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JSH 2014 高血圧治療ガイドライン ポケット版
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JSH 2014 高血圧治療ガイドライン ポケット版

May 25, 2015

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JSH 2014 高血圧治療ガイドライン ポケット版
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Page 1: JSH 2014 高血圧治療ガイドライン ポケット版

JSH 2014

高血圧治療ガイドライン

ポケット版

Page 2: JSH 2014 高血圧治療ガイドライン ポケット版

血圧分類 (mmHg)

リスク層 血圧以外 の予後影響因子

Ⅰ度 高血圧 140-159 /90-90

Ⅱ度 高血圧 160-179 /100-109

Ⅲ度 高血圧 ≧180 /≦110

リスク第一層 (予後影響因子がない)

低リスク 中等リスク 高リスク

リスク第二層 (糖尿病以外の1-2個の危険因子、3項目を満たすMetSのいずれかがある)

中等リスク 高リスク 高リスク

リスク第三層 (糖尿病、CKD、臓器障害/心血管病、4項目を満たすMetS、3個以上の危険因子のいずれかがある)

高リスク 高リスク 高リスク

診察室血圧に基づいた 心血管病リスク層別化

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A. 心血管病の血圧値以外の危険因子

• 年齢 (65歳以上) • 喫煙 • 脂質異常症*1: 低HDLコレステロール血症(<40mg/dL)

高LDLコレステロール血症(≧140mg/dL) 高トリグリセライド血症(≧150mg/dL)

• 肥満(BMI≧25)(特に内臓脂肪型肥満) • メタボリックシンドローム • 若手(50歳未満)発症の血心管病の家族歴 • 糖尿病:空腹時血糖≧126mg/dL、負荷後血糖2時間値≧200mg/dL、随時血糖≧200mg/dL、HbA1C≧6.5%(NGSP)

高血管管理計画のための リスク層別化に用いる予後影響因子

*1:空腹時採血によりLDLコレステロールはFriedwaldの式(TC-HDL-C-TG/5)で計算する。TG400mg/dL以上や食後採血の場合にはnonHDL-C(TC-HDL-C)を使用し、その基準はLDL-C+30mg/dLとする。

Page 4: JSH 2014 高血圧治療ガイドライン ポケット版

B. 臓器障害/心血管病

脳 脳出血・脳梗塞、無症状性能血管障害、一過性脳虚血発作

心臓 左心室肥大(心電図、心エコー)、 狭心症、心筋梗塞、冠動脈再建術後、心不全

肝臓 蛋白尿・アルブミン尿、低いeGFR*2

(<60mL/分/1.73㎡)、慢性肝臓病(CKD)、

確立された腎疾患(糖尿病性腎症、腎不全など)

血管 動脈効果性プラーク、 頸動脈内膜中膜複合体厚≧1.1mm、大血管疾患、 末梢動脈疾患(足関節上腕血圧比定値:ABI≦0.9)

眼底 高血圧性網膜症

*2:eGFR(推算糸体濾過量)は下記の血清クレアチニンを用いた推算式(eGFRcreat)で算出するが、筋肉量が極端に少ない場合は、血清シスタチンを用いた推算式(eGFRcys)がより適切である。 eGFRcreat(mL/分/1.73㎡)=194×Cr-1.094×年齢-0.287(女性は×0.739) eGFRcys(mL/分/1.73㎡)=(104×Cys-1.019×0.996年齢(女性は×0.929))-8

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初診時の高血圧管理計画

血圧測定、病歴、身体所見、検査所見

二次性高血圧を除外

危険因子、臓器障害、心血管病、合併症を評価

生活習慣の修正を指導

低リスク群 中等リスク群 高リスク群

3か月以内の指導で140/90mmHg以上なら降圧薬治療

1か月以内の指導で140/90mmHg以上なら降圧薬投与

直ちに 降圧薬治療

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1.減塩 6g/日未満

2a.野菜・果物 野菜・果物の積極的摂取*1

2b.脂質 コレステロールや飽和脂肪酸の摂取を控える 魚(魚油)の積極的摂取

3.減量 BMI(体重(kg)÷[身長(m)]2)が25未満

4.運動 心血管病のない高血圧患者が対象で、有酸素運動を中心に定期的に(毎日30分以上を目標に)運動を行う

5.節酒 エタノールで男性20~30mL/日以下、 女性10~20mL/日以下

6.禁煙 (受動喫煙の防止も含む)

生活習慣の修正項目

生活習慣の複合的な修正はより効果的である *1 重篤な腎障害を伴う患者では高K血症をきたすリスクがあるので、野菜・果物の積極的摂取は推奨しない。糖分の多い果物の過剰な摂取は、肥満者や糖尿病などのカロリー制限が必要な患者では勧められない。

Page 7: JSH 2014 高血圧治療ガイドライン ポケット版

降圧目標を達成するための 降圧薬の使い方

Ⅰ度高血圧 合併症なし

Ⅱ-Ⅲ度高血圧 Ⅰ度高血圧高リスク

併用(少量)

