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43 都市経営 No.12(2019),pp.43-54 クラウドファンディングへの資金提供動機と課題 玉 井 由 樹 キーワード:クラウドファンディング,資金提供動機,オンライン調査 要旨 本研究はクラウドファンディングへの資金提供を行ったことがある経験者の特徴,資金提供動機,抱え る課題について明らかにすることを目的とした.調査方法としては大規模オンライン調査を用いた.資金提 供経験者の特徴として,男性が多く,20代,30代で関心が高く,所得が高まると資金提供経験者が増加す る傾向がある.資金提供動機に関しては,クラウドファンディングの類型ごとに優先される基準が異なって いる.回答者の半数以上がクラウドファンディングに不満を持っており,クラウドファンディングの負の部 分が表面化しつつある. 1.はじめに 新しい資金調達方法であるクラウドファンディン グが国内外で急速に広まっている.クラウドファン ディングとは群衆(Crowd)と資金調達(Funding) を組み合わせた造語であり,一般的にはインターネッ トを通じて多数の人から資金を調達する,直接金融 の仕組みと解されている.具体的には,資金調達を 希望する人や団体が商品開発や社会貢献といったプ ロジェクトをインターネット上のプラットフォーム に掲載し,実施に必要な資金の全額または一部を趣 旨に賛同した人々から資金調達する仕組みである. なぜ,この新しい資金調達の仕組みが世界規模で 急速に進展したのか 1 .既存研究では主に2つの論 点 が 指 摘 さ れ て い る( 玉 井,2018). 第 1 に, イ ンターネットの普及とIT技術の進化である(松 尾,2014;山本,2014).金融取引では資金提供 者と資金調達者の間には情報の非対称性が高く,資 金提供側が資金調達者の情報や行動を把握するため にはコストがかかる.そのため,たとえば金融機関 から見れば小口取引はコストがかかり,費用対効果 が見込めない取引であり,規模の経済が働くと考え られてきた.しかし,上記理由により取引コストが 下がった結果,小口で資金を集めることが可能に なった.第2に,クラウドソーシングの登場である (Harrison,2013;Mollick,2014).クラウドソーシ ングとは,「企業もしくは組織が自社の従業員やアウ トソーシングによって行っていた業務を不特定多数 の人々に依頼する行為」であり,クラウドは「スペア サイクル」を提供し,自分の好きなことに没頭し,金 銭をおもな動機とせず,余った時間を提供する,余 剰能力を持つことで特徴づけられる人々である(ハ ウ,2009).クラウドファンディングはクラウドソー シングがそれまで取引のない個人にインターネット を通じて仕事を発注する新しい雇用形態を生み出し たように,資金調達者が少額の資金を提供する人や グループに出会うチャンスを増やし,それらを説得 する手間を減らす仕組みといえる(山本,2014). それは銀行,ベンチャーキャピタリスト,ビジネス エンジェルといったプロフェッショナル集団からの 資金調達とは異なり,個人からの資金調達を意味し ている(Schwienbacher and Larralde,2012).
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Aug 02, 2020

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都市経営 No.12(2019),pp.43-54

クラウドファンディングへの資金提供動機と課題

    

玉 井 由 樹

キーワード:クラウドファンディング,資金提供動機,オンライン調査

要旨

  本研究はクラウドファンディングへの資金提供を行ったことがある経験者の特徴,資金提供動機,抱え

る課題について明らかにすることを目的とした.調査方法としては大規模オンライン調査を用いた.資金提

供経験者の特徴として,男性が多く,20代,30代で関心が高く,所得が高まると資金提供経験者が増加す

る傾向がある.資金提供動機に関しては,クラウドファンディングの類型ごとに優先される基準が異なって

いる.回答者の半数以上がクラウドファンディングに不満を持っており,クラウドファンディングの負の部

分が表面化しつつある.

1.はじめに

 新しい資金調達方法であるクラウドファンディン

グが国内外で急速に広まっている.クラウドファン

ディングとは群衆(Crowd)と資金調達(Funding)

を組み合わせた造語であり,一般的にはインターネッ

トを通じて多数の人から資金を調達する,直接金融

の仕組みと解されている.具体的には,資金調達を

希望する人や団体が商品開発や社会貢献といったプ

ロジェクトをインターネット上のプラットフォーム

に掲載し,実施に必要な資金の全額または一部を趣

旨に賛同した人々から資金調達する仕組みである.

