-
1274
6. 全用量反応試験を通しての結果の比較と解析
6.1 試験対象集団
6.1.1 各試験の疾患特性,選択/除外基準
用量反応性試験における主な選択 /除外基準を表ト 6-1に示す。また,人口統計学的特性及び疾患の特性を表ト
6-2に示す。
人口統計学的特性は典型的な RA 患者を代表するもので,平均年齢の範囲は 51~55歳,女性の割合の範囲は
61~88%であった。本邦の 202-JA 試験における平均体重は 52 kg で,欧米の試験での平均体重 70~77kg
に比べて小さかった。
選択基準で過去に少なくとも 1 剤の DMARD で効果不十分の記録を有することが必要とされたため,いずれの試験も RA
罹病期間が平均 10 年前後(300-EU 試験の患者選択基準では罹病期間の上限を 10 年未満としていたため平均 7.1
年と短めである)であり,その間に平均約 3 剤以上の DMARD に対して無効であった病歴を有していた。
投与開始時に MTX をはじめとする DMARD を用いていた患者の割合は,試験により違いが認められ,16.0009 試験では
44~47%,202-JA 試験で 63~77%であった。300-EU試験では全例が DMARD を使用していた。また,およそ 7
割の患者が DMARD 以外にも NSAID 及びステロイドの併用療法を行っていた。
-
1275
表ト 6-1 主な選択・除外基準:用量反応試験
16.0004 試験【ト-13】 16.0009 試験【ト-14】 202-JA 試験【ト-2】 300-EU
試験【ト-17】
試 験 デ ザ
イン プラセボ対照二重盲検無作為化並行
試験(第Ⅱ相) プラセボ対照二重盲検無作為化
並行試験(第Ⅲ相) プラセボ対照二重盲検無作為化並行試験(後期
第Ⅱ相) プラセボ対照二重盲検無作為化並行
試験(第Ⅲ相)
・1987 年 ACR の定義による RA 患者
・ESR≧28 mm/hr,CRP >2 mg/dL,朝のこわばりの持続時間≧45 分のうち 1 項目以上が該当。
・クラスⅠ,Ⅱ又はⅢの RA
・DMARD W/O 期間中,治験期間中の避妊に同意
・GOT 及び GPT が検査正常範囲上限 2 倍以内,Hb≧8.5 g/dL,PLT≧125000/mm3,WBC≧3500
個 /mm3,血清クレアチニン≦2 mg/dL 注 1)
選択基準
・18 歳以上
・1~4 種類の DMARD が無効
・総疼痛関節数 12 以上,総腫脹関節数 10 以上
・投与開始前 5 日以内の血清妊娠検査が陰性
・DMARD W/O 期間,治験期間中の避妊に同意
・被験薬を溶解自己注射が可能又は被指名者に注射させることができる。
・説明を理解し自発的な文書同意が得られる。
・20 歳以上 75 歳以下
・1 剤以上の DMARD が無効
・総疼痛関節数 12 以上,総腫脹関節数 6 以上
・女性の場合少なくとも閉経後 1 年経過,妊娠能力ある場合妊娠検査(尿)で妊娠を否定で
きる
・治験参加に自由意思による同意が得られる
・入院外来問わず
・18 歳以上 75 歳以下
・1 剤以上の DMARD が無効
・総疼痛関節数 12 以上,総腫脹関節数 6 以上
・治験参加に自由意思による同意が得
られる
除外基準 ・以前に TNR-001,TNF
に対する抗体,または試験的にメタロプロテアーゼ阻害剤を投与されたことがある(ミノサイクリンまたはドキシサイクリン投与は,RA
治療目的でない場合は許容された)。
・DMARD W/O 期間前 4 週間の間に関節内にステロイド剤を投与された。 ・妊婦または授乳婦。 [重大な合併症]
・非代償性うっ血性心不全 ・ウォッシュアウト 12 ヵ月以内の心筋梗塞 ・不安定または安定狭心症
・コントロールされていない高血圧 ・癌の病歴(皮膚基底細胞癌および扁平上皮細胞癌,もしくは子宮頚癌を除く)などの状態がウォッシュアウト
5 年以内にある ・重度肺疾患(薬物療法または酸素療法が必要) ・インスリン依存性糖尿病 ・HIV 陽性であることがわかっている
・乾癬性関節炎 ・患者の担当医師がこの試験が患者に害を及ぼすと判定した状態。
・治験実施計画書に従う能力またはインフォームドコンセントを与えるのにさしつかえがあると思われる精神科疾患に現在または過去に罹患。
・治験実施計画書に従う能力の妨げとなるアルコールまたは薬物乱用歴がある。
-
1276
表ト 6-2 人口統計学的特性及び疾患の特性:用量反応試験
16.0004 試験 16.0009 試験 202-JA 試験 300-EU 試験
TNR-001 (mg/m2×2/週)
TNR-001 (mg×2/週)
TNR-001 (mg×2/週) TNR-001(mg/週)
プラ セボ 0.25 2 16
プラ セボ 10 25
プラ セボ 10 25
プラ セボ 10 ×1 10×2 25×1 25×2
項 目 N=44 N=46 N=46 N=44 N=79 N=73 N=77 N=48 N=50 N=49 N=105
N=110 N=111 N=111 N=111 平均年齢(歳)* 55 54 52 52 51 52 53 52 53 53 53
53 54 54 53 女性(%) 82 70 61 82 76 85 75 85 88 84 74 80 77 78 80
白人(%) 91 96 100 93 90 96 95 0 0 0 99 100 98 99 100 平均体重(kg)* 75 77
77 74 73 73 76 52 52 52 70 72 72 68 68 平均罹病期間(年)*a >5 >5
>5 >5 12 13 11 11 10 12 7 7 7 7 8 RF 陽性(%) 76b 93c 83c 73d 77
79 78 94 88 96 82 79 89 89 89 前治療薬 無効 DMARD(剤)* NA NA NA NA 3.0 3.4
3.3 3.2e 3.1e 3.5e ----- ----- ----- ----- ----- MTX 投与歴有り(%) 34 41
30 27 90 92 87 88 88 84 ----- ----- ----- ----- ----- DMARD W/O 有
り(%) 98 93 98 91 47 44 44 77 74 63 100 100 100 100 100
投与開始時における
併用療法
ステロイド剤(%) 75 76 80 91 58 64 81 85 82 88 71 77 71 68 70 NSAID(%)
77 80 70 75 84 68 68 92 94 88 85 82 86 83 86
* 平均値 a: 試験 16.0004 では年数幅でデータを得た。 b: 検討した 25 例中 c: 検討した 29 例中 d:
検討した 26 例中 e: 4 剤以上は 4 剤として平均値を算出 -----:実施せず
-
1277
6.1.2 試験間における基準値特性の差異
用量反応試験における投与開始時時の RA 活動性を表ト 6-3に示す。用量反応試験に参加した患者は,活動性の RA
を有しており,16.0004 及び 16.0009 試験【ト-13,14】では,平均で総疼痛関節数 29 個以上,総腫脹関節数 22
個以上を有していた。
本邦ブリッジング試験(202-JA 試験【ト-2】)においても投与開始時 RA 活動性は高く,ESR
を除く項目に関しては,ブリッジング対象の 16.0009 試験と類似した数値が得られた。本邦で ESR
が米国に比べて高い値が得られたことに関しては,CRP については両試験間に大きな差はなく,総疼痛及び総腫脹関節数は 16.0009
試験の方がやや多かったため,本邦患者の RA 活動性が高いためであるとは考えられなかった。最近,海外から文献報告された DMARD
の臨床試験における投与開始前の ESR の値1,2,3,4は,16.0009 試験での値に類似していた。一方,202-JA
試験における値は,本邦で実施された他の臨床試験で報告された値5,6と類似しており,日本人 RA 患者の ESR
は米国より全体に高い傾向であると考えられた。
16.0004,16.0009 及び 300-EU 試験【ト-17】では,ESR の値に類似性が見られた。また ESR 以外の
RA 活動性指標には,300-EU 試験についても,米国及び本邦試験と類似の値が得られた。
以上から,本薬の有効性検討試験では,投与開始時において日米欧でほぼ類似した
RA 活動性を有する患者を対象に試験が開始されたと判断した。
-
1278
表ト 6-3 投与開始時における RA 活動性指標項目の平均値:用量反応試験
16.0004 試験 16.0009 試験 202-JA 試験 TNR-001(mg/m2×2/週)
TNR-001(mg×2/週) TNR-001(mg×2/週) プラセボ 0.25 2 16 プラセボ 10 25 プラセボ 10
25 項 目 N=44 N=46 N=46 N=44 N=79 N=73 N=77 N=48 N=50 N=49 総疼痛関節数 a
29 32 32 30 35 34 32 28 26 30 総腫脹関節数 b 22 24 24 24 25 25 25 23 21
24 医師による全般評価 c 7.0 7.4* 7.2 6.5 6.8 6.9 6.9 6.7 6.7 6.8 被験者による全般評価
c 6.7 7.1* 6.9 6.5 6.9 6.9 7.0 6.6 6.7 7.1 被験者による痛みの程度 c 6.4 6.9*
6.7 6.3 6.5 6.5 6.6 6.6 6.3 6.7 朝のこわばりの持続時間(時) 4.9 4.3* 5.2 4.9 4.9
4.5 5.1 4.8 3.2 4.8 HAQd 45 48# 42 41 1.7 1.7 1.6 1.7 1.7 1.8
ESR(mm/hr)e 40§ 44* 36* 35† 39 43 35 73 76 69 CRP(mg/dL)f 3.9‡ 4.1
3.6 3.6 4.1 5.3 4.7 5.0 5.1 4.6 300-EU 試験 TNR-001(mg/週) プラセボ 10×1
10×2 25×1 25×2 項 目 N=105 N=122 N=110 N=111 N=111 総疼痛関節数 a 31 31 31
31 31 総腫脹関節数 b 22 23 22 22 22 医師による全般評価 c 6.8 6.7 6.3 6.7 6.7
被験者による全般評価 c 6.9 6.8 6.6 6.8 6.9 被験者による痛みの程度 c 6.6 6.5 6.4 6.5 6.6
朝のこわばりの持続時間(時) 4.3 3.6 3.8 3.7 3.8 HAQd ----- ----- ----- -----
----- ESR(mm/hr)e 46 44 41 43 48 CRP(mg/dL)f 4.6 4.9 3.9 4.5 4.9 a:
スケール 0~71,b: スケール 0~68,c: 0=最良,10=最悪,d: 0 – 10 (Likert scale),e: 0
= best,3 = worst,f: Normal range: 0 – 0.79 mg/dL -----:実施せず
*n=45,†n=42,§n=40,#n=44,‡n=43
-
1279
6.1.3 主たる有効性の評価対象となった試験対象集団と市販後に使用が予想される患者集団との差異
主たる有効性の評価対象となった試験の対象は DMARD が無効の病歴を有する患者である。本薬の臨床試験は RA
の早期患者から罹病期間 10 年以上の病歴を有する患者までが対象に実施されており,抗リウマチ薬の治療対象となる RA
患者を網羅して実施されている。この点で臨床試験対象患者と市販後に使用が予想される患者集団の差異は
ないものと考えられた。 しかし,臨床試験では安全性を考慮して重大な合併症を有する患者は除外されてい
る。除外例としては,心疾患,肺疾患,癌又は癌の既往,乾癬,乾癬性関節炎などを有
する患者であり,市販後においては高齢者に多く見られる循環器系の障害,癌や RA
患者に多くみられる自己免疫疾患を合併している患者が,本薬処方の対象となる可能性が
ある。
6.1.4 中止症例数,中止理由及び中止時期
用量反応試験における試験の完了・中止例数及び中止理由を表ト 6-4に示す。 202-JA 試験での投与完了率は,プラセボ群
