Top Banner
新潟県立教育センター 1 しい時代にめられる 資質・能力を育成する カリキュラム・マネジメント 教育課程を核に教育活動や組織運営など学校の全体的な在り方を改善 目標の達成に必要な教育内容を組織的に配列 DCAサイクルを機能させた学校経営 「社会に開かれた教育課程」の観点から学校内外の資源を活用 カリキュラム・マネジメントによるアプローチ 教科横断的な視点から教育活動を改善 教育内容の質の向上 人的・物的資源等の効果的な活用 ▲育成すべき資質・能力の三要素 ○教育課程の編成、学校の組織運営から ・学校現場の状況を把握するための調査 ・教育課程全体を見直し、効果的な年間指導計 画や時程等の編成 ・学校評価やPDCAサイクルを機能させた組 織運営の改善 ・チーム学校として教科等や学年を超えた組織 運営・協働体制の構築 ・発達段階や成長過程のつながりを踏まえた学 校段階間の接続 ・地域とともにある学校づくりに向けた地域と 学校の連携・協働に向けた取組 ○授業改善を図るための教職員の協働体制から ・育成すべき資質・能力の実現に向けた学習・指導方 法の在り方 ・教科横断的な視点で学習を進めるための手立てや体 制づくり ・課題の発見・解決に向けた主体的・協働的な学びの ための授業づくり ・校内研修など教職員の専門性を高め合えるような組 織文化の形成 ・多様な学習活動や学習成果の評価を工夫した学習意 欲の向上 「次世代の学校・地域」創生プラン(馳プラン) ~平成 27 年 12 月中教審三答申の実現に向けて~ ①地域からの学校改革・地域創生 (地域と学校の連携・協働) ②学校の組織運営改革(チーム学校) ③教員改革(資質向上) 上記三つの答申を「社会に開かれた教育課程」 の実現や学校の指導体制の質・量の両面での充実、 「地域とともにある学校」への転換という方向を 目指して学校と地域が一体となった体系的な取組 を具体化するための方針です。 学校ぐるみで子供たちの教育活動に当た ることができる。 系統的な成長発達を実感できる。 主体的・協働的な学校組織文化が育つ。 学校運営協議会や学校評価など学校改善 へと結びつく取組が充実する。 保護者や地域の人々の信頼や協力を得や すくなる。
4

カリキュラム・マネジメントVol.1(平成28 年4 月28 日) 2 カリキュラム・マネジメントに関するQ&A Q1 「カリキュラム・マネジメント」って何ですか?

Aug 09, 2020

Download

Documents

dariahiddleston
Welcome message from author
This document is posted to help you gain knowledge. Please leave a comment to let me know what you think about it! Share it to your friends and learn new things together.
Transcript
Page 1: カリキュラム・マネジメントVol.1(平成28 年4 月28 日) 2 カリキュラム・マネジメントに関するQ&A Q1 「カリキュラム・マネジメント」って何ですか?