 なぜ,この新しい資金調達の仕組みが世界規模で

急速に進展したのか1.既存研究では主に2つの論

点 が 指 摘 さ れ て い る( 玉 井,2018). 第 1 に, イ

ン タ ー ネ ッ ト の 普 及 とIT技 術 の 進 化 で あ る( 松

尾,2014; 山 本,2014). 金 融 取 引 で は 資 金 提 供

者と資金調達者の間には情報の非対称性が高く,資

金提供側が資金調達者の情報や行動を把握するため

にはコストがかかる.そのため,たとえば金融機関

から見れば小口取引はコストがかかり,費用対効果

が見込めない取引であり,規模の経済が働くと考え

られてきた.しかし,上記理由により取引コストが

下がった結果,小口で資金を集めることが可能に

なった.第2に,クラウドソーシングの登場である

(Harrison,2013;Mollick,2014). ク ラ ウ ド ソ ー シ

ングとは,「企業もしくは組織が自社の従業員やアウ

トソーシングによって行っていた業務を不特定多数

の人々に依頼する行為」であり,クラウドは「スペア

サイクル」を提供し,自分の好きなことに没頭し,金

銭をおもな動機とせず,余った時間を提供する,余

剰能力を持つことで特徴づけられる人々である(ハ

ウ,2009).クラウドファンディングはクラウドソー

シングがそれまで取引のない個人にインターネット

を通じて仕事を発注する新しい雇用形態を生み出し

たように,資金調達者が少額の資金を提供する人や

グループに出会うチャンスを増やし,それらを説得

す る 手 間 を 減 ら す 仕 組 み と い え る( 山 本,2014).

それは銀行,ベンチャーキャピタリスト,ビジネス

エンジェルといったプロフェッショナル集団からの

資金調達とは異なり,個人からの資金調達を意味し

ている(Schwienbacher and Larralde,2012).

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 さらに,2012年に米国において起業促進を狙い

と し たJOBS法(Jumpstart Out Business Startups

ACT)が成立し,株式型クラウドファンディングが

解禁されたことは世界的にクラウドファンディング

への注目と期待感を高める結果となった.クラウド

ファンディングには寄付型や購入型といった5つの

類型がある.そのうち,インターネットを通じて株

式を使い資金調達を行う株式型は日本を含む多くの

国で実施が不可能であった2.しかし,2014年,金

融商品取引法等の一部が改正され,日本でも株式型

の実施が可能となった.日本では,法律改正後しば

らく実施可能にもかかわらず株式型の利用がなかっ

たが,2017年以降は利用実績が増加している.その

結果,日本国内のクラウドファンディング市場は堅

調に規模を拡大しており,矢野経済研究所(2018)

によればその市場規模約1,700億円と5年前の約25

倍となっている3.同様に世界市場も拡大しており,

Massolution(2015) に よ れ ば2012年 に は27億 ド

ルであったが2015年には約43億ドルとなっている4.

 市場規模の拡大と利用可能性が広がる中で,クラ

ウドファンディングに関する研究も蓄積が進みつつ

ある.特にクラウドファンディングによる資金調達

の成功要因に関する研究は,Mollick(2014) を嚆

矢として世界各国のクラウドファンディングを掲載

するサイトを対象としてデータを入手し,分析する

研究が進展している.一方,資金提供者に関する研究,

特に資金提供動機やプロジェクトの選択基準に関す

る研究は中村(2018)が指摘するように先行研究の

多 く が 利 用 者 に 対 す る イ ン タ ビ ュ ー 調 査(Garber

and Hi,2014)や特定サイトや特定事例についての検

討が多く,全体を概観した研究が不足している.さ

らに,中村(2018)によれば大規模な量的調査は海

外ではあまり例がなく,先行研究が手薄な分野となっ

て い る. 日 本 を 対 象 と し た 調 査 は, 小 南(2012),

小松(2013),中田(2017),中村(2018)といっ

た先行事例があるものの,ある特定のプラットフォー

ムを対象としていたり,類型別には分類を行わずに

分析を行っている.上記で述べたように,クラウド

ファンディングにはいくつかの類型があり,その違

いにより資金提供者が受け取る対価も多様になって

いる.それゆえ,資金提供者から見ればどのような

リターンを希望するかにより,クラウドファンディ

ングの種類を選択して資金提供を行っていると考え

られる.しかし,管見の限り,クラウドファンディ

ング類型を区別して資金提供者の特徴や動機を明ら

かにしている研究は見当たらないと考えられる.

 以上のような先行研究の限界を踏まえ,本研究は

研究の蓄積が薄い資金提供者を対象とした大規模な

オンライン調査を実施した.本稿はその結果からク

ラウドファンディングの種類別に見た資金提供動機

と資金提供後の課題について明らかにすることを目

的とする.本稿の構成は次のとおりである.第2章

ではクラウドファンディングの種類と資金提供動機

に関する先行研究をレビューしたうえで,本研究の

位置づけを確認する.第3章では調査方法,第4章

では集計データにもとに第一次分析結果を提示して

いく.第5章はまとめである.

