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評価とIR-これまで とこれから-
○嶌田 敏行(茨城大学)
淺野昭人(立命館大学)
浅野茂(神戸大学)
佐藤仁(福岡大学)
本田寛輔(メイン州立大学)
H25.8.23大学評価担当者集会2013第一分科会
配付資料確認趣旨説明・講義1(嶌田)
「評価とIR:これまでとこれから」
講義2(浅野):
「米国におけるIRによる意思決定支援と我が国での活用について」
評価大学の目標と計画
第一分科会について(作業内容)
名簿
質疑応答、感想用紙
アンケート用紙(紙で配付)2
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タイムテーブル1 10:00~11:50 講義編
10:00~10:25【25分】趣旨説明・講義1(嶌田)
「評価とIR:これまでとこれから」
10:25~11:15【50分】講義2(浅野):
「米国におけるIRによる意思決定支援と我が国での活用について」
11:15~11:25【10分】休憩
11:25~11:55【30分】質疑応答
13:00~16:00 討論編
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評価とIRについて評価とは、目的などに照らしてある時点でどのような状態になっているかを知る行為
(=現状把握)。
次に何をすべきかを考えるために行う評価(改善・意思決定)もあれば、説明責任のために行う評価もある。
IRとは、意思決定支援である。データを有用な情報へと変換し、意思決定(トップレベルや現場における判断)を支援する業務。
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「評価とIR」データ収集編
平成23年度に実施(九州大学・西新プラザ)。
3年計画の1年目。まずは改善のための評価やIRのための「手段」の1つであるデータ収集
に着目し、その課題や工夫すべき点について、みんなで議論。
結論とガイドラインにまとめた。
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データ収集編:結論
データ収集の目的が共有されていない。もしくは、目的がない。
→トップにも現場の方にもなかなか協力してもらえない。
→ データの定義が曖昧なまま進められている。
→ 集めたデータを活用できない。
単にデータを集めることからの脱却が必要。→ 大学をよくしたい!、という想い?
→ とにかくIRを入れればよい、という発想からの脱却。
<大学評価コンソーシアムwebサイト>大学評価担当者集会2011 第一分科会「データ収集編」http://iir.ibaraki.ac.jp/jcache/index.php?page=acc20110916-1 6
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データ収集作業のガイドライン
その1:データ収集の目的とデータ定義を明確にしよう。[評価業務で求められるデータの類型]
その2:執行部の理解を得て、協力してもらおう。
その3:各部局との連携を強化して協力してもらおう。
<大学評価コンソーシアムwebサイト>評価業務のガイドラインhttp://iir.ibaraki.ac.jp/jcache/index.php?page=guideline 7
「評価とIR」データ分析編
平成24年度に実施(神戸大学・当会議室)。
評価活動やIR活動を実施する上での、データ分析の課題について、みんなで議論。
ただし、IR担当者がよくやるような数値分析
はあまりやっていないので、プロセス分析(各部局等の取り組み状況の記述の分析)の課題と工夫すべき点について、みんなで議論。
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データ分析編:留意点1
学内施策の目的などや実施する意義が曖昧だと評価(現状把握)が困難になるので、なるべく計画策定にも参画した方がよい?
