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ウェーブレット理論と工学への応用morimoto/WSPRO/... ·...

Jul 18, 2020

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Page 1: ウェーブレット理論と工学への応用morimoto/WSPRO/... · ウェーブレット(フィルタ)の導出法を実例を用いながら解説し,その際に生じる問題等を提起する

平成 26 年度 数学協働プログラム・ワークショップ

ウェーブレット理論と工学への応用

主催:大阪教育大学,統計数理研究所

場所:大阪教育大学 天王寺キャンパス

日程:平成 26 年 11月 7日(金)13:00 ー 18:00

   平成 26 年 11月 8日(土) 9:00 ー 13:00

Wavelet theory and its applications to engineering

OKU & ISM 2014 Workshop

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開催趣旨

ワークショップ「ウェーブレット理論と工学への応用」では,広い意味でウェーブレット解析によっ

て解決できるかもしれないと期待できるトピックスに関して,講演者の方々に理論と工学的応用の現

状,さらに解決すべき問題を解説していただき,その問題提起を端緒として参加者がディスカッショ

ンする形で,ウェーブレット解析が実際にどのように応用されているかをより深く理解することに

よって,新しい理論と応用への道が開かれることを目指します.

Proceedings of the OKU & ISM 2014 Workshop on Wavelet Theory and its Applications to Engineering 1

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Proceedings of the OKU & ISM 2014 Workshop on Wavelet Theory and its Applications to Engineering2

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ウェーブレット理論と工学への応用プログラム

平成 26 年 11 月 6日 – 8 日

大阪教育大学 天王寺キャンパス 西館 第 5 講義室

平成 26 年 11 月 6 日(木)13:00 – 17:00

ウェーブレット相談会ならびに個別討論

平成 26 年 11 月 7 日(金)13:00 – 18:00

13:00–13:10 開催の挨拶

座長:上原 伊音(株式会社シグマ)

13:10–14:10 藤ノ木 健介(東海大学)

リフティングウェーブレットと信号解析  . . . . . . . . . . . . 7

リフティングは双直交性を保証する自由度の高いウェーブレットの設計手法である.得られたフィ

ルタは完全再構成条件を満たすが,しかしフーリエ変換が有界にならない場合もあり,ウェーブレッ

トについても必ずしも Riesz基底になるとは限らない.本講演では,リフティング構成による様々な

ウェーブレット(フィルタ)の導出法を実例を用いながら解説し,その際に生じる問題等を提起する

とともに,信号解析への応用の可能性について議論する.

座長:木下 保(筑波大学)

14:25–15:25 章 忠,嶋末 昂祐,戸田 浩,三宅 哲夫(豊橋技術科学大学)

Meyer ウェーブレットを用いたリフティングスキームによる複素数離散ウェーブレット変換 31

複素数離散ウェーブレット変換 (CDWT) は完全シフト不変性の特性を持つ離散ウェーブレット

変換(DWT)の一種である.CDWT は実数部と虚数の2つで構成されるために,計算量が通常の

DWTの2倍以上となっている.計算量を削減する方法として,計算手法を従来の多重解像度解析か

らリフティングスキームへと変更することは有効であると考えられる.しかしリフティングスキーム

はこれまでコンパクトサポートのウェーブレットにのみ対応している.本研究では,コンパクトサ

ポートのないMeyerウェーブレットでのリフティングスキームを設計し,CDWT に適用させて変換

処理の高速化を図る.さらにこの手法の問題点と改善について議論する.

座長:藤田 景子(富山大学)

15:40–16:40 岡 康之(釧路高専)

シュワルツの核型定理と時不変連続線形システムについて  . . . . . . .  47

シュワルツの核型定理と時不変連続線形システムについて,シュワルツの核型定理と超関数の話

題を中心に講演する.芦野―萬代―守本は,急減少関数を入力信号,緩増加超関数を出力信号と見

なし,シュワルツの核型定理をシステム同定の枠組みで記述し,その核関数のウェーブレット解析

を行っている.本講演では,芦野らによる理論を群上の超関数に拡張する.今後解決すべき課題は,

群上のシステムと工学との関係であり,それに関して参加者の意見を伺いたい.

Proceedings of the OKU & ISM 2014 Workshop on Wavelet Theory and its Applications to Engineering 3

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座長:藤ノ木 健介(東海大学)

16:55–17:55 新井 康平(佐賀大学)

薬草識別のためのウェーブレット  . . . . . . . . . . . . . 83

画像から抽出する情報として (1)色,濃淡等スペクトル情報,(2)テクスチャー,形状,サイズ等空

間情報,(3)意味論的概念的関係情報がある.本講演では上述の (1)を従来手法によって抽出し,加

えて (2)の情報をウェーブレットに基づき,屋外においてデジタルカメラによって撮像した草花の写

真を用いて薬草を検知する手法を提案する.

懇親会

参加希望者は,10月31日までに,幹事の富山大学・藤田景子さん

e-mail:[email protected]

にお知らせ下さい.

平成 26 年 11 月 8 日(土)9:00 – 13:00

座長:芦野 隆一(大阪教育大学)

9:00–10:00 佐藤 創(元専修大学)

コンパクトサポートをもつウェーブレットの補間・補外に関するパラメータ領域における考察 99

音声・画像データなどのウェーブレット変換に用いるウェーブレットの多くは既知のものに固定さ

れているが,あるクラスのウェーブレット全体をパラメータ表現できれば,中間的なウェーブレット

を連続的に得ることが容易となる.JSIAM 2013で発表された2つの直交ウェーブレットに関する補

間法の研究(木下・福田)はこの目的に沿ったものである.

本報告ではローパス・フィルターの係数列が4項であるパラメータ領域において,この補間法がど

のような特徴をもつかを考察する.係数列が6項の場合への拡張,非直交ウェーブレットへの拡張も

試みる.

座長:松浦 勉(群馬大学)

10:15–11:15 川崎 秀二(岩手大学),木戸 元之(東北大学)

地震解析のための海底変位計測のウェーブレット相関法  . . . . . . . .115

地震予測のための有用な情報として,海底面の変位 [m] の計測が行われている.基本的手法は,観

測船から海底設置トランスポンダへデータを送信し,トランスポンダからの返信波と元の送信波との

相関をとることで観測船での受信時刻を示す相関ピークを時間軸上で得ようとするものである.こ

の手法だけでは,精確なピークを得ることが難しい.これに対し,送信波・受信波それぞれのウェー

ブレット係数の相関をとれば,ピークが先鋭化され精確な受信時刻を特定することができることを報

告する.

座長:萬代 武史(大阪電気通信大学)

11:30–12:30 岡田 正已,森田 正紀(首都大学東京)

不規則サンプリング補間と近似誤差の数理  . . . . . . . . . . .127

全平面に不規則に散らばった点集合上で,ある関数 [信号]の値 [データ]が観測されたときに,そ

れらの値をサンプリング補間する関数をできるだけよく再現する一般的な方法が知られている.ま

ずそれを概説してから,次に,不規則な点集合が無限集合のときに,自然に一般化されるためのいく

つかの数学的側面がわかってきたので,それらを述べたい.

Proceedings of the OKU & ISM 2014 Workshop on Wavelet Theory and its Applications to Engineering4

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大阪教育大学 天王寺キャンパス 西館 第 5 講義室

〒 543-0054 大阪市天王寺区南河堀町 4-88  電話番号 (06)6775-6611

JR天王寺駅,地下鉄天王寺駅,近鉄大阪阿部野橋駅下車,徒歩約 10分.

JR寺田町駅下車,徒歩 5分.

http://osaka-kyoiku.ac.jp/

統計数理研究所 数学協働プログラム

http://coop-math.ism.ac.jp/

運営責任者

守本 晃(大阪教育大学 情報科学)

e-mail: [email protected]

tel: 072-978-3665

http://www.osaka-kyoiku.ac.jp/~morimoto/TENWS/ws2014HP/

芦野 隆一(大阪教育大学 数理科学)

e-mail: [email protected]

tel: 072-978-3685

http://www.osaka-kyoiku.ac.jp/~ashino

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リフティングウェーブレットと信号解析

藤ノ木健介東海大学 理学部

概要. リフティングは双直交性を保証する自由度の高いウェーブレットの設計手法である.得られた双直交フィルタは完全再構成条件を満たすが,しかしながら必ずしも Riesz

基底になるとは限らない.ウェーブレットについても,モーメント消滅条件は制御できるが,基底関数の正則性や安定性は保証されない.本講演では,リフティング構成による様々なウェーブレット(フィルタ)の導出法を実例を用いながら解説し,その際に生じる問題等を上記を中心に提起するとともに,信号解析への応用の可能性について議論する.

Lifting Wavelets and Signal Analysis

Kensuke Fujinoki

School of Science, Tokai University

Abstract. The lifting scheme allows to construct biorthogonal wavelet filters with perfect

reconstruction. The resulting filter are guaranteed to be biorthogonal, but associated

wavelets do not always form a Riesz basis. While the lifting construction can control the

number of vanishing moments of wavelets, the regularity and stability of bases are not

guaranteed. This article attempts to describe a method to construct biorthogonal wavelets

by the lifting scheme, and show bottlenecks in this lifting-based construction. Application

to the field of signal processing is also discussed.

1. はじめにリフティング(lifting)[20, 21]とは完全再構成フィルタ(perfect reconstruction filter),あるいは双直交ウェーブレットとスケーリング関数を双直交性を保ったまま修正することである.任意の双直交フィルタによる離散ウェーブレット変換はリフティングの繰り返しにより実装することができるため,Mallat 変換 [16] の高速実装を与えることからJPEG2000の符号化方式に採用されている [1].このリフティング構成(lifting scheme)の特徴は,フィルタやウェーブレットの設計において従来では不可欠なフーリエ変換を用いる必要がない点である.このため,第二世代ウェーブレット(例えば [6, 22])と呼ばれる有界領域,不規則標本化領域,サーフェイス等の多様体など,フーリエ変換の定義が困難な一般領域におけるのウェーブレットの構成と多重解像度解析の形成を可能とする [25].しかしながら,リフティングの本質を理解するためにはフーリエ領域での考察が必要となる.そこで本稿では,内容を従来の第一世代ウェーブレットに限定して,空間(時間)領域,フーリエ領域の多角的な視点からリフティングの本質に迫り,その際に関連する解決すべき課題等を提起し,信号解析への応用と展望について述べる.

1

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2. 空間領域におけるリフティング2.1 Haar変換

まず次のような変換を考えるところからはじめる.解像度レベル j ∈ Z の離散信号{c j[k]}k∈Z が与えられた時,信号の偶数成分 c j[2k]と奇数成分 c j[2k + 1]を使って,

c j−1[k] =c j[2k] + c j[2k + 1]

2d j−1[k] = −c j[2k] + c j[2k + 1]

(2.1)

と分解する.c j−1[k]は平均成分,d j−1[k]は差分成分となっており,各成分の信号長(解像度)は半分になっている.それぞれを近似成分,詳細成分と表現することもあるが,これを Haar 変換と呼ぶこととする.ただし,通常の Haar 変換とは正規化係数が異なることに注意しよう.これはいわば線形変換として

(2.2)

(c j−1[k]d j−1[k]

)=

(1/2 1/2−1 1

) (c j[2k]

ck[2k + 1]

)

と書くことができ,逆変換は

c j[2k] = c j−1[k] − d j−1[k]

2

c j[2k + 1] = c j−1[k] +d j−1[k]

2

で与えられる.逆変換を導くためには (2.2)の逆行列を求める必要があるし,行列が複雑な場合はフーリエ変換を要する.

2.2 リフティング

リフティングでは,まず信号を 2つの独立な組に分けて扱う [23].1次元信号 {c j[k]}k∈Zではすなわち偶数番地と奇数番地が候補として考えられるから,それぞれを

c j,e[k] := c j[2k], c j,o[k] := c j[2k + 1]

と置く.これをスプリット(split)と呼ぶ(Lazyウェーブレット変換とも呼ばれる).ここで,c j,o[k]を隣接する c j,e[k]を使って予測(predict)することを考える.最も簡単な予測作用素(predictor, predict operator)は 1次の場合で,単純に c j,e[k]そのものを使う一定予測(constant prediction)である.予測は正確でなくてもよく,その予測誤差を d j−1[k]

として c j,o[k]と置き換える:

(2.3) c j,o[k]→ d j−1[k] = c j,o[k] − c j,e[k]

2

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c j,o[k]を戻すには単純に

(2.4) c j,o[k] = d j−1[k] + c j,e[k]

とすればよい.もしよい予測作用素を選べば予測誤差 d j−1[k]はスパースになるが,一定予測の場合は信号が一定であれば d j−1[k]は 0になるし,局所的に変動しているときは予測誤差は増大する.つまり,予測は信号の偶数番地と奇数番地における相関を見ていると解釈でき,次数が 1次の場合は信号の 0次相関を消滅させる.予測によって信号は (

c j,e[k], c j,o[k])→(c j,e[k], d j−1[k]

)と置き換わったが,c j[k]の平均値は変化しておりスプリットの影響も受けてエイリアシングも生じている.そこで,アップデート(update)では c j,e[k]に隣接する c j,o[k](今は予測誤差 d j−1[k])を使って c j,e[k]を平滑化された c j−1[k]に置き換える:

(2.5) c j,e[k]→ c j−1[k] = c j,e[k] +d j−1[k]

2

これも逆変換

(2.6) c j,e[k] = c j−1[k] − dj−1[k]

2

が成り立つのは明らかである.アップデートは平均を保持するように定めるのが普通である.ここでは d j−1[k]/2としたが,アップデートの右辺を c j,e[k] + (c j,o[k] − c j,e[k])/2とすれば,そこから平均

(2.7)∑

k

c j[k] =1

2

∑k

c j−1[k]

が求まることがわかる.こうして予測とアップデートによって信号は(

c j,e[k], c j,o[k]) predict−→

(c j,e[k], d j−1[k]

) update−→(c j−1[k], d j−1[k]

)と変換されたが,実は最終的に得られた結果は Haar変換 (2.1)のそれに他ならない.しかし,リフティングの場合は変換式の構造上,逆変換 (2.4), (2.6)が容易に成り立つことが決定的に異なる.さらに,偶数成分と奇数成分を平均と詳細に置き換え(in-place)することにより計算できるため計算効率がよい.これは,計算機で実装した際に

c j,e[0] c j,o[0] c j,e[1] c j,o[1]

↓ predict

c j,e[0] dj−1[0] c j,e[1] dj−1[1]

↓ uddate

cj−1[0] d j−1[0] cj−1[1] d j−1[1]

3

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のようにひとつの配列サイズを固定して演算を実現でき,メモリ消費を抑えられる実装上の利点がある.つまり,c j−1[k], d j−1[k]として新たな変数を用いなくても信号の偶数番地と奇数番地だけを用いて上書き演算することが可能である.たとえば,C言語風に書くと

odd −= even;even += odd;

であり,メモリの制約などがある小型ハードウェアへの実装時などに有利である.

2.3 線形予測

次にもう少し複雑な予測,2次の場合の線形予測(linear prediction)を考える.つまり,c j,o[k]を近傍の c j,e[k]の平均

(c j,e[k]+ c j,e[k + 1]

)/2として予測する.もし信号が偶数番地

間で区分的に線形であれば予測は成功し,信号の 1次相関を消滅させる.しかし必ずしもその必要はなく,予測誤差を詳細成分として保存する.

(2.8) c j,o[k]→ d j−1[k] = c j,o[k] − 1

2

(c j,e[k] + c j,e[k + 1]

)c j,e[k]をアップデートしてスムースにするためには 1次の場合と同様に c j,e[k]の近傍の

c j,o[k](今は d j−1[k])を使って

c j−1[k] = c j,e[k] + A(d j−1[k − 1] + d j−1[k]

)(2.9)

とする.ここで,Aは定数であり,

c j−1[k] = c j,e[k] + A[c j,o[k − 1] − 1

2

(c j,e[k − 1] + c j,e[k]

)+ c j,o[k] − 1

2

(c j,e[k] + c j,e[k + 1]

)]=(1 − A

)c j,e[k] + A

(c j,o[k − 1] + c j,o[k]

)− 1

2A(c j,e[k − 1] + c j,e[k + 1]

)であるから平均 (2.7)を保持するように∑

k

c j[k] =(1 − 2A

)∑k

c j,e[k] + 2A∑

k

c j,o[k] =1

2

∑k

c j−1[k]

を解いて定める.ここで 12

∑k c j−1[k] は結局 1

2

∑k(c j−1,e[k] + c j−1,o[k]) とわけれるから

A = 1/4となる.なおこの選択は 1次のモーメント∑k

k c j[k] =1

2

∑k

k c j−1[k]

も保持する.従って,予測 (2.8)をアップデート (2.9)に代入すれば線形予測のアップデートは実際には

c j−1[k] =3

4c j,e[k] +

1

4

(c j,o[k − 1] + c j,o[k]

)− 1

8

(c j,e[k − 1] + c j,e[k + 1]

)4

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を計算していることになるが,これは 2 次の次数を持つ CDF(2,2),または 5/3 双直交ウェーブレットフィルタ [5]

h[k] = {−1

8,

1

4,

3

4,

1

4, −1

8}

による離散ウェーブレット変換から得られる平均成分 c j−1[k]に他ならない.Haar変換の場合と同様に,同じ結果が異なる計算方法で得られているわけである.

2.4 リフティング構成

以上をまとめると,予測作用素を p,アップデート作用素を uとして,リフティングは次の 3ステップで記述できる.

1. スプリット:信号を偶数番地と奇数番地にわける.

c j,e[k] := c j[2k]

c j,o[k] := c j[2k + 1](2.10)

2. 予測:予測作用素 pを c j,e に適用して,c j,o[k]を予測する.その予測誤差を詳細成分として保存する.

c j,o[k]→ d j−1[k] = c j,o[k] − p(c j,e)[k](2.11)

3. アップデート:アップデート作用素 uにより,予測結果 d j−1 を用いて c j,e をアップデートする.

c j,e[k]→ c j−1[k] = c j,e[k] + u(d j−1)[k](2.12)

4. 正規化(option):エネルギーの正規化 ‖c j‖2 = ‖c j−1‖2 + ‖d j−1‖2 等が必要であれば,c j−1[k]と d j−1[k]を定数 K で正規化する.

c j−1[k] = K cj−1[k]

d j−1[k] = 1/K dj−1[k](2.13)

上記の各リフティングステップにおいて,予測とアップデートを反転させて実行すれば

c j[2k] = c j,e[k] = c j−1[k] − u(d j−1)[k]

c j[2k + 1] = c j,o[k] = d j−1[k] + p(c j,e)[k]

となり,c j[2k], c j[2k + 1]をマージすればもとの信号を得ることができる.Haarと線形予測の例で観測したとおり,ローパスフィルタ {h[k]}k∈Z とハイパスフィルタ {g[k]}k∈Z の畳

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c 1/K

K1/K

K+

+

j-1

dj-1

Split Merge

(a)

2

LP

HP 2

+2 2-

-

(b)

Fig. 1. 離散ウェーブレット変換.(a)リフティング構成.(b) Mallat変換.

み込み演算による通常のMallat変換

c j−1[k] =∑

l

h[l − 2k]c j[l]

d j−1[k] =∑

l

g[l − 2k]c j[l](2.14)

c j[k] =∑

l

(h[k − 2l]c j−1[l] + g[k − 2l]d j−1[l]

)(2.15)

に比べて,リフティングは計算効率がよいことがわかる.実際,Mallatの分解アルゴリズム (2.14)は畳み込み

(h ∗ c j)[k] =∑�

h[� − k] c j[�]

にダウンサンプリングを組み合わせた形で表現できるが,

c j−1[k] = (h ∗ c j)↓[k] = (h ∗ c j)[2k] =

∑�

h[� − 2k] c j[�]

計算結果の半分は捨てられてしまう.さらに,リフティングでは信号の再構成のために双対フィルタ {h[k], g[k]}k∈Z を新たに設計する必要もないため,逆変換の柔軟性においても優れていることがわかる(Fig. 1参照).問題は,よい予測作用素 pとアップデート作用素 uをどのように決定するかである.リ

フティング構成の構造上,どのような pと uを設定しても,逆変換が成り立つことから,設計の自由度は極めて高いといえる.予測の結果を評価するには,詳細成分 d j−1[k]のス

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パース性で議論するというひとつの基準があるが,たとえば,これまでに紹介した予測次数が 1次の場合の一定予測 (2.3)は Haar変換となり,信号が区分的に一定であれば予測は成功したといえる.2次の線形予測(linear prediction)(2.8)は信号を 1次多項式に見立ててそれを補間する形で予測を実行することで,CDF(2,2)フィルタとは異なる計算過程を与える.このように多項式補間を基にした方法を用いれば,3次予測(cubic prediction)の場合は

p(c j,e

)[k] =

−c j,e[k − 1] + 9 c j,e[k] + 9 c j,e[k + 1] − c j,e[k + 2]

16(2.16)

u(d j−1

)[k] =

−d j−1[k − 2] + 9 d j−1[k − 1] + 9 d j−1[k] − d j−1[k + 1]

32(2.17)

で与えらえる.得られる結果は N = 4 次の Deslauriers and Dubuc (DD) ウェーブレット変換のそれと等価となり,関連するスケーリング関数 φ(t) ∈ L2(R)は N − 1次多項式を復元する補間関数となる.任意の次数 N を求めるには,L ≥ 1, N = 2Lにおいてラグランジュの補間法 (Lagrange

interpolation) [18]を基にして

(2.18) pN[k] =

(−1)k+L−12L∏

n=1

(L + 1/2 − n)

(L − k)! (L − 1 + k)! (k − 1/2), −L < k ≤ L

と置き,この結果を利用して

uN[k] =pN[k]

2, N ≤ N

と定めることで得られる.ここで, p[k] = p[−k]である.このラグランジュ補間をもとにしたリフティングの予測 (2.18)を補間予測(interpolaing prediction)と呼ぶが,この方式から得られるフィルタは,既に 3次予測の場合で見たように,N 次の Deslauriers–Dubuc

フィルタ [8, 9]となる.

3. 完全再構成フィルタリフティングを直感的に概観するには空間領域での説明が適しているといえるが,より詳しい構造に触れるためにはフーリエ領域での議論が必要となる.そのための準備として,本節ではまずは Mallat変換のフーリエ領域での表現を考え,次にポリフェーズ表現を導入する.

7

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3.1 Mallatアルゴリズム

信号のフーリエ変換をc j(ω) =

∑k∈Z

c j[k] e−iωk

として,標準的な離散ウェーブレット変換に用いられる Mallat の分解アルゴリズム(2.14)は (

c j−1(2ω)

d j−1(2ω)

)=

1

2M∗(ω)

(c j(ω)

c j(ω + π)

)(3.1)

と表現できる.ここで M∗(ω)はモジュレーション行列(modulation matrix)M(ω)の複素共役であり,双対行列とあわせて

M(ω) =

(h(ω) h(ω + π)g(ω) g(ω + π)

),

M(ω) =

(ˆh(ω) ˆh(ω + π)ˆg(ω) ˆg(ω + π)

)

と定義される.逆変換は (c j(ω)

c j(ω + π)

)=MT

(ω)

(c j−1(2ω)

d j−1(2ω)

)

で与えられるが,信号の再構成を保証するためには完全再構成条件

(3.2)MT

(ω) M∗(ω) = 2I

が満たされなければならない.このようなフィルタの組 {h, g, ˆh, ˆg}を完全再構成フィルタと呼ぶ.

