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242 5.4 ベルギーにおける容器包装リサイクルシステム 5.4.1 容器包装リサイクルシステムの内容 (1) 容器包装リサイクルシステムの概要 ベルギーでは、廃棄物処理に係る立法権限はフランドル、ワロニー、ブリュッセルの 3 地域にあるが、容器包装廃棄物については、1996 年に容器包装廃棄物協定(容器包装廃棄 物の発生抑制及び管理に関する協定)が地域間で合意され、全国統一的な容器包装廃棄物の 収集・リサイクルが 1997 年から施行された。なお、この協定は、EC 指令(2004/12/EC)の 要求事項に合わせるため、 2008 年に改定され、改定された協定は 2009 年から施行されてい る。協定という名称ではあるが法的拘束力を有している。この協定に基づき、地域間容器包 装委員会(IVCIE 24 )がベルギーの全国統一的な容器包装廃棄物の収集・リサイクルを管理 し、EC へ取組状況を報告している。 容器包装廃棄物協定では、家庭系容器包装廃棄物、産業系容器包装廃棄物について、生産 者等に収集・リサイクルを義務づけている。義務履行の手法は、地域間容器包装委員会によ って認定された生産者責任組織の収集・リサイクルシステムに参加する、あるいは独自に収 集・リサイクルをするかのいずれかである。 認定されている生産者責任組織は、家庭系廃棄物が Fost Plus であり、産業系容器包装廃 棄物が Val-I-Pac である。家庭系容器包装廃棄物の生産者責任組織である Fost Plus は家庭か らの容器包装廃棄物の分別収集・リサイクルを実施する。収集・別については、自治体 合からの申込みにより Fost Plus が公募し定した事業者が収集・別する場合と、自治体 合自らが収集・別を行う場合がある。分別収集されたものは、 Fost Plus が委託するリサ イクル事業者によってリサイクルされる。 24 オランダ語略称の IVCInterregionale Verpakkingscommissie)とフランス語略称の CIECommission Interrégionale de l’Emballage)による略称。IPCInterregional Packaging Commission)とも呼ばれる。
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ベルギーにおける容器包装リサイクルシステム - …...242 5.4 ベルギーにおける容器包装リサイクルシステム 5.4.1 容器包装リサイクルシステムの内容

Jun 27, 2020

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242

5.4 ベルギーにおける容器包装リサイクルシステム

5.4.1 容器包装リサイクルシステムの内容

(1) 容器包装リサイクルシステムの概要

ベルギーでは、廃棄物処理に係る立法権限はフランドル、ワロニー、ブリュッセルの 3

地域にあるが、容器包装廃棄物については、1996 年に容器包装廃棄物協定(容器包装廃棄

物の発生抑制及び管理に関する協定)が地域間で合意され、全国統一的な容器包装廃棄物の

収集・リサイクルが 1997年から施行された。なお、この協定は、EC指令(2004/12/EC)の

要求事項に合わせるため、2008年に改定され、改定された協定は 2009年から施行されてい

る。協定という名称ではあるが法的拘束力を有している。この協定に基づき、地域間容器包

装委員会(IVCIE24)がベルギーの全国統一的な容器包装廃棄物の収集・リサイクルを管理

し、ECへ取組状況を報告している。

容器包装廃棄物協定では、家庭系容器包装廃棄物、産業系容器包装廃棄物について、生産

者等に収集・リサイクルを義務づけている。義務履行の手法は、地域間容器包装委員会によ

って認定された生産者責任組織の収集・リサイクルシステムに参加する、あるいは独自に収

集・リサイクルをするかのいずれかである。

認定されている生産者責任組織は、家庭系廃棄物が Fost Plusであり、産業系容器包装廃

棄物が Val-I-Pacである。家庭系容器包装廃棄物の生産者責任組織である Fost Plusは家庭か

らの容器包装廃棄物の分別収集・リサイクルを実施する。収集・選別については、自治体連

合からの申込みにより Fost Plusが公募し選定した事業者が収集・選別する場合と、自治体

連合自らが収集・選別を行う場合がある。分別収集されたものは、Fost Plusが委託するリサ

イクル事業者によってリサイクルされる。

24 オランダ語略称の IVC(Interregionale Verpakkingscommissie)とフランス語略称の CIE(Commission

Interrégionale de l’Emballage)による略称。IPC(Interregional Packaging Commission)とも呼ばれる。