2.クラウドファンディングの諸類型と先行研究

2.1 クラウドファンディングの類型

 クラウドファンディングは,資金提供者が受け取

る対価の形態によりいくつかの種類分類でき,日本

国内では資金提供の対価として金銭の分配を受けな

い非投資型(寄付型,購入型)と金銭の分配を受ける

投資型(貸付型,匿名組合型,株式型)に大別するこ

とができる.

 非投資型のうち,寄付型はインターネット上で寄

付を募るものであり,資金提供者への金銭的な対価

はなく,お礼の手紙や活動内容を記載したニュース

レター等が送付されることが多い.主なプラット

フォームとしては,LIFULLソーシャルファンディン

グ(旧ジャパンギビング)やReady for Charityなど

がある.LIFULL ソーシャルファンディング(LSF)

は2001年に英国で設立された JustGiving を端緒と

して,2010年からスタートしており,資金を募る人

をオーナー,資金提供者を支援者と呼んでいる.寄

付型は,日本国内では市場規模が最も小さく,矢野

経済研究所(2018) によれば7億円となっている.

 同じく非投資型に属する購入型は資金提供者から

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前払いで集めた代金を元手に製品等を開発し,資金

提供の対価として資金提供者に完成品やサービスな

どが提供される仕組みである.主なプラットフォー

ムとしては,Makuake(マクアケ)や READYFOR? (レ

ディーフォー), CAMPFIRE(キャンプファイヤー)

などがある.購入型の日本国内の市場規模は約100

億と貸付型について2番目に大きく,年間延べ出資者

数は約50万人に達しているという(矢野総合研究所,

2017;2018).

 次に,投資型のうち貸付型(融資型もしくはソー

シャルレンディングとも言われる)は,資金提供者が

資金調達者に貸付を行い,その対価として元本と利

息を受け取るものである.日本では資金提供者が資

金調達者に反復的に貸し付けるためには,資金提供

者が貸金業法に基づき貸金業者として登録する必要

がある.そのため,資金提供者が匿名組合に出資を

行い,匿名組合が資金調達者に資金を融資する仕組

みを利用することにより同様の効果を得られるよう

な仕組みをとっている.貸付型を運用する事業者は

金融商品取引法の規制対象となり第二種金融商品取

引業の登録を受ける必要がある.主なプラットフォー

ムとしては,maneo(マネオ),SBIソーシャルレン

ディングなどがある.国内外で市場規模が最も大き

く,規模も拡大していることから他の種類のクラウ

ドファンディングを扱っていた事業者が貸付型に参

入する事例が相次いでいる.高尾(2019)によれば,

日本では2017年に市場規模が1,500億円を超えてお

り,個人投資家の資産運用先としても拡大可能性が

ある一方,金融庁処分など問題が生じていることが

指摘されている.これは,先にも述べたように個人

投資家が貸金業に該当することを回避するため,借

手を匿名化・複数化する対応がとられていたが,こ

れを悪用した問題が起こっていた.そのため,金融

庁は2019年3月に金融庁から借手が法人である場合

において,案件の匿名化・複数化によらず投資家が

貸金業に該当することを回避するための要件が提示

された5.

 次に,投資型のうち匿名組合型は資金提供者が資

金調達者を営業者とする匿名組合に出資を行うもの

であり,分配収益が対価となる仕組みである.資金

調達者からみて調達資金は負債(借入金もしくは預

り金)となる.事業計画が予定通りにいかない場合に

は,資金提供者へ資金の返還は約束されない.主な

プラットフォームとしては,日本で初めてのクラウ

ドファンディングを実施したミュージックセキュリ

ティーズ運営するセキュリテ,ソニー銀行が運営す

るSony bank GATEがある.日本における市場規模は

50億円程度となっている(矢野総合研究所,2018).

 最後に,株式型は資金提供者が資金調達者の経営

する企業に資金を払い込むことにより株式を取得

し,対価として配当やキャピタルゲインを得る仕組

みである.上場株式の売買と異なり株式型は,投資

家一人当たりの投資額上限は50万円未満,1社あた

りの資金調達上限金額も1億円未満と定められてい

る. 主 な プ ラ ッ ト フ ォ ー ム と し て は,FUNDINNO,

GoAngel,エメラダエクイティがある.株式型が日本

国内で解禁されたのは2015年であったが,2017年

4月まで資金調達案件がなかったがその後は案件が

増加しており,日本における市場規模は9億円となっ

ている(矢野総合研究所,2018).

2.2 クラウドファンディングへの資金提供動機に

 関する先行研究

 既存研究では,クラウドファンディングへの資金

提供動機は異質性が高く,金銭的なリターンの獲得

に以外にも様々な動機があることが指摘されている.

