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From Goals to Reality - J

Feb 17, 2017

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Nicholas Benes
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kanto 東京都港区麻布台 2-4-5メソニック39mtビル10階〒106-0041phone: 03 3433 5381fax: 03 3433 8454

kansai大阪市中央区本町橋2番8号大阪商工会議所ビル5階〒540-0029phone: 06 6944 5991fax: 06 6944 5992

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在日米国商工会議所 / www.accj.or.jp / www.ecentral.jp / www.livinginjapan.info

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委員長ニコラス E. ベネシュ株式会社ジェイ・ティ・ピー

副委員長デビッド L. シューラーゴールドマン・サックス証券会社

ティエリー・ポルテモルガン・スタンレー証券会社

コミュニケーション戦略担当 副委員長佐藤玖美, 株式会社コスモ・ピーアール

対日直接投資(FDI)タスクフォースチームリーダー不良債権土屋泰昭、松下正

企業統治と透明性ディビッド・スナイダー、朝倉秀俊、ニコラス・ベネシュ

労働力の流動性とソーシャルセーフティーネットエリック・セドラック、ローレンス・ベイツ

規制緩和と企業家精神の促進エドワード・ジョンソン、牧野昭次郎

株式交換ロバート・グロンディン、ゲーリー・トーマス、エリック・ルース

現金合併ディビッド・スナイダー

対日直接投資(FDI)タスクフォーススポンサーゴールド・スポンサーアメリカンファミリー生命保険会社(AFLAC)AIG グループベーカー&マッケンジー外国法事務弁護士事務所(特定共同事業事務所 東京青山・青木法律事務所)シティバンク、エヌ・エイ日本コカコーラ株式会社日本イーライリリー株式会社フェデラル エクスプレス株式会社日本ゼネラルモーターズ株式会社日本ゼネラルエレクトリック株式会社ゴールドマン・サックス証券会社IBM ワールドトレード アジアコーポレーション 日本貿易振興機構(ジェトロ)株式会社ジェイ・ティ・ピーモルガンスタンレー証券会社ネスレ ジャパン グループ ホワイト & ケース外国法事務弁護士事務所   神田橋法律事務所 (特定共同事業事務所)  

シルバー・スポンサー日本 GMAC コマーシャル モーゲージ株式会社KPMG ジャパン株式会社 ミダス

ブロンズ・スポンサーA.T. カー二ー株式会社株式会社 カーギル ジャパンデロイト トウシュ トーマツ H&Rコンサルタンツ兵庫県(兵庫県ビジネスサポートセンター・東京)プライスウオーターハウスクーパースジャパンシンプソン・サッチャー・アンド・バートレット  外国法事務弁護士事務所ステートストリートジャパンテンプル大学ジャパン

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序文小泉純一郎首相は、2003年1月31日の国会での施政方針演説において、日本経済の再生と持続的成長の達成に寄与するものとして、対日外国直接投資(FDI)を歓迎すると明言した。年頭の施政方針演説で小泉首相は、歴代日本の首相としては初めて、対日FDIについて次のように言及した:

「海外から日本への直接投資は、新しい技術や革新的な経営手法をもたらし、雇用機会の増大にもつながります。日本を外国企業にとって魅力ある進出先とするための施策を講じ、5年後には日本への投資残高の倍増を目指します」

主要経済国における対内FDIランキングでの日本の低さを考慮すると、FDI総累積残高を2008年までに倍増することは、大胆な目標である。2000年の国際通貨基金(IMF)統計によると、対日FDI残高はGDPの1.1%に過ぎず、とりわけ英国の32.4%、米国の27.9%、ドイツの22.4%に大きく遅れをとっている。UNCTADの統計によると中国の2002年度FDI額(527億ドル)は、単年度ベースで日本の同時期FDI額(93億ドル)の6倍に達し、日本のFDI総累積残高に匹敵する。中国のFDI総累積残高は既に4,480億ドルにのぼり、日本はその8分の1の600億ドルにすぎなかった。

日本においてFDI残高が主要経済国の中で唯一1桁台にあるのは、特定の産業構造目標を達成するため、国内企業や国内産業を助成・発展させようとした日本の戦後国内政策の結果である。1980年には「外国投資及び外国為替管理法」の大幅な自由化によって、外国投資に対する形式上の障壁は、すでに取り除かれていたにもかかわらず、実際、日本政府が初めて対日FDIを明らかに歓迎する声明を出したのは1990年になってからのことである。

1990年に始まったばかりの「FDI歓迎」政策は、首相を議長とする内閣諮問機関「対日投資会議(JIC)」が1994年に設置されると、幾分弾みがついた。JICは、島田晴雄慶応大学教授を部会長とする専門部会を抱え、内閣に対して定期的に報告及び提言を行っている。この報告・提言の内容は、対日FDIを歓迎・促進する現在の政府政策のベースとなっている。

FDIの分野ではこの他にも公共、民間両部門においていくつかの前進が見られた。例えば2002年9月には、外国直接投資拡大が経済を活性化させるという共通の考えを抱く財界人や有識者などの有志によって、「対日投資促進民間フォーラム(IJF)」が発足した。IJFではその後、対日外国投資を促進するため12項目の提言を行った。2003年4月、経済産業省(METI)は、地方自治体による外国企業誘致の取り組みを支援するプロジェクトを発表した。このプロジェクトによってFDIを促進するユニークなプランを持つ5つの地域が、モデル自治体として採択された。

