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HTLV-1 母子感染防止対策マニュアル (案) 平成25年3月 宮崎県 HTLV-1 母子感染対策協議会 宮崎県 宮崎県医師会 1 【資料7】
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HTLV-1母子感染防止対策マニュアル€資7...HTLV-1母子感染防止対策マニュアル (案) 平成25年3月 宮崎県HTLV-1母子感染対策協議会 宮崎県

May 25, 2020

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HTLV-1 母子感染防止対策マニュアル

(案)

平成25年3月

宮崎県 HTLV-1 母子感染対策協議会

宮崎県 宮崎県医師会

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目 次

第1章 HTLV-1 感染症の基礎知識 Ⅰ HTLV-1 の発見と命名 Ⅱ HTLV-1 感染と生体反応 Ⅲ HTLV-1 感染と特異的疾患 Ⅳ HTLV-1 感染の診断 Ⅴ HTLV-1 感染の予防 第2章 HTLV-1、ATL、HAM の疫学 Ⅰ 臨床疫学的特徴 Ⅱ 地理病理学的特徴 Ⅲ 感染経路 Ⅳ 将来予測 第3章 成人 T 細胞白血病・リンパ腫(ATL)について Ⅰ 成人T細胞白血病・リンパ腫(ATL)について Ⅱ ATL の臨床症状と診断 Ⅲ ATL の治療と予後 第4章 HTLV-1 抗体検査について Ⅰ 検査の種類

1)粒子凝集法(PA 法) 2)酵素免疫測定法(EIA 法)について 3)蛍光抗体(IF)法 4)ウエスタンブロット法(WB 法)について 5)DNA 検査法

Ⅱ 検査の進め方と結果の解釈 第5章 HTLV-1 母子感染の予防法 Ⅰ HTLV-1 キャリア妊産婦の管理と留意点 Ⅱ HTLV-1 抗体検査の進め方 Ⅲ スクリーニング検査時の説明 Ⅳ スクリーニング検査結果の説明 1)スクリーニング検査結果が陰性の場合 2)スクリーニング検査結果が陽性の場合 Ⅴ 確認検査結果の説明 1)確認検査結果が陰性の場合 2)確認検査結果が陽性の場合 3)確認検査結果が判定保留の場合

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Ⅵ キャリア妊婦に対する告知 第6章 栄養方法の選択について Ⅰ 栄養方法の選択に関する説明と留意点 1) 説明時期の目安と内容 ① 妊娠期 ② 分娩、産褥期 ③ 説明する上での留意点 Ⅱ 母乳感染予防の基本的な考え方 Ⅲ 栄養方法の選択 1)完全人工栄養について 2)短期母乳栄養について 3)凍結母乳栄養について Ⅳ 人工栄養の問題点とその解決方法 第7章 各関係機関の役割について Ⅰ 産科医療機関の役割について Ⅱ 小児科医療機関の役割について Ⅲ 保健所の役割について Ⅳ 市町村の役割について ・HTLV-1 母子感染防止対策手順 ・宮崎県内の妊婦健康診査における HTLV-1 母子感染防止対策の相談体制 Ⅴ HTLV-1 検査、カウンセリング機関 各種様式 HTLV-1 抗体検査における確定検査を受検された妊婦の方へ【様式第 1 号】 HTLV-1 確定検査結果報告(産科用)【様式第 2 号】 3 歳以降のお子さんが HTLV-1 抗体検査を受検された保護者の方へ【様式第 3 号】 HTLV-1 確定検査結果報告(小児科用)【様式第 4 号】 HTLV-1 の Q&A 参考資料 資料1 妊婦健康診査における HTLV-1 抗体検査結果が

陽性(要精密検査)であった妊婦の方へ 資料2 精密検査(確認検査)における HTLV-1 抗体検査結果が

陽性であった妊婦の方へ 資料3 HTLV-1 キャリアのカウンセリングの進め方とポイント 資料4 精密検査(確認検査)における HTLV-1 抗体検査結果が

判定保留であった妊婦の方へ 資料5 HTLV-1 フォローアップシート

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資料6 授乳・離乳の支援ガイド 資料7 短期母乳の具体的方法 資料8 搾乳の留意点 資料9 凍結母乳栄養の具体的方法 資料10 3歳児移行の追跡調査において、お子さんの HTLV-1 抗体検査(精密検査)

結果が陽性であったお母様へ HTLV-1 母子感染対策協議会 設置要項 HTLV-1 母子感染対策協議会 委員名簿

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第1章 HTLV-1 感染症の基礎知識

Ⅰ HTLV-1 の発見と命名 1977 年、高月らは日本の南西部に多発するT細胞性の白血病が新しいタイプの病気であることを

発見し、成人T細胞白血病(ATL adult T-cell leukemia)と命名し報告した。1979 年に三好らが

樹立した ATL 細胞株(MT-1 細胞)を用い、1981 年、日沼らはその原因が C 型レトロウイルスで

あることを確認し、これを ATLV(adult T-cell leukemia virus)と命名し報告した。この C 型レト

ロウイルスと ATL との関連性は吉田らによる ATLV の分離、遺伝子構造の決定などの研究により検

証された。一方、米国の Poiesz らは同様の C 型レトロウイルスをヒトの皮膚 T 細胞リンパ腫から分

離していたが、このウイルスが ATLV と同一の遺伝子構造をもつことが明らかにされ、両者は同一

種のヒト T 細胞白血病ウイルスとして、human T-cell leukemia virus type I (HTLV-1)とレトロ

ウイルス国際委員会で命名された。 Ⅱ HTLV-1 感染と生体反応 HTLV-1 は授乳(母乳)や性交による自然感染以外に、輸血などでも感染する。HTLV-1 はリンパ

球を主な標的とし、逆転写酵素により宿主細胞の DNA に取り組まれたプロウイルスが宿主細胞の増

殖とともに活性化され再感染を繰り返し、HTLV-1 感染者(キャリア)となる。 キャリアの血液中にはこれらの感染リンパ球が存在するが、ウイルス粒子は殆ど認められない。

これは、このウイルスが細胞に強く依存するタイプのものであるからであり、感染の拡大には、感

染細胞と標的細胞とが直接コンタクトすることが必要となる。この点は、血清(または血漿)中に

大量のウイルス粒子が認められるその他のウイルスの持続感染(例えば B 型肝炎ウイルスや HIV)

とは大きく異なっている。 HTLV-1 感染リンパ球では、ウイルス関連抗原(env、gag、pol、p40tax、p27rex)が発現し、

これらの抗原に対して、キャリアの生体内では T 細胞性免疫応答が機能し、特異抗体と T 細胞の免

疫応答が絶えることなく起こっている。 一方、HTLV-1 感染リンパ球では、p40tax の作用により細胞遺伝子が活性化されて増殖するが、

この増殖反応を繰り返すうちにTリンパ球が、がん化してATLになる機序が考えられている。また、

近年 HTLV-1 ゲノムのマイナス鎖にその存在が認識されるようになった HBZ 遺伝子は、全ての ATL細胞で発現していることや HBZ トランスジェニックマウスが ATL や HAM に似た病態を示すこと

から、これらの HTLV-1 関連疾患の責任遺伝子であることが推測されている。一般に HTLV-1 の初

感染から ATL の発症までには数十年の潜伏期間が想定されるが、上述の免疫応答が HTLV-1 感染リ

ンパ球を排除しつづけ ATL 発症を遅らせているものと考えられている。実際に、キャリアの体内で

は HTLV-1 プロウイルスを保有する T リンパ球が経時的に増減しており、特異免疫応答が機能して

いる。 Ⅲ HTLV-1 感染と特異的疾患 HTLV-1 は成人 T 細胞白血病(ATL)の原因ウイルスとして固定されたが、その後、ATL 以外の

複数疾患にも関係することが明らかになった。ATL よりも発症率は低いが、痙性脊髄麻痺の一病型

で HTLV-1 関連脊髄症(HAM、HTLV-1 associated myelopathy)は典型例である。その他、気管

支肺症、ぶどう膜炎、多発性筋炎、シェーグレン症候群、リウマチ様関節炎などの一部は HTLV-1

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の関与が考えられている。これらの疾患に共通していることは自己免疫疾患様の病態であることで

ある。一般に ATL 患者は HTLV-1 に対し免疫不応状態にあるが、その他の疾患では HTLV-1 に対し

て高免疫応答反応を示しており、発病の背景に免疫機序の関与が示唆されている。 Ⅳ HTLV-1 感染の診断 HTLV-1 が感染した個体は一定のウインドウ期間を過ぎると HTLV-1 に対する抗体が陽性となる

(ただし、母体からの移行抗体が残っている乳児期では未感染児でも抗体陽性となるので注意する)。

キャリアの末梢血液中には HTLV-1 プロウイルス保有リンパ球も循環しているが、感染細胞外に出

てくるウイルス粒子は殆どない。従って、HTLV-1 感染の診断には、HTLV-1 特異抗体を血清学的に

固定するか、末梢血リンパ球中の HTLV-1 プロウイルスを分離同定すればよい。 前者の血清学的方法には粒子凝集法(PA 法)、酵素免疫測定法(EIA 法)、蛍光抗体法(IF 法)、

ウエスタンンブロット法(WB 法)などがあり、それぞれの長所と短所を生かして使い分けている。

なお、EIA 法については、その変法である化学発光酵素免疫測定法(CLEIA 法)が使用されること

が多い。通常は、最初に PA 法や CLEIA 法など簡便な検査を先行させ、確認試験として WB 法など

を用いる。 後者のプロウイルスの固定には、感度良好な PCR(polymerase chain reaction)法がよく用いら

れる。 Ⅴ HTLV-1 感染の予防 HTLV-1 の自然感染の主流は授乳による母子感染である。HTLV-1 キャリアは無症候性で、治療の

必要性は無いが、後年に発症する ATL や HAM、その他の関連疾患のいずれも難治性であるとされ

ている。特に ATL は母子感染によってキャリアとなった人の中から発症するので、母子感染予防対

策を講ずる必要がある。母子感染は主に母乳の長期直接授乳でおこるので、HTLV-1 キャリアの母

親は母子感染予防のために直接授乳せずに人工栄養のみで育てること(完全人工栄養)を選択する

ことも考慮される。HTLV-1 母子感染のリスクを知った上で母乳を希望された場合の次善策として、

短期間(満 3 ヶ月まで)の授乳(短期母乳栄養)や母乳を搾乳し凍結解凍してから飲ませる方法(凍

結母乳栄養)もあるが、どの程度予防できるか大規模な調査では確かめられていない。 以上 HTLV-1 感染症の対策は、治療より予防することが有効かつ重要であり、これらの予防対策

が適切に実施されれば、ATL や他の HTLV-1 関連疾患は次世代では減少すると考えられている。

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第2章 HTLV-1、ATL、HAM の疫学

Ⅰ 臨床疫学的特徴 1980 年代に行われた全国実態調査によると、南西日本を中心に約 120 万人の HTLV-1 キャリア

(HTLV-1 抗体陽性者)が存在し、年間 700 人の ATL 患者が発生していた。その後、厚生労働科学

研究班が 2006~07 年に初回献血者を対象として HTLV-1 抗体陽性者の全国調査を行った結果、今

なお約 108 万人のキャリアが存在すると推定され、人口の高齢化に伴い ATL 患者はむしろ増加傾向

(年間約 1100 人)にあることがわかった。 ATL 患者は成人にのみ分布し、男/女比は患者数では約 1.2、推定発生率では 2.0 と男性で高い。

2009年の全国調査では、年齢分布のピークは 70歳前後にあり、患者年齢の中央値は 67歳であった。

ATL 患者に特徴的な既往歴は明らかでないが、家族歴には ATL やリンパ系腫瘍が少なからずみられ

る。ATL の発症は、主原因である HTLV-1 以外に内的要因として HLA 型との関連性が注目されて

おり、HAM と対比させながらその機序が検討されつつある。 脊髄の炎症・変性により痙性慢性や膀胱直腸障害を来す疾患である HAM の有病率は、1990 年の

全国調査によると、キャリア 10 万人当たり 70 人前後と報告されており、1998 年の全国調査では、

九州・沖縄・四国を中心に 1,400 余名の患者数が報告されている。2009 年の全国調査では、人口 10万人当たり 3 人程度の患者数が推定され、男/女比が 0.4 と女性に多く発症する。 園田らは ATL を好発させる HLA 遺伝系統は HTLV-1 に対する免疫応答が低く、このウイルスを

排除する機能が弱いことを明らかにした。さらに、南九州の日本人に多い HLA ハプロタイプにおい

て ATL が好発すること、本州の日本人に多い HLA ハプロタイプにおいては HAM が高率に認めら

れていることが明らかになった。 (注:HLA ハプロタイプとは、親から子へと同一染色体上で一塊になって遺伝する HLA の組合せ

の型のことをいう。免疫学的に見た一人一人の個性の基となる。) Ⅱ 地理病理的特徴 1980~90年代の全国実態調査においてATL患者の半分以上は九州地方で発見され、しかも東京、

名古屋、大阪などの大都市部で観察される患者の 90%以上は南西日本の ATL 好発地域からの移動

者で占められていた。また、HTLV-1 キャリアの地理分布と ATL 患者のそれとが一致した。1990年の HAM の全国調査でも同様の傾向が認められていた。 ところが、2006~07 年の HTLV-1 抗体陽性者全国調査の結果、献血者における HTLV-1 抗体陽性

者数の地域別割合は、九州地方(沖縄を含む)が 1985 年の調査児の 51%から 44%に減少していた

が、関東では 11%から 18%に増加していた。これは、感染が南西日本から他の地域、特に大都市圏

に拡散している可能性を示唆していると考えられた。2009 年の HAM 全国調査でも、東京や大阪な

どの大都市で患者が増加し、九州地方に匹敵するほどになっている。 Ⅲ 感染経路 ATL 好発地における断片的調査を蓄積していくと HTLV-1 キャリアの分布には際立った特性が観

察される。それは高年齢群(50 歳以上)におけるキャリア率が著しく上昇することと、加齢ととも

に女性のキャリア率が男性のそれに比べて著しく高くなることである。さらに、母子間と夫婦間な

どのキャリアの家族内集積性も特異的である。このような疫学的知見から、HTLV-1 の主な自然感

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染経路として母子間の垂直感染と男女間の水平感染(主に男性から女性への性行為感染)があげら