新潟県立教育センター

1

新しい時代に求められる

資質・能力を育成する

カリキュラム・マネジメント

教育課程を核に教育活動や組織運営など学校の全体的な在り方を改善

目標の達成に必要な教育内容を組織的に配列

PDCAサイクルを機能させた学校経営

「社会に開かれた教育課程」の観点から学校内外の資源を活用

カリキュラム・マネジメントによるアプローチ

教科横断的な視点から教育活動を改善

教育内容の質の向上

人的・物的資源等の効果的な活用

▲育成すべき資質・能力の三要素

○教育課程の編成、学校の組織運営から

・学校現場の状況を把握するための調査 ・教育課程全体を見直し、効果的な年間指導計

画や時程等の編成 ・学校評価やPDCAサイクルを機能させた組

織運営の改善 ・チーム学校として教科等や学年を超えた組織

運営・協働体制の構築 ・発達段階や成長過程のつながりを踏まえた学

校段階間の接続 ・地域とともにある学校づくりに向けた地域と

学校の連携・協働に向けた取組

○授業改善を図るための教職員の協働体制から

・育成すべき資質・能力の実現に向けた学習・指導方法の在り方

・教科横断的な視点で学習を進めるための手立てや体制づくり

・課題の発見・解決に向けた主体的・協働的な学びのための授業づくり

・校内研修など教職員の専門性を高め合えるような組織文化の形成

・多様な学習活動や学習成果の評価を工夫した学習意欲の向上

「次世代の学校・地域」創生プラン(馳プラン) ~平成 27 年 12 月中教審三答申の実現に向けて~ ①地域からの学校改革・地域創生 (地域と学校の連携・協働) ②学校の組織運営改革(チーム学校) ③教員改革(資質向上) 上記三つの答申を「社会に開かれた教育課程」の実現や学校の指導体制の質・量の両面での充実、「地域とともにある学校」への転換という方向を目指して学校と地域が一体となった体系的な取組を具体化するための方針です。

学校ぐるみで子供たちの教育活動に当たることができる。 系統的な成長発達を実感できる。 主体的・協働的な学校組織文化が育つ。 学校運営協議会や学校評価など学校改善へと結びつく取組が充実する。 保護者や地域の人々の信頼や協力を得やすくなる。

Page 2: カリキュラム・マネジメントVol.1(平成28 年4 月28 日) 2 カリキュラム・マネジメントに関するQ&A Q1 「カリキュラム・マネジメント」って何ですか?

Vol.1(平成 28 年 4 月 28 日)

2

カリキュラム・マネジメントに関するQ&A

Q1 「カリキュラム・マネジメント」って何ですか?

子供たちの姿や地域の実情等を踏まえて、各学校が設定する教育目標を実現するために、学習

指導要領等に基づき教育課程を編成し、それを実施・評価し改善していくことです。これまでも

教育課程の改善の視点で重視されていた取組です。学校評価の取組と同様にPDCAサイクルを

意図的・計画的に、そして組織的に進めていくことが求められています。

Q2 これまでのカリキュラム・マネジメントとの違いは何ですか?

論点整理では、これからのカリキュラム・マネジメントの三つの側面として、①教科横断的な

視点、②PDCAサイクルの確立、③教育内容と教育活動を効果的に組み合わせることを挙げて

います。今回の改訂が目指す理念を実現するためには、教育課程全体を通した取組により教科横

断的な視点から教育活動の改善を図っていくことや、学校全体としての取組を通じて、教科等や

学年を越えた組織運営の改善を実施していくことを求めています。

Q3 「教科横断的な視点」という言葉は、どのような経緯で出てきたのでしょうか?

グローバル化や情報化をはじめとした変化の激しい時代に対応するには、多分野の知識を学び

習得することが必須であり、そのためにも体系化されたカリキュラムが必要となります。子供た

ちに必要な資質・能力を育成するために教科等間の相互の連携を図ることによって、それぞれ単

独では生み出し得ない教育効果を発揮させたいためです。ある教科や単元で学んだ成果が定期試

験等で確認されるだけでなく、その教科や単元を適用する場面を離れたところでも他者と協働し

ながら主体的に問題解決に活用していくことができる汎用能力が求められています。これらを実

現するためにも、一人一人の教師が日々の授業を通して何を子供たちに身に付けさせたいのかと

いう指導の方向性(ベクトル)をそろえた取組が大切となります。

Q4 「社会に開かれた教育課程」の実現とはどのようなことですか?

学校の教育課程は、激しく変化する社会に生き、未

来を担う子供たちのために、必要な資質と能力を身に

付けられるように編成しなければなりません。そのた

めにも社会の変化に目を向け、教育が普遍的に目指す

根幹を堅持しつつ、社会の変化を柔軟に受け止めた教

育を推進することが求められます。つまり、学校には

将来を見通して子供を育てることが期待されていま

す。この意味で教育課程が社会に開かれたものである

ことが必要であり、学校段階間の連携と教科間の連携

「これからのカリキュラム・マネジメントの三つの側面」(論点整理 p22)