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図 5-5 ベルギーにおける容器包装リサイクルのシステム(Fost Plus)

(2) 役割分担(関係主体の役割分担)

1)生産者等

� 容器包装の収集及びリサイクル

容器包装協定第 6条に基づき、年間 300キログラム以上の容器包装を市場に出す製

品の生産者及び輸入者に対して、容器包装廃棄物を収集・リサイクルすることが義務

づけられている。また、サービス・パッケージ(小売店で付される持ち帰り用の袋)

については袋自体の生産者及び輸入者にも義務づけられている。

生産者等は、独自に容器包装廃棄物を収集・リサイクルするか、認定された組織に

義務の履行を委託することで、義務を履行する。また、生産者等は、独自収集方法あ

るいは生産者責任組織による収集方法を地域間容器包装委員会に報告する義務を負

う。

� 抑制計画の作成

年間300トン超の容器包装を市場に出す製品の生産者等又は100トン超の容器包装

をベルギー国内で生産する容器包装製造事業者は、容器包装の発生抑制に関する計画

書を作成し、実施状況を毎年地域間容器包装委員会に報告することが義務付けられて

いる。

2)生産者責任組織:FOST Plus/VAL-I-PAC

家庭系容器包装廃棄物の生産者責任組織として FOST Plus、事業系容器包装廃棄物につい

ては VAL-I-PAC が各々設立されている。これらの生産者責任組織は、地域間容器包装委員

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会による認定を受けて生産者責任組織としての活動を行っている。

容器包装廃棄物協定第 12条に基づき、生産者責任組織は、契約した生産者等から公平に

拠出金を徴収した上で、リサイクル率目標を達成する義務を負っている。第 13条に基づき、

この拠出金の目的は、容器包装の分別収集、収集された容器包装の選別、リサイクル、リカ

バリー、各工程での残余物の処分、一般市民への情報提供・啓発活動の実費を賄うこととさ

れている。

生産者責任組織の要件は下記のとおりである。

� 生産者等の民間イニシアティブであること。

� 政府の認定を受けていること。

� 非営利組織であること。

� ベルギー全土を事業範囲とすること。

� リサイクルとリカバリーの保証をすること。

� 政府の管理下にあること。

Fost Plusは、家庭廃棄物の収集主体である自治体連合との間で地域廃棄物計画に基づく合

意書を締結する必要がある。この合意書には、下記の事項が盛り込まれている。

� 容器包装廃棄物の収集方法と、収集された容器包装廃棄物の引取り方法

� 材質や種類毎に定められた選別の最低限の技術的条件

� 選別された資源の販売のための最低限の技術的条件

� リサイクル等の処理・処分費用支払いの規則と方法(焼却熱の有効利用及び焼却灰の

最終処分が含まれる。)

� 容器包装の分別収集に関する広報費用の支払いの規則と方法

� 分別収集、選別、リサイクルの各市場の形成方法

3)地域間容器包装委員会(IVCIE)

容器包装協定第 23 条に基づき、公共機構として地域間容器包装委員会(IVCIE)が設置

されている。同委員会は、各地域から人員と予算の提供を受け、第 26条に基づき、下記の

意思決定、検証を行う。

� 一般抑制計画の承認、推算値に関する裁定

� 生産者責任組織に委託しない生産者等の引き取り義務の履行方法の承認

� 生産者責任組織への許可、検査、取り消し、活動条件の改定

� 市場に出る再利用不可能な容器包装の重量に関する基準値の設定

� 生産者等又は生産者責任組織による目標達成

また、第 27条に基づき、同委員会は以下に関して地方政府への提案・意見表明を行う。

� 委員会の内部運営と年間予算

� 容器包装廃棄物協定の改正

� 生産者責任組織の費用徴収・資金配分方法

� リサイクル及びリカバリー設備の効率性

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� 生産者責任組織が生産者等に請求する金額の評価

4)地方自治体(自治体連合)

