メディカルフィットネスにおける 施設利用者に行動変容をもたらす要因 池田正直1) 村山敏夫2) 1)新潟大学大学院 2)新潟大学
メディカルフィットネスにおける施設利用者に行動変容をもたらす要因
池田正直1)
村山敏夫2)
1)新潟大学大学院2)新潟大学
日本は超高齢社会に突入
運動機能低下や生活習慣病発症の予防、改善
社会保障費削減
QOLの維持、向上
2013年 2015年 2025年 2055年
65歳以上人口(率)
3058万人(24.0%)
3395万人(26.8%)
3657万人(30.3%)
3626万人(39.4%)
要支援、予備軍
要介護者 生活習慣病罹患者
食事 運動 治療
背景
フィットネスクラブ メディカルフィットネス 健康教室
今後「メディカルフィットネス」の重要性
生活習慣病罹患者や低体力者は、運動に制限やリスクがある
「42条施設(疾病予防施設)」「指定運動療法施設」「健康増進運動施設」
先行研究においても適切な運動指導による健康増進効果はもちろんのこと、医療費・介護保険費抑制効果について報告されている
メディカルフィットネスとは
狭義 医療機関が運営するフィットネス広義 医療的要素を取り入れたフィットネス (JMFS)
アスリート 一般 生活習慣病予防 医療 介護予防 介護
フィットネスクラブ
メディカルフィットネス
介護予防施設
メディカルフィットネスという言葉を聞いたことがあったか
知らな
かった73%
なんとな
く5%
知ってい
た22%
n=37
八木らは、医学的知識を基盤とした適切な身体機能評価、運動処方及び運動習慣の教育などを目的とする(2008)
メディカルフィットネスにおける利用者の運動習慣定着へ行動変容が起こる要因を探る
① 認知度 理解度 情報源
② 利用者におけるニーズ
③ 行動変容をもたらす要因
目的
被験者 研究方法
N市に所在する病院に併設されたメディカルフィットネスの利用者(2施設)
①質問紙調査 (コンジョイント調査 )
利用者の施設に対するニーズ ⇒ コンジョイント分析
②インタビュー調査(半構造化面接)
トランスセオレディカルモデルのステージに応じた質問
⇒KJ法
A B
年齢(歳) 57.7±10.1 63.8±13.1
人数(人) 37(男14 女23) 40(男7 女33)
A
年齢(歳) 58.3±10.4
人数(人) 39(男16 女23)
施設の概要
A 医療機能充実型 B 運動先行型
病院 整形外科 内科 総合病院
会員数 139名 160名
スタッフ医師 健康運動指導士管理栄養士 検査技師
医師 健康運動指導士管理栄養士
料金 15,000円(1ヶ月) 5,000円(1ヶ月)
運動方法
個別プログラムマシン スタジオ
個別トレーニング
個別プログラムマシン スタジオ
検査内容メディカルチェック(入会時)
体組成測定(月1) 体力測定
血液検査(月1) 腹部CT(3ヶ月毎)
体組成測定(3年毎)体力測定
属性
料金パーソナルトレーニング
スタジオレッスン
効果判定 休館日友人の有
無
通うのにかかる時
間
水準
10000円 5000円 あり なし あり なし CT 血液 体組成 日曜休み 平日休み 友達いる友達
いない10分 30分
効用値
-0.0691 0.0691 -0.9441 0.9441 -1.50490 1.50490 0.6891 -0.6891 0.1414 -0.1414 -0.3651 0.3651 0.778 -0.778
コンジョイント分析 施設A結果
属性
料金パーソナルトレーニング
スタジオレッスン
効果判定 休館日友人の有
無
通うのにかかる時
間
水準
10000円 5000円 あり なし あり なし CT 血液 体組成 日曜休み 平日休み 友達いる友達
いない10分 30分
効用値
-0.9563 0.9563 -0.2437 0.2437 0.8696 -0.8696 0.4696 -0.4696 -0.3938 0.3938 0.3312 -0.3312 0.1906 -0.1906
コンジョイント分析 施設B
メディカルフィットネスでも施設ごとにニーズが変化する
「前熟考期(無関心期)」→「熟考期(関心期)」運動しようと思ったきっかけ
主人のついでに
減量(ダイエット)10股関節の痛み
常々運動したいと思っていた3
太りすぎ(肥満)5
体力の低下6
膝が痛い4
家族の勧め
骨折した
運動の機会が減った
心筋梗塞したこと
更年期
健康になりたい
脊柱管狭窄症血糖値上昇
現状維持2
友達の誘い
腰痛2
