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Dec 23, 2014

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danielprau

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特別講義信託法       

2008年11月4日10時20分 22番教室東京大学法学部信託法講義④

樋口 範雄[email protected]

参照→ http://ocw.u-tokyo.ac.jp/

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今回のポイント1 受託者の義務とは2 忠実義務の意義と問題点3 注意義務  善管注意義務の抽象性とアメリカの 

prudent investor rule 4 公平義務

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最近の話題◎ 居酒屋タクシー事件  公務員が深夜帰宅のタクシーでビールや商

品券を受け取る 信託法からみると・・・●Reading v. Attorney-General, [1951]

1 All E R 617 エジプトで禁制品を輸送する車にイギリス軍の軍曹が制服を着て同乗。検問を逃れ、見返りを取得。 constructive trust  擬制信託

● 弁護士におじさんから送られた銀のネックレス

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受託者責任の内容委任契約 最大の義務=善管注意義務(民法644

条)

旧信託法 20条 善管注意義務       22条 これは何か?新信託法   29条     善管注意義務         30-32条 忠実義務忠実義務の独立  明確化・広範化・任意規定化  善管注意義務とどこが違うのか  

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受託者の義務 旧法の義務 ①信託事務遂行義務 4条 ②善管注意義務 20条 ③忠実義務     22条 ④公平義務 明文規定なし★⑤ 分別管理義務 28条 ⑥自己執行義務 26条★⑦ 情報提供義務  (39条)40条

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受託者の義務 新信託法① 信託事務遂行義務 29条1項② 善管注意義務 29条2項③ 忠実義務 30-32条④ 公平義務 33条⑤ 分別管理義務 34条⑥ 第三者委託の場合の選任監督義務 35条⑦ 情報提供義務 36条―39条

信託法改正で受託者の義務はどのように変更したか?

と問われたら・・・

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義務の分析:注意義務・忠実義務注意義務=作為(行動)に伴う注意忠実義務=不作為義務  受益者以外の者の利益を図る行動の禁止  2つのキーワード  undivided loyalty/ conflict of

interest注意義務違反→損害賠償 立証責任あり忠実義務違反→利得吐き出し 形式犯的処理

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忠実義務が問題となる類型(1)【例1】信託財産の一部に150年前に作ら

れた手織のキルトが含まれている。受託者の子どもがたまたまキルトの収集をしており、第三者の評価金額で購入したいという。

本件で善管注意義務は何を意味するか。それとは区別された意味での、忠実義務は何

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忠実義務が問題となる類型(2)【例2】A銀行の信託部門は受託者として、

信託財産の一部を同じ銀行の定期預金にしている。利率は市場レート。また、信託の運用費用や受益者への支払いのため同じ銀行に当座預金口座を開設している。

善管注意義務は問題となるか当座預金と定期預金の違い

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忠実義務が問題となる類型(3)【例3】信託財産には、A社の株式1000株が

含まれていた。受託者T自身も、すでにA社の株式を10株とB社の株式25株を所有している。Tは、受託者として、信託財産につき分散投資を図るべく、A社の株式の半分の500株を売却し、その売却代金でB社の株式を購入することにした。このことは許されるか。

【例4】信託 A と信託 B を受託している T は、 Aの信託財産 P を B 信託に売却しようとしている。

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忠実義務が問題となる類型(4)【例5】受託者 T は、信託とは無関係に、受

益者 B から不動産を購入しようとしている。これは許されるか。

【例6】受託者 T は弁護士である。信託無効の訴えが委託者の関係者から提起され、その弁護に当たった。弁護士費用を信託財産から支出することができるだろうか。

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忠実義務の意義と問題点

1―受託者の技能を利用できない

2―制裁の過剰 疑問の1 エクイティ法理のはずなのに 疑問の2 「事なかれ的行動」のおそれ

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忠実義務ー4つの例外

① 信託条項で認められる場合② 受益者の承認・免責   ただし、インフォームド・コン

セント③ 裁判所の承認のある場合④ 法によって認められている場合

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新信託法での例外第31条 受託者は、次に掲げる行為をしてはならない。・・・2 前項の規定にかかわらず、次のいずれかに該当するときは、同項

各号に掲げる行為をすることができる。ただし、第二号に掲げる事由にあっては、同号に該当する場合でも当該行為をすることができない旨の信託行為の定めがあるときは、この限りでない。

 一 信託行為に当該行為をすることを許容する旨の定めがあるとき。 二 受託者が当該行為について重要な事実を開示して受益者の承認

を得たとき。 三 相続その他の包括承継により信託財産に属する財産に係る権利

が固有財産に帰属したとき。 四 受託者が当該行為をすることが信託の目的の達成のために合理

的に必要と認められる場合であって、受益者の利益を害しないことが明らかであるとき、又は当該行為の信託財産に与える影響、当該行為の目的及び態様、受託者の受益者との実質的な利害関係の状況その他の事情に照らして正当な理由があるとき。

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Uniform Prudent Investor Act  1条 プルーデント・インヴェスター・ルール 2条 注意義務の基準・ポートフォリオ戦略・リスクとリターン

に関する目標3条 分散投資 (Diversification)   4条 受託者として業務開始後合理的期間内にルール遵守の義務 5条 忠実義務 (Loyalty)6条 公平義務 (Impartiality)7条 投資に関する費用 (Investment Costs)8条 コンプライアンスの判断時期 (Reviewing