容器包装廃棄物協定では、容器包装廃棄物の収集・リサイクルの責任を生産者等に課して

いるが、家庭系容器包装廃棄物の分別収集の主体は、自治体連合である。ベルギーは国土は

さほど大きくはないが自治体数が多いため、廃棄物処理は複数自治体から構成する自治体連

合(Inter-municipality)単位で行っている(自治体連合の数は 33である。なお 1自治体のみ、

単独で廃棄物処理を実施する自治体がある)。ベルギー全体の約半数の自治体連合は、容器

包装廃棄物の分別収集・選別の業務を Fost Plusに申し込んでいる。Fost Plusに申し込んだ

場合、Fost Plusが分別収集、選別の事業者を公募入札で選定し、直接事業者に委託すること

になるため、当該自治体連合は容器包装廃棄物の分別収集、選別の費用を負担しないことに

なる。一方で、自ら収集・選別を行う自治体連合は、分別収集・選別した容器包装廃棄物を

Fost Plusに引き渡し、必要となった費用を Fost Plus から受け取る。ただし、この場合の費

用については、Fost Plusが公募入札で選定した民間事業者による収集・選別費用の平均値を

ベースに、個別自治体連合ごとに Fost Plusとの間で交渉の上で決定することとなる(詳細

は後述)。

5)消費者

各自治体連合で定められている分別方法に従い、分別排出する。

(3) 分別収集の仕組み

ベルギーでは、自治体連合が家庭ごみの収集・処理を実施している。そのため、分別収集

方法は自治体連合によって異なってくるが、戸別収集あるいはコンテナ置き場への持ち込み

が一般的である。

容器包装廃棄物の分別排出のルールは以下の 3区分が基本である。

� 紙/段ボール:屑紙・新聞紙・雑誌をふくむ

� ガラス:ボトル・瓶

� PMD(Pet, Metals, Drink Cartons):プラスチックボトル(PET, HDPE)、金属製容器、

飲料パック

具体的には、地域間容器包装委員会による Fost Plusの認可決定書において、標準的な分

別収集ルールが詳細に示されている。自治体連合が収集・選別を Fost Plusに申し込む場合

はこのルールに従って実施されることとなり、自治体連合が自ら収集・選別を行う場合には

このいずれかの方法に従う事により、分別収集に要した費用を Fost Plusから受け取る事が

可能となる。

� 紙/段ボール

毎月(あるいは現行計画を強化する場合の理由付記により 4週毎に)の戸別訪問に

よる収集及びコンテナ置き場での収集。

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� PMD(プラスチックボトル、プラスチック容器、金属製容器、飲料パック)

月 2回(あるいは現行計画を強化する場合の理由付記により 2週毎に)の戸別訪問

による収集及びコンテナ置き場での収集。

� 紙/段ボール及び PMD(プラスチックボトル、プラスチック容器、金属容器、飲料

用紙パック)