健康診断の結果4
ストレス発散
生活習慣病予防
ジムを見てみたらいいかな
筋力アップ3
介護予防
膝の手術
運動してみたい
高血圧
医者の勧め8
他人からの勧め
内科的 外科的
健康上の理由予防
体型管理
運動欲求
インタビュー調査結果
「熟考期(関心期)」メディカルフィットネスをどうやって知ったか
主治医に勧められて4
股関節の病院を調べていたら出てきた
入院中4
医者の紹介3外来で診療した時2
偶然ネットで出てきた8
他のMFに通ってる人
工事に携わっていた
施設にきてわかった4
友人の話の中で3
他のトレーナーから
雑誌
入会してから2
パンフレット2
会社の同僚から
テレビ放映
家族2
ネットで検索した3
メディア
病院内人
インターネット
偶然
「熟考期(関心期)」メディカルフィットネスとはどのような施設だと思ったか
個人にあった運動指導5
医師が健康の管理してくれる7
病気の人が行くとこ3
マンツーマンでの指導3
主治医と連携があるのかな4
指導者がいる3
故障部位を医者がみてくれる2
きめ細かく運動指導
運動メニュー作製5
リハビリの施設5
希望に合わせた運動指導
診断データの管理
年配の施設2
MCやってくれる3
回復期の運動指導
知識のある指導者3
サポートがある2
運動施設で運動できる
運動できるとこ2
故障した人がいける
身体の悪いとこを見つけてくれる
医学的な運動療法7
介護予防施設
筋力を維持
安心してできる4
効果的な運動ができる
栄養指導がある3
医療機関としてとらえる
医療サービスがある
安心感
介護施設としてとらえる
無理のない運動2
運動指導
指導者
栄養管理、指導
運動プログラム
無理のない運動指導
フィットネス施設ととらえる
「準備期」、「実行期」メディカルフィットネスを選んだ理由
運動プログラムの提供がある5
主治医の勧め4
明るい雰囲気4
指導者がよかった
丁寧に指導してもらえる2
無理なく体動かせる施設2
MCの定期実施9
内科医がいてくれる安心4
体調に合わせた運動選択
膝、腰の痛みを取る方法がわかる
近いから2
安心感がある3
スタッフからの声掛け2
通院している病院5
トライアル(体験)が楽しかった7通いやすい2
指導員がいる
個別でトレーニング指導3
すぐ医者に行ける
自分もできるかなと思って
リハビリのメニュー引き継ぎ
身体を見てくれる
混んでない栄養指導
安心感
運動指導 医療要素
通いやすさ指導者運動だけでない指導
施設の雰囲気
「維持期」施設に通う時の心境(1年以上継続)
ストレス解消3
楽しみ5
うちではやらないから
来るまではおっくう
汗も流せて気持ちいい5
友達いるから楽しい3
話するのは楽しい4
怪我に対する不安
ライフワークの一つ2
結果が出て楽しい2
体調によってまちまち
習慣化されてる4
もっと来たい
痛みが抜けて気分がいい
義務感 仕方なく2
気分転換になる3
やらないと気持ち悪い2
体重が変化するのが楽しみ
運動できるのが楽しみ6
運動したい2
元を取らないと
飽きがきている
日によってめんどくさい2
運動するぞ
身体が楽になるかな
他の運動もやりたい
ポジティブ
無意識
運動欲求 身体的
ネガティブ
施設への不満
結果重視
話を聞いてもらえる
交流
まとめ
「メディカルフィットネス」は一般的に周知されておらず、その病院、施設と関わることがなければ知ることがない
メディカルフィットネスは「不健康、高齢者」のイメージが強いが、一方で手厚い指導や安心感が得られるといったイメージも強い
「自分でも運動できる」と実感することが必要
メディカルフィットネスにおいては、施設ごとに利用者のニーズが異なる
MCによる評価、運動プログラムの管理が安心して運動に取り組めるきっかけになる
身体的に何らかの疾患、不安によって運動する意識が生まれる
「医学的な結果」、「楽しさ」、「人との交流」が前向きな運動継続に必要である
①
②
③
新潟県における実践
TMF(チームメディカルフィットネス)
県内に点在するメディカルフィットネスと新潟大学が連携し、県民の健康づくり、健康増進を図っていく
講演会活動エクササイズパーティー
今後の課題
メディカルフィットネス毎にインタビュー結果の比較を行い施設の違いが行動変容させる要因に違いをもたらすのか
フィットネス施設や健康教室に通う利用者にも調査をし、結果の比較を行う
参考文献①遠藤加奈子 コンジョイント分析法を用いた、大卒女性の就業決定における要因分(一橋大学国際・公共政策大学院2008 )②文部科学省HP 新体力テスト実施要項http://www.mext.go.jp/a_menu/sports/stamina/03040901.htm