例えば,Ordanini et al(2011)は,資金提供経験者

とクラウドファンディングの仲介プラットフォーム

運営会社の経営者に対するインタビュー調査の結果,

資金提供者は①イノベーション思考,②他者との交

流を好む,③会社や製品に対してアイデンティティ

を持ち,④財務成果に関しても興味を持つという特

徴を指摘し,出資動機として「共感・応援動機」,「社

会的投資動機」,「金銭的利益獲得動機」,「革新的行

動動機」の4つを導出している.Zhang(2012)は「共

感・応援動機」,「社会的投資動機」,「自尊心充足動

機」,「報奨獲得動機」,「互恵関係動機」を指摘してい

る.ほかに,Allison et al(2014)やLin et al(2014)

は社会的評判の獲得や内発的な動機,Gerber et al

(2013)は金銭的報酬に加えて,非金銭的報酬とし

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て他者を助ける,資金提供者を支持するコミュニティ

への参加,社会的なネットワークの構築などの出資

動機があることを明らかにしている.さらにHermer

et al(2011)では,製品やサービスへの興味や自己

肯定感が指摘されている.

 日本のデータを用いた分析では,寄付型に関して

はSasaki(2019)が寄付の意思決定において,日本

では他者との比較・平等性向,互恵性が重要なのに

対して,米国では,利他性,互恵性が重要な決定要

因となっていることを明らかにしている.購入型に

関しては,小南(2012)が134名に対するWebアン

ケートから「社会的投資動機」,「報奨獲得動機」「共

感・応援動機」の3 つの資金提供尺度を抽出してい

る.匿名組合型に関しては,小松(2013)は自身

が運営するセキュリテへの資金提供者に対するアン

ケート調査を発表し,7つのプロジェクトでの投資

家の特徴を指摘してきている.そこでは性別では男

性,年代では30代と40代が多く,その多くがプロジェ

クトを応援したいとの動機を持つ.中田(2017)

と中村(2018)は本稿と同様にオンライン調査会社

の保有するパネル会員を対象とした調査を行ってい

る.中田(2017)は,267名に対する調査結果から

資金提供理由は①企画に賛同しプロジェクトを応援

したいから②市場で購入できないリワードを入手で

きるから③リワードが安価に入手できるからが上位

3つとなっていることを示唆しているが,どのタイ

プのクラウドファンディングに対して資金提供をし

たかは分類されていない.同じく,資金提供に対す

る不安も調査しており,プロジェクトが未完になり,

目的が達成されない不安やリワードが受け取れない

不安を感じている人が多いことが分かっている.中

村(2018)も同様にオンライン調査を行っているが,

回答者を寄付型と購入型の利用経験者に限定して調

査を行い,その結果,支援理由として最も多かった

のがプロジェクトの趣旨に賛同であり,以下,プロ

ジェクトが面白そう,クラウドファンディング自体

に興味,リターン(返礼)が魅力的といった内容が続

いている.

 このように,資金提供動機に関して金銭的獲得動

機とそれ以外の動機が指摘されているが,日本の調

査結果ではその多くが趣旨に賛同や応援したいと

いった非金銭的動機が上位を占めている.クラウド

ファンディングの類型別に見た場合,投資型に属す

る3類型では金銭的動機が上位に来ることも予想さ

れるが,匿名組合型を対象とした小松(2013)では

金銭的動機は指摘されていない.さらに,貸付型や

株式型に関しては資金提供者に対する調査結果がな

いと思われることから,以下ではすべての類型への

資金提供者への調査が必要と考え,以下のように調

査を設計した.

3.調査方法

 オンライン調査会社(株式会社マクロミル)が提供

するWEB調査システムを利用し,オンライン調査を

実施した.第1次調査では,同社の保有するパネル

会員11万人に調査票を配信し,①全体・種類別のク

ラウドファンディングへの認知度,②クラウドファ

ンディングに関する質問を行い,約半数程度の回答

を得てそのうち2万サンプルを入手した.次に,第

2次調査では1次調査への協力者の中からスクリー

ニング質問でクラウドファンディングに資金提供経

験があるとした人を抽出し,目標サンプル数(2,000

名以上)を指定し,個人属性,出資状況,資金提供

先の選択基準,クラウドファンディングの問題点な

どに関する質問を行った.その結果,寄付型515名,

購 入 型1,347名, 貸 付 型284名, 匿 名 組 合 型164名,

株式型135名の合わせて2,443名の資金提供経験者

の回答を回収した.調査期間は2019年3月27日(水)

~31日(日)である.

 なお,オンライン調査にはいくつかの問題点が指

摘されている(大隅,2006).そのうち本調査も回

答者の自己申告に依存し,代表性の疑わしさについ

て排除しきれないが,本研究の目的はクラウドファ

ンディングの類型別に資金提供動機を明らかにする

ことである.購入型は先に述べたように資金提供経

験者が50万人を超えることが分かっているが,株式

型は実施可能となってから日が浅く,出資者数が限

定的であることが予想される.したがって,特定の

種類のクラウドファンディングに偏ることなく回答

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を得て全体像を明らかにするためには大規模なオン

ライン調査が適していると判断した.