れる。 母子間の垂直感染は ATL の発症にも結びつく可能性がある重要な感染経路と考えられ、それは主

に出生後の授乳、一部には子宮内や分娩時に起こることが示唆されている。従って、母親からの

HTLV-1 曝露は生後 1~2 年までと考えるべきで、実際同一個体から経時的に収集された血清を用い

た調査によると、ほとんどの子どもの抗 HTLV-1 抗体は 3 歳までに陽転化していることが示唆され

た。 母子感染の様相を詳しく検査していくと、HTLV-1 の易感染群の存在が示唆された。まず、母体

内に存在する HTLV-1 ウイルス量(感染 T 細胞の量)に起因するものが考えられ、ウイルス量が著

しく多かった母親では、HTLV-1 に児が感染する率が高いと推察された。また、感染危険度は授乳

の形態(授乳期間や授乳の量)にも強く関連していると考えられる。1990 年代の調査によると、中

高年層では人工乳の普及とも並行して平均授乳期間が経年的に著しく短縮していた。当然のことな

がら、それに伴って平均総授乳量も近年減少してきたと考えられ、HTLV-1 キャリア数の自然減に

繋がったと考えられる。 一方、HTLV-1 は性行為を介して男女間で自然感染する。しかも、夫婦間における HTLV-1 キャ

リア分布からみても明らかなように、主として夫から妻への一方通行的な感染である可能性が大き

い。高年齢群(50 歳以上)におけるキャリア率の男女差(女>男)も、男から女への一方通行的感

染経路で説明され得る。HTLV-1 の夫婦間感染後に ATL が発症したという報告はまだないが、それ

が次世代への垂直感染(母子感染)につながっていく可能性があるので、その点まで考慮すると重

要な感染経路となる。 Ⅳ 将来予測 1980 年代、わが国には HTLV-1 キャリアが約 120 万人、その中から ATL 患者が年間約 700 例発

生していると推定された。しかし、2002 年の人口動態統計によると ATL による死亡数は約 1,100名であった。これは 20 年前の約 1.5 倍になっている。ATL は主に 50 歳以上のキャリアに発症する

疾患であるので、今後も人口の高齢化と共に ATL 患者数は増加する可能性がある。 横断調査によると若年群で HTLV-1 のキャリア率が著しく低下しているが、その主な理由として、

乳児栄養方法を含めた近年の環境条件が HTLV-1 の感染の可能性を下げる方向に変動してきたこと

(出生コホート効果)があげられる。つまり、現時点で観察されるキャリア率の年齢による変動は

出生時代の影響を強く受けている可能性が大きい。言いかえると、HTLV-1 キャリア率を高率に維

持してきた ATL 好発地域の集団の場合、過去の自然感染率が極めて高かったのではないかと推測さ

れる。従って、母子感染率が、感染予防対策をとらなかった場合に近年 15~20%に下がり、予防対

策もさらに進展すると、ATL 好発地域の住民においてさえも、今後2世代(40~50 年)を経れば

HTLV-1 キャリア率が全国並の 0.1%以下に減数していくことになる可能性がある。しかも、HTLV-1キャリアの多い 50 歳以上の集団が減数する 20 年後には、ATL の発生率は激減するものと推測され

る。 しかしながら、この 20 年間の各種データから推測すると、HTLV-1 キャリアを含む人口の大都市

圏への移動が予想以上に起こっており、結果として感染が大都市圏に拡散している可能性がある。

このような現状を踏まえた母子感染予防対策を考慮することが重要であると考えられる。

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第3章 成人 T 細胞白血病・リンパ腫(ATL)について

Ⅰ 成人 T 細胞白血病・リンパ腫(ATL)の概念 HTLV-1 が T 細胞に感染し、40 年以上の長い潜伏期間を経て T 細胞を腫瘍化し、腫瘍化した T 細

胞が血中に多数出現すると ATL となるが、その腫瘍細胞が主にリンパ節で増殖すると悪性リンパ腫

(リンパ腫型)となるので、両者を一括して成人 T 細胞白血病・リンパ腫(ATL)と呼ぶ。通常の

白血病と異なり、脊髄が障害されることは少ないので、造血障害は少ない反面、T 細胞のがん化に

よって正常の T 細胞に依存する免疫力が著しく低下し、重篤な日和見感染症が高頻度に発生する。 日本国内には HTLV-1 に感染している無症候性のキャリアが約 108 万人いると推定されている。

以前は西南日本に偏在するものと認識されていたが、人口移動の影響もあり大都市圏にも拡散して

いる。これらのキャリアから、年間 1,000 人を超える者が ATL を発症しているが、発症者は主に母

子感染による感染者と考えられている。 Ⅱ ATL の臨床症状と診断 ATL は 40 歳以上の成人に好発し、小児にはほとんどみられない。(これまでの歳少年患者 19 歳、

最高齢患者は 94 歳:40 歳以上が約 96%)。患者数の男/女比は約 1.2 と男性に多い。2009 年の ATLの全国実態調査によると、患者年齢の中央値は 67 歳であり、1996 年~97 年の全国調査の結果(平

均 61 歳)と比べ、患者の高齢化が進んでいることが示されている。 ATL 患者では、リンパ節腫脹、肝脾脹、皮膚病変に加え、全身症状(発熱、全身倦怠感、食欲不

振など)を伴うことが多い。また、免疫不全による重篤な感染症(特に肺感染症が多い)や高カル

シウム血症による意識障害で救急病院に搬送されることもある。 ATL は臨床症状と予後因子解析の結果から急性型、リンパ腫型、慢性型、くすぶり型に大別され、

前二者は悪性度が高い。ATL の診断は臨床像、血液像、抗 HTLV-1 抗体検査などを組み合わせて行

われる。急性型では血液検査で核の分葉、切れ込みなどの変形の強い特徴的な ATL 細胞が確認され

ると診断につながる。リンパ腫型ではリンパ節の生検により悪性リンパ腫の診断がつけられ、免疫

組織化学染色で腫瘍細胞が T 細胞起源であることを確認する。貧血や血小板減少などの造血障害が

少ない一方、生化学検査では低蛋白血症や血清中の LDH、Ca、可溶性インターロイキン-2 受容体

の上昇を呈する者が多い。T 細胞機能不全を反映して、ツベルクリン反応は殆どの例で陰性である。

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表1 ATL の病型と主な症状 全身症状 急性型 リンパ腫型 慢性型 くすぶり型

全身症状 (発熱、倦怠感)

多い 少ない なし なし

異常リンパ球 主症状 少ない 多い 少ない 花びら様細胞 多い なし 時々 時々 リンパ節腫脹 2~3割 主症状 様々 なし 肝脾脹 多い 中等度 様々 なし 高カルシウム血症 1割以下 なし なし なし 皮膚病変 多い 少ない なし なし Ⅲ ATL の治療と予後 種々のリンパ系腫瘍の中でも ATL は治療の難しい疾患の一つである。高齢者に多く、また多臓器

への浸潤傾向、薬剤耐性、免疫不全が強いことが、他の腫瘍と比べて予後不良な要因とされている。

最近では、強力な抗がん剤併用療法、造血幹細胞移植療法や分子標的治療薬などによる効果的な治

療法の開発が進められている。特に、前処理の強度を減らして移植した細胞が発揮する抗白血病免

疫効果に期待するいわゆるミニ同種幹細胞移植や分子標的治療薬の一つである抗CCR-4抗体による

治療が有効と言う報告もされている。 これまで急性型/リンパ腫型 ATL の生存きかんが 1 年以内、5 年生存率も約 10%と言われてきた

が、最近の報告による生存期間中央値は急性型 11 ヶ月、リンパ腫型 20 ヶ月、慢性型 24 ヶ月、くす

ぶり型 3 年以上と、治療成績は改善している。しかし、依然として、他の白血病・リンパ腫と比べ

て予後不良である。主な死因は腫瘍死か感染症である。

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第4章 HTLV-1 抗体検査について

Ⅰ 検査法の種類 HTLV-1 感染の有無を検査する方法には、抗体検査、抗原検査、DNA 検査の3種類があり、この

うち手技が簡便で判定の容易な血清中の抗体検査が広く行われている。 HTLV-1 の感染が成立すると、宿主のリンパ球のゲノムに HTLV-1 のプロウイルスが組み込まれ、

生体内で再感染を繰り返しながら免疫系を刺激する。その結果、生体内ではウイルスと抗体が共存

する状態が生涯にわたり持続する。従って、抗体陽性者は HTLV-1 キャリアとみなすことができる

ため、抗体検査は実用性が高い。注意すべき点としては、感染後まもなくはウインドウ期間として

抗体陰性(偽陰性)となること、そして経胎盤移行抗体が残っている乳児期では感染していなくて

も抗体陽性(偽陽性)となることである。 1)粒子凝集(PA)法 PA 法は、検体のマススクリーニングのために開発されたため、操作が容易で大量処理ができ感度

も高い。しかし、低力価陽性検体の中には偽陽性が含まれることがあり得るので確認検査が必要で

ある。

2)酵素免疫測定(EIA)法

EIA 法は判定が客観的なうえ、操作が容易で大量処理もできる。しかし、この方法もマススクリ

ーニング用に開発されたため、カットオフ指数が 1~3 前後の検体や自己抗体陽性者の中には、非特

異的反応による偽陽性がみられる。特に、キットの種類によって特異度が若干異なるので、注意す

る。 化学発光酵素免疫測定法(CLEIA)法も EIA 法の一種で、酵素基質として酵素で分解されると科

学発行する物質を用いることを除くと、一般的な EIA 法と同じである。

3)蛍光抗体(IF)法 IF 法は特異性が高いため確認試験用に用いられるが、細胞株の継代培養が必要であり、判定に熟

練も要求されるため、一般的に行うことは難しい。 4)ウエスタンブロット(WB)法による確定検査 WB 法は、ウイルスの構成蛋白それぞれに対する抗体を検出できるため、特異度が非常に高く、

確認検査によく利用されている。WHO の HTLV-1 の判定基準に照らし合わせて陽性と判断された

場合には、抗体陽性(キャリア)と確認することができる。スクリーニング検査において抗体陽性

であっても、確定検査において陰性と判断された場合には、抗体陰性と考えられる。しかし、WB法で判定保留となることもあり、その場合は、陽性か陰性か判断することができない。 5)DNA 検査法 Polymerase chain reaction(PCR)法は、HTLV-1 プロウイルス DNA の断片を DNA ポリメラー

ゼによって増幅し検出する方法である。試料 DNA の変性、増幅した DNA の領域をはさむ2つのプ

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ライマーのアニーリング、耐熱性 DNA ポリメラーゼによる DNA の伸長の各ステップが繰り返され

ると、DNA 断片は理論上 20 回のサイクルで 100 万倍に増幅される。増幅された DNA 断片は、ゲ

ル電気泳動にかけた後にエチジウムブロマイド染色するか、サザンブロット法による検出する。 2対のプライマーセットを組み合わせた nested PCR 法は、2段増幅によりさらに感度を高めた

者である。 リアルタイム PCR 法は、DNA 断片の増幅とその検出を同時に行うことで、迅速性と定量性に優

れた検査法である。最近ウイルス量の多いキャリアでは ATL の発症のリスクが高いことが分かって

きており、本法はその意味でも重要性を増している。 Ⅱ 検査の進め方と結果の解釈 HTLV-1 に対して通常行われている検査の殆どは抗体検査であり、上述の様々な方法が開発され

たが、それぞれ長所と短所があり、単独の検査で真の抗体陽性者(キャリア)と真の陰性者(未感

染者)を確実に識別できる方法はまだない。従って、各検査法の特徴を熟知した上で、検査の目的

に応じた組合せを選択する必要がある。

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第5章 HTLV-1 母子感染の予防法

Ⅰ HTLV-1 キャリア妊産婦の管理と留意点 HTLV-1 母子感染の主な感染経路は母乳と推定されている。このため、妊婦健診における

HTLV-1 抗体検査により、妊婦が HTLV-1 感染の状況について把握し、乳児への母乳の直接授乳

を制限することが母子感染防止に有効である。 仮に、妊婦に対して、丁寧な説明と十分な理解なしに HTLV-1 抗体検査を実施すれば、妊婦が

HTLV-1 キャリアであった場合に不安を抱く可能性があり、その後の適切な母子感染予防対策の

実行に障害となる危険性がある。 したがって、妊婦健診で HTLV-1 抗体検査を実施し、HTLV-1 キャリアと診断する可能性があ

る場合には、その検査の信頼度や ATL 等の HTLV-1 に起因する疾病に対する知識を習得して、妊

婦に十分にインフォームド・コンセプトを得た上で実施する必要がある。すなわち、医療従事者

は、HTLV-1 感染や ATL 全般について正しい知識を持つほか、妊婦への説明方法、キャリアの告

知法、指導法、授乳方法、児のフォローアップ方法を習得し、プライバシーの保持に努めなけれ

ばならない。さらに、実施に際して生じうる問題点への十分な対策を、医療的側面のみならず心

理的・社会的な側面からも立てておく必要がある。 Ⅱ.HTLV-1 抗体検査の進め方 妊婦健診における血液検査において、PA 法または EIA 法(CLEIA 法)によるスクリーニング検

査を実施する。実施時期は、スクリーニング検査が陽性であった場合に、出産までに精密検査や児

の栄養方法の検討等を行うことができるように30週頃までの妊婦健診の際に検査を行う。スクリ

ーニング検査の結果が陽性であった場合は、WB 法による確認検査を行う。 WB 法の結果が陽性であった場合は、妊婦が出産までに十分な状況を理解し、栄養方法を決定で

きる時期(妊娠 35 週頃)までに、説明することが必要である。妊娠初期に説明を行う場合は、妊婦

の精神状態を安定していないことがあり注意が必要である。 Ⅲ.スクリーニング検査時の説明 スクリーニング検査に際しては、妊婦健診での他の検査と同様に、産婦人科主治医はインフォー

ムド・コンセントを取得する。このときの説明の主な内容は以下の通りである。妊婦の健康状態や

妊婦の求めなどに応じて、追加で説明が必要となる場合がある。リーフレット等を用いて説明する

と効果的である。 Ⅳ.スクリーニング検査結果の説明 1)スクリーニング検査結果が陰性の場合

スクリーニング検査の結果が陰性の場合は、HTLV-1 に感染している可能性は低い。妊婦に速や

かに結果を伝える。

2)スクリーニング検査結果が陽性の場合 PA 法または EIA 法(CLEIA 法)によるスクリーニング検査結果が陽性となっても、直ちに感染

しているとは判断できず、確認検査(WB 法)が必要である。これは、偽陽性があるためである。

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【資料7】

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ただし、WB 法による確認検査を行っても、感染しているかどうか分からない場合(判定保留)が

