Page 1
Vol.2013. June5ILOニュースいちのせきリニアコライダー通信
International Linear Collider:国際リニアコライダー
第5回セミナー
第5回セミナーでは、高エ
ネルギー加速器研究機構(K
EK)の吉岡正和名誉教授と
KEKの杉本康博講師の2名
を講師に迎え、最初に、吉岡
先生から、今年2月に再編さ
れたILC国際組織の役割
やILC建設に関する日本へ
の期待などについて紹介があ
り、その後、杉本先生からI
LCの測定器や実験室の概
要、測定器及び周辺設備の建
設などについて講話が行われ
ました。
杉本先生の講話の概要は次
のとおりです。
ILCでは、衝突実験の様
子を調べるため、衝突点に測
定器が設置される。測定器
は、日本とヨーロッパが中心
となり開発を進めているIL
Dと、アメリカが中心となり
開発を進めているSiDの2
つがある。
ILCは衝突点が1カ所し
かないため、一方の測定器が
実験している間、もう一方の
測定器は横で待機し、ある程
度データを収集したら、スラ
イドさせて入れ換え、実験を
する。これをプッシュプル方
式と呼んでいる。
ILDは直径15・5m、長
さ13・5m、重さ1万5千ト
ンで、SiDはそれより一回
り小さい。地下実験室は、2
台の測定器が設置でき、測
定器の組み立てを行える広
さが必要となるため、メイン
空洞の大きさは幅25m、長さ
142m、高さ42mとなる。
また、メイン空洞のほか、コ
ンプレッサーや変電設備、ヘリ
ウムガスタンク、会議室などが
入るサブ空洞が必要となる。
サブ空洞の大きさは、幅15m、
長さ80m、高さ13・5mである。
なお、ILCの地下空洞は、
揚水式発電所の地下発電所と
非常に似ており、地下発電所
は国内で既に20カ所以上建設
されていることから、地下空
洞は問題なく建設することが
できる。
地下空洞の安全面では、ヘ
リウムガスのガス漏れが心配
されるが、ヘリウムガスは、冷
凍システムの外には出さない
設計とする。万が一事故など
でヘリウムガスが全量漏れた
としても、メイン空洞が十分
大きいため、空洞の上部8m
にしかガスは溜まらず、その
後、ガスは導坑を通って外部
に自然に排出される。火災の
際の煙もヘリウムガスと同様
に排出される。
また、地下での作業従事者
は、最大約200名を見込ん
でいるが、その人たちの避難
用の電気自動車を配備し、そ
の車に常時ガスマスクを積載
し、従事者の安全を確保する
予定である。
実験室へのアクセストンネ
ルの出入口付近にはさまざま
な施設が必要となる。高圧受
電設備、ヘリウムガス、液体
窒素の貯蔵施設、測定機器
の組立建屋、冷却水の冷却タ
ワー、さらに実験コントロール
室を含む実験棟などである。
大型超伝導磁石である超伝
導ソレノイドは、直径8・8
m、長さ7・8m、重さ400
トンであるため、完成品を工
場から現場に輸送することは
難しい。工場から輸送した部
品をアクセストンネル付近の
組立建屋で一次組立をし、そ
の後、各種試験を行い、地下
の実験室に搬入する。
超伝導ソレノイドの内側に
設置する測定機器の1つであ
るハドロンカロリーメーター
も大きな機器のため、地上
で一次組立をし、地下に搬入
し、組み立てる。
◆第5回・第6回 ILCセミナー
◆ILC普及啓発の 取り組み
◆岩手県ILC推進協 CERN視察
プッシュプル方式
CERN(セルン)建設の様子
ILC測定器実験室の
概要について
ILD測定器及び
周辺設備の建設
第5回・第6回
ILCセミナー
「ILC実験(2)大型測定器の建設、インストール、運用」を
テーマに1月21日行われた第5回セミナー及びこれまでのIL
Cセミナーの総集編として3月25日に行われた第6回セミナー
(会場:ホテルサンルート一関)の内容をお知らせします。
〜新たなビジネスチャンスを求めて〜
ⒸM.Oriunno
ⒸCERN
Page 4
発 行 岩手県一関市 編 集 企画振興部企画調整課
〒021-8501 岩手県一関市竹山町7番2号TEL 0191-21-8641FAX 0191-21-2164
URL http://www.city.ichinoseki.iwate.jp/E-mail [email protected]
Vol.2013. June5ILOニュースいちのせきリニアコライダー通信
CERNは欧州12カ国の国