2003年5月には、対日直接投資希望者に情報や支援を提供する対日投資の情報ワンストップセンター (Invest Japan)が日本貿易振興会(JETRO)に設立された。これもまた、対日FDI分野でのもう一つの前進である。このオープニングセレモニーには小泉首相自身が出席し、同センター設立の重要性を強調した。さらに最近では2003年7月、経済産業省(METI)の「通商白書」は、「日本経済の再生にとって有効な手段」としてFDIの活用を提唱し、2003年4月の「JIC専門部会」による提言を受け、次のように言及した。

「対内直接投資は既存の組織や慣行にとらわれない新しい資本、人的資源、経営ノウハウや技術をもたらすものである。また、外国企業との協力によって、企業は製品開発におけるグローバル競争のチャレンジに対応することが可能になる。(外国)企業は国内市場にはない新製品や新サービスを提供することができるので、これによって新たな市場が生み出され、競争力が高まり、消費者利益も増大することになる。さらに、外国資本は適切なリスクを取ることをおそれないリスクマネーの提供者として期待できる。こうした新しい風は『日本再生の鍵』となり、経済活性化と雇用確保につながる可能性がある」

賛否両論が渦巻く在日米国商工会議所(ACCJ)は、対日FDIを拡大するために近年講じられたこれらの積極的な政策声明や具体的改革案を歓迎する。また、我々のFDI研究と付隋するケーススタディーでも明らかなように、対日FDIは外国企業にとって利益をもたらすのみならず、日本の経済や労働者、消費者、地方自治体にとっても利益をもたらすものと強く確信する。

しかし、FDI拡大を目指す小泉首相の施政方針演説や政策は、同時に賛否双方の反応を招いた。

一方で、多くの市長や知事が、FDIによる地方経済の再活性化と新規雇用の創出を目標に、FDIを誘致するためのプログラムをスタートさせたり、あるいは既存の取り組みを強化している。そして相当数の国会議員が、日本経済をより多くの競争にさらし、生産性と雇用の向上につなげるために、小泉首相の目標を不可欠なものとして支持している。現在、国会議員の一部ではFDI促進議員連盟の設立を検討している。

データや分析不足がもたらす誤解このような取り組みにもかかわらず、信頼に足るデータや分析がない状況では、FDIの増大によって雇用は今後増えるどころかむしろ減少すると批判する者もいる。彼らは、日本企業を買収する外国企業が事業合理化によって行う人員削減は、雇用の自然減や倒産による人員削減、あるいは日本の買収側企

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業が行う人員削減と比較すると、もっと多くなるに違いないと不安を感じている。また、グリーンフィールド投資、つまり現在何も存在しない所に新規の製造設備を作り出すことのみが、メリットをもたらすとごく単純に信じ込んでいる者もいる。こうした見方だと、合併・買収(M&A)というものは、追加的グリーンフィールド拡大投資とは無関係で、大部分が、苦境に立たされている企業を食い物にし、短期的に大きな利益を上げようとする「ハゲタカ」ファンドと同類視されることになる。

しかしこうした悲観的結論はFDIフローに関する実証データによって裏付けられたものではない。その上、世論調査によると、10年以上の景気低迷を経験した日本国民はもはや、現実ではなく感情に基づいた政策によって、日本の成長や持続可能な繁栄の復興は成し遂げられないと認識している。だが同時に、今後、国民一人ひとりがどのような影響を受け、どの程度の変化を現実に求められ、外国投資がどのような役割を果たすべきなのか、多くの日本人が憂慮していることももっともと思われる。これらの懸念は日本特有のものではない。同様な不安は1980年代に、当時の日本による対米投資の高まりを受けて米国でも持ち上がった。米国は日本や他の国々からのFDIを広く歓迎した結果、対内投資は米国経済の再活性化に寄与したのである。

上記のように対日FDIには多様な反応があり、しかもFDIがこれまで日本にもたらした明確なメリットについて分析がなされていない状況では、政府による2008年のFDI目標達成の取り組みも萎縮してしまうのではないかとACCJでは懸念している。日本ではFDIが正しく知られておらず、事実に反する間違った思いこみがあまりにも多い。FDIはどこで伸びているのだろうか?そしてその理由は?異なったタイプのFDIフローは、相互にどのように関連するのか?経済や景気、雇用への影響はどのようなものか?など、政府の政策を奏功させるには、現実的なデータによって裏付けることが必要である。そして、こうした政策が具体的な結果を出さない限り、日本が長年にわたり外資に対して事実上、閉鎖的な国だったという、過去の評判を覆すには至らないだろう。

ACCJのFDIタスクフォースプロジェクトACCJのFDIタスクフォースプロジェクトは、二人の著名な研究者、一橋大学の深尾京司教授と東洋大学の天野倫文講師による経済分析を柱とする。「深尾レポート」と題されたこのレポートは、対日FDIのフロー、ダイナミックス、インパクトを評価し、こうしたフローを現実的に増大させることができる政策変更の類に焦点を当てている。両研究者のレポートを補完するのが、ACCJ会員企業の成功投資事例を説明したケーススタディーである。後者は、標準的なACCJ会員企業の実務経験と長期にわたるコミットメントを背景に、FDIが実際たどったプロセスの実例を説明したものである。

本プロジェクトによって我々は、データの確かな分析や現実のケーススタディーを基に、対日FDIについて、真実かつバランスのとれた実態を描き出した。これによって、不安と誤解が取り除かれ、FDI増大と日本経済や日本社会への貢献を図る効果的な政策を日本政府が立案できるよう、我々にその礎が提供できればと願っている。

本提言書の焦点本提言書では、深尾レポートの結論に基づき、外国投資が国内経済に与える影響と、現在までの日本のFDI実績について調査を行う。また、日本でのFDIの話題を巡る俗説のいくつかを考察してみたい。日本は外資を頑なに受け入れようとしない国であるという歴史上の評判があるが、この評判を覆すような効果的な政策を日本が講じれば、いかに投資の「好循環」が促進されるかを我々は提言したい。