ある。判定保留の頻度は、10~20%と言われている。 このときの説明の主な内容は、スクリーニング検査前の説明の内容に加え、以下のとおりである。

妊婦の健康状態や妊婦の求めなどに応じて、追加で説明が必要となる場合がある。 Ⅴ.確認検査結果の説明 1)確認検査結果が陰性の場合

WB 法による確認検査の結果が陰性の場合は、HTLV-1 に感染している可能性は低い。妊婦に速

やかに結果を伝える。 2)確認検査結果が陽性の場合(HTLV-1 感染の妊婦への説明)

WB 法による確認検査の結果が陽性の場合は、HTLV-1 に感染している可能性は高く、HTLV-1キャリアとして対応する必要がある。HTLV-1 キャリアの説明は本人のみ行うことを原則とし、

本人からの希望があれば、夫や家族にも説明する。説明の時期は、キャリア妊婦が十分に状況を

理解し、授乳方法を決定できる妊娠 35 週頃までに行う。リーフレット等を使って説明するとより

効果的である。説明の内容は、スクリーニング検査前の説明の内容に加えて、以下の通りである。

妊婦の健康状態や妊婦の求めに応じて、追加で説明が必要となる場合がある。 なお、妊婦自身の健康管理については、自治体で設置している保健所などの相談窓口やキャリ

ア外来(26 ページ参照)を紹介することが望ましい。 また、キャリア妊婦へのカウンセリングについては、平成 21 年度厚生労働科学研究「HTLV-1

の母子感染予防に関する研究」(主任研究者:齊藤滋)報告書の「HTLV-1 キャリアのカウンセリ

ングの進め方とポイント」を参考に対応する。

3)確認検査の結果が判定保留の場合 WB 法による確認検査を行っても判定保留の場合は、以下の内容を説明する。説明を行った

上で、授乳を制限するかどうかは妊婦の意思を尊重する。一方的に人工乳を勧めることは避け

るべきである。リーフレット等を使用して説明すると効果的である。妊婦の健康状態や妊婦の

求めに応じて、追加で説明が必要となる場合がある。

①スクリーニング検査結果が陽性であったが、HTLV-1 に感染しているかどうか分から

ない。さらに精密検査(確認検査)を行う必要がある。 ②精密検査は WB 法で行うが、この方法でも感染しているかどうか分からない場合が

ある。

①長期間の母乳による育児によって、赤ちゃんが感染する可能性は 15%~20% ②授乳方法を工夫することによって、感染の可能性を低くすることができが、母乳を

授乳しなくても約 3%は感染する可能性が残る。 ③わからないこと、心配なこと、相談したいことがあれば、いつでもカウンセリング

の受け入れがある。

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【資料7】

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Ⅵ.キャリア妊婦に対する告知 産婦人科主治医は精密検査により抗 HTLV-1 抗体陽性と判定された妊婦に対して、妊娠 35 週頃

HTLV-1 のキャリアであることを告知する。母乳による哺育を行うと子どもに HTLV-1 をうつす可

能性が高いことを説明し、母乳感染の危険性を減らす方法として、①完全人工栄養、②凍結母乳栄

養、③短期母乳栄養があること、3つの方法のうち、最も有効な方法は①完全人工栄養であること

を説明する。いずれの選択をした場合であっても、そのサポートをする旨を伝える。 〔注〕 (1)告知はあくまで妊婦本人に行う。夫や家族には直接説明しないこと。ただし、本人が家族と

相談している場合は例外。家族に相談するか否かは本人が決める。医療関係者は本人が相談し

た範囲を把握しておく。(診療記録に記載しておく。) (2)スクリーニング検査陽性例の確認検査の時期を妊娠中期(妊娠 28 週頃)とし、告知を妊娠後

期(35 週頃)としたのは、告知によるショックで万が一早産になっても安全な時期を考えて告知を

行うということである。また、その他の原因で告知前に早産になっても母乳抑制の指導ができるよ

うに妊娠中期にスクリーニングしておくということである。

①ATL(成人 T 細胞白血病)とはなにか ②HTLV-1 キャリアの意味 ③妊婦自身がキャリアであること ④出産後、母乳を与えた場合の児への影響 ⑤出産後の具体的な母親への対応(母乳分泌抑制)など

① 確認検査結果は、判定保留であり、HTLV-1 キャリアとは言えない。 ② 判定保留の中には、一部 HTLV-1 キャリアもいるが、全く感染していない人もいる。 ③ 判定保留の中で、どの程度 HTLV-1 キャリアがいるのか現状では不明である。 ④ 判定保留者の中に含まれる HTLV-1 キャリアから母乳を介した母子感染率については、

現在のところデータがない。 ⑤ PCR 法で調べる方法があるが、全額自己負担となる可能性が高い。

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【資料7】

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第 6 章 栄養方法の選択について

Ⅰ 栄養方法の選択に関する説明と留意点 HTLV-1 母子感染の経路としては、母乳を介する感染が最も関与していると言われているが、母

乳感染を予防する方法は、それぞれに特徴と留意点を有している。 また、HTLV-1 キャリアであるという説明を受けた妊婦は、自身の ATL 発症リスクなどの精神的

負担を担う可能性や時には家族を抱える危険性がある。一方、感染を低減させる対応などにより、

次世代への感染が予防できた場合には、安心感や充実感が得られる可能性がある。 HTLV-1 キャリアであるということは、妊婦本人だけでなく家族をも巻き込んだ大きな問題とな

ることがあり、栄養方法の選択について説明する場合は、説明の時期などについて十分な配慮が必

要である。 1)説明時期の目安と内容 ①妊娠期

確認検査において HTLV-1 抗体検査が陽性だった場合、キャリアであることの説明を受け、十

分に HTLV-1 母子感染予防の必要性についての理解が得られたことを確認した上で、栄養方法の

選択肢を掲示する。各栄養方法の特徴、実施方法、スケジュール、経済的負担などについて説明

する。 ②分娩、産褥期

退院時には、選択した栄養方法のスケジュールを確認し、退院後の相談先を説明する。産後検

診や乳幼児検診などの期間を通じて、状況把握に努め、相談などに応じる。 継続ケアについては、関連機関で連携のために共通の様式を用いるなどし、必要な支援や説明

が行われていることを確認していく。 ③説明する上での留意点

栄養方法の選択に関する説明については、それぞれの栄養方法の特徴を理解するとともに、妊

産婦が抱える心理的・社会的な背景などに配慮しながら、丁寧な情報提供を行い、妊産婦の理解

が得られるように努める。 栄養方法の選択については、妊産婦自身が意思決定できるような支援が大切であり、栄養方法

の選択が、母親の育児不安などの心理的悪影響を及ぼさないように配慮することが必要である。

そのため、妊産婦の理解や妊産婦の求めに応じて繰り返し説明を行うことが必要である。 また、妊産婦が決定した栄養方法について、継続的な支援が受けられるような体制を整備する

ことも重要である。 Ⅱ 母乳感染予防の基本的な考え方 HTLV-1 は細胞に強く存在したウイルスで、感染には細胞から細胞へ直接接触が必要である。従

って、母乳感染を遮断する方法として理論的には、①感染リンパ球の子どもへの移行を阻止する方

法(完全人工栄養)と②母乳中の感染リンパ球を不活化する方法(凍結母乳栄養他)の 2 つの方法

が考えられる。また、疫学調査の結果から授乳期間が短ければ感染率が低下することが分かってき

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【資料7】

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ており、③授乳期間を制限する方法(短期間母乳栄養)も選択肢となる。 Ⅲ 栄養方法の選択 1)完全人工栄養 母乳感染を防止する最も確実な方法である。母乳の制乳方法としては、母乳分泌抑制薬によって

抑制することができる。乳首を吸わせることによって再度母乳が出始めることがあるので、当分の

間(満 3 ヶ月くらい)は乳首を吸わせない方が安全である。それ以後も、母乳が出ているか出てい

ないか判断が難しい場合もあるので、乳首を吸わせることは、勧められない。 2)凍結母乳栄養 母乳を搾乳しその都度冷凍後(家庭用の冷蔵庫で 24 時間以上)、必要応じて解凍して、哺乳びん

で授乳する方法(凍結母乳栄養)である。理論的には、凍結にて母乳を処理することにより、感染

力を失わせることが可能であり、家庭で実施しやすい。しかし、急速冷凍では細胞が壊れにくく、

感染リンパ球が不活化されず、感染の危険性があるため、急速冷凍は避ける。母乳の栄養の利点を

概ね活かすことができるが、直接授乳させることができない点については、完全人工栄養と同じで

ある。 3)短期母乳栄養 満 3 ヶ月まで直接授乳を行い、その後人工栄養に切り替える方法である。 短期間の母乳栄養による感染率低下の要因としては、母乳感染に関係する母親側の要因として母

乳中に分泌される感染細胞の量、児側の要因として母親からの移行抗体、授乳期間などが考えられ

る。 短期母乳栄養の場合の授乳期間を設定するために必要な科学的根拠は十分蓄積されていない。ま

た、母乳の出具合は人によって個人差があることから、よく母乳が出ている状態で急に人工栄養に

変えることは難しいと思われる。 Ⅳ 人工栄養の問題点とその解決方法 ① 人工栄養を買う費用がかかる。 ② 感染症について

発展途上国では、人工栄養児は母乳栄養児に比べて様々な感染症に罹りやすいことが問題にな

るが、日本のような先進国ではその影響は極めて小さくなる。 いずれにしても、風邪の人に近づかない、人混みをさける、離乳を急がないなど赤ちゃんに対

する一般的な注意を守ることが大切である。 ③ 乳幼児突然死症候群(SIDS)について

SIDS は元気な赤ちゃんが、寝ているうちに突然亡くなってしまうという原因不明の病気である。

年間150人程度(出生児 7,200 人に 1 人)の発生があると言われている。 赤ちゃんの未熟性が原因と言われているが、育児環境にも関連があり、うつ伏せ寝、妊娠中の

喫煙、赤ちゃんの周囲での喫煙に加え、母乳以外の栄養方法が発生頻度を高くすることが知られ

ている。しかし、人工栄養でも母乳でも、うつ伏せ寝や周囲の喫煙を防ぐことによって危険性を

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【資料7】

Page 18: HTLV-1母子感染防止対策マニュアル€資7...HTLV-1母子感染防止対策マニュアル (案) 平成25年3月 宮崎県HTLV-1母子感染対策協議会 宮崎県

大きく減らすことができる。実際に外国では、うつ伏せ寝を辞めることで大幅に SIDS が減少し

ている。 ④ 母と子の絆について 母乳栄養を行うことは母と子の絆を強くするため重要である。人工栄養を選んだ場合、乳首か

ら直接おっぱいを与えることができないので、おっぱいを飲ませる充実感がない。このことが人

工栄養の欠点でもあり、母と子の絆は、母乳を与えられなくてもお母さんが子どもにしっかりと

関わることで強く結ばれていく。抱っこして、目を見つめ、語りかけ、子どもと触れある時間を

つくることが大切である。 ⑤ 周囲の人からどうして母乳を飲ませないのかと聞かれることがあり、返事に困ることがある。

本当のことを言えないのはつらいかもしれない。しかし、子どものために「母乳を与えない」

という犠牲を払って子どもへの愛情を示したのであるから、自信を持って返事をしてほしい。「出

ないのよ」とさらりと流すのも一つの方法である。

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【資料7】

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第7章 各関係機関の役割について Ⅰ 産科医療機関の役割 1)HTLV-1抗体検査についての説明 外来受診の妊婦に対して、HTLV-1に関するリーフレット等を活用しながら、HTLV-1の基礎知識、

母子感染の仕組み、HTLV-1抗体検査の必要性等について説明する。

2)HTLV-1抗体スクリーニング検査(一次検査 PA法、EIA法) 説明の上、同意を得られた妊婦に対してスクリーニング検査を実施する。

スクリーニング検査は、平成21年度より市町村が実施する妊婦健康診査(第1回目)の

一般検査項目の一つとして公費負担により実施している。

検査法は、従来から各医療機関で採用している手法で構わない。

3)HTLV-1抗体確定検査(二次検査 WB法)

一次検査の結果、陽性又は疑陽性と判定された妊婦に対して確定検査を実施する。

検査は従来どおり保険診療となる。 検査法は、一次検査とは異なるWB法で実施する。

4)結果の告知・栄養方法の選択などについて説明

原則として主治医から妊婦の心理状態等に十分配慮して、検査結果の告知を行う。

告知は妊婦本人に直接行う。(ただし、本人が家族の同席を望む場合を除く。) キャリア妊婦へは、HTLV-1に関するリーフレットまたは参考資料1等を活用しながら、以下の

事項等を説明する。

◇ HTLV-1について ◇ キャリアであることの意味 ◇ 栄養方法の選択(母子感染予防法)について ◇ キャリアの日常生活等について

告知により、発症に対する不安、育児への不安等を抱えるキャリア妊婦に対しては、可能

な範囲で相談対応する。また、困難なケースについては、 適宜、最寄りの保健所における保健指

導、カウンセリング等を紹介する。

参照:「Ⅳ県内保健所一覧、Ⅴキャリア外来診療機関一覧(25ページ)」

5)妊婦の自己決定(栄養方法の選択)

栄養方法の選択については、各栄養方法のメリット・デメリットについて『第6章 栄養方法の

選択について Ⅲ 栄養方法の選択』(13ページ)を参考にしながら説明する。妊婦がどのよう

な選択をしても、妊婦自らの意志による決定を推奨する。

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【資料7】

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6)児の管理等

キャリア妊婦から出生した新生児の大部分は感染しておらず、また、例え感染していたと

しても、新生児期を含む小児期にHTLV-1関連疾患を発症したり、周囲への感染源となった

りすることはない。したがって、児の取り扱いにあたって特別な配慮は不要であることを保

護者へ説明する。

7)産科医療機関から小児科医療機関へ 産科医療機関は1か月健診時に児の今後の健康管理について母親に説明・指導を行っている。

その際、児への感染の有無については、母体からの移行抗体の消退にかかる期間に個人差

があり、3歳頃までは母子感染の可能性があるとされているので、3歳以降に、かかりつけ

の小児科医と相談して、HTLV-1抗体検査を受けるよう指導する。

キャリア妊婦から出生した児については、3歳の時またはそれ以降にHTLV-Ⅰ抗体検査を受け、

児が感染している場合に、親から子どもへ適切な時期に説明がなされることが国より推奨さ

れている。

宮崎県内では、市町村で実施される3歳児健康診査の際などに、市町村がキャリアである

母親に対して、児のHTLV-1抗体検査の受検勧奨を行っている。

8)HTLV-1抗体検査結果の市町村への情報提供について

本県におけるキャリアの実態の把握及びキャリア妊婦の支援のために、抗体検査を実施した産科

医療機関から市町村へ検査結果の情報提供を行う。

確定検査の情報提供については、様式第1号にある「HTLV-1母子感染対策のための情報提供

に関する同意書」(22ページ)を妊婦の方に記入してもらい、同意が得られた妊婦の検査

結果を様式第2号「HTLV-1確定検査結果報告書(産科用)」(23ページ)にて、お住ま

いの市町村へ情報提供を行う。

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【資料7】

Page 21: HTLV-1母子感染防止対策マニュアル€資7...HTLV-1母子感染防止対策マニュアル (案) 平成25年3月 宮崎県HTLV-1母子感染対策協議会 宮崎県