3.2 ポリフェーズ表現

ポリフェーズ表現(polyphase representation)はフィルタバンクを扱う上での極めて効率的な表現のひとつである.基本的なアイディアは信号を偶数と奇数の独立な成分として扱うことであり,これは本質的にリフティングのスプリットそのものである.ローパスフィルタを

he(ω) =∑k∈Z

h[2k] e−iωk, ho(ω) =∑k∈Z

h[2k + 1] e−iωk

と分割して,それぞれのフーリエ変換も同様に分割すれば,h(ω)のポリフェーズ表現

h(ω) = he(2ω) + e−iω ho(2ω)

8

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2

LP

HP 2

+2 2

Fig. 2. ポリフェーズ表現での離散ウェーブレット変換

が与えられる.h(ω)の周期性から

(3.3)

(h(ω)

h(ω + π)

)=

(1 e−iω

1 e−i(ω+π)

) (he(2ω)

ho(2ω)

)= U(ω)

(he(2ω)

ho(2ω)

)

が得られるが,U(ω)−1 を使ってこれを逆に解けば

(3.4)

(he(2ω)

ho(2ω)

)=

1

2

(1 1

eiω ei(ω+π)

) (h(ω)

h(ω + π)

)

であり,関係式

he(2ω) =h(ω) + h(ω + π)

2, ho(2ω) =

h(ω) − h(ω + π)

2 e−iω

を得る.さらに (3.3)より,Mallatアルゴリズム (3.1)は(c j−1(ω)

d j−1(ω)

)= P(ω)†

(c j,e(ω)c j,o(ω)

)

とポリフェーズ形式で表現できる(Fig. 2).ここで,P(ω)† はポリフェーズ行列

(3.5) P(ω) =

(he(ω) ge(ω)

ho(ω) go(ω)

)

のエルミート共役である.Mallatの分解アルゴリズムを利用すれば,ポリフェーズ行列とモジュレーション行列の関係式

P(2ω)† =1

2M∗(ω) U(ω)(3.6)

M∗(ω) = P(2ω)† U(ω)†(3.7)

が導かれる.双対ポリフェーズ行列 P(ω)も双対フィルタ {he, ho, ge, go}を用いて (3.5)と同様に定義

する.双対モジュレーション行列は

MT(ω) = U(ω)

P(2ω)(3.8)

9

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から得られる.信号の再構成は(c j,e(2ω)c j,o(2ω)

)=P(2ω)

(c j−1(2ω)

d j−1(2ω)

)

で与えられるため,従ってポリフェーズ領域での完全再構成条件 (3.2)は

(3.9) P(ω)†P(ω) = I

と表現できる.ここで,P(ω) = P(ω)†T のユニタリ行列の場合は直交(ユニタリ)フィルタが得られ,P(ω) = P†(ω)−1 の場合は双直交フィルタになる.

4. ポリフェーズ領域でのリフティング4.1 一定予測(Haar)

Haar ウェーブレットフィルタ h(ω) = ˆh(ω) = (1 + e−iω)/√

2, g(ω) = ˆg(ω) = (−1 +

e−iω)/√

2のポリフェーズ行列は

P(ω)† =(h∗e(ω) h∗o(ω)g∗e(ω) g∗o(ω)

)=

1√2

(1 1−1 1

)

で与えられる.これは直交行列になっている.前節で見たように Mallat アルゴリズムを使って信号の分解を (

c j−1(ω)

d j−1(ω)

)=

1√2

(1 1−1 1

) (ce, j(ω)co, j(ω)

)

のようにフーリエ領域で定義できるが,ここでポリフェーズ行列が(c j−1(ω)

d j−1(ω)

)=

⎛⎜⎜⎜⎜⎝√

2 0

0 1√2

⎞⎟⎟⎟⎟⎠(1 1

20 1

) (1 0−1 1

) (ce, j(ω)co, j(ω)

)(4.1)

の形に因数分解できることに注目する.つまり,右辺において左から順に対角行列と,対角成分が 1の上三角と下三角行列とに分解できる.直交・双直交行列の行列式は 1であるが,分解後の各行列の行列式も明らかに 1である.これらの行列の性質から,逆行列が必ず存在することにも着目すると,逆変換は(

ce, j(ω)co, j(ω)

)=

(1 01 1

) (1 − 1

20 1

) ⎛⎜⎜⎜⎜⎝ 1√2

0

0√

2

⎞⎟⎟⎟⎟⎠(c j−1(ω)

d j−1(ω)

)

=1√2

(1 −11 1

)=

⎛⎜⎜⎜⎜⎜⎝ ˆhe(ω) ˆge(ω)ˆhe(ω) ˆgo(ω)

⎞⎟⎟⎟⎟⎟⎠ = P(ω) = P(ω)T

となる.

10

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式 (4.1)を一部展開して時間領域に変換して考えると

(c j−1[k]d j−1[k]

)=

⎛⎜⎜⎜⎜⎝√

2 0

0 1√2

⎞⎟⎟⎟⎟⎠⎛⎜⎜⎜⎜⎜⎜⎝c j,e[k] +

d j−1[k]

2c j,o[k] − c j,e[k]

⎞⎟⎟⎟⎟⎟⎟⎠となるが,これは空間領域でのリフティングによる Haar変換 (2.5),(2.3)に一致する(正規化は異なることに注意).つまり,リフティングはポリフェーズ行列を (4.1)の形に分解することに対応しており,左から順にスケーリング,アップデート,予測の各リフティングステップを表している.

4.2 線形予測

線形予測は空間領域において

predict : c j,o[k]→ d j−1[k] = c j,o[k] − 1

2

(c j,e[k] + c j,e[k + 1]

)update : c j,e[k]→ c j−1[k] = c j,e[k] +

1

4

(d j−1[k − 1] + d j−1[k]

)で与えられるが,ポリフェーズ形式で書くと,予測ステップは

(ce, j(ω)co, j(ω)

)→⎛⎜⎜⎜⎜⎜⎝ ce, j(ω)

d j−1(ω)

⎞⎟⎟⎟⎟⎟⎠ =⎛⎜⎜⎜⎜⎜⎜⎝ 1 0

−1 + eiω

21

⎞⎟⎟⎟⎟⎟⎟⎠⎛⎜⎜⎜⎜⎝ce, j(ω)

co, j(ω)

⎞⎟⎟⎟⎟⎠であり,co, j(ω)→ d j−1(ω)に置き換わる.一方アップデート

⎛⎜⎜⎜⎜⎜⎝ ce, j(ω)

d j−1(ω)

⎞⎟⎟⎟⎟⎟⎠→⎛⎜⎜⎜⎜⎜⎝c j−1(ω)

d j−1(ω)

⎞⎟⎟⎟⎟⎟⎠ =⎛⎜⎜⎜⎜⎜⎜⎜⎝1

1 + e−iω

40 1

⎞⎟⎟⎟⎟⎟⎟⎟⎠⎛⎜⎜⎜⎜⎜⎜⎝ ce, j(ω)

d j−1(ω)

⎞⎟⎟⎟⎟⎟⎟⎠により ce, j(ω)→ c j−1(ω)へと置き換わる.スケーリング K =

√2も入れてまとめると,

(ce, j(ω)co, j(ω)

)→⎛⎜⎜⎜⎜⎜⎝c j−1(ω)

d j−1(ω)

⎞⎟⎟⎟⎟⎟⎠ =⎛⎜⎜⎜⎜⎝√

2 0

0 1√2

⎞⎟⎟⎟⎟⎠⎛⎜⎜⎜⎜⎜⎜⎜⎝1

1 + e−iω

40 1

⎞⎟⎟⎟⎟⎟⎟⎟⎠⎛⎜⎜⎜⎜⎜⎜⎝ 1 0

−1 + eiω

21

⎞⎟⎟⎟⎟⎟⎟⎠⎛⎜⎜⎜⎜⎝ce, j(ω)

co, j(ω)

⎞⎟⎟⎟⎟⎠であり,関係式 (3.4)と (3.7)を用いて

⎛⎜⎜⎜⎜⎝c j−1(2ω)

d j−1(2ω)

⎞⎟⎟⎟⎟⎠ = 1

2

⎛⎜⎜⎜⎜⎜⎜⎝√

2 0

0 1√2

⎞⎟⎟⎟⎟⎟⎟⎠⎛⎜⎜⎜⎜⎜⎜⎝1 1 + e−i2ω

40 1

⎞⎟⎟⎟⎟⎟⎟⎠⎛⎜⎜⎜⎜⎜⎜⎝ 1 0

−1 + ei2ω

21

⎞⎟⎟⎟⎟⎟⎟⎠⎛⎜⎜⎜⎜⎜⎜⎝ 1 1

eiω ei(ω+π)

⎞⎟⎟⎟⎟⎟⎟⎠(

c j(ω)

c j(ω + π)

)

=1

2

⎛⎜⎜⎜⎜⎝h∗(ω) h∗(ω + π)g∗(ω) g∗(ω + π)

⎞⎟⎟⎟⎟⎠(

c j(ω)

c j(ω + π)

)

11

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となるから,CDF(2,2)フィルタの伝達関数

h∗(ω) =−ei2ω + 2eiω + 6 + 2e−iω − e−i2ω

4√

2, g∗(ω) =

−1 + 2eiω − ei2ω

2√

2(4.2)

を得る.双対フィルタは ˆh(ω) = −e−iωg∗(ω + π)として h∗(ω)ˆh(ω) + h∗(ω + π)ˆh(ω + π) = 2

を満たすように設計されるが,リフティングの場合は P(ω) = P(ω)†−1 として同様の手順を踏めば完全再構成条件 (3.9)を満たす双対フィルタが容易に得られる.

4.3 ポリフェーズ行列の分解

ポリフェーズ表現での Haarと線形予測の場合における事情を整理すると,リフティングはポリフェーズ行列を以下の形式に因数分解することに対応する.

(4.3) P(ω)† =(K 00 1/K

) m∏i=1

(1 ui(ω)0 1

) (1 0

pi(ω) 1

)

ここで,K � 0は定数であり,pi(ω)と ui(ω)は三角多項式である(より一般性を持たせるため pi(ω)に符号はつけていない).m = 1の場合は Haarと線形予測で見たように補間予測の場合に対応する.この形は逆行列が必ず存在することも明らかである.

(4.4) P(ω)†−1=P(ω) =

1∏i=m

{(1 0

−pi(ω) 1

) (1 −ui(ω)0 1

)} (1/K 0

0 K

)

Daubechies and Sweldensによりコンパクトサポートを持つ(双)直交フィルタ (h, g, h, g)

によって構成されたポリフェーズ行列は,必ず pi(ω)と ui(ω)を要素に持つ対角成分が 1

の上・下三角行列の形 (4.3) に分解できることが知られている [7].したがって,各リフティングステップの行列式は常に 1 であり,もともと(双)直交フィルタで構成されたP(ω)の行列式も 1であることから,リフティングは det P(ω)を変えない変換であることがわかる.また,ポリフェーズ行列の分解過程において,上・下三角行列の対角成分を 1

とすることで,空間領域における偶数成分と奇数成分の置き換え(in-place)演算が実現できる.このような elementary 行列を用いたサブバンド変換は信号処理におけるフィルタバンクの分野では ladder構造 [14,19]として知られており,パラユニタリフィルタバンク方式(paraunitary filter bank implementation)とも呼ばれる.各係数 pi[k], ui[k]はスモールサポート(典型的な係数は 2個)を持ち,ローラン多項式として表現された既存フィルタに対してユークリッドの互除法を用いることで導出される.しかし,多項式の割り算は必ずしもユニークには決まらず,複数の因数分解の形が得られることもある [10, 24].

12

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5. リフティングによるウェーブレットの修正前節では既存フィルタがポリフェーズ領域においてリフティング形式でどのように表現されるかについて述べた.空間領域におけるリフティングの予測,アップデートはポリフェーズ領域で (4.3)の形で表現することができ,その結果離散ウェーブレット変換のパラユニタリフィルタバンク方式での実装方法を与える.本節では既存フィルタに対して予測とアップデートをさらに適用することで,双直交性を保ったままフィルタを修正できるリフティングのもう一つの側面を示す.なおこれ以降用いる予測とアップデートは必ずしも空間領域の概念とは異なる場合もある.このため,予測をリフティング,アップデートを双対リフティングと呼ぶ文献もあるが,本稿では混乱を防ぐためにこれまで通りの名称を採用する.ポリフェーズ行列 P(ω) からフィルタ係数 {h, g} を得るには (3.7) より M∗(ω) =

P(2ω)† U(ω)† とすればよいが,予測によりフィルタは(h∗(ω) h∗(ω + π)g∗(ω) g∗(ω + π)

)=

(1 0

− p(2ω) 1

) (h∗e(2ω) h∗o(2ω)g∗e(2ω) g∗o(2ω)

) (1 1

eiω ei(ω+π)

)となるから,{h, g} → {h, gp}へと修正される.(

h(ω)gp(ω)

)=

(h(ω)

g(ω) − h(ω) p∗(2ω)

)

双対フィルタ {h, g}の場合は (3.8)の MT(ω) = U(ω)

P(2ω)より,予測行列の逆行列を用いて ⎛⎜⎜⎜⎜⎜⎝ ˆh(ω) ˆg(ω)

ˆh(ω + π) ˆg(ω + π)

⎞⎟⎟⎟⎟⎟⎠ =(1 e−iω

1 e−i(ω+π)

) ⎛⎜⎜⎜⎜⎜⎝ ˆhe(2ω) ˆge(2ω)ˆho(2ω) ˆgo(2ω)

⎞⎟⎟⎟⎟⎟⎠(

1 0p(2ω) 1

)

となるから {h, g} → {hp, g}を得る.(ˆhp(ω)ˆg(ω)

)=

(ˆh(ω) + ˆg(ω) p(2ω)

ˆg(ω)

)

同様に,アップデートによりフィルタ {h, g, ˆh, ˆg}は次のような修正を受ける.(hu(ω)g(ω)

)=

(h(ω) + g(ω) u∗(2ω)

g(ω)

),

(ˆh(ω)ˆgu(ω)

)=

⎛⎜⎜⎜⎜⎜⎝ ˆh(ω)

ˆg(ω) − ˆh(ω) u(2ω)

⎞⎟⎟⎟⎟⎟⎠以上をまとめると,

ˆhp(ω) = ˆh(ω) + ˆg(ω) p(2ω)

gp(ω) = g(ω) − h(ω) p∗(2ω)

hu(ω) = h(ω) + g(ω) u∗(2ω)

ˆgu(ω) = ˆg(ω) − ˆh(ω) u(2ω)

(5.1)

13

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であり,行列形で書くと(h(ω)gp(ω)

)=

(1 0

−p∗(2ω) 1

) (h(ω)g(ω)

),

(ˆhp(ω)ˆg(ω)

)=

(1 p(2ω)0 1

) (ˆh(ω)ˆg(ω)

)(hu(ω)g(ω)

)=

(1 u∗(2ω)0 1

) (h(ω)g(ω)

),

(ˆh(ω)ˆgu(ω)

)=

(1 0

−u(2ω) 1

) (ˆh(ω)ˆg(ω)

)(5.2)

となる.したがって,予測により双直交フィルタ {h, g, h, g} は新しい双直交フィルタ{h, gp, hp, g}へと変換され,アップデートの場合は新しい双直交フィルタ {hu, g, h, gu}へと変換される. p(ω)と u(ω)は三角多項式であればどのようなものを設定しても双直交性は失われない.例えば (5.2)の予測の場合において,双直交性(

ˆh(ω)ˆg(ω)

) (h∗(ω) g∗(ω)

)=

(1 00 1

)

は次式より明らかである.(1 p(2ω)0 1

) (1 0

− p∗(2ω) 1

)†=

(1 p(2ω)0 1

) (1 − p(2ω)0 1

)=

(1 00 1

)

アップデートの場合も同様に証明することができる.このように既存フィルタの修正としての側面から眺めた場合でも,リフティングはフィルタの双直交性(完全再構成)を保証するものとなっている.さらに,もし三角多項式を pと uに設定すれば,得られるフィルタは必ず有限になる.ここで興味深いのは,リフティングにより既存フィルタがどのように修正されるかであるが,これについては以下に示す具体例を用いて述べる.

5.1 Lazyウェーブレット

Lazyウェーブレットフィルタは

h(ω) = ˆh(ω) = 1, g(ω) = ˆg(ω) = e−iω

で与えられる.または時間領域では

h[n] = h[n] = δ[n], g[n] = g[n] = δ[n − 1]

である.Lazyフィルタのポリフェーズ行列は明らかに

P(ω)† =(1 00 1

)= I

である.つまり,ポリフェーズ行列の定義より lazyフィルタによるウェーブレット変換はフィルタリングを本質的には何もせず,ただ信号を偶数と奇数にわけるだけである.こ

14

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れは,3節で見たようにフィルタバンクの世界ではポリフェーズ分解として知られていたが,リフティングではスプリットと呼ぶことを思い出そう.ウェーブレットフィルタから得られるスケーリング関数とウェーブレット

φ(t) =∑k∈Z

√2 h[k] φ(2t − k), φ(t) =

∑k∈Z

√2 h[k] φ(2t − k)

ψ(t) =∑k∈Z

√2 g[k] φ(2t − k), ψ(t) =

∑k∈Z

√2 g[k] φ(2t − k)

はデルタ関数 φ(t) = φ(t) = δ(t), ψ(t) = ψ(t) = δ(t − 1/2) となるから,L2(R)に入らない.実際,Lazy フィルタも g(0) = ˆg(0) � 0 となっている.双直交性は満たすが,もちろんRiesz基底にもならない.しかし lazyフィルタをリフティングすることで L2(R)の枠内の双直交ウェーブレットや Riesz基底を構成できることが知られている.以下,例をいくつか示す.

5.2 Lazyフィルタの修正

Lazyフィルタのリフティング(予測)は gp(ω) = g(ω) − h(ω) p∗(2ω)より

gp(ω) = e−iω − p∗(2ω)

で与えられる.ここでたとえば予測作用素として線形予測

p(2ω) =1 + ei2ω

2

を選べば,CDF(2,2)フィルタ (4.2)が得られる(正規化されていないことに注意).

gp(ω) = −1

2+ e−iω − 1

2e−i2ω

このフィルタは h(ω), ˆh(ω)は ω = πで,g(ω), ˆg(ω)は ω = 0においてそれぞれに 2個の零点を持ち,ψ(t), ψ(t)はそれぞれ 2個のモーメント消滅条件

∫ ∞−∞ t ψ(t) dt = 0を満たす.

{h[k − 2l], g[k − 2l]}l∈Z, {h[k − 2l], g[k − 2l]}l∈Z は �2(Z)上の双直交基底であり,ウェーブレットは L2(R)の Riesz基底となることが知られている.このように,L2 の枠をはみ出していたウェーブレットをリフティングすることによって L2 の枠内に入れることができる.ふつうはリフティングによってフィルタが持つ固有の性質を改善したり,新たな特性を付加したりする用途が考えられるが,逆に

p(2ω) = −ei2ω + e−i2ω

2

のように適当な p を選べば,CDF(2,2) フィルタから lazy フィルタ gp(ω) = e−iω を得ることもできる.つまり Riesz 基底のリフティングが必ずしも Riesz 基底となるとは限らない.

15

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φ(t) ψ(t)

φ(t) ψ(t)

Fig. 3. CDF(2,2)ウェーブレット(上)とリフティングされた 4次の DDウェーブレット(下).

Lazyウェーブレットはモーメント消滅を持たないが,CDF(2,2)ウェーブレット ψ, ψはそれぞれ 2個のモーメント消滅を持つため,リフティングによりウェーブレットのモーメント消滅個数を増加できることが確認できる.しかし,モーメント消滅条件は制御できても,リフティングは関数の安定性(stability)や正則性(regularity)までは保証しない.実際,Fig. 3からわかるように,φ, ψはイレギュラーな形をしていることからもこれを裏付けている.しかし,適切なリフティングをさらに繰り返すことによって安定性や正則性も改善できることが知られている.実際,先ほどリフティングした gp(ω)に対してさらに p(2ω) = 1

16

(−ei4ω + ei2ω + 1 − e−i2ω

)として再度リフティングを適用してみる.すると 4次の DDフィルタ

gp2

(ω) =eiω − 9 + e−iω − 9e−i2ω + e−i4ω

16

が得られる.式 (2.16)を用いた場合のように,同様の結果が lazyフィルタと 3次の補間予測 (2.18)を用いることで

gp(ω) = e−iω −(−ei2ω + 9 + 9e−i2ω − e−i4ω

16

)

のように直接得られることにも注意しよう.この DD フィルタは ψ(t) ∈ L2(R) が 4 次のモーメント消滅条件を満たす双直交ウェーブレットフィルタであり,�2(Z)の Riesz基底を生成する.h[k]は対称性 h(ω) = h(−ω)とハーフバンド条件(halfband condition)h(ω) + h(ω + π) = 1を満たすラグランジュハーフバンドフィルタ(Lagrange Halfband filter)[2]となり,φ(t)は 3次多項式を復元する補間

16

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スケーリング関数である.Fig. 3に示すように φ, ψはともにスムースな形をしており,確かにリフティングにより関数の安定性と正則性が向上したように見える.しかし,これは偶然の結果であり,あくまで制御できるのはモーメント消滅条件だけである.この点がリフティング構成によるフィルタ設計の弱点であるといえる.

5.3 Haarウェーブレットの修正

次に Haarのウェーブレット

h(ω) =1 + e−iω

2, g(ω) = −1 + e−iω

のリフティングによる修正を考える.この場合はモーメント消滅の個数は 1である.たとえば,対称で 3個のモーメント消滅を持つためには

p∗(2ω) =−i sinω

2=

1

4

(e−i2ω − ei2ω

)として

gp(ω) = −1 + e−iω −(

1 + e−iω

2

) (e−i2ω − ei2ω

4

)

よりgp(ω) = −1

8

(ei2ω + eiω − 8 + 8e−iω − e−i2ω − e−i3ω

)を得る.これは CDF(1,3)の双対フィルタであり,確かに 3次のモーメント消滅条件を満たす.同様の結果は,lazyフィルタと一定予測に加えて,アップデートを次のように設定して導出できることに注意しよう.

MT(ω) = U(ω)

(1 01 1

) (1 (ei2ω − 8 − e−i2ω)/160 1

)

このように lazyフィルタは P(ω) = I なため,これを初期フィルタとして出発点にすることで,リフティングを繰り返し適用して任意の既存フィルタに到達することができる.もちろん初期フィルタとして Haarやさらに複雑なフィルタを設定することも可能であり,既存フィルタに限らない新たな(双)直交ウェーブレット(フィルタ)を作ることができ,いずれの場合においても双直交性は保証される.この点がリフティング構成の大きな利点のひとつであり,たとえば多次元において非分離型ウェーブレットを構成する際にも有利になる [12, 13, 15].

6. スケーリング関数とウェーブレットのリフティング本節ではリフティングによって修正されたフィルタが関数族 {φ, ψ, φ, ψ}にどのように影

響するのかを述べる.まずは,予測 {h, g, h, g} → {h, gp, hp, g}を考える.hはそのままな

17

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ので φ(t) =√

2∑

k h[k]φ(2t − k)は変わらない.次に ψをフーリエ領域で考えると

ψp(ω) =1√2

gp(ω

2

)φ(ω

2

)

=1√2

g(ω

2

)φ(ω

2

)− p∗(ω)

1√2

h(ω

2

)φ(ω

2

)

=1√2

g(ω

2

)φ(ω

2

)− p∗(ω) φ (ω)

= ψ(t) −∑

k

p[−k] φ(t − k)

となる.ここで gp(ω) = g(ω) − h(ω) p∗(2ω)を使った.一方で,hも予測されているので,φp も予測される.しかし gはそのままなので

ψp(t) =√

2∑

k

g[k]φp(2t − k)

を得る.最後に φp は ˆhp(ω) = ˆh(ω) + ˆg(ω) p(2ω)より

ˆφp(ω) =1√2

ˆhp(ω

2

)ˆφp(ω

2

)

=1√2

ˆh(ω

2

)ˆφp(ω

2

)+ p(ω)

1√2

ˆg(ω

2

)ˆφp(ω

2

)

=1√2

ˆh(ω

2

)ˆφp(ω

2

)+ p(ω) ˆψp (ω)

=√

2∑

k

h[k] φp(2t − k) +∑

k

p[k] ψp(t − k)

と修正される.2行目から 3行目への展開は右項が ˆψp に等しいという事実を使った.まとめると,予測によって {h, g} が修正されるので,双直交ウェーブレット基底{φ, ψ, φ, ψ}は双直交性を保ったまま新たな双直交基底 {φ, ψp, φp, ψp}へと修正される.

φ(t) = φ(t)

ψp(t) = ψ(t) −∑

k

p[−k] φ(t − k)

φp(t) =√

2∑

k

h[k] φp(2t − k) +∑

k

p[k] ψp(t − k)

ψp(t) =√

2∑

k

g[k] φp(2t − k)

(6.1)

18

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アップデートの場合は {h, g}が対象なので {φ, ψ, φ, ψ} → {φu, ψu, φ, ψu}となる.