③体力測定事業 内容・種目公益財団法人 体力つくり指導協会HPhttp://www.tairyoku.or.jp/item.html
④野呂 義久 片岡 敏彦 高橋 知樹 木村 孝 木場 正信. 寺邊 正大 老沼 志朗消費者の商品選択行動に関する定量的分析⑤合崎英男 西村和志 データ解析環境Rによる選択型コンジョイント分析入門(農工研技報 2007)⑥照井伸彦 佐藤忠彦 現代マーケティングリサーチ (有斐閣2013)⑦厚生労働省HP 今後の高齢者人口の見通しについてwww.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/.../dl/link1-1.pdf
⑧岩井浩一,滝澤恵美,阪井康友,山田哲,佐野歩, 三宅守,佐藤たか子,木村知美,山本健太,大瀬寛高,居村茂幸“地域の介護予防事業における運動プログラム参加者の体力向上効果”ASVPI
Volume13,pp47-56(2008)
⑨健康体力づくり事業財団 高齢者の運動実践者と非実践者における生活意識と生活行動の相違に関する研究⑩和田喜造 社会人が運動スポーツを継続する理由の構成要因における年齢差と性差HEART Hyokyo Institutional Repository,pp1-60,1994
⑪池山香 共行動者の存在が身体活動量増加に影響を及ぼす可能性の検討 (新潟体育学研究Vol.33 2015)⑫運動指導教室参加者の運動習慣・医療費などの変化に関する研究 : 国民健康保険加入者を中心に 宍戸由美子, 井手玲子, 二階堂敦子, 中野匡子, 安村誠司日本公衆衛生雑誌⑬地域医療におけるメディカルフィットネスの選好条件の検討 八木麻衣子 根本祐二
ご清聴ありがとうございました
質問紙調査
メディカルフィットネスを知った理由
入会する前のイメージ 入会した理由
施設に対する要望
→KJ法にて解析 時系列を追って質問した
インタビュー調査
施設に対する満足度(5項目)
コンジョイント調査
→統計ソフトR version 2.13.0
を用いて解析
「準備期」施設を選ぶ際どのようなことを重要視したか
他の施設を考えていなかった13
個別運動プログラム作成4 体重管理してくれる
運動の指導をしてくれる3
MCをやってくれる2
きめ細やかな指導がある2
自分と似た人が多い2
イレギュラーな身体でもケアできるか
心臓が弱くても入会できるか
スタジオ
好きなメニューで運動すること
近いから
検査結果の管理2
通いやすさ3同世代がいること
悩みを相談できるか
人との関わりがある
雰囲気がよい
スタッフがいい人
通ってる病院
すぐ医者に行ける
安心して運動できる
料金3
身体に負担のないトレーニング
混雑していないか
マンツーマンの指導3
総合的に
他人の評価
人
医療要素
運動指導
通いやすさ料金
比較していない
安心感
施設の雰囲気
メディカルフィットネスのイメージ
個人にあった運動指導をしてくれる
医師がいるから健康の管理もしてくれる
あまり考えていなかった
病気の人が行くとこ
病気の人が行くとこ
医療に特化
運動についてマンツーマン
アドバイスをくれる
主治医と連携があるのかな
来たら医療のこともあるし、管理栄養士もいるし指導者もいるからいいかなぁ
見学に来てから知った
ふつうのフィットネスジムだと思っていた
リハビリの施設かなと思った
お医者さんがついてくれて 体の無理のない運動ができるところ
指導者がいることはなんとなく知っていた
年配の施設かなぁ
介護施設の延長かなぁ
リハビリも含めて 回復期の運動を教えてくれる
知識のあるインストラクターがいるとおもっていた
病院にくっついているから
健康になれるのかな医者がいるからいいのかな
管理栄養士 指導していること
運動施設で運動できると思って
トレーナーがマンツーマンでやってくれて運動やったことないけど教えてもらえるかな
松葉づえとかついてそう
おじいちゃんがいっぱいいそう
リハビリの施設かな安心して運動できる
健康的に運動できる
運動できるとこなのかな
医者が診てくれるのかな
医学的な 先生がついていてチェックしながらやってくれるのかな
カロリー計算 食事で怒られそう
医師の血液検査
CTの時に医学的にコーチングしてくれるのかな
関節や病気を考慮したメニュー作り
知識があるトレーナーがいる
しっかり痩せられる
マンツーマンなのかな
食事も見てくれるのかな