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製薬メーカー v.ジェネリック ~差止請求訴訟における主張~ 2011年11月19日 (2014年12月29日修正) 青山特許事務所プレゼンミーティング 英燦
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~差止請求訴訟における主張~...製薬メーカーv.ジェネリック ~差止請求訴訟における主張~ 2011年11月19日 (2014年12月29日修正)...

Sep 18, 2020

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製薬メーカー v.ジェネリック

~差止請求訴訟における主張~

2011年11月19日

(2014年12月29日修正)

青山特許事務所プレゼンミーティング

呉 英燦

Page 2: ~差止請求訴訟における主張~...製薬メーカーv.ジェネリック ~差止請求訴訟における主張~ 2011年11月19日 (2014年12月29日修正) 青山特許事務所プレゼンミーティング

<INTRODUCTION>

製薬業界において、医薬品の研究開発には莫大な費用と期間が必要であるところ、研究開発をした製薬メーカーは、医薬品について特許権を取得することにより一定期間、独占排他権が付与される。その間に研究開発費用を回収して新薬の開発を目指していくわけであるが、一定の特許期間が過ぎると、特許権は消滅し、他の製薬メーカーが同種・同効の医薬品を自由に製造販売することができる。このような特許権消滅後に製造販売される医薬品は、一般に「ジェネリック医薬品」などと呼ばれる。

ジェネリック医薬品を製造する製薬メーカーは、先発薬メーカーほど莫大な研究開発費用や期間を必要とせずに、先発医薬品と同等の生物学的利用可能性をもつジェネリック医薬品を製造販売しているが、中には、種々の理由から、特許権の存続期間中に、先発医薬品等と類似の医薬品等の製造販売を始めてしまうこともあり、当該特許権を有する製薬メーカーとの間で訴訟が勃発するケースも少なくない。

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<MENU>

1 本件特許権侵害訴訟の時系列

2 事案の概要

3 本件特許権

4 属否立証

5 分析試験

6 侵害論(属否論)

7 無効論

8 さいごに

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1 本件特許権侵害訴訟の時系列

訴え提起(0日) 訴状提出

口頭弁論①(50日) 原告: 訴状陳述

被告: 答弁書陳述

弁論準備手続① 当事者双方: 準備書面陳述

(各期日間は概ね30日~60日)

弁論準備手続② 当事者双方: 準備書面陳述

弁論準備終結

口頭弁論② 当事者双方: 弁論準備手続の結果陳述

弁論終結(390日)

判決言い渡し(480日) (各期日は概ね5~30分程度)

*大阪地裁HPの審理モデルでは、弁論終結まで330日

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2 事案の概要

(1) 特許権侵害差止等請求事件

・ 特許権者: 製薬メーカーX

・ 実施権者: 製薬メーカーA

・ 対象製品: 持続性選択H1受容体拮抗剤 (剤形: 錠剤)

・ 効能・効果: 皮膚炎、アレルギー性鼻炎など

(2) Aは、日本国内において対象錠剤について製造販売承認を取得し、販売している。

(3) 被疑侵害者: 国内ジェネリックYら数社

Yらは、対象錠剤について製造販売承認を取得し、販売を開始した

(4) XおよびAは、Yらが販売する錠剤を入手し、分析試験を開始した

(5) Xは、分析試験結果を基に、Yらを被告らとして、訴えを提起した。同時に仮処分命令の申立も行った

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3 本件特許権

(1) 作用効果: 抗ヒスタミンH1活性、皮膚炎・アレルギー性疾患(例えば鼻炎、花粉症など)に有効

(2) 解決しようとする課題

化合物α(有効成分)は、固体剤形中に配合された時には水溶性の悪さに関連し

て不十分なバイオアベイラビリティー(経口投与された薬物が血液中に到達する割合)しか表さず、固体剤形中への配合は困難

(3) 解決手段

「微細粉粒化された」化合物αから得られた固体剤形の医薬品は「微細粉粒化さ

れていない」化合物から得られたものよりも約40%高い溶解初速度を示すという新たな知見に基づき、経口用新規固体製剤の開発に成功

→ 製薬メーカーXは、世界各国で、αのヒスタミンH1受容体拮抗作用によるアレルギー性疾患治療薬を製造・販売

→ 日本では、製薬メーカーAが製造販売承認を取得し、販売

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4 属否立証

●本件発明の特徴: 固形製剤中の有効成分αの粒子サイズ

→ 固形製剤中には、複数成分が混在しており、粉砕すれば粒子サイズが変化するおそれ

→ 有効成分αを特異的に検出・分析できる手法が必要

→ そこで・・・

分光学的手法を利用!