φu(t) =√

2∑

k

h[k] φu(2t − k) +∑

k

u[−k]ψu(t − k)

ψu(t) =√

2∑

k

g[k] φu(2t − k)

φ(t) = φ(t)

ψu(t) = ψ(t) −∑

k

u[k] φ(t − k)

(6.2)

初期フィルタ {h, g, h, g}が有限で,さらに {p[k], u[k]}も有限であれば,得られる関数系はコンパクトサポートになる.

6.1 モーメント消滅条件

アップデートは {h, g, h, g} → {hu, g, h, gu}となるので,gは変化せず g(0)における零の個数は変わらない.一方で (6.2)により φ→ φu へとアップデートされているため,ψも異なる関数 ψu へと修正されている.しかし,ψu の消滅するモーメントの個数は実はアップデートされる前の ψと同じになっている.これは修正された φu の性質がウェーブレットのモーメント消滅条件には影響を及ぼさないことを意味している.実際に g(0)の零の個数が変わっていない事実もこれを裏付けている.従って,アップデートによって改善(修正)される関数系は主に φと ψであり,ψu に関してはあくまで副次的な効果しか期待できないことが示唆されている.予測に関しては,ψと ψp において同様のことが成り立つ.

7. 信号解析への応用リフティングをフィルタバンクにおけるサブバンド分解の視点から眺めると,Mallat変換が畳み込みとサブサンプリングを用いるのに対し,リフティングは信号のポリフェーズ成分の in-placeな乗算と加算のみで変換を実装する極めて効率的な演算方式であるといえる.O(N)を上回る演算効率が期待できるため,冒頭で述べたように JPEG2000での採用や,無線通信におけるMIMOシステムの効率的な検出法 [17]などの演算効率が要求される場面で応用されている.また,JPEG2000では,リフティングの構造的な逆変換の容易さを利用した,丸め誤差を打ち消す整数型ウェーブレット変換 [3]も採用されている.なお,Mallat変換とリフティング構成を直接組み合わせた Mallat変換の拡張も考えられるが,実際には Mallat変換に用いるフィルタもリフティング構成で実装できることから本質的に (4.3)と同様であるため説明は省略する.詳細は Appendix Aを参照されたい.リフティングのもう一つの側面は,フィルタ設計としての用途であるが,これには様々な選択の自由度があるといえる.予測 p は {g, h} に作用し,アップデート u は {g, h} をアップデートする.lazyフィルタから出発して望むフィルタの性質を満たすまでリフティ

19

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ングを繰り返し適用してもよいし,既存の双直交フィルタを用いて任意の修正を行う方法もある.問題は目的に応じた pと uをどのように設計するかである.同時に,リフティングを何回適用するかについても特に制限はない.本稿では補間予測 (2.18)に基づき,予測とアップデートを 1度だけ適用する (4.3)における m = 1の場合の 2ステップの形を扱ったが,これをさらに 3ステップに拡張することで,より柔軟で対称性に優れた双直交フィルタの設計が可能となる [11].いずれにせよ,どのような選択をしてもフィルタの双直交性(完全再構成)は保証されるため,信号の加工や圧縮など,逆変換が必要な実用的な場面においてリフティング構成は極めて有利な手法であるといえる.実際,リフティング構成の双直交性と柔軟性を利用して,信号の特性に応じた適応的なリフティングを行う非線形変換の画像圧縮方式も提案されている [4].しかしながら,関数解析の立場からすると,リフティングによって新たに得られた関数族の双直交性は保持されていても,それらの性質については不明瞭な点が多い.5節でも触れたように,例えば基底関数が Riesz 基底になっているかは保証されず,そもそもL2(R)に入るかも不明である.また,ウェーブレット {ψ, ψ}のモーメント消滅条件は制御はできても,{φ, ψ, φ, ψ}に対する安定性や正則性に具体的にどのような影響を及ぼすかについては未だ明らかになっていない.このように,フィルタ設計,信号処理,関数解析といったそれぞれの分野において多岐にわたる未解決な問題があり,これらの点について参加者からの幅広いご意見を伺いたい.

Appendix A. Mallat変換のリフティング構成式 (5.1)のフーリエ逆変換は

hp[n] = h[n] +∑

k

g[n − 2k] p[k]

gp[n] = g[n] −∑

k

h[n − 2k] p[−k]

hu[n] = h[n] +∑

k

g[n − 2k] u[−k]

gu[n] = g[n] −∑

k

h[n − 2k] u[k]

を得る.予測されたフィルタのMallatアルゴリズムは

c j−1[k] =∑

n

h[n − 2k] c j[n]

dpj−1

[k] =∑

n

gp[n − 2k] c j[n]

20

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2

c

2

+

2 21/K

K1/K

K+

+

j-1

dj-1

cj cj

-

-

Fig. 4. リフティングによるMallat変換の拡張

となる.ここで

gp[n] = g[n] −∑

k

h[n − 2k] p[−k]

であるから,詳細成分 d j−1[k]は

dpj−1

[k] =∑

n

⎛⎜⎜⎜⎜⎜⎝g[n − 2k] −∑

k

h[n − 2k − 2k] p[−k]

⎞⎟⎟⎟⎟⎟⎠ c j[n]

=∑

n

g[n − 2k] c j[n] −∑

n

⎛⎜⎜⎜⎜⎜⎝∑k

h[n − 2k − 2k] c j[n] p[−k]

⎞⎟⎟⎟⎟⎟⎠= d j−1[k] −

∑n

p[k − n] c j−1[n]

となる.同様にhu[n] = h[n] +

∑k

g[n − 2k] u[−k]

を使って,アップデートされた近似成分

cuj−1[k] =

∑n

hu[n − 2k] c j[n]

= c j−1[k] +∑

n

u[k − n] d j−1[n]

が得られる.したがって,リフティングされた Mallat 変換は以下のように計算される.まず最初に

通常のMallatアルゴリズムを信号 c j に適用し,展開係数 (c j−1, d j−1)を得る.次に,得られた結果にそれぞれリフティング(予測,アップデート)を適用する.

cuj−1[k] = c j−1[k] + d j−1 ∗ u[k]

dpj−1

[k] = d j−1[k] − c j−1 ∗ p[k]

この構成はMallat変換にリフティング操作を加えただけなので,逆変換

c j−1[k] = cuj−1[k] − d j−1 ∗ u[k]

d j−1[k] = dpj−1

[k] + c j−1 ∗ p[k]

21

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が成り立つのは明らかである.既存フィルタをそのまま利用する場面において,それをリフティングによって修正したい場合にはこのような実装方法が役に立つが,演算効率を要求するならユークリッドの互除法を用いて予め得たフィルタを (4.3)の形で実装する方式の方が適しているといえる.

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22

Proceedings of the OKU & ISM 2014 Workshop on Wavelet Theory and its Applications to Engineering28

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[23] W. Sweldens and P. Schroder, Building your own wavelets at home, ACM SIGGRAPH

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[25] 山田道夫,第二世代ウェーブレットの構成法と応用,京都大学数理解析研究所講究録,第 1622巻,pp. 37–46,2009年

藤ノ木健介 (東海大学理学部情報数理学科)

〒259-1292 神奈川県平塚市北金目 4-1-1

E-mail: [email protected]

23

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�����ウェーブレットを用いたリフティングスキームによる複素数離散ウェーブレット変換

章 忠 � 嶋末昂祐 �

戸田 浩 � 三宅 哲夫 �

� 豊橋技術科学大学工学部 � 豊橋技術科学大学大学院

概要� 複素数離散ウェーブレット変換 ������ は完全シフト不変性の特性を持つ離散ウェーブレット変換の一種である.���� は実数部と虚数の2つで構成されているために,計算量が通常の離散ウェーブレット変換の2倍以上となっている.計算量を削減する方法として,計算手法を従来の多重解像度解析からリフティングスキームへと変更することは有効であると考えられる..リフティングスキームはこれまでコンパクトサポートのウェーブレットにのみ対応しているとされていた.本研究では,コンパクトサポートのない��� ウェーブレットでのリフティングスキームを設計し,���� に適用させ変換処理の高速化を図る.さらにこの手法の問題点と改善について議論する.

������� ���� � ������ �������� �� �� �� ������ �������� ������

����� ������ ���� �� �����

� ���� ����� ����� � ����

��������� �� ���� �� �� ������������������ ������ �� �������� �� ���� �� �� ����������

��������� ��� ������ ��� ��� ������� � ����� � ������ ���� �� ��� ���� �������

�������� �� ���� � ��������� ���� ������ �� ���� ��� � ���� �� ���� ���� �� �� ����� � ���!

���� ���� �������� ��"#� ���� ��� ��� �� ������� � �� �� �� ��� ������ �����

�������� �� ��� ���� ������ ��� �� �� �� � ���� � ��� �� � � �������� ��� ��� �������

� ����� � ������ �� � � �� � �� ��� ���� ������ ��� ��� �� ������ ���� ��� �������

������ ������ �� ��� �"#� $����� � ��� ������� ������ �� ���� �� �� ��� ���� �� ���

��� ���� ������� � ��� �� ��������� �� ���� ���� ��� �� ����� ��� ������� ������

%��� �� ��� ���� �������� ����� ��� ��� ���� � ������� � ��� �� �� ������� ����!

���� ���� ������ �� ��� ���� ���� �� ��� ���� ��������

�� はじめに

フーリエ変換やウェーブレット変換に代表される周波数解析は近年,音声のノイズ除

去,音源分離や画像圧縮,電子透かしなどに応用され,その有用性が確認されている ���.

なかでも戸田,章ら ��� �� が提案する複素数離散ウェーブレット変換 ���� � ����� �

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kjc ,

kjc ,2�

kjd ,2� kjc ,2�a

2�b

2�a

b

kjc ,1�

kjd ,1�

2�2� g

2� h

2� g

2� h

kjc ,1�

kjd ,1�

Decomposition Reconstruction���� �� ��� � �� ���� �������� ���� ����������

������� ������ �   ����� は,完全シフト不変性を有し,実数部と虚数部のマザー

ウェーブレット ������� �������� ���は無限長である�����ウェーブレットを基礎に構

成されている.���� の計算には,一般的に多重解像度解析 ��������������� ������

����が用いられるが,フィルタ処理後にダウンサンプリングを行うため無駄な計算が多

い ���.一方,高速処理を実現する手法として,フィルタ処理の前にダウンサンプリング

を行うリフティングスキーム ������� !�� �� � �がある �"�.しかし � はコンパクトサ

ポートを持つ有限長の実数ウェーブレットのみに適用され,複素数やコンパクトサポート

を持たない無限長のウェーブレットには適用例がない.

本研究では,上記の�����ウェーブレットを基礎に構成された ����に,リフティン

グスキームを適用し,完全シフト不変性を有しながら変換処理が高速な離散ウェーブレッ

ト変換の実現を目的とする.

�� 複素数離散ウェーブレット変換とリフティングスキーム

��� 複素数離散ウェーブレット変換の吟味

離散ウェーブレット変換 ���の高速アルゴリズムは,双直交ウェーブレットの特性を

生かし,���の理論から導かれたものである ���.双直交ウェーブレットの�� ����と

その双対ウェーブレット #����の間には,以下のウェーブレット方程式が成立する.

���� ��

���

����$� � ���$%&�

#���� ��

���

��� #��$� � ���$%$�

ただし ����はウェーブレット数列,����は双対ウェーブレット数列,また ����, #����はそ

れぞれ ����, #����に対応するスケーリング関数と双対スケーリング関数で,これらの間に

は次のツースケール関係 ��'��!��� ��������が成立する.

���� ��

���

����$� � ���$%(�

#���� ��

���

��� #��$� � ���$%��

$

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ただし数列 ����はツースケール数列,����は双対ツースケール数列と呼ばれている.ところで本論文で扱うのは直交ウェーブレットを用いた ��� であるので,ここか

らは直交ウェーブレットに限定して話を進める.直交ウェブレットは自己双対のため,����������,����������,������,������ となることが知られているので,式 ����~����の

式は,式 ����,�����の �式に集約される.また数例 ����と ����の間には

�� � ���������������

が成立する.また ����はハイパスフィルタの特性,数列 ����はローパスフィルタの性質を持つ.そして以下に述べる高速アルゴリズムに必要な分解数列 ����,����,および再構成数列 ����,����は次のように求まる.

��� � �� ������� �� �

������ �� �

����� �� �

����

直交ウェーブレットの場合,����がわかれば,式 �����と ��� �により必要なすべての数列

が求められる.また代表的な多くの直交ウェブレットの ����は,そのウェーブレットの提案者により公開されている � �.なお ����,����の特性を受け継いで,����と ����はハイパスフィルタ,���� と ����はローパスフィルタの特性を持つ.図 に ��� による高

速アルゴリズムの分解と再構成ツリーを示す.ただし符号 � �はダウンサンプリングの操

作,� �はアップサンプリングの操作を示す.また図 に示した分解ツリーに沿う信号の

分解計算は式 �����と式 �����によって再帰的に行われる.

� ��� �

���

������ ����������

��� �

���

������ ����������

ただし ��� はウェーブレット係数,� ��� はスケーリング係数であり,添え字 はレベル

� � �� ��� � � � �,� は各レベルに並べられた係数の順番を表す整数である.最初の ����

は,解析対象の離散信号 �� � � ���を用いて ���� � �� としたり,���節で後述する複素数

離散ウェーブレット変換では,解析対象の離散信号の補間処理により求める.また,信号

の再構成は � ���, ��� から図 に示した再構成ツリーに沿って次式により再帰的に計算さ

れる.

� ����� �

���

������ ��� �

���

����� ��������

以上のようにして式 �����に示すよう,任意レベル のウェーブレット係数 ��� は,係数

� ����� を用いて計算される.さらに深いレベルの係数は,同様の処理を再帰的に行って求

められる.また,逆変換も同じく再帰的な処理となる.

図 �に示すのは式 �����と �����による分解計算においてハイパスフィルタ ����とローパスフィルタ ����により周波数領域を分割する模式図である.ただし図 ����は分解レベ

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2/Nf

Am

plitu

deA

mpl

itude

Niqst Frequency

(a)Level-1

(b)Level-2

Nf

4/Nf 2/Nf Nf

���� �� ����� � ��� ����� �� ����� �������� ���� ��� �����

ル ��,���は分解レベル ��の場合である.ここで図 �と図 �を合わせて信号の分解過程

を説明する.まずレベル �のスケーリング係数 ������は,�からナイキスト周波数 �� まで

の解析可能な周波数成分を持つこととする.レベル ��の分解では,� � �� 周波数領域を

����と ����により ����で �分割し,スケーリング係数 ����� が � � ����の周波数成分 �低

周波成分�,ウェーブレット係数 ����� が ���� � �� の周波数成分 �高周波成分�を持つこと

となる.そしてダウンサンプリングを行い,スケーリング係数 ����� のナイキスト周波数

が �� から ���� にシフトしていく.次にレベル ��の分解においては,����� の � � ����

周波数領域を ����と ����により ����で �分割し,スケーリング係数 ����� が � � ����の

周波数成分,ウェーブレット係数 ����� が ���� � ���� の周波数成分を持つこととなる.

レベル ��と同様にダウンサンプリングの操作によって ����� のナイキスト周波数も ����

から ����にシフトする.このようにして,従来オクターブバンドパスフィルタ特性を有

する �で行った分解は周波数領域 �分割フィルタとダウンサンプリング操作を繰り返

し行うことにより実現される.

��� 複素数離散ウェーブレット変換の計算法

��章でも述べたように,��による高速計算アルゴリズムにはダウンサンプリングの

操作があるため,それにより � のシフト不変性が欠如する.この欠点を改善しながら

も,従来の � と高い互換性を保ち,高速処理,かつ完全再構成を有する手法として,

複素数離散ウェーブレット変換 �������� �������� ������ �������� � �� �が提案さ

れている � !.著者ら ��!は,�� においてスケーリング関数の実数部と虚数部の形状

が完全に一致し,かつ ���サンプルずれた状態において,複素数ウェーブレットの実数部

と虚数部は完全な "������変換ペアを形成し,かつ完全なシフト不変性が達成されること

を証明した.そしてこのシフト不変性条件に基づいた複素数ウェーブレットの設計法 �#!

および高速計算法 �$!を提案した.

Proceedings of the OKU & ISM 2014 Workshop on Wavelet Theory and its Applications to Engineering34

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ここでは,その計算法を述べる.����の計算は複素数のマザーウェーブレットの実

数部 �����と虚数部 �����による ���の並列処理で行われる.そのためには最初に,レ

ベル � のスケーリング係数の実数部 � �

���,虚数部 � �

���を用意しなければいけない.そこ

でスケーリング関数の実数部 ���� � ��,虚数部 ���� � ��を用いて補間関数 ����を定義し,

解析対象の離散信号 �� を補間してスケーリング係数 � �

���,� �

���を求める.次に � �

���,� �

���

に対してそれぞれ従来の ���の分解アルゴリズムを実行し,���� を完了する.また

逆変換は再構成アルゴリズムにより実行する.

それでは具体的な手順を以下に述べる.まず補間関数 ����を次のように定義する.

���� ��

���

������ ���� � �� ��

���

������ ���� � ������

次に離散信号のインパルス信号 Æ� は

� �

�� � � � �� � � � �

����

と定義されるが,これを用いた次の方程式

� �����

�� ��� � �����

を解き,式 ���が整数 �について満足する数列 ����を予め求めておく.すると解析対

象の離散信号 �� は次のように,����により補間される.

� ��� �����

��

���� � ��� �

��

����

�� ��������

すなわち式 ���� の � ���において � ��� � ��(�:整数)が成立し,解析対象の離散信号

�� を補間する.なお式 ���� により得られた補間結果は,スケーリング関数 ���� � ��,

���� � �� の各成分に分配しておく必要がある.式 ���� に式 ���� を代入し,スケーリ

ング関数の実数部 ���� � ��,虚数部 ���� � ��の,それぞれのスケーリング係数の実数部

� �

���,虚数部 � �

���としてまとめると,補間の式は次のように表される.

� ��� �����

� �

��� ���� � �� �

����

� �

��� ���� � ������

� �

��� ��

����

������ ��

����� �

� �

��� ��

����

������ ��

�������

なお ����� ウェーブレットを元に設計された ��� 複素数ウェーブレットの場合 ���,式

����の補間関数 ����に関して ���� � Æ� が成立する.したがって式 ���,����に示し

Proceedings of the OKU & ISM 2014 Workshop on Wavelet Theory and its Applications to Engineering 35

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た補間の作業が不要になり,式 ������,������の ��� を解析対象の離散信号 �� に置き換え

た式により,スケーリング係数の実数部 � ����,虚数部 � �

���が求まる.

そして ��の分解計算は,� �� �の高速アルゴリズムを利用して実数部と虚数部を

それぞれ次のように �の分解公式で行う.

����� ��

���

�������

������ � ��

��� �

���

�������

������������

����� ��

���

�������

������ � ��

��� �

���

�������

������������

ただし �����,���

��は実数部の分解数列,���

��,���

��は虚数部の分解数列である.続いて再

構成式は

������� ��

���

�������

���� �

���

�������

����������

������� ��

���

�������

���� �

���

�������

����������

と表せる.ただし �����,���

��は実数部の再構成数列,���

��,���

��は虚数部の再構成数列で

ある.なお ��������ウェーブレットなどの直交ウェーブレットを元に設計された複素

数ウェーブレットの分解・再構成数列は文献 ���に,��� 複素数ウェーブレットの分解・

再構成数列は文献 ���に公開されている.

以上のように計算される �� は以下の式で表せる.すなわち � の実数部 �����,

虚数部 �����を用いてレベル の 番目ウェーブレットの実数部 ��������,虚数部 ��

������は

�������� �

�� ��

��� �� � �� �������� �

�� ��

��� �� � �������

と表せる.またスケーリング関数の実数部 �����,虚数部 �����を用いて,レベル の 番

目のスケーリング関数の実数部 ��������,虚数部 ��

������は

�������� �

�� ����� �� � �� ��

������ ��� ����� �� � �������

と表せる.解析対象の離散信号 �� のレベル ������ � � � � �(� � �)における ��は,式

������,������の分解アルゴリズムで得られた係数を用いて以下のように変換される.

� ��� �

���

���

���

�������

������� � ��

�����������

���

�������

������� � ������

�������

�������

なお � ��� � ��(�:整数)が成立し,式 ������で表される関数 � ���は離散信号 � ���を補間する.

Proceedings of the OKU & ISM 2014 Workshop on Wavelet Theory and its Applications to Engineering36

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���� �� ��� ��� � ��� ������� ����� �������

��� �����ウェーブレットの構成

直交ウェーブレットの�����ウェーブレットのスケーリング関数を時間方向に任意に

平行移動させたものは新たに直交ウェーブレットのスケーリング関数となる性質により,

�����ウェーブレットのスケーリング関数を基本とした,完全シフト不変性を持つ複素数

ウェーブレットの設計方法が提案された ���.このスケーリング関数の実数部 ����,虚数

部 ����はシフト不変条件を踏まえ,式 ���,�� のように �����ウェーブレットの

スケーリング関数 ����より求められる.

���� � ���� � ������

���� � ���� � �� ��

���

式 ���,�� より,式 ���,���の各トゥースケール数列 ���,��

�が求まる.

���� ���

� � ��

����

���� � � ��

� � �� � ��

����

式 ���,�� にある定数 �� の値を変更することで,様々な形状の完全シフト不変な複

素数ウェーブレットを得ることが可能である.本研究では �� � �の場合を用いる.この

とき,マザーウェーブレットの実数部 ����,虚数部 ����は ���� �に示すように対称と反

対称の形状となる.

��� リフティングスキームによる�

図 � には �������� � � のリフティングスキームによる ��� の高速計算法のアルゴリ

ズムを示す.図中のリフティングスキームによる分解計算における破線に囲まれた部分の

動作は,図 �の������の高速アルゴリズムによる破線に囲まれた部分と同等であるが,そ

の計算法は ������のものとは異なり,ダウンサンプリングを先に行い,その後にフィル

タ処理を行う.なお図 �における分解計算の各モジュールの処理は以下の通りである.

Proceedings of the OKU & ISM 2014 Workshop on Wavelet Theory and its Applications to Engineering 37

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Nkj ,�

kjc ,1�

kjd ,1�

Split Predict Update

+

kjc ,

0,kj�

0,kj�

1,kj�

1,kj�

�E/1

Merge

+

Update Predict kjc ,

�E

�E

1,kj�

1,kj�

0,kj�

0,kj�

Decomposition

�E/1

Predict Update

+N

kj ,�

1,�Nkj�

1,�Nkj�

group 1 group N

+

Update Predict

Nkj ,�

Nkj ,�

1,�Nkj�

1,�Nkj�

Reconstruction

group N group 1

���� �� ��� � �� ���� ������� ������

�� �����:入力信号 �� ����を偶数列 ���

����,奇数列 ���

����に分解する.

��

��� � � ����� ����� � � ���������

� � �����:偶数列 ��������

�(� � �� � � � � ��,ただし � � �:整数)を用いて奇数列を更

新する�

���� ����� � ������� ��

��������

����� � � � �� � � � � ��

ただし数列 ������は �組目の � �����フィルタである.

�� ������:奇数列 �������を用いて偶数列を更新する.

����� ����� � ����

��� �

������������ � � �� � � � � ��

ただし数列 ������ は � 組目の ������ フィルタである.なお � ����� フィルタと

������フィルタは,図 �に掲げたように,通常,複数組により構成される(滑らか

な形状の��ほど組数が多い).すなわち,これらが � 組 �� � �:整数�の場合,

上記の �と ��の処理を,�の値を �から � まで �つずつ増加させ,� 回ほど繰り

返すことになる.

�� エネルギー正規化:上記の � 回目の処理で得られた �������,���

����のエネルギーを正

規化し,以下の �� ������,�� ������を得る.

� ����� � ������� � � ����� � ���

���������

さらに図 �の分解計算を式 �����の �� ������に繰り返し適用することで,任意レベルまで

計算可能である.

再構成の計算は分解計算の順番を逆にし,演算子とフィルタも逆にして以下の計算を行

う(ただし以下の �,��の処理は,�の値を � から �まで �つずつ減少させ,� 回ほど

繰り返す).

