革新的モノづくり技術開発プロジェクト セルロースナノファイバー(CNF)を 用いたマルチマテリアル化 岐阜県産業技術総合センター 次世代技術部 〇浅倉秀一 令和2年度 岐阜県産業技術総合センター 研究発表
革新的モノづくり技術開発プロジェクト
セルロースナノファイバー(CNF)を用いたマルチマテリアル化
岐阜県産業技術総合センター
次世代技術部
〇浅倉秀一
令和2年度 岐阜県産業技術総合センター 研究発表
原料は木材 鋼鉄の5倍の強度、5分の1の軽さ低膨張係数(石英ガラス並)大きい比表面積高い粘性、チキソ性がある高いガスバリア性(フィルム)再生可能資源安心・安全な天然物
2
CNF 炭素繊維 ガラス繊維 鉄 アラミド繊維
密度 g/cm3 1.6 1.8 2.6 7.8 1.45
引張強度 GPa 3 3.5 3.4 0.34 3
引張弾性率 GPa 140 230 74 250 112
線熱膨張係数 ppm 0.1 0 5 10 ~ 12 -5
持続型資源 ◎
京都大学 矢野教授 資料
表面に多くの水酸基を持ち、水に分散している状態が安定
CNFは、石油由来のプラスチックより水系スラリーを原料にして成形するセラミックスの方が混ぜやすい。
はじめに セルロースナノファイバー(CNF)とは
伝統的セラミックス
陶磁器・・・天然の粘土(カオリン、セリサイト)石英、長石、水を混ぜれば成形できる。
ファインセラミックス
Al2O3、MgO、ZrO2、TiO2のような酸化物およびSiC、Si3N4のような非酸化物。水と混ぜても可塑性が得られないため、可塑成形ができない。
成形助剤が必要
役割 ・結合剤、潤滑剤、可塑剤、増粘剤、平滑剤、保水剤など。
PVA、メチルセルロース(MC)、カルボキシメチルセルロース(CMC)、ポリエチレン-グリコール(PEG)など
可塑成形
天然の原料を用いず、精選または合成された微粉末を用いたセラミックス
陶磁器、ガラス、セメント、耐火物
セラミックスとは
3
はじめに
4
CNFを成形助剤に用いてセラミックスをPP基板上に成膜することによるマルチマテリアル化技術について提案する。
容器包装以外に、自動車部材や家電部品など用途が幅広いが、フッ素樹脂に次いで表面自由エネルギーが低く、水滴接触角の値も大きいためコーティングや接着が困難な材料
本研究の目的
異なる材料を接合または複合して
材料物性の改善、軽量化、高強度化等の実現
マルチマテリアル化
PP(ポリプロピレン)
アルミナ粉体平均粒径600nm
CNF水分散液
+
5
自転・公転撹拌機
中越パルプ工業製高解繊
真空紫外(VUV)光露光装置
② PPシートへの親水化処理 ③混合スラリーへのディッピング
④ 60℃で乾燥
①セラミックスとCNFの混合スラリーの調整
照射前104°
照射後51°
実験方法 成膜方法
撹拌
or
6
◎ VUV光未照射のPPシート
◎ CNFが含まれていないアルミナのみのスラリー
アルミナ同士が結合していないため膜が脆い
VUV光による親水化とCNFの効果
スラリーがはじいてコーティングされない
◎ VUV光照射とCNF有り
均一に成膜され、折り曲げても剥がれない可撓性
・
CNFのネットワークが観察されている
7
①スペーサーを用いて、縦横方向に1 mm間隔で切り込みを入れる。
②接着力が10.7 N/25mmのテープを指でこすって接着させる。
③約60°の角度で引き剥がす。
(JIS K5600に準拠)
ガイド付きのスペーサー
引き剥がし後
さらに密着性を上げるために・・・
複合膜の密着性の評価
引き剥がし前
8
コーティング後すぐに(濡れている状態で)VUV光を大気圧雰囲気下で30分照射
引き剥がし前 引き剥がし後
複合膜の密着性の評価
密着性が向上した
9
解繊度がさらに高い中越パルプ工業製の超高解繊CNFを用いて、同様にコーティング後、すぐにVUV光を照射
引き剥がし前 引き剥がし後
複合膜の密着性の評価
VUV光照射による密着性が向上するメカニズムは?
さらに密着性が向上した
10
VUV光照射によるCNFの変化
原子間力顕微鏡(AFM)による観察
シリコン基板上にコーティングしたCNF(中越パルプ超高解繊)のみの膜に対してVUV光を大気圧雰囲気下で30分照射
照射前 照射後
CNFが架橋し、高密度な膜が形成されている
11
表面摩擦試験機(新東科学製トライボギアTYPE38型)
荷重:100 g、走査速度:100 mm/min、走査距離:15 mm、
約215往復(3600秒)、摩耗させる治具:10 mm径のSUS304ボール
PPシート
アルミナ/CNF複合膜
耐摩耗性の評価
12
コーティング後のVUV光照射無し
摩耗痕の走査型電子顕微鏡(SEM)写真
PPシート
耐摩耗性の評価
強度が弱く、柔らかい膜はクラックは入りやすいが、変形していく基板に付着して、摩耗しにくい。従って、膜が徐々に摩耗するより、PPと膜の界面で剥がれている。
13
コーティング後の大気圧雰囲気下でVUV光照射有り
耐摩耗性の評価
VUV光照射によるCNFの架橋によって強固な膜が形成され、PP基板との密着性も高い。硬い膜にはせん断応力は高くなり、膜の上面から徐々に摩耗していくが、膜とPPの界面強度は高く、下地のPPまで到達していない。
PPシート
CNFの架橋
・疎水性のPPシート基板にVUV光を照射することで、表面が親水化され、セラミックスとCNFの混合スラリーへのディッピングによりコーティングが可能であった。
・CNFを複合化することで、膜中にCNFのネットワークが形成され、折り曲げても剥がれない可撓性を示した。
・コーティング後すぐにVUV光を照射することで、PPと複合膜の密着性が向上した。
・VUV光照射によってCNFの架橋が起こることで、強固な膜が形成され、未照射の膜と比べて、耐摩耗性が変化した。
14
まとめ