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第2章 多変数関数
2.1 2変数の関数と等高線z = f(x, y)という関数について考える.この関数は,二つの変数 xと y によって zの値が定ま
るという意味で,x-y-z空間上で曲線を描く.図表 2.1は,z = e−x2+xy−y2
を図示したものである.
図表 2.1 z = e−x2+xy−y2
のグラフ
−2
−1
0
1
2
−2
−1
0
1
20
0.2
0.4
0.6
0.8
1
xy
z
一般的に 3次元の図を描くのは困難なので,2次元の x-y平面に等高線を用いてグラフの形状を表現することが多い.図表 2.2は,z = e−x2+xy−y2
のグラフを等高線を用いて表現したものである.等高線とは,高さ (=関数の値) z0を与えたときに,f(x, y) = z0を満たす (x, y)の取りうる軌
跡 (集合)である.高さが変わると,等高線も変化する.高さが異なる等高線が交わることはない.1
等高線と合わせて,領域という概念も導入しておく.関数 z = f(x, y)において,f(x, y) ≥ z0
を満たす (x, y)の集合は,たとえば図表 2.3の斜線部のように表される.斜線部の境界が等高線に相当する.
1接することはある.
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図表 2.2 z = e−x2+xy−y2
の等高線
−2 −1.5 −1 −0.5 0 0.5 1 1.5 2−2
−1.5
−1
−0.5
0
0.5
1
1.5
2
x
y
図表 2.3 f(x, y) ≥ z0 の領域(左) 平面と法線ベクトル(右)
x
y
(a,b,c)
a
b x
z
y
平面の方程式
3次元の空間における平面は,定数 a, b, c, dを用いて,
ax + by + cz = d (2.1)
と表すことができる.(a, b, c)は平面の法線ベクトルと呼ばれる.
接平面
2次元平面上の接線という概念は,3次元空間上では接平面として考えることができる.
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n変数の関数
f(x1, x2, . . . , xn)のように,n組の変数 x1, x2, . . . , xnによって値が定まる関数を n変数の関数という.nが 3以上の場合,関数の形状を図示するのは困難 (不可能)である.
3次元空間の平面を,n次元の空間に一般化したものを超平面 (hyperplane)と呼び,以下の関数で表す.
a1x1 + a2x2 + · · ·+ anxn = b (2.2)
ここで,a1, a2, . . . , an, bは定数である.
2.2 方向微分と偏微分1章では,1変数関数 f(x)の微分を以下のように定義した.
df(x)
dx= lim
h!0
f(x + h) − f(x)
h
この概念を用いて,多変数関数の方向微分を定義する.簡単化のため,2変数関数 f(x, y)を用いて説明する.点 (x0, y0),ベクトル (λ, µ)と変数 tを使って,f(x, y)から新しい関数 g(t)を以下のように構成する.
g(t) ≡ f(x0 + λt, y0 + µt)
g(t)が t = 0で微分可能とは,微分の定義によれば,
limh!0
g(0 + h) − g(0)
h= lim
h!0
f(x0 + λh, y0 + µh) − f(x0, y0)
h
が存在することである.もし上の極限が存在するならば,関数 f(x, y)は点 (x0, y0)で (λ, µ)方向に微分可能であるという.またその極限値を,点 (x0, y0)における (λ, µ)方向の (方向)微分係数という.
例 2.1f(x, y) = x2 + y2 を考えよう.点 (2, 2)における (1, 1)方向の方向微分係数は,
limh!0
(2 + h)2 + (2 + h)2) − (22 + 22)
h= lim
h!0
2h2 + 8h
h
= limh!0
2h + 8 = 8
演習問題 2.1例 2.1で,(1, 1)ではなく,(1,−1)方向の方向微分係数を求めよ.
方向微分の際,(1, 0)を方向として取ると,点 (x0, y0)における方向微分係数は
limh!0
f(x0 + h, y0) − f(x0, y0)
h
となる.この極限が存在するとき,関数 f(x, y)は点 (x0, y0)において xで偏微分可能であるという.その極限値を xについての偏微分係数という.f(x, y)の定義域上のすべての xで偏微分係数が存在するならば,その対応関係を関数と見なして,f(x, y)の xについての偏導関数と呼ぶ.z = f(x, y)
のとき,xについての偏導関数を以下のように表記をする.