Ⅱ 小児科医療機関の役割 1)キャリア妊婦より出生した児の支援(児のフォローアップ) 母子感染の実態を把握するため、キャリア妊婦より出生した児のHTLV-1抗体検査を実施する。 キャリア妊婦より出生した児が対象となる。

宮崎県内では、市町村で実施される3歳児健康診査の際などに、市町村がキャリアの母親

に対して、児のHTLV-1抗体検査の受検勧奨を行っている。

対象者かどうかについては、居住地の市町村への電話照会により確認する。

(※市町村へ照会する場合は保護者の同意を確認してから行う。)

参照:「各市町村における担当窓口一覧(26ページ)」

2)HTLV-1抗体検査(3歳児)

一次検査の結果、陽性又は疑陽性と判定された児に対しては、確定検査を実施する。

検査法は、一次検査はPA法、確定検査はWB法で実施する。

3)結果の告知・3歳児のフォローアップの説明 原則として診察した医師から検査結果の告知を行う。告知により、発症に対する不安、育児

への不安等を抱える母親に対しては、可能な範囲で相談対応する。

また、困難なケースについては、適宜、最寄りの保健所における保健指導、カウンセリング

等を紹介する。

参照:「Ⅳ県内保健所一覧、Ⅴキャリア外来診療機関一覧(25ページ)」

4)HTLV-1抗体検査結果の市町村への情報提供について

本県におけるキャリアの実態の把握及び相談支援のために、抗体検査を実施した小児科医療機関

から市町村へ検査結果の情報提供を行う。

抗体検査の情報提供については、様式第3号にある「HTLV-1母子感染対策のための情報提供

に関する同意書」(22ページ)を保護者の方に記入してもらい、同意が得られた児の検査

結果を様式第4号「HTLV-1確定検査結果報告書(小児科用)」(24ページ)にて、お住

まいの市町村へ情報提供を行う。

21

【資料7】

Page 22: HTLV-1母子感染防止対策マニュアル€資7...HTLV-1母子感染防止対策マニュアル (案) 平成25年3月 宮崎県HTLV-1母子感染対策協議会 宮崎県

Ⅲ 保健所の役割 1)HTLV-1に関する相談窓口

キャリア妊婦やその家族等からのHTLV-1に関する相談について、助言・指導等を行う。

(参照:保健所における相談・検査窓口一覧 26ページ)

HTLV-1に関する恐怖や不安のある方について、プライバシーの保護等に十分配慮しなが

ら、保健指導・カウンセリング等を行う。

また、発症に関する不安が強い等、専門的な相談が必要な方については、キャリア外来診

療機関(参照:Ⅴ キャリア外来診療機関一覧 22ページ)を紹介する。

2)HTLV-1抗体検査の検査窓口

HTLV-1感染に不安がある方を対象に、HTLV-1抗体検査を実施する。検査は匿名、無料で

受けることができる。

検査については、原則事前予約が必要となるので、最寄りの保健所に検査日時等について

確認する。

(参照:保健所における相談・検査窓口一覧 22ページ)

(※宮崎市保健所は検査の実施はしていない。H25.3.31現在)

Ⅳ 市町村の役割 1)妊婦への妊婦健診におけるHTLV-1抗体検査の普及啓発、受検勧奨

母子健康手帳交付の際に、妊婦健診におけるHTLV-1抗体検査について説明し、妊婦健診

及びHTLV-1抗体検査の受検勧奨を行う。

また、キャリア妊婦等からHTLV-1について相談があった場合は、可能な範囲で相談対応す

る。困難なケースについては、適宜、最寄りの保健所における保健指導、カウンセリング等を

紹介する。

2)キャリア妊婦及び出生した児の台帳等による管理

産科医療機関より情報提供のあった妊婦の抗体検査結果について、台帳等で管理を行い、

キャリア妊婦より生まれた児が3歳児健診等で来所した際に、小児科医療機関におけるHTLV-1抗体検査の受検勧奨ができるようにする。

また、小児科医療機関より情報提供のあった児の抗体検査結果についても台帳等で管理を

行い、相談支援等に繋げる。

なお、妊婦及び児の抗体検査結果については、県のHTLV-1母子感染の動向を分析するた

めに、県に1回/年、報告する。

3)キャリアの母親から出生した児の抗体検査の受検勧奨

キャリア妊婦から生まれた児が、市町村における3歳児健診等で来所した際に、小児科医

療機関における児のHTLV-Ⅰ抗体検査の受検勧奨を行う。

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【資料7】

Page 23: HTLV-1母子感染防止対策マニュアル€資7...HTLV-1母子感染防止対策マニュアル (案) 平成25年3月 宮崎県HTLV-1母子感染対策協議会 宮崎県

HTLV-1母子感染防止対策手順

~産婦人科における抗体検査から小児科紹介までの流れ~

妊婦健診におけるHTLV-1抗体スクリーニング検査

陽性 陰性判定保留

注)の検査費用は公費負担

市町村へ結果報告

対象外

陽性 陰性

確定検査(WB法)妊娠第28週頃

市町村へ結果報告

結果の告知・ATL・栄養方法の選択などについて説明

妊婦の自己決定

妊娠第35週頃

人工栄養 母乳栄養(短期・凍結)

母乳分泌抑制を希望した場合

母乳栄養を希望した場合

母乳分泌抑制

児の抗体検査について説明

3歳児健診等で、

児の抗体検査の受検勧奨

市町村

小児科

3歳児以降にて児のHTLV-1抗体検査(保険診療として一次・確定検査)

全ての小児科にて検査対応

市町村へ結果報告

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【資料7】

Page 24: HTLV-1母子感染防止対策マニュアル€資7...HTLV-1母子感染防止対策マニュアル (案) 平成25年3月 宮崎県HTLV-1母子感染対策協議会 宮崎県

宮崎県内の妊婦健康診査における

HTLV-1母子感染防止対策の相談体制

  連携

届出・説明・勧奨

相談・情報提供

妊婦

市町村

・母子健康手帳交付時における抗体検査説明・受検

勧奨

・妊婦健診におけるHTLV‐1スクリーニング抗体検査

の公費負担

・キャリア妊婦及び出生した児の台帳等による管理

・キャリア妊婦から出生した児の抗体検査の受検勧

検査

受診

小児科医療機関

児のHTLV 1抗体検査

必要時紹介

保健所

・HTLV‐1母子感染に関する相談

及び抗体検査の窓口

・キャリアに関するカウンセリング

・キャリア外来診療機関への紹介

産科医療機関

(妊婦健診実施医療機関)

・HTLV‐1抗体検査の説明

・HTLV‐1抗体スクリーニング検査実施

・スクリーニング検査の陽性者に精密検

査の必要性を説明し、確認検査を実施

・妊婦への検査結果を説明

・陽性者に対するカウンセリング

(授乳について、児の抗体検査の説明

等)

・必要に応じ、専門医療機関及び各相談

機関の紹介

・検査結果を市町村へ報告

キャリア外来診療機関

(6か所)

・HTLV‐1キャリアを対象とした専門外来

(内科)

・必要に応じ、専門医療機関へ紹介

・児のHTLV‐1抗体検査

・抗体陽性が判明した児の母親

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【資料7】

Page 25: HTLV-1母子感染防止対策マニュアル€資7...HTLV-1母子感染防止対策マニュアル (案) 平成25年3月 宮崎県HTLV-1母子感染対策協議会 宮崎県

ⅤHTLV-1検査、カウンセリング機関

◇県内保健所等

保 健 所 名 所 在 地 電 話 番 号

中 央 保 健 所 宮崎市霧島 1-1-2 0985-28-2111

日 南 保 健 所 日南市吾田西 1-5-10 0987-23-3141

都 城 保 健 所 都城市上川東 3-14-3 0986-23-4504

小 林 保 健 所 小林市大字堤字金鳥居 3020-13 0984-23-3118

高 鍋 保 健 所 児湯郡高鍋町大字蚊口浦 5120-1 0983-22-1330

日 向 保 健 所 日向市北町 2-16 0982-52-5101

延 岡 保 健 所 延岡市大貫町 1-2840 0982-33-5373

高 千 穂 保 健 所 西臼杵郡高千穂町大字三田井 1086-1 0982-72-2168

宮 崎 市 保 健 所 宮崎市宮崎駅東 1-6-2 0985-29-5286

県 庁 健 康 増 進 課 宮崎市橘通東 2-10-1 0985-44-2621

宮 崎 県 医 師 会 宮崎市和知川原 1-101 0985-22-5118

※現在宮崎市保健所での検査は行っておりません。

◇キャリア外来診療機関 下記の医療機関(内科)において、キャリアを対象とした専門外来を開設しています。 診療日・時間等については、事前に医療機関へ御確認ください。

医 療 機 関 名 所 在 地 電 話 番 号

宮崎大学医学部附属病院 清武町木原 5200 0985-85-1510

古 賀 総 合 病 院 宮崎市池内町数太木 1749-1 0985-39-8888

県 立 宮 崎 病 院 宮崎市北高松町 5-30 0985-24-4181

国 立 病 院 機 構 都 城 病 院 都城市祝吉町 5033-1 0986-23-4111

県 立 日 南 病 院 日南市木山 1-9-5 0987-23-3111

県 立 延 岡 病 院 延岡市新小路 2-1-10 0982-32-6181

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【資料7】

Page 26: HTLV-1母子感染防止対策マニュアル€資7...HTLV-1母子感染防止対策マニュアル (案) 平成25年3月 宮崎県HTLV-1母子感染対策協議会 宮崎県

<各市町村 担当課の連絡先>

市町村名 担当部署 電話番号 FAX番号 住所

宮崎市 健康支援課

親子の健康係

0985-29-5286 0985-29-5208 宮崎市宮崎駅東1丁目6-2

都城市 こども課 0986-23-2684 0986-23-2788 都城市姫城町6街区21号

延岡市 健康増進課

健康づくり第2係

0982-22-7014 0982-22-1347 延岡市東本小路2-1

日南市 こども課 こども健康係 0987-31-1131 0987-31-0373 日南市中央通1丁目1番地

小林市 健康推進課 0984-23-0323 0984-23-0325 小林市真方89番地1

日向市 こども課 子育て支援係 0982-52-2111 0982-56-1423 日向市本町10-5

串間市 福祉保健課

子育て支援係

0987-72-0333 0987-72-0310 串間市大字西方9365-8

西都市 健康管理課 健康推進係 0983-43-1146 0983-41-1382 西都市聖陵町2丁目1番地

えびの市 健康保険課 市民健康係 0984-35-1111 0984-35-0401 えびの市大字栗下1292

三股町 町民保健課 健康推進係 0986-52-8481 0986-52-1056 三股町大字樺山3902-2

高原町 ほほえみ館

健康づくり推進係

0984-42-4820 0984-42-4974 高原町大字西麓360番地1

国富町 保健介護課 健康推進課 0985-75-3553 0985-75-3769 国富町大字本庄4991

綾町 福祉保健課 健康増進係 0985-77-0195 0985-77-0338 綾町大字南俣553-2

高鍋町 健康福祉課 健康推進係 0983-23-2323 0983-23-2344 高鍋町大字北高鍋5139

新富町 いきいき健康課

保健予防グループ

0983-33-6059 0983-33-4862 新富町大字上富田7491

西米良村 福祉健康課

子育て支援グループ

0983-36-1114 0983-36-1540 西米良村大字村所66-1

木城町 福祉保健課 衛生係 0983-32-4010 0983-32-2727 木城町椎木2148-1

川南町 健康福祉課

健康推進係

0983-27-8009 0983-21-3067 川南町大字川南13680-1

都農町 健康管理センター 0983-25-1008 0983-25-1139 都農町大字川北5164

門川町 町民課 健康づくり係 0982-63-1140 0982-68-1010 門川町本町1丁目1番地

美郷町 健康福祉課 南郷支所

健康づくり担当

0982-66-3610 0982-68-2008 東臼杵郡美郷町西郷区田代

1番地

諸塚村 住民福祉課 衛生係 0982-65-1119 0982-65-0032 諸塚村大字家代2683

椎葉村 福祉保健課

健康づくりグループ

0982-68-7510 0982-68-7511 椎葉村大字下福良1762-1

高千穂町 保健福祉総合センター

げんき荘 保健予防係

0982-73-1717 0982-73-1707 高千穂町大字三田井435-1

日之影町 保健センター

健康づくり係

0982-73-7521 0982-73-7543 日之影町大字七折9074-3

五ヶ瀬町 住民福祉課

健康増進グループ

0982-82-1702 0982-82-1721 五ヶ瀬町大字三ケ所1670

26

【資料7】

Page 27: HTLV-1母子感染防止対策マニュアル€資7...HTLV-1母子感染防止対策マニュアル (案) 平成25年3月 宮崎県HTLV-1母子感染対策協議会 宮崎県

<様式第 1 号>

HTLV-1抗体検査における確定検査を受検された妊婦の方へ

HTLV-1母子感染対策

のための情報提供に関する同意書 ※同意する、しないにかかわらず、ご記入ください。 各関係機関の長 殿

関係機関が連携して、本県の HTLV-1 母子感染に関する実態の把握及び確定検

査陽性となった妊婦の方への支援(授乳方法の選択についての指導や相談等)の

ために、検査の結果を産科医療機関(確定検査実施医療機関)から、市町村母子

保健担当課へ通知することについて

同意します 同意しません (いずれかに○をつけてください)

住所地: 市・町・村 里帰り先: 市・町・村

平成 年 月 日 妊婦住所

妊婦署名 印

27

【資料7】

Page 28: HTLV-1母子感染防止対策マニュアル€資7...HTLV-1母子感染防止対策マニュアル (案) 平成25年3月 宮崎県HTLV-1母子感染対策協議会 宮崎県

<様式第2号>

     HTLV-1確定検査結果報告書(産科用)