4.結果

4.1 第1次調査の概要

 第1次調査の回答者の内訳を性別,年齢,個人年収,

職業別に示したものが表1である.性別は男性と女

性が50%となっており,これは日本の男女別人口と

大きく変わりはない.年齢は40代が最も多く,次い

で60代,30代の順となっており,総務省統計局が発

表する人口推計と比較すると全体に占める60代と10

代の割合が第1次調査は少なくなっている.個人年収

は200万円未満が最も多く,次いで200~400万未満

が多くなっており,年齢と同様に比較すると200万

未満が多く,200万~400万未満と400万~600万未

満が少なくなっている.

 初めにクラウドファンディングの認知度を確認す

ると,全体の63.7%がクラウドファンディングとい

う名称を知っていると回答している.質問内容がや

や異なるため単純な比較は行えないものの,平成28

年度通信白書でのクラウドファンディングの認知度

(12.7%)や平成28年度消費生活に関する意識調査

結果報告書での同認知度(融資型で11%,購入型で

12.9%)と比較すると,非常に高い数字となってい

る.性別で見ると,男性の認知度が女性よりも高く

なっている.年代別にみると30代が最も認知度が高

く,それと比較すると10代と60代以上で認知度が低

くなっているがどちらも50%は超える数字となって

いる.年収別に見ると,年収が高いほどに認知度が

高くなっており,もっとも認知度が高いのは個人収

入が2000万であった.職業別にみると,経営者・役

員が最も高く,続いて自由業であり,両者ともに認

知度が7割を超える結果となっている.

 次に,クラウドファンディングに資金提供をした

経験がある人は回答者全体の3.5%となっている.男

女別に資金提供経験を見ると,男性が高くなってお

り, 女 性 の 2 倍 以 上 と な っ て い る. 年 齢 別 に 資 金

提供経験を見ると,30代が最も高く,次いで20代,

40代と続いている.次に年収別に資金提供経験を見

ると,年収2000万以上で最も割合が高くなっており,

次いで1500万 ~ 2 0 00万円となっており,年収の高

さが資金提供経験と関連している可能性がある.続

いて,資金提供経験がある人の職業を見ると,自由

業の人が実際の資金提供まで至った割合が高く,次

いで公務員が5.6%で続いている.

 以上をまとめると,1次調査の回答者においては

クラウドファンディングの認知度は6割程度となっ

ており,そのうち1/5程度がサイトを閲覧し,その

半数が資金提供を検討している.さらに,検討者の

半数が実際の資金提供に至っている.その割合は全

体の3.5%程度となっている.認知度については既存

研究と比較すると非常に高くなっている.次に,男

女別にみると男性の資金提供者が多くなっている.

年代別にみると20代,30代の若い世代で関心が高く,

資金提供経験率も高くなっている.個人所得との関

係で見ると,所得が高まるごとに資金提供経験者の

割合も高まる傾向が見て取れる.資金提供経験者と

職業と関係性については,経営者や自由業者からの

注目度が高くなっていることが読み取れる.

4.2 類型別に見たクラウドファンディングへの

 かかわり

 次にクラウドファンディングの類型別にクラウド

ファンディングへのかかわりの程度を示したものが

表2である.名前を知っていると回答した割合が最

も高かったのは寄付型であり,回答者全体のうち

37.4%が名前を知っていると回答した.以下,購入

型,貸付型,組合型と続き,近年実施可能となった

株式型が最も低くなっている.次に,種類別にクラ

ウドファンディングのプロジェクトが掲載されるサ

イトを閲覧したことがあるか尋ねたところ,最も割

合が高かったのは購入型であり,次いで寄付型となっ

ており,もっとも認知度が低かったのは株式型であっ

た.続いて,実際に資金提供をしたことがあると答

えた割合が高かったのは,購入型となっており,認

知度の高さと実際の資金提供との割合は必ずしも同

じではない結果となった.さらに,実際に資金提供

に至った割合が最も低かったのは組合型となってい

る.

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全体

クラウドファンディングという名称を聞いたことがある

サイト等を閲覧したことがある

資金を提供することを検討したことがある

実際に資金を提供したことがある

プロジェクト起案者として資金を募ったことがある

知らなかった/上記にあてはまるものはない

n n % n % n % n % n % n %全体 12,733 63.7 2,457 12.3 1,195 6.0 709 3.5 113 0.6 5,951 29.8性別男性 10,009 6,421 64.2 1,587 15.9 789 7.9 488 4.9 95 0.9 2,715 27.1女性 9,991 6,312 63.2 870 8.7 406 4.1 221 2.2 18 0.2 3,236 32.4