月 2回(あるいは現行計画を強化する場合の理由付記により 2週毎に)の戸別訪問

による収集及びコンテナ置き場での収集。

� ガラス

コンテナ置き場及びガラス収集箱で 2種類(透明のものと色つきのもの)に分けて

収集、一般に地表のガラス収集箱による収集。なお、ガラス収集箱は、FOST Plusに

より、住民 1,000人に対し 1箇所(200人/km2以下の平均人口密度の自治体間には住

民 400人に対し最低 1箇所)設置される。

� 紙/段ボール、及び/あるいは、PMD(プラスチックボトル、プラスチック容器、

金属容器、飲料用紙パック)、及び/あるいは、ガラス

200人/km2以下の人口密度の農村部:戸別訪問による収集を行わず、少なくとも自

治体毎に設置されたミニコンテナによる収集。

200人/km2以下の人口密度の自治体:上記の収集がない場合、費用が補てんされた

コンテナ置き場での収集

� 全素材

第 9条に基づくモデル事業の対象となる分別収集方法。

なお、人口 10万人以上あるいは最低 1000人/km2の平均人口密度を有する自治体及び都

市圏に関しては、紙/段ボール及び PMDの戸別訪問による収集の頻度は、現行計画を強化

する場合の理由の付記によって変更することができる(紙/ダンボール:月2回、PMD、

紙/ダンボール及び PMD:週1回)。

また、これらの標準収集方法の適用の際には、以下の原則を尊重される。

� FOST Plusは、適用可能な廃棄物地方計画に則りつつも、上記に明記されていない計

画について費用全てを支払うことを決定できる。

� より少ない費用で、上記に記載された計画に等しい分別収集を実施できる計画につ

いて、費用全てを支払わなければならない。

(4) 分別収集・リサイクル費用の負担の仕組み

1)分別収集・選別費用

Fost Plusは容器包装の収集方法、選別方法及び費用について記載した 5年間の合意契約を

全ての自治体連合と締結している。半数程度の自治体連合は容器包装廃棄物の収集・選別を

Fost Plusに申込み、Fost Plusは公募入札制度を通じて分別収集・選別を民間の収集運搬事業

者に委託している。残りの半分は自治体連合が費用を拠出して、自らあるいは委託して分別

収集及び選別を実施している。

Fost Plusが生産者等から徴収したグリーン・ドットのライセンス料とリサイクル資源の売

却益の合計額の 8割程度が、分別収集・選別の費用として支出している。なお、自治体連合

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への分別収集費用の支払いについては、地域間容器包装委員会による FOST Plusの認可決定

書において、同第 6条に示された分別収集方法を自治体連合が採用した場合、分別収集に要

した費用全額が Fost Plusから自治体連合に支払われることになっている。標準収集方法が

定められ、多くの自治体連合がこれを採用することで、ベルギー国内の容器包装の分別収集

区分の統一が促進され、消費者にとっての分別排出区分のわかりやすさを確保しようとして

いる。

しかしながら、各自治体連合の既存設備や地理的条件等によって、標準収集方法どおりに

分別収集・選別を実施することが難しいこともあるため、自治体連合は必ずしも標準収集方

法どおりに分別収集を実施する必要はない。ただし、その場合、第 7条に基づき、標準収集

方法よりも高い費用がかかる方法を自治体連合が採用した場合には、FOST Plusからの支払

額は基準価格(Fost Plusによる公募入札結果をベースとした収集・選別にかかる平均費用)

を上限とすることが定められている。

なお、Fost Plusによって負担されなかった分別収集・選別の費用については、家庭廃棄物

税もしくは環境税を通じて住民から徴収されている。

2)リサイクル費用

家庭系容器包装廃棄物のリサイクル費用は、生産者等から支払われたライセンス料によっ

て賄われている。生産者等は、ベルギーの市場に投入した家庭用容器包装の年間申告書を提

出し、グリーン・ドットのライセンス料を支払う必要がある。これらのライセンス料は、分

別収集やリサイクルだけでなく、Fost Plusによる品質管理や市民への意識啓発の費用にも用

いられている。

(5) リサイクル手法

ベルギーでは、リサイクル手法について法的に定められてはおらず、EC指令に準拠して

いる以外のものはない。

ベルギーにおいてケミカルリサイクルと呼べる手法は燃料として利用されるものである

ためエネルギー収集として取り扱われている

25。なお、地域間容器包装廃棄物協定には、プ

ラスチックのマテリアル・リサイクルは 30%以上であることが求められている。

5.4.2 リサイクル目標の設定内容及び設定根拠

(1) リカバリー・リサイクル目標

容器包装廃棄物協定第 3条において、以下のとおり、容器包装廃棄物のリカバリー・リサ

イクルの達成率の下限値が定められている。この値はベルギー全土で達成すべき値とされる。

これらの数値は、EC指令のリサイクル目標値を反映したものとなっている。

� 家庭から排出される容器包装廃棄物(2009年から)

� リサイクル:80%

25 地域間容器包装委員会ヒアリングより

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� リカバリー(廃棄物焼却施設でのエネルギー収集を伴う焼却を含む):90%

� 事業所から排出される容器包装廃棄物

(2009年から)

� リサイクル:75%

� リカバリー(廃棄物焼却施設でのエネルギー収集を伴う焼却を含む):80%

(2010年より)