単剤(少量)

併用(普通用量/組合わせ変更)

単剤(普通用量) 併用(少量)

3剤併用

4剤併用

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2剤の併用

Ca結抗薬

ARB ACE阻害薬

利尿薬

*ARBとACE阻害薬の併用は一般には用いられないが、腎保護のために併用するときは、腎機能、高K血症に留意して慎重に行なう

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降圧目標

診察室血圧 家庭血圧

若年、中年、 前期高齢者患者

140/90mmHg未満 135/85mmHg未満

後期高齢者患者

150/90mmHg未満

(忍容性があれば 140/90mmHg未満)

145/85mmHg未満 (目安)

(忍容性があれば 135/85mmHg未満)

糖尿病患者 130/80mmHg未満 125/75mmHg未満

CKD患者 (蛋白尿陽性)

130/80mmHg未満 125/75mmHg未満 (目安)

脳血管障害患者 冠動脈疾患患者

140/90mmHg未満 135/85mmHg未満 (目安)

注:目安で示す診察室血圧と家庭血圧の目標値の差は、診察室血圧140/90mmHg、家庭血圧135/85mmHgが、高血圧の診断基準であることから、この二者の差を当てはめたものである

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主要降圧薬の積極的適応

Ca拮抗薬 ARB/ACE 阻害薬

サイアザイド系利尿薬

Β遮断薬

左室肥大 ● ●

心不全 ●*1 ● ●*2

頻脈 ●

(非ジヒドロピリジン系)

狭心症 ● ●*3

心筋梗塞後 ● ●

CKD (蛋白尿-) ● ● ●

(蛋白尿+) ●

脳血管障害慢性期 ● ● ●

糖尿病/MetS*3 ●

骨粗鬆症 ●

誤嚥性肺炎 ●

(ACE阻害薬)

*1:少量から開始し、注意深く漸増する *2:冠攣縮性狭心症には注意 *3:メタボリックシンドローム

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臓器障害・他疾患などを合併する 高血圧

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臓器障害・他疾患等を 合併する高血圧

狭心症

・器質的冠動脈狭窄*1: β遮断薬、長時間作用型Ca拮抗薬 ・冠攣縮:長時間作用型Ca拮抗薬 ・降圧が不十分な場合はRA系阻害薬(ACE阻害薬、ARB)を追加

心筋梗塞後 ・RA系阻害薬、β遮断薬が第一選択 ・降圧が不十分な場合は長時間作用型Ca拮抗薬、利尿薬を追加 ・低心機能症例:アルドステロン拮抗薬の追加*2

心不全

<収縮機能不全による心不全> ・標準的治療:RA系阻害薬*3+β阻害薬*3+利尿薬 ・重症例:アルドステロン拮抗薬の追加 ・降圧が不十分な場合は長時間作用型Ca拮抗薬を追加 <拡張機能不全による心不全> ・持続的かつ十分な降圧が重要

心肥大 ・持続的かつ十分な降圧が必要 ・RA系阻害薬、長時間作用型Ca拮抗薬が第一選択

*1:適応例では冠血行再建術を行う *2:高K血症に注意する *3:少量から開始し、慎重にゆっくりと増量する

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糖尿病を合併する 高血圧の治療計画

治療開始血圧(130/80mmHg以上)

生活習慣の修正・血糖管理と同時に降圧治療を開始する 1)血圧140/90mmHg以上:降圧薬を開始する 2)血圧130-139/80/80-89mmHg:生活習慣の修正で降圧が見込める場合は、生活習慣の修正による降圧を3か月を超えない範囲で試み、血圧130/80mmHg以上なら、臨床的には高血圧と判断し降圧薬を開始する

第一選択薬:ARB、ACE阻害薬

効果不十分

用量を増加 Ca拮抗薬、利尿薬を併用

効果不十分

3剤併用:ARBあるいはACE阻害薬、Ca拮抗薬、利尿薬

降圧目標 130/80mmHg未満*

*ただし、動脈硬化性冠動脈疾患、末梢動脈疾患合併症例、高齢者においては、降圧に伴う臓器濯流低下に対する十分な配慮が必要である

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慢性肝臓病患者における 降圧目標と第一選択薬

降圧目標 第一選択薬

糖尿病(+) 130/80mmHg未満 RA系阻害薬

糖尿病(-) 蛋白尿 無 蛋白尿 有

140/90mmHg未満

130/80mmHg未満

RA系阻害薬 Ca拮抗薬、利尿薬 RA系阻害薬

・蛋白尿:軽度尿蛋白(0.15g/gCr)以上を「蛋白尿有り」と判定する ・GFR 30mL/分/1.73㎡未満、高齢者ではRA系阻害薬は少量から投与を開始する ・利尿薬:GFR30mL/分1.73 ㎡以上はサイアザイド系利尿薬、それ未満はループ利尿薬を用いる ・糖尿病、蛋白尿(+)のCKDでは、130/80mmHg以上の場合、臨床的に高血圧と判断する