�� エネルギーの調整:

����� � � ��������� ��

��� � � ������������

Proceedings of the OKU & ISM 2014 Workshop on Wavelet Theory and its Applications to Engineering38

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����� �� ���� � ����� � ����� ��� �����

� �� � �

����

���������

����

�������� �������

����

�������� ���������

����

�������� ��������

����

��������� ��� ������

����

���� �����

��� �� ������ �����

�� ������:偶数列の更新

���� ������� � �

���� �

�������

������ � � �� �� � � � ��

�� �����:奇数列の更新

���� � ������� � ��

��� �

���������

����� � � � �� �� � � � ��

� �����:偶数列と奇数列から �� ����を再構成する.

� ��� �

�� ���� � ��

���� � � ��

� ������ � ������ � � �� � �

��:整数�������

リフティングスキームではコンパクトサポートを持つウェーブレットにのみ対応して

いるという制限があるが,従来のウェーブレット変換よりも省メモリで高速な演算が可

能である.表 � には直交ウェーブレット ������� ��� に対応するリフティングスキーム

の �����フィルタと ������フィルタの例を示す ����.通常,�����フィルタ,������

フィルタ等は,設計者により公開されている.

表 �のフィルタ係数を使用した,任意信号に対するリフティングスキームは,������の

高速アルゴリズムによる ���と同等の解析結果となるが,リフティングスキームの演算

ではダウンサンプリングの後にフィルタ処理を行うため,掛け算の数が半分以下となり,

高速化される.また,リフティングスキーム は �����と ������の組み合わせや正負の

符号を変更することで所望の ���を実現することが可能である.しかし,リフティング

スキームではコンパクトサポートを持つウェーブレットにのみ対応しているという制限が

ある.本研究では,�����と ������の組み合わせと正負の符号との変更ができるという

特徴を利用し,����� ウェーブレットにおけるリフティングスキームのフィルタ設計を

行う.

Proceedings of the OKU & ISM 2014 Workshop on Wavelet Theory and its Applications to Engineering 39

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���� �� ������ �� �������� ������ ��������

�� リフティングスキームを用いた ����の実現

��� リフティングスキームのフィルタ設計

����� ウェーブレットの特性を保つリフティングスキームを構成する手順を以下に示

し,そのフローチャートを ����に示す.ここで,このフローチャートに沿って決系方法

を述べる.

����� フィルタ係数の算出

トゥースケール数列 � �� �を用いて式 ����� ���よりローパスフィルタ数列 � ���およびハイパスフィルタ数列 � ���を求める.

�� ������� �� �

������ ��� � � � ���

ただし,�� � �������� である.以下の計算では,� ���と � ���によらず同じであるので,� ���を例として述べる.次に,式 ����に示すように � ���の偶数列の �変換 ����と奇数列の �変換 ����に分割

��

Proceedings of the OKU & ISM 2014 Workshop on Wavelet Theory and its Applications to Engineering40

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する.����� �

������

� ����� ��

��������

� � � ��

ここで ����� は �� 個の係数,����� は �� 個の係数で構成される.ここで式 ����� により

�����,�����を定義する.

����� ����� � ������ ����� � ������

最初は整数 � � �に設定して,式 �����を満たす商 �������と余り ������を求める.このと

き数列 �����の最高次数と最低次数の項を消去するように算出する.

����� ����� � ������������ � �������

そして,式 �����により �������,�������を求める.

����� ������� � ������ ������� � ������

ここで �������≠ �の場合は,整数値 �を �増やして式 �����の処理を行う.しかし計算結

果が ������� � �であれば計算を終了する.この場合,最終的な �������は定数となり,式

�����により を定義する.

����� � ��������

 以上の作業で得られた �����の総数は ��個となり,�� ���係数,�� ���係数のそれぞ

れの �変換 �����,�����は以下の式 ����,����のように求めることができる.

����� � ��������� � �� �� �� ���� ��������

����� � ������� � �� �� �� ���� ��������

なお,ここで �����の総数は偶数となる必要があり,偶数でない場合は �� の数を調整し式

�����から再度,計算を行う.

����� フィルタ係数の最終項 ��� の算出

�����と から予想される �����を式 �����に示す.

����� ������

������ ������

����� ������

��

������

������ �� �

� � �� ��

��

ここで,������,��

����は右辺を計算することで求められる.そして,式 �����を満たす ����

の導出を行う.

����� ���� �

������ ���������� �����

�� �����

�� ����� �

��

��

Proceedings of the OKU & ISM 2014 Workshop on Wavelet Theory and its Applications to Engineering 41

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���� �� ������ �� ��� ����� ��� �� ����� � � ��� ��� �����

����� �� ������ ����� � ��� �� ���

����� � ��� � ������ ������� �� ���� �� !���"��� ���� #�$%

&' (''�' )**�(

+' &(�, )**��

-� **�� )**�(

(� �.�� )*-�,

& �,�� )++�'

' ,.�' )�(�&

ただし,ハイパスフィルタ数列 �� の偶数列を �変換したものを �����,奇数列を �変換し

たものを �����とし,式 �����にこれらの変数を代入すると,式 �����のように ����を求め

ることができる.

����� ���� � ����������� � ��

�������

以上のようにして算出した ����はマザーウェーブレットと同じ長さの多項式となる.こ

こで計算処理数を削減するために,����の最高次数と最低次数から両端を同じ項数だけ削

減することができる.����の項数を削減したものを �����とし,������を式 ����のように

定義する.

���� ������ � ��������

これらのフィルタを用いた,分解と再構成の模式図を �� ��に示す.

����� ������の項数削減

������ の項数を削減した結果を調べるために,実際にウェーブレット変換処理を行い,

その処理時間と解析結果のウェーブレット係数を比較する.解析精度の比較は,���と

リフティングスキームでの,レベル- � のウェーブレット係数 � - �で行う.各項数ご

との処理時間と解析精度を対応させた表を �������に示す.計算処理時間では,������ 最

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���� �� ����� ������� �� ��� �� �� �������� ����� ��������

大の項数である ��項での処理時間を ����とし各項数での処理時間を記載する.一方解

析誤差の比較では,������ 項数を削減しても解析精度を維持しているのは �� 項までであ

り,それ以降は解析精度が不安定になっている.以上のことから実際にフィルタ設計で用

いる ������の項数は解析精度を維持しながら,最も計算処理時間の短い ��項で行うこと

とする.

�� リフティングスキームを用いた ����

��ウェーブレットを用いた複素数離散ウェーブレット変換 � ���� がシフト不変

性を有していることの実証実験とその評価,および計算量の評価を行う.

��� シフト不変性の検証

�����には設計された ��ウェーブレットを用いてシフト不変性を検証した結果を示

す.ただし,シフト不変性を検証するために入力信号を時間軸上で � サンプルずつシフ

トさせ,レベル�� でのウェーブレット係数だけ抽出して再構成した波形の変動を観察す

る.入力信号は振幅 �のインパルス信号とする.�����の上段,中段の抽出波形は,実数

部,または虚数部のみから抽出したもので,信号のシフトにより抽出波形に変動が生じて

いる.しかし,�����の下段の ���として抽出したものは,信号のシフトによる抽出波

形の変動が抑えられている.

次に �����には,� �- ��…�- �の各分解レベルでのウェーブレット係数を再構成し,

エネルギの総和を計算した結果である.ただし,�������� はフティングスキームによる

���の解析におけるエネルギ-変動で,���は ���の場合のエネルギの変動である.

ここでは、入力信号は振幅 � のインパルス信号とし,� サンプルずつシフトさせてエ

ネルギの変動を算出する.それらのエネルギ-変動を観察し,シフト不変性を確認して

いる.�������� と ��� を比較してわかるように,リフティングスキームによる ��� の

��

Proceedings of the OKU & ISM 2014 Workshop on Wavelet Theory and its Applications to Engineering 43

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(a)�CDWT�by�Complex�Meyer�wavelet (b)�DWT�by�Meyer�wavelet����� �� ���� ���� ��� �� �� ���� ���� ��� ������� ��� �� ��� ����� ��� ������

解析におけるエネルギ変動は,エネルギ最大変動率はレベル- �で ��� � ��- ��となっ

た.また ������に示す実数部のみのリフティングスキームでの解析(これは実質的には

����ウェーブレットを用いた ���の解析に等しくなる)では,エネルギ�最大変動率

はレベル- �� での ������となった.参考までに �� による ���� のエネルギ最大

変動率を調べたところ,レベル- �での ��� � ��- ��であった.以上のように, ��と

遜色ないエネルギ�変動率であることから,リフティングスキームを用いた ����のシフ

ト不変性を確認した.

��� 計算量の比較

計算量は任意の分解レベルまで分解処理を行う際の実際の計算量で比較を行うことと

する.

実際の計算ではコンピュータ上では加算・減算と乗算・除算で処理の重みが異なるこ

とから,加算もしくは減算 �回と乗算もしくは除算 �回で計算量1と定義して計算量 �

を算出する.計算量 � のリフティングスキームでの ���� に対応する式を式 ���� に,

��に対応する式を式 ����に示す.

���� ��� � ��� � � � ��

� ��

���

����

���� ���� � ���

� ��

���

������

ただし,入力信号の長さを �,ウェーブレットの長さを �,分解レベルを �,�����の項の

長さを � と定義する. ��の計算処理でレベル ��- �まで分解するために必要な計算

��

Proceedings of the OKU & ISM 2014 Workshop on Wavelet Theory and its Applications to Engineering44

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量を ����として,各レベルまで分解するために必要となる計算量の割合をプロットした

ものを �����に示す.�����から ����の項数が ��項の場合は従来の計算量の約 ��ま

で削減されていることがわかる.

�� まとめと今後の課題

本研究では,コンパクトサポートを持たない�����ウェーブレットのリフティングス

キームフィルタを設計し,���� にリフティングスキームを適用させることで計算処理

の高速化を実現させることを目的とした.����� ウェーブレットにリフティングスキー

ムを適用し,���サンプルずれた虚数部の�����ウェーブレットでも同様にリフティング

スキームを適用して,���� を構成した.エネルギ�最大変動率を従来の����� ウェー

ブレットのリフティングスキームの ������からリフティングスキームでの ����にて

��� � ��- � �に抑えシフト不変性の特性を維持していることを確認できた.そして計算

量は従来手法 ���と比較し,約 ��まで削減することに成功した.

ただし、本研究で提案した手法は、複素数型 ��������� ウェーブレットや !�"#$�%�

ウェーブレットなどに応用できるかが課題である.さらにこの手法は,著者らが提案した

可変バンドフィルタ離散ウェーブレット変換に応用できるかも今後の課題である.

謝辞

本研究の一部は 独 日本学術振興会科研費 ��& ���'の補助を受けたことを付記し,

謝意を表します.

参考文献

(�) �*%�$� +� �$$�% �%, ��%��% �� ��$$ - "��%�$ �%�$� � - ���� ������ ��� ���������������- #��� �

(�) 章忠,戸田 浩:シフト不変な複素数離散ウェーブレット変換 第 �報:複素数離散ウェーブレット変換の理論と原理;.*��%�$ */ "��������� ��%�$ 0�*�� �%�「信号処理」,1*$���- 2*�&,�'�3��������

(�) 4� �*,�- 5� 5��%�- 0��/��6 ���% $�6�*% 7%8����%�� 9�6� � ��,� ��%�� */ "��#� */4�$���6 ���% /*�: 0��� */ ��8�$�6 ;� � - ���� �� ������� ������������ ���� ���������-8*$�'- %*��- ##�&��3&��- �����

(�) "�<� ��$$�6- � 9�8�$�6 6*�� */ ��%�$ #�*�� �%�� ������� ������ ��� ��� ����

(&) 7� ��������� - �� "9�$,�% - ���6*��%� 9�8�$�6 6��% /*�: �%6* $�/6�%� 6�# - ��� .*��%�$*/ �*����� �%�$� � �%, �##$���6�*% - 1*$�:� �- 7 �� �- ##������ �- ���'�

( ) 7� ��������� - ��% $��6��� *% 9�8�$�6 - "7��- 0��$�,�$#���- �����

(�) 2� =�%� ����- �*:#$�> 9�8�$�6 /*� ��/6 �%8����%6 �%�$� � �%, ?$6���%� */ ��%�$ -.*��%�$ */ �##$��, �%, �*:#�6�6�*%�$ 4��:*%�� �%�$� � - 1*$���- 2*��- ##����3�&�-����

(') 戸田 浩,章忠-シフト不変な複素数離散ウェーブレット変換第 �報:直交ウェーブ

�&

Proceedings of the OKU & ISM 2014 Workshop on Wavelet Theory and its Applications to Engineering 45

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レットを基にした複素数ウェーブレット設計法の一提案;������� �� ���� ��� �����「信号処理」,������� ����,��������������

��� 戸田 浩,章忠�シフト不変な複素数離散ウェーブレット変換第 報:新たな複素数離散ウェーブレット変換の計算法;������� �� ���� ��� �����「信号処理」,�����������,�� �����������

���� !� "��#���� $%� ��&�� � %�'�( ) ���&�� &�� �� �� ��# ������&�� "�*���&�� ��������� � �� ������ ������� ������� ��������+�� ,,����-��.�

章 忠 �豊橋技術科学大学工学部�

〒���-+�+� 豊橋市天伯町雲雀ケ丘 �-�

�����( ���������� �����

嶋末昂祐 �豊橋技術科学大学大学院�

〒���-+�+� 豊橋市天伯町雲雀ケ丘 �-�

�����( ����������� �����

戸田 浩 �豊橋技術科学大学工学部�

〒���-+�+� 豊橋市天伯町雲雀ケ丘 �-�

�����( ����������������

三宅哲夫 �豊橋技術科学大学工学部�

〒���-+�+� 豊橋市天伯町雲雀ケ丘 �-�

�����( ���������� �����

�.

Proceedings of the OKU & ISM 2014 Workshop on Wavelet Theory and its Applications to Engineering46

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シュワルツの核型定理と時不変連続線形システムに

ついて

岡康之 ∗

∗ 釧路工業高等専門学校

概要. シュワルツの核型定理と時不変連続線形システムについて,シュワルツの核型定

理と超関数の話題を中心に講演する.芦野―萬代―守本は,急減少関数を入力信号,緩増

加超関数を出力信号と見なし,シュワルツの核型定理をシステム同定の枠組みで記述し,

その核関数のウェーブレット解析を行っている.本講演では,芦野らによる理論を群上の

超関数に拡張する.今後解決すべき課題は,群上のシステムと工学との関係であり,それ

に関して参加者の意見を伺いたい.

岡康之 (釧路工業高等専門学校)

〒084-0916 釧路市大楽毛西 2丁目 32番 1号

E-mail: [email protected]

1

Proceedings of the OKU & ISM 2014 Workshop on Wavelet Theory and its Applications to Engineering 47

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Yasuyuki Oka

. . . . . .

.

.

. ..

.

.

シュワルツの核型定理と時不変連続線形システムについて

Yasuyuki Oka

General Education, National Institute of Technology, Kushiro College

2014.11.7

Yasuyuki Oka

. . . . . .

研究分野紹介

研究分野:超関数論 (関数解析)

研究内容:超関数の特徴づけと偏微分方程式への応用

様々な超関数の空間の特性を「熱方程式の解」に投影させて、扱いやすくすることを目的としている.

•!

∂t− ∆

"U(x , t) = 0

Proceedings of the OKU & ISM 2014 Workshop on Wavelet Theory and its Applications to Engineering48

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Yasuyuki Oka

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本講演の目的

本講演の目的:

シュワルツの核型定理の初等的な証明の方法 (熱核の手法)を紹介する.

効用:

1. 関数解析などの高度な数学の知識がほとんどいらない.

2. 色々な状況 (空間)に適応可能

3. シュワルツの核型定理は線形システムの言葉で言い換えられる. (数学−→工学へ )

Yasuyuki Oka

. . . . . .

本講演の目的

• (芦野ー萬代ー守本)芦野隆一, 萬代武史, 守本晃, ウェーブレット解析のシステム同定, The Japan Society for Industrial and AppliedMathematics, Vol. 17 No. 1 MAR. (2007), 2-13.

※ シュワルツの核型定理をもとにした連続線形システムの一般論が述べられている.

Proceedings of the OKU & ISM 2014 Workshop on Wavelet Theory and its Applications to Engineering 49

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Yasuyuki Oka

. . . . . .

連続線形システム

−−−−−−→f

入力信号(関数)

L: 線形システム

−−−−−−→g

出力信号(関数)

Yasuyuki Oka

. . . . . .

連続線形システム

−−−−−−→ϕ ∈ S(R)

入力信号(急減少関数)

L: 連続線形システム

−−−−−−→L[ϕ] ∈ S ′(R)

出力信号(緩増加超関数)

Proceedings of the OKU & ISM 2014 Workshop on Wavelet Theory and its Applications to Engineering50

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Yasuyuki Oka

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ユークリッド空間上の急減少関数と緩増加超関数

• S(R) = {ϕ ∈ C∞(R) | ∀α, β ∈ Z+,∥ϕ∥α,β = sup

x∈R|xα∂βϕ(x)| < ∞}.

Ex. ϕ(x) = e−x2, ϕ(x) =

1

ex + e−x

• S ′(R): S(R)上の連続線形汎関数.T ∈ S ′(R) ⇐⇒1. T は S(R)から Cへの線形写像,2. 定数 C > 0と α,β ∈ Z+が存在して,

| ⟨T ,ϕ⟩ | ≤ C∥ϕ∥α,β , ∀ϕ ∈ S(R).

• 形式的に, ⟨T ,ϕ⟩ =

#T (x)ϕ(x)dx と思える.

Yasuyuki Oka

. . . . . .

緩増加超関数の構造

.

命題 1 (緩増加超関数の構造定理)

.

.

.

. ..

.

.

緩増加超関数は緩増加連続関数の導超関数である. つまり,u ∈ S ′(R)に対し, m, M ∈ Z+, C > 0が存在して,

u =dm

dxmG (x), |G (x)| ≤ C (1 + |x |)M

と表せる. ただし, G (x)は連続関数.

Ex. H(x) =

$1, (x ≥ 0)

0, (x < 0)に対して, G (x) =

$x , (x ≥ 0)

0, (x < 0)

とすると超関数の意味で H(x) =d

dxG (x).

Ex. δ(x): Diracのデルタ関数とすると, δ(x) =d2

dx2G (x).#

δ(x)ϕ(x)dx = ϕ(0).

Proceedings of the OKU & ISM 2014 Workshop on Wavelet Theory and its Applications to Engineering 51

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Yasuyuki Oka

. . . . . .

連続線形システム

−−−−−−→ϕ ∈ S(R)

入力信号(急減少関数)

L: 連続線形システム

−−−−−−→L[ϕ] ∈ S ′(R)

出力信号(緩増加超関数)

Yasuyuki Oka

. . . . . .

シュワルツの核型定理

.

定理 1 (シュワルツの核型定理)

.

.

.

. ..

.

.L: S(R) → S ′(R)を連続線形システムとする. このとき,k ∈ S ′(R2)がただ1つ存在し,

#L[ϕ](p)ψ(p)dp =

# %#k(p, y)ϕ(y)dy

&ψ(p)dp,

(ϕ,ψ ∈ S(R))となる. k をシステム Lの核超関数という.

※ システム Lを同定することは, 核超関数 kを同定すること.

Proceedings of the OKU & ISM 2014 Workshop on Wavelet Theory and its Applications to Engineering52

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Yasuyuki Oka

. . . . . .

連続線形システムの例

−−−−−−→ϕ ∈ S(R)

入力信号(急減少関数)

L: 連続線形システム

−−−−−−→ϕ ∈ S ′(R)

出力信号(急減少関数)

L[ϕ] =

#δ(x − y)ϕ(y)dy = ϕ

Yasuyuki Oka

. . . . . .

平行移動不変システム (時不変システム)

時間周波数解析で基本となる3つの作用素

Tbf (x) = f (x − b), b ∈ R (平行移動作用素)Mξf (x) = e ixξf (x), ξ ∈ R (変調作用素)Dρf (x) = ρ−1/2f (ρ−1x), ρ = {ρ ∈ R | ρ > 0} (伸張作用素)

.

定義 1 (時不変)

.

.

.

. ..

.

.

連続線形システム L: S(R) → S ′(R)平行移動不変(時不変)であるとは, 任意の ϕ ∈ S(R), b ∈ Rに対して,

TbL[ϕ] = L[Tbϕ]

が成り立つときをいう.

Proceedings of the OKU & ISM 2014 Workshop on Wavelet Theory and its Applications to Engineering 53

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Yasuyuki Oka

. . . . . .

平行移動不変システム (時不変システム)

.

定理 2 (芦野ー萬代ー守本)

.

.

.

. ..

. .

連続線形システム L: S(R) → S ′(R)が時不変であるための必要十分条件は, 一意的に定まる h ∈ S ′(R)があって, 核超関数k ∈ S ′(R2)が

k(x , y) = h(x − y)

と表せること, すなわち,

L[ϕ] = h ∗ ϕ =

#h(x − y)ϕ(y)dy

が成り立つことである. (hを Lのインパルス応答と呼ぶ)

Yasuyuki Oka

. . . . . .

システムのBIBO安定性

.

定義 2 (BIBO安定性)

.

.

.

. ..

.

.

線形システム Lが BIBO安定 (Bounded Input Bounded Outputstable)とは, ある定数 C > 0が存在して,

supx∈R

|L[f ](x)| ≤ C supx∈R

|f (x)|, f ∈ S(R)

が成り立つことである.

.

定理 3 (芦野ー萬代ー守本)

.

.

.

. ..

.

.

Lが時不変で, hをそのインパルス応答とするとき,

L : BIBO安定⇐⇒ hは R上の有限ラドン測度

Proceedings of the OKU & ISM 2014 Workshop on Wavelet Theory and its Applications to Engineering54

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Yasuyuki Oka

. . . . . .

ここまでのまとめ

• 一旦, シュワルツの核型定理が言えてしまえば, (芦野ー萬代ー守本)の考察により, 連続線形システムの言葉で言い換えることが可能である!

• これから紹介する核型定理の証明方法は, 緩増加超関数の場合だけではなく, 様々な状況に適応可能!

Yasuyuki Oka

. . . . . .

Contents

(1) シュワルツの核型定理の証明

.

..

1 「熱核の手法の紹介」

.

.

.

2 熱核の手法を用いたシュワルツの核型定理の証明

.

.

.

3 様々な空間への適用方法(2) ハイゼンベルグ群上への応用

.

.

.

1 ハイゼンベルグ群の定義

.

.

.

2 ハイゼンベルグ群上の急減少関数と緩増加超関数

.

.

.

3 ハイゼンベルグ群上における熱核の手法

.

.

.

4 ハイゼンベルグ群上のシュワルツの核型定理

Proceedings of the OKU & ISM 2014 Workshop on Wavelet Theory and its Applications to Engineering 55

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Yasuyuki Oka

. . . . . .

(3) 正則閉集合に台を持つ超関数に関する核型定理の証明

.

..1 ユークリッド空間上の正則閉集合に台を持つ緩増加超関数について

.

..

1 正則閉集合

.

..

2 緩増加超関数に対する熱核の手法の紹介

.

.

.

3 正則閉集合に台を持つ緩増加超関数に対する熱核の手法

.

.

.

4 正則閉集合に台を持つ緩増加超関数に対するシュワルツの核型定理

.

.

.

2 ハイゼンベルグ群上の正則閉集合に台を持つ緩増加超関数について

.

.

.

1 ハイゼンベルグ群の定義

.

.

.

2 ハイゼンベルグ群上の緩増加超関数の定義

.

.

.

3 緩増加超関数に対する熱核の手法の紹介

.

.

.

4 正則閉集合について

.

.

.

5 正則閉集合に台を持つ緩増加超関数に対する熱核の手法

.

.

.

6 正則閉集合に台を持つ緩増加超関数に対するシュワルツの核型定理

Yasuyuki Oka

. . . . . .

(1) シュワルツの核型定理の証明「熱核の手法の紹介」

•!

∂t− ∆

"U(x , t) =

!∂

∂t− d2

dx2

"U(x , t) = 0

(熱伝導方程式)

• Et(x) =1√4πt

e−|x|24t (熱核)

Proceedings of the OKU & ISM 2014 Workshop on Wavelet Theory and its Applications to Engineering56

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Yasuyuki Oka

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(1) シュワルツの核型定理の証明「熱核の手法の紹介」

.

命題 2 (熱核の性質)

.

.

.

. ..

.

.

次が成り立つ.

.

.

.

1

#

RdEt(x)dx = 1, t > 0,

.

.

.

2

!∂

∂t− ∂2

∂x2

"Et(x) = 0

.