年代10代 584 328 56.2 86.0 14.7 37.0 6.3 15 2.6 7 1.2 217 37.220代 3,007 1,914 63.7 477 15.9 232 7.7 121 4.0 30 1.0 897 29.830代 3,792 2,516 66.4 592 15.6 307 8.1 180 4.7 35 0.9 982 25.940代 4,469 2,892 64.7 544 12.2 194 4.3 153 3.4 20 0.4 1,268 28.450代 3,752 2,463 65.6 415 11.1 194 5.2 111 3.0 8 0.2 1,061 28.360代以上 4,396 2,620 59.6 343 7.8 10 0.2 129 2.9 13 0.3 1,526 34.7

個人年収200万未満 7,161 4,537 63.4 707 9.9 316 4.4 172 2.4 19 0.3 2,260 31.6200~400万未満 4,011 2,549 63.6 480 12.0 238 5.9 150 3.7 24 0.6 1,187 29.6400~600万未満 2,501 1,663 66.5 397 15.9 217 8.7 126 5.0 20 0.8 620 24.8600~800万未満 1,140 744 65.3 212 18.6 114 10.0 75 6.6 17 1.5 276 24.2800~1000万未満 528 384 72.7 102 19.3 55 10.4 35 6.6 4 0.8 89 16.91000~1200万未満 216 149 68.3 42 19.3 29 13.3 9 4.1 2 0.9 51 23.41200~1500万未満 114 86 75.4 25 21.9 14 12.3 10 8.8 1 0.9 20 17.51500~2000万未満 32 37 71.2 10 19.2 4 7.7 4 7.7 1 1.9 9 17.32000万円以上 58 45 77.6 16 27.6 11 19.0 13 22.4 4 6.9 4 6.9わからない 1,302 697 53.5 121 9.3 59 4.5 34 2.6 8 0.6 518 39.8

職業公務員 606 390 64.4 92 15.2 52 8.6 34 5.6 6 1 159 26.2経営者・役員 349 257 73.6 80 22.9 37 10.6 21 6 9 0.6 66 18.9会社員(事務系) 2,643 1786 676 408 15.4 211 8 125 4.7 23 0.9 641 24.3会社員(技術系) 2,277 1453 63.8 349 15.3 186 8.2 106 4.7 15 0.7 630 27.7会社員(その他) 2,664 1628 61.1 335 12.6 184 6.9 117 4.4 19 0.7 839 31.5自営業 1,127 732 65 175 15.5 70 6.2 48 4.3 4 0.4 293 26自由業 396 280 70.7 85 21.5 35 8.8 33 8.3 4 1 74 18.7専業主婦(主夫) 3,764 2374 63.1 282 7.5 138 3.7 70 1.9 4 0.1 1254 33.3パート・アルバイト 2,844 1706 60 229 8.2 109 3.8 52 1.8 7 0.2 1007 35.4学生 996 603 60.5 177 17.8 78 7.8 39 3.9 11 1.1 317 31.8その他 595 379 63.7 72 12.1 35 5.9 18 3 6 1 178 29.9無職 1,739 1145 65.8 173 9.9 60 3.5 46 2.6 5 0.3 493 28.3

表1 クラウドファンディングとの関わり

出典:筆者作成

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4.3 資金提供先の選択基準

 資金提供先の選択基準に関して先行研究に示され

ていた選択理由を含め,30項目の質問項目を作り,

複数回答で尋ねたところ,全体ではプロジェクトの

目的に共感したからと回答した割合が最も高くなっ

た.続いてプロジェクトを応援したい,テーマが自

分の関心に合う,起案者の考えに共感と続き,5位

には金銭的リターンは期待していないが入るなど,

1位から5位までに金銭的リターンを期待する選択

基準は入っていなかった. 

  次 に, ク ラ ウ フ ァ ン デ ィ ン グ の 類 型 別 に み る

と,寄付型ではプロジェクトそのものを応援したい

と回答した割合が最も高く,続いて社会全体の幸せ

につながる,プロジェクトの目的に共感したが続い

ている.同様に,購入型へ資金提供した経験がある

人の選択基準を見ると,最も多く選択されたのはオ

リジナルなリワードが手に入るからであり,続いて

ここでしか手に入らないリワードが手に入るとなっ

ている.これらは購入型の特徴を反映した基準が選

択されていることが分かる.次に貸付型を見ていく

と,貸付型は投資型に分類され,資金提供の対価と

して金銭を受け取るタイプに分類されるが,もっと

多く選択されたのはクラウドファンディングの目的

に共感したというものであり,次にプロジェクトを

応援したいが続いている.最後に同じく投資型に属

する組合型と株式型に資金提供した経験のある人た

ちが最も多く選択肢として選択したのはプロジェク

トを応援したいであり,続いてテーマが自分の関心

に合う,地域貢献につながるとなっている.寄付型

でも地域貢献につながるが4位に入っているが,組

合型と様式型は選択基準の1位から3位までが同じ

となっている.組合型では1位から5位まで金銭的

リターンに関する基準は上位となっておらず,株式

型では4位に株式の値上がり益を期待する選択肢が

登場する.