75%,10 mg 群 92%,25 mg 群 96%であ
り,300-EU 試験でもプラセボ群で 79%及び実薬投与群でいずれも
90%以上の投与完了率が得られ,両試験において同様の傾向であった。米国試験でのプラセボ投与群の投与
完了率は,3 ヵ月間投与の 16.0004 試験で 52%に対し,6 ヵ月間投与の 16.0009
試験は33%と低かった。投与期間が 3 ヵ月間の 16.0004,202-JA 及び 300-EU では最高用量群(16 mg/m2
または 25 mg)での投与完了率は,いずれも 90%以上であった。
一方,中止理由で最も多かったのは,効果不十分によるものであった。有害事象に
よる中止例はプラセボ投与群及び本薬投与群の間に有意差は認められなかった。その他
の中止理由にも群間に差違は見られなかった。 効果不十分のための中止例について,その中止時期を表ト
6-5に示す。全ての試験に
共通して,効果不十分を理由とした中止はプラセボ群が最も多く,次いで本薬の低用量
群で高い傾向が見られた。効果不十分及び有害事象による中止の時期は,投与開始直後
に多く,投与期間が長くなると徐々に減る傾向であった。
-
1280
表ト 6-4 試験の完了・中止例数:用量反応試験
-------------16.0004 試験------------- -----------16.0009
試験----------- -------------202-JA 試験-------------
TNR-001(mg/m2×2/週) TNR-001(mg×2/週) TNR-001(mg×2/週)
プラセボ 0.25 2 16
プラセボ10 25
プラセボ 10 25
投与完了の有無 N=44 N=46 N=46 N=44 N=79 N=73 N=77 N=48 N=50 N=49 完了 23
(52) 28 (61) 34 (74)† 41 (93)* 26 (33) 51 (70)* 59 (77)* 36(75) 46
(92) 47 (96) 中止(全般) 21 (48) 18 (39) 12 (26)† 3 (7)* 53 (67) 22
(30)* 18 (23)* 12(25) 4 (8) 2 (4) 効果不十分 19 (43) 16 (35) 8 (17)† 2
(5)* 41 (52) 14 (19)* 11 (14)* 5 (10) 0 (0) 2 (4) 有害事象 1 (2) 2 (4)
2 (4) 0 (0) 3 (4) 5 (7) 2 (3) 3 (6) 2 (4) 0 (0) プロトコール違反 0 (0) 0
(0) 0 (0) 1 (2) 3 (4) 2 (3) 3 (4) 1 (2) 1 (2) 0 (0) 被験者の希望 0 (0) 0
(0) 0 (0) 0 (0) 5 (6) 1 (1) 2 (3) 2 (4) 0 (0) 0 (0) その他 1 (2) 0 (0)
2 (4) 0 (0) 1 (1) 0 (0) 0 (0) 1 (2) 1 (2) 0 (0)
-------------------300-EU 試験-------------------
TNR-001(mg/週)
プラセボ 10×1 10×2 25×1 25×2
項 目 N=105 N=122 N=110 N=111 N=111 完了 85 (79) 114 (93) 101 (92)
101 (91) 105 (95)中止(全般) 20 (19) 8 (7) 9 (8) 10 (9) 6 (5) 効果不十分 15
(14) 5 (4) 4 (4) 3 (3) 2 (2) 有害事象 1 (1) 1 (1) 2 (2) 3 (3) 4 (4)
プロトコール違反 1 (1) 2 (2) 2 (2) 3 (3) 0 (0) 被験者の希望 2 (2) 0 (0) 1 (1) 0
(0) 0 (0) その他 1 (1) 0 (0) 0 (0) 1 (1) 0 (0)
*p
-
1281
表ト 6-5 効果不十分による中止例の発現時期:用量反応試験
-------------16.0004 試験------------- -------------16.0009
試験------------- -------------202-JA 試験-------------
TNR-001(mg/m2×2/週) TNR-001(mg×2/週) TNR-001(mg×2/週)
プラセボ 0.25 2 16
プラセボ 10 25
プラセボ 10 25
試験開始後日 N=44 N=46 N=46 N=44 N=79 N=73 N=77 N=48 N=50 N=49 14 6 2
0 0 2 0 2 1a 0a 0a 30 8 10 1 0 19 8 5 1b 0b 0b 60 4 4 5 1 12 1 1 3c
0c 2c 90 1 0 2 1 8 4 6 0d 0d 0d
120 - - - - 5 2 1 - - - 150 - - - - 4 4 1 - - - 180 - - - - 3 3
2 - - -
a: 0<~≦2 週 b: 2<~≦4 週 c: 4<~≦8 週 d: 8<~≦12 週 -:実施せず 300-EU
試験は集計せず
-
1282
6.2 有効性試験の結果の比較検討
6.2.1 用量反応試験
1) ACR 改善基準による有効率 用量反応試験における 3 ヵ月後の ACR 改善基準による有効率(ACR20 及び
ACR50)を図ト 6-1に示す。 これらの用量反応試験の結果から,本薬 10
mg×1/週投与以上の用量において,プラセボ群と比較して,統計学的に有意な ACR
改善基準による有効率(ACR20)が得られた。16.0009 試験では 10 mg×2/週投与群と 25
mg×2/週投与群との間に統計学的な有意差が認められたが,300-EU 及び 202-JA 試験では,10 mg×2/週投与,25
mg×1/週投与及び 25 mg×2/週投与の用量群における ACR20 の用量間の差は小さく,10 mg×2/週投与と 25
mg×2/週投与の用量間で有意差は認められなかった。202-JA試験では,10 mg×2/週投与と 25 mg×2/週投与の
ACR20 はほぼ同様の値であったが,16.0009 及び 300-EU 試験では,25 mg×2/週投与で最も高い有効性が得られた。
ACR50 及び ACR70 についても,各試験の用量群での値は ACR20 とほぼ同様の傾向が認められた。すなわち,202-JA
及び 300-EU 試験の 10 mg×2/週,25 mg 週 1回及び 25 mg×2/週投与群における ACR50 の成績は
30%前後,ACR70 の成績は 10%前後であり,用量群間の有意差はいずれの試験でも認められなかった。これら日欧
の試験における ACR50 及び ACR70 の成績は,16.0009 試験の 25
mg×2/週投与群のとも類似した成績であった。しかし,16.0009 試験では,ACR50 及び ACR70 ともに,25
mg×2/週投与群が 10 mg×2/週投与群より有意に高い値で,用量間の差が認められた。臨床的効果発現時期について,図ト
6-2に示す。この図から,いずれの用量群とも ACR 改善は速やかに現れ,25 mg
群での改善が早くから認められた。202-JA試験では,10 mg 群の改善が,25 mg 群より早く認められた。
-
1283
16.0004
147
33
9
46
22
75
57
0
20
40
60
80
100
1 2ACR20 ACR50
%
プラセボ
0.25mg/m2×2/週
2.0mg/m2×2/週
16mg/m2×2/週
16.0009試験
23
84
45
138
62
41
15
0
20
40
60
80
100
1 2 3ACR20 ACR50 ACR70
%
プラセボ
10mg×2/週
25mg×2/週
202-JA 試験
0 0
64.0
32.0
12.0
65.3
26.5
10.26.3
0
20
40
60
80
100
1 2 3ACR20 ACR50 ACR70
%
プラセボ
10mg×2/週
25mg×2/週
300-EU
125
1
47
22
4
63
28
9
59
26
10
70
34
13
0
20
40
60
80
100
1 2 3ACR20 ACR50 ACR70
%
プラセボ
10mg×1/週
10mg×2/週
25mg×1/週
25mg×2/週
図ト6-1 ACR 改善基準による有効率:3 ヵ月
47 42
14 16
-
1284
16.0004 試験試験試験試験ACR20
0
20
40
60
80
プラセボ
0.25mg/m2
2.0mg/m2
16mg/m2
ACR50
0
20
40
60
80
プラセボ
0.25mg/m2
2.0mg/m2
16mg/m2
16.0009 試験試験試験試験ACR20
0
20
40
60
80
プラセボ
10mg
25mg
ACR50
0
20
40
60
80
プラセボ
10mg
25mg
202-JA試験試験試験試験ACR20
0
20
40
60
80
プラセボ
10mg
25mg
ACR50
0
20
40
60
80
プラセボ
10mg
25mg
図ト6-2 評価日ごとの ACR20 及び ACR50:用量反応試験
0.5 1 2 3 4 5 6 ヵ月
0.5 1 2 3 ヵ月
% %
%%
%
0.5 1 2 3 4 5 6 ヵ月
0.5 1 2 3 ヵ月
%
1 2 3 ヵ月
1 2 3 ヵ月
-
1285
2) 数値化 ACR
用量反応試験における数値化 ACR 時間積分値を表ト 6-6に示す。
表ト 6-6 数値化 ACR の時間積分値(AUC ACR-N):3 ヵ月
202-JA 16.0009 TNR-001(mg×2/週) TNR-001(mg×2/週) プラセボ
N=48 10 mg N=50 25 mg N=49
プラセボN=79 10 mg N=73
25 mg N=77
平均値 42.9 312.8* 279.2*† 78.0 204.9* 282.1*‡
±SD 72.8 202.2 247.0 137.5 189.2 230.9
*:各々の試験のプラセボ群と比べて有意差あり(p<0.01, Wilcoxon の 2 標本 t 検定) †:10 mg
群との比較(p=0.186, Wilcoxon の 2 標本 t 検定) ‡:10 mg 群との比較(p=0.054,
Wilcoxon の 2 標本 t 検定) 3) RA 活動性指標
用量反応試験における RA 活動性指標の投与開始時からの改善率を表ト 6-7に示す。 用量反応試験における最小投与量は 0.25
mg/m2 であったが,投与開始時からの変化はプラセボ群と類似しており,無作用量と考えられた。16.0004 及び 16.0009
試験において,これより高い用量の 16 mg/m2,10 mg 及び 25 mg では,投与 2 週間後からRA
活動性指標の多くで有意の改善が認められた。202-JA 及び 300-EU 試験においても,10 mg×2/週投与,25
mg×1/週投与及び 25 mg×2/週投与の各群において,投与期間の 3 ヵ月間に 16.0009 試験と同じく 3
ヵ月間と類似の改善率が得られた。すなわち,16.0009,202-JA 及び 300-EU
試験における,各指標の改善率は,総疼痛関節数で約 43~57%,総腫脹関節数及び医師による全般評価でそれぞれ
32~55%及び36~56%,被験者による全般評価及び被験者による痛みの程度でそれぞれ 33~46%及び 41~50%,HAQ で
27~40%,ESR で 19~32%であった。CRP については,欧米での改善が 16~40%であったのに比べ,202-JA
試験では 10 mg 群 48%,25 mg 群65%と高い改善が認められた。
-
1286
表ト 6-7 RA 活動性指標の投与開始時からの平均改善率(%)a:用量反応試験 (1)
16.0004 試験 16.0009 試験 202-JA 試験
プラセボ TNR-001 (mg/m2×2/週) プラセボ
TNR-001 (mg×2/週)
TNR-001 (mg×2/週)
0.25 2 16 10 25 プラセボ
10 25 評価項目 N=44 N=46 N=46 N=44 p-値 b N=79 N=73 N=77 p-値 b N=48