∂f(x, y)
∂x
∂
∂xf(x, y)
∂z
∂xfx(x, y)
なお,上記の議論において,方向微分の方向を (0, 1)をとすると,それは y による偏微分と読替えることができる.
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偏微分の計算
偏微分の計算にあたっては,偏微分する変数のみに着目し,それ以外の変数を便宜的に定数であるかのように扱ってよい.
例 2.2f(x, y) = 2x2yの偏導関数を求めてみよう.f(x, y)を xで偏微分すると,
∂f
∂x= 4xy
となる.yで偏微分すると,
∂f
∂y= 2x
となる.
演習問題 2.2次の関数の偏導関数を求めよ.
(1) 2x + 3y + 4 (2) (x + y)3 (3) ex2+2xy+y2
(4) xy
高階の偏導関数
f(x, y)が xで偏微分可能ならば,∂f(x,y)∂x が存在する.これが,さらに xおよび yで偏微分可
能ならば,2階の偏導関数を定義することができる.f(x, y)を xで偏微分し,もう一度 xで偏微分
したものを ∂2f(x,y)∂x2 または fxx と表す.すなわち,
∂2f(x, y)
∂x2≡ ∂
∂x
(∂f(x, y)
∂x
)
である.f(x, y)を xで偏微分し,つぎに yで偏微分したものを ∂2f(x,y)∂x∂y または fxy と表す.
∂2f(x, y)
∂x∂y≡ ∂
∂y
(∂f(x, y)
∂x
)
同様に,∂2f(x,y)∂y∂x ,fyx, ∂2f(x,y)
∂y2 ,fyy を定義することができる.
例 2.3f(x, y) = x2e−y の 2階の偏導関数をすべて求めてみよう.まず,1階の偏導関数を求める.
∂f(x, y)
∂x= 2xe−y ∂f(x, y)
∂y= −x2e−y
2階の偏導関数は以下の通りである.
∂2f(x, y)
∂x2= 2e−y ∂2f(x, y)
∂x∂y= −2xe−y
∂2f(x, y)
∂y2= x2e−y ∂2f(x, y)
∂y∂x= −2xe−y
偏微分の順序に関して,次の定理が成り立つ.
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定理 2.1関数 f(x, y)に対して,∂f(x,y)
∂y と ∂2f(x,y)∂x∂y が存在して,∂2f(x,y)
∂x∂y が連続ならば,∂2f(x,y)∂y∂x も存在
して,
∂2f(x, y)
∂y∂x=
∂2f(x, y)
∂x∂y
が成り立つ. ¥
定理 2.1より,偏導関数が連続であれば偏微分する際に変数の順序は影響しないことがいえる.
演習問題 2.3f(x, y) = x4y3 + 2xy2 とする.fxy = fyx を確かめよ.
一般の場合の偏微分
偏微分を 2変数の場合で説明してきた.これは,以下のように n変数の場合についても同様に考えることができる.
n変数の関数 f(x1, x2, . . . , xn)において,(λ1, λ2, . . . , λn)という方向に対して,
limh!0
f(x1 + λ1h, x2 + λ2h, . . . , xn + λnh) − f(x1, x2, . . . , xn)
h
が存在すれば,f(x1, x2, . . . , xn)は方向 (λ1, λ2, . . . , λn)に関して方向微分可能である.方向 di を以下のように定義する.
di = (0, . . . , 0, 1, 0, . . . , 0) (第 i要素だけが 1で他は 0)
方向 diに関する方向微分が存在するとき,fは座標 xiについて偏微分可能といい,それを次のように表す.
∂f(x1, . . . , xn)
∂xi
∂
∂xif(x1, . . . , xn) fxi
(x1, . . . , xn)
f(x1, . . . , xn)を最初 xiで偏微分し,次に xjで偏微分したものが,2 階の偏導関数である.i 6= j
のときは,
∂2f(x1, . . . , xn)
∂xi∂xj≡ ∂
∂xj
(∂f(x1, . . . , xn)
∂xi
)
となり,i = jのときは,
∂2f(x1, . . . , xn)
∂x2i
≡ ∂
∂xi
(∂f(x1, . . . , xn)
∂xi
)
である.これらを,fxixjと書くこともある.
k階の偏導関数 ∂kf(x1,...,xn)
∂xk11 ∂x
k22 ···∂xkn
n
が存在し,連続であるとする(ただし,k1 +k2 + · · ·+kn = k).