 続いて,複数選択した選択基準の中で最も重視す

るものを尋ねたところ,寄付型と購入型以外では複

数選択の際に1位,2位となった以外選択肢が選択

されており,貸付型と組合型では配当金や金利の良

さがプロジェクト選択の決定要因となっており,株

式型では株式の値上がり益への期待が選択されてい

る.

 以上をまとめると,資金提供先の選択基準は全体

で は 目 的 に 共 感, 応 援, テ ー マ 関 心 が 上 位 に 並 び,

金銭的なリターンは求めていない傾向となっている.

しかし,種類別にみる複数の選択決定基準の中で最

も重視しているのは,投資型(貸付,組合,株式)で

は金銭的リターンとなっている.一方,購入型では

リワードを重視する姿勢が読み取れ,寄付では金銭

的リターンを求めずに応援する気持ちから資金提供

を行っている様子が分かる.

名前を知っている

クラウドファンディングのサイト等を閲覧したことがある

資金を提供することを検討したことがある

実際に資金を提供したことがある

クラウドファンディングにおいてプロジェクト起案者として資金を募ったことがある

これまで知らなかった/上記にあてはまるものはない

寄付型 37.4% 9.0% 3.7% 2.4% 0.9% 55.1%購入型 26.9% 9.6% 4.4% 3.6% 0.9% 65.2%貸付型 17.9% 5.6% 2.7% 1.7% 0.9% 76.8%組合型 13.6% 4.5% 2.2% 0.4% 0.9% 81.7%株式型 12.9% 4.0% 2.0% 1.3% 0.8% 82.8%

表2 種類別に見たクラウドファンディングへの関わり

出典:筆者作成

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50

全体 寄付型 購入型 貸付型 組合型 株式型

1位 目的に共感 プロジェクトそのものを応援

オリジナルなリワード

目的に共感 プロジェクトを応援

プロジェクトを応援

2位 プロジェクトを応援したい

社会全体の幸せにつながる

ここでしか手に入らないリワード

プロジェクトを応援

テーマが自分の関心に合う

テーマが自分の関心に合う

3位 テーマが自分の関心に合う

目的に共感 プロジェクトの目的に共感

社会全体の幸せにつながる

地域貢献につながる

地域貢献につながる

4位 起案者の考えに共感

地域貢献につながる

プロジェクトそのものを応援

配当金や金利 オリジナルなリワード

株式の値上がり益

5位 金銭的リターンは期待していない

環境に良い影響 テーマが自分の関心に合う

環境に良い影響 社会全体の幸せにつながる

社会全体の幸せにつながる

決定要因

プロジェクトを応援

ここでしか手に入らないリワード

配当金や金利 配当金や金利 株式の値上がり益

表3 資金提供先の選択基準

表4 クラウドファンディングへ資金提供した際に感じた不満について

出典:筆者作成

出典:筆者作成

不満はない 47.4

届くはずのリワード(モノやサービス)が届かなかった 8.9

リワードは受け取ったが、期待したものとは違っていた 12.7

リワードは受け取ったが、自分が相手に提供した資金に見合うものではなかった 10.3

期待した金銭的リターンが全く受け取れなかった 8.4

期待した金銭的リターンは少しは受け取ったが、期待したほどのリターンは受け取れなかった 7.9

期待した金銭的リターンは受けとったが、予想していたよりも時間がかかった 5.1

サイトの運営会社の対応に不満があった 6.6

クラウドファンディング事業者へ支払う手数料が高い 9.0

資金提供した相手からその後の対応がない、もしくは少ないことが不満だ 7.7

資金提供したいプロジェクトがない 9.5

クラウドファンディングに興味がなくなった 3.6

資金提供者した相手のその後の状況がよくわからない 12.1

資金提供の仕方が分かりづらい 5.3

資金提供の仕方が面倒だ 2.9

その他【  】 2.1

0% 20% 40% 60% 80% 100%

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都市経営 No.12(2019),pp.43-54

4-5 クラウドファンディングへの資金提供に

 対する不満

 クラウドファンディングに資金提供した際に感じ

た不満について複数回答で尋ねたところ,半数以上

が不満をもっていることが明らかとなった.その理

由として最も多かったものがリワードは受けとった

が期待していたものと違ったというものであり,続

いて資金提供した相手のその後の状況が分からない

というものであった.中田(2017)の調査では不安

があるがプロジェクトを応援したいと不満を具体的

に指摘しなかった割合が1/3となっているが,本調

査ではそれを上回り,現状のクラウドファンディン

グのサービスに満足していない割合が半数以上いる

ことが分かった.