N=50 N=49 総疼痛関節数総疼痛関節数総疼痛関節数総疼痛関節数
2 週間後 24 31 46*• 55*† 0.000 -22 21* 31* 0.067 9 37 34 1 ヵ月後 28
30 48*• 56*† 0.001 6 35* 40* 0.002 8 47 44 3 ヵ月後 28 25 46• 64*†‡
0.000 16 43* 55*# 0.000 9 57 56 6 ヵ月後 ----- ----- ----- ----- -----
6 47* 56* 0.000 ----- ----- -----
総腫脹関節数総腫脹関節数総腫脹関節数総腫脹関節数 2 週間後 22 25 35 37* 0.009 -18 13* 16*
0.113 3 30 30 1 ヵ月後 24 17 39• 46*† 0.004 -7 25* 28* 0.007 2 44 32 3
ヵ月後 24 16 32 58*†‡ 0.000 4 32* 47*# 0.001 -1 49 51 6 ヵ月後 -----
----- ----- ----- ----- -4 48* 47* 0.000 ----- ----- -----
医師による全般評価医師による全般評価医師による全般評価医師による全般評価 2 週間後 12 23 36*• 41*† 0.000
5 19* 26* 0.001 6 25 27 1 ヵ月後 15 25 34* 45*† 0.000 8 32* 37* 0.000
8 38 37 3 ヵ月後 18 23 39*• 60*†‡ 0.000 7 36* 46* 0.000 5 52 56 6 ヵ月後
----- ----- ----- ----- ----- 3 35* 45* 0.000 ----- ----- -----
被験者による全般評価被験者による全般評価被験者による全般評価被験者による全般評価 2 週間後 2 16* 32*• 38*†
0.000 2 20* 27* 0.000 2 25 28 1 ヵ月後 3 21* 30* 37* 0.001 4 32* 36*
0.000 4 33 32 3 ヵ月後 2 16 31* 51*†‡ 0.000 4 33* 47*# 0.000 0 46 44 6
ヵ月後 ----- ----- ----- ----- ----- -3 33* 46*# 0.000 ----- -----
-----
被験者による痛みの程度被験者による痛みの程度被験者による痛みの程度被験者による痛みの程度 2 週間後 -12 14* 34*•
42*† 0.000 -18 26* 35* 0.001 -1 20 23 1 ヵ月後 -5 17* 26* 36* 0.002
-17 34* 44* 0.000 6 30 32 3 ヵ月後 -3 15 24* 47*†‡ 0.000 -13 42* 51*
0.000 3 41 44 6 ヵ月後 ----- ----- ----- ----- ----- -22 40* 53* 0.000
----- ----- -----
a: 正の値は改善,負の値は悪化を示す。 b: 試験内評価の p 値については,CRP と朝のこわばりの持続時間以外の項目は
ANOVA で検定。CRP と朝のこわばりの持続時間は順位に基づく ANOVA を実施。 * p
-
1287
表ト 6-7 RA 活動性指標の投与開始時からの平均改善率(%)a:用量反応試験 (2)
16.0004 試験 16.0009 試験 202-JA 試験 TNR-001(mg/m2×2/週)
TNR-001(mg×2/週) TNR-001(mg×2/週)
プラセボ0.25 2 16
プラセボ10 25
プラセボ10 25
評価項目 N=44 N=46 N=46 N=44 p-値 b N=79 N=73 N=77 p-値 b N=48 N=50
N=49 p-値b HAQ
2 週間後 5 7 14* 23*†‡ 0.000 4 15* 18* 0.015 -2 23 14 ----- 1 ヵ月後 6
9 15* 23*† 0.001 7 22* 35* 0.000 1 30 22 ----- 3 ヵ月後 4 8 10 26*†‡
0.000 8 30* 36* 0.000 -4 40 27 ----- 6 ヵ月後 評価せず 2 34* 40* 0.000
----- ----- ----- -----
朝のこわばりの持続時間朝のこわばりの持続時間朝のこわばりの持続時間朝のこわばりの持続時間 2 週間後 -21 -53 42*•
66*†‡ 0.000 -2 41* -11* 0.000 -3 41 -2 ----- 1 ヵ月後 -3 -56 22*•
68*†‡ 0.000 -21 48* 49* 0.000 -6 49 -28 ----- 3 ヵ月後 -4 -56 42*•
74*†‡ 0.000 -12 33* 35* 0.000 -8 62 42 ----- 6 ヵ月後 評価せず -22 35* 16*
0.000 ----- ----- ----- -----
ESRc 2 週間後 -7 (0) 1 (0) 17*• (20) 34*†‡ (32) 0.000 -4 (0)
12*(20) 21* (29) 0.000 -6 28 23 ----- 1 ヵ月後 -20 (-9) -7 (3) 10*
(19) 32*† (36) 0.000 -8 (0) 13*(26) 17* (31) 0.035 -11 28 27 -----
3 ヵ月後 -20 (-6) -20 (0) 11*• (25) 30*† (37) 0.001 -13(0) 19*(24) 19*
(40) 0.003 -7 32 32 ----- 6 ヵ月後 評価せず -18(-8) 10*(24) 18*(33) 0.002
----- ----- ----- -----
CRPc 2 週間後 -158 (0) -31* (19) 27*• (45) 54*† (80) 0.000 -41 (-1)
33*(54) 54* (69) 0.000 -15 61 64 ----- 1 ヵ月後 -209 (-9) -212 (4)
-8*• (15) 46*† (58) 0.000 -114 (-8) 0* (37) 21* (40) 0.019 -17 24
61 ----- 3 ヵ月後 -170 (0) -144* (17) -27* (22) 54*†‡ (79) 0.000 -156
(-25) 16* (50) 29* (51) 0.119 -17 48 65 ----- 6 ヵ月後 評価せず -205 (-28)
-18* (39) 32*# (57) 0.098 ----- ----- ----- -----
a: 正の値は改善,負の値は悪化を示す。 b: 試験内評価の p 値については,CRP と朝のこわばりの持続時間以外の項目は
ANOVA で検定。CRP と朝のこわばりの持続時間は順位に基づく
ANOVA を実施。 c: データの分布が非対称であるため,中央値を括弧内に示す。 * p
-
1288
表ト 6-7 RA 活動性指標の投与開始時からの平均改善率(%):用量反応試験 (3)
300-EU 試験
TNR-001 (mg/週) TNR-001 (mg/週)
プラ セボ 10×1 10×2 25×1 25×2
プラ セボ 10×1 10×2 25×1 25×2
項 目 N=104 N=121 N=110 N=111 N=111 項 目 N=104 N=121 N=110 N=111
N=111 総疼痛関節数総疼痛関節数総疼痛関節数総疼痛関節数 HAQ N=81 N=121 N=96 N=101 N=99
2 週間後 14 30 35 39 37 2 週間後 ----- ----- ----- ----- ----- 1 ヵ月後
17 31 39 41 44 1 ヵ月後 ----- ----- ----- ----- ----- 3 ヵ月後 16 43 50
53 57 3 ヵ月後 3 22 33 35 31
総腫脹関節数総腫脹関節数総腫脹関節数総腫脹関節数
朝のこわばりの持続時間朝のこわばりの持続時間朝のこわばりの持続時間朝のこわばりの持続時間 2 週間後 13 28 31 39 37 2
週間後 ----- ----- ----- ----- ----- 1 ヵ月後 17 30 36 46 44 1 ヵ月後 -----
----- ----- ----- ----- 3 ヵ月後 18 37 51 55 53 3 ヵ月後 ----- -----
----- ----- -----
医師による全般評価医師による全般評価医師による全般評価医師による全般評価 ESR N=100 N=117 N=106 N=109
N=109 2 週間後 9 30 29 34 35 2 週間後 -16 21 25 30 36 1 ヵ月後 11 27 31 37
39 1 ヵ月後 -13 15 22 22 29 3 ヵ月後 7 35 45 46 51 3 ヵ月後 -20 17 20 23
30
被験者による全般評価被験者による全般評価被験者による全般評価被験者による全般評価 CRP N=87 N=113 N=101
N=103 N=103 2 週間後 2 29 28 28 32 2 週間後 ----- ----- ----- ----- -----
1 ヵ月後 6 22 27 30 33 1 ヵ月後 ----- ----- ----- ----- ----- 3 ヵ月後 3 32
42 39 45 3 ヵ月後 -33 28 33 40 35
被験者による痛みの程度被験者による痛みの程度被験者による痛みの程度被験者による痛みの程度 2 週間後 4 32 26 33 36
1 ヵ月後 7 22 27 31 36 3 ヵ月後 1 34 44 43 48
-----:実施せず
-
1289
6.2.2 長期投与試験
1) ACR 改善基準による有効率 米国における長期投与試験で ACR 改善基準による有効率(ACR20,ACR50
及びACR70)の算出に必要な全評価項目を検討したのは,最初に 16.0009 試験【ト-14】に登録し,その後 16.0018
試験【ト-20】に移行した被験者のみであった。本邦においては,202-JA 試験から長期投与試験 310-JA
に移行した被験者であり,これら16.0018 及び 310-JA 試験における ACR 改善(20%,50%,70%)の推移を表ト
6-8に示す。なお表中の 310-JA 試験の結果は,治験薬投与の実質の開始時点である202-JA 試験の開始時点での RA
活動性を基準とした改善率である。 16.0009 試験【ト-14】では,6
ヵ月間にわたる投与に続いて維持期を設け,この間に盲検を維持したまま,あるいは非盲検下で本薬を 6~12 ヵ月間使用した後,被験者は
16.0018 試験【ト-20】に参加した。長期投与試験においては TNR-001 の投与期間は 6~21
ヵ月であった。患者の大部分(80%)は用量を 25 mg とし,20%の患者は 10 mg での投与を受けた。6%(13
名)の患者は投与初期の用量は 10 mg であったが,長期投与の開始時には 25 mg まで増量した。 310-JA 試験及び
16.0018 試験とも,長期投与試験に患者が移行した後も,ACR改善基準による有効率が得られており,16.0018 試験では 18
ヵ月後においても有効性の持続が認められた。
表ト 6-8 ACR 改善基準による有効率(%)(ACR20,ACR50,ACR70) :長期投与試験
16.0018試験a 310-JA試験b 3ヵ月 6ヵ月 9ヵ月 12ヵ月 15ヵ月 18ヵ月 3ヵ月 6ヵ月
n=134 n=116 n=112 n=106 n=101 n=32 n=122 n=118 ACR20 61 73 73 78
83 81 79.5 80.5 ACR50 31 42 48 50 56 63 32.8 39.8 ACR70 13 16 24 23
29 34 13.9 16.9
a: 最初に 16.0009 試験【ト-14】に参加し,その後 16.0018 試験【ト-20】に移行した被験者から得られた
16.0009 試験の投与開始時を基点として算出. データカットオフは1998 年.
b:最初に参加した 202-JA 試験の投与開始時を基準として算出.