やった結果(アウトプット)を表層的(現象論的)に捉えるのではなく、目的に照らして本質的にどのような状況になったのか(アウトカム)ということを捉えなければならない。(記述、データ、資料などのエビデンスを用いて)
<大学評価コンソーシアムwebサイト>評価業務のガイドラインhttp://iir.ibaraki.ac.jp/jcache/index.php?page=guideline 9
データ分析編:留意点2
最初のうちは、ダメなところをダメと指摘するだけだとしても、慣れてくれば、褒めて伸ばす気持ちも重要。
自分たちが気がついていない長所、短所を探して、「次」を見越した動きが重要。
→ 当たり前だと思っているが、実は結構いいことをやっていることは、意外と多い。
→どうしても説明を行う際に「ダメ」なことを書かなくてはならない場合もあるが、その場合には、改善の見通しがないとつらい。
<大学評価コンソーシアムwebサイト>評価業務のガイドラインhttp://iir.ibaraki.ac.jp/jcache/index.php?page=guideline 10
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大学の改善のために
評価を単なる評価作業で終わらせないためには、改善への意思決定に向かう必要がある。
現状把握で得た情報を、どのように意思決定(改善)支援に活かすのか。
「評価とIR」改善への活用
11※現状把握は評価作業だけでなく、学務系、財務系、総務系、教育現場、研究現場など大学の諸活動セクションで実施可能。
大学という組織の特性
「利潤」といった数量的に測定可能な形で氏名が達成できたかどうか明確にできない。
大学の組織運営に参加したり意思決定に関わり様々な人たちの権限が不明確。
企業は、学問の自由に保護された雇用者から批判されたり、卒業生を抱えたりしない。
リーダーシップは、学内外から制約を受け、役割は実際的というよりは相当象徴的。
(「大学経営とリーダーシップ」ロバート・バーンバウム[高橋靖直訳])
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さまざまな意思決定哲学意思決定哲学
主たる関心ある文脈 要求される情報
焦点 幅広さ
政治的 他人の認識 個別的 焦点化
独裁的 個人的課題 連続的 焦点化
経営的 プログラムの質 連続的 広範
同僚制的 プロセスの「正確性」 個別的 広範
ゲイリー・マクラフリン、リチャード・ハワード(林隆之訳)「第6章:IRの理論・実務・職業倫理」『IR実践ハンドブック』
この分科会での意思決定の範囲
まず、「意思決定(Decision Making)」と
いうと、どうしても責任者がマネジメントを行うことを意味する印象がある。
本分科会では、組織のボトムである各現場での判断(Decision)からトップである管理職
による決定も含めたものを意思決定と考えることにする。
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意思決定支援者とは?
その意思決定を効率的、効果的に行ってもらうためには、さまざまな支援(Decision Support)が必要になる。
その意思決定に関係する者(評価担当者、IR担当者およびその周辺業務に従事する者)を、「意思決定支援者」と呼ぶことにする。
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評価疲れの原因例えば、評価担当者は、PDCAサイクルの中で、過去の実績を踏まえながら、現状を把握することを基本的な業務としている。
チェックである評価結果(現状把握)は、次のアクションの意思決定(および判断)のために用いられることを期待している。
しかしながら、現状ではその連関がないため、評価が改善に活かされない、という現象が生じている。(評価疲れの遠因?)
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IR担当者の役割
このような状況を打開する機能として、IR(Institutional Research)が注目されてる。
米国では、IRが意思決定支援(一定程度の改善へ向けた支援)を行っているが、IR自体は、
意思決定を行っていない。あくまでも意思決定し、改善を図るのは、管理職や各現場であり、IRは、裏方のスタッフや名脇役のような役割を果たしているのである。
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日米のIRの共通点
米国のIRは、米国特有の事情や必然性の上に
成り立っており、同じ機能をそのまま日本の大学に持ってきてもうまく適合するかどうかはわからない。
しかしながら、米国のIR担当者と日本の評価・IR担当者が実際に会って業務の話をして
みると、各大学で置かれている環境は全く異なるにも関わらず、なぜか話が通じることが分かってきた。
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共通プラットフォーム
それは、日米問わず、大学とは「学生を受け入れて、学修させて卒業させる」という基本機能については変わらない、と思われる。
即ち、学内の状況を把握しやすい部署に勤務している場合、業務の中から課題や問題点を見つけ、これらを何とかしたい、という思いは万国共通なのではないか、と考えている。
このような改善へ向けた支援に関して困っている箇所も案外変わらない、という印象を受けた。
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評価とIRとの融合
日本でも、さまざまな方が、さまざまな方法で大学の改善に取り組んでいるが、我々のような評価担当者(IR担当者およびその周辺業
務に従事する者も含む)は、多くの課題を網羅的に知ることができる立場にある。
そういう意味では、改善へ向けた支援を行うには非常に適したところに位置していると考えられる。
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意思決定支援者の役割
「意思決定支援者がどのようにして意思決定を支援していくか」。
そこが評価を評価で終わらせないための鍵、データ分析をデータ分析で終わらせない鍵となる部分だと考えられる。
そこをどのように具体的に取り組めば良いのか。それを今回、参加者の皆さんの知見を集めて考えて行きたい、と考えている。