際研究機関として1956年
に発足し、現在20カ国が加
盟。LHCという加速器を用
い、国際共同実験が行われて
います。実験には世界各国か
ら1万2千名が参加し、その
うち日本からは190名余り
の研究者が、CERN内のA
TLASと呼ばれる実験施設
で研究に携わっています。
視察1日目に行われた日本
人研究者との意見交換では、
子どもの教育について、各国
の教育システムが異なってい
るため、自国に戻った際にス
ムーズな編入や引き続きの教
育が受けられないという問題
が多いこと、また、現地で配
偶者の働く場がないことなど
が課題であるとの話がありま
した。
2日目は、CERN要人と
の意見交換やCERN内の幼
稚園など施設見学を行いまし
た。要人との意見交換では、
ILCの新国際推進・設計組
織のディレクターであるリン・
エバンスさんから、「CERN
は第二次世界大戦後に作られ
た実験施設であり、災害後と
いう意味では、今の日本と同
じ状況だった」「近いうちに日
本で会えることを楽しみにし
ている」との話をいただきま
した。
同じく、CERNのユーザー
オフィス(研究者への各種サー
ビスを提供)のリーダーであ
るドリスさんからは、「長期
滞在、短期滞在する研究者の
住む場所を探したり、研究者
の子ども達の学校や幼稚園の
紹介、配偶者の働く場のあっ
せん、CERN内の規則の説
明、研究者に代わって行う契
約の交渉など、研究者のさま
ざまなニーズに対応した幅広
いサービスを行っている」と
の話がありました。
また、CLIC(ILCの次
世代加速器)のディレクター
であるスタイナーさんからは、
「知らないところで新しい生活
を始めるにあたり、安心して
相談に行ける所が必要。地域
社会に溶け込めるような環境
づくりが大切」との話があり
ました。
視察をしたCERN内の幼
稚園は、園児数は234名(2
歳児から小学校低学年位ま
で)、全員がCERNの研究者・
スタッフの子ども達で、出身
国は20カ国でした。
子ども達は、年齢により3
つのクラスに分けられ、1ク
ラス17名を先生+アシスタン
トで対応し、公用語はフラン
ス語で、先生やスタッフは複
数の言語を話せるとのことで
した。また、幼稚園の昼食は、
CERN内にあるレストラン
が給食を作り、メニューは園
長先生とレストランの栄養士
が話し合って決め、アレルギー
や宗教に配慮した給食となっ
ていました。
3日目、ドイツ・フランクフ
ルトのホテルで、上野副知事、
谷藤盛岡市長、小沢奥州市長
と勝部市長による共同記者会
見が行われました。
上野副知事は、「ILCの
将来的な課題や重要な評価ポ
イントが見えてきた。最適な
候補地となるよう国や関係自
治体と協力・連携していきた
い」と述べていました。
勝部市長は、「CERNは
来年60周年を迎える。この間
に加速器は大きなテーマの実
験を2回、それぞれ30年とい
う歳月を注ぎやり遂げてき
た。ILCも長期的な視点に
立ち、研究環境を整備してい
かなければならない。受け入
れ側として、若者に夢と誇り
を与える教育面、日本から世
界へ発信する文化面、ものづ
くり大国日本の再生のための
イノベーションの創出の鍵を
握る産業面、地域と世界の融
合のモデルとなる地域づくり
の面など多方面からの環境整
備に、各自治体との調整を図
りしっかりした体制で取り組
んでいく必要がある」と今回
の視察をまとめました。
現地駐在の日本人研究者
CERN内の幼稚園
4月10日(水)から3泊5日の日程で行われたスイス・ジュ
ネーブ近郊にあるCERNの視察(主催
岩手県国際リニアコラ
イダー推進協議会)の概要についてお知らせします。
ILCの東北誘致に向けた今後の取り組みなどに役立てるこ
とを目的に行われたこの視察には、勝部市長をはじめ、岩手県
上野副知事、盛岡市長、奥州市長ら自治体関係者と、岩手県商
工会議所連合会ら経済団体などから総勢35名が参加しました。
CERN視察
1日目(4月11日) 現地駐在の日本人研究者との意見交換 CERN施設見学
2日目(4月12日) CERN要人との意見交換 CERN内の幼稚園視察 フェルネーボルテール市※ 訪問 又は CERN内の消防署、病院視察
3日目(4月13日) フェルネーボルテール市内視察 (朝市ほか) ※CERN近郊の町
朝市の様子
トラム(路面電車)とGlobe(体験ミュージアム)