2) RA 活動性指標 長期投与試験における RA 活動性指標の投与開始時からの推移を表ト 6-9及び表ト
6-10に,投与開始時からの改善率を表ト 6-11及び表ト 6-12に示す。
16.0008【ト-19】,16.0009【ト-14】,16.0018【ト-20】及び 310-JA 試験【ト-3】の全用量群における
RA 活動性評価項目の平均値の推移,改善を経時的に評価した。
総疼痛及び総腫脹関節数をはじめとした RA 活動性の抑制は,長期投与試験においても認められ,各評価項目の平均値の推移は,ESR
以外について米国試験と本邦310-JA 試験でほぼ同様であり,改善率も米国試験と本邦 310-JA
試験で,ほぼ同様の改善率が得られた。ESR
は試験期間を通じて本邦試験での値が米国試験より高く推移したが,改善率は本邦試験の方が高かった。また,CRP
についても本邦での改善率が米国試験より高かった。
-
1290
310-JA 試験の被験者は 202-JA 試験終了後に移行した被験者であり,202-JA 試験での 3 ヵ月時点の RA
活動性指標と 310-JA 試験での 3 ヵ月時点の RA 活動性指標を比較した(表ト 6-13)。202-JA 試験でプラセボまたは
TNR-001 の 10 mg を投与された被験者では 310-JA 試験で 25 mg
を投与され,さらに改善が得られた。また202-JA 試験で TNR-001 の 25 mg を投与された被験者では 310-JA
試験移行後も202-JA 試験の 3 ヵ月時点とほぼ同様の値を示した。
表ト 6-9 RA 活動性指標の投与開始時からの推移:16.0008,16.0009 及び 16.0018試験,用量 10 又は
25 mg
評価項目 投与開始時 N=259 3 ヵ月後
N=235 6 ヵ月後
N=212 9 ヵ月後
N=200 総疼痛関節数(スケール 0~71) 33.2 13.9 11.6 11.9 総腫脹関節数(スケール 0~68)
25.5 13.5 11.2 10.3 朝のこわばりの持続時間 4.7 1.9 1.7 1.1 医師による全般評価 a 6.9 3.5
3.2 3.1 被験者による全般評価 a 6.9 3.8 3.3 3.3 ESR(mm/hr)b 35.7 24.7 24.7
23.1 CRP(mg/dL)c 4.5 2.2 2.0 1.8
評価項目 12 ヵ月後 N=189 15 ヵ月後
N=85 18 ヵ月後
N=32 総疼痛関節数(スケール 0~71) 11.0 9.7 16.5 総腫脹関節数(スケール 0~68) 9.2 8.6
13.2 朝のこわばりの持続時間 1.2 0.6 2.7 医師による全般評価 a 2.8 2.7 3.6 被験者による全般評価 a
3.0 2.9 3.9 ESR(mm/hr)b 24.7 25.5 23.8 CRP(mg/dL)c 1.8 2.0 1.3
a:0=最良,10=最悪 b:基準範囲:男性 1~13 mm/hr,女性 1~30 mm/hr c:基準範囲:0~0.79
mg/dL
-
1291
表ト 6-10 RA 活動性指標の投与開始時 a からの推移:310-JA 試験,用量 25 mg
評価項目 投与開始時d
N=128 3 ヵ月後
N=122 6 ヵ月後
N=118 総疼痛関節数(スケール 0~71) 28.62 9.58 8.77 総腫脹関節数(スケール 0~68) 22.65
9.42 8.25 朝のこわばりの持続時間 3.772 1.137 0.964 医師による全般評価 a 66.9 25.0 24.1
被験者による全般評価 a 68.2 35.5 36.4 ESR(mm/hr)b 72.91 42.27 41.93
CRP(mg/dL)c 4.945 1.447 1.414 a:患者が最初に参加した 202-JA
試験の投与開始時,各評価項目の値は全群の平均値 b:0=最良,100=最悪 c:基準範囲:男性 1~13 mm/hr,女性 1~30
mm/hr d:基準範囲:0~0.79 mg/dL
表ト 6-11 長期臨床試験の平均 RA 活動性評価項目の改善率 a:16.0008,16.0009 及び16.0018
試験,用量 10 mg 又は 25 mg
評価項目 3 ヵ月後
N=235 6 ヵ月後
N=212 9 ヵ月後
N=200 総疼痛関節数(スケール 0~71) 58 66 66 総腫脹関節数(スケール 0~68) 45 56 59
医師による全般評価 47 51 54 被験者による全般評価 42 48 50 朝のこわばりの持続時間(中央値) 80 83 88
ESR(中央値) 36 31 34 CRP 26 17 28
評価項目 12 ヵ月後
N=189 15 ヵ月後
N=85 18 ヵ月後
N=32 総疼痛関節数(スケール 0~71) 66 73 65 総腫脹関節数(スケール 0~68) 62 63 50
医師による全般評価 58 58 49 被験者による全般評価 53 54 44 朝のこわばりの持続時間(中央値) 88 88 75
ESR(中央値) 25 27 0 CRP 0 36 40 a:16.0008 試験又は 16.0009
試験の投与開始時を基準に改善率を算出した。
-
1292
表ト 6-12 長期臨床試験の平均 RA 活動性評価項目の改善率 a :310-JA 試験,用量 25 mg
評価項目 3 ヵ月後
N=122 6 ヵ月後
N=118 総疼痛関節数(スケール 0~71) 68.12 70.42 総腫脹関節数(スケール 0~68) 59.18
63.68 医師による全般評価 61.65 63.43 被験者による全般評価 48.31 46.69 朝のこわばりの持続時間(中央値)
75.00 83.30 ESR(中央値) 45.00 48.55 CRP 81.09 83.87 a:患者が最初に参加した
202-JA 試験の投与開始時を基準に改善率を算出した
表ト 6-13 202-JA 試験 3 ヵ月後から長期臨床試験 3 ヵ月後の 平均 RA 活動性評価項目の変化
(202-JA 試験から 310-JA 試験に移行した患者)
評価項目 プラセボ→25mg
N=13 10mg→25mg
N=14 25mg→25mg
N=14 総疼痛関節数(スケール 0~71) -16.0 -4.5 0 総腫脹関節数(スケール 0~68) -8.2 -3.5
0.5 被験者による痛みの程度 -26.0 0 2.0 医師による全般評価 -27.0 -4.0 2.0 被験者による全般評価
-25.0 1.0 -1.5 朝のこわばりの持続時間 -0.1 0 0 ESR -34.0 -3.0 0 CRP -2.2 -0.6
0 HAQ -0.4 -0.1 -0.1
*202-JA 試験の 3 ヵ月時点の値と 310-JA 試験の 3 ヵ月時点の値の差の中央値を示した。
負の値は改善、正の値は悪化を示す。
6.2.2.1 QOL の改善
16.0009【ト-14】,16.0018【ト-20】及び 310-JA 試験において TNR-001 の投与期間中にみられた
QOL の改善を表ト 6-14に示す(LOCF 法は採用せず)。QOL の改善は,日米いずれの試験でも TNR-001
の投与期間中を通じて維持された。
表ト 6-14 QOL:HAQ 身体障害指数のからの平均改善率 ( )内症例数
3 ヵ月後 6 ヵ月後 9 ヵ月後 12 ヵ月後 15 ヵ月後16.0009 及び 16.0018 試験 37 (134) 45
(116) 46 (109) 44 (100) 51 (36) 310-JA 試験 a 36 (121) 36 (117) 38
(109) 37 (103) 41 (42)
16.0009 及び 16.0018 試験投与量は 10 又は 25 mg,310-JA 試験は 25 mg
a:患者が最初に参加した 202-JA 試験の投与開始時を基準に改善率を算出した
-
1293
6.2.2.2 耐 性
TNR-001 の投与に伴う耐性の発現は認められなかった。
6.2.2.3 投与再開に対する反応
16.0004 試験では,34 名の患者が用量 16 mg/m2 の TNR-001 投与を受け,休薬期間をおいた後に
16.0008 試験に参加し,用量 25 mg の TNR-001 投与を受けた。16.0004 試験における最終投与と
16.0008 試験における初回投与との間隔は約 17 ヵ月であった。それぞれの試験における 3 ヵ月後の投与開始時から
20%以上の改善がみられた症例数を表ト 6-15に,総疼痛関節数及び総腫脹関節数の投与開始時から 3 ヵ月後までの推移を図ト
6-3に示す。
この結果から,TNR-001 投与を中断してもその後の投与再開により,罹患関節数を含む RA
活動性に中断前と同様の改善がみられることが示された。
表ト 6-15 投与開始 3 ヵ月後に 20%改善をみた患者数-先の試験との比較 (N=34)
評価項目
16.0004 試験 16 mg/m2
n (%)
16.0008 試験 25 mg n (%)
総疼痛関節数(スケール 0~71) 29 (85) 29 (85) 総腫脹関節数(スケール 0~68) 28 (82) 28
(82) 医師による全般評価 30 (88) 29 (85) 被験者による全般評価 28 (82) 24 (71) ESR 21
(62) 21 (62) CRP 21 (62) 24 (73) 朝のこわばりの持続時間 32 (94) 31 (91)
月月
16.0004/TNFR:Fc 16 mg
16.0008/TNFR:Fc 25 mg
罹患
関節数
(中
央値)
腫脹関節 圧痛関節
16.0004/TNFR :Fc 16 mg
16.0008/TNFR :Fc 25 mg
図ト6-3 休薬期間後,TNR-001 の投与を再開した患者における罹患関節数の再現性 (N=34)
総疼痛関節数 総腫脹関節数
-
1294
6.3 部分集団における結果の比較
6.3.1 性別
RA は女性に多い疾患で患者のおよそ 3/4 は女性であるが,性別によって有効性に差違があるか検討した。
用量反応試験における 3 ヵ月後の ACR20 を性別に表ト 6-16に示す。 TNR 投与群ではプラセボ群に対し男女とも高い
ACR 改善が認められ,本薬の効果に
性別による影響は認められなかった。
表ト 6-16 3 ヵ月後の ACR20 の層別解析(性別):用量反応試験
16.0004 試験 16.0009 試験
プラセボ TNR-001(mg/m2×2/週) プラセボ TNR-001(mg×2/週) 0.25 2 16 10 25
N=44 N=46 N=46 N=44 N=79 N=73 N=77 性別 n (%) n (%) n (%) n (%) n (%)
n (%) n (%)
男性 0/8 (0) 6/14 (43) 7/18 (39) 4/8 (50) 4/19 (21) 5/11 (45)
11/19 (58)
女性 6/36 (17) 9/32 (28) 14/28 (50) 29/36 (81) 14/60 (23) 29/62
(47) 37/58 (64)
202-JA 試験 300-EU 試験
プラセボ TNR-001(mg×1/週) プラセボ TNR-001(mg/週)
10 25 10×1 10×2 25×1 25×2 N=48 N=50 N=49 N=100 N=103 N=97 N=132
N=140 性別 n (%) n (%) n (%) n (%) n (%) n (%) n (%) n (%)
男性 2/7 (28.6) 4/6 (66.7) 3/8 (37.5) 4/25 (16) 13/22 (59) 16/25
(64) 19/24 (79) 15/21 (71)
女性 1/41 (2.4) 28/44 (63.6) 29/41 (70.7) 8/75 (11) 42/95 (44)
51/81 (63) 45/85 (53) 61/88 (69)
6.3.2 年齢
RA
の患者は若年者から高齢者まで幅広い年齢に及んでいる。したがって,本薬の有効性が年齢の影響を受けるか検討することは重要と考えられた。用量反応試験における
3 ヵ月後の ACR20 を年齢範囲別に表ト 6-17に示す。 65 歳以上の高齢者とそれより若齢者における ACR
改善には差が認められず,本薬の
効果に年齢の影響は認められなかった。
-
1295
表ト 6-17 3 ヵ月後の ACR 20 の層別解析(年齢):用量反応試験
16.0004 試験 16.0009 試験 プラセボ TNR-001(mg/m2×2/週) プラセボ
TNR-001(mg×2/週) 0.25 2 16 10 25
N=44 N=46 N=46 N=44 N=79 N=73 N=77 年 齢 n (%) n (%) n (%) n (%) n
