとの理論的融合については,川上(2005)を参照されたい。

14)セグメンテーションは特定の軸に基づいた顧客のグループ分けによる市場細分化であり,測定・到達・維持・実行の可能性を考慮し,セグメント内の同質性とセグメント間の異質性を最大化させる形で行われる。次に,ターゲティングにより,生成された複数のセグメントから,自社の戦略や資源に最も適合したセグメントを選ぶ。最後にポジショニングで,競合他社に比べて優位な自社の提供物の価値を明確に規定し,顧客の心の中での位置づけを保つ(青木・恩蔵 2004; Kotler 1999)。

15)不確実な前段階を意味する。市場機会の発見,新製品コンセプトの創出,コンセプトの評価といった段階が含まれる(青木・恩蔵 2004,Cooper 2011 他)。

16)STP のポジショニングとは別物である。ち産業構造(Structure)が企業行動(Conduct)を決め,その適合性が成果(Performance)を決めるという産業組織論の SCP モデル,およびそれに依拠したマイケル・E・ポーターの競争戦略論がこれに当たる。

17)マイクロソフト発明研究所の Schwartz (2004)は,技術開発に先立つ発明の重要性を強調し,必要は発明の母ではなく,発明が必要の母であると主張する

(訳書 18-19 頁)。電話も電球も飛行機も市場にニーズがあったわけではなく,実験と試行錯誤の末にこれらを作り上げたベルやエジソンやライト兄弟の発明が市場に需要を生み出した。Schwartz(2004)は

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論文

売上の伸び悩むセグウェイを例に挙げ,発明を成功させるには社会システムに受け容れられる必要があると指摘する(訳書 238-239 頁)。技術をドライバーとする市場ドライブ型市場志向は,プロダクト・アウトとは異なり,技術と市場をより強固に結びつける戦略なのである。

18)Cooper は 8 つの VOC 調査を提案している。それらは,エスノグラフィー,顧客訪問チーム,フォーカス・グループ,リードユーザー法,顧客による設計,顧客とのブレーンストーミング,カスタマー・アドバイザリーボード,熱狂的グループの組織化である(訳書 213-226 頁)。

19)ただし,リード・ユーザー法の成果については見解が分かれている。技術志向の強い大企業ではリード・ユーザーが開発した製品コンセプトが曖昧で価値が低いとされ,組織に定着しなかった事例がある

(Olson and Bakke 2001)。一方で,技術志向の強い中小企業では,リード・ユーザーの関与が成功につながると言われている(Coviello and Joseph 2012)。

20)von Hippel (1986, 1988, 1994, 2005), von Hippel and Katz (2002)他。ユーザー側における自然発生的なイノベーションの促進は,ロングテールのニーズを充足する社会的意義はあるものの,個別企業の戦略や資源の条件と合致するとは限らない。これをオープン・イノベーションの一種と考えれば,そのプロセスの管理のために,企業は新たな能力を構築する必要がある(川上 2010; Cooper 2011)。

21)パークロックは駐車するとセンサーが感知し,可動部が上がって車が前進できないようにする装置である。利用者が精算機で支払うとロックが解除され,装置が倒れて出庫できる。このパークロックを使えば無人管理で確実に料金を収集できる。

22)パーク 24 が持株会社となり,事業会社のタイムズ24 が駐車場を運営している。また,タイムズサービスが集金・管理・メンテナンス等を行い,タイムズコミュニケーションが 24 時間のコールセンター業務を行っている。

23)月極駐車場は,車庫法がある日本に特有のものである。他国で借地権を得るには多額の保証金が必要であるが,日本では月極駐車場のように土地を短期で貸借する商習慣があり,月極駐車場の 10 台のうち,仮に 3 台が空いていれば,そこだけを借りて時間貸しすることができた。

24)たとえば,カレーの CoCo 壱番屋やターリー屋,ファーストフードの KFC やフレッシュネスバーガー他とその顧客である。

25)80kcal は,食品のカロリー計算に使う分量を基準としている。たとえば,卵 1 個,白身魚 1 切れ,バナ

ナ 1 本などが 80kcal である。  参考文献青木幸弘・恩蔵直人編著(2004)『製品・ブランド戦略』

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川上 智子(かわかみ ともこ) 神戸大学大学院経営学研究科修了 博士(商学)

 ワシントン大学ビジネススクール連携教授

 INSEAD ブルーオーシャン戦略研究所 客員研究員

 日本マーケティング学会理事