住   所

医療機関名

電話番号

医 師 名

市町村における支援等お願いします。

なお、今回の情報提供につきましては、御本人から同意を得ております。

記入日 平成   年   月   日

妊婦氏名

住所

電話番号 分娩予定日 年 月 日

HTLV-1抗体スクリーニング検査において陽性であった妊婦への、確定検査の結果は以下のとおりです。

産科医療機関 → 市町村母子保健担当課

電話番号 分娩予定日 年 月 日

検査実施日 平成   年   月   日

検査方法

結果

支援にあたって

特記事項

     WB法      その他(         ) 法

     陰性       判定保留       陽性

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【資料7】

Page 29: HTLV-1母子感染防止対策マニュアル€資7...HTLV-1母子感染防止対策マニュアル (案) 平成25年3月 宮崎県HTLV-1母子感染対策協議会 宮崎県

<様式第 号>

(小児科→市町村)

3歳以降のお子さんが HTLV-1抗体検査を受検された保護者の方へ

HTLV-1母子感染対策

のための情報提供に関する同意書

※同意する、しないにかかわらず、ご記入ください。

各関係機関の長 殿

関係機関が連携して、本県の HTLV-1 母子感染に関する実態の把握及び相談支

援等のために、検査の結果を小児科医療機関から、市町村母子保健担当課へ通知

することについて

同意します 同意しません (いずれかに○をつけてください)

住所地: 市・町・村

平成 年 月 日

住所

保護者署名 印

児の名前

29

【資料7】

Page 30: HTLV-1母子感染防止対策マニュアル€資7...HTLV-1母子感染防止対策マニュアル (案) 平成25年3月 宮崎県HTLV-1母子感染対策協議会 宮崎県

<様式第  号>

   HTLV-1抗体検査結果報告書(小児科用)

住   所

医療機関名

電話番号

医 師 名

3歳以降のお子さんのHTLV-1抗体検査の結果は以下のとおりです。

市町村における支援等お願いします。

なお、今回の情報提供につきましては、保護者の方より同意を得ております。

記入日 平成   年   月   日

男・女生年月日 平成   年 月 日

お 名 前

住 所

お子様

お母様 電話番号

小児科医療機関 → 市町村母子保健担当課

<抗体一次検査>

平成   年   月   日

結果

<抗体確定検査>

平成   年   月   日

結果

検査実施日

検査方法  WB法       その他(           ) 法

     陰性       判定保留       陽性

支援にあたっての特記事項

 PA法       その他(           ) 法

     陰性       判定保留       陽性

検査実施日

検査方法

30

【資料7】

Page 31: HTLV-1母子感染防止対策マニュアル€資7...HTLV-1母子感染防止対策マニュアル (案) 平成25年3月 宮崎県HTLV-1母子感染対策協議会 宮崎県

ATL と HTLV-1 の Q&A

1 ウイルス感染 Q:HTLV-1 とは?HTLV-1 キャリアとは? A:HTLV-1 は、Human T-cell Leukemia Virus type I(ヒト T 細胞白血病ウイルス-I 型)の略称

です。主に血液細胞(T リンパ球)に感染するウイルスです。一度感染してしまうとウイルス

を持ち続けることになりますが、感染しても発病する(病気になる)人はごく一部で、しかも

発病までには長い潜伏期間があります。このようにこのウイルスを無症状で持続的に保有して

いる人を HTLV-1 キャリアと呼びます。 Q:HTLV-1 キャリアは全国に何人くらいいるのですか? A:現在約 108 万人、つまり日本の人口の約 1%にあたる数の HTLV-1 キャリアがいると推測され

ています。以前よりキャリアの多い西南日本の地域は減少傾向ですが、東京などの大都市圏で

はキャリアや ATL 患者の数が増加しています。 Q:HTLV-1 はどのようにして感染するのですか? A:人から人へは次の3つの経路で感染します。 ①母子感染(主に母乳を介して) 主に母乳中に含まれる HTLV-1 感染細胞が原因で、キャリアである母親からその子ども(乳児

期)に感染します。 ②性交渉による感染(主に夫婦間感染) 主にキャリアの男性(夫)から女性(妻)に感染しますが、稀に女性から男性への感染もあり

ます。 ③輸血感染 キャリアから輸血を受けることで感染します。1986 年以降は献血者に対して赤十字血液センタ

ーでの検査が行われ、HTLV-1 感染血液が除外されるようになったため、輸血感染は無くなっ

たと考えられています。 Q:HTLV-1 感染でどのような病気になるのですか? A:HTLV-1 感染によって起こる病気を HTLV-1 関連疾患と呼んでいます。HTLV-1 関連疾患は、成

人 T 細胞白血病(ATL)、HTLV-1 関連脊髄症(HAM:ハム)などがあります。HTLV-1 関連疾

患を予防する方法はまだ分かっていません。しかし、発症するのはキャリアのごく一部であり、

多くのキャリアは生涯発病することなく過ごされています。 Q:HAM(ハム)とはどのような病気ですか? A:HAM(HTLV-1 associated myelopathy)は HTLV-1 関連脊髄症の略称です。母乳感染による

キャリアだけでなく輸血や性交渉で感染したキャリアでも発症することがあります。30~50 歳

31

【資料7】

Page 32: HTLV-1母子感染防止対策マニュアル€資7...HTLV-1母子感染防止対策マニュアル (案) 平成25年3月 宮崎県HTLV-1母子感染対策協議会 宮崎県

代の発症が多く、年間キャリア数万人に 1 人程度発症すると推奨されています。歩行障害(歩

行時の足のもつれ、足の脱力感)や排尿障害(尿の回数が多くなったり、逆に尿の出が悪くな

ったりなど)、排便障害(便をうまく出せないなど)が特徴です。 Q:このウイルスは、職場・学校・共同浴場・プールなどではうつりますか? A:このウイルスの感染にはキャリアの持つ感染T細胞が生きたままかなり大量に他の人の体に入

ることが必要である。単なる共同生活や、風呂場・プールでの感染はまず考える必要がない。 床屋のタオル・剃刀・バリカンなどについても同様。 Q:キスや唾液でうつりませんか? A:まったく可能性がないとは言えないが、唾液による感染はまずないと考えてよい。 Q:ウイルスに感染しているかどうかどうか調べてほしいのだが? A:ATL の症状、すなわち(a.全身倦怠感や発熱など、b.皮膚の赤く盛り上がった発疹、

c.リンパ節腫など)、が 1 ヶ月も治らないといった症状がまったくなければ、感染しているこ

とを知っても現在のところ実際上なんの利益も無い。調べてほしい場合は、かかりつけの医師

又は保健所に相談すること。 Q:結婚が決まり、診断書を取り交わすことになった。ATL の検査もすべきでしょうか? A:妻から夫への感染はほとんどない。夫から妻への感染は ATL 発症にはつながらない。子どもへ

の感染は出産後に対処できるので心配することはない。 Q:HTLV-1 は性交により夫から妻へうつるそうですが、夫がキャリアの場合はどうすればよいの

でしょうか? A:妻への感染は ATL 発症にはつながらないと考えられる。子どもへの感染は出産後に対処できる

ので、心配することはない。 Q:予防接種はありませんか? A:一番問題の子どもへの感染は母乳によるものである。生まれた子どもが乳を飲む前に有効に働

く予防接種はない。すでに感染した人に有効な手段もない。 2 キャリア Q:キャリアとは? A:HTLV-1 に感染するとウイルスは一生体の中にとどまり、持続感染状態になる。ウイルスにか

かっている人のことをキャリアと呼ぶ。

32

【資料7】

Page 33: HTLV-1母子感染防止対策マニュアル€資7...HTLV-1母子感染防止対策マニュアル (案) 平成25年3月 宮崎県HTLV-1母子感染対策協議会 宮崎県

Q:キャリアだと言われました。どうしたらよいでしょうか? A:今のところワクチンなどの有効な手段は無いので、これから生まれる自分の子どもに移さない

ことを考える。そのためには、出産後人工栄養で子どもも育てればよい。 Q:血縁者にキャリアがいる。私も調べた方がよいでしょうか? A:一番問題になるのは子どもへの感染は母乳によるものである。妊娠時に調べれば十分間に合う

ので、慌てる必要はない。 Q:キャリアだと言われました。家族も検査するべきでしょうか? A:家族問題や差別につながる可能性があるため検査する必要はない。 3 ATL Q:成人T細胞白血病・リンパ腫(ATL)とはどのような病気ですか? A:成人T細胞白血病は、英語では adult T cell leukemia であり、しばし略して ATL と呼ば

れます。HTLV-1 に感染した血液細胞(Tリンパ球)ががん化して、白血病や悪性リンパ腫を

起こしたものです。 Q:HTLV-1 のキャリアになった場合、ATL の発症危険度はどの程度ですか? A:感染してから ATL を発症するまでに 40 年以上の長い年月を必要としますので、40 歳を越える

まで ATL はほとんど発症しません。患者の平均年齢も 70 歳に近づいています。ATL の年間発

症率は、40 歳以上の HTLV-1 キャリアでおよそ 1,000 人に 1 人と言われています。 医療従事者のみに限定した追加情報 (生涯発症率、男性ではおよそ 15 人に 1 人、女性では 50 人に 1 人)

Q:ATL を発症するとどのような症状が認められますか? A:ATL では以下のような症状がみられます。他にも明らかな病気がなく、これらの症状が出てき

た場合には、ATL を発症している可能性があるため、速やかに最寄りの医療機関(血液専門医

のいる病院が望ましい)を受診してください。 ①強い倦怠感・高熱がなかなか治らない(通常 1 週間以上) ②リンパ節が腫れる。 ③皮膚の赤く盛り上がった発疹 ④意識障害など Q:ATL の治療法はどのようになっていますか? A:最近では ATL の効果的な治療法も少しずつ確率され始めております。例えば、造血幹細胞移植

が効果を示す症例も増え、さらに、最近では ATL 細胞を特異的に攻撃する分子標的治療薬も開

33

【資料7】

Page 34: HTLV-1母子感染防止対策マニュアル€資7...HTLV-1母子感染防止対策マニュアル (案) 平成25年3月 宮崎県HTLV-1母子感染対策協議会 宮崎県

発され応用可能になりつつあります。 4 母子感染 Q:なぜ妊娠の検査をするのでしょうか? A:HTLV-1 の感染の中で ATL の発症につながるのは子どもの時の感染である。輸血による感染が

ほとんどなくなった現在、子どもへの感染は母乳によるものが主役である。母親がキャリアで

なければ子どもにうつる可能性はまずないが、キャリアが母乳哺育をすると 15~20%の子ども

は感染する。したがって、キャリアの妊婦を探すことが大切である。 Q:前回の妊娠時の検査で HTLV-1 は心配ありませんといわれましたが、今回も検査は必要ですか? A:前回妊娠時の HTLV-1 抗体検査が陰性だった人が、今回の検査で陽性になる可能性があります。

妊娠の度に毎回、HTLV-1 抗体検査を受けた方が良いでしょう。 Q:小児の ATL キャリアはすべて母親の母乳によるものですか? A:100%という保証はできないが、ほとんどの場合母乳が原因である。 Q:初乳だけでも与えることはできませんか? A:正確なところはわからない。しかし、初乳にはリンパ球が特に多く含まれており、動物実験の

結果では、200ml でも十分感染しうることがわかっているので与えない方が安全である。 Q:母乳抑制をした母親がまちがって乳房をくわえさせた。子どもに感染しますか? A:ウイルスは母乳の中に入っているTリンパ球によって感染する。母乳が出ない状態で感染する

ことは少ないと思われる。 Q:前回妊娠時には検査を受けなかったのですが、今回の検査で HTLV-1 感染が判明しました。上

の子は母乳で育てましたが心配はないのでしょうか? A:上のお子さんは感染している可能性があります。もし、ご心配なら HTLV-1 抗体検査を受ける

ことをお勧めします。現在 3 歳以上で、検査の結果が陰性なら感染していません。もし、まだ 3歳になっていないようでしたら、感染の有無は 3 歳以後に判定できます。

Q:キャリアの子どもの中で兄弟間の感染はないのか? A:兄弟の間でまず感染しない。 Q:子どもの HTLV-1 抗体検査は必要ですか? A:子どもが感染したかどうかを母親が知っておくことは、もし、子どもがキャリアであった場合

に、母親が子どもに適切なタイミングで感染について説明することができ、有用ではないかと

思われます。 Q:子どもの追跡調査を受ける場所は?

34

【資料7】

Page 35: HTLV-1母子感染防止対策マニュアル€資7...HTLV-1母子感染防止対策マニュアル (案) 平成25年3月 宮崎県HTLV-1母子感染対策協議会 宮崎県

A:かかりつけの小児科医にご相談ください。 Q:対象児の管理で特に配慮すべきことはないか? A:普通の子どもとまったく変わらない。母乳以外では母親から子どもにうつる心配はほとんどな

い。兄弟間でもまずうつらないので、食器・タオルなどの心配もいらない。 5 保健指導 Q:妊婦がキャリアと判明した場合、もっとも注意すべき点は? A:(1)個人の秘密を厳格守ること。 (2)人工栄養を行えば、子どもにうつす可能性はほとんどないことを教える。キャリアであっ

ても安全に子どもを育てられることを教える。 (3)ウイルスが胎児に悪影響を及ぼすことはなく、妊娠自体にもなんら影響しない。HTLV-1

による奇形など、他の障害が起こる心配がないことを教える。 (4)仮に子どもがキャリアであっても、ATL 発症の可能性はそれほど高くないため、過度の心

配をさせないようにする。 (5)母親自身が ATL になる心配をできるだけほぐす。 Q:母乳で育てることを希望する母親はどうですか? A:(1)HTLV-1 のキャリアになる可能性を十分理解してなお母乳で育てることを希望する場合は、

母乳で育てさせる。 (2)凍結処理した母乳でも感染を予防することができることを教える。ただし、この場合は一

度でも処理しない母乳を与えると失敗する可能性があることを説明しておく。 Q:母乳を与えなければ、HTLV-1 の母子感染は防げるのか? A:95%以上の確率で防げる。(極めて有効ではあるが、完全な方法ではない。ただ、現時点では最

も確実な方法である。) Q:もらい乳は? A:キャリアでないことがわかっている人からもらい乳ができるのであれば可能である。 Q:短期母乳栄養を選択した場合、どのようにすればよいですか? A:初乳のみを飲ませることを希望したり、産休明けで満 2 ヶ月頃から職場復帰するタイミングま