 これらの結果をまとめると,不満があると回答し

た約半数の回答者の傾向として,資金提供当時に期

待していたモノ,サービス,リターンが受け取れな

いことに不満を持っている傾向がうかがえる.さら

に,資金提供先のその後の経過が分からない点が指

摘されており,資金調達までは情報が頻繁に開示さ

れるが,資金調達後の様子が分からない点に資金提

供者が不満を覚えていることがうかがえる.この点

は資金調達者に必ずしも義務付けがなされているも

のではないが,資金提供者が非金銭的リターンの1

つとして知りたいと思っているのかもしれない.こ

れらの不満と関連して本稿では詳しく取り上げな

かったが,自由記述欄には詐欺的行為に思わせる記

述が多数あった.2章でもふれたように昨今金融庁

からの処分があるなど,クラウドファンディングの

負の部分も表れつつあるのかもしれない.

5.まとめ

 本稿は,クラウドファンディングへの資金提供者

の 特 徴, 動 機, 抱 え る 課 題 に 近 接 し た 研 究 で あ る.

これらを踏まえ,本研究の意義はクラウドファンディ

ングの種類別に資金提供経験者の選択基準を明らか

にした点である.これまでの既存研究ではクラウド

ファンディングの種類別に研究が進められており,

すべての種類を比較可能な形で提示した点に新規性

があると考える.

 一方,本研究の課題は2点ある.第1に,速報と

して調査結果の概要をまとめたため,分析が十分で

はなく,今後はデータをより詳細に分析していく必

要がある.第2に今回の調査結果から明らかになっ

た点として,資金提供経験者は金銭的報酬と非金銭

的報酬の選択基準の両方を用いながらそのプロジェ

クトの特徴ごとに優先順位が変化する.何がどの場

面で優先されるのか,どの程度それらがオーバーラッ

プするのか,先行研究では明らかになっていない.

特に,日本におけるクラウドディングは東日本大震

災が発生した際,多くのものを失った人や企業に対

して「共感」をキーワードに「応援する」資金提供と

いう形で一気に広まったとされるが(斎藤,2011),

このクラウドファンディングを象徴する共感につい

て心理学分野では研究の蓄積が進んでいるが,クラ

ウドファンディングを対象とした研究の蓄積,特に

日本の研究については解明されていない点が多い.

この点について今後は分析を行っていく予定である.

1 クラウドファンディングという言葉が初めて

使 わ れ た の は2006年 と さ れ る が(Lawton and

Marom,2010),クラウドファンディングをどの

ように捉えるかにより昔からある仕組みである

との指摘もある.例えば,日本における「勧進」

や自由の女神像建設の際に寄付事例などである

(「ふるさと投資」連絡会議 ,2015).また,日本

においてインターネットを通じて広く小口の資金

を集めた初めての事例は,ミュージックセキュリ

ティーズ社が2000年にミュージシャンの CD制作

支援を行ったファンドであるとされるが,同社は

自分たちの取組をクラウドファンディングとは言

わず「マイクロ投資プラットフォーム」としていた

(「ふるさと投資」連絡会議 ,2015).

2  日 本 で 不 可 能 で あ っ た 理 由 に つ い て は 有 吉

(2013)に詳しい.

3 矢野経済総合研究所(2018)「国内クラウドファ

ンディング市場の調査を実施(2018年)」https://

www.yano.co . jp/press-re lease/show/press_

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52

id/2036(最終確認日2019.10.01).

4 Massolution(2015) “2015CF Crowdfunding

Industry Report”.

5 貸金業に該当することを回避できる要件として,

(1)投資者が貸付に関して権利を有さないことの

確認,(2)貸付条件は事業者が決定する,(3)借手

と投資家は互いに接触してはならないことが示さ

れており,クラウドファンディングをインターネッ

トを通じて資金提供者と資金調達者が直接つなが

る直接金融の仕組みとした場合,貸付型をクラウ

ドファンディンに含めない考え方もある.しかし,

借手の属性が公開され,それを見て資金提供者は

ファンドに出資し,組合から貸し付ける仕組みで

あることから本稿ではクラウドファンディングに

含めて議論をしていく.

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54

Motivation to investment in Crowdfunding in the Japanese Market and problems

Yuki TAMAI

Abstract

The purpose of this study was to clarify the characteristics, motives, and challenges of profession people who

have funded crowdfunding. A large-scale online survey was used as the survey method. There are many men who

have takenpartin funding, interest is high in their twenties and thirties, and the number of people who have funding

tends to increase as income increases. With regard to funding motives, the priority standards differ for each type of

crowdfunding. Half of the respondents were not dissatisfied with crowdfunding, but some complaints were raised.

Keywords : Crowdfunding , Motivation to Participate in Crowdfunding, online survey

DOI : 10.15096 / UrbanManagement.1204