.

.

3 正の定数 C と a′ が存在して,

|∂βx Et(x)| ≤ C |β|+1t−(n+|α|)/2β!1/2e−a′|x |2/4t ,

(t > 0, 0 < a′ < 1)が成り立つ.

.

.

.

4 Et(x) ∈ S(Rdx ).

(Matsu I) T. Matsuzawa, A calculus approach to thehyperfunctions I, Nagoya Math. J., 108 (1987), 53-66.

Yasuyuki Oka

. . . . . .

(1) シュワルツの核型定理の証明「熱核の手法の紹介」

.

命題 3 (熱核の性質)

.

.

.

. ..

. .

ϕ ∈ S(Rd)とする. このとき, S(Rd)の位相で,

(ϕ ∗ Et)(x) −→ ϕ, t → +0

が成り立つ.

limt→+0

'''xα∂βx {(ϕ ∗ Et)(x) − ϕ(x)}

''' = 0

S. Lee and S. -Y. Chung, The Paley-Wiener theorem by theheat kernel method, Bull. Korean Math. Soc. 35, No. 3,(1998), 441-453.

Proceedings of the OKU & ISM 2014 Workshop on Wavelet Theory and its Applications to Engineering 57

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Yasuyuki Oka

. . . . . .

(1) シュワルツの核型定理の証明「熱核の手法の紹介」

.

定理 4 (S′(Rd ) における熱核の手法, T. Matsuzawa (1990))

.

.

.

. ..

.

.

Let u ∈ S′(Rd ). If we put

U(x, t) = ⟨u, E(x − ·, t)⟩ , E(x, t) = (√

4πt)−d/2

e− x2

4t

then we have

.

.

.

1 U(x, t) ∈ C∞(Rd × (0, ∞)),

.

.

.

2

„∂

∂t− ∆x

«U(x, t) = 0, (x, t) ∈ Rd × (0, ∞), ∆x = ∂2

∂x21

+ · · · + ∂2

∂x2d

,

.

.

.

3 for any ϕ ∈ S(Rd ),

limt→+0

Z

RdU(x, t)ϕ(x)dx = ⟨u, ϕ⟩,

and

.

.

.

4 there exist a constant C > 0 and µ, ν ≥ 0 such that

|U(x, t)| ≤ Ct−µ(1 + |x|)ν , x ∈ Rd , 0 < t < 1.

Conversely, if the C∞-function U(x, t) satisfies the condition (2) and (4), there exists u ∈ S′(Rd ) such that

U(x, t) = ⟨u, E(x − ·, t)⟩ .

Yasuyuki Oka

. . . . . .

(1) シュワルツの核型定理の証明「熱核の手法の紹介」

u ∈S ′

u∗E−−−−→

←−−−−t→0+

• U(x , t) ∈ C∞(Rn × (0,∞)),

•(

∂∂t − ∆

)U(x , t) = 0,

• ∃C > 0, ∃µ, ν ≥ 0 s.t.|U(x , t)| ≤ Ct−µ(1 + |x |)ν ,

(x ∈ Rd , 0 < t < 1).

(T. Matsuzawa 1990)

T. Matsuzawa, A calculus approach to the hyperfunctions III,Nagoya Math. J., 118 (1990), 133-153.

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Yasuyuki Oka

. . . . . .

(1) シュワルツの核型定理の証明「熱核の手法の紹介」

δ(x) ∈ S ′

u∗E−−−−→

←−−−−t→0+

• Et(x) ∈ C∞(Rn × (0,∞)),

•(

∂∂t − ∆

)Et(x) = 0,

• ∃C > 0, ∃µ, ν ≥ 0 s.t.|Et(x)| ≤ Ct−µ(1 + |x |)ν ,

(x ∈ Rd , 0 < t < 1).

U(x , t) = (δ ∗ Et)(x)

=

#δ(y)Et(x − y)dy = Et(x) → δ(x)

Yasuyuki Oka

. . . . . .

(1) シュワルツの核型定理の証明「熱核の手法の紹介」

.

Example 1

.

.

.

. ..

.

.

u(x) = ex とする. このとき,

U(x , t) = (u ∗ E )(x , t) = E (x , t) = ex+t

より, ex は S ′(R)の元ではない.

Proceedings of the OKU & ISM 2014 Workshop on Wavelet Theory and its Applications to Engineering 59

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Yasuyuki Oka

. . . . . .

(1) シュワルツの核型定理の証明熱核の手法を用いたシュワルツの核型定理の証明

.

定理 5 (シュワルツの核型定理 (cf: Reed-Simon))

.

.

.

. ..

.

.

k は S(R)から S ′(R)への連続線形写像とする. このとき, 任意の ϕ,ψ ∈ S(R)に対し,

⟨kϕ,ψ⟩ = ⟨K ,ϕ ⊗ ψ⟩ =

##K (x , y)ϕ(x)ψ(y)dxdy

となる K ∈ S ′(R × R)が唯一つ存在する.

[Reed-Simon] M. Reed and B. Simon, Methods of ModernMathematical Physics I: Functional Analysis, Academic Press,(1980).• L. Schwartz, Theorie des noyaux, Proc. of the Inst. Congr.of Math. 1950, vol. 1, 220-230.

Yasuyuki Oka

. . . . . .

(1) シュワルツの核型定理の証明熱核の手法を用いたシュワルツの核型定理の証明

Proof. k は連続なので, S(R) × S(R)上の双線形形式 B,

B(ϕ,ψ) = ⟨kψ,ϕ⟩ , ϕ ∈ S(R) , ψ ∈ S(R)

は分離連続になる. S(R)と S(R)はそれぞれ Frechet空間 なので, Bは連続となる. つまり, 正定数 C と N1,N2 ∈ Z+が存在して,

| ⟨kψ,ϕ⟩ | ≤ C∥ϕ∥N1,A1∥ψ∥N2,A2 . (♯)

が成り立つ.いま, Rt(x1, x2)を (x1, x2) ∈ R × Rと t > 0に対し,

Rt(x1, x2) = ⟨kEt(x2 − ·), Et(x1 − ·)⟩

と定義する. この Rt が t → +0のとき, S(R × R)′の位相で収束することをみる.

Proceedings of the OKU & ISM 2014 Workshop on Wavelet Theory and its Applications to Engineering60

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Yasuyuki Oka

. . . . . .

(1) シュワルツの核型定理の証明熱核の手法を用いたシュワルツの核型定理の証明

(♯)と熱核の評価式より, 正定数 C と µ,N1, N2 ∈ Z+が存在して,

|Rt(x1, x2)| ≤ Ct−µ(1 + |x1|)N1(1 + |x2|)N2

が成り立つ. ここで x1 ∈ Rd1 , x2 ∈ Rd2 , 0 < t < 1.そのうえ, x1 ∈ Rd1 , x2 ∈ Rd2 と 0 < t < 1に対し,

(∂/∂t − ∆) Rt(x1, x2) = 0

が成り立つ.よって, 松澤の結果より, R0 ∈ S ′(R × R)が存在して,

R0 = limt→+0 Rt

が S ′(R × R)の位相で成り立つ.

Yasuyuki Oka

. . . . . .

(1) シュワルツの核型定理の証明熱核の手法を用いたシュワルツの核型定理の証明

ϕ ∈ S(R), ψ ∈ S(R)に対し,

⟨Rt ,ϕ ⊗ ψ⟩ =

##

Rd1×Rd2

Rt(x1, x2)ϕ(x1)ψ(x2)dx1dx2

=

*k

#

Rd2

Et(x2 − ·)ψ(x2)dx2,

#

Rd1

Et(x1 − ·)ϕ(x1)dx1

+

= ⟨k[ψ ∗ Et ],ϕ ∗ Et⟩

命題 3より, 任意の ϕ ∈ S(R)と ψ ∈ S(R)に対し, t → +0のとき,

⟨R0,ϕ ⊗ ψ⟩ = ⟨kψ,ϕ⟩ . !

Proceedings of the OKU & ISM 2014 Workshop on Wavelet Theory and its Applications to Engineering 61

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Yasuyuki Oka

. . . . . .

(1) シュワルツの核型定理の証明様々な空間への適用方法 (指数型超関数)

• Sr ,a(R) = {ϕ ∈ C∞(R) | ∀δ > 1, ∃Cδ,β > 0 s.t.

|∂qx ϕ(x)| ≤ Cδ,βe−aδ |x |

1r , ∀q ∈ Z+}.

ここで, aδ = r,e(δA)

1r

-−1, A > 0とする. そして,

∥ϕ∥rδ,β = sup

x|∂β

x ϕ(x)|eaδ |x |1r

とする.• Sr (R)は次の帰納極限で与えられる.

Sr (R) = lim−→a→0

Sr ,a(R).

• Sr (R) ⊂ S(R): 稠密.

Yasuyuki Oka

. . . . . .

(1) シュワルツの核型定理の証明様々な空間への適用方法(指数型超関数)

.

命題 4 (熱核の性質 (2))

.

.

.

. ..

.

.

ϕ ∈ Sr (R)とする. このとき, Sr (R)の位相で,

(ϕ ∗ Et)(x) −→ ϕ, t → +0

が成り立つ.

limt→+0

'''∂βx {(ϕ ∗ Et)(x) − ϕ(x)}

''' ea|x |1/r= 0.

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Yasuyuki Oka

. . . . . .

(1) シュワルツの核型定理の証明様々な空間への適用方法(指数型超関数)

• S ′r (R): Sr (R)上の連続線形汎関数.

T ∈ S ′r (R) ⇐⇒

1. T は Sr (R)から Cへの線形写像,

2. ∀a > 0, ∃Ca > 0 s.t. | ⟨u,ϕ⟩ | ≤ Ca∥ϕ∥rδ,β , ∀ϕ ∈ Sr ,a(Rd).

※ S ′r (R)の元を指数型超関数と呼ぶ.

Yasuyuki Oka

. . . . . .

(1) シュワルツの核型定理の証明様々な空間への適用方法(指数型超関数)

u ∈ (Sr )′

(r ≥ 12)

u∗E−−−−→

←−−−−t→0+

•U(x , t) ∈ C∞(R × (0,∞))

•!

∂t− ∆

"U(x , t) = 0,

•∀ε > 0,∃Nε ≥ 0, ∃Cε > 0s.t.

|U(x , t)| ≤ Cεt−Nεeε|x |1/r,

(x ∈ R, 0 < t < 1).

(Y. Oka and K. Yoshino [7])

Proceedings of the OKU & ISM 2014 Workshop on Wavelet Theory and its Applications to Engineering 63

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Yasuyuki Oka

. . . . . .

(1) シュワルツの核型定理の証明様々な空間への適用方法(指数型超関数)

ex ∈(S1/2)′

ex∗E−−−−→

←−−−−t→0+

•ex+t ∈ C∞(R × (0,∞))

•!

∂t− ∆

"U(x , t) = 0,

•∀ε > 0 に対し,

ex+t ≤ 3

!1 +

1

"et−1eεx2

,

(x ∈ R, 0 < t < 1).

Yasuyuki Oka

. . . . . .

(1) シュワルツの核型定理の証明様々な空間への適用方法(指数型超関数)

.

定理 6 (シュワルツの核型定理 )

.

.

.

. ..

.

.

r ≤ 1/2とする. いま, k は Sr (R)から S ′r (R)への連続線形写

像とする. このとき, 任意の ϕ,ψ ∈ Sr (R)に対し,

⟨kϕ,ψ⟩ = ⟨K ,ϕ ⊗ ψ⟩ =

##K (x , y)ϕ(x)ψ(y)dxdy

となる K ∈ S ′r (R × R)が唯一つ存在する.

Proceedings of the OKU & ISM 2014 Workshop on Wavelet Theory and its Applications to Engineering64

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Yasuyuki Oka

. . . . . .

(1) シュワルツの核型定理の証明様々な空間への適用方法(指数型超関数)

Proof. k は連続なので, Sr ,a(R) × Sr ,b(R)上の双線形形式 B,

B(ϕ,ψ) = ⟨kψ,ϕ⟩ , ϕ ∈ Sr ,a(R) , ψ ∈ Sr ,b(R)

は分離連続になる. Sr ,a(R)と Sr ,b(R)はそれぞれ Frechet空間なので, Bは連続となる. つまり, 任意の a, b > 0に対し, 正の定数 Ca,b > 0が存在して,

| ⟨kψ,ϕ⟩ | ≤ Ca,b∥ϕ∥rδ1,β1

∥ψ∥rδ2,β2

. (♯♯)

が成り立つ.いま, Rt(x1, x2)を (x1, x2) ∈ R × Rと t > 0に対し,

Rt(x1, x2) = ⟨kEt(x2 − ·), Et(x1 − ·)⟩

と定義する. この Rt が t → +0のとき, Sr (R × R)′の位相で収束することをみる.

Yasuyuki Oka

. . . . . .

(1) シュワルツの核型定理の証明様々な空間への適用方法(指数型超関数)

(♯♯)と熱核の評価式より, 任意の ε1, ε2 > 0に対し, Nε1,ε2 ≥ 0と Cε1,ε2 > 0が存在して,

|Rt(x1, x2)| ≤ Cε1,ε2t−Nε1,ε2 eε1|x |1/rε2|x |1/r

が成り立つ. ここで x1 ∈ R, x2 ∈ R, 0 < t < 1.そのうえ, x1 ∈ R, x2 ∈ Rと 0 < t < 1に対し,

(∂/∂t − ∆) Rt(x1, x2) = 0

が成り立つ.よって, 熱核の手法より, R0 ∈ S ′

r (R × R)が存在して,

R0 = limt→+0 Rt

が S ′r (R × R)の位相で成り立つ.

Proceedings of the OKU & ISM 2014 Workshop on Wavelet Theory and its Applications to Engineering 65

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Yasuyuki Oka

. . . . . .

(1) シュワルツの核型定理の証明様々な空間への適用方法(指数型超関数)

ϕ ∈ Sr (R), ψ ∈ Sr (R)に対し,

⟨Rt ,ϕ ⊗ ψ⟩ =

##

R×RRt(x1, x2)ϕ(x1)ψ(x2)dx1dx2

=

*k

#

Rd2

Et(x2 − ·)ψ(x2)dx2,

#

Rd1

Et(x1 − ·)ϕ(x1)dx1

+

= ⟨k[ψ ∗ Et ],ϕ ∗ Et⟩

命題 4より, 任意の ϕ ∈ Sr (R)と ψ ∈ Sr (R)に対し, t → +0のとき,

⟨R0,ϕ ⊗ ψ⟩ = ⟨kψ,ϕ⟩ . !

Yasuyuki Oka

. . . . . .

(1) シュワルツの核型定理の証明様々な空間への適用方法(指数型超関数)

Heat Kernel Methods

A′(K) (T. Matsuzawa, 1987, [1])

S′ (T. Matsuzawa, 1990, [2])

(S11 )

′ (Korean Group, 1993, [3])

G′ (Korean Group, 1994, [4])

(S rr )

′ (C. Dong and T. Matsuzawa, 1994, [5])

(S1)′ (M. Suwa, 2004, [6])

(Sr )′ (Y. Oka and K. Yoshino, [7], [8])

Proceedings of the OKU & ISM 2014 Workshop on Wavelet Theory and its Applications to Engineering66

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Yasuyuki Oka

. . . . . .

(1) シュワルツの核型定理の証明様々な空間への適用方法(指数型超関数)

[1] T. Matsuzawa, A calculus approach to the hyperfunctions I, NagoyaMath. J., 108 (1987), 53-66.

[2] T. Matsuzawa, A calculus approach to the hyperfunctions III, NagoyaMath. J., 118 (1990), 133-153.

[3] K. W. Kim, S. -Y. Chung and D. Kim, Fourier hyperfunctions as theboundary values of smooth solutions of the heat equation, Publ, RIMS,Kyoto Univ. 29 (1993), 289-300.

[4] S. -Y. Chung, D. Kim and S. K. Kim, Structure of the extendedFourier hyperfunctions, Japan. J. Math. Vol. 19, No.2, (1994), 217-226.[5] C. Dong and T. Matsuzawa, S-space of Gel’fand-Shilov anddifferential equations, Japan. J. Math. Vol. 19, No.2, (1994), 227-239.[6] M. Suwa, Distributions of exponential growth with support in a properconvex cone, Publ, RIMS, Kyoto Univ. 40 (2004), no.2, 565-603.[7] Y. Oka, Asymptotic expansions of solutions to the heat equation withinitial value in the dual of Gel’fand-Shilov Spaces, Doctor thesis, SophiaUniv. (2010).

Yasuyuki Oka

. . . . . .

(2) ハイゼンベルグ群上への応用

(2) ハイゼンベルグ群上への応用

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Yasuyuki Oka

. . . . . .

(2) ハイゼンベルグ群上への応用ハイゼンベルグ群の定義

• (x , y , t), (x ′, y ′, t ′) ∈ Rd × Rd × R = R2d+1.

•(x , y , t)(x ′, y ′, t ′) = (x + x ′, y + y ′, t + t ′ + 2(x ′ · y − x · y ′)),

ただし, x · y =.d

j=1 xjyj .

• 上記積の法則を持つ群 R2d+1 をハイゼンベルグ群と呼びHd と表す.

• 単位元: (0, 0, 0),• 逆元 (x , y , t): (x , y , t)−1 = (−x ,−y ,−t).

• ハイゼンベルグ群Hd は局所コンパクトハウスドルフ群で,そのハール測度はルベーグ測度 dxdydt.

Yasuyuki Oka

. . . . . .

(2) ハイゼンベルグ群上への応用ハイゼンベルグ群の定義

• ハイゼンベルグ群Hd の左不変ベクトル場は,

Xj =∂

∂xj+ 2yj

∂t, Xd+j =

∂yj− 2xj

∂tand X2d+1 =

∂t

(j = 1, 2, · · · , d)と表せる. これらは, ハイゼンベルグ代数の基底になる.

• X =∂

∂x+ 2y

∂t, Y =

∂y− 2x

∂t, T =

∂t

=⇒ [X , Y ] = −4T , [X ,T ] = [Y , T ] = 0(Canonical commutation relation)

Proceedings of the OKU & ISM 2014 Workshop on Wavelet Theory and its Applications to Engineering68

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Yasuyuki Oka

. . . . . .

(2) ハイゼンベルグ群上への応用ハイゼンベルグ群の定義

• α ∈ Z2d+ , g = (x , y , t) ∈ Hd とする. このとき, 関数

(Xαϕ)(g) を次のように定義する:

(Xαϕ)(g) = (Xα11 Xα2

2 · · ·Xα2d2d ϕ)(g), ϕ ∈ C∞(Hd).

※ユークリッド空間の ∂αϕに相当.• 距離関数 ρ は次のように定義する:

ρ(g) = ((x2 + y2)2 + t2)14 , (g = (x , y , t) ∈ Hd).

(Koranyi norm)※ユークリッド空間の絶対値 |x |に相当.• 2点 g = (x , y , t), g ′ = (x ′, y ′, t ′) ∈ Hd の間の距離は,

dK (g , g ′) = ρ,g ′−1g

-.

※ 定数 C > 1が存在し, C−1dC ≤ dK ≤ CdC .(Carnot-Caratheodory distance dC と双 Lipschitz同値)

Yasuyuki Oka

. . . . . .

ハイゼンベルグ群上の急減少関数と緩増加超関数の空間

.

定義 3 (ハイゼンベルグ群上の急減少関数の定義)

.

.

.

. ..

.

.ϕ ∈ C∞(Hd)とする. いま, 関数 ϕが次の条件を満たすとき,ϕをハイゼンベルグ群上の急減少関数といい, 急減少関数全体を S(Hd)と表す:

任意の N ∈ Z+に対し,

∥ϕ∥N = sup(x ,y ,t)∈Hd

(1 + ρ(x , y , t))N/

|α|≤N

|Xαϕ(x , y , t)| < ∞.

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Yasuyuki Oka

. . . . . .

(2) ハイゼンベルグ群上への応用ハイゼンベルグ群上の急減少関数と緩増加超関数

.

定義 4 (ハイゼンベルグ群上の緩増加超関数の空間 S ′(Hd) )

.

.

.

. ..

. .

S ′(Hd): S(Hd)の双対空間をハイゼンベルグ群上の緩増加超関数の空間という.

• u ∈ S ′(Hd)⇐⇒

.

.

.

1 u S(Hd)から Cへの線形汎関数.

.

.

.

2 N ∈ Z+ と 定数 C > 0が存在して, 任意の ϕ ∈ S(Hd)に対し, '' ⟨u,ϕ⟩

'' ≤ C∥ϕ∥N

Yasuyuki Oka

. . . . . .

(2) ハイゼンベルグ群上への応用ハイゼンベルグ群上における熱核の手法

• △Hd =2d/

j=1

X 2j (サブラプラシアン)

•!

∂s− ∆Hd

"Us(g) = 0 (熱方程式)

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Yasuyuki Oka

. . . . . .

(2) ハイゼンベルグ群上への応用ハイゼンベルグ群上における熱核の手法

.

命題 5 (Hd 上の熱核 (Hul), (Gev))

.

.

.

. ..

.

.

Ps(g) =

8><

>:(4πs)−(d+1)

Z ∞

−∞

„2τ

sinh 2τ

«d

eiτt2s − 2(|x|2+|y|2)τ

4s tanh 2τ dτ , s > 0,

0, s ≤ 0.

.

命題 6 (Hd 上の熱核の評価式 (Jer))

.

.

.

. ..

.

.

関数 Ps(g) はサブラプラシアン∆Hd に付随した熱核とする.このとき, 任意の α ∈ Z2d

+ とm ∈ Z+に対し, 定数 a > 0 とCm,α > 0 が存在し,

''''∂m

∂smXαPs(g)

'''' ≤ Cm,αs−m− |α|2 −Q

2 e−ad(g)2

s .

Yasuyuki Oka

. . . . . .

(2) ハイゼンベルグ群上への応用ハイゼンベルグ群上における熱核の手法

[Gav] B. Gaveau, Principe de moindre action, propagation de lachaleur, et estimees sous elliptiques sur certains groupesnilpotents, Acta Math. 139, (1977), 95-153.

[Hul] A. Hulanicki, The distribution of energy in the Brownianmotion in the Gaussian field and analytic hypoellipticity ofcertain subelliptic operators on the Heisenberg group, StudiaMath. 56, (1976), 165-173.

[Jer] D. S. Jerison and A. Sanchez-Calle, Estimates for the heatkernel for a sum of squares of vector fields, Indiana Univ.Math. J., 35, (1986), 835-854.

Proceedings of the OKU & ISM 2014 Workshop on Wavelet Theory and its Applications to Engineering 71

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Yasuyuki Oka

. . . . . .

(2) ハイゼンベルグ群上への応用ハイゼンベルグ群上における熱核の手法

• 関数 f に対し, f (g) = f ((g)−1), g ∈ Hd .

• u ∈ S ′(Hd) と ϕ ∈ S(Hd)の合成積 u ∗ ϕ は次のように定義する: 任意の ψ ∈ S(Hd)に対し,

⟨u ∗ ϕ,ψ⟩ = ⟨u, ψ ∗ ϕ⟩,

(ψ ∗ ϕ)(g) =

#

Hdψ(g ′)ϕ(g ′−1g)dg ′, g , g ′ ∈ Hd .

• Hd 上の合成積は, 一般には非可換である.

Yasuyuki Oka

. . . . . .

(2) ハイゼンベルグ群上への応用ハイゼンベルグ群上における熱核の手法

u ∈S ′(Hd)

u∗Ps−−−−→

←−−−−s→0+

• Us(g) ∈ C∞(Hn × (0,∞)),

•`

∂∂s − ∆Hd

´Us(g) = 0,

• ∃C > 0, ∃µ, ν ≥ 0 s.t.

|Us(g)| ≤ Cs−µ(1 + ρ(g))ν ,

0 < s < 1, (x , y , t) ∈ Hd

(M.W.Wong et al. 2006)

• J. Kim and M. W. Wong, Positive definite temperaturefunctions on the Heisenberg group, Appl. Anal. 85, No. 8,(2006), 987-1000.

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Yasuyuki Oka

. . . . . .

(2) ハイゼンベルグ群上への応用ハイゼンベルグ群上における熱核の手法

.

定理 7 (S ′(H)におけるシュワルツの核型定理, Y, Oka)

.

.

.

. ..