外国人投資家のみならず、国内の日本人投資家にとっても日本市場の魅力を著しく向上させることになる政策優先分野と政策変更に関する個別提言が、引き続き発表される予定である。

市場主導型の競争の重要性既刊の「日米ビジネス白書」、「改革への長い道のり」で、ACCJは、相互依存性が高まるグローバルマーケットの世界で、投資に国籍はないと主張した。貧困の根絶と生活水準の向上をもたらす健全なグローバル経済は、できるだけ多くの市場参加者を求めており、約60億人の人口を抱える世界は一つ以上の成長エンジンを必要としている。世界はこれまで一つの国の経済に依存を強めすぎた。つまり米国経済である。今後も当面世界第2位の経済力を維持してゆくであろう日本経済の活力ある成長なくしては、米国経済が行き詰まった際、我々全てが深刻な痛手を被ることになる。

国が採用する経済システムとは無関係に、投資は経済成長を促し、雇用の量と質を高める。だが、こうした一般的な理解では、最高の利益を生み出すために投資がどこに行われるべきかまでは特定できない。また、誰が関連政策や投資決定を行い、どのようにこれらの決定が実行されるべきかといった疑問も解決されない。

ACCJではかねてから、「市場主導型」競争を促進するオープンでグローバルな経済の育成こそ、持続的かつ健全な経済成長を達成する最善の方法であると主張してきた。つまり、信頼しうる情報へのアクセス、透明性、意思決定の説明責任が存在し、財政的、技術的、人的資源を最も生産性の高い用途に配置することができる経済の育成である。国の経済と市場の活力は、その国が国民のために創出、維持する生産性の高い職にある。究極の目的は、生産性や資本利益率を向上させ、国民の生活水準を高める付加価値雇用を創出することなのである。

どのような経済であれ、国民の健康と安全を保護するために、政府による適度な規制の監視が必要であることは言うまでもない。しかしより大局的には、一般的原則の重点はオープンで競争的な市場に置かれるべきで、そうした市場の育成を図ることにある。

本研究のテーマは、対日FDIが日本にどのようなメリットをもたらすかということである。そこでFDIが国民総生産の約12%を占める米国など他の先進国の経験を研究してみると参考になる。深尾レポートの結論で日本について述べられているように、これらの国々の例から、外資にとって魅力的な資本利益率

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や生産性、利益、付加価値雇用数の増加を通じて、国内投資家や経済にも寄与していることがわかる。結局のところ、日本や米国のような経済大国で主に成長の原動力となっているのは、国内投資家なのである。ただそうした過程で、FDIから新たな刺激をわずかに受けることで、景気対策としての外国投資が国内経済の減退を和らげる一助となり、新たなノウハウや生産性上昇といった付加的メリットももたらされるのである。

日本では、こうしたFDIについての基本的考え方を取り入れようとする重大なシフトが起きはじめている。金融「ビッグバン」やここ数年の他の規制改革はその表れである。以前よりオープンで透明性の高い日本のビジネス環境は、すでに相当数の投資を海外から誘致している。その結果、多くの日本企業は企業戦略の再検討を行い、グローバル化された市場や国内の人口構造の変化といった課題に対処するために新たな戦略を採用するに至っている。

肯定的変化の極大化 市場が適切に働けば、それは生産性や効率性、生活水準を向上させるメカニズムとして機能する。つまり、市場はよい方向へ転換しうるものである。とはいえ、市場が効率的であるためには、互いに補い合う社会的、文化的、政治的インフラが必要とされる。例えば、効率的なソーシャルセーフティーネットの存在によって、労働者の保険や年金ニーズは保証され、市場の変化のために収入が下がった際、労働者は一時的な経済的援助を得ることができる。こうした金銭的な柔軟性はむろんのこと、労働者は新しい技術を修得したり、変化する消費者ニーズに対応できるよう新たなスキルを学ぶ機会が与えられる必要がある。そうでなければ、労働市場は、自ら「技術の再習得(retool)入れ替え」可能な柔軟性は十分得られず、新たな企業が新規参入したり、新規投資で新しい人材を確保することは不可能になるだろう。同じような意味から、環境を保護し、食料と職場の安全を確保し、公平な税制と利益配分を促進する必要がある。

同様に、外国人投資家は常に、投資先の国の社会的、法律的、文化的システムに敬意を払わねばならない。さもなくば失敗を覚悟の上で行うべきである。例えば、日本の対米投資家は米国の法律的および社会的システムに順応してきた。日本で事業の成功を収めた外国企業は日本の雇用慣行や総意に基づく意思決定といった事情をしっかりと身につけた企業なのである。実際、これらの企業の従業員や経営者のほとんど全ては日本国籍を持った者である。対日投資を成功させたい将来の投資家はこうした例にならう必要があるだろう。

「外国直接投資」とは何か?FDIとは直接投資であってポートフォリオ投資ではない。深尾レポートでも述べられているように、直接投資に伴い、それなりの手腕と意欲を持つ投資家から受け入れ国企業に、ノウハウや経営資源が移動する。またFDIは、設備投資の規模が大きく、流動性が制約されていることから、ポートフォリオ投資よりはるかに多くのコミットメントが必要とされる長期資本となる傾向がある。こうしたことから直接投資からの後退や撤退はポートフォリオ投資と比べて相当困難になる。

一般的にあらゆるタイプの投資は経済に良い効果をもたらし、直接投資はより特別なメリットを提供する。直接投資は新規雇用を創出し、消費と総需要を増大させることから、デフレ対策にも寄与する。また新たなビジネスモデルやノウハウ、製品、経営手法ももたらす。このように直接投資は生産性を押し上げ、価値あるリスクキャピタルを市場に提供するのである。