での授乳を考える場合には、分娩施設入院中に母乳中止の方法について相談するとよいでしょ

う。満 3 ヶ月までの授乳を希望される場合も、分娩施設を退院する際に、満 3 ヶ月で母乳を中

止するための方法について情報収集しましょう。満 3 ヶ月になってから相談を始めると、母乳

の中止が遅くなり感染率を高くしてしまうため、産後 2 ヶ月ごろから、母乳中止の方法を理解

し、具体的に実施できるよう、助産師、看護師、保健師にそうだんしましょう。

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【資料7】

Page 36: HTLV-1母子感染防止対策マニュアル€資7...HTLV-1母子感染防止対策マニュアル (案) 平成25年3月 宮崎県HTLV-1母子感染対策協議会 宮崎県

Q:凍結処理した母乳で感染を防ぐことはできるのか? A:凍結処理により、感染細胞は死滅するので、理論的には可能である。しかしながら、1 度でも生

の母乳を与えると失敗する可能性があるため、この方法をとるためには相当の決意と努力が必要

である。 Q:母乳を飲ませない理由を家族に聞かれた場合、どのように返答すればよいでしょうか? A:HTLV-1 キャリアの女性の家族状況やその他の状況により様々ですので、本人の意思に任せま

す。本人が HTLV-1 キャリアであることを知られたくないのでしたら、「母乳出ないのよ」とさ

らっと答えたり、「分娩後の母体の状況により授乳が望ましくないと産科医から指導された」と

返答するのも一案でしょう。また、今後、不安があれば医療機関や保健所で精神的なサポート

を受けることもできます。 Q:キャリアの告知を受けてから、がんノイローゼになっている母親への対応は? A:(1)キャリアでなくとも、他のがんにはかかる可能性がある。キャリアが ATL を発症する頻

度年間 1/1000 はこれに比べてそれほど高くない。このことを納得させる。 (2)精神的ストレス状態は胎児や新生児に悪影響を与えるため、この時点では赤ちゃんのこと

だけを考え、健やかな赤ちゃんを得て、立派に育てるよう母親としての義務感を持って欲しい

と励ます。すなわち、気持ちの切り替えがいかに大切かを悟らせることに重点を置く。 Q:キャリアの母親の ATL 発症を防ぐ方法は? A:HTLV-1 キャリアの ATL 発症予防の方法は確立されておりませんが、一般的ながん予防の考え

方と同様に、禁煙・節酒、適度な運動、バランスの取れた食生活、ストレス緩和などの生活習

慣を工夫することが必要と考えられます。 Q:HTLV-1 の検査により最終的に判定保留と言われましたが、どのようにすればよいでしょうか? A:一般に確認検査で判定保留と言われた場合、HTLV-1 に感染していないか、感染していても感

染力が極めて弱いので心配はありません。さらに詳しく調べたい場合は、PCR 法により確認す

る方法があります。現時点では、HTLV-1 感染を調べるための PCR 法は保険適用外であり、全

額自己負担となる可能性が高いです。しかし、現在、PCR 法の標準化に向けた研究が進められ

ています。 Q:子どもがキャリアですが予防接種はどうしたらよいですか? A:通常通り接種して構いません。 Q:感染した母親から子どものへの口移しで離乳食を与えた場合、子どもが感染する可能性はあり

ますか? A:これまでの研究において、唾液からの感染の可能性は非常に低いという結果が得られています。

しかし、一般的に、むし歯などの問題があり、避けた方がよいだろう。

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【資料7】

Page 37: HTLV-1母子感染防止対策マニュアル€資7...HTLV-1母子感染防止対策マニュアル (案) 平成25年3月 宮崎県HTLV-1母子感染対策協議会 宮崎県

Q:完全人工栄養の場合、感染症や SIDS の危険性が高くなるのですか? A:感染症については、衛生状況など環境のよい日本においては、特に心配は要りません。ワクチ

ン接種や感染症の流行期の外出を避けるなどの感染症一般の対応で構いません。また、SIDS 要

望については、うつ伏せ寝を避ける、子どもの前で喫煙を避けるなど、普通に行う育児の対応

で構いません。 Q:将来子どもにキャリアであることの説明を行うかどうか、行うとすればいつ頃行うか? A:最終的に母親(夫に話している場合は夫婦)の判断による。 ・女児の場合、通常は母子感染しか起こさないので、将来、結婚や妊娠をしたとき説明するこ

とでも対応可能である。 ・男児についての判断は難しいと思われる。ただ男児女児ともに高校生になれば献血が可能で

あるので、その場合、否応なしにキャリア告知を受けることもある。そのため、親の方から

頃合いを見計らって(たとえば中学生頃か高校に入って間もない頃)説明するのがよいと考

えられる。

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【資料7】

Page 38: HTLV-1母子感染防止対策マニュアル€資7...HTLV-1母子感染防止対策マニュアル (案) 平成25年3月 宮崎県HTLV-1母子感染対策協議会 宮崎県

説明用参考 (資料1)

妊婦健康診査における HTLV-1 抗体検査結果が 陽性(要精密検査)であった妊婦の方へ

あなたから採血して調べた HTLV-1 抗体検査結果が陽性(要精密検査)でした。 しかし、これは「あなたは HTLV-1 に感染しています」ということを、ただちに意味する

ものではありません。 この検査は感染していないことをはっきりさせることができる検査ですが、この検査結果

だけで感染していると決めることはできません。 したがって、それを確かめるために、別の方法(ウエスタンブロット法)で HTLV-1 抗体

を調べる精密検査(確認検査)が必要です。精密検査を受けることを希望される場合は、改

めて、血液検査を受けてください。 この精密検査結果が陽性であった場合は「HTLV-1 に感染している可能性が高い(HTLV-1キャリアとして対応する)」、陰性と出た場合は「HTLV-1 に感染している可能性は低い」と

いうことになります。 ただし、残念ながら、一部に精密検査の結果が「判定保留」と出ることがあり、この場合

は「HTLV-1 に感染しているか現在のところ不明」です。

38

【資料7】

Page 39: HTLV-1母子感染防止対策マニュアル€資7...HTLV-1母子感染防止対策マニュアル (案) 平成25年3月 宮崎県HTLV-1母子感染対策協議会 宮崎県

(資料2)

精密検査(確認検査)における HTLV-1 抗体検査結果が

陽性であった妊婦の方へ

あなたから採血して調べた精密検査(確認検査)における HTLV-1 抗体検査の結果が陽性

でした。この結果は、「HTLV-1 に感染している可能性が高い(HTLV-1 キャリアとして対応

する)」を意味します。あなたは HTLV-1 キャリアであると考えられます。 以下に HTLV-1 キャリアとして知っておいた方がいいと思われることをご説明します。 この説明書は主治医からの口頭での説明を補足し、記憶に留めるお手伝いのために用意し

たものです。これからの説明は、HTLV-1 キャリアであるご本人に対してのものです。説明

を受けた上で、夫やその他のご家族にも一緒に説明を聴いてもらった方が良いを判断された

ら、遠慮なく、主治医にその旨をお伝えください。 1)HTLV-1 キャリアとは何ですか? ウイルスに感染し、そのウイルスが体内に残っているけれど、そのために何も病気が起こ

っていない人のことを「キャリア」と呼びます。ウイルスに感染しても病気になるとは限り

ません。実際、私たちの中には何種類ものウイルスが持続感染または潜伏感染していて、私

たちはみな何らかのウイルスのキャリアであるといえます。(例えば、小さい時に水疱瘡[み

ずぼうそう]に罹った人は、そのウイルスが体内にずっと一生の間潜んでいます。) HTLV-1 というウイルスに感染しているけれど、そのために何も病気を起こしていない人

のことを HTLV-1 キャリアと呼んでいます。HTLV-1 キャリアは日本全国で約 108 万人(推

定)いますので、HTLV-1 キャリアであることは決して珍しいことではありません。 2)HTLV-1 とはどんなウイルスですか? HTLV-1 は私たちのリンパ球(免疫を司る細胞、白血球のひとつ)に感染し、一生涯そこ

に留まる持続感染状態になります。ほとんどの場合、キャリアは HTLV-1 による病気を起こ

すことなく一生を過ごしますが、一部のキャリアはやがて成人T細胞白血病(ATL)や

HTLV-1 関連脊髄症(HAM)などの病気を発病します。 3)ATL や HAM とはどんな病気ですか? ATL とは HTLV-1 が感染したリンパ球ががん化したもので、白血病になるタイプとリン

パ腫になるタイプがあります。ATL の発症は 40 歳頃までほとんどなく、それ以降に年間キ

ャリア約 1,000 人に 1 人の割合で発症します(生涯を通じての発症率は約 5%です)。男性

に発症することが多いとされています。 HAM は、30~50 歳くらいでの発症が多く、年間キャリア約 3 万人に 1 人の割合で起こる

極めて珍しい病気で、歩行障害や排尿障害や排便障害が起こります。

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【資料7】

Page 40: HTLV-1母子感染防止対策マニュアル€資7...HTLV-1母子感染防止対策マニュアル (案) 平成25年3月 宮崎県HTLV-1母子感染対策協議会 宮崎県

4)ATL や HAM を防ぐにはどうしたらよいですか? いったんキャリアになった人が ATL や HAM の発症を防ぐ方法は、まだ見つかっていま

せん。(今後、発見される可能性はあります。)現在のところ、これらの病気を防ぐ唯一の

方法はキャリアになることを防ぐことです。特に、ATL は母子感染によってキャリアとな

った人にだけに起こる病気ですので、母子感染を防ぐことがとても大切です。 5)母子感染を防ぐにはどうしたらよいですか? HTLV-1 は主に母乳を介して母子感染します。ただその他の経路の感染も低頻度ですが

存在します。授乳期間が長いほど感染率が高くなることが知られていて、 ・6 ヶ月以上母乳を飲ませた場合は 15~20% ・人工栄養のみで育てた場合は 約 3% が感染します。 また、満 3 ヶ月までの短期間のみ母乳栄養(短期母乳栄養)であれば、人工栄養とあま

り感染率が変わらなかったという小規模のデータを元にした報告もあります。 したがって、子どもへの感染の可能性を下げるために最も確実な方法は、 ・母乳をあげずに人工母乳のみをあげること(完全人工栄養) もしも母乳をあげる場合には、 ・母乳を搾乳し、いったん凍結してから解凍して飲ませること(凍結母乳栄養) (この操作でウイルスに感染した細胞が死にます) ・母乳をあげる期間を満 3 ヶ月までにとどめること(短期母乳栄養) が選択肢としてあげられます。 残念ながら、ワクチンや抗ウイルス薬は開発されていないので、親の意思による栄養方

法の選択以外には、感染の可能性を減らすことはできません。もちろん、子どもへのHTLV-1感染の可能性について承知の上で、上記の方法を選択せずに、長期間、母乳栄養で育てる

方法もあります。 6)子どもへの栄養方法をどうしたらよいのか迷っています。 母乳をあげたら絶対感染する訳ではありませんし、また、全くあげなかった場合でも感

染の可能性がゼロになる訳ではありません。 本来、母乳は赤ちゃんにとって良いものですから、迷うのは当然のことです。しかし、

ATL の予防という意味では、HTLV-1 に感染しないことが有効です。それぞれの母親にと

って無理のない形で感染症の可能性を少しでも小さくすることは大切なことだと考えてい

ます。 お子さんのことを真剣に考えて選ばれた栄養方法はどれを取っても「お子さんへの愛情」

から来るものですから、それをサポートします。

40

【資料7】

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7)子どものことだけでなく、自分自身のことや家族のことなど、他にも知りたいこと、

相談したいことがあるのですが、どうしたらよいですか? 希望があればカウンセリングを受けることができます。主治医にその旨をお伝えくださ

い。一緒に聴いてもらいたいご家族がいらっしゃいましたら、ご一緒にカウンセリングを

受けてください。 8)母乳による感染を防ぐために、具体的にどうしたらよいですか? 完全人工栄養をご選択される場合、母乳分泌を抑制することができます。希望される場

合は、産科主治医にご相談ください。また、完全人工栄養の場合でも母子のスキンシップ

の重要性は全く変わりません。授乳の際にどのようにスキンシップを取るかを産科主治医

や助産師にご相談ください。 凍結母乳栄養を希望される場合、搾乳、凍結、解凍、授乳の方法を具体的にお示ししま

す。産科主治医、保健師、助産師等にご相談ください。 短期母乳栄養を希望される場合、具体的な母乳中止次期の目安を満 3 ヶ月までと考えて

います。予定通りの時期に人工栄養へ切り替えられるよう、保健師等の支援を受けること

もできます。 9)子どもへのかかわり方について気をつけることはありませんか? 栄養方法のことを除いて、かかわり方に違いはありません。母乳以外の母子間の触れ合

いで感染が起こることはありません。 どのような栄養方法を取られたかにかかわらず、お子さんが HTLV-1 母子感染していな

いかを確認するため、3 歳のときまたはそれ以降に HTLV-1 抗体検査を受けることを勧め

ています。それは、もしもお子さんが感染していた場合に、その事実を望ましい時期に望

ましい形で伝えることができるからです。 3 歳の時またはそれ以降に、かかりつけの小児科などで、お子さんの HTLV-1 抗体検査

を行うことをお勧めします。

41

【資料7】

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(資料 3)

保健所等における相談方法

HTLV-1 キャリアのカウンセリングの進め方とポイント(長崎県指導者用テキストより) 1.告知によって受けると予想されるキャリアの心理的不安 1)発症に対する不安(ATL がいつ発症するかなど) 2)育児についての不安 ・どの程度のスキンシップで感染の恐れがあるのか ・母乳をやらないことで子どもへのスキンシップが減少し、その影響が出るのではないかとい

う不安 ・親としての自信ができない ・子どもが泣いても母乳を与えられないと何もしてあげられないと感じる 3)自分以外への感染 ・結婚をしない(できない)、子どもを作らない等の判断に至る場合もある 4)罪悪感 ・母乳をやれない(妊婦) ・妻や子に感染させた(母、夫) 5)抗体陽性が周囲に知られることのおそれ 6)知られた場合の周囲からの差別 7)うつされたという不満感、被害者意識(子、妻) 8)周囲に真実を話せない 9)家族やパートナーに話せたとしてもどう伝えてよいかわからない 10)夫以外からの感染に対する不安母乳をやっていないことに対する周囲からの冷たい視線 2.カウンセリングとは 本人や家族等相談に来た人(クライエント)が不安や悩みを解決・対応していくために行います。 まず、クライエントに関心を示し、苦しい気持ち、悩まずにいられない気持ち、寂しさ、きつさ

を支え、本人の気持ち・感情を受け取ります。…キャリアになったこと、病気の不安、子どもへの

感染の不安、母乳をあげられない残念さ、家族にどう受け止めてもらえるかの不安等々 3.HTLV-1 キャリアの心理状況の理解のために 1)いかなる疾患でも「病気」になることは「健康なはずの私がもう健康でない。」ことになります。 2)自分自身がキャリアであることを受け入れていく心のプロセスは、癌や障害の受け入れ等と同