Compliance)9条 投資および管理機能の委任

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アメリカにおけるルールの変遷1  court list rule の時代          裁判所リスト・ルール2 legal list rule の時代            法定リスト・ルール3  prudent man rule の時代   プルーデント・マン(慎重人)・ルール4  prudent investor rule の時代   プルーデント・インベスター・ルール         合理的な投資家ルール 

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わが国への示唆1 善管注意義務の問題点   注意義務の基準は?   他人か自己のものか?   行為指針としての機能は?    受託者から見ると??   アメリカでは公益団体のところから    日本では?2 信託のリスクの開示と丁寧な説明

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信託法旧法 4条 20条 21条 大正11年勅令5

条教材199頁 要綱案第19   大きな変更はなし(自己執行義務は除く)新信託法29条 注意義務28条 (受託者の権限の中に)第三者への委託

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大阪高判2005・3・30 金融商事判例1215号12頁1 年金信託→年金信託の仕組み2 厚生年金基金の理事 v 信託銀行3 合同運用義務違反4 アセット・ミックス義務違反 50%→5

8.5%◆事案◆判決の論理・信託法の論理◆プルーデント・インヴェスター・ルールなら?

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大阪高裁判決2005年事案: 1970年 年金信託契約     30億円の運用      1997年 運用割合の覚え書き     2000年 5億円で19ファン

ド立ち上げ        ITへの集中運用      3億円弱に減少1審は受益者勝訴 2審で逆転 

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判決の論理 信託の論理判決→もっぱら信託契約の解釈     当事者の意思

これがアメリカであれば・・・

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アメリカでの善管注意義務1  McGinley v. Bank of America (Kan.2005)

エンロン株への集中について義務違反なし2  Fifth Third Bank v. Firstar Bank (Ohio 2006)

P&G 株への集中について義務違反あり

信託条項で書かれていることの意味善管注意義務=任意規定とはいっても、一定の限界

わが国では? 条項の絶対視、一般条項しかない弱さ

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McGinley v. Bank of America, 109 P.3d 1146 (Kan.2005)

1990 年撤回可能信託の設定。最終的な投資決定権限も留保。エンロン株1500株。9年余で株式分割で9500株に。信託財産の77%、80万ドル弱に。2000年に銀行内で分散投資の助言あり。担当者は動かず。2001年12月エンロン崩壊。

カンザス州裁判所は3審とも銀行の勝ち。 自己決定=自己責任? 契約で書いてある

から? 

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Fifth Third Bank v. Firstar Bank, N.A. 2006 WL 2520329 (Ohio App. 1 Dist.), 2006 -Ohio- 4506

 P & G株200万ドル相当。委託者は創始者の孫。1年後に株式下落で価値が半分に。 裁判所は分散投資義務違反を認め、受託者に損害

賠償 104 万ドルを命ずる。信託条項には、受託者は元々の信託財産を保持する

権限と、価値の下落に対し法的責任なしとする条項あり。→ Wood v. U.S. Bank N.A., 828 NE2d 1072   (2005) では、分散投資義務免除はより明確な文言がないと不可と判示。上訴審でも受託者敗訴。

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In re Will of Dumont, 4 Misc.3d 1003 (A), In re Chase Manhattan Bank, 26 A.D.3d 824 (N.Y. 2006)

Kodak株だけを集中して保持。保持する権限と分散投資義務を免除する条項あり。ただし、 compelling reason ある場合は別と規定。

1審→ 2100万ドルの賠償を命じ、配当が十分でなく十分な収益がないことが、 compelling reason だとした。 2審ではそれを破棄。

しかし、 1973 年時点では imprudent と言えないという理由であり、信託条項があるから問題なしという理由ではない。

Prudence の判断は残る。

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大阪高裁判決に戻ると契約の解釈 善管注意義務の任意規定化で、今後もその傾向が残るように見えるが・・・

  しかし、オハイオやニューヨークのように

prudence の基準が歯止めとなって、契約=自己責任にならない可能性もある

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公平義務1 アメリカでの一例  Matter of Chase Manhattan Bank (NY 2006)

2 アメリカで問題となる状況 複数で異質の受益者の存在    ①投資運用の方針決定時    ②収益か元本か    ③費用や報酬の負担は

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In re Chase Manhattan Bank

846 N.E.2d 806 ( NY, March 30, 2006 )父が設定した信託 . 制限行為能力者の娘。娘が生き

ている間は収益は娘に、残りの元本は大学他の公益法人に (CRAT = charitable remainder annuity trust)

娘はほとんど費消せず、80万ドルが残る収益なら娘の無遺言相続人へ、しかし大学らが異議申し立て。受託者の銀行は、相続人へ分配しようとするのを1審2審は支持、最高裁で逆転。

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公平義務日本でこれまで問題とならなかった理由

今後の課題 しかし、条文自体は何も示さず

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まとめ わが国の課題1 受託者責任の概念の明確化    善管注意義務・誠実義務    忠実義務・情報関連義務の不明確性2 強行規定・任意規定    営業信託・年金信託→規制の必要    一般の信託法理→私法としての任意         規定であることとその限界3 受託者責任が理解されないままでの信託 拡大の危険→契約的思考・取引的思考の貫徹  実は依存型の信託にまで、自己責任