投資価値の序列• 投資は経済に良い効果をもたらす

• 直接投資は雇用を創出し、成長を促進し、デフレを抑制する

• 外国直接投資はさらに多くの雇用を創出し、さらに高い成長と生産性を促進し、さらに効果的にデフレを抑制する

2002年5月のJETROの調査によると、外国企業とその関連会社は、100万人以上の正社員を雇用しており、これは日本の総労働人口の約2.3%に当たる。さらに、外国企業の雇用への貢献度は急速に高まってきている。深尾レポートによると、対日FDIによる雇用は、1997年から2001年までに50%近く伸びた。こうした雇用のうち、比較的高い割合を占めたのは高付加価値職業であった。

外国企業の特色は?外国企業の多くはよく知られた名前である。日本における上位外国企業は次の通りである。

番号 会社名(親会社)1 日産自動車(ルノー)2 日本アイ・ビー・エム3 マツダ (フォード)4 三菱自動車工業 (ダイムラークライスラー)5 三菱ふそうトラック バス(ダイムラークライスラー)6 スズキ(ゼネラルモーターズ)7 いすず自動車 (ゼネラルモーターズ)8 アクサ生命保険 (アクサグループ)9 西友 (ワォルマート ストアーズ )10 ボッシュ オートモーティブ システム11 日本ヒューレット パッカード12 GEエジソン生命保険 (AIGグループ)13 ジャトコ14 日本マクドナルド15 アリコ ジャパン (AIGグループ)16 マニュライフ生命保険17 エイアイジー スター生命保険 (AIGグループ)18 日本ユニシス19 ズクセル ウ ァ゙レオ クライメート コントロ-ル(ボッシュ オートモーティブ)20 新キャタピラー三菱 (キャタピラー)

出所:東洋経済新報社、外資系総覧2003年

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出所:UNCTAD, World Investment Directory 2003.本書では「外国企業」の定義をJETROと深尾レポートで使っているものより狭義的に使用しておりますが、示されている雇用の上昇トレンドは一致しております。

ケーススタディーでも証明されているように、多くの外国企業は数十年にわたり日本市場へのコミットメントを維持している。

対日FDIが近年、日本にもたらしたもの:雇用の増加と生産性の改善多くのエコノミストが指摘するように、生産性の低迷は、日本産業の主要問題点の一つである。対日FDIフローを調査するにあたって、深尾レポートは、日本の雇用創出と生産性向上におけるFDIの多くの貢献例を分析した。この経済分析によると、FDIは雇用と経済の成長を押し上げていることがわかる。その理由は、FDIが経営資源やサポート、拡大をもたらすだけではなく、より長期の生産性と持続可能な企業成長をも促進するからである。

生産性と雇用は共に、外国企業が日本の市場に参入した後に増大している。外国企業は一度日本に拠点を築くと一貫して、従業員一人当たりに日本企業より高い報酬(給料など)を支払い、より多額の設備投資を行い、より高い収益と効率を上げている。外国企業は新しいノウハウ、ビジネスモデル、異なった技術といった直接的かつ溢出的メリットをもたらす。これらは日本経済の全分野、特にサービス産業の分野における低生産性の改善に寄与する可能性がある。サービス産業分野は、今後日本で成長と雇用創出が多く見込まれる分野である。日本の最も生産性の高い産業が、最も大きく外国からの競争に曝されてきた分野であることは偶然ではない。一般的に、規制緩和された産業分野は、多くの規制を受ける分野よりも高い水準の生産性、生産性改善率を示し、外国投資も多くなる。

深尾レポートの指摘によると、FDIの投資家は新規企業を創出・設立している。JETROによると、1995年から2000年(直近のデータ入手可能な年)までに、599件の新規企業が外国企業によって設立された。外国企業の売上高(およびその結果雇用数)の伸び率は、平均すると国内企業よりも高い。

会社名 日本への初期投資

インタナショナルバンキング株式会社 (シティバンク エヌ エイ) 1902

日本アイ・ビー・エム 1937

AIU保険会社(AIGグループ) 1946

日本コカコーラ 1957

アメリカンファミリー生命保険会社 1974

ルイ ヴィトンジャパン 1978

日本オラクル 1985

昭和シェル石油株式会社 1985

外国企業は多額の法人税も支払っている。高額納税外国企業は次の通りである。

申告所得 (100万円)

会社名 2001年 2000年

日本アイ・ビー・エム 125,218 142,052

アメリカンファミリー生命保険会社 110,651 95,385

日本コカコーラ 86,789 66,200

アイク 67,696 33,792

日興シティグループ株式会社 52,164 59,572

昭和シェル石油株式会社 50,352 18,715

ルイ ヴィトンジャパン 32,405 25,648

日本オラクル 30,958 18,751

出所:東洋経済新報社、外資系総覧2003年

出所:各企業

深尾レポートの結論深尾レポートの主な経済学的結論は意義深いものであると同時に、憂慮に満ちたものである。

• 日本の政策と慣行により対内FDIは100年以上もの間阻害されてきた。GDPに占める割合から見ると、この国の対内FDI残高は現在、米国の11分の1、英国の28分の1である。またグローバル化は、日本の資本と経営資源を直接投資の形で海外に急速に追い出した。低水準にある対日FDIフローは、この国の経済のこうした「空洞化」を埋めることはないであろう。