. .

k を S(H)から S ′(H)への連続線形写像とする. このとき,

⟨kψ,ϕ⟩ = ⟨T ,ϕ ⊗ ψ⟩ =

##T (g1, g2)ϕ(g1)ψ(g2)dg1dg2,

となる T in S ′(H × H)が唯一つ存在する. ただし, ϕ ∈ S(H),ψ ∈ S(H).

Y. Oka, The Schwartz kernel theorem for the tempereddistributions in the Heisenberg group, to appear in HokkaidoMath. J..

Yasuyuki Oka

. . . . . .

Application

Application (LTI system on H)

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Yasuyuki Oka

. . . . . .

Application

.

定義 5 (平行移動作用素 Tβ)

.

.

.

. ..

. .

g = (x , y , t) ∈ Hとする. いま, β ∈ Hにおける平行移動作用素 Tβ を

[Tβf ](g) = f (β−1g)

と定義する.連続線形写像 k : S(H) → S ′(H)は, 任意の ψ ∈ S(Hd)に対し,

Tβk[ψ] = k[Tβψ]

が成り立つとき, 「平行移動不変」という.

Yasuyuki Oka

. . . . . .

Application

.

命題 7 (Hd 上の線型時不変システム)

.

.

.

. ..

. .

k : S(Hd) → S ′(Hd)連続線形システム とし, K (g1, g2)をHd × Hd 上の核超関数とする. このとき, システム k は,

K (g1, g2) = h(g−12 g1),

となる h ∈ S ′(Hd)が存在するとき, 平行移動不変になる.つまり, 任意の ψ ∈ S(Hd)に対し,

k[ψ] = ψ ∗ h

が成り立つときである.

Proceedings of the OKU & ISM 2014 Workshop on Wavelet Theory and its Applications to Engineering74

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Yasuyuki Oka

. . . . . .

Application

.

定義 6 (BIBO (Bounded-Input Bounded-Output) 安定)

.

.

.

. ..

.

.

連続線形システム k は, 定数 C > 0が存在して, 任意のψ ∈ S(Hd)に対し,

supg∈Hd

|k[ψ](g)| ≤ C supg∈Hd

|ψ(g)|

が成り立つとき, BIBO (Bounded-Input Bounded-Output) 安定という.

Yasuyuki Oka

. . . . . .

Application

.

定理 8 (Y. Oka)

.

.

.

. ..

.

.

h ∈ S ′(Hd)と ψ ∈ S(Hd)に対し, k[ψ] = ψ ∗ hとする. このとき, k が BIBO (Bounded-Input Bounded-Output) 安定になる必要十分条件は, Λ ∈ M(Hd)となることである. ここで,Λ ∈ S ′(Hd)は, k の核関数, M(Hd)は, Hd 上の有界ラドン測度の空間である.

.

Example 2

.

.

.

. ..

.

.

h = δ ∈ S ′(Hd)とする. このとき, ψ ∈ S(Hd)において,

k[ψ](g) = (ψ ∗ δ)(g) =

#

Hdψ(g ′)δ(g ′−1g)dg ′ = ψ(g)

である. つまり, k の核関数は, Dirac’s 測度で表されることがわかり, かつ, k は BIBO安定であることがわかる.

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Yasuyuki Oka

. . . . . .

正則閉集合に台を持つ超関数に関する核型定理

正則閉集合に台を持つ超関数に関する核型定理

Yasuyuki Oka

. . . . . .

ユークリッド空間上の正則閉集合に台を持つ緩増加超関数について

.

定義 7 (ユークリッド空間上の正則閉集合)

.

.

.

. ..

.

.閉集合 A ⊂ Rd は, D > 0, ω > 0, 0 < q ≤ 1が存在し,

|x1 − x2| ≤ D

となる Aの任意の2点 x1, x2 が次の条件を満たす曲線 c で結ぶことが可能なとき, 正則であるという.

.

.

.

1 c の長さ l は,l ≤ ω|x1 − x2|q

を満たす.

.

.

.

2 c は Aに含まれる.

[1] 吉田耕作, 伊藤清三編, 関数解析と微分方程式, 岩波書店,(1976). [2] L. Homander, The Analysis of Linear PartialDifferential Operator I, Springer-Verlag Berlin Heidelberg,(1963). [3] T. Kakita, On the Whitney-Schwartz theorem,Publ. RIMS, Kyoto Univ. 28, (1992), 13-20.

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Yasuyuki Oka

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ユークリッド空間上の正則閉集合に台を持つ緩増加超関数について

Ex. 1. Aが凸閉集合なら Aは正則閉集合

(ω = q = 1, D = supx1,x2∈A

|x1 − x2|).

Ex. 2. A = {(x , y) ∈ R2 | x ≥ 0, y ≥ 0}(第1象限)は正則閉集合 (ω = q = 1, D = ∞).

Ex. 3. A = {(x , y) ∈ R2 | y ≥ 0}(上半平面)は正則閉集合 (ω = q = 1, D = ∞).

Ex. 4. B = {(x , y) ∈ R2 | x ≥ 0, y ≥ 0}C = {(x , y) ∈ R2 | x2 + y2 < 1, x ≥ 0, y ≥ 0}A = B \ C (ω =

√2, q = 1, D = ∞) (凸ではない集合)

Yasuyuki Oka

. . . . . .

ユークリッド空間上の正則閉集合に台を持つ緩増加超関数について

• A: 正則閉集合, • S(A)′ = {f ∈ S ′ | supp f ⊂ A}

u ∈S(A)′

u∗E−−−−→

←−−−−t→0+

• U(x , t) ∈ C∞(Rn × (0,∞)),

•(

∂∂t − ∆

)U(x , t) = 0,

• ∃C > 0, ∃µ, ν ≥ 0 s.t.

|U(x , t)| ≤ Ct−ν(1 + |x |)Me−d(x,A)2

8t ,

d(x ,A) = infy∈A

|x − y |,

(x ∈ Rd , 0 < t < 1).

(Y. Oka, 2014)• 熱核の手法は超関数の台を決定するのに便利

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Yasuyuki Oka

. . . . . .

ユークリッド空間上の正則閉集合に台を持つ緩増加超関数について

.

定理 9 (シュワルツの核型定理)

.

.

.

. ..

.

.

A1と A2を Rと R上の正則閉集合とする. いま k を S(A2)から S(A1)′への連続線形写像とすると, このとき.

⟨kψ,ϕ⟩ = ⟨T ,ϕ ⊗ ψ⟩ ,

となる T ∈ S(A1 × A2)′がただ一つ存在する. ただし,ϕ ∈ S(A1), ψ ∈ S(A2)である.

Yasuyuki Oka

. . . . . .

ハイゼンベルグ群上の正則閉集合に台を持つ緩増加超関数について

ハイゼンベルグ群上の正則閉集合に台を持つ緩増加超関数について

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Yasuyuki Oka

. . . . . .

ハイゼンベルグ群上の正則閉集合の定義

.

定義 8 (ハイゼンベルグ群上の正則閉集合)

.

.

.

. ..

.

.

閉集合 A ⊂ Hd ∼= R2d+1とする. このとき,D > 0, ω > 0, 0 < q ≤ 1が存在し,

ρ(g−12 g1) ≤ D

となる Aの任意の2点 g1, g2が次の条件を満たす曲線 c で結ぶことが可能なとき, 正則であるという.

.

.

.

1 c の長さ l は,l ≤ ωρ(g−1

2 g1)q

を満たす.

.

.

.

2 c が Aに含まれる.

Yasuyuki Oka

. . . . . .

ハイゼンベルグ群上の正則閉集合の定義

.

命題 8 (C. C. G.)

.

.

.

. ..

. .

(x , y , 0)と原点を結ぶ測地線は唯一つ存在し, それは平面{t = 0}上の直線である.

[C.C.G.]O. Calin, D-C. Chang and P. Greiner, GeometricAnalysis on the Heisenberg Group and Its Generalizations, A.M. S/IP, (2007).Ex. 5.

.

命題 9

.

.

.

. ..

.

.

A = {(x , y , 0) ∈ H1 | y = ax}とする. このとき, Aは正則閉集合.

Proceedings of the OKU & ISM 2014 Workshop on Wavelet Theory and its Applications to Engineering 79

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Yasuyuki Oka

. . . . . .

ハイゼンベルグ群上の正則閉集合の定義

Ex. 6.

.

定義 9 (測地的凸集合 (cf. R. Monti (2005)))

.

.

.

. ..

. .

A ⊆ H1とする. いま, Aの任意の2点 p0, p1に対し, p0と p1

を結ぶすべての測地線 γ: [0, L] → Hが Aに含まれるとき, 集合 Aを測地的凸集合という. ただし,• L = dcc(p0, p1), dcc: Carnot-Caratheodory distance,• γ(0) = p0, γ(L) = p1

とする.

.

命題 10

.

.

.

. ..

.

.

A ⊆ H1とする. このとき,

A : 測地的凸集合 =⇒ A : 正則閉集合.

Yasuyuki Oka

. . . . . .

ハイゼンベルグ群上の正則閉集合の定義

.

命題 11 (R. Monti and M. Ricly(2005))

.

.

.

. ..

. .

H1の測地的凸部分集合は, 次の4つの集合しかない.

.

.

.

1 H1 (全体)

.

.

.

2 φ (空集合)

.

.

.

3 {a}, a ∈ H1

.

.

.

4 測地線の弧

R. Monti and M. Rickly, Geodetically convex sets in theHeisenberg group, J. Convex Anal., Vol. 12, No. 1, (2005),187-196.

Proceedings of the OKU & ISM 2014 Workshop on Wavelet Theory and its Applications to Engineering80

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Yasuyuki Oka

. . . . . .

ハイゼンベルグ群上の正則閉集合に台を持つ緩増加超関数について

u ∈ S(A)′

u∗Ps−−−−→

←−−−−s→0+

• Us(g) ∈ C∞(Hn × (0,∞)),

•„

∂∂s

− ∆Hd

«Us(g) = 0,

• ∃C > 0, ∃µ, ν ≥ 0, ∃a > 0 s.t.

|Us(g)| ≤ Cs−µ(1 + ρ(g))νe−aρ(g,A)2/2s ,

0 < s < 1, g ∈ Hd

(Y. Oka, 2014)

Yasuyuki Oka

. . . . . .

ハイゼンベルグ群上の正則閉集合に台を持つ緩増加超関数について

.

定理 10 (シュワルツの核型定理)

.

.

.

. ..

.

.

A1と A2をHとH上の正則閉集合とする. いま k を S(A2)から S(A1)′への連続線形写像とすると, このとき.

⟨kψ,ϕ⟩ = ⟨T ,ϕ ⊗ ψ⟩ ,

となる T ∈ S(A1 × A2)′がただ一つ存在する. ただし,ϕ ∈ S(A1), ψ ∈ S(A2)である.

Proceedings of the OKU & ISM 2014 Workshop on Wavelet Theory and its Applications to Engineering 81

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Yasuyuki Oka

. . . . . .

結論と今後の課題

結論:1.熱核の手法を手に入れる.

2.1.により, かなり多様な状況に対するシュワルツの核型定理を手に入れることが出来る.

3.シュワルツの核型定理を線形システムとみなす.  (芦野ー萬代ー守本)

4.(芦野ー萬代ー守本)に従い, 連続線形システムのウェーブレット解析ができる.

Yasuyuki Oka

. . . . . .

結論と今後の課題

今後の課題1.ハイゼンベルグ群上のシュワルツの核型定理が、工学的にどのような意味をもつのか?

2.ハイゼンベルグ群上で, (芦野ー萬代ー守本)に従い, 連続線形システムのウェーブレット解析ができるか?

Proceedings of the OKU & ISM 2014 Workshop on Wavelet Theory and its Applications to Engineering82

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1

* Indra Nugraha Abdullah* *

*

( )

Zernike

(SVM)

Rotation invariant and shift invariant wavelets for discrimination of medicinal leaves with acquired digital camera images in nature together

with wavelet descriptor for representation of shape of leaves Kohei Arai, Indra Nugraha Abdullar, Hiroshi Okumura

Graduate School of Science and Engineering, Saga University

Abstract. Rotation invariant and shift invariant wavelets for discrimination of medicinal

leaves with acquired digital camera images in nature together with wavelet descriptor for

representation of shape of leave are proposed. In particular, a method for rotation invariant wavelet

(Dyadic and Dual Tree Complex Wavelet Transformation: DT-CWT) through rotation of the original

images is proposed instead of realization of rotation invariant wavelet transformation. The proposed

method is compared to Zernike moments of texture representation which is essentially rotation

invariant feature which can be extracted from images. In the comparison, test performance of

classification performance (not training performance) is used after the classification with the well

known classification method as one of the best performance of classification method, Support Vector

Machine: SVM. Through the experiments with the ornamental leaf images which are acquired with

visible digital camera, comparative study of classification performance is conducted. The results

show the proposed method with Dyadic and DT-CWT would be enough in terms of classification

performance in comparison to Zernike moment utilized classification method.

Proceedings of the OKU & ISM 2014 Workshop on Wavelet Theory and its Applications to Engineering 83

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2

3 1

80% 1 75%

[1]

Wang et al. (2008) [2] Automatic marker-controlled watershed

segmentation method[3] 7

Hu geometric moments[4] ( ) 16 Zernike moments [5](texture feature)

92.6% ( ) Watershed

BLOB

(

) Watershed

Park, Hwang and Nam (2007) [6]

Curvature Scale Space Corner Detection[7]

4

Wang

[8]-[11]

Daubechies

[12]-[16] Dyadic [17] Dual-Tree Complex Wavelet Transformation:

DT-CWT[18]-[20]

2

1 http://www.iucnredlist.org/documents/summarystatistics/2012_2_RL_Stats_Table_1.pdf 2http://www.google.co.jp/url?sa=t&rct=j&q=&esrc=s&source=web&cd=1&ved=0CB0QFjAA&url=http%3A%2F%2Fwww.bogorbotanicgardens.org%2F&ei=16xBVPLCDcHGmAXKiYCoDg&usg=AFQjCNHjtAuHOOqj1erIUiYAleafyLRtvg&sig2=Yz53y20I0-oBFg5YFGoGRQ&bvm=bv.77648437,d.dGY

Proceedings of the OKU & ISM 2014 Workshop on Wavelet Theory and its Applications to Engineering84

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3

.

2.1

(1) 1

1 1

1 1Watershed 3

11 1

(a)�Bay (b)�Cananga

(c)�Mangkokan (d)�Jasmine

(e)�Cocor Bebek (f)�Vinca

3 http://www.mvision.co.jp/WebHelpIM/_RESOURCE/Watershed_01_fig.html

Proceedings of the OKU & ISM 2014 Workshop on Wavelet Theory and its Applications to Engineering 85

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4

(g)�Kestuba (h)�Gardenia

1 1

(2) 2

(a) (b) ( )(c) ( )

3[21]

4

(a) (b) (a) (b)

3 4

Proceedings of the OKU & ISM 2014 Workshop on Wavelet Theory and its Applications to Engineering86

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5

(3) ( ) (cx, cy)

{s1, s2, s3, … sn}, sm={smx, smy} (1)

� ={d1, d2, d3, …, dn} (2)

(3) Dyadic

= {f1, f2, f3, … fn} (3)

(5)

Zernike [22]

(1)

(2)

Zernike

Zernike ( ) Zernike

Zernike (4)

(4)

(5)

Proceedings of the OKU & ISM 2014 Workshop on Wavelet Theory and its Applications to Engineering 87

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6

(6)

Zernike (10 )

Zernike 1 32

1 Zernike

[23] [24]

Zernike

Affine

Proceedings of the OKU & ISM 2014 Workshop on Wavelet Theory and its Applications to Engineering88

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7

Affine

5 11.25

22.5 112.5 Affine (a)

0,45,90 Dyadic

(b) 22.5

(c) 112.5

8 F [25] (a),(b),(c)

0.0224, 0.0338, 0.0601 112.5 F

F

50.89%, 168.3%

(a)0 (b)22.5 (c)112.5 5 Affine

2

2 F

Source of Variation SS df MS F P-value F crit

Between Groups 143.217 7 20.456 0.0224 0.999989 2.0096

Within Groups 358945337 393208 912.864

Total 358945480 393215

Between Groups 214.080 7 30.583 0.0338 0.99996 2.0096

Within Groups 356208652 393208 905.904

22.5 Total 356208866 393215

Between Groups 381.134 7 54.448 0.0601 0.999687 2.0096

Within Groups 355972998 393208 905.305

112.5 Total 355973380 393215

Proceedings of the OKU & ISM 2014 Workshop on Wavelet Theory and its Applications to Engineering 89

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8

Dyadic

( )

6 2 Daubechies

Dyadic

Dyadic

(a) (b)Daubechies2 (c)Dyadic

6 Daubechies

Dual-Tree Complex Wavelet Transformation: DT-CWT

DT-CWT 7 DT-CWT

15,45,75

energy, mean, standard deviation, coefficient of variance

Proceedings of the OKU & ISM 2014 Workshop on Wavelet Theory and its Applications to Engineering90

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9

(a)Imaginary (b)Real

7 DT-CWT

(6)

8 3 (HSV)

(a)RGB (b)HSV (c)

8 ( )

9 4

4

H bins: 6 bins; S bins: 4 bins

4 regions x 24 bins = 96 bins

Proceedings of the OKU & ISM 2014 Workshop on Wavelet Theory and its Applications to Engineering 91

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10

(a) (b)

9

(7)

Support Vector Machine:

SVM[25] SVM 1963 Vapnik, V.

1992 Vapnik, V.

2.2

10

11 Watershed

1

10

Proceedings of the OKU & ISM 2014 Workshop on Wavelet Theory and its Applications to Engineering92

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11

11 Watershed

3.1

12

SVM 8

12 (90 ) (1/2) (

( ) (45

)

3.2

Dyadic

Zernike 32 Dyadic energy, mean, standard

deviation, coefficient variance 3

1 1 PCC

15 PCC 5

Dyadic

90

Dyadic

100%

Proceedings of the OKU & ISM 2014 Workshop on Wavelet Theory and its Applications to Engineering 93

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12

3 Dyadic

Dataset Percent Correct Classification (%)

Level 1 Level 2 Level 3

Original 94.79 95.83 94.79

Rotation 92.59 85.19 88.89

Translation 100 100 100

Average 95.79 93.67 94.56

4 4 Histo

Hue 4 ( 0, /3, 2 /3, 4 /3), Saturation 6 ( 6 )

4 96 3

Zernike

4

13

2

Dyadic energy, mean, standard deviation, coefficient of variance

Zernike 32 5

100

100% 2

Zernike

Dyadic

Proceedings of the OKU & ISM 2014 Workshop on Wavelet Theory and its Applications to Engineering94

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13

5

Dataset Details

Rotation, scale,

translation

Lighting Perspective Combination Average

Training set 100 100 100 100 100

Supplied Test Set 93.75 75 87.5 70.83 81.77

Dyadic Daubechies( 4) DT-CWT

SVM 13 2

4

Daubechies4(DB D4)

DB D4

Dyadic, DT-CWT

DT-CWT 15,45,75

Dyadic

4

Proceedings of the OKU & ISM 2014 Workshop on Wavelet Theory and its Applications to Engineering 95

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14

( )

NetCowBoy, DC-NCR130 6

LED 1 LED NetCowBoy, DC-NCR1305

5 Specification of NIR Camera

Resolution 1,300,000pixels

Minimum distance 20cm

Frame rate 30fps

Minimum

illumination

30lx

Size 52mm(W)x70mm(H)x65mm(D)

Weight 105g

13

LED

LED

Dyadic

(a) (b)

13

.

energy, mean, standard

Proceedings of the OKU & ISM 2014 Workshop on Wavelet Theory and its Applications to Engineering96

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15

deviation, coefficients of variance

Dyadic DT-CWT

Zernike

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Proceedings of the OKU & ISM 2014 Workshop on Wavelet Theory and its Applications to Engineering 97

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16

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840-8502 1

1974 1985 6 1974 ~78

1979 ~1990 ( JAXA) 1985~1987

( ) 1990 ~2014

2012 1998

2008 A

2008 Editor in Chief of IJACSA

International Journal of Advanced

Computer Science and Applications Best Paper Award ( ) 30

( ) 31

( )

840-8502 1

[email protected]

Proceedings of the OKU & ISM 2014 Workshop on Wavelet Theory and its Applications to Engineering98

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コンパクトサポートをもつウェーブレットの補間・補外に関するパラメータ領域における考察

佐藤 創

元専修大学ネットワーク情報学部

概要. 音声・画像データなどのウェーブレット変換に用いるウェーブレットは,例えばDaubechies 族,B-Spline 族など既知のものから選ばれることが多いが,あるクラスのウェーブレット全体をパラメータ表現できれば,パラメータの選定により多様なウェーブレットを容易に利用することができる.2つの直交ウェーブレットから新たな直交ウェーブレットを構成する補間法(福田・木下 [5],[6])はこの目的に沿った研究である.本報告ではフィルタの係数が 6項以下のパラメータ領域においてこの補間法を考察する.

On the Interpolation and the Extraporation of CompactlySupported Wavelets in the Parametric Domain

Hajime Sato

Senshu University (retired)

Abstract. On the application of wavelet transform to audio-visual data, etc., the wavelets

are usually selected among the well-known ones such as Daubechies wavelets of the ap-

propriate order. If we have a parametric representation of a certain set of wavelets, we

can use them freely when we want. The interpolating method introduced by Fukuda and

Kinoshita[5],[6] can be taken as an interesting trial on this aim. We consider this method

in the parametric domain in case the filter length is six or less.

1. 準備

通常のウェーブレットは多重解像度解析における scaling関数を介して構成される.以

下では,次の条件を満たす有限長の実数列 h = (hn) (n = 0, 1, · · · ,N)を考える.

N∑n=0

hn =√

2,(1.1)

N∑n=0

(−1)n hn = 0,(1.2)

行列 A =

⎡⎢⎢⎢⎢⎢⎣ N∑n=0

hn hn+k−2�

⎤⎥⎥⎥⎥⎥⎦ (|k|, |�| ≤ N − 1)には固有値 1が単一に存在し,それ以外(1.3)

の固有値の絶対値はすべて 1より小さい.かつ,固有値 1に対応する固有ベクトルを

1

Proceedings of the OKU & ISM 2014 Workshop on Wavelet Theory and its Applications to Engineering 99

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v = (vN−1, · · · , v0, · · · , vN−1) とすると fv(ξ) ≡ v0 + 2

N−1∑n=1

vn cos n ξ � 0である.

行列 Aを Lawton行列,条件 (1.3)を Lawton条件と呼ぶ.これら 3条件を満たす数列

hからウェーブレット変換のローパス・フィルタ

(1.4) m0(ξ) =1√2

N∑n=0

hn e−i n ξ,

が定義される.hをフィルタ係数列と呼び,N + 1をフィルタ長という.Dilation方程式

(1.5) φ(x) =√

2

N∑n=0

hn φ(2x − n)

の解はコンパクトサポートをもつ scaling関数 φ ∈ L2(R)となる.フーリエ変換 φから

(1.6) φ(ξ) = φ(ξ)Φ(ξ), Φ(ξ)

def=∑�∈Z

∣∣∣φ(ξ + 2π�)∣∣∣2

によって定義される関数 φ ∈ L2(R)は双直交条件

(1.7)

∫Rφ(x) φ(x − k) dx = δk0 (k ∈ Z)

を満たし,φの双対 scaling関数となる([1],[4],[7]).ただし,φはコンパクトサポートを

もつとは限らない.すなわち,m0(ξ)の双対フィルタ

(1.8) m0(ξ) = m0(ξ)Φ(ξ)

Φ(2ξ)

⎛⎜⎜⎜⎜⎜⎝= 1√2

N∑n=0

hn e−i n ξ とおく

⎞⎟⎟⎟⎟⎟⎠の係数列 h = (hn)は有限長とは限らない.hは φの Dilation方程式

(1.9) φ(x) =√

2∑

n

hn φ(2x − n)

の係数列であり,ウェーブレット ψとその双対 ψは

(1.10)

⎧⎪⎪⎪⎪⎪⎨⎪⎪⎪⎪⎪⎩ψ(x) =

√2∑

n

(−1)n h1−n φ(2x − n),

ψ(x) =√

2∑

n

(−1)n h1−n φ(2x − n)

によって与えられる.