(%) n (%) n (%) <65 6/34 (18) 11/36 (31) 18/38 (47) 25/33 (76)
15/66 (23) 30/60 (50) 40/61 (66)≧65 0/10 (0) 4/10 (40) 3/8 (38)
8/11 (73) 3/13 (23) 4/13 (31) 8/16 (50)
202-JA 試験 300-EU 試験
プラセボ TNR-001(mg×2/週) プラセボ TNR-001(mg×/週) 10 25 10×1 10×2 25×1
25×2 N=48 N=50 N=49 N=100 N=117 N=106 N=109 N=109 年齢 n (%) n (%) n
(%) n (%) n (%) n (%) n (%) n (%)
<65 2/40(5.0) 25/39(64.1) 30/44(68.2) 9/85 (11) 37/91 (41) 54/86
(63) 46/82 (56) 66/92 (72)
≧65 1/8(12.5) 7/11(63.6) 2/5(40.0) 3/15 (20) 18/26 (69) 13/20
(65) 18/27 (67) 10/17 (59)
6.3.3 人種
本邦では 202-JA 試験を実施して,日本人の用量反応について米国での試験と類似性を検討した。その結果,3 ヵ月の ACR20
に類似性が認められブリッジングが成立した。米国,EU
で実施された用量反応試験において有効性に類似した結果が得られており,人種の影響は認められなかった。
-
1296
6.3.4 投与開始時のリウマトイド因子(RF)
RF はヒトやウサギなどの IgG の Fc 部分に対する自己抗体で,大部分は IgM クラスに属する。RA 患者のおよそ
80%には血中に IgM-RF が検出される,いわゆるセロポジティブの患者である。本薬の有効性が RF
の存在により影響を受けるかを検討した。
用量反応試験における 3 ヵ月後の ACR20 を投与開始時の RF の有無別に表ト 6-18に示す。
本薬の有効性は RF
の有無に関わりなく認められており,本薬はセロポジティブ,セロネガティブどちらの患者にも有効であると思われた。
表ト 6-18 3 ヵ月後の ACR20 層別解析(投与開始時の RF):用量反応試験
16.0004 試験 16.0009 試験 プラセボ TNR-001(mg/m2×2/週) プラセボ
TNR-001(mg×2/週)
0.25 2 16 10 25 N=44 N=46 N=46 N=44 N=77 N=71 N=76
投 与 開
始時の RF n (%) n (%) n (%) n (%) n (%) n (%) n (%) 陽性 2/19 (11)
10/27 (37) 13/24 (54) 14/19 (74) 10/61 (16) 26/57 (46) 41/60 (68)陰性
2/6 (33) 2/2 (100) 2/5 (40) 7/7 (100) 7/16 (44) 7/14 (50) 6/16
(38)
202-JA 試験 300-EU 試験
プラセボ TNR-001(mg×2/週) プラセボ TNR-001(mg×/週)
10 25 10×1 10×2 25×1 25×2N=48 N=50 N=49 N=100 N=117 N=106 N=109
N=109
投 与 開
始時の RF n (%) n (%) n (%) n (%) n (%) n (%) n (%) n (%)
陽性 3/45 (6.7) 28/44(63.6) 30/47(63.8) 10/78 (13) 48/101 (48)
50/85 (59) 47/86 (55) 66/96 (69) 陰性 0/3 (0.0) 4/6 (66.7) 2/2
(100.0) 2/15 (13) 5/9 (56) 12/14 (86) 12/16 (75) 5/7 (71)
6.3.5 投与開始時の RA 活動性
投与開始時における関節炎症活動性の高さにより,有効性に影響が認められるか,
総疼痛及び総腫脹関節数の合計による層別解析を行った。用量反応試験における 3 ヵ月後の ACR20
を投与開始時の総疼痛及び総腫脹合計関節数(16.0004 試験,16.0009 試験及び 300-EU
試験)又は総腫脹関節数(202-JA 試験)別に層別解析した結果を表ト 6-19に示す。
投与開始時の総疼痛及び総腫脹関節数の数により,ACR20 に一定の傾向は認められず,本薬の有効性は RA
活動性の影響を受けないものと考えられた。
-
1297
表ト 6-19 3 ヵ月後の ACR20 層別解析(投与開始時の罹患関節数):用量反応試験
----------------16.0004 試験---------------- ------------16.0009
試験------------TNR-001(mg/m2×2/週) TNR-001(mg×2/週)
プラセボ 0.25 2 16 プラセボ 10 25 N=44 N=46 N=46 N=44 N=79 N=73 N=77
投与開始時の総
疼痛及び総腫脹
合計関節数 n(%) n(%) n(%) n(%) n(%) n(%) n(%)
< 24 2/12(17) 5/14(36) 4/10 (40) 14/16 (88) 4/13 (31) 6/17
(35) 14/19 (74)24 - 35 1/15(7) 5/11(45) 9/20 (45) 8/12 (67) 3/17
(18) 7/14 (50) 9/17 (53)36 - 43 3/12(25) 5/15(33) 4/7 (57) 8/10
(80) 3/21 (14) 9/18 (50) 11/18 (61)> 43 0/5(0) 0/6(0) 4/9 (44)
3/6 (50) 8/28 (29) 12/24 (50) 14/23 (61)
-------------------------------300-EU
試験-------------------------------
TNR-001(mg/週) プラセボ
10×1 10×2 25×1 25×2 N=100 N=117 N=106 N=109 N=109
投与開始時の総
疼痛及び総腫脹
合計関節数 n (%) n (%) n (%) n (%) n (%)
3-21 4/31 (13) 9/27 (33) 16/23 (70) 13/23 (57) 20/27 (74) 22-29
3/23 (13) 11/31 (35) 22/32 (69) 19/34 (56) 24/28 (86) 30-37 2/21
(9) 14/21 (67) 17/24 (71) 13/39 (68) 13/25 (52) 38-68 3/25 (12)
21/38 (55) 12/27 (44) 19/33 (58) 19/29 (66)
--------------202-JA 試験---------------- TNR-001(mg×2/週)
プラセボ 10 25 N=48 N=50 N=49
投与開始時の 総腫脹関節数
n (%) n (%) n (%)
-
1298
6.3.6 投与開始前の疾患活動性の変化
前項では投与開始時の RA 活動性の影響を検討したが,本項では投与開始時までのRA
活動性の変化について検討した。スクリーニング検査から投与開始時の間に RA 活動性がどの程度変化したかを 16.0009
試験を含めて検討した。表ト 6-20に 202-JA 及び16.0009 試験における投与開始前の疾患活動性の変化を示す。
表ト 6-20 スクリーニング検査から投与開始前における疾患活動性の変化
202-JA 16.0009 プラセボ 10 mg 25 mg プラセボ 10 mg 25 mg
総疼痛関節数 -4.6 -3.1 -2.6 -4.2 -3.5 -1.4 総腫脹関節数 -3.3 -2.5 -2.3 -1.4
-0.9 -2.5 医師による全般評価 -2.3 -1.5 -0.1 -0.7 -0.4 -0.5 被験者による全般評価 -5.6
-8.1 -3.9 -0.7 -0.1 -0.6 被験者による痛みの程度 -6.2 -6.9 -2.2 -0.5 -0.7 -1.1
HAQ -0.2 -0.2 -0.1 -0.1 0.0 -0.1 ESR -4.4 -9.9 1.7 -2.4 -3.9 -3.8
CRP -0.7 -1.1 -0.2 -0.4 -1.5 -0.4
数字のマイナスは悪化を示す。 16.0009 試験では各指標の悪化は,10 mg 及び 25 mg
それぞれの群に認められており,
用量群間で RA 活動性の変化に偏りがないものと考えられた。一方,202-JA 試験では全ての指標において 10 mg 群の方が
25 mg 群より悪化の程度が大きく,RA 活動性が 10 mg 群の方で高くなっていた。したがって,10 mg
群ではスクリーニングから投与開始までの RA 活動性の高まりにより,25 mg
群より高い改善率が得られやすい状況にあったものと考えられた。このため ACR 改善における用量反応で,10 mg
群の改善率が高くなった可能性が考えられた。
6.3.7 DMARD のウォッシュアウト(W/O)
投与開始前 4 週間以内に DMARD の投与を行っていないことが,被験者組み入れ基準であったことから,DMARD
治療を受けていた患者は,DMARD の投与を中止し 4 週間の DMARD のウォッシュアウト(W/O)が必要とされた。W/O
を行った患者は 10 mg群で 50 例中 37 例(74%),25 mg 群で 49 例中 31 例(63%)で 10 mg
群の方が高い割合であった。DMARD の W/O を実施した患者と,必要としなかった患者別に,ACR20 を検討し,W/O
が本薬の有効性に影響を及ぼす可能性を検討した。W/O の有無別に集計した ACR20 を表ト 6-21に,用量反応のグラフを図ト
6-4に示す。
-
1299
表ト 6-21 3 ヵ月後の ACR20 層別解析(W/O の有無):用量反応試験
----------------16.0004 試験---------------- -----------16.0009
試験----------- TNR-001 (mg/m2) TNR-001 (mg×2/週) プラセボ 0.25 2 16 プラセボ
10 25 N=44 N=46 N=46 N=44 N=79 N=73 N=77
W/O の有無 n (%) n(%) n(%) n(%) n(%) n(%) n(%) あり 1/10 (10) 2/12
(17) 2/8 (25) 9/11 (82) 7/37 (19) 15/30 (50) 16/34 (47)なし 5/34 (15)
13/34 (38) 19/38 (50) 24/33 (73) 11/42 (26) 19/41 (46) 32/43
(74)
----------------202-JA 試験---------------- TNR-001(mg×2/週)
プラセボ 10 25
N=48 N=50 N=49 W/O の有無 n (%) n (%) n (%)
あり 2/37 (5.4) 24/37 (64.9) 18/31 (58.1)なし 1/11 (9.1) 8/13 (61.5)
14/18 (77.8)
-------------------------------300-EU
試験-------------------------------- TNR-001(mg/週) プラセボ 10×1 10×2
25×1 25×2 N=100 N=117 N=106 N=109 N=109
W/O の有無 n (%) n (%) n (%) n (%) n (%) あり 6/69 (9) 32/80 (40)
46/75 (65) 45/75 (60) 53/77 (69) なし 6/31 (19) 23/37 (62) 18/31 (58)
19/34 (56) 23/32 (72)
W/O を実施した患者における ACR20 は,202-JA 試験で 10 mg が 64.9%,25 mg が
58.1%であり,16.0009 試験では 10 mg が 50%,25 mg が
47%で,両試験とも有効性における用量依存性が明確でなかった。一方,DMARD の W/O を必要としなかった患者における
ACR20は,202-JA 試験で 10 mg が 61.5%,25 mg が 77.8%であり,16.0009 試験では 10 mg
が 46%,25 mg が 74%で,両試験において用量依存性が認められた。また,300-EU 試験においてもW/O
なしの患者において,10 mg×2/週投与群と 25 mg×2/週投与群の間の ACR20
の差が広がる傾向が認められた。16.0004 試験については,ACR20 の用量間差が W/O