日本で設立された外資系企業数1995ー2000

年 1995 1996 1997 1998 1999 2000

企業数 116 116 92 73 95 107

合計: 599社平均:1年当100社

出所:経済産業省、第35回外資系企業動向調査、2001年

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• 日本の低成長率とデフレの根本原因は民間投資の低迷だが、そもそもの原因は日本企業の生産性と収益性の低さである。日本はもはや、こうした危機の対処法として、これまで自国が積み上げた資本資源や経営資源にだけ頼っていることはできない。

• 経済分析の結果によると、(M&Aによって買収された日本企業を含む)ほとんどの外国企業の従業員一人あたりの生産性、設備投資額は、同業の日本企業より約10%高く、収益率もはるかに高い。もし外国企業の対日総投資額の対GDPシェアが10ポイント上昇し、先進国平均である11%になった場合、日本の総資本残高とGDP伸び率は共に1.5%伸びるであろう。

• 一般通念に反し、FDIの経済的メリットは、東京集中ではなく、日本全体に幅広く配分される。外国企業の87%は本社を東京、神奈川、大阪に置いているが、外国企業の施設の54%、ならびに外国企業の従業員の半数弱はそれ以外の地域に所在している。

• 外国企業による人員削減数は日本企業による人員削減数より目立って高いわけではない。外国企業が日本企業より設備投資と研究開発に注力するのは事実である。だが、たとえ外国企業の当初の雇用が少なくても、より安定した成長と収益性を享受することでこの影響は相殺される。外国の経営戦略を採り入れると、日本企業においてさえも雇用は減少し、あるいは安定性を損なうといった考え方は誤りである。

• 日本の買収側企業にとっても外国の買収者にとっても、人員削減は買収の短期的結果である場合が多い。被買収企業は往々にして経営に行き詰まっていたり投資不足状態にあることから、最終的には破綻し、全ての雇用を失うことになっていたはずである。

• 対内FDIの昨今の盛り上がりは終わった。1990年代後半の対日FDIの殺到は、様々な要因が重なって引き起こされた。

非製造分野の規制緩和、企業破綻の増加、株価の下落、株式持ち合いの減少、グローバルなM&Aブームといったそれらの要因は現在、勢いを失いつつある。

• あらゆる先進国と同様、M&Aは対日FDIの主要手段である。追加投資は事業を拡大し、新しいノウハウをもたらす。M&A取引は、このような追加投資のタイミングと量を加速させることから、FDIストックの増加はM&A取引によってもたらされる。だからといって、M&A取引すなわちFDIというわけではない。他国同様、日本でもM&A活動の圧倒的多数は、国内企業同士で行われている。

• M&Aと「グリーンフィールド」投資は相互に関連しており、連携して行われるケースが多い。M&A取引と、それに付随する拡張投資は「グリーンフィールド」投資が生み出すのと全く同じFDIの経済効果を生み出す。

• 日本が繁栄するためには、M&Aを含むFDIの誘致を増やす必要がある。これは、外国直接投資がポートフォリオ投資とは次の三点で全く異なった性質のものだからである。一つは、FDIが投資拡張のための追加資本をもたらし、その結果、雇用を創出すること、二つ目はFDIによって、新しい経営ノウハウ、製品、ビジネスモデルが日本市場に移転すること、三つ目はFDIが長期間にわたり投資を続ける点である。

• 日本の地位は外国企業の誘致競争のみならず、日本企業を国内で投資させる競争においても失墜しつつある。東京と大阪は現在、上海、ソウルと競合している。対日FDIフローは2003年上半期に42%落ち込んだ。このままでは、2008年までに日本が目標とする9兆4千億円の半分にしか達しないであろう。

• FDI誘致を成功させるには、FDIフローとFDIの機会に関し、既存のものより信頼度の高い分析に基づいて、政府の政策を打ち立てなければならない。本調査において生み出されたデータの分析は以下の点を指摘している

a) 主要産業の規制緩和や民営化を行い、外国企業、日本企業を問わず、あらゆる企業による市場参入の障壁を取り除かなければならない。こうした規制緩和は、医療サービスや教育、民営化に適した公共企業体などの「保護された」分野を含まない限り、十分なインパクトはもたないであろう。

b) 関連法によって、地方自治体により多くの自治権と資源を与える必要がある。そうすれば、地方自治体は投資家に対して、独自の意欲とインフラで自らの差別化を図ることが可能になる。

c) 法的枠組みを改善し、外国企業がM&A取引で株式交換などを利用できるようにする必要がある。

FDIは日本経済活性化の重要な鍵を握っている。日本の対内FDI政策の成否は、日本国民の個人財産に重大な影響を与えるであろう。

出所:UNCTAD, World Investment Directory 2003

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FDIに関する俗説と不安の払拭日本を外国人が投資をしたり、住んだり、働きたくなる場所にしようという小泉首相の呼びかけは、その姿勢自体、喜ばしい変化と受け取れる。だが、低水準にある日本のFDI累積残高を増加させるためには、依然として数々の現実的障壁が存在する。過剰な規制、過度に中央集権化した国家政策、限られた投資機会、制約的で不透明な資本市場、高コスト、不親切な法体制など全てが投資環境の他の側面とあいまって、投資を時間ばかりかかる、それとも過度に高くつく、あるいは全く魅力ないものにしているのである。

しかし、これらの要因の中で最もダメージの大きいのは、外国企業やFDIがどのような影響を日本に与えるかといったことに関する数々の誤解や不安である。日本がFDIの誘致(あるいは維持)を阻害する不完全な政策は、こうした誤った考え方と、外国投資のメカニズムやメリットに対する現実の経験不足が原因である場合が多い。実際ACCJが深尾教授と天野講師に対日FDIフローの実証データ分析を依頼したのは、こうした誤解や不安を取り除くことに役立てるためであった。