� リサイクル:80%

� リカバリー(廃棄物焼却施設でのエネルギー収集を伴う焼却を含む):85%

� 各素材別のリサイクル率

� ガラス:60%

� 紙/段ボール:60%

� 飲料パック:60%

� 金属:50%

� プラスチック(プラスチックとしてリサイクルされる材料のみ):30%

� 木材:15%

リサイクル率の算定方法は、生産者等が Fost Plusに申告した「市場に出された容器包装

量」を分母、収集・選別後に「ベールとなった量」を分子として算定している(なお、リサ

イクル目標の設定にあたっては、リデュースの実績は特段、考慮されていない)。

(2) リサイクル実績

2003年~2010年にかけての、Eurostat(EU統計)におけるベルギーの容器包装廃棄物量、収

集された容器包装廃棄物のマテリアル・リサイクル、エネルギーリカバリー、その他のリサ

イクル方法別のリサイクル量を

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表 5-13に示す。近年の容器包装廃棄物量は160万トン程度であり、マテリアル・リサイクル

の割合は8割前後で推移している。エネルギーリカバリー量は増加傾向にあり、熱収集を行

う焼却施設での焼却量は減少傾向にあったが、近年増加している。

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表 5-13 ベルギーにおける容器包装廃棄物量とリサイクルされた量の推移 単位:トン

容器包装廃棄

物量

再生利用並びにエネルギーリカバリー及び熱収集を伴う焼却施設での焼却

マテリアル・リサ

イクル量

その他のリサイ

クル方法でのリ

サイクル量

エネルギーリカバ

リー量

熱収集を伴う焼

却施設での焼

却量

リカバリー総計

a b c D e=a+b+c+d

2003年 1,623,591 1,199,207 0 12,914 272,790 1,484,911

2004年 1,631,905 1,246,432 0 12,006 254,172 1,512,610

2005年 1,659,443 1,274,705 0 11,700 252,777 1,539,182

2006年 1,665,533 1,315,781 0 15,253 242,554 1,573,588

2007年 1,669,002 1,342,420 0 17,686 228,524 1,588,630

2008年 1,690,170 1,332,725 0 27,663 245,183 1,605,571

2009年 1,642,275 1,298,691 0 30,295 234,155 1,563,141

2010年 1,685,954 1,344,669 0 30,856 234,389 1,609,914

注 1)プラスチック容器包装の場合、マテリアル・リサイクル量には、プラスチックにリサイクルされた全

ての材料を含む。

注 2)その他のリサイクル量には、有機物リサイクルを含む全てのリサイクル形式で消費された量含む。(マ

テリアル・リサイクルは除く)

出所)Eurostat: Generation and treatment of Packaging waste (domestic / imports / exports), by country, year, waste

category, and treatment type, in tonnes, kg per inhabitant and percent (%)