の有無に関わらず認められた。これは他の試験より低用量(0.25 mg/m2:約 0.5 mg/body)から高用量(16
mg/m2:約 27
mg/body)まで,群間の用量差が大きかったために,いずれの患者集団でも用量反応が明瞭であったものと考えられた。DMARD の
W/O によって本薬の用量反応に,日米の試験ともに影響がみられたことについて,明らかな原因は不明であったが,W/O
を必要とした患者と必要としなかった患者では,治験期間中の病態に何らかの違いを生じていた
可能性はあるものと考えられた。すなわち,W/O ありの症例は試験直前まで通常の治療としてなんらかの DMARD
を使用していた症例であり,その DMARD で RA
活動性を抑制することができていたと考えられる。しかし,試験に参加するにあたり,通常の治療で使用し
ていた DMARD を急に中止したため,それまで安定していた RA 活動性が投与開始前 4 週間(W/O
期間)の間に不安定になるなど,何らかの影響があった可能性がある(表ト 6-22)。
-
1300
表ト 6-22 スクリーニング検査から投与開始前における RA 活動性の変化(W/O 有無別)
W/O あり W/O なし プラセボ TNR 10 mg TNR 25 mg プラセボ TNR 10 mg TNR 25 mg
n=38 n=39 n=33 n=12 n=13 n=18 総疼痛関節数(個) -5.5 -2.8 -4.1 -0.6 -3.9
-0.7 総腫脹関節数(個) -3.4 -2.5 -2.9 -2.5 -2.0 -0.8 医師による全般評価 -3.4 -0.9
-2.2 -2.6 -1.8 2.8 被験者による全般評価 -7.0 -9.3 -4.8 -0.6 -6.7 -3.5
被験者による痛みの程度 -9.3 -7.9 -2.3 3.2 -6.8 -2.4 HAQ -0.3 -0.2 -0.1 -0.1
0.0 0.0 ESR(mm/hr) -3.6 -9.7 1.6 -8.3 -8.1 1.0 CRP(mg/dL) -0.5 -0.9
-0.2 -0.9 -0.9 0.0
数字は平均値であり,マイナスは悪化を示す。
一方,W/O なしの症例は試験直前は通常の治療として DMARD を使用していなかった症
例であり,通常の治療を変えることなく,そこに治験薬を上乗せする形で試験を開始でき
たと考えられる。通常の治療を変えなかったことで,投与開始直前まで RA 活動性は不安定にはなりにくい。
有効性評価に ACR
改善率を用いているが,これは投与開始時からの改善率を元とした評価であり,また被験者の主観的な評価項目(被験者による全般評価,被験者による痛み
の程度,HAQ)も含まれている。このような評価項目の性質から,投与開始時の RA
活動性が安定しているほど評価のばらつきは小さくなる可能性が考えられる。
以上より,W/O 有無による投与開始前の RA
活動性の変化が本薬の用量反応性に何らかの影響を及ぼした可能性が推察された。
-
1301
10 17
25
82
15
38
50
73
0
20
40
60
80
100
プラセボ 0.25 mg/m2 2.0 mg/m2 16 mg/m2
AC
R20
W/O あり W/O なし
16.0004 試験
19
5047
26
46
74
0
10
20
30
40
50
60
70
80
プラセボ 10mg 25mg
AC
R20
W/Oあり
W/Oなし
5.4
64.958.1
9.1
61.5
77.8
0
20
40
60
80
100
プラセボ 10mg 25mg
W/Oあり
W/Oなし
9
6569
19
58
72
0
20
40
60
80
100
プラセボ 10 mg 25 mg
AC
R20
W/O あり W/O なし
300-EU 試験
図ト6-4 W/O 有無別の 12 週 ACR20 グラフ
202-JA 試験
16.0009 試験
-
1302
6.3.8 前治療
16.0004【ト-13】及び 16.0009【ト-14】試験について,試験前に使用していた個々のDMARD
別にサブグループを作り,有効性への影響を検討した(表ト 6-23)。個々のDMARD
に分けるとほとんどの場合,標本数が小さくなるので,試験前に使用した最後の DMARD に基づいて MTX,その他の単独療法,併用療法の
3 種類にまとめて分析した。なお、202-JA 試験では MTX 以外の DMARD
は使用者が少ないので,MTX,MTXとの併用,MTX 以外での集計とした。また,300-EU 試験【ト-17】においては MTX
使用経験の有無により ACR20 を集計した(表ト 6-24)。
その結果,これらの試験のどのサブグループでも同様の有効性が得られたことから,
TNR-001 に対する反応は以前の DMARD あるいは MTX 使用の影響を受けなかったものと考えられた。
表ト 6-23 3 ヵ月後の ACR20 の層別解析(試験開始直前の DMARD 使用): 用量反応試験【16.0004
試験,16.0009 試験及び 202-JA 試験】
---------------------------16.0004試験---------------------------
TNR-001(mg/m2)
前治療 プラセボ
0.25 2.0 16 P値
単独療法単独療法単独療法単独療法 MTX 3/23 (13) 5/21 (24) 10/25 (40) 10/16 (63)
0.008 その他 3/18 (16) 6/15 (40) 8/16 (50) 19/22 (86) 0.001
併用療法併用療法併用療法併用療法 0/3 4/10 (40) 3/5 (60) 4/6 (67) 0.065
---------------------------16.0009試験---------------------------
TNR-001(mg×2/週)
前治療 プラセボ
10 25 P値
単独療法単独療法単独療法単独療法 MTX 6/28 (21) 8/20 (40) 19/27 (70) 0.001 その他
9/33 (27) 19/37 (51) 21/36 (58) 0.026
併用療法併用療法併用療法併用療法 3/18 (6) 7/16 (44) 8/13 (62) 0.034
---------------------------202-JA 試験---------------------------
TNR-001(mg×2 /週)
プラセボ 10 25
N=48 N=50 N=49 前治療 n (%) n (%) n (%)
MTX 単独 0/13 (0.0) 11/16 (68.8) 5/8(62.5)
MTX と他剤 1/15 (6.7) 7/11(63.6) 5/8 (62.5) MTX 以外 2/20 (10.0)
14/23 (60.9) 22/33 (66.7)
-
1303
表ト 6-24 3 ヵ月後の ACR20 の層別解析(MTX 使用経験):300-EU 試験
TNR-001(mg/週) MTX 使用経験 プラセボ 10×1 10×2 25×1 25×2 あり 8/89 (9)
43/95 (45) 58/89 (65) 52/89 (58) 66/91 (72) なし 4/11 (36) 12/22 (55)
9/17 (53) 12/20 (60) 10/18 (56)
6.3.9 体重
16.0009 試験【ト-14】での体表面積,体重別の ACR20 を図ト 6-5に,202-JA
試験【ト-2】での体重,体表面積別の ACR20 を表ト 6-25に,300-EU 試験での体重層別 ACR20を表ト
6-26にそれぞれ示す。
日本人は欧米人に比べ一般に体格が小さいが,本邦及び欧米での結果から,体重又
は体表面積の違いにより ACR20 は影響を受けないものと考えられた。
体表面積による3ヶ月ACR20
26%33%
80%
28%
57%
68%
17%
50%
35%
20%
40%
70%
0%
20%
40%
60%
80%
100%プラセボ群 10mg群 25mg群
患者数
(%)
A B C D A B C D A B C D (n) (23) (18) (18) (20) (15) (23) (20)
(15) (15) (19) (20) (23)
体重による3ヶ月ACR20
19%
35%
77%
22%
60%
72%
29%
45% 43%
21%
43%
65%
0%
20%
40%
60%
80%
100%
プラセボ群 10mg群 25mg群患者数
(%)
E F G H E F G H E F G H (n) (21) (18) (21) (19) (17) (20) (22)
(14) (13) (18) (23) (23)
図ト6-5 3 ヵ月後の ACR20 の層別解析(体表面積,体重):16.0009 試験
表ト 6-25 3 ヵ月後の ACR20 の層別解析(体重,体表面積):202-JA 試験
TNR-001 (mg×2/週)
TNR-001 (mg×2/週)
体重(kg) プラセボ 10 25 体表面積(m2) プラセボ 10 25
-
1304
表ト 6-26 3 ヵ月後の ACR20 の層別解析(体重):300-EU 試験
TNR-001(mg/週) 体重 (kg)
プラセボ 10×1 10×2 25×1 25×2
0 – 60.1 1/25 (4) 17/31 (55) 17/21 (81) 15/29 (52) 26/32 (81)
60.2 – 68.3 4/21 (19) 13/26 (50) 13/25 (52) 18/31 (58) 23/29 (79)
68.4 – 78.0 6/29 (21) 11/27 (41) 22/31 (71) 14/25 (56) 17/24 (71)
≧78.1 1/25 (4) 14/33 (42) 15/28 (53) 17/24 (71) 10/24 (42)
6.3.10 抗 TNR-001 抗体
1) 抗体陽性例数 本薬は TNF 受容体及び IgG1Fc
から構成されており,それぞれはヒト由来の蛋白質であるが,これらを融合した分子全体としては生体物質ではないため,長期間の投
薬においては中和抗体が産生される可能性が考えられる。このため臨床試験では被
験者血清中の抗 TNR-001 抗体の測定と,それが本薬 TNR-001 と
TNF-αとの結合を阻害する活性,すなわち中和活性を有するかどうかの検討を行った。また抗
TNR-001 抗体陽性の患者において,本薬の有効性及び安全性に影響が認められるか検討を行った。なお,試験
16.0006,16.0016,16.0018 および 308-EU では TNR-001抗体検査は実施されていない。海外の RA
患者を対象とした臨床試験における抗TNR-001 抗体測定の結果を表ト 6-27に示す。 海外の RA
患者を対象とした臨床試験における抗 TNR-001 抗体陽性例は,16.0008試験では測定症例数 100 例中 0
例,16.0019 試験では測定症例数 239 例中 3 例であり(16.0018
試験では抗体測定未実施),そのほかの試験結果と合わせると,米国試験では延べ 1164 症例の測定症例のうち,合計 19 例の抗
TNR-001 抗体陽性例が報告された。
表ト 6-27 海外 RA 患者試験における抗 TNR-001 抗体発現数
TNR-001 投与 プラセボ投与 検査
対象 試験 番号
全症例数
(実薬 /プラセボ)
抗体未
測定症
例数
抗体測
定症例
数
抗体陽
性症例
数(%)
中和抗
体陽性
症例
抗体未
測定症
例数
抗体測
定症例
数
抗体陽
性症例
数(%)
中和抗
体陽性
症例
RA 16.0002 (ト-7) 22
(22/4a) 0 22 0 - 4 0 - -
RA 16.0004 (ト-13) 180
(136/44) 10 126 0 - 44 0 - -
RA 16.0008 (ト-19) 105
(105/0) 5 100 0 - - - - -
RA 16.0009 (ト-14) 234
(154/80) 0 154 1 (0.6) 0 0 80 0 -
RA 16.0012 (ト-18) 632
(415/217b) 15 400 14 (3.5) 0 10 b 207 b 1 b (0.5) 0
RA 16.0014 (ト-15) 89
(59/30) 0 59 1 (1.7) 0 0 30 0 -
JRA 16.0016 (参ト-6) 69
(69/0) 5 64 0 - - - - -
RA 16.0019 (ト-21) 239
(239/0) 0 239 3 (1.3) 0 - - - -
RA (EU)
300-EU (ト -17)
559 (454/105) 129 430