FDIについて広く言われている俗説のいくつかを下記に挙げた上で、その誤りを立証する事実を述べる。

俗説: 外国企業は雇用を減らし拡大を伴わない事実: JETROによると外国企業やFDIは1993年以降日本経済に64万3千人の新規雇用をもたらした。さらに、深尾レポートによると、時間の経過と共に、外国企業は日本企業より速く成長し、より多くの新規雇用数を創出し、より速く雇用増加をもたらしている。時として外国企業の生産性が国内企業より高いのは、前者がより少ない人材でより多くの仕事を行うからという理由もある。外国企業は、収益性を回復するために雇用を減らす場合でさえ、通常その後数年で持ち直し、その結果収益と雇用を増やしている。

俗説: FDIは一過性の投資であり撤退は安易に行われる事実:このパターンは現実のビジネスではまれにしか発生しない。FDIタスクフォースのケーススタディーやその他数多くの調査例によると、ほとんどのFDIは継続的でコミットメントが要されるプロセスである。そもそも長期的な専念力や持久力のない企業は投資を行わない。個人や機関投資家などの資産運用投資を含めたあらゆるタイプの投資の中で、直接投資は最も流動性が低く、最も撤退が困難な投資である。直接投資はコミットメントが要される投資なのである。

俗説:FDIの殆んどは関東、関西圏のみに利益をもたらすだけで、他の地域や地方自治体には利益をもたらさない事実: これは全く真実ではない。多くの企業の本社は事実東京、神奈川、大阪に所在しているが、深尾レポートのデータと分析によると、FDIの雇用への影響面では、そのメリットは、日本の地方にも深くかつ比較的均等に行き渡っている。

出所:産業研究所「対日直接投資の量的変化がわが国経済と雇用に与える影響に関する研究」、2000年。 原資料は「事業所企業統計調査1996年」の個票データ企業

俗説: グリーンフィールド投資はM&A投資より望ましい事実:我々のケーススタディーでは、実際にこの二つは互いに深い関連性があり、切り離しがたいことが判明している。グリーンフィールド投資の成功はM&Aをもたらし、逆の場合も同じである。つまり、双方とも追加の拡張投資をもたらし、それが新たな成長と雇用を創出するのである。単にどちらかの形態の投資にこだわれば、結果としてあまり魅力のない投資環境となり、全体的なFDIフローはかなり減ることになろう。両方の投資を促進させることが最も賢明な戦略なのである。

発展途上国においては、人件費が安いことから、投資のほとんどは、先進国向け輸出品を生産する製造設備に対して行われる。それに対して先進国の多くでは外国投資の80%程度がM&A活動を通して行われている。日本もその例外ではない。1995年以来、新規投資の圧倒的大多数がM&Aによるもので、追加投資を考慮した場合は特にそうである。こうした現状は世界的にはもちろんのこと日本においても今後続くであろう。投資家は、より大きな投資機会を生みだし、より速くより効率的な投資拡大が期待できる、より大きな「基盤」を買収したいのである。M&Aは、より機敏な投資拡大と資産の新たな所有をもたらし、それが過剰債務の危機の解決をも促す可能性がある。

出所: UNCTAD, World Investment Report 2003

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ただし上記で述べたような傾向にあるからといって、日本におけるグリーンフィールド投資の機会は今後増えないと言うことを意味しているわけではない。米国では人件費が高いが、かなりの金額のグリーンフィールドFDIを受け入れてきた。例えばイリノイ州では6,447社の外国企業を受け入れ、およそ34万人を雇用している。1990年代にインディアナ州は鉄鋼生産で全米トップとなったが、これは主に、世界中から鉄鋼製造メーカーによる投資を受け入れたからである。インディアナ州では現在、4万人以上の住民が日系企業の製造プラントで働いている。わずか7,千人強しか働いていなかった1990年からすれば大幅な雇用の上昇である。

俗説: 外国企業は、単に被買収企業の価値を搾取するために買収を行う事実: たとえ、ある投資家がそう考えていたとしても、こうした理由で買収を正当化するのは非常に難しいだろう。外国企業は、買収に支払った価格を正当化する収益見通しが出せるように、ほとんど常に被買収企業の成長戦略を念頭に入れておく必要がある。外国企業による対日M&A取引のほとんどは、被買収企業の再建とその後の売上、利益、雇用の高い成長をもたらしている。こうしたことを成し遂げるために、外国の買収者は通常、最初のM&A取引後も、さらに多額の資金を投資する。むしろ、多くの場合、これは至極当然なことであった。というのも、外国企業によって買収されたほとんどの企業は、平均すると、日本の買収者によって買収された企業より破綻の度合いがかなり進んでいたからである。

俗説: FDIのほとんどは短期的なプライベート・エクイティー・ファンド(いわゆるハゲタカファンド、再建ファンド)による事実:まず第一に、ほとんどのFDIは戦略的投資家や事業会社によってもたらされる。プライベート・エクイティー・ファンド(時として非難を込め見境無く「ハゲタカファンド」と称されるファンド)による投資はFDI全体の5%から10%にも満たない。むしろこうしたファンドは、必要の高いリスクキャピタルをもたらし、他の支援者を見つけられない企業に支援と成長機会を提供してくれるのである。実のところ、こうしたファンド投資家の資金の大部分は外国の資金などでは全くなく、むしろ国内の機関投資家の支援を受けた日本のファンドによるプライベートエクイティー投資なのである。その上、投資された資金の一部は最終的に日本人の売り手または貸手に渡り、その後、彼らがその資金を他の場所に再配分する場合もある。