αに特異的な分光学的スペクトルから粒子サイズを測定可能

→ 選択的 かつ 非破壊的

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5 分析試験

(1) 目的

固形製剤中の特定成分αの粒子サイズを選択的かつ非破壊的に測定すること

(2) 測定法の概要

・ 顕微近赤外分光法と、顕微ラマン分光法による2段階分析アプローチ

→ 空間分解能の違いにより、広→狭へ、スピーディーに分析可能

・ 顕微鏡法、分光学的手法およびケミカルイメージング技術を融合した手法

→ 複数物質からなる固形製剤中の特定一物質を選択的に可視化し、その粒子サイズや粒子数などを測定可能

(3) ケミカルイメージングとは

顕微鏡観察などの空間的な情報から、成分分布を画像(イメージ)として作成する技術をいい、可視化されたケミカルイメージから特定物質の存在領域を特定し、その物質の粒子サイズを測定することができる

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5 分析試験

(4) 具体的な測定 (省略)

(5) バリデーション (妥当性検証)

●本法による粒子サイズ測定法の信頼性と精度の検証を目的

① 予め粒子サイズが認証されたポリスチレン球を模擬αとして錠剤を作成

② 本法により測定された粒子サイズと走査型電子顕微鏡法(SEM)による測定結果との比較

→ ポリスチレン球は形状が球なので、目視で、他の成分と区別できる利点

→ 比較した粒子サイズに有意差なし

③ 本法の信頼性・精度を担保

訴訟提起

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6 侵害論(属否論)

(1) 経緯

<原告>

訴状にて構成要件充足性を主張

<被告ら>

構成要件非充足性、権利行使制限の抗弁を主張

(具体的な無効理由の主張は、訴えの提起から3ヶ月くらい後)

無効審判は提起せず(ダブルトラック回避)

<裁判所>

侵害論(属否論)と無効論を並行して審理

(2) 被告らの行為

被告らは、被疑侵害品(被告ら製品)について、製造販売承認を取得し、販売開始

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6 侵害論(属否論)

(3) 主張概要

<被告ら>

・ 用語の具体的意義が明らかでない

→ 「微細粉粒化」、「改良された溶解特性を持つ」、

「最大サイズ」、「数平均粒子サイズ」、「好ましくは」、「数基準で90%の粒子」

・ αの粒子サイズ・粒子数

・ 分析試験報告書の立証限界

・ 画像処理

<原告>・ 用語の意義を釈明・ 分析試験報告書はαの粒子サイズを捉えている・ 2次元領域と3次元領域・ 粒子サイズ測定法の技術的確立・ 閾値処理・切り取り処理・ 被告ら製法

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7 無効論

(1) 主張概要

・ 権利行使制限の抗弁

・ 新規性欠如

(構造式、微細粉粒化、改良された溶解特性を持つ固体医薬組成物)

・ 進歩性欠如

(粒子サイズ)

・ 構成要件不可欠要件(明確性要件)違反

(粒子サイズ、数平均、好ましくは、数基準、改良された溶解特性を持つ)

・ サポート要件・実施可能要件違反

(微細粉粒化されていること、粒子サイズ、数平均、数基準

・ 無効理由の主張立証責任

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8 さいごに

本件の争点の一つは、侵害論における分析試験報告書の分析手法の妥当性にあろう。この点、裁判所の心証としても、「判断が難しい」事件とされた。

本件訴訟を通じて、技術常識を含め、技術内容を裁判所に理解してもらうことがいかに難しいかを痛感したのが個人的な感想である。一般的教科書を示しつつ、その教示内容を本件技術に当てはめて翻訳する。一見、難しい技術を如何に平易に、誤解なく伝えることが訴訟における弁理士の役割ではないだろうか。

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ご清聴ありがとうございました。