Fost Plusが公表している 2011年のリサイクル実績は以下のとおりである。なお、実績値

が 100%を超えている要因としては、Fost Plusの会員企業以外の生産者等が市場に投入した

容器包装もリサイクルしていること、個人商店などでは店舗での容器包装廃棄物(本来は産

業系)を家庭系容器包装廃棄物として排出していることがあること、びんなどは個人輸入し

ている飲料(国境が近いためフランス等からのワイン等の個人輸入が多い)があることなど

が考えられる。

表 5-14 2011年 ベルギーにおけるリサイクル実績 種類 実績

紙/段ボール 110.8%

飲料用紙パック 79.0%

ガラス 114.7%

プラスチック 37.5%

金属(スチール) 102.1%

その他 0.8%

出所)Annual Report 2011, Fost Plus

2003年~2010年にかけての、Eurostat(EU統計)におけるベルギーのプラスチック容器包装

廃棄物量、収集された容器包装廃棄物のマテリアル・リサイクル、エネルギーリカバリー、

その他のリサイクル方法別のリサイクル量を表 5-15に示す。近年のプラスチック容器包装

廃棄物量は30万トン程度であり、マテリアル・リサイクルの割合は2009年以降、4割以上に

達している。エネルギーリカバリー量、熱収集を行う焼却施設での焼却量は概ね横ばいの傾

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向にある。

表 5-15 プラスチック容器包装廃棄物量とリサイクルされた量の推移 単位:トン

プラスチッ

ク容器包装

廃棄物量

再生利用並びにエネルギーリカバリー及び熱収集を伴う焼却施設での焼

マテリアル・リ

サイクル量

その他のリ

サイクル方

法でのリサ

イクル量

エネルギー

リカバリー量

熱収集を伴

う焼却施設

での焼却量

リカバリー総

A b C d e=a+b+c+d

2003年 278,068 90,496 0 2,763 140,166 233,425

2004年 281,465 102,726 0 2,319 134,409 239,454

2005年 290,248 110,510 0 2,428 132,336 245,274

2006年 302,334 116,585 0 2,604 138,383 257,572

2007年 308,741 118,695 0 2,523 144,039 265,257

2008年 301,581 119,111 0 2,878 138,201 260,190

2009年 303,532 130,497 0 2,174 132,934 265,605

2010年 315,505 130,862 0 2,263 143,955 277,080

注 1)マテリアル・リサイクル量には、プラスチックにリサイクルされた全ての材料を含む。

出所)Eurostat: Generation and treatment of Packaging waste (domestic / imports / exports), by country, year, waste

category, and treatment type, in tonnes, kg per inhabitant and percent (%)

5.4.3 グリーン・ドット方式の内容

(1) グリーン・ドットの管理団体

ベルギーにおけるグリーン・ドットの管理団体は、Fost Plusである。Fost Plusは、1994

年に設立された民間企業出資の非営利団体であり、家庭用容器廃棄物の分別収集・選別・リ

サイクルの費用負担、関係主体の調整、リサイクルの促進を担っている。

(2) ライセンス料

生産者等は毎年 Fost Plusに市場に出荷した製品の包装材について量・素材などを申告し

てグリーン・ドットのライセンス料を支払う。申告方法については、生産者の規模と業態に

より複数種類がある。また、包装材の使用が年間 300kg未満の場合は、リサイクル目標を達

成する義務はないが、グリーン・ドットを使用したい企業は、一律年間 30ユーロを支払う

ことで Fost Plusに参加することもでききる。

Fost Plusへの申告方法は多岐にわたるため、生産者等は自らの事業業態に合わせて申告方

法を選択する。主な申告方法は以下の二つである。

� 詳細申告制度

Fost Plusの全ての参加企業が利用することができる。容器包装の素材別重量を申告し、

それによってライセンス料が決定する。

� 定額申告制度

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家庭系容器包装について、ベルギー国内市場における利益が 1,250万ユーロ未満であ

り、他のグループ企業等から申告を委任されてない場合に適用される。製品群毎の出

荷された単位数を申告し、それによってライセンス料が決定する。

なお、この他に、利益申告、ワイン及び蒸留酒用の申告、報道及び出版社の申告、サー

ビス用包装の申告がある。

1)詳細申告制度

生産者等は、市場に出荷した製品毎に、容器包装の素材構成の詳細を報告する容器包装シ

ートを提出する必要がある。容器包装シートには以下の内容を記載する。

� 製品についての情報(名称、説明、要領、商品群コード、製造元)

� 容器包装の主素材情報(素材コード、説明、同形状の容器が使われる場合その個数)

� 容器包装の素材の詳細(各素材の名称/コード/重量)

� 製品の出荷数の情報

これらの申告内容と表 5-16に示す素材別単価から、その年度のライセンス料が確定する。

Fost Plusでは生産者等の取組等によるボーナス/ペナルティの制度は採用されていない。し

かしながら、素材別単価には、リサイクル達成率への貢献度が反映したものとなっており、

リサイクル困難な素材は高い価格が設定され、リカバリーもできない素材はさらに高い価格

が設定されており、リサイクルしやすい素材の利用へのインセンティブがある。

表 5-16 2013年 容器包装の素材別の単価 素材 単価(ユーロ/kg)

ガラス 0.0233

紙/段ボール(>85%) 0.0176

鋼鉄(>50%) 0.0471

アルミニウム(>50%および>50µ) 0.0397

PET ボトル/フラスコ型容器(PET蓋含む) 0.1090

HDPEボトル/フラスコ型容器(HDPE蓋含む) 0.1090

飲料用紙パック 0.2310

その他:リカバリー可能なもの 0.2654

その他:リカバリー不可能なもの 0.4119

出所)Les tarifs Point Vert 2013, Fost Plus

2)定額申告制度

定額申告制度では、所定の条件を満たす企業が、より簡素な申告が可能となる制度である。

該当する生産者等は、製品群毎の販売数(最小消費単位でのカウント)を申告し、表 5-17

のとおり設定された製品群毎の定額単価によって、ライセンス料が確定する。なお、セット

販売の場合、6本セットで販売されている商品の最少消費単位は1本毎のボトルとなるため、

申告上は 6本とカウントされる。

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表 5-17 2013年 定額申告の製品群毎の単価 製品群のグループ 最小消費単位に対する単価