分析結果から、あらゆるタイプのFDIは生産性と資産再配分の効率を高めることがわかっている。FDIが、機関投資家による数年後の転売を目的とした、資産や債務の買収という形態をとる場合でさえ、こうした取引は、資産を生産性の高い用途に再配置し、経済成長の妨げとなっているものを取り除く働きをする。むしろ日本は、国内・国外資金を問わず、プライベート・エクイティー・ファンドをもっと数多く必要としており、資本市場の活性化が必要だとACCJでは考えている。

資料: 日本政策投資銀行

資料: 日本政策投資銀行

俗説:M&A取引のほとんどは外国企業によって行われ、日本企業は買収をしない事実:現実には、日本のM&A取引は、金額から見ても件数から見ても大部分を国内買収者が占めている。過去15年間にわたり、国内企業によるM&A取引が急増したことは前向きな進展である。というのも、生産性、競争力、株式での利益、資産配分・再配分効率の改善がもたらされるに違いないからである。国内外を問わずあらゆるタイプのM&A取引は、資産再配分取引、所有権移転取引は、日本経済を向上させ、生産性、株式市場効率の改善に弾みをつけ、なおかつ企業統治慣行の多様化を図るものであることが、深尾教授・天野講師の分析で明らかになっている。

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上記メリットは、外国企業によるM&Aのケースでは、さらに大きくなることが、深尾レポートで証明されている。だが、M&A機会は以前にも増して外国企業に制限されたものとなっている。これは、単に外国企業に対する誤解や株式持ち合いといったことが原因ではない。日本の会社法、税法によって、外国企業は未だにM&A取引に非現金取引手法の使用をほとんど認められていないからである。それに対し、日本企業は(株式交換と合併などの)様々な「ノンキャッシュ(現金を利用しない)」取引手法を自由に駆使し、この特別な柔軟性を積極的に活用している。最近の国内M&A取引ブームの大部分の理由はこの点にある。

俗説: 貿易は投資の後に発生する事実:貿易は確かに投資を追って拡大するものである。ただし、この逆もまた真実である。投資、それも特に製造分野に対するグリーンフィールド投資は、企業がマーケットプレゼンスを確立した後で発生するのが一般的である。米国は日本企業の対内FDIによって大きなメリットを享受した。こうした企業も最初は、貿易によって米国市場で経験を積み、その後、現地で拠点を築くことによって顧客にサービスを提供し、より満足を与えることが必要となったのである。したがって、「貿易は投資の後に発生する」という俗説は、誤解を招くスローガンである。なぜならばa)最初に貿易を自由化することが、FDIを促進する最善の方法の一つであり、b)貿易の自由化を遅らす可能性があるからである。

投資の「好循環」の促進魅力的な投資環境によって、資産と資源が最も生産性の高い用途に迅速に配分されやすくなり投資機会の促進が図られる。こうした原則に基づいて国家政策が打ち立てられれば、結果として、全体が部分の総合計より多くなるような効果を生み出すことができるだろう。日本自身がこの5年間に経験してきたことが、こうした事実を証明している。すなわち日本は、当初の基準が低かったにせよ対内FDIフローを倍増させた。これは国内初の規制緩和の動きと、銀行による株式持ち合いが部分的に緩和されたことで、新たに投資機会が生まれたことが主因である。この最も重要な教訓は「投資がさらなる投資を生む」ということだった。

日本の今後の課題は、最近の対内FDI低迷や、日本の海外投資の加速にかかわらず、この5年間の構造改革の経験をもとに前進することにある。深尾教授・天野講師が指摘しているように、先の規制緩和対策を追い風とした投資の「第一波」は明らかに終わってしまった。外国M&A取引は、1996年の31件から2000年にはピークの175件まで急増したが、2001年には

出所:Morgan Stanley資料:Thomson SDC Database

資料:レコフ『M&Aデータブック1988~2002』より集計.

出所: Morgan Stanley資料: Thomson Financial

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165件、2002年には129件まで落ち込んでしまった。本提言の最初でも述べたように、純FDI残高は他の先進諸外国に比べて、依然として極めて低い水準にある。

経済成長の低迷あるいは停滞の継続、全体として不活発な投資活動、消極的な設備投資、日本の資本が国内から撤退し海外に移転する「空洞化」現象、長期化するデフレ、失業率の増加、こういったことから、現在、投資家にとって日本市場の魅力はより薄れている。しかし投資家は、日本の他の分野でより高いリターンを見込んでいる。

外国人投資家にしても、日本を真に「投資家にフレンドリーな」市場にするという目標実行のために、日本政府がどの程度、真剣に取り組んでいるのか、あいまいな印象を受けている。政府はあおぞら銀行の外国人投資家への売却を許可した。これには最終的に前向きの印象を受けたものの、舞台裏での数ヶ月間の努力と、表舞台での国内「救世主」探しが行われた末のことである。とはいえ、外国企業は、雪印のような企業への投資から閉め出しを食った。このことから、「投資家にフレンドリーな」政策目的が、日本の全省庁の官僚に完全に受け入れられているわけではないことが明らかになった。

それでも、ACCJでは、日本政府の政策方針はよい方向へ向いており、対日投資の機会は拡大していると確信している。日本の経済成長の低迷によって、一部投資家は日本国内の他の分野でより高いリターンが得られることに注目しているが、日本企業は不採算部門を売却して中核事業に専念し、株式持ち合いを解消し、リストラを行っている。効率的資産配分と戦略の集中化が全体に新たな機会を作り出す可能性がある。

ACCJは日本政府に対し、今日までの進展を基に前進し、FDIを促進するため国家政策として、早急に法律・規制上の変更に協調して取り組むことを要請する。また市場要因と自由な資本市場が極めて重大なことを強調した上で、こうした市場要因がより効率的に機能するよう支援したい。