16 (3.7) 0 12 93 0 -
RA (EU)
100-EU (ト -16)
70 (56/14) 10 46
15 (32.6) 0 4 10 0 -
-:該当せず a:プラセボ投与後に TNR-001 投与 b:MTX 投与症例
-
1305
EU での 2 つの試験では,合計 476 例の抗体測定が実施され,31
例の抗体陽性例が報告された。海外試験の抗体陽性例は,いずれも中和抗体検査は陰性であった。 本邦における抗 TNR-001
抗体測定の結果を,表ト 6-28及び表ト 6-29に示す。 本邦における 202-JA 試験では 10mg 投与群抗体測定例 51
例中 2 例,25mg 投与群抗体測定例 50 例中 2 例で,また,310-JA 試験の中間集計では抗体測定例 103 例中 6
例で抗TNR-001 抗体陽性例が認められたが,いずれも中和抗体検査は陰性であった。なお,310-JA 試験は試験継続中のため,抗
TNR-001 抗体及び中和抗体の検討も現在継続中である。
表ト 6-28 202-JA 試験における抗 TNR-001 抗体発現数
投与群 プラセボ 10 mg 25 mg TNR-001
投与群合計 全症例数 50 52 51 103
未測定症例数 1 1 1 2 測定症例数 49 51 50 101
抗体陽性症例数(%) 0 2 (3.9) 2 (4.0) 4 (4.0) 中和抗体陽性症例数 - 0 0 0
表ト 6-29 310-JA 試験における抗 TNR-001 抗体発現数
全症例数 132 未測定症例数 29 測定症例数 103
抗体陽性症例数(%) 6 (5.8) 中和抗体陽性症例数 0
2) 有効性
試験 16.0009 では 1 例のみが抗 TNR-001 抗体陽性であった。ACR 20 に対してはnon-responder
であったが,投与後 6 ヶ月時点の ACR 20 は responder であった。しかし,抗体陽性症例数が 1
例のみであることから,抗 TNR-001 抗体陽性症例および陰性症例間における有効性評価の比較は困難である。 試験 16.0012
では抗 TNR-001 抗体陽性であった 14 例中 7 例が試験を中止しているが,その内訳は患者都合(試験継続拒否)による中止が 2
例,反応性が不十分であることによる中止が 4 例および有害事象の発現による中止が 1 例であった。 試験 16.0014 の抗
TNR-001 抗体陽性例は,試験を完了していることから,抗 TNR-001抗体による有効性への影響は認められていない。 試験
16.0019 では 3 例が抗 TNR-001 抗体陽性であったが,効果不十分を理由に試験を中止した症例は認められなかった。 抗
TNR-001 抗体陽性例が複数例認められ,且つ有効性データが得られた試験は16.0012,16.0019 および 300-EU
であった。そこで,これら試験における投与後 3 ヵ月時の全症例の ACR 20 を表ト 6-30に,投与後 3 ヵ月時の抗
TNR-001 抗体陽性例の ACR 20 を表ト 6-31に示す。全症例から得られた ACR 20 は
58%であったが,抗TNR-001 抗体陽性例における ACR 20 は 50%であった。抗 TNR-001 抗体陽性例および陰性例の
ACR 20 反応率について Mantel-Haenszel chi-square test を用い比較した。
-
1306
その結果,陽性例および陰性例との間には統計学的に有意な差は認められなかった
(p= 0.3738)。 また,本邦における症例については,抗 TNR-001 抗体陽性例 9 例中 7 例で
202-JA試験ないしは 310-JA 試験(長期投与試験)期間中に ACR20 を達成している。抗体陽性例 9 例のうち 7 例が
1 年以上の長期にわたり試験を継続しており,有効性が得られず中止したのは 1
例のみであったので,抗体陽性化は有効性に影響が少ないものと考えられた。
表ト 6-30 投与後 3 ヶ月時の全症例の ACR 20 反応率 (16.0012,16.0019 および
300-EU)
試験名 Placebo またはMTX
10mg 週 1 回
10 mg 週 2 回
25 mg 週 1 回
25 mg 週 2 回
全てのTNR-001 投与群
16.0012 118/216 (55) - 110/208 (53) - 125/207 (60) 235/415
(57)16.0019 - - - - 66/99 (67) 66/99 (67) 300-EU 14/104 (13) 58/121
(48) 59/110 (63) 66/111 (59) 77/111 (69) 260/453 (57)
合計 561/967 (58)( ):% -:該当せず
表ト 6-31 投与後 3 ヶ月時の抗 TNR-001 抗体陽性例の ACR 20 反応率 (16.0012,16.0019
および 300-EU)
試験名 Placebo またはMTX
10mg 週 1 回
10 mg 週 2 回
25 mg 週 1 回
25 mg 週 2 回
全ての TNR-001 投与群
16.0012 1/1 (100) - 4/6 (67) - 6/8 (75) 10/14 (71) 16.0019 - - -
- 0/2 0/2 (0%) 300-EU 0/0 (0) 1/4 (25) 2/6 (33) 0/2 (0) 3/4 (75)
6/16 (38)
合計 16/32 (50)( ):%,16.0019 試験の 1 例は投与後 6
ヵ月時に陽性であったため,本集計からは除外している。
-:該当せず
6.3.11 部分集団における結果の比較のまとめ
本薬の有効性は,性別,年齢,RF 陽性,MTX
使用の経験,及び体重又は体表面積など,比較試験における試験内の部分集団について検討したが,いずれの部分集団におい
ても本薬の有効性に差異は認められなかった。 スクリーニング検査から投与開始までの間における,RA 活動性の変化には
202-JA
試験の実薬群間に差が認められ,用量反応に影響を及ぼした可能性が考えられた。また,
16.0009 及び 202-JA 試験では,DMARD の W/O の有無別による ACR20
には用量反応関係の相違が認められ,W/O ありの集団に比べて W/O 無しの集団では 25 mg で 10 mg
よりも高い有効率が認められた。
抗 TNR-001
抗体の産生の影響に関しては,発現頻度が低いため十分な検討はできないが,これまでに中和抗体は報告されておらず,有効性・安全性への明らかな影響は認
められなかった。
-
1307
6.4 推奨用法・用量に関する臨床情報の解析
用量反応試験における ACR20 を試験別,用量別に図ト 6-6に示す。 ブリッジング試験として実施した 202-JA
試験では,主要評価の ACR20 において,10
mg×2/週及び 25
mg×2/週投与群は,いずれもプラセボ群との間に有意差が認められ,ともに有効性が得られる用量であった。主要評価及び RA
活動性の指標の改善率,ACR50,ACR70
などの副次評価項目のいずれにおいても,両群の有効性成績はほぼ同様で,用量間に差は認められなかった。
一方,米国で第Ⅱ相試験として実施された 16.0004 試験では,主要評価の総疼痛関節数及び総腫脹関節数において,体表面積あたり
2 mg/m2 以上の週 2 回投与,一人あたりの用量では約 4 mg 週 2
回投与から上の用量で,プラセボ群に比べて有意な改善が認められた。更に,用量を固定して 10 mg 及び 25
mg×2/週投与で実施した第Ⅲ相 16.0009試験では,主要評価の ACR20
について,プラセボ群に比べ本薬用量群で有意に高い成績が得られた。また,10 及び 25 mg
の用量間においても,有意差が認められ,25 mg×2/週投与で最も高い RA 症状の改善が得られた。
EU 諸国では,PK/PD の検討を主な目的として,少数例での 100-EU 試験が実施された。100-EU
試験では,16.0009 試験で検討された 10 及び 25 mg×2/週投与より広い用量範囲(10 mg×1/週投与,10
mg×2/週投与,50 mg の 2 週に 1 回投与,50 mg の週 1 回投与,50 mg の週 2
回投与)が設定された。血清中濃度は用量に依存して増加したが,PD の解析から,血清中濃度が 2000 ng/mL
より高い濃度では,有効性の向上は期待できないものとみられた。EU 諸国では更に,第Ⅲ相試験 300-EU
試験が実施された。300-EU試験の用量群は,10 mg×1/週投与,10 mg×2/週投与,25 mg×1/週投与及び 25
mg×2/週投与であった。主要評価及び副次評価において,10
mg×1/週投与から上の用量群で,プラセボ群との間に有意差が認められた。10 mg×2/週,25 mg×1/週及び 25
mg×2/週投与群の間では,有効性の成績に有意差が認められなかったが,各評価指標の平均値は,
最高用量の 25 mg×2/週投与が最も高い成績であった。 202-JA 試験で得られた用量反応を,ブリッジング対象である
16.0009 試験と比較した
場合,主要評価項目 ACR20 については,両試験とも 25 mg 群は約 65%と類似していたが,10 mg 群は
202-JA 試験で 64.0%,16.0009 試験で 47%,またプラセボ群は 202-JA試験で 6.3%,16.0009
試験で 23%であり,用量反応の形状が異なっている点があった。
-
1308
A C R 20 in 3-m onth
0
20
40
60
80
100
16.0004 16.0009 202-JA 300-E U
プロトコール番号
ACR 20(
%)
P lacebo
10m g×1/W
10m g×2/W
25m g×1/W
25m g×2/W
0.25m g/m ×2/W
2m g/m ×2/W
16m g/m ×2/W
図ト6-6 用量反応試験における ACR20
300-EU 試験では 3 ヵ月評価の ACR20 が 10 mg×2/週投与群で 63.2%,25 mg×2/週投与群で
69.7%であり,202-JA 試験同様に 10 mg 及び 25 mg の差は,約 6%と小さいものであった。16.0009 試験は
10 及び 25 mg の用量間の差が 17%と最も大きく認められた試験であった。16.0009 試験においても,5 ヵ月及び 6
ヵ月評価においては ACR20 の10 mg 群と 25 mg 群の用量間差は,それぞれ 4%及び 8%と縮小したが,ACR20
の評価は投与開始時から各評価時点までの改善率を 20%未満と 20%以上で区切ったものであるため,ACR20
判定の元となる改善率以上に評価時点ごとに値が変化することがある。
16.0009 試験の 3 ヵ月評価は 10 mg 及び 25 mg 群の差が最も大きかった時点であったことも,用量間の差が
202-JA 及び 300-EU 試験と異なるように見える要因と考えられた。
血清中薬物濃度測定を実施した 202-JA 及び 300-EU 試験における血清中薬物濃度と用量反応の関係を図ト
6-7に示す。300-EU の PK/PD 解析の結果より,有効性の目標濃度は 1000-2000 ng/mL
であることが明らかにされ,202-JA 試験において,この目標濃度に到達する被験者は,25
mg×2/週投与群が最も多かった。202-JA 試験において 10 mg及び 25 mg
群に有効性の用量間差が無かったことは,PK/PD の解析から合理的な説明はできなかった。また,300-EU 試験で,10
mg×1/週投与,10 mg×2/週投与,25 mg×1/週投与及び 25
mg×2/週投与の用法用量において,トラフにおける血清中薬物濃度の中央値は,これらの用量群の週あたりの投与量(10 mg,20
mg,25 mg 及び 50 mg)に依存して直線的に増加しており,週あたり投与回数の 1 回,2
回はトラフ値の濃度に影響がないものと考えられた。
2
2
2
-
1309
図ト6-7 本邦二重盲検用量反応比較試験(202-JA 試験)と 300-EU
試験における用量反応と薬物血清中濃度との関係
202-JA 試験の成績から 10 mg×2/週投与と 25 mg×2/週投与でほぼ同様の有効性が得
られたことには何らかの原因があるものと考えられた。人口統計学的指標(年齢,性別,
体重及び体表面積),疾患特性(RA 罹病期間,前治療 DMARD の内訳,リウマトイド因子の陽性率,併用薬,投与開始時の RA
活動性)など,さまざまな要因について,群間又は 16.0009
試験との試験間で解析を行ったが,有効性に影響を与えたと見られる要因は明らかでなかった。しかし,1)スクリーニング検査から投与開始時までの