上記 3条件 (1.1), (1.2), (1.3)を満たす係数列 hがさらに直交条件

(1.11)∑

n

hn hn+2k = δk,0 (k ∈ Z)

2

Proceedings of the OKU & ISM 2014 Workshop on Wavelet Theory and its Applications to Engineering100

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を満たすとき,hは自己双対性(h = h)をもち,φ = φは直交 scaling関数,ψ = ψは直交

ウェーブレットとなる.直交条件より直交ウェーブレットの係数列の長さは偶数である.

関数 ψ, φは空間 L2(R)に属すばかりでなく,ある程度の正則性をもつことが要求され,

そのためにある次数までのモーメント消失条件が課せられることがある.

ψ,および φに関する �次モーメント消失条件は,それぞれ

(1.12)

∫ ∞

−∞x � ψ(x) dx = 0,

∫ ∞

−∞x � φ(x) dx = 0 (� = 1, 2, · · · )

である.

2. scaling関数のパラメータ領域

フィルタ長 N + 1が比較的小さい場合のフィルタ係数列 hのパラメータ領域について記す.2つの等式条件 (1.1), (1.2)を満たす有限数列 hは N − 1個の独立なパラメータ,例え

ば N = 5のとき p, q, r, sによって,

h =

√2

4

(1 − p, 1 + q, p − r, s − q, 1 + r, 1 − s

)と表すことができる.この係数列で Lawton条件 (1.3)を満たすパラメータの組全体をDN

で表し,scaling関数のパラメータ領域と呼ぶ.M < N のときDM はDN の一部に,非ゼ

ロ項が M + 1個に退化した係数列として含まれている.N = 1, 2, 3, · · · についてDN の決

定を試みるが,N ≥ 4の場合は困難な課題となる.

DN の中で直交条件 (1.11)を満たす hのパラメータ領域をD⊥N(N は奇数)で表す.

2.1 N = 1の場合

この場合は特殊で,Haar waveletに対応する係数列

(2.1) h =

√2

4

(2, 2

)に限られる.これを Hで表す.領域D1 = D⊥1 はこの 1点 Hからなる.

2.2 N = 2の場合

係数列 hは 1個のパラメータ pにより次のように表現される:

(2.2) h =

√2

4

(1 − p, 2, 1 + p

).

p = 0は 2階の B-Spline wavelet S2 に対応する.p = ± 1のときフィルタ長が 2に減り,

p = −1は H, p = 1は Hを右シフトした s Hに対応する(シフトオペレータを sで表す).

3

Proceedings of the OKU & ISM 2014 Workshop on Wavelet Theory and its Applications to Engineering 101

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Lawton条件よりパラメータ領域D2 は次の開区間となる:

(2.3) D2 ={p ; −√3 < p <

√3}.

2.3 N = 3の場合

係数列 hは 2個のパラメータ p, qにより次のように表現される:

(2.4) h =

√2

4

(1 − p, 1 + q, 1 + p, 1 − q

).

p = 1/2, q = −1/2は 3階の B-Spline wavelet S3 に対応する.

p = (1 − √3)/2, q = (1 +√

3)/2は 2階の Daubechies wavelet D2 に対応する.

パラメータ領域D3 は,Lawton条件より次のように決定される(図 1)[8]:

(2.5) D3 ={

(p, q) ; 0 < (p2 + q2) (3 + (p + q − 1)2) < 24}.

式 (2.5) は p, q に関して対称である.h の相反(reciprocal)係数列を h�(h�n = hN−n)

で表す.直線 p + q = 1上にはよく知られた scaling関数が並ぶ.

�2 �1 1 2

�2

�1

1

2

q

D3 D2

H S2 s H

S3

←− D⊥3 s S2 p

OD∗2

Pout s2 H

D2, D�2

: Daubechies 2階

S3: B-Spline 3階

S2, s S2: B-Spline 2階

H, s H, s2 H: Haar

Pout: 円周上の除外点

O:領域内部の除外点(原点)

図 1 パラメータ領域D3 とD⊥3直交条件 (1.11)より,直交領域

(2.6) D⊥3 ={

(p, q) ; p2 + q2 = 2, (p, q) � (−1,−1)}

が得られる.従って,直交 scaling関数は 1個のパラメータ ωにより

(2.7) (p, q) =√

2 (cos ω, sin ω), (ω � 5 π/4),

4

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(2.8) m0(ξ) =1

4

3∑n=0

(1 − √2 cos (ω +

n π2

))

e−i n ξ

と表現される.直交領域D⊥3 の主な要素を表 1に示す:

ω (p, q) 記号 名称

π/4 (1, 1) s H シフト Haar, (0, 1, 1, 0)型

7 π/12

⎛⎜⎜⎜⎜⎝1 − √3

2,

1 +√

3

2

⎞⎟⎟⎟⎟⎠ D2 Daubechies2階

3 π/4 (−1, 1) H Haar, (1, 1, 0, 0)型

7 π/4 (1,−1) s2 H 2シフト Haar, (0, 0, 1, 1)型

23 π/12

⎛⎜⎜⎜⎜⎝−1 +√

3

2,−1 − √3

2

⎞⎟⎟⎟⎟⎠ D�2

相反 Daubechies2階

表 1 直交領域D⊥3 の主要点のパラメータ表示

2.4 N = 4の場合

係数列 hは 3個のパラメータ p, q, rにより次のように表現される:

(2.9) h =

√2

4

(1 − p, 1 + q, p − r, 1 − q, 1 + r

)p = 3/4, q = 0, r = −3/4は 4階の B-Spline wavelet S4 に対応する.

Lawton行列の固有値を p, q, r で簡潔に表現できないので,パラメータ領域 D4 を陽に

表すことができない.図 2 は D4 を 2 方向から眺めた 3D グラフを,図 3 は r = −1 と

p = 1の断面(D3 と sD3 が現れる)をもつ 3Dグラフを数値計算 (Mathematica使用)に

よって描いたものである.

図 2 パラメータ領域D4 の 3Dグラフ

5

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図 3 D4 の 2つの断面 r = −1 (D3), p = 1 (sD3)

2.5 N = 5の場合

係数列 hは 4個のパラメータ p, q, r, sにより次のように表現される:

(2.10) h =

√2

4

(1 − p, 1 + q, p − r, s − q, 1 + r, 1 − s

).

Lawton行列の固有値を p, q, r, sの関数として表すことは更に困難であり,パラメータ領域D5 を陽に示すことはできない.

2.5.1 直交ウェーブレットの場合

直交ウェーブレットの scaling関数の係数列 hについては直交条件 (1.11)から,独立な

関係式として

(2.11)

⎧⎪⎪⎨⎪⎪⎩ p2 + q2 + r2 + s2 = 4,

(1 − p) (1 + r) + (1 + q) (1 − s) = 0

が導かれる.半径 2の 4次元球面を表す第 1式に第 2式が制限を加える形になっていて,

パラメータ領域の自由度は 2になる.

以下では自由度 2のパラメータ表示として次の試みに従う.

(2.12)

⎧⎪⎪⎪⎨⎪⎪⎪⎩p2 + q2 = 4 cos2 θ,1 − p1 + q

= tanϕ,

⎧⎪⎪⎪⎨⎪⎪⎪⎩r2 + s2 = 4 sin2 θ,1 − s1 + r

= − tanϕ,(0 ≤ θ ≤ π

2, − π

2< ϕ ≤ π

2)

とおけば,係数列 hは θ, ϕによって表現される.

例 1 3階の Daubechies wavelet D3

p = 0.05907, q = 1.28223, r = −1.24166, s = 0.90037,

(θ, ϕ) = (0.87396, 0.39105).

例 2 2階の Coiflet C2

p = 1.20572, q = −0.04428, r = −1.20572, s = 1.04428,

(θ, ϕ) = (0.92321, −0.21201).

6

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逆に,(θ, ϕ)が与えられたとき,(p, q), (s, r)は式 (2.12)より円と直線の交点として定ま

る(図 4).

�2 �1 1 2p

�2

�1

1

2q

�2 �1 1 2s

�2

�1

1

2r

θ=0.874

ϕ=0.391

(D3のとき)

D3(p,q,r,s)=

(0.06,1.28,−1.24,0.90)

−ϕϕ 2 sin θ

2 cos θ

図 4  (θ, ϕ)と (p, q, r, s)の関係

図 4の円と直線が交点をもつように制限された (θ, ϕ)の領域を

(2.13) D�5 ={(θ, ϕ) ;

∣∣∣ 2 cos 2 θ + sin 2ϕ∣∣∣ ≤ 1

}で表す(図 5).記号がD⊥

5でないのは Lawton条件を満たさない点も含むことを意味して

いる.

0 Π�6 Π�4 Π�3 Π�2

Π�2

Π�4

0

�Π�4

�Π�2

Θ

�2 cos 2Θ � sin 2�� � 1

D�5

s2H

H, sH

D2, s2D2D3

(s, s2, s3)HsD∗2 sD2

C2D∗3 D∗2

s2H, s4H

 青 2点:D3 とその相反 黒い点:Coiflet C2

 緑 4点:D2 とそのシフトと相反(直線 θ = π/4,または直線 ϕ = 0上にある) 赤 4点:Hとそのシフト(直線 θ = π/4上にある)

 相反系列:点 (π/4, 0)に対して対称

 交点 (π/4, 0) には Lawton

条件を満たさない係数列√

22

(0, 1, 0, 0, 1, 0)が含まれる.

図 5 直交ウェーブレットのパラメータ領域D�5

直線 ϕ = 0,θ = π4の上にはD⊥3,およびそのシフト sD⊥3 , s2D⊥3 が含まれている.直交

領域D�5の主な要素を表 2に示す:

7

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係数列 h (θ, ϕ)

D3 (0.873957, 0.391053)

D∗3 (0.696839, −0.391053)

C2 (0.923208, −0.212014)

D2 (π/4, π/6)

s D2 (1.00931, 0.0) = (π/4 + 0.07127 π, 0)

s2 D2 (π/4, π/6)

D∗2 (π/4,−π/6)

s D∗2 (0.561482, 0.0) = (π/4 − 0.07127 π, 0)

s2 D∗2 (π/4,−π/6)

係数列 h (θ, ϕ)

H (π/4, π/4)

s H (π/4, 0)

s2 H (π/4, 0)

(π/4,± π/6)

(π/4,± π/4)

(π/4,± π/2)

s3 H (π/4, 0)

s4 H (π/4,−π/4)

表 2 直交領域D�5の主要点のパラメータ表示

3. scaling関数の補間

福田・木下 [5],[6]による scaling関数の補間法を紹介する.

3.1 直交 scaling関数の構成法

偶関数 p(t) (|t| ≤ 1)を用いて定義される関数

(3.1) M(ξ) =1

c

∫ cos ξ

−1

p(t) dt, c =∫ 1

−1

p(t) dt

は ξ の偶関数 M(−ξ) = M(ξ)であり,性質

(3.2) M(ξ) + M(ξ + π) = 1, M(0) = 1

をもつ.さらに,

(3.3) M(ξ) ≥ 0 (−π ≤ ξ ≤ π)

であるとき

(3.4) M(ξ) =∣∣∣m0(ξ)

∣∣∣2となる M の“平方根”m0(ξ) が存在し(スペクトル因子分解法による),M(ξ) � 0 (ξ ∈[−π/3, π/3])が満たされれば,m0(ξ)はMRAを生成する直交ウェーブレットのローパス・

フィルタとなる.とくに,p(t) = (1 − t2)N−1 (N ≥ 1)のとき,N 階の Daubechies wavelet

が得られる [4].以下では p(t)を m0(ξ)の生成関数とよぶ.

8

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例 1  p(t) = 1のとき (Haar wavelet)

M(ξ) =

∫ y−1

p(t) dt∫ 1

−1p(t) dt

=1 + y

2(y = cos ξ), m0(ξ) =

1 + z2

(z = e−i ξ)

例 2  p(t) = 1 − t2 のとき (2階 Daubechies)

M(ξ) =2 + 3 y − y3

4=(1 + y

2

)2(2 − y), m0(ξ) =

(1 + z2

)2 r0 − z√2 r0

(r0 = 2 +√

3).

例 3  p(t) = (1 − t2)2 のとき (3階 Daubechies)

M(ξ) =(1 + y)3

16(8 − 9 y + 3 y2), m0(z) =

√6

32 |z0| (1 + z)3 (|z0|2 − 2�(z0) z + z2),

ここに,z0 は z2 − 2 y0 z + 1 = 0の解,y0 は 8 − 9 y + 3 y2 = 0の解.

3.2 直交 scaling関数の補間

直交 scaling関数に対応する 2つの関数 p1(t), p2(t)を補間する関数

(3.5) p(t) = (1 − α) p1(t) + α p2(t) (0 < α < 1)

は新たな直交 scaling関数の生成関数となる.すなわち,

(3.6) Mj(ξ) =1

c j

∫ y

−1

p j(t) dt, c j =

∫ 1

−1

p j(t) dt ( j = 1, 2)

に対して,

(3.7) M(ξ) =1

c

∫ y

−1

p(t) dt, c = (1 − α) c1 + α c2

とおくと,

(3.8)

M(ξ) = (1 − α′) M1(ξ) + α′ M2(ξ),

1 − α′ = (1 − α)c1

c, α′ = α

c2

c, 0 < α′ < 1

となり,M1,M2 と同様に (3.2), (3.3)が成り立つから,

(3.9) M(ξ) =∣∣∣m0(ξ)

∣∣∣2を満たすローパス・フィルタ m0(ξ)の存在が保証される. 

例 4  p1(t) = 1(例 1), p2(t) = 1 − t2(例 2)とする.

p(t) = (1 − α) p1(t) + α p2(t) = 1 − α t2

9

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に対して

α′ =2α

3 − α, 1 − α′ = 3 (1 − α)

3 − α ,

M(ξ) = (1 − α′) M1(ξ) + α′ M2(ξ) =(1 + y

2

) 3 − α + α y − α y2

3 − αより直交ウェーブレットのローパス・フィルタ m0(ξ)を得ることができる.このウェーブ

レットは 1 + α階の Daubechies waveletと呼ばれる.

例 5  p1(t) = 1 − t2(例 2), p2(t) = (1 − t2)2(例 3)とする.

p(t) = (1 − α)(1 − t2) + α(1 − t2)2 = (1 − t2)(1 − α t2)

に対して

α′ =4α

5 − α, 1 − α′ = 5 (1 − α)

5 − α ,

M(ξ) = (1 − α′) M1(ξ) + α′ M2(ξ) =(1 + y

2

)2 10 − 5 y + α (−2 + 4 y − 6 y2 + 3 y3)

5 − αより直交ウェーブレットのローパス・フィルタ m0(ξ)を得る.このウェーブレットは 2+α

階の Daubechies waveletと呼ばれる.

3.3 B-Spline waveletの補間

福田・木下 [6]では,B-Spline waveletに関する補間が議論されている.

N 階の B-Spline waveletのローパス・フィルタ m0(ξ)は

(3.10) m0(ξ) =(1 + e−i ξ

2

)N

であるから,

(3.11) MN(ξ) =∣∣∣m0(ξ)

∣∣∣2 = (1 + cos ξ

2

)N

とおけば,m0(ξ) は MN(ξ) の “平方根” として導くことができる.N 階と N + 1 階の

B-Spline waveletを補間するものとして 0 ≤ α ≤ 1に対して

(3.12)

MN+α(ξ) = (1 − α) MN(ξ) + αMN+1(ξ)

=(1 + cos ξ

2

)N(1 − α

2+α

2cos ξ

)と定義すると,Rieszの補題により,ローパス・フィルタ

(3.13) m(N+α)0

(ξ) =

⎛⎜⎜⎜⎜⎝1 +√

1 − α2

⎞⎟⎟⎟⎟⎠(

1 + e−i ξ

2

)N ⎛⎜⎜⎜⎜⎝1 + 2 − α − 2√

1 − αα

e−i ξ

⎞⎟⎟⎟⎟⎠10

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を得る.

(3.14) A(α) =2 − α − 2

√1 − α

α=

α

2 − α + 2√

1 − αとおけば,0 < α < 1のとき 0 < A(α) < 1であり,フィルタ係数は

0.5 1Α

0.5

1

A�Α�

(3.15) hn =

√2

2N (1 + A(α)) { (N

n

)+ A(α)

(N

n − 1

) }(n = 0, 1, · · · ,N + 1)

となる.このウェーブレットは N + α階の B-Spline waveletと呼ばれる.

福田・木下 [5],[6]では,階数 N + αのウェーブレットの正則性が論じられている.

4. パラメータ領域における補間・補外の特徴

4.1 直交ウェーブレット

4.1.1 N = 3の場合

(1)補間 前節の例 4を対象に補間を考察する.Hと D2 の補間において

(4.1) M(ξ) =(1 + y

2

) 3 − α + α y − α y2

3 − α (y = cos ξ, 0 ≤ α ≤ 1)

の“平方根”m0(ξ)は一意ではなく,パラメータ領域で考察する場合には係数列 hとしての違いを区別する.α (0 < α < 1)に対して 4個の m0(ξ)が対応するが,α = 0のときは 3

個,α = 1のときは 2個になる.αとともに変化する様子を図 6に示す.

H s H s2 H α = 0

α = 1

����

����

����

����

D2 D∗2

図 6  αの変化による scaling関数の変化

(2)補外 補間の混合比 αの値を区間 [ 0, 1 ]の外まで拡張することを考える.

補間の場合は M(ξ)が M1(ξ), M2(ξ)の非負性 (3.3)を保存して m0(ξ)の存在が保証され

たが,α � [ 0, 1 ]の場合,M(ξ) < 0のときにはスペクトル分解ができない.

引き続き,(4.1) 式の M(ξ) を考察する.α � 3 で定義された M(ξ) が非負である条件

は,α ≥ 4,または α ≤ 1であるが,α = 4のときは対応する係数列 h =√

22

(1, 0, 0, 1) は

Lawton条件を満たさない(図 1の Pout に対応する)ので,α = 4を除外する.

結論として,α < 0,および α > 4であるすべての αに対して補外が可能であり,この範

囲では 2個のローパス・フィルタ m0(ξ)が対応する.

11

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さらに,α = 0の前後で滑らかに接続すること,α → ∞と α → −∞の極限値が一致することが確かめられる.パラメータ領域における極限点を P∞ と P∗∞ で表すと,

P∞ = (−1.297, 0.565), P∗∞ = (−0.565, 1.297)

である.補間・補外をあわせて αとともに変化する scaling関数の相互関係を図 7に示す.

Pout

����

����

���

���

P∞ P∗∞

α = 4

α = +∞α = −∞

H s H s2 H α = 0

α = 1

����

����

����

����

D2 D∗2

図 7 補間・補外における scaling関数の相互関係

図 8は,α ∈ R \ (1, 4 ]に対応する点 (p, q)が,除外点 Pout を除く円周全体D⊥3 をカバーしている様子を示している.

補間・補外の混合比 αに対して複数の scaling関数が対応したが,パラメータ領域では

円周の偏角 ωと 1対 1に対応する.ωと αの関係を図 9に示す.

�1.0 �0.5 0.5 1.0p

�1.0

�0.5

0.5

1.0

q

(α = 1) D2

(α = 0) H s H (α = 0)

P∞(α = ±∞)

D∗2 (α = 1)

(α = 4) Pout s2 H (α = 0)

P∗∞ (α = ±∞)

4 0 10

Π

2

Π

3 Π

2

2 Π4 0 1

0

Π

2

Π

3 Π

2

2 Π

Α

Ω

図 8 直交 scaling関数の円周上の配置 図 9  αと ωの関係

4.1.2 N = 5の場合

パラメータ領域D5 を陽に得ることができないながら考察を進める.

直交ウェーブレットのパラメータ領域D�5は自由度 2の広がりをもつので,直交 scaling

関数の補間・補外に対応する点 (θ, ϕ)が混合比 αの変化により描く曲線に興味がある.

12

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前節の例 5で述べた Daubechies waveletの 2階と 3階の補間を補外とともに考察する.

(4.2) M(ξ) =(1 + y

2

)2P(y), P(y) =

10 − 5 y + α (−2 + 4 y − 6 y2 + 3 y3)

5 − α (y = cos ξ)

について,P(y) = 0が重根をもつ αの値は,P((2 ± √5/α)/2

)= 0より,

α0 =7 − 3

√5

2= 0.145898 · · · , α1 =

7 + 3√

5

2= 6.85410 · · ·

であり,ローパス・フィルタ m0(ξ)が得られるための必要十分条件は

(4.3) α ≤ 1, または α ≥ α1

であることがわかる.異なる m0(ξ)の個数は αにより次のように変化する:

P(y) = 0のαの範囲 m0(ξ)の個数 実根の個数 虚根の個数α = 1 2 1 (−1が根) 2

α0 < α < 1 4 1 2α = α0 6 3 (重根あり) 0

0 < α < α0 8 3 0α = 0 4 1 (Pが 1次式) 0

−∞ < α < 0 4 1 2α1 < α < ∞ 4 3 0α = α1 2 3 (重根あり) 0

αの変化とともに個数が増減する m0(ξ)の相互関係の概略を図 10に示す.

� �

� �� �� �

� �� �

� �� �

� �

�������

��

��

��

��

��

��

��

����

���

D3 D∗3

D2 D∗2s D2 s D∗2

L1L2 L∗2L∗1

P P∗

m0(ξ)の個数 αの値

1

α0

0

−∞+∞

α1

2

4

6

8

4

4

4

4

2

図 10 補間・補外における m0(ξ)の相互関係

図 11は,αを 1から −∞まで減少させたとき,および α1 から +∞まで増加させたときに対応する点 (θ, ϕ)の移動の様子(D2-D3 補間・補外曲線)を,図 5の領域D�

5上に描

いたものである.

13

Proceedings of the OKU & ISM 2014 Workshop on Wavelet Theory and its Applications to Engineering 111

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まず,2つの青点 D3,D∗3 (α = 1)から曲線はそれぞれ両方向に伸び,その一方は α = 0の

とき直線 ϕ = 0上の緑点(s D2 と s D∗2)で終わる.他方は α = 0のときに直線 θ = π/4上

の緑点(D2 と D∗2)を通過して α→ −∞の極限で紫の点 L1,L∗1 に達する.α0 に対応する

6点を小さい黒点で示した.その中の 2点は新しい曲線(4本)の起点となり,その一方

は α = 0のとき,緑の点で終わる.Coiflet C2 に対応する大きい黒点はその中の1つの曲

線上にある.他方は α→ −∞の極限で紫の点 L2,L∗2 に達する.

α1 に対応する 2 点をグレイの小さい点 P, P∗ で示した.それらから両方向に伸びる曲線は α→ +∞のとき各極限点において,α→ −∞の曲線と滑らかに接続する.

0 Π�6 Π�4 Π�3 Π�2

Π�2

Π�4

0

�Π�4

�Π�2

Θ

�2 cos 2Θ � sin 2�� � 1

Π�4 9Π�32

5Π�24

Π�6

Π�8

D2-D3 付近拡大図

L1 α=−∞

D2 α=0α=α0

α=1D3

D�5

L2

PL1

D2

D3

sD∗2 sD2

C2D∗3D∗2 L∗1P∗

L∗2

図 11  D2-D3 補間・補外曲線

図 11の D2-D3 補間・補外曲線にはどんな意味があるか.D2, D∗2 および D3, D∗3 が,それぞれのウェーブレットの 1 次モーメント消失の条件によって決定されたことを考える

と,� = 1のときの条件 (1.12)を検討する価値がある.この条件は係数列の性質として

(4.4)

5∑k=0

(−1)k k hk = 0

と表現され,さらにパラメータに関して

(4.5) p + q + r + s = 1

と等価になる.この関係を満たす点 (θ, ϕ)の曲線を描くと 1個の閉曲線(ピンク色)とな

り,図 11の曲線と完全に一致することがわかった(図 12左).

Coifletでは φの 1次モーメント消失条件 (1.12)が満たされている.ただし,このとき

φのサポートは区間 [−2, 3]に設定する必要がある.この条件は

(4.6)

3∑k=−2

k hk+2 = 0, p − q + r − s = −1

14

Proceedings of the OKU & ISM 2014 Workshop on Wavelet Theory and its Applications to Engineering112

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と等価であり,対応する曲線は Coifletの点 C2 と 2点 sD2, sD∗2 を通る(図 12右).