食品 0.0036

飲料 ソーダ、コーラ、レモネード、フルーツや野菜、

シロップ、牛乳、水、ビール

0.0034

ワイン、シャンパン、スピリッツ、食前酒 0.0133

リユース可能な包装 0.0000

掃除および保守(掃除用小物含む) 0.0073

ボディケア(ヘアケア・歯、関連小物も含む) 0.0039

医薬品 0.0034

ガーデニング製品(植木、種、肥料、鉢、キャンプ製品等) 0.0090

日曜大工製品 接着剤、塗料、ワニス及び類似製品 0.0230

その他、工具等 0.0023

衣類、靴、布製品、アクセサリー 0.0032

家電 大型家電製品(テレビ、冷蔵庫、洗濯機等) 0.0826

小型家電製品(ラジオ、電話等) 0.0133

電化製品のための小物(ランプ、電池) 0.0020

イ ン テ

リア

キッチン用品、食器類 0.0023

屋内及び屋外の家具 0.0349

照明 0.0028

ペット用品(餌、ケア製品、アクセサリー) 0.0021

タバコ(ライター等も含む) 0.0006

その他 0.0011

出所)Les tarifs Point Vert 2013, Fost Plus

ライセンス料の支払いは、前年度に市場に出荷した製品の包装材についての情報を各企業

が毎年申告し、そのデータに基づいてマーク使用料が確定する後払いの契約方法が基本とな

っている。一部の大規模事業者は、年度の最初に、前年度実績に基づいて前払いをして、年

度末に実績に基づいて補正を行っている。また、期限までに申告が行われなかった企業はペ

ナルティが課される。前年度に支払ったマーク使用料の 1%(最低 30ユーロ、最高 2,500ユ

ーロ)が毎月遅れる毎に請求される。この遅延に対する請求は、申告の修正による遅れにも

適用される。なお、Fost Plusに参加する際には、5年前に遡っての契約となるため、会員と

なる際には 5年間分の費用を支払う必要がある。直近の 3年間については前年度のライセン

ス料のレートおよびその企業が出荷した容器包装の量に基づき計算され、残りの 2年につい

ては最低料金の 30ユーロを支払うこととなる(設立から 5年未満の場合等は考慮される)。

グリーン・ドットについては、Fost Plusに参加している生産者等は、これを使用する権利

があるが、グリーン・ドットの使用は義務ではない。Fost Plusは適切にリサイクル責任を果

たしていない生産者等に対しては、グリーン・ドットを使用させてはいけない

26。不適切に

26 各国のグリーン・ドット管理団体は、PRO EUROPEとの間でグリーン・ドットの使用契約を締結してお

り、リサイクル責任を適切に果たしていない企業には使用させてはいけないことになっている。これは各

国でも同様である。

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254

グリーン・ドットを使用している企業がいた場合は、商業裁判所に提訴して、罰金を支払わ

せることになるが、これまでには該当するケースはない

27。

5.4.4 容器包装リサイクルシステムに関する評価及び最近の動向

(1) 容器包装リサイクルシステムに関する評価

ベルギーにおける容器包装廃棄物の分別収集にかかる費用は 2011年実績で年間人口一人

当たり約 5.7ユーロ程度であり、低い費用での容器包装リサイクルシステムの運営を実現し

ている。また、GDP成長率と連動して増えることはなく、2000年以降の家庭系容器包装廃

棄物の収集量は、横ばいから微増の状況である。

図 5-6:GDP成長率と家庭系容器包装廃棄物収集の推移

出所) Annual Report 2011, Fost Plus

EU が公表した廃棄物管理の経済的手法に関する報告書

28において、拡大生産者責任スキ

ームを導入している EU 各加盟国における 2008年度の費用の比較結果が示されている(図

5-7)。これによれば、ベルギーはリカバリー率・リサイクル率が高いにも関わらず、費用は

他国と比較して低いことが把握できる。

ベルギーでは、低コストでの容器包装リサイクルシステムが実現していることから、現状

のシステムを維持しながら、より効率的にしていくことを目指している

29。

27 Fost Plusヒアリングより。 28 Use of Economic Instruments and Waste Management Performances, European Commission (DV ENV), 10 April 2012 29 地域間容器包装委員会ヒアリングより。