RA 活動性の変化(ト6.3.6 ),2) DMARD の W/O 有無(ト6.3.7 )による影響の可能性も推察された。
本薬の効果持続に関しては,長期投与試験で検討されている。本邦での長期投与試
験は現在継続中であり,本申請においては,132 例のデータを収集し,このうち 120 例(91%)が 25 mg の 6
ヵ月間投与を完了している。その成績からは,患者が最初に参加した 202-JA 試験と同様の RA
症状の改善が認められ,効果の再現性が見られている。欧米の長期投与試験も継続中であり,最長 6.7 年の投与が続けられ,25 mg 週
2 回の投与で,多くの症例で有効性が持続している。
なお,薬物動態の検討から,成人においては年齢,体重・体表面積による用量の調
節の必要は認められていない。 以上,海外における多くの症例での用量反応試験成績,及び長期投与試験の成績を
合わせて検討し,さらに部分集団の解析及び血清中薬物濃度の点からも,25 mg の週
2回投与は有効性及び安全性に優れた用量と考えられた。しかし,本邦での 202-JA
試験で用量反応に海外試験と完全には類似しない点が見られ,10 mg の週 2 回投与でも 25 mg の週 2
回投与と同様の効果が期待できることから,本邦での推奨用量は 10~25 mgの週 2 回投与と考えられた。
-
1310
6.5 効果の持続,耐薬性
本薬の効果持続に関しては,長期試験の項に記述したように 18
ヵ月までのデータにおいて効果が持続することが示され,耐薬性も認められていない。
DMARD 無効患者を対象とした米国 16.0018 試験【ト-20】,長期投与試験 A:5
年報告【参ト-4】における暴露状況を表ト 6-32に示す。また,年毎の試験継続中の患者数を表ト 6-33に示す。いずれの表でも MTX
を併用投与した 16.0014 試験【ト-15】に参加した患者と小児患者(16.0016
試験【参ト-6】)を区別して集計している。DMARD 無効患者は総数 783 例で,639 例が長期投与試験
A【参ト-4】に参加し,427 例がデータカットオフ(2002 年 12 月 31 日)時点で投与を継続中であった。2 年間 730
日までの投与を完了しているのが全体の 77%に達していた。また,3 年間 1095 日までの投与を完了しているのが成人および小児ともに
70%であった。
6 年間の RA 活動性の改善,及び ACR 改善基準による有効率の推移を表ト 6-34に示す。
表ト 6-32 16.0018 試験,米国長期投与試験:5 年報告における暴露状況
成人 計 16.0014 試験以外 16.0014 試験
小児 全 TNR-001
投与群 (n=714) (n=629) (n=85) (n=69) (n=783) 累積用量 平均値(SE) 9365.4
(215.6) 9195.6 (234.7) 10622.1 (493.8) 7242.3 (582.7) 9178.3
(204.2)(mg) 標準偏差 5759.9 5886.6 4552.7 4840.2 5714.0 中央値 12532.5
12540.0 12400.0 9593.3 12100.0 最低-最高 0.8 – 17483.7 0.8 – 17483.7
175.0 – 14500.0 7.5 – 13234.0 0.8 - 17483.7 数 714 629 85 69 783
平均用量 平均値(SE) 22.9 (0.2) 22.6 (0.2) 25.0 (0.0) 19.2 (0.7) 22.6
(0.2)(mg/回) 標準偏差 5.7 6.1 0.0 5.7 5.8 中央値 25.0 25.0 25.0 21.1 25.0
最低-最高 0.4 - 33.6 0.4 - 33.6 25.0 - 25.0 5.8 - 25.0 0.4 - 33.6 数 714
629 85 69 783 総投与回数 平均値(SE) 383.4 (8.6) 377.8 (9.4) 424.9 (19.8)
338.9 (24.9) 379.5 (8.2) 標準偏差 231.0 236.4 182.1 206.7 229.2 中央値
507.5 509.0 496.0 444.0 503.0 最低-最高 1.0 – 698.0 1.0 – 698.0 7.0 –
580.0 1.0 – 563.0 1.0 – 698.0 数 714 629 85 69 783 投与期間 平均値(SE)
1345.7 (30.3) 1325.6 (33.0) 1494.4 (69.3) 1189.8 (87.3) 1332.0
(28.7)(日) 標準偏差 809.5 828.2 639.3 725.6 803.2 中央値 1783.5 1784.0
1739.0 1550.0 1765.0 最低-最高 1.0 – 2446.0 1.0 – 2446.0 22.0 – 2028.0
1.0 – 1973.0 1.0 – 2446.0 数 714 629 85 69 783 SE:標準誤差
-
1311
表ト 6-33 16.0018 試験,長期投与試験の投与継続状況
成人 計 16.0014 試験以外 16.0014 試験
小児 全 TNR-001投与群
(n=714) (n=629) (n=85) (n=69) (n=783) 平均投与期間(日) 1346 1326 1494
1190 1332 TNR-001 投与の患者数(%) 1 年目(0-365 日) 714 (100) 629 (100) 85
(100) 69 (100) 783 (100) 2 年目(366-730 日) 554 (78) 480 (76) 74 (87)
52 (75) 606 (77) 3 年目(731-1095 日) 499 (70) 431 (69) 68 (80) 48 (70)
547 (70) 4 年目(1096-1460 日) 460 (64) 394 (63) 66 (78) 42 (61) 502
(64) 5 年目(1461-1825 日) 432 (61) 368 (59) 64 (75 35 (51) 467 (60) 6
年目(1826-2190 日) 310 (43) 271 (43) 39 (46) 15 (22) 325 (42) 7
年目(2191-2555 日) 53 (7) 53 (8) 0 (0) 0 (0) 53 (7)
表ト 6-34 16.0018 試験*,長期投与試験における RA 活動性の推移
DMARD 無効患者
(16.0018 試験) 項目 投与開始時 12 ヵ月 24 ヵ月 36 ヵ月 48 ヵ月 60 ヵ月 72 ヵ月
(n = 644) (n = 560) (n = 412) (n = 438) (n =429) (n =389) (n
=121)総疼痛関節数 a 30 6.0 4.4 4.0 3.3 3.0 5.0 総腫脹関節数 b 24 6.0 5.0 5.0
5.0 4.0 3.0 被験者による痛みの程度 c 6.4 2.0 2.1 1.9 2.0 1.8 2.0 医師による全般評価 c
7.0 3.0 2.0 2.0 2.0 2.0 2.0 被験者による全般評価 c 7.0 3.0 3.0 3.0 3.0 3.0
3.0 CRP d 3.0 0.8 0.6 0.5 0.4 0.4 0.6 HAQ e 1.6 1.0 1.0 0.9 1.0 0.9
1.0 ACR20 -- 70 72 74 78 76 71 ACR50 -- 44 44 48 51 53 47 ACR70 --
19 21 26 25 26 26
a:値の範囲,0~71 b:値の範囲,0~68 c:0 が最良,10 が最も悪い d:正常範囲 0~0.79 mg/dL e:0
が最良,3 が最も悪い *:投与開始時は 16.0008,16.0014,16.0018 及び 16.0019 試験に参加
本薬の投与を継続している患者については,RA 活動性及び ACR 改善基準による有
効率について,有効性の持続が認められている。 有効性の持続に関して RA 活動性以外の観点からも検討した。RA
患者では併用薬と
してステロイドを用いていることが多い。また,本薬の長期投与試験では MTX を併用投与した試験から参加した症例があり,その後も
MTX の併用を継続した。これらの併用薬をその後減量ないし中止できたことは,RA の改善の指標となる。MTX
及びステロイド剤の継続状況をそれぞれ表ト 6-35及び表ト 6-36に示す。
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表ト 6-35 16.0014 試験から試験に参加し 16.0018 試験で継続中患者の MTX 使用状況
TNR-001 MTX 使用 使用期間 中止 減量又は中止 増加 (年) n (%) n (%) n (%)
1 (n = 73) 14 (19) 44 (60) 2 (3) 2 (n = 69) 20 (29) 43 (62) 3
(4) 3 (n = 66) 19 (29) 40 (61) 6 (9) 4 (n = 63) 21 (33) 39 (62) 9
(14) 5 (n = 37) 12 (32) 21 (57) 6 (16)
MTX の併用を減量又は中止できた患者の割合は,最初の年に 60%にのぼり,この傾
向はその後も維持されていた。
表ト 6-36 ステロイド剤使用状況
TNR-001 ステロイド剤使用 使用期間 中止 減量又は中止 増加 (年) n (%) n (%) n (%)
1 (n = 357) 51(14) 202(57) 29(8) 2 (n = 321) 111(35) 212(66)
21(7) 3 (n = 295) 118(40) 214(73) 13(4) 4 (n = 271) 117(43) 200(74)
20(7) 5 (n = 217) 100(46) 159(73) 17(8)
集計対象:16.0008,16.0009,16.0014,16.0019,16.0002,16.0004 から16.0018
に参加した患者
16.0008,16.0009,16.0014,16.0019,あるいは 16.0002,16.0004
試験で有効性評価を行った 644 人中,578 人が 16.0018 試験へ移行した。そのうち 385 人が TNR-001
投与開始時にステロイド剤が使用されていた。最初の 1 年でステロイド剤を減量又は中止できたのは 57%にのぼり,2 年後 66%,3
年後 72%と更にその割合が増加し,5 年後においても 73%であった。
以上,本薬の長期使用において RA の活動性が抑制されるとともに,有効性を得るために必要であったステロイド剤や MTX
を減量又は中止できる患者も増えており,本薬の長期有効性が裏付けられるものと考えた。
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1313
6.6 引用文献
1 Strand V et al, Treatment of Active Rheumatoid Arthritis With
Leflunomide Compared With Placebo and Methotrexate, Arch Intern
Med, 1999;159;2542-2550 2 Cohen S et al, Treatment of Rheumatoid
Arthritis With Anakinra, a Recombinant Human Interleukin-1 Receptor
Antagonist, in Combination With Methotrexate, Arthritis &
Reumatism 2002;46;614-624 3 Smolen J et al, Efficacy and Safety of
Leflunomide Compared With Placebo and Sulphasalazine in Active
Rheumatoid Arthritis: a double-blind, randomized, multicentre
trial, Lancet 1999;353;259-266 4 Lipsky P et al, Infliximab and
Methotrexate in the Treatment of Rheumatoid Arthritis, the N Engl J
Med, 2000;343;1594-1602 5 鈴木康夫、MTX 追加併用療法、リウマチ科、27(1):25-32、2002 6
(財)日本リウマチ財団薬効検定委員会、慢性関節リウマチに対するサラゾスルファピリジン腸溶錠の二重盲検比較試験、リウマチ、31(3):327-345、1991