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意思決定支援と評価・IR
IR 評価
意思決定支援
※ 業務の中身は近いが、見る角度によって内容が異なる。
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意思決定支援者(評価の側面) 評価担当者は、部局からのデータ(数量データ、テキストデータ)を読み、分からないところがあれば、部局等に聞き、(目標に照らした)現状を理解することが求められる。
評価の目的に従い、報告書(評価書)を書くことが求められる。
現状を評価を一緒にやっている身内はもちろん、評価や現在の作業内容をよく理解していない方々とも共有しなくてはならないと思われる。
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意思決定支援者(IRの側面) IR担当者は、データを収集、集計し、学外の方や部局等の求めに応じて、それを提供しなくてはならない。
IR担当者は、各種のデータを意思決定や判断をする人にとって意味のある(価値のある)情報に変換しなくてはならない。
IR担当者は、主役である意思決定を行うスタッフが円滑にその業務が行えるよう効果的な情報の提供や議論の場の提供を行わなくてはならない。
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意思決定支援者能力段階表
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能力・技能要素 駆け出し 近づいている
十分である
越えている
評価系
読む・聞く(理解する)
書く
話す(共有する)
IR系
データの収集
データの分析
情報の活用
意思決定支援者の能力
・大学を俯瞰的に見る力・データなど客観的なエビデンス
をもとにものごとを考えられる力・他人の話を聞くことが出来る力
(適切な対応が出来る力)
統計
IT
DB
高等教育
学内事情
手続き論
基本能力(主としてマインドセット)
応用能力(主として知識・スキルセット)
さきほどのルーブリックはこちら
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講義2に向けて
それらを議論するために、直接使えるかどうかは別として、米国が積み上げてきた事例の中から、本担当者集会ではこれまであまり取り上げてこなかった大学の意思決定に関する理論を紹介し、米国におけるIRによる意思決
定支援の実際と、それらがどのような仕組みで動いているのか、ということを紹介する。
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タイムテーブル2 13:00~16:00 討論編
13:05-14:25 グループ討議
14:25-15:05 ポスター発表
15:05-15:50 全体討議(発表)
15:50-16:00 まとめ
「評価大学」という架空の大学の目標と計画を事例に評価を改善に活かすための方法について、みんなで考えます。
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作業1:課題の洗い出し
○ 昨年度の指摘を受けて改善を図った評価大学の取組
を素材に用いて、「評価大学が抱える課題とその原因」を考えてください。
作業2:支援(サービス)対象の洗い出し
○ それらの課題に対して、評価・IR担当者(意思決定
支援者)として、誰に働きかけを行えばよいのか、議論してください。
※支援内容(作業3)を考えながらのほうが、対象を決めやすい、という場合には、作業3から進めていただいて結構です。
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作業3:具体的な意思決定支援の内容と方法を考える
1)課題の解決のために、その対象に何を支援すべきなのかを考えていただき、そのうち、実際に支援できるものは何なのか。
2)その結果、対象にはどのような行動(改善)を期待するのか。[問題の認識が間違っていたら、それをどのように問題だと認識してもらうか:選択機会に応じた解の投入]
3)また、その対象の行動(改善)の結果、大学がどのように変化することが期待されるのか。[応用課題:時間があれば]
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作業3-1)に関する補足□ 意思決定支援には、大きく分けて「問題の確定(認識)」と「改善策の示唆」の二つの方向性あることに留意してください。
□ 1)の支援の内容としては、ネタ(情報)だけでなく、
『場』の提供も支援である」とありますが、「支援」としては、適切な情報の提供が第一義です。
□初めに「場」まで含むと「支援」の範囲が拡がるように感じられますので、討論の際は、課題の解決に向けて、まずはどのような情報、根拠、実態(ファクト)を提供・報告したり、分析・提示したりするのが望ましいかということを主眼においたほうが、議論しやすいと考えられます。
□その上で、どのような「場」で、あるいは「場」を設けてそれらの情報等を関係者に示すのがよいかということを考えると、意思決定に必要な「支援」のあり方が整理しやすくなると思われます。
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作業4:意思決定支援の際の課題となりうるものと解決策
○ 課題解決のため実行内容について作業3で考えまし
たが、実際に実行する際にはどこに工夫をすればよいと思いますか。[応用課題:時間があれば]
※この作業については、作業3などを討論しながら、「ここが課題になり得る」というような点をメモしておいていただくだけでも、十分実務に移したときにヒントになることが出てくると思われます。
作業4を考える上でのヒントとしてのクエスチョン。Q1.ある課題を特定化していくためには、他にどのようなデータ提供や分析が必要でしょうか?Q2.この事例では描写されていないが、あなたの実務経験を踏まえて配慮すべき点にはどのようなものがありますか?Q3.あなたが考えた解決策に対し、学内ではどのような賛否が生じられると考えますか?Q4.あなたが考えた解決策を提案する際に、どのような手順で学内手続きを踏みますか?