0 Π�6 Π�4 Π�3 Π�2

Π�2

Π�4

0

�Π�4

�Π�2

Θ

�2 cos 2Θ � sin 2�� � 1

0 Π�6 Π�4 Π�3 Π�2

Π�2

Π�4

0

�Π�4

�Π�2

Θ

�2 cos 2Θ � sin 2�� � 1

C2

D�5

D�5

図 12  1次モーメント消失条件を満たす曲線(左 ψ,右 φ)

4.2 B-Spline waveletの補間

非直交ウェーブレットの B-Spline waveletの補間をパラメータ領域で考察する.

N 階と N+1階の B-Spline waveletの補間で得られる N+α階の B-Spline wavelet (3.13)

の場合は比較的単純で,パラメータ領域DN において両者を結ぶ直線上に位置する.

例えば,4 + α階のとき,(3.14)の A(α)を Aとおくと,係数列 (3.15)の

(4.7)

h =

√2

16 (1 + A)

(1, 4 + A, 6 + 4 A, 4 + 6 A, 1 + 4 A, A

)=

√2

4(1 − p, 1 + q, p − r, s − q, 1 + r, 1 − s)

より定まるD5 の点

(4.8) (p, q, r, s) =1

4 (1 + A)

(3 + 4 A, −3 A, −3, 4 + 3A

)は 2点 1

4(3, 0, −3, 4) = S4 と

18

(7, −3, −3, 7) = S5 を結ぶ線分

(4.9) p =9/4 − q

3=

3 + r3=

7

4− s

の上にある(平面 p + q + r + s = 1に含まれる).

5. おわりに

直交 scaling関数の補間・補外について,発表 [5]に触発されて考察してきた.パラメー

タ領域において眺めてみることにより,scaling 関数の種々の性質を興味深く確認するこ

15

Proceedings of the OKU & ISM 2014 Workshop on Wavelet Theory and its Applications to Engineering 113

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とができた.まだ細かく分析する課題が残っていて,できれば発表の際に追加したいと考

えている.

このテーマでは実際にウェーブレットを変化させて変換結果を比較検討することが必要

である.十分な情報が含まれている画像情報などにおいてはウェーブレットの変化による

影響は微妙であり,精密な分析を要する.ここではフィルタ長が 6以下のウェーブレット

の全体をパラメータ領域におさめる試みを追究したにすぎない.

謝辞 論文 [5],[6]の著者福田尚広氏には,D2-D3 補間・補外曲線についてモーメントの

消失条件との関連を指摘していただき,計算過程にも協力していただいた.ここに感謝の

意を表す.

芦野隆一・萬代武史・守本晃氏らの研究グループの方々には,ウェーブレット研究部会

セミナーなどで議論をしていただいたことに感謝する.

参考文献

[1] A. Cohen, I. Daubechies and J.-C. Feauveau,“Biorthogonal Bases of Compactly Sup-

ported Wavelets,” Comm. Pure Appl. Math. 45, 485 - 560, 1992.

[2] D. Colella and C. Heil:“The Characterrization of Continuouse, Four-Coefficient Scal-

ing Functions and Wavelets,” IEEE Trans. on IT, Vol. 38, No.2, 876 - 881, March, 1992.

[3] I. Daubechies, “Orthonormal bases of compactly supported wavelets,”Communications

on pure and applied mathematics, 41 (7), 909 - 996 (1988).

[4] I. Daubechies, Ten Lectures on Wavelets, SIAM, 1992.

[5] 福田尚広,木下保,“正規直交ウェーブレットの補間による新たなウェーブレットの

構成法について,” 日本応用数理学会 2013年度年会, 2013.

[6] N. Fukuda and T. Kinoshita, “On the interpolation on orthogonal wavelets with compact

support,” ISAAC (to appear).

[7] W. Lawton, “Necessary and sufficient conditions for constructing orthonormal wavelet

bases,” J. Mathematical Physics, 32, 57 - 61, 1991.

[8] 佐藤創, “ウェーブレットであるための条件に関する一考察,” 日本応用数理学会 2006

年度年会予稿集, 62 - 63, 2006.

佐藤 創 (元専修大学ネットワーク情報学部)

〒221-0051 横浜市神奈川区幸ヶ谷 15 - 4

E-mail: [email protected]

16

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地震解析のための海底変位計測におけるウェーブレット相関法

川崎秀二 ∗ 木戸元之 †∗ 岩手大学 † 東北大学

概要. 地震予測のための有用な情報として, 海底面の変位の計測が行われている. 基本的手法は, 観測船から海底設置トランスポンダへデータを送信し, トランスポンダからの返信波と元の送信波との相関をとることで観測船での受信時刻を示す相関ピークを時間軸上で得ようとするものである. この手法だけでは, 精確なピークを得ることが難しい. これに対し, 送信波・受信波それぞれのウェーブレット係数の相関をとれば, ピークが先鋭化され精確な受信時刻を特定することができることを報告する.

Wavelet-correlation Method in Seafloor DisplacementMeasurement for Earthquake Analaysis

Shuji Kawasaki∗ Motoyuki Kido†∗Iwate University †Tohoku University

Abstract. As useful information for earthquake prediction, the seafloor displacements

are measured. Its basis method is transmitting a signal from the ocean station vessel to

transponders on the seafloor, receiving the returned signal from the transponders to the

vessel and taking the correlation of both signals; the correlation might present a peak

that indicate the receiving instant at the vessel. Actually, however, this basic method just

cannot show a precious peak usually. We propose that correlation of wavelet coefficients of

transmitted original signal and the returned signal may lead to sharp peaks so that precise

identification of the receiving instants are possible.

1. はじめにGPSによる海上測位と,観測船―トランスポンダ(海底設置基準局)間の音響測距を組

み合わせた手法により,トランスポンダの位置を精密に決定し,プレート運動による海底地殻変動を検出するための観測および海底面の変位解析が行われている [1∼6]. 海底面変位の情報は,地震予測(非地震時の歪み蓄積過程の分析,地震前のイベント同定)や地震後の解析(余効変動の検出,プレート変動性の解析)などへの重要な知見となる.この解析は,大きく分けて以下の3つの要素技術からなる:

(1) GPSアンテナ位置から,音響送受波器のグローバル位置の決定

(2)音響送受信データの相関処理により,観測船ートランスポンダ間のデータ伝搬往復時間の算出

1

Proceedings of the OKU & ISM 2014 Workshop on Wavelet Theory and its Applications to Engineering 115

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Fig. 1. 海底面変位の計測

(3)海中音速度構造モデルから求まる観測船ートランスポンダ間の距離を算出し(図 4参照),(1)の結果と併せてトランスポンダのグローバル位置を決定

本研究では,上記 (2)の部分の音響測距システム観測船ートランスポンダ間のデータ伝搬往復時間の算出について考察する.

全体の音響測距システムとしては,次のように構成されている: トランスポンダは通常,1海域に数個程度設置されている.送信されるデータストリームは,各トランスポンダを識別するためのトランスポンダ毎に付与された識別用トリガー信号と,測距用の本信号からなっている.トランスポンダは,内部相関処理により識別信号の受信を認識すると,識別信号のみを修正して,一定時間後に返信する.観測船では,海洋ノイズを受けた返信データストリームを受信する [1].

実際の観測船ートランスポンダ間の距離を算出するにあたっては,海洋の波や船体動揺,観測船エンジンの影響などにより,送信時および受信時のトランスポンダに対する視線方向の海中音速の差がドップラー効果を生じてしまう.このため,トランスポンダあるいは観測船で受信する信号の周波数は変化している.この変化は元の周波数の数 %にも達する場合があり,つまり単純に相関処理を行っても所望の精度で受信時刻特定ができない事がある [1].このドップラー補正に対する処理手続きも必要であるが,本研究では対象とはしない.

2

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2. 送信波形について2.1 M系列

M系列は,無相関な疑似確率変数列で,再帰的計算により求まる(つまり確定的な)2値列である [11].Brown運動のような無相関性と求めやすさを両立している事から,工学の諸分野で応用されている.一般の n次M系列 {ξk | k = k = 1, · · · , 2n −1}は,次のように求められる:初期ベクトル a0 =

(a1, · · · , an

)と特性多項式 f (x) =

∑nl=0 fl xl ( f0 � 0, fn = 1)

により,

a(k + 1) = Ta(k), a(0) = a0;

T =

⎡⎢⎢⎢⎢⎢⎢⎢⎢⎢⎢⎢⎢⎢⎢⎢⎢⎢⎢⎢⎢⎢⎢⎣

0 1 0 · · · 00 0 1 · · · 0...

. . ....

... 1f0 f1 f2 · · · fn−1

⎤⎥⎥⎥⎥⎥⎥⎥⎥⎥⎥⎥⎥⎥⎥⎥⎥⎥⎥⎥⎥⎥⎥⎦,

ξk =(

a(k) の第 n要素)

mod 2,

(2.1)

ただし,a0 の要素は 0, 1の2値であり,ξk も 0, 1の2値となる.初期ベクトルと特性多項式をいろいろ選択する事で異なるM系列が得られる.本研究では,7次M系列を用いる(n = 7)が,初期ベクトルおよび特性多項式は次のものとした:

初期値 : a0 =t[1 1 1 1 1 1 1],

特性多項式 : f (x) = x6 + 1(2.2)

とした.これは,観測船の測定機器における送信波形の生成が,この初期ベクトルおよび特性多項式に基づいているからである.(2.2) で生成される 7次 M 系列は下記のような0, 1の2値列(長さ 127)となる:

[ 010110111011110001110100010101110000001111011001100100100111001

111100100000100011010101001101101001010000101100001100101111111 ] .(2.3)

図 2の左側は,生成されたM系列に対し,0→ 1, 1→ −1と値を変換したものである.また,分かりやすさのため,値 −1, 1の間を連続関数的に描画している.右側の図は,このM系列 ξk, k = 1, · · · , 127の自己相関

(2.4) rM(n) =1

N − 1

(N−n)∧N∑k=1∨n

ξk ξn+k, n = −63, ..., 63

3

Proceedings of the OKU & ISM 2014 Workshop on Wavelet Theory and its Applications to Engineering 117

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20 40 60 80 100 120

−1

−0.5

0

0.5

1

M−sequence

k−40 −20 0 20 40 60

−0.2

0

0.2

0.4

0.6

0.8

1

n

Correlation of the M−sequence

Fig. 2. 生成されたM系列と,その自己相関

である.ただし,a ∨ b = max(a, b), a ∧ b = min(a, b).n = 0で鋭いピークを持ち, n � 0

では rM(n) の値は小さくなる.この性質は相関によるイベント発生時刻の検出に利用される.

2.2 送信波— M系列による位相変調波

観測船から海底トランスポンダへの送信波形としては,M系列の −1,+1の値(=情報信号)を搬送波に乗せたものをとる.搬送波は周波数 10[KHz]の sin波 x(t) = sin(104 · 2πt)をとる.

図 3は,観測船から海底トランスポンダへの送信波形である.最上段は式 (2.2)により生成された7次M系列であり,−1,+1の値1つにつき,20点のサンプリング点がとられている.つまり,ξ(t) = ξ

( ⌈t

20

⌉ ), t = 1, · · · , 2540.

2段目の図は,x(t) を1周期につき 20 点サンプリングしたもの x(t) = x(

t104·20

), t =

1, · · · , 2540に対し,1段目のM系列との積をとったものである:

(2.5) X(t) = x(t) ∗ ξ(t), t = 1, · · · , 2540.

M系列の値が +1の箇所は sin波の値は不変で,値が −1の箇所は正負が反転する.つまり,sin波を位相変調したものとなる.3段目の図は,1段目のM系列の最初の約 250点部分を拡大したものであり,4段目の図は,2段目の位相変調波の最初の約 250 点部分を拡大したものである.元のM系列の −1,+1の系列情報を,この位相変調された波形が担っているのが分かる.なお,データ点間の時間間隔は,

(104 · 20

)−1= 5E−6 [s]となる.

図 4は,このような送信波と海底トランスポンダからの返信波による変位計測について図示したものである.変位 [m]は,海中音速(補正含む)[m/s] ×送信~返信波受信までの時間 [s]に基づいて算出される.我々が考察する対象は,この「送信~返信波受信までの時間 [s]」を出来るだけ精確に知る事,つまり,返信波受信の時刻を計測機器に,出来るだけ精確に自動同定させる事である.受信時刻が,その前後の時間と比べ明瞭に識別で

4

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500 1000 1500 2000 25000

0.5

1

generatedM−sequence

500 1000 1500 2000 2500−1

−0.5

0

0.5

1

modulatedcarrier

50 100 150 200 2500

0.5

1

a part of the M−seq

50 100 150 200 250−1

−0.5

0

0.5

1

correspondingpart of the carrier

Fig. 3. 生成されたM系列に基づいて変調された搬送波

きるようであれば自動同定は出来るが,海洋の波の影響が複雑に積重なる事や観測船エンジン音等のノイズを受ける事があり,同定は実際にはあまり簡単ではない.

図 5は,上記の送信波(図 3最下段)の自己相関である(ピーク値を1として正規化してある).図 2右と比べ,n � 0で相関波形に少し乱れが生じているが,相関ピークは依然として,時間軸上の前後と比べ.明瞭に識別できている.

2.3 実測データとの相関

図 6左上(data)は,観測船での受信波の一部である.横軸(時間に相当するが,データ点)中央付近で受信開始している.左下は,この dataと,元の観測船からの送信波形との相互相関( cross-correlation)である.相関ピークにより,dataの受信開始時刻をほぼ特定できているように見える.しかし,この相互相関のピーク付近を拡大すると,右下の図のように,局所振動波形となっており,ピーク時刻を精確に特定できていない事が分かる.この右下の局所振動的な相互相関を,より明瞭に識別可能なピークを提示できるようなものにしたい.

5

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Fig. 4. 変位計測と送受信波

−40 −20 0 20 40 60−0.2

0

0.2

0.4

0.6

0.8

1

Fig. 5. 送信波の自己相関

6

Proceedings of the OKU & ISM 2014 Workshop on Wavelet Theory and its Applications to Engineering120

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3 3.5 4 4.5 5 5.5 6 6.5

x 104

−1

−0.5

0

0.5

1

data

3 3.5 4 4.5 5 5.5 6 6.5

x 104

−1

−0.5

0

0.5

1

correla−tion

4.71 4.715 4.72 4.725 4.73 4.735 4.74 4.745 4.75

x 104

−1

−0.5

0

0.5

1

peakneighbor−hood of correla−

tion

Fig. 6. 受信波実測データと,その相関

3. ウェーブレット法での相関上述の不具合の改善案として,本研究では,送信波形および受信波形それぞれのウェーブレット係数をとり,その両者の相互相関をとる事を試みた.

図 7の最上段(data)は,受信波形である.第2段(r0)は,受信波形と送信波形の相互相関である(図 6左下と同じ).

いま,送信波形 X のウェーブレット係数 W (X)

j (k) (k = 0, · · · ,Kj), Kj = �2− jN� − 1,を次のようにとる:

W (X)

1(k) =

m−1∑l=0

hl x(2k+1−l) mod N =

N−1∑l=0

h(2k+1−l) mod N xl , j = 1,(3.1)

V (X)

j (k) =

m−1∑l=0

gl V (X)

j−1, (2k+1−l) mod N =

N−1∑l=0

g(2k+1−l) mod N V (X)

j−1,l, j ≥ 1,(3.2)

W (X)

j (k) =

m−1∑l=0

hl V (X)

j−1, (2k+1−l) mod N =

N−1∑l=0

h(2k+1−l) mod N V (X)

j−1,l, j ≥ 2,(3.3)

ただし V (X)

0,l = xl であり,{ hl | l = 0, 1, · · · ,m − 1}および { gl | l = 0, 1, · · · ,m − 1}はウェーブレットフィルタおよびスケーリングフィルタ [10]である.同様に,受信波形 Y についても,ウェーブレット係数W (Y)

j , j = 1, 2, · · · をとる.これはj = 1では (3.1), (3.2)において xあるいは X を,yあるいは Y で置き換えたものであり,j ≥ 2では逐次的に (3.2), (3.3)を計算したものである.このようにして,各スケールでの,

7

Proceedings of the OKU & ISM 2014 Workshop on Wavelet Theory and its Applications to Engineering 121

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10,000 20,000 30,000 40,000 50,000 60,000 70,000−1

0

1

data

wavelet=’sym10’

10,000 20,000 30,000 40,000 50,000 60,000 70,000−1

0

1

r0

200 400 600 800 1000 1200 1400 1600 1800 2000 2200−1

0

1

j=4

500 1000 1500 2000 2500 3000 3500 4000 4500−1

0

1

j=3

1000 2000 3000 4000 5000 6000 7000 8000 9000−1

0

1

j=2

2000 4000 6000 8000 10000 12000 14000 16000 18000−1

0

1

j=1

Fig. 7. ウェーブレット係数の相互相関.

送信波および受信波のウェーブレット系数列 W (X)

j , W (Y)

j , j = 1, 2, · · · をそれぞれとる.

図 7の第3段~6段は,この W (X)

j および W (Y)

j の相互相関

(3.4) r j(k) =1

Kj − 1

(K j−k)∧K j∑l=1∨k

W (X)

j (l) W (Y)

j (k + l), k = −(2− jN − 1), ..., 2− jN − 1

を, 各スケール j = 1, 2, 3, 4についてとったものである.なお,この図のウェーブレットフィルタは,10次 symletと呼ばれるものを用いている [10].

j = 1, 2については,少なくとも r0と同様のピークが観察される.一方, j = 3, 4では相関がノイズに近くなり,ピークが特に観察されるとは言いにくい.つまり,送信波形と受信波形の相関成分を,スケール j = 1, 2において拾っている.これは,海洋ノイズとは無関係に,送信波である位相変調波の特性がスケール j = 1, 2において抽出されたものである.返信波は海洋ノイズに汚されているが,残存していた送信波の特性を相関として抽出したという事である.

なお,いずれの相関図も,横軸は相関列のインデックス k である.ここで用いた 10次symletの場合, j = 1で Wj が約 1/4の長さになり,以降 j = 2, 3, · · · とほぼ半減していく. jが大きくなるほど低周波成分を抽出している事に対応する.この Wj の長さの減少に応じて,相関列の長さも減少している.

8

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36,000 36,500 37,000 37,500 38,000 38,500−1

−0.5

0

0.5

1

r0

wavelet=’sym10’

9000 9100 9200 9300 9400 9500 9600−1

−0.5

0

0.5

1

rw1

4500 4550 4600 4650 4700 4750 4800−1

−0.5

0

0.5

1

rw2

4500 4550 4600 4650 4700 4750 4800−1

−0.5

0

0.5

1

productofrw1,rw2

Fig. 8. ウェーブレット係数の相互相関(拡大).

4500 4550 4600 4650 4700 4750 4800−1

−0.5

0

0.5

1

productof

rw1,2 (1)

4500 4550 4600 4650 4700 4750 4800−1

−0.5

0

0.5

1

productof

rw1,2 (2)

arg max=4663

arg max=4662

Fig. 9. rw1, rw2の2通りの積

9

Proceedings of the OKU & ISM 2014 Workshop on Wavelet Theory and its Applications to Engineering 123

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図 8は,図 7のピーク付近を拡大したものである.前述のように,横軸(各相関列のインデックス k)の違いに注意する.

第1段~3段でのピーク付近の拡大は,図 7の第2段~第4段において,それぞれ中心のインデックスの左右に適当な等間隔の範囲に限定して描画したものである.第4段は,r1, r2 の積をとったものである(詳細は次頁を参照).

第4段では,r0の局所的振動と違い,ピークが先鋭化されているのが分かる.

図 8の r1, r2 の積について,r2 のデータ長は r1 の半分である.今回は,r2 の長さに合わせて r1 を1点おきに間引いた列をとり,これと r2 の積をとった.ただ,これについても,r1 の奇数番の列 r1(2k − 1)あるいは偶数番の列 r1(2k) (k = 1, · · · ,K2/2)のいずれと積をとるか,の選択の余地がある.

図 9は,上段が奇数番と積をとったもの,下段が偶数番と積をとったものである.それぞれ,k = 4662, 4663においてピークをとっている.いずれにせよ,提示するピーク時刻の誤差は,高々データ点1点分である.

謝辞本研究は,東北大学災害科学国際研究所特定共同研究プロジェクト(研究代表者:川崎秀二)としての支援を受けている.ここに記して謝意を表します.

参考文献

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10

Proceedings of the OKU & ISM 2014 Workshop on Wavelet Theory and its Applications to Engineering124

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[12] 海洋音響の基礎と応用,海洋音響学会編,成山堂書店,2004.

[13] 海洋計測工学概論,田口・田畑著,成山堂書店,2001.

川崎秀二 (岩手大学人文社会科学部)

〒020-8550 盛岡市上田 3-18-8

E-mail: [email protected]

木戸元之 (東北大学災害科学国際研究所)

〒980-0845仙台市青葉区荒巻字青葉 468-1

E-mail: [email protected]

11

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∗ ∗∗

. X [ ] f [ ]

f RBF(radial basis function)

X

Scattered data sampling and the error of approximationMasami Okada∗ Masanori Morita∗

Abstract. First, we recall the recent theory of interpolation of data given on an infinite

set in the plane by means of the radial basis function. Secondly, we investigate the in-

vertibility of the infinite matrix associated to the radial basis function, which implies the

existence of Lagrange like functions. Finally, we state a sharp asymptotic error estimate

for our sampling approximation operator. The proof is partially based on a property of

the multivariate Lagrange approximation.

1.[7]

R2

X = {xk ∈ R2 | k = 1, 2, · · · ,N}R2 f { f (xk) | k = 1, · · · ,N}

ϕ {ϕ(x − xk)}Nk=1f S ( f , X)(x) =

∑k ak ϕ(x− xk) X f

S ( f , X) S ( f , X) f[7] ( [11]

1

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)

S ( f , X)(xk) = f (xk), k = 1, 2, · · · ,N{ak | k = 1, 2, · · · ,N} ϕ ( )

ϕ S ( f , X) N → ∞f

2. positive definite functionϕ N X = {xk ∈ R2 | k =

1, 2, · · · ,N} N(ϕ(x j − xk)

)X

xj f (x j) S ( f , X)S ( f , X)(x) =

∑k ak ϕ(x − xk)

(ak) ϕ Bochnerϕ

ϕsin(πx)sinh(πx)

xsinh(πx) [9]

ϕ

Kriging D.G.Krige(Univ of Witwatersrand, 1951 )

[12]

3.X

(ϕ(x j − xk)

)Gerschgorin

1 δ R2 X

xj, xk δ ≤ |x j − xk | p.d. ϕ ϕ(ξ) R2(

ϕ(x j − xk))

l2

T ϕ δ

2

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( ) [7](ϕ(x j − xk)

)l2

T Range(T ) T ∗

Null(T ∗) T l2

X N XNN → ∞ ϕ S ( f , X)

T l2 T

4. L2

ϕ(ξ) ξ α 2 < α L2(R2)

( f , g)H =∫R2f (ξ) g(ξ) (ϕ(ξ))−1 d ξ

H = Hϕ ϕ

H Bα/22,2 (R2)

f Hϕ f

5. u∗kX xk 1 X 0 u∗k

f (x j) S ( f , X)

S ( f , X)(x) =∑kf (xk) u∗k(x)

u∗k HXN

N → ∞ [7]

3

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6.X sinc

[5] X[7]

2 H ⊂ Bsp,∞(R2) 2/p < s 1 < p < ∞ Hf

‖ f − S ( f , X)‖Lp(R2) ≤ C(hX)s ‖ f ‖H .

hX = supx∈R2 inf j ‖x − x j‖ C hX f

ϕ fs

H ⊂ Bsp,∞(R2)H Bsp,∞(R2)

‖S ( f , X)‖Bsp,∞(R2) ≤ C‖ f ‖Bsp,∞(R2) ???

hX C

2 g = f − S ( f , X)

g ∈ Wmp (Rd) d

p < m1 < p < ∞ X g = 0

‖g‖Lp(Rd) ≤ C(hX)m ‖g‖Wmp (Rd).

C hX g

[2]

4

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:

[4]

1990 RBF

[6] [11] 2000

7.

RBF

(c.f. [5])

Y-K.Cho

5

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( )192-0397 1-1E-mail: [email protected]

( )192-0397 1-1E-mail: [email protected]

6

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ウェーブレット理論と工学への応用

              主催 大阪教育大学・統計数理研究所

  

平成

二十六年

十一