このとき,変数の偏微分する順序は無関係である.
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2.3 微分可能と接平面1変数の関数が微分可能であることと,接線の存在は密接に関連していた.n変数の場合でも同
様のことがいえる.ここでは,2変数関数について微分可能であることと接平面について説明する.f(x, y)が点 (x0, y0)で微分可能であるとは,あるベクトル (u, v)が存在して,a = (h, k)に関
して |a| =√
h2 + k2 → 0 のとき,
f(x0 + h, y0 + k) − f(x0, y0) = uh + kh + o(|a|) (2.3)
が成り立つことである.ただし,o(|a|)は,|a| → 0のとき,o(|a|)|a| → 0となる関数.
ここで 3次元空間の平面で,法線が (u, v,−1)となるものを考えよう.z0 = f(x0, y0)とする.この平面が点 (x0, y0, z0)を通るとき,平面の方程式は
u(x − x0) + v(y − y0) − (z − z0) = 0 (2.4)
と書くことができる.(2.4)が,z = f(x, y)に点 (x0, y0, z0)において接していることを示す.(2.4)を書き直すと,z = ux + vy − ux0 − vy0 + z0 となるので,接平面と f(x, y)の z軸方向の差は,
f(x, y) − (ux + vy − ux0 − vy0 + z0)
となる.ここで,(x, y)を (x0, y0)に近づけていき,|(x, y) − (x0, y0)| との比の極限を取る.
lim(x,y)!(x0,y0)
f(x, y) − (ux + vy − ux0 − vy0 + z0)
|(x, y) − (x0, y0)|
= lim|a|!0
f(x0 + h, y0 + k) − (u(x0 + h) + v(y0 + k) − ux0 − vy0 + f(x0, y0))
|a|(a = (h, k))
= lim|a|!0
f(x0 + h, y0 + k) − uh − vk − f(x0, y0)
|a|= 0
微分可能であることと,偏微分の関係は次の定理で与えられる.
定理 2.2f(x, y)が微分可能であるとき,以下が成り立つ.
i) 任意の (λ, µ)に対して,f(x, y)は (λ, µ)方向に方向微分可能で,
limh!0
f(x0 + λh, y0 + µh) − f(x0, y0)
h= λu + µv
である.
ii) f(x, y)は,xと yについて偏微分可能で,
u =∂
∂xf(x0, y0) v =
∂
∂yf(x0, y0)
である. ¥
定理 2.2の逆は成り立たないことに注意せよ.つまり,f(x, y)が xと yで偏微分可能であっても,微分可能でない場合,つまり接平面が存在しない場合がある.
例 2.4偏微分できても微分可能出ない例として,次の関数を考えよう.
f(x, y) =
{2xy
x2+y2 , (x, y) 6= (0, 0)
0, (x, y) = (0, 0)
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f(x, 0) = 0なので,f(x, y)は x軸上ではずっと 0をとなる定数関数である.したがって,偏微分の定義より,fx(x, 0) = 0である.同様の理由により,fy(0, y) = 0となる.したがって,fx(0, 0) =
fy(0, 0) = 0である.点 (0, 0)における (λ, µ)方向の方向微分を求めるために,以下の計算をする.
f(0 + λh, 0 + µh) − f(0, 0)
h=
1
h
(2λµh2
(λ2 + µ2)h2− f(0, 0)
)
=1
h
2λµ
(λ2 + µ2)
λと µのいずれも 0でないならば,h → 0のとき,上式は発散する.よって,一般の方向に対しては方向微分は存在しない.
連続微分可能
開集合 U上で定義された関数 f(x, y)に偏導関数 fx と fy が存在して,それらが U上で連続ならば,連続微分可能という.一般に,k階の偏導関数がすべて存在してU上で連続ならば,k回連続微分可能という.
f(x, y)が開集合 U上で連続微分可能であれば,f(x, y)は U上の各点 xで微分可能である.
