パネルセッションⅡ Panel Session II 新たなポートフォリオ管理 ファクターベースの資産配分へ New Portfolio Management Factor based Asset Allocation 2018年7月18日 京都大学経営管理大学院 The Graduate School of Management, Kyoto University 加藤康之 Yasuyuki Kato
パネルセッションⅡPanel Session II
新たなポートフォリオ管理ファクターベースの資産配分へ
New Portfolio ManagementFactor based Asset Allocation
2018年7月18日
京都大学経営管理大学院
The Graduate School of Management, Kyoto University
加藤康之
Yasuyuki Kato
ファクターとは何か?
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ファクターとは?
• すべての資産(ポートフォリオも含む)の価格変動に
影響を与える共通の要因。
• 例えば、為替変動、金利変動、株式市場の変動、物
価の変動、企業規模、割安度等。(ファクターの数は
限定されていると考えるのが一般的)
• 影響を与える度合い(感応度、エクスポージャ、ベー
タ)は資産毎に異なる。
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ファクターによる資産の分解
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ファクターのリターン
個別資産の
リターン ・・・
ポートフォリオのリターン
ファクター ファクター ファクター
ファクターによる資産の分解(理解の仕方)
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ファクターのリターン(ビタミン、ミネラル、タンパク質等の栄養素)
個別資産の
リターン
(ステーキ、サラダ、
コーンスープ等)
・・・
ポートフォリオのリターン
(ステーキ定食)
ファクター ファクター ファクター
体にとって重要なのはビタミンやミネラル等の量
特にポートフォリオで重要
A銘柄のリスク
B銘柄のリスク
C銘柄のリスク
ポートフォリオのリスク
ファクター1 ファクター2 固有要因
→ ポートフォリオになるとファクターの説明力が高まる。
分散効果
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2種類のファクター
• マクロファクター• 資産クラス間に共通のファクター。
• 株式、金利、流動性など。
• 資産配分の構築に利用される。
• ミクロファクター• 資産クラス内(個別銘柄)に共通のファクター。
• 株式ではバリュー、サイズ、プロフィッタビリティなど、債券ではクレジット、キャリーなど。
• スマートベータの構築に利用される。
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マクロファクター資産配分とファクターアプローチ
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資産配分のファクターアプローチとは何か
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資産配分ファクター配分
ab
cd
efg
hi j
A
B
C
D
(個別資産のウェイト)(ファクター配分)
ポートフォリオポートフォリオ
ファクター配分を決めてから資産配分に換算する。
*伝統的な資産配分は逆の方向
ファクター
資産
なぜ、ファクターアプローチなのか?(1)資産クラス間の相関が高まっている
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相関係数 TOPIX MSCI KOKUSAI Barclays Global Treasury x Japan
TOPIX 1
KOKUSAI 0.788 1
Barclays 0.637 0.749 1
(すべて円ベース、データ期間:2009.1-2016.11)
平均値:0.725(1は除く)
出所:MSCI、東京証券取引所、Bloombergのデータをもとに講師作成
伝統的資産クラスによる資産配分は
限界か? リスクの源泉であるファクターに着目
なぜ、ファクターアプローチなのか?(2)オルタナティブ資産の採用が増加
11出所:J.P.モルガン・アセット・マネジメント,年金運用動向調査, 2017
リスク特性が多様なオルタナティブ資産の扱いが難しくなっ
てきている。
リスクの源泉であるファクターに着目
なぜ、ファクターアプローチなのか?(3)リスクベースポートフォリオの進展
• 伝統的なポートフォリオ構築法• 期待リターン、リスク → 最適化
• 一方、期待リターンの不確実性が増加
• リスクベースポートフォリオの構築法• リスクのみを使って資産配分を行う
• 最小分散、ファンダメンタルウェイトなどスマートベータ型
• リスクパリティ等リスク配分型
• LDI(Liability Driven Investment)など機能的アプローチ
リスクの源泉であるファクターに着目
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資産配分のファクターアプローチ-ATP(デンマーク公的年金)のケース-
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ATPのファクターに対する考え方
• LDIを志向しており、リスクファクターベースのポートフォリオ運用が重要と考えている。
• ファクターの選択について• 金利(interest rate)と株式(equity)が主要なファクター。
• インフレファクター(inflation)は受益者にとって重要なリスクファクターであり、また、 interest rateファクターとequityファクターのヘッジにもなる。
• 資産は基本的に流動性のある資産だが、そうでないものもあるため、流動性(liquidity)のリスクも考慮。
出所:“Factor investing the ATP way,” 2017, ATP Homepage14
ファクターアロケーションの実際
出所:ATP annual report 201815
出所:“Factor investing the ATP way,” 2017, ATP Homepage
ファクターアロケーションのパフォーマンス
出所:Factor investing the ATP way, 2017, ATP16
リスクパズルの一環?
ミクロファクタースマートベータの活用
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マーケットポートフォリオと超過リターンCAPMによる理解
マーケットポートフォリオMのリターン
株式ポートフォリオのリターン
アルファ
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ベンチマークインデックス(マーケットインデックス)
リスクプレミアムをもたらすファクター*がマーケットのリスクプレミア**のみと仮定***。
*各資産に共通して影響を与える要因**リスクを取ることに対する報酬
***CAPM理論
(概念図)
3ファクターモデルの登場と超過リターン
ファクターインデックスマーケットインデックス
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リスクプレミアムをもたらすファクターがマーケット以外にも2つあると仮定*。
*ファマ・フレンチの3ファクターモデル
マーケットポートフォリオMのリターン
株式ポートフォリオのリターン
アルファバリュー 小型
ファクターリターン
(概念図)
アルファが縮小
アルファのほとんどはリスクプレミアムだった
• Bender J, Hammond,B, Mok,W., 2014, “Can Alphs be Captured by Risk Premia?”, The Journal of Portfolio Management 2014 Winter, PP.18-29
アルファの80%は複数のリスクプレミアムで説明される
• Barras, Laurent, Olivier Scaillet, and Russ Wermers. 2010. “False Discoveries in Mutual Fund Performance: Measuring Luck in Estimated Alphas.” Journal of Finance, vol. 65, no. 1 (February):179–216.
米国株式投資信託2067ファンドを75-06年にわたり調べたところ、75%は
4ファクター調整後のアルファがゼロ
• Busse, Jeffrey A., Amit Goyal, and Sunil Wahal. 2010. “Perfor-mance and Persistence in Institutional Investment Management.” Journal of Finance, vol. 65, no. 2 (April):765–790.
米国株式投資ファンド4167ファンドを91-08年にわたり調べたところ、
4ファクター調整後のアルファはゼロと区別できない
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スマートベータへの乗り換えが進む
他に良く用いられるファクター
• モーメンタム• 過去のリターンが高い方がリターンが高い
• 低ボラティリティ• リスクの低い方がリターンが高い(リスクパズル)
• クオリティファクター• クオリティの高い方がリターンが高い
• ESGファクター?• ESGの良い銘柄はリターンが高い?
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パネルでの議論
• 資産配分の実際とファクターアプローチの利用可能性
• スマートベータ利用の実際と課題
• ESG投資の実際とその目的
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ご注意
本資料および講演での意見は、講師の個人的な見解であり、講師が所属する組織のものではありません。内容についてのすべての責任は講師にあります。
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