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脳血管障害を合併する 高血圧の治療(1)

降圧治療対象 降圧目標

超急性期 (発症24時間以内)

脳梗塞 発症 4.5時間以内 24時間以内

血栓溶解療法予定患者*1

SBP>185mmHgまたは DBP>110mmHg 血栓溶解療法を行なわない患者 SBP>220mmHgまたは DBP>120mmHg

血栓溶解療法施行中および施行後24時間 <180/105mmHg 前値の85-90%

ニカルジピン、ジルチアゼム、ニトログリセリン、やニトロプルシドの微量点滴静注

脳出血 SBP>180mmHgまたは MBP>130mmHg SBP 150-180mmHg

前値の80%*2

SBP 140mmHg程度

くも膜下出血 (破裂脳動脈瘤で発症から脳動脈瘤処置まで)

SBP>160mmHg 前値の80%*3

SBP:収縮期血圧,DBP:拡張期血圧,MBP:平均動脈血圧

*1:血栓回収療法予定患者については、血栓溶解療法に準じる。 *2:重症で頭蓋内圧亢進が予想される症例では血圧低下に伴い脳灌流圧が低下し、症状を悪化させるあるいは急性腎障害を併発する可能性があるので慎重に降圧する。 *3:重傷で頭蓋内圧亢進が予想される症例、急性期脳梗塞や脳血管攣縮の併発例では血圧低下に伴い脳灌流圧が低下し症状を悪化させる可能性があるので慎重に降圧する。

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脳血管障害を合併する 高血圧の治療(2)

降圧治療対象 降圧目標

急性期 (発症2週以内)

脳梗塞 SBP>220mmHgまたは DBP>120mmHg

前値の85-90%

ニカルジピン、ジルチアゼム、ニトログリセリンやニトロプルシドの微量点滴静注または経口薬(Ca拮抗薬、ACE阻害薬、ARB、利尿薬)

脳出血 SBP>180mmHgまたは MBP>130mmHg SBP 150-180mmHg

前値の80%*2

SBP 140mmHg程度

Page 17: JSH 2014 高血圧治療ガイドライン ポケット版

脳血管障害を合併する 高血圧の治療(3)

降圧治療対象 降圧目標

亜急性期 (発症3~4週)

脳梗塞

SBP>220mmHgまたは DBP>120mmHg SBP 180-220mmHgで頸動脈または脳主幹動脈に50%以上の狭窄のない患者

前値の85-90% 前値の85-90%

経口薬(Ca拮抗薬、ACE氏が医薬、ARB、利尿薬)

脳出血 SBP>180mmHgまたは MBP>130mmHg SBP 150-180mmHg

前値の80%

SBP 140mmHg程度

慢性期 (発症 1ヶ月以後)

脳梗塞 SBP≧140mmHg <140/90mmHg*4

脳出血 くも膜下出血

SBP≧140mmHg <140/90mmHg*5

*4:降圧は緩徐に行い、両側頸動脈高度凶作、脳主幹動脈閉塞の場合には、特に下げすぎに注意する。ラクナ梗塞、抗血栓薬併用時の場合は、さらに低いレベル130/80mmHg未満を目指す。 *5:可能な症例は130/80mmHg未満を目指す。

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高齢者高血圧

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高齢者高血圧の診断における注意点(1)

高齢者高血圧の特徴

• 血圧動揺性の増大 • 収縮期高血圧の増加 • 白衣高血圧の増加 • 起立性低血圧や食後血圧低下の増加 • 血圧日内変動で夜間非降圧型non-dipperの増加 • 早朝の昇圧(morning surge)例の増加 • 主要臓器血流量や予備能の低下 • 標的臓器の血流自動調整能の障害

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高齢者高血圧の診断における注意点(2)

血圧レベルの総合的な診断

• 繰り返し測定する • 家庭血圧測定または24時間血圧測定を併用する • 立位血圧を治療開始前、薬物治療開始後や変更後、立ちくらみの症状があるときなどに測定する (起立後3分での収縮期血圧が20mmHg以上低下した場合、起立性低血圧と診断する)

• 測定時の条件を考慮する(食後や服薬後など) • 食事と関連した血圧低下症状(ふらつきなど)がある場合には、24時間血圧測定や食後の血圧測定を実施する(食後1時間での座位収縮期血圧が20mmHg以上低下した場合、食後血圧低下と診断する)

潜在的な合併症の診断

• 心房細動、大動脈弁狭窄症、大動脈瘤、腎血管性高血圧、頸動脈狭窄などは、治療方針全般の対応が異なり、診断は重要

• 胸腹部と頸部の聴診、腹部の触診などによりスクリーニングする