接平面
(fx(x0, y0), fy(x0, y0))を,f(x, y)の点 (x0, y0)における勾配ベクトルと呼び,gradfあるいは∇f等と表す..z = f(x, y)によって作られる曲面の点 (x0, y0, z0)における接平面の方程式は,以下の通りである.ただし,z0 = f(x0, y0)である.
z = fx(x0, y0)(x − x0) + fy(x0, y0)(y − y0) + z0
図表 2.4 曲面と接平面
(a,b,c)
a
b x
z
y
(a,b)
x
y
y0
x0
(f (x,y),f (x,y))0000x y
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全微分
h = ∆x,k = ∆y,∆f = f(x0 + h, y0 + k) − f(x0, y0)として,式 (2.3)を書き直す.
∆f = u∆x + v∆y + o(|a|)
= fx(x0, y0)∆x + fy(x0, y0)∆y + o(|a|)
両辺の極限を取り,それを以下のようにシンボリックに表す.
df = fx(x0, y0)dx + fy(x0, y0)dy
これを fの全微分と呼ぶ.
2.4 偏微分の応用
多変数関数の合成関数
zと x,yの関係が z = f(x, y)で与えられており,さらに xと yが tの関数として x = g(t)および y = h(t)として与えられているとき,zは tの関数とみなすことができる.このとき,f(x, y)
が微分可能で,g(t)と h(t)が tに関して微分可能であるとき,合成関数 f(g(t), h(t))は tで微分可能であり,
dz
dt=
∂f
∂x
dg
dt+
∂f
∂y
dh
dt(2.5)
となる.
演習問題 2.4f(x, y) = (x4 + x2y + xy)3,x = t2 + 1,y = t + 4とする.df
dt を計算せよ.
陰関数定理
2つの変数 xと yが方程式 F(x, y) = 0を満たしている場合を考える.たとえば,F(x, y) = x2 +y
であれば,y = −x2 と書き直して,簡単に yを xの関数と見なすことができる.では,F(x, y) =
x + y − exyとなっていた場合,どうすればよいか.このとき yを xの初等的な関数で表すことはできない.しかし,このような場合であっても,適当な条件さえ満たせば,dy
dx を計算することは可能である.
定理 2.3 (陰関数定理)関数 F(x, y)が,点 (x0, y0)を含むある領域で微分可能であり,F(x0, y0) = 0であるとする.このとき,Fy(x0, y0) 6= 0ならば,x = x0 の近傍で,
i) F(x, f(x)) = 0
ii) y0 = f(x0)
を満たす,連続関数 f(x)がただ一つだけ存在する.さらに,関数 y = f(x)は微分可能で,
dy
dx= −
Fx(x, y)
Fy(x, y)
となる. ¥
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例 2.5F(x, y) = x + y − exy において,dy
dx を求めてみよう.点 (1, 0)で F(1, 0) = 0を満たす.
Fx(x, y) = 1 − yexy
Fy(x, y) = 1 − xexy
なので,dy
dx= −
1 − yexy
1 − xexy
である.
例 2.6資本投入量を K,労働投入量を Lとして,生産関数 F(K, L)が,
F(K, L) = 5K0.4L0.6 (2.6)
で与えられているとする.K = L = 1のとき,生産量は 5である.生産量を 5に保ったままで,Lを変化させたとき Kの変化量をの比を考える.変化量の限界的な比率(技術的限界代替率)は,dK
dL
で与えられるので,F†(K, L) = F(K, L) − 5 = 5K0.4L0.6 − 5とおいて,以下の式を得る.
dK
dL= −
F†L(K, L)
F†K(K, L)
= −1.5K
L
Lを 1から微少量(εとする)減少させると,生産量を 5に保つためには,Kが 1.5εだけ増加しなくてはならない.