じ「対象喪失」と呼ばれる心のプロセスをたどります。 ショック期:無関心や離人症的な状態 否 認 期:心理的な防衛反応としておこってくる否認

42

【資料7】

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混 乱 期:怒りや恨みにとらえられ、悲しみや抑鬱におちいる 努 力 期:責任を感じとり依存から解放、価値の転換をめざす 受 容 期:障害や疾病の受け入れ 3)HTLV-1 キャリアであると告げられた女性は、キャリアになったので「健康な体」でない、

母乳をあげられないので「普通の母親でない」、「親として失格」と考えます。それまでのイメ

ージやこれからの楽しい夢いっぱいの育児への理想を失い、自分および周囲に対し罪悪感を持

ちます。 4.カウンセリングの流れと進め方

相談者の様子 カウンセリングの注意点 聴き方

*自分の悩みを言葉で語る

(言語化) 一般になにを悩んでいるか

語れない状態、とりとめな

く語り、感情的になったり

する。「キャリアになってし

まったどうしよう」「子ども

にうつしてしまう」「母乳が

あげられない私は母親失

格」

*語られる内容を聞きながら、

なにをどのように悩み、これま

での対応を整理する。 *誤解、認識不足など現実的に

対応できることはまず行う。 *相談者との間に信頼関係をつ

くる。 *「そんなことはないですよ」

「大丈夫ですよ」とは早急に言

わない。

*相手の話にすぐ答えや指

示を出さず「うんうん」「あ、

そうですか」等うなずいた

り、あいづちを打ったり、十

分に相手の話を聴く。 *たくさん語られたときは、

「その中で何が一番お困り

ですか?」と聞き、問題を整

理する。

展 開

*気になっていた問題の背

後にある様々な感情に気が

つく。「私が病気になるはず

がない…」、「母乳を飲ませ

られないのは母親失格」と

いう思い込み、「子どもに感

染された罪悪感」、「家族に

見放されるのではないかと

いう不安」

*語られる話題・問題を、相談

者と一緒に整理してゆく。「なぜ

気になったのか」等話題にする。 *言葉にして語られることで、

感情が整理され、情緒的混乱か

ら立ちなおる。

*「…と言う訳ですね」と相

手の言うことを繰り返し、

「自分を責めてしまうので

すね。」「自分さえ気をつけて

いれば良かったのにと思っ

てしまうのですね。」と相手

の気持ちをくみ取りながら

聴く。

*混乱していた感情が整理

され、問題に向かい合える

ようになる。「私は私で、キ

ャリアになっても変わらな

い」、「母乳だけが母親であ

る印でない」「家族は信頼で

きる」

*本人の行動の最終決定を見守

る。 *聞き手の意見を強く出さ

ない。出すときは「私は○○

と思います。」などで表す。 *「…と考えるようになった

のですね。」と支持する。 *「また心配になった時はい

つでも相談にいらっしゃい」

と伝える。

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【資料7】

Page 44: HTLV-1母子感染防止対策マニュアル€資7...HTLV-1母子感染防止対策マニュアル (案) 平成25年3月 宮崎県HTLV-1母子感染対策協議会 宮崎県

5.カウンセリングのポイント 1)カウンセリングは「話させる」ことではないし、ただ聞いてあげることでもありません。 2)カウンセリングは回答、訓戒などを与えることではありません。解決してあげることではな

く、一緒にその問題に向き合い、今の状況に対して自分で決めていくことプロセスの援助です。 3)カウンセリングの「やり方」にこだわるのではなく、「あり方」が大切です。 4)あくまでクライエントの気持ちを尊重することが大切です。 5)過度に深刻そうな表情をしたり構えたりするのではなく、また場を和ませようとして過度に

冗長的になるのでもなく、ごく自然な態度で接することが大切です。 6)「こう話そう」とあまり決めてかからない方が良い場合が多いようです。 7)時には沈黙や泣いたりするカタルシスする時間も受け入れるのに有効になります。 8)妊婦、母親等は「自ら望んでキャリアになったのではない」という基本的事実を念頭におい

て対応することが大切です。 9)手引き書を参考に真実を伝えてください。ただし、数字等については場合によっては無用な

不安を与えないように配慮する必要があります。 <例>「生涯発症率が 20 人に 1 人」は「年間キャリア 1,000 人に 1 人」、「たばこを吸う人が肺

がんになる率と同じ」と同じ意味になるので、後 2 者を使う方がうける感じがやわらか

くなる。 10)あせらないでください。キャリアであることを受容していくには時間がかかります。 11)聞き手からは「しょうがないですよ」、「もうどうしようもないですから」と言わないでくだ

さい。 12)妊婦の選択を尊重してください。

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【資料7】

Page 45: HTLV-1母子感染防止対策マニュアル€資7...HTLV-1母子感染防止対策マニュアル (案) 平成25年3月 宮崎県HTLV-1母子感染対策協議会 宮崎県

(資料4)

精密検査(確定検査)における HTLV-1 抗体検査結果が 判定保留であった妊婦の方へ

あなたから採血して調べた HTLV-1 抗体検査は、精密検査(確認検査)まで行いましたが、

判定保留という結果でした。つまり、あなたが「HTLV-1 感染の可能性が高い。」のか「HTLV-1感染の可能性は低い」のかを、抗体検査では判断できなかったということになります。残念

ながら、これは現在の抗体検査法の限界で、判定保留者の中にどれくらいの割合で本当の感

染者がいるのかも分かっていません。 判定保留であった場合に、HTLV-1 キャリアと同様の母子感染予防対策を講じた方が良い

のかどうか、まだ、医学的に結論が出ていません。HTLV-1 キャリアと同様の対応をするこ

とを希望される場合は、母子感染が起こる可能性を少なくするために母乳をあげない(また

は、あげる場合には満3ヶ月までの短期間に留めるか、搾乳したものをいったん凍結して解

凍した母乳を与える)などの対応をしています。 授乳方法の選択にあたっては、それぞれの長所と短所がありますので、主治医の先生とよ

く相談してください。 抗体検査以外に HTLV-1 に感染しているかどうかを調べる方法として、PCR 法というも

のがありますが、この検査法は現在のところ保険適用外です。また、この方法で検査を行っ

ても、HTLV-1 感染の有無について、100%確実に判定できるわけではありません。この検

査を行うことを希望する場合は、主治医にご相談ください。

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【資料7】

Page 46: HTLV-1母子感染防止対策マニュアル€資7...HTLV-1母子感染防止対策マニュアル (案) 平成25年3月 宮崎県HTLV-1母子感染対策協議会 宮崎県

(資料 5) ※この用紙は妊婦本人に記入してもらい、診療記録に保存する。

(陽性と判定された場合に使用) HTLV-1 の確認検査についての説明

説明を受けた日 年 月 日 説明者 主治医 ・ その他( ) 説明内容 わかった ・ よくわからなかった HTLV-1 キャリアについての説明 説明を受けた日 年 月 日 説明者 主治医 ・ その他( ) 説明内容 わかった ・ よくわからなかった 授乳方法

決めたのは 年 月 日 (妊娠 週) ・ミルクにする ・おっぱいを搾って冷凍・解凍してあげる ・3 ヶ月くらいまでおっぱいをあげる 授乳方法や HTLV-1 について相談できる人 ・いる 主治医、助産師、保健師、家族、HTLV-1 キャリアの友人 その他( ) ・これから探す ・紹介して欲しい

年 月 日

主治医より、HTLV-1 について十分な説明を受け、理解しました。

署名

HTLV-1 についての説明と確認

相談したいこと

相談したいこと

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【資料7】

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※この用紙は妊婦本人に記入してもらい、診療記録に保存する。

選んだ母乳方法 ・短期母乳 ・母乳を搾って冷凍・解凍してあげる 短期母乳と冷凍母乳の具体的な方法について 説明を受けた日 年 月 日 説明者 主治医 ・ 助産師 ・ その他( ) 説明内容 わかった ・ よくわからなかった 短期母乳を止めることについて

説明を受けた日 年 月 日 説明者 主治医 ・ 助産師 ・ その他( ) 説明内容 わかった ・ よくわからなかった 母乳を止めることについて相談できる人

・いる 主治医、助産師、保健師、家族、HTLV-1 キャリアの友人 その他( ) ・いない(困っている) ・紹介して欲しい

年 月 日

主治医より、HTLV-1 について十分な説明を受け、理解しました。

署名

母乳栄養を選んだお母さんへ

相談したいこと

相談したいこと

相談したいこと

相談したいこと

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【資料7】

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(資料 7) 授乳・離乳の支援ガイド

「授乳・離乳の支援ガイド」平成 19年 3月 17日厚生労働省雇用均等・児童家庭局母子保健課

(http://www.mhlw.go.jp/shingi/2007/03/s0314-17.html)抜粋

「授乳・離乳の支援ガイド」策定について

平成7年「改定 離乳の基本」に基づき、保健・栄養指導の場面や育児雑誌等で情報提供が行われてきた。

<離乳の支援><授乳の支援>

母乳育児の推進を図る観点から医療機関、自治体等において支援が行われてきた。

○「改定 離乳の基本」の発表から10年以上が経過

○出産直後の不安も高くその訴えも多様

○母子を取り巻く社会環境、食環境の変化

「授乳・離乳の支援ガイド」の策定・公表 (平成19年3月)

妊産婦や子どもに関わる保健医療従事者が授乳・離乳の基本的事項を共有化し、支援を進める

「授乳・離乳の支援ガイド」策定のねらい ①授乳・離乳を通して、母子の健康の維持とともに、親子の関わりが健やかに形成される

ことが重要視される支援であること。 ②乳汁や離乳食といった「もの」にのみ目が向けられるのではなく、一人一人の子どもの

成長・発達が尊重される支援を基本とすること。 ③妊産婦や子どもに関わる保健医療従事者において、望ましい支援のあり方に関する基本

的事項の共有化が図られること。 ④授乳・離乳への支援が、健やかな親子関係の形成や子どもの健やかな成長・発達への支

援としてより多くの場で展開されること。 授乳の支援に関する基本的考え方 ・授乳の支援にあたっては、母乳や育児用ミルクといった乳汁の種類にかかわらず母子の

健康維持とともに、健やかな母子・親子関係の形成を促し、育児に自信を持たせること

を基本とする。 ・妊娠中から退院後まで継続した支援、産科施設や小児科施設、保健所・市町村保健セン

ター、保育所など地域のすべての保健医療従事者における支援に関する基本的情報の共

有化、社会全体で支援を進める環境づくりが推進されることをねらいとする。

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【資料7】

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授乳支援の推進に向けて

母親

家族

産科医師 小児科医師

助産師 看護師 保健師 管理栄養士・栄養士

産科施設 小児科施設保健所・保健センター

地域

支援の基本的情報の共有化

妊娠中から退院後まで

継続した支援

赤ちゃん

子育て支援関係者

父親

保育所

歯科医師

授乳の支援を進める5つのポイント ①妊娠中から、適切な授乳方法を選択でき、実践できるように、支援しましょう。 ②母親の状態をしっかり受け止め、赤ちゃんの状態をよく観察して、支援しましょう。 ③授乳のときには、できるだけ静かな環境で、しっかり抱いて、優しく声をかけるように、

支援しましょう。 ④授乳への理解と支援が深まるように、父親や家族、身近な人への情報提供を進めましょ

う。 ⑤授乳で困ったときに気軽に相談できる場所づくりや、授乳期間中でも、外出しやすく、

働きやすい環境を整えましょう。

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【資料7】

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(資料 8) 短期母乳栄養の具体的方法

断乳し人工栄養へ(短期母乳栄養の実施は満3か月まで)

自然中止 薬物療法

短期母乳栄養

※ 短期母乳や凍結母乳を組み合わせて実施するなどの授乳方法の変更があった場合の感染率については、統計学的な証明がない。このため、これまでの知見からの推測であるが、

短期母乳栄養と凍結母乳栄養の組み合わせは、その実施時期や期間によって、満3か月までの短期母乳栄養に比べて、感染の危険性が高くなる可能性があることを踏まえておく必要がある。

短期母乳栄養を(初乳~満3か月までのいずれかの時期に)行う場合

※短期母乳栄養後、凍結母乳栄養へ変更する場合は、搾乳及び凍結方法等について情報提供が必要。また、短期母乳栄養の実施時期(満3か月まで)を目安に断乳す

ることが望ましい。 (下記のケース1、2参照)

保健師、助産師等に断乳の方法、必要に応じて

医師に薬物処方の相談

◎ 注意点出産までに、児の栄養方法について決定。授乳方法や中止方法について、必要に応じて主治医等と相談。

◎ 注意点

50

【資料7】

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短期母乳栄養の例

ケース1:初乳のみ直接授乳を希望する場合

初乳を直接授乳

凍結母乳栄養断 乳

断 乳

○断乳の方法としては以下のようなものがある。

①乳汁分泌を徐々に減らし、自然に中止する方法。乳汁分泌を減らす方法については、医師、保健師、助産師に相談する。

②医薬品の服用により、乳汁分泌を中止する方法。詳しくは、医師に相談する。

◎注意点

初乳にも感染リンパ球が存在することから、初乳の直接授乳のみでも完全人工栄養よりも感染リスクは高くなる。

◎注意点

・凍結母乳栄養の具体的方法は、産科主治医、保健師、助産師等に相談する。

・満3か月までに断乳することが望ましい。それ以上の期間の凍結母乳栄養(短期母乳栄養と凍結母乳栄養の組み合わせ)は、短期母乳栄養単独と比べて感染の危険性が高くなる可能性がある。

◎注意点

出産までに、児の栄養方法について決定。必要に応じて主治医等と相談する。

初乳のみ授乳する場合、断乳して人工乳に切り替える方法等について、医療機関入院中に主治医等から情報提供しておくことが望ましい。

短期母乳栄養の例

ケース2:2か月で職場復帰する場合

自宅で母乳を直接授乳

職場に通いながら凍結母乳栄養断 乳

断 乳

○断乳の方法としては以下のようなものがある。

①乳汁分泌を徐々に減らし、自然に中止する方法。乳汁分泌を減らす方法については、医師、保健師、助産師に相談する。

②医薬品の服用により、乳汁分泌を中止する方法。詳しくは、医師に相談する。

◎注意点

2か月の時点で、すぐに断乳して、人工乳に切り替えることが困難な場合がある。従って、1か月健診時等に主治医等から情報提供しておくことが望ましい。

◎注意点

出産までに、児の栄養方法について決定。必要に応じて主治医等と相談する。

◎注意点

・凍結母乳栄養の具体的方法は、産科主治医、保健師、助産師等に相談する。

・満3か月までに断乳することが望ましい。それ以上の期間の凍結母乳栄養(短期母乳栄養と凍結母乳栄養の組み合わせ)は、短期母乳栄養単独と比べて感染の危険性が高くなる可能性がある。