深尾レポートの結論に基づき、我々は、当初のFDIインフローが追加投資につながる好循環が拡大するよう、以下の幅広い政策提言を行う。こうした好循環は、日本が投資家フレンドリーな市場であるという評判を高め、今後5年間に次なるFDIの倍増を実現する刺激になるものと確信している。

• 小泉首相、政府官僚、その他の政府高官は今後も引き続き、国内外両方においてFDIを支援する率直な公式声明を出し、その後、明確な政策と具体的な行動でそれらをフォローアップしてゆく必要がある。公式声明を頻繁に行い、現在日本に行き渡っている数々の誤解を払拭することに力を注ぐべきである。

• 政府官僚はFDI倍増という政策目的の推進にもっと責任を担わされるべきである。日本を外国人投資家にとって魅力的な市場に変えることは、雇用創出や持続可能な成長に寄与するだけでなく、日本の企業や日本の産業が生産性を高め、経済が回復することにもつながると日本国民に対し啓蒙活動を行なうことからはじめることも一案である。

• FDIとそのメリットについて、一般社会においての関心や受容度、理解度を深め、誤解を払拭させ、さらに外国人投資家と身近に接触して、彼らが直面する不安や障害について理解できるような宣伝やイベントのキャンペーンを行うことを提案する。

• 自由な資本市場、明確かつ限られたごく少数の例外しか認めない原則とした「自由な」取引、健全な企業統治、透明性、説明責任、簡素な規制と行政といった、投資を促す市場原理に信頼が高まるよう「パラダイムシフト」を起こすこと。閣僚レベルの諮問委員会を設け、この委員会が健全で競争的な市場原理の拡充について、的確な改革案の提言に取り組むことを提案する。

• 規制緩和と民営化を加速させること。医療、教育、小売業、公共事業、農業、専門サービス分野、郵便・宅配サービス、投資顧問・資産運用業務分野、公益事業のアウトソーシングなどの分野で、外国企業、日本企業を問わず双方に投資機会を与えること。政府系機関を金融事業の主だった役割からはずすことも、重要な措置となるであろう。

• 外国人投資家が所有権移転とM&A取引を行い易くする。法律の改正によって、「キャッシュ・マージャー(現金合併)」や課税猶予付クロスボーダーの株式交換等の手法を活用可能にする。時宜を得たM&Aは、企業の存続と雇用維持を支援し、新たな資源とノウハウの導入を通して持続可能な長期成長をもたらす手法の1つであると、そのメリットについて国民や企業経営者の理解を深めること。

• 労働移動や新規産業への迅速な参入を促進し、非効率企業による退出の影響緩和を図るソーシャルセーフティーネットを整備すべく変革プログラムに着手すること。離職者に財政的支援や、付加価値技術を身につけるためのトレーニング、補助金を提供する。401K(確定拠出)型年金の限度額や利用方法を改善し、現在の魅力だけでなく今後の「ポータビリティー(年金の通算制度)」も高めること。

• 地方自治体の自治権と権限を強化、支援し、税法上やその他のインセンティブを与えて地方自治体が自ら差別化を図り、FDIの誘致を促進できるようにすること。JETROやMETIのような有力省庁に、地方自治体の支援業務を重点的に取り組ませること。そうすれば地方自治体は自らの管轄内にある特定企業や個別の状況に適した投資家探しをより積極的に行うことができる。また、特定企業をターゲットに「構造改革特区」申請を要請することもできる。

• 具体的実績を伴う投資促進プログラムを地方自治体が立案できるよう、奨励、支援すること。地方自治体にとって特に重要な点は次の通りである。

a) 最初の立案段階で、代表的な外国企業や団体と意見交換を行い、立案中の促進策について詳細なフィードバックを得ること。

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b) 新規投資をしない場合でも、地方自治体の管轄圏内にある既存企業に支援や税制上の優遇措置や補助金を出すようなプランよりその地域に新規投資を行う投資家をターゲットに、そうした企業が地域でプレゼンスを高めることに対して報いるプランを立案すること。

c) トレーニング(特に英語などにおいて)を提供することによって流動性のある労働市場を促進し、こうした人材を雇用する企業に対してではなく、この個人に対し直接、補助金や税制上の優遇措置を与える。

• 必要な政策の実施や法的枠組みの変更は機敏に行うこと。そうすることにより、早い段階での実績作りや、投資「サクセスストーリー」を作り出すことができる。政策や法案改正は、現実のFDIのフロー、その動因、ダイナミックスをしっかり分析した上で行うべきである。

ACCJは、以上を実現させるための政策について、次の問題を取り上げた具体的な提言書を数ヵ月後に発表する予定である。

• 規制緩和と起業家精神の促進• 労働流動性とソーシャルセーフティーネットの改善• 不良債権処理の促進• 株式交換と三角合併• 現金合併• 企業統治と透明性• 教育並びに医療サービスの強化

結論さらに多くの、しかも早急な直接投資を日本は必要としている。外国による直接投資が、生産性、成長、雇用の面で、日本に特別なメリットをもたらすことは、経済データから明らかである。今回の分析によってFDIこそ、日本経済を再活性化するために重要な鍵を握っていることを明らかになった。

日本は外国投資を歓迎する第一歩を踏み出し、それに対する外国人投資家からの反応は非常に好意的なものだった。しかし、FDIの昨今の盛り上がりを支えた要因は消滅してしまった。今後も日本が競争力の高いグローバルマーケットからFDIの適切なシェアを誘致したいと望むならば、この国は、さらに改革と規制緩和を加速し、投資誘致のための法改正を行い、行政手続きを簡素化することが必要である。そして、これまでよりもっと積極的かつ迅速に、確固たる決意を持って進めなければなるまい。