図表 2.5 生産量が 0.5,1,2の場合の等生産量曲線
0 0.2 0.4 0.6 0.8 1 1.2 1.4 1.60
1
2
3
4
5
6
7
8
L
K
F(K,L)=10
F(K,L)=5
F(K,L)=2.5
演習問題 2.5F(x, y) = 3x2 + 4xy + 2y2 − 9とする.F(x, y) = 0によって定まる陰関数 y = f(x)について,dy
dx
を求めよ.
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包絡線
媒介変数 tを含む関数 f(x, y, t)を考える.tを固定したとき,f(x, y, t) = 0 を満たす (x, y)は,x–y平面上で曲線を作る.tを変化させると,それに応じて曲線の形や位置が変わる.
例 2.7f(x, y, t) = x2 − 2(t − 1)x − y + t2とする.tを 0, 1, 2, 3, 4と変化させたとき,f(x, y, t) = 0によって得られる曲線は図 2.6のようになる.
図表 2.6 x2 − 2(t − 1)x − y + t2 = 0
−2 −1 0 1 2 3 4 5 6
0
2
4
6
8
10
12
14
16
t=0
t=1
t=2
t=3
t=4
x
y
媒介変数 tがある区間のすべての値を取るとき,曲線は連続的に変化する.これらの曲線をまとめて曲線族と呼ぶ.ここで次のような曲線 Cを考えよう.
• Cは曲線族のすべての曲線に接する
• C上のどの点でも,曲線族に接している
もし上記の条件を満たす曲線 Cが存在するならば,それを曲線族の包絡線という.図 2.7の直線が包絡線である。包絡線の関数を求めてみよう。tを固定すると曲線族に含まれるひとつの曲線が定まる。曲線は
かならず包絡線と接する点を持っているので、tを固定することは、接点を一つ定めていることになる。接点の集まりが包絡線と考えてよいので、包絡線の関数は、tを媒介変数として (x(t), y(t))
と表現することができる。接点は曲線上の点なので、
f(x(t), y(t), t) = 0 (2.7)
を満たす。(2.7)の両辺を tで微分すると、
d
dtf(x(t), y(t), t) = fx(x(t), y(t), t)
dx(t)
dt+ fy(x(t), y(t), t)
dy(t)
dt+ ft(x(t), y(t), t) (2.8)
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図表 2.7 曲線族 x2 − 2(t − 1)x − y + t2 = 0の包絡線 C
−2 −1 0 1 2 3 4 5 6
−2
0
2
4
6
8
10
12
14
x
y
C
を得る。一方、(x(t), y(t))における包絡線 Cの接線の傾きは dy(t)dt /
dx(t)dt である。これは、次の
ように示すことができる。
dy
dx= lim
∆x!0
∆y
∆x= lim
∆t!0
y(t + ∆t) − y(t)
x(t + ∆t) − x(t)
= lim∆t!0
y(t + ∆t) − y(t)
∆t
∆t
x(t + ∆t) − x(t)
=dy(t)
dt/dx(t)
dt(2.9)
また、f(x, y, t) = 0を xと yの陰関数と見て、点 (x(t), y(t))における傾きを計算すると、陰関数定理より
dy
dx= −
fx(x(t), y(t), t)
fy(x(t), y(t), t)(2.10)
となる。包絡線 Cの接線と曲線の接線は一致していなくてはならないので、傾きも等しい。よって、(2.9)と (2.10)より、
fx(x(t), y(t), t)dx(t)
dt+ fy(x(t), y(t), t)
dy(t)
dt= 0 (2.11)
とならなくてはならない。結局、(2.8)と (2.11)より、
ft(x(t), y(t), t) = 0 (2.12)
となった。包絡線の関数は (2.7)と (2.12)より求められる。
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例題:短期費用曲線と長期費用曲線¶ ³短期の費用曲線が、
y = ex−t + t
と与えられているとする。ここで、xは生産量、tは規模を表すパラメータである。長期費用曲線を求めよ。
µ ´長期費用曲線は、短期費用曲線の包絡線である。f(x, y, t) = ex−t +t−yとおくと、(2.7)の条件は、
ex−t + t − y = 0
となる。また、(2.12)の条件は、
−e(x−t) = 1
である。これらから tを消去すると、包絡線 y = x + 1を得る。 ¥
演習問題 2.6図表 2.7の包絡線 Cの関数を求めよ。
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