① 各教科等の教育内容を相互の関係で捉え、学校の教育目標を踏まえた教科横断的な視

点で、その目標の達成に必要な教育の内容を組織的に配列していくこと。 ② 教育内容の質の向上に向けて、子供たちの姿や地域の現状等に関する調査や各種デー

タ等に基づき、教育課程を編成し、実施し、評価して改善を図る一連のPDCAサイ

クルを確立すること。 ③ 教育内容と、教育活動に必要な人的・物的資源等を、地域等の外部の資源も含めて活

用しながら効果的に組み合わせること。

Page 3: カリキュラム・マネジメントVol.1(平成28 年4 月28 日) 2 カリキュラム・マネジメントに関するQ&A Q1 「カリキュラム・マネジメント」って何ですか?

新潟県立教育センター

3

とを視野に入れて教育課程を編成することが重要となります。

Q5 「育成すべき資質・能力」という言葉をよく聞きますが?

新しい学習指導要領等が目指す姿、各学校段階・各教科等における改訂の具体的な方向性等を

示した論点整理において、学力の三要素を議論の起点にしながら、これからの社会を創り出して

いく子供たちに求められる資質・能力を三つの柱で整理しました。教育課程の編成主体である学

校には、これらの三つをバランスよくふくらませながら、各教科等の文脈の中で身に付けていく

力と、教科横断的に身に付けていく力とを相互に関連させながら実施・評価し改善してくカリキ

ュラム・マネジメントの確立を求めています。

Q6 「アクティブ・ラーニング」と「カリキュラム・マネジメント」が二つの重要な概

念として位置付けられていますが?

「アクティブ・ラーニング」は、形式的に対話型を取り入れた授業や特定の指導の型を目指し

た技術の改善に留まるものではなく、子供たちの質の高い深い学びを引き出すことを意図してい

ます。子供たちに必要な資質・能力を身に

付けさせるためには、各教科等の授業とと

もに教科等の枠を越えて単元間をつなげ

ていく教科横断的な授業の視点も欠かせ

ないことになります。二つの重要な概念を

つないでいるのが、この教科横断的な授業

であり、育成すべき資質・能力をどのよう

に育むかという観点から授業改善や組織

運営の改善が必要となります。教育課程を核に、授業改善と組織改善を一体的・全体的に迫るこ

とのできる組織文化の形成が大切となります。

論点整理では、それぞれの学校や地域の実態に基づき、両者を連動させた学校経営を展開する

ことを求めています。

Q7 どのように教科横断的に取り組めばよいのでしょうか?

校長または園長を中心としつつ、教科等の縦割りや学年を超えて、学校全体でカリキュラム・

マネジメントに取り組めるように学校の組織及び運営について見直しを図ります。その際、管理

職のみならず全ての教職員がその必要性を理解し、日々の授業等についても、教育課程全体の中

「社会に開かれた教育課程の役割」(論点整理 p3-4)

① 社会や世界の状況を幅広く視野に入れ、よりよい学校教育を通じてよりよい社会を

創るという目標を持ち、教育課程を介してその目標を社会と共有していくこと。 ② これからの社会を創り出していく子供たちが、社会や世界に向き合い関わり合い、

自らの人生を切り拓いていくために求められる資質・能力とは何かを、教育課程に

おいて明確化し育んでいくこと。 ③ 教育課程の実施に当たって、地域の人的・物的資源を活用したり、放課後や土曜日

等を活用した社会教育との連携を図ったりし、学校教育を学校内に閉じずに、その

目指すところを社会と共有・連携しながら実現させること。

「資質・能力の要素」(論点整理 p10)

i.「何を知っているか、何ができるか(個別の知識・技能)」 ii.「知っていること・できることをどう使うか(思考力・判断力・表現力等)」

iii.「どのように社会・世界と関わり、よりよい人生を送るか(学びに向かう力、人間性等)」

「アクティブ・ラーニングの三つの視点」(論点整理 p18)

i. 習得・活用・探求という学習プロセスの中で、問題

発見・解決を念頭に置いた深い学びの過程が実現で

きているかどうか。 ii. 他者との協働や外界との相互作用を通じて、自らの

考えを広げ深める、対話的な学びの過程が実現でき

ているかどうか。 iii. 子供たちが見通しを持って粘り強く取り組み、自ら

の学習活動を振り返って次につなげる、主体的な学

びの過程が実現できているかどうか。

Page 4: カリキュラム・マネジメントVol.1(平成28 年4 月28 日) 2 カリキュラム・マネジメントに関するQ&A Q1 「カリキュラム・マネジメント」って何ですか?