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【資料7】

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(資料 9) 搾乳の留意点

NICUに入院した新生児のための母乳育児支援ガイドライン(解説編):日本新生児看護

学会・日本助産学会より抜粋、研究班一部改変

搾乳法の選択をサポートする際の留意点

搾乳法には、手による方法(用手搾乳法)と搾乳器を用いる方法があり、搾乳器には

手動式と電動式がある。搾乳法の選択サポートする場合には、次の点に留意する:①搾

乳器について熟知している人が情報を提供する、②個人のニーズに基づく、③心地よく、

痛くない方法、④全自動で圧調整ができない搾乳器の使用は避ける。

用手搾乳法

用手搾乳はいつどこでも実施できる、また電動搾乳器を使用する場合でも搾乳開始時

に行う必要があるので、必ず母親が実施できるようにしておく。具体的には、次のよう

に助言する(UNICEF/ WHO,2009)。

①母乳を出やすくするために、ゆったりと座り赤ちゃんのことを想う、乳房を温める、

自分で乳房をマッサージしたりさすったり、指で乳頭をつまんでやさしく刺激する、他

の人に背中をマッサージしてもらう。

②乳房を乳頭から周囲に向かって触れ、感触が異なるところをみつける(搾乳時に圧迫

するとよい場所)。

③乳管の上から乳房を圧迫する(親指とそれ以外の指を胸壁に向かって押し、そのまま

乳房をはさんで圧迫し、乳汁を乳頭の方に押し出す)。

④乳房のあらゆる部分で繰り返す。

電動搾乳器の使用

用手搾乳で肩こりや手首の痛みを感じる、うまく搾乳できない、搾乳する期間が1か

月以上になることが予測される、あるいは、母親が搾乳器を使用することを希望するよ

うな場合には、高品質の電動搾乳器の使用を勧める(横尾, 2003)。

電動搾乳器の使用方法や消每法について、実際に示しながら具体的に情報を提供す

る。搾乳はシングルポンプよりもダブルポンプのほうがプロラクチンの分泌が上昇し

(Hill, 1996)、搾乳時間の短縮になる。電動搾乳器の使用法は、各機種の使用説明書

を熟読したうえで母親に説明する。

母乳中の細菌数を減らす方法 (Gotsch, 2002/2007)

①電動搾乳器の部品の扱いに気をつける(説明書を読むこと)。

②搾乳前に完全に手を洗い、爪をきれいにする。

③搾乳容器や搾乳器のカップの内側を触らない。

④搾乳開始後、最初の10 mlを捨てても細菌を減らす効果はない。

⑤乳頭や乳輪を石鹸で洗う必要はない。

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【資料7】

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(資料 10) 凍結母乳栄養の具体的方法

NICUに入院した新生児のための母乳育児支援ガイドライン(解説編):日本新生児看護

学会・日本助産学会より一部抜粋、研究班一部改変、加筆

母乳の冷凍の手順 ①搾乳後の母乳を専用容器にいれる ②母乳を冷凍する場合は、そのほかの液体と同様、母乳も冷凍すると膨張するため、容器

の上の部分に少し余裕を持たせて保存する。 ③ビニール袋を使用するときは、母乳搾乳用に用意された専用のものを使用する。貯蔵す

る前に、容器の上部を何度か丁寧に折り返し、冷凍用マスキングテープでしっかり封をす

る。万が一の破れに備えるため、搾乳した小さなビニール袋数個をさらに大きなビニール

袋に入れるとよい。 ④各容器には、搾乳した日付と量を明記する。 ⑤搾乳した母乳は、搾乳後直ちに冷凍する。 ⑥凍結は2ドア冷凍冷蔵庫の家庭用冷凍室-20℃で 24時間以上行う注 1 冷凍母乳の解凍と加温方法

冷凍母乳の解凍は、冷蔵庫内の自然解凍、または流水・微温湯解凍が望ましい。これ

らの解凍方法であればIgA濃度の変化はほとんど認めない(Sigman, Burke & Swarner,

1989)。

解凍・冷蔵母乳の加温方法は、母乳由来リパーゼを保つため、室温が望ましく、温め

る場合は37℃未満(体温程度)とする。電子レンジの使用は不適切であり、また、加温

後与えなかった母乳は廃棄する(大山,2010)。

注1)参考にしたガイドラインでは 12 時間としていたが、24 時間へ変更している。HTLV-1 の母乳感染を

防ぐ目的での凍結母乳栄養法は、ウイルス感染リンパ球を凍結・解凍の操作によって壊すことに基づいて

いる。この目的には、ゆっくりと、しかし確実に芯まで凍らせることが肝要であり、過去の小規模の研究

では「家庭用フリーザーで 12 時間以上冷凍した後に室温で解凍(前濱ら、日本産婦人科学会誌

1992;44:215-222)」、「家庭用フリーザーで 24 時間冷凍後に室温で解凍(斎藤ら、日本産婦人科学会誌

1990;42:234-240)」または「-20℃で 12時間以上冷凍(一條元彦、昭和 63年度厚生省成人 T細胞白血病(ATL)

の母子感染防止に関する研究報告書)」のように冷凍・解凍を行っていた。ところが、近年の家庭用フリー

ザーの中には「瞬間冷凍」が可能な機種が出てきており、この場合は細胞が壊れにくくなるため、母乳感

染を防ぐ目的にはそぐわない。このような機種を用いることは避けるべきである。どのような冷凍法が防

止効果に優れているのかについて、詳細に比較検討した研究は見出せないが、「家庭用冷凍冷蔵庫の冷凍室

(-18℃以下)で、瞬間冷凍ではなく『ゆっくりと』24時間以上凍らせた後に室温で解凍して授乳させる」

ことが家庭で実施する上で現実的であり、一定の防止効果を持つと考えられる。

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【資料7】

Page 54: HTLV-1母子感染防止対策マニュアル€資7...HTLV-1母子感染防止対策マニュアル (案) 平成25年3月 宮崎県HTLV-1母子感染対策協議会 宮崎県

(資料 10)

3歳以降の追跡調査において、お子さんの HTLV-1 抗体検査 (精密検査)結果が陽性であったお母様へ

あなたのお子さんは HTLV-1 のキャリアだと分かりました。あなたが妊娠中に HTLV-1 キ

ャリアとして理解しておいた方がいいと思われることを別の文書で説明しましたが、この説

明書は特にお子さんが HTLV-1 キャリアの場合に必要なことを補足し、記憶に留めるお手伝

いのために用意したものです。口頭で説明もこの説明書による説明も、あなたに対してのも

のです。ご説明を受けた上で、夫や他の家族で一緒に説明を聴いてもらった方が良いとご判

断されたら、主治医にその旨をお伝えください。 最もお伝えしたことは、お子さんがキャリアになったことについて、責任はあなたにはな

いということです。あなたは自分の知らないうちにいつの間にかキャリアになっていた訳で

すし、お子さんの栄養方法については、子どもことを一生懸命考えて決められたことです。

このような結果にはなりましたが、あなたがお子さんへの愛情から選ばれたことに間違いと

いうことは決してありません。「最初から断乳しておけばよかった」とか、「どうせ感染して

しまうのだったら、存分に母乳をあげるようにしておけばよかった」と、後悔しないように

してください。 以下、多く聞かれる質問と答えです。 1)HTLV-1 キャリアの子どもが健康状態で注意しなければならないことはありますか? 成人T細胞白血病(ATL)の発症は通常 40 年以上先の遠い将来のことであり、生涯のう

ちに発症する確率は、5%程度です。子どものうちに ATL を発症することはありません。 HTLV-1 関連脊髄症(HAM)という病気は、ごく稀に 10 歳未満でも発症することがあり

ますので、お子さんに歩行障害(北郊時の足のもつれ、足の脱力感など)や排尿障害(尿の

回数が多くなったり、逆に尿の出が悪くなったりなど)や排便障害(便をうまく出せないな

ど)の症状が出現した場合、その可能性も念頭に置く必要があります。 しかし、大部分のお子さんは何の病気も起こすことなく成長します。予防接種も通常通り

受けて結構ですし、風邪をひいたりした時も他のお子さんと比べて何か特別な注意がいるこ

ともありません。 2)この子から他の人に感染しますか? このウイルスの主な感染経路は母子感染(主に母乳を介して)と性行為感染(主に男性か

ら女性へ)と輸血感染です。それ以外の日常生活の中で感染していくことはありませんので、

大人になるまでは人に感染する可能性は極めて低く、普通に生活して構いません。 女の子であれば、将来子どもをもつ際に母子感染が起きる可能性があります。しかし、母

子感染の可能性は栄養方法の選択によって或る程度まで下げることができます。 男の子であれば、将来性行為を行うようになると相手の女性が感染する可能性がありま

す。ただ大人になってから感染して ATL を発症したという事例はこれまでのところ知られ

ておりません。

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【資料7】

Page 55: HTLV-1母子感染防止対策マニュアル€資7...HTLV-1母子感染防止対策マニュアル (案) 平成25年3月 宮崎県HTLV-1母子感染対策協議会 宮崎県

現在、献血の際には HTLV-1 抗体検査を実施していますので、男の子でも女の子でも、献

血した場合にその血液が用いられることはありません。 3)この子に自分がキャリアであることを教えた方がいいのでしょうか?教えるとしたらい

つがいいでしょうか? お子さんにキャリアであることを伝えるかどうか、伝えるとしたらいつがいいのかは、最

終的にはあなた(もし夫にもお話しになっている場合はご夫婦)の判断によります。ただ、

もし伝えなかった場合でも、将来献血することになった時や、(女の子であれば)妊娠した時

の検査によって、自分がキャリアであることを知るようになります。もしかしたら、そのよ

うな形で自分がキャリアであることを知るとショックを受けるかもしれません。従って、も

し知らせるとしたら、献血できる年齢(16 歳)になる前、中学生頃か高校に入って間もない

ころを目安にした方がいいかもしれません。説明を行う際には、医療関係者も交えて正しい

知識を伝えることで、五階から不必要な悩みを持たないで済むように努めることもできます。 4)この子が ATL や HAM になることを防ぐにはどうしたらいいのですか? 現時点ではまだ、いったんキャリアになった人が ATL や HAM の発症することを防ぐ方法

は見つかっていません。しかしお子さんが成長し、これらの病気を起こすかもしれない年齢

に達したころには、何らかの発症予防法や、もしも発症してしまった場合に有効な治療法が

開発されているかも知れません。その場合には様々な形で呼び掛けることになるだろうと予

測されますので、ご自身がキャリアであることを知っておくことは大切だと思います。

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【資料7】

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HTLV-1 母子感染対策協議会設置要綱

平成23年9月13日

福祉保健部健康増進課

(設 置)

第1条 HTLV-1(ヒトT細胞白血病ウイルス1型)母子感染を予防することを目的と

した HTLV-1 母子感染対策の普及啓発を推進するとともに、HTLV-1 母子感染対策が

適切かつ円滑に行われるための体制整備を図るため、HTL-1母子感染対策協議会(以

下「協議会」という。)を設置する。

(協議事項)

第2条 協議会は、次に掲げる事項について協議を行う。

(1) 妊婦に対する HTLV-1 抗体検査の適切な実施に関すること。

(2) HTLV-1 母子感染に係る相談窓口に関すること。

(3) HTLV-1 母子感染に関する普及啓発に関すること。

(4 ) HTLV-1 母子感染対策に携わる関係者の研修及びその他保健指導の向上に関す

る事項。

(5) HTLV-1 母子感染対策に係る医療機関の連携に関すること。

(6) HTLV-1 母子感染対策の評価に関すること。

(7) その他 HTLV-1 母子感染対策の体制整備に関すること。

(構 成)

第3条 協議会は HTLV-1 母子感染対策に関する学識経験者及びその他の関係者をもっ

て構成する。

2 委員の任期は2年以内とする。ただし、補欠委員の任期は前任者の残任期間とする。

3 委員の再任は妨げない。

(会 議)

第4条 協議会は福祉保健部長が招集する。

2 協議会に会長を置き、委員の互選によりこれを定める。

3 会長は協議会を主宰する。

4 会長に事故があるとき、又は会長が欠けたときは、あらかじめ会長が指名した委員

がその職務を代理する。

(庶 務)

第5条 協議会の庶務は、宮崎県福祉保健部健康増進課において処理する。

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【資料7】

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(委 任)

第6条 この要綱に定めるもののほか、協議会の運営に関し必要な事項は、福祉保健部

長が別に定める。

附 則

1 この要綱は、平成23年9月13日から施行する。

2 ATL母子感染防止対策専門部会設置要領(平成17年8月1日)は廃止する。

別表(第3条関係)

区 分 組織名

医療関係

宮崎県医師会

宮崎県産婦人科医会

宮崎県小児科医会

宮崎県看護協会 助産師職能担当

学識経験者

宮崎大学医学部 生殖発達医学講座 産婦人科学分野

宮崎大学医学部 生殖発達医学講座 小児科学分野

宮崎大学医学部 機能制御学講座 腫瘍性化学分野

宮崎大学医学部 内科学講座 免疫感染病態学分野

宮崎大学医学部 社会医学講座 公衆衛生学分野

保健関係 宮崎市保健所 健康増進課

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【資料7】

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 氏   名 所       属 職 名 備 考

濱 田 政 雄宮崎県医師会(母子保健担当)宮崎県産婦人科医会

常任理事会 長

佐 藤 雄 一 宮崎県小児科医会長 会 長

鮫  島   浩 宮崎大学医学部 生殖発達医学講座産婦人科学分野

教 授

盛  武  浩宮崎大学医学部 生殖発達医学講座小児科学分野

准 教 授

森 下 和 広宮崎大学医学部 機能制御学講座腫瘍生化学分野

教 授

岡 山 昭 彦宮崎大学医学部 内科学講座免疫感染病態学分野

教 授

黒 田 嘉 紀宮崎大学医学部 社会医学講座公衆衛生学分野

教 授

新 甫 泰 子 宮崎県看護協会(助産師職能担当) 理 事

入 船 裕 子 宮崎市保健所 健康増進課 課長補佐

任 期

 平成23年10月12日から平成25年3月31日まで

HTLV-1母子感染対策協議会  委員名簿

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【資料7】