Page 14: ベルギーにおける容器包装リサイクルシステム - …...242 5.4 ベルギーにおける容器包装リサイクルシステム 5.4.1 容器包装リサイクルシステムの内容

255

図 5-7 欧州における EPRスキーム導入国のリサイクル率とコストの比較

30

出所)Use of Economic Instruments and Waste Management Performances, European Commission (DV ENV), 10

April 2012

(2) ボトル以外のプラスチックの収集・リサイクルについて

ベルギーでは、Fost Plusは、プラスチックについて、現状では基本的にボトルのみを分別

収集対象とし、リサイクルを実施している。一方で、自治体連合が自主的に独自の収集方法

(ただし、コンテナ収集等の PMD(プラスチックボトル、プラスチック容器、金属容器、

飲料用紙パック)を入れる指定袋(青い袋)を利用しない収集方法に限る。)でフィルム、

植木鉢、発砲スチロール等のボトル以外のプラスチック製容器包装を収集した場合に、収集

されたプラスチックが自治体の委託先のリサイクル事業者によってリサイクルされるとき

には、Fost Plusは当該分別収集費用の 50%を自治体連合に支払っている。将来的には、こ

のようなケースにおけるFost Plusの負担比率を50%から100%に上げることも検討している

31。

フィルム等の現在対象外のプラスチック収集を推進する場合、自治体の責任で分別収集・

選別・リサイクルする方がよいのか、Fost Plusの収集方法(PMD(プラスチックボトル、

プラスチック容器、金属容器、飲料用紙パック)を入れる指定袋(青い袋)を利用する収集

方法)に組み込んだ方が良いのか、検討を重ねている。現行の Fost Plusによる容器包装リ

サイクルシステムは、効率的に高い成果を得られる良いシステムであるため、現行のシステ

ムにネガティブな影響を与えない方法を検討している。なお、容器包装以外の廃棄物は生産

者等に責任は無いため、生産者等の負担により処理することは考えていない。

今後、EC指令が改正され、プラスチックに係るリサイクル率の目標値について、現状の

22.5%から引き上げられた場合、プラスチックのリサイクル率を向上させる必要が生じる可

30 Average costs FR/AT/DE: around 0,3 €/kg recycled BE: 0,1€/kg(ECヒアリングより) 31 地域間容器包装委員会ヒアリングより。

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256

能性があるが、その場合には、自治体による家庭系容器包装のボトル以外のプラスチック製

容器包装について自治体が独自に分別収集・リサイクルする方法と Fost Plusが分別収集・

リサイクルを行う方法、産業系プラスチック容器包装のリサイクル率の改善という三つの選

択肢があると考えられる

32。

(3) リサイクル事業者による買取価格について

Fost Plusは分別収集された容器包装廃棄物のリサイクルについて、素材別に公募入札をし

て、事業者を選定している。入札では、リサイクル事業者による買取予定価格を競わせてお

り、例えば、公募対象期間が 1年間であれば、その 1年間は同じ価格とすることが基本であ

る。リサイクル事業の契約期間は素材によって異なるが、3~5年間であることが多い。

しかしながら、紙やプラスチックのように、市場価格の変動が生じるものについては、直

前期の価格を参考値として仕様書に掲載して入札をかけ、その参考値よりどの程度高く、あ

るいは低く設定するかで、競争入札を実施している。このため、市場価格が上昇すれば、そ

の分だけ買取価格も上がることになる。紙については、ベルギー、オランダ、ドイツ、フラ

ンスの古紙の市場価格を参考として市場価格に連動させており、プラスチックについては、

国際的なバージン素材の価格を参考として、バージン素材の市場価格と連動させている。な

お、プラスチックについては、リサイクル素材の市場価格に連動させるために、検討が行わ

れているところである

33。

32 地域間容器包装委員会ヒアリングより。 33 Fost Plusヒアリングより。