Vol.1(平成 28 年 4 月 28 日)

4

での位置付けを意識しながら取り組む必要があります。そのためにも教員一人一人が責任をもっ

て力を発揮できるように教職員の協働体制や教員研修の充実

が求められます。

Q8 効果的に実施するにはどうしたらよいですか?

多くの教職員にとって、各教科等については、年間指導計

画や単元の実施計画などで実感をもってとらえています。し

かし、教育課程となると抽象度が高くなり日常の授業などか

ら遠いものとなりがちです。校長または園長は、学校のビジ

ョンを明確に掲げ、子供たちに身に付けさせたい資質・能力

について校内で共通理解をしっかり図り、組織の推進力と方

向性を整えることが大切です。

また、管理職のみならず全ての教職員がカリキュラム・マネジメントによる取組を身に付ける

ためにも校内研修について新たな発想や工夫が望まれます。各教科で学ぶ研修とともに各教科等

を学ぶ研修、一つの教科等を全校あげて取り組む研修、一つのテーマを選択して、育成を目指す

資質・能力に関する各教科等からのアプローチなど多様なスタイルの研修等への転換が問われま

す。全ての教職員が自らの専門とする教科等を起点に、その枠を越えて教科等の相互関連や教育

活動を教育課程との関連で捉え、教育課程

で見たり考えたりできる発想や思考様式を

校内に浸透させることが大切です。

Q9 これまでの取組はどうしたらよいですか

① 教科横断的な教育活動の実現に向けた学習指導の点検

現行学習指導要領総則の「指導計画の作成」において、「各教科それぞれにおける固有の目標

の実現を目指すと同時に、他の各教科等との関連を十分図るように作成される必要がある」と示

されています。学習指導に当たっては、各教科等の特性に応じて育まれる「見方や考え方」の習

得、活用、探求を見通した学習過程の中で子供たちの資質・能力を育むことが大切です。また、

総合的な学習の時間や特別活動、道徳教育といった領域等では、すでに教科横断的な学びや実践

的な活動を通じて、各教科において育まれた「見方・考え方」を総合的・統合的に育む場となっ

ています。

② PDCAサイクルに基づくマネジメント・サイクルで標準化を目指す

カリキュラム・マネジメントは、現状把握と評価から始めるとして田中(2007)は、「R-PD

CAサイクルに基づくカリキュラム・マネジメントのモデル」を提唱しています。Rとは、調査・

診断(Research)であり、実態把握と評価を強調しています。カリキュラム評価を継続してい

くことで、改善を図るとともに授業改善や効率的なカリキュラム・マネジメントにつながります。

自校の教育活動の不断の改善が自校のスタンダードとなり、学校の組織文化、持続的な取組につ

ながります。

◆参考文献等

中央教育審議会教育課程特別部会「論点整理」(平成27年 8月) ベネッセ教育研究開発センター「学力向上ハンドブック 田中博之・木原俊行・大野裕己」(平成 19 年)」 中央教育審議会「初等中等教育における教育課程の基準等の在り方について(諮問)(平成 26 年 11 月 20 日)」

ビジョン

の共有

教育活動

の方策協働体制

マネジメントの三要素

新潟県立教育センター

カリキュラム・マネジメント推進プロジェクトチーム

〒950-2144 新潟市西区曽和 100 番地 1 TEL.025-263-9014 FAX.025-261-0006 URL.http://www.nipec.nein.ed.jp

情報

の共有

ビジョン

の共有

アクション

の共有

結果

の共有

共通理解と共通実践の段階