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2 0 0 6 (1) 2007.9 金属資源レポート 147 4351 亜鉛・鉛資源 インドの鉛/亜鉛鉱床の埋蔵量は、約 126 百万 t で、 地金換算で亜鉛 11 百万 t、鉛 2.6 百万 t となっている。 一方、資源量は 397 百万 t とされており、鉛と亜鉛の 含有量は前者 13 百万 t、後者 4.6 百万 t と見積もられ ている。これらを合わせると、約 522 百万 t となる。 鉛資源の 89 %及び亜鉛資源の 93 %は Rajasthan 州に 集中している。インドの鉛/亜鉛の採鉱・製錬は、同州 に集中している。表 1 に UNFC(国連フレームワーク クラシフィケーション)に基づくインドの亜鉛/鉛埋蔵 量(2005 年 4 月 1 日)を示す。 国別デマンドサイド分析 2006(1) ―インド(亜鉛・鉛)― はじめに インドの銅産業構造及び今後の銅需要動向予測について、金属資源レポート(2007.1 Vol.36 No.5)で紹介を行った。 本稿では、インドの非鉄金属産業のうち亜鉛/鉛産業に焦点を当て、その産業構造と需要動向を紹介するものである。 ジャカルタ事務所 次長 [email protected] 池田 肇 合  計 アーンドラ・プラデーシュ (Andhra Pradesh) ビハル (Bihar) グジャラート (Gujarat) マドヤ・プラデシ (Madhya Pradesh) マハラストラ (Maharashtra) メガラヤ (Meghalaya) オリッサ (Orissa) ラジャスタン (Rajasthan) シッキム (Sikkim) タミール・ナードゥ (Tamil Nadu) ウッタランチャル (Uttaranchal) 西ベンガル (West Bengal) 埋蔵鉱物量 埋蔵量 資源量 合計 亜鉛(金属地金換算) 791 5,800 1,080 117,583 500 125,754 5,829 11,435 329 6,920 9,272 880 670 350,925 450 790 5,620 3,706 396,826 6,620 11,435 6,129 6,920 9,272 880 1,750 468,508 950 790 5,620 3,706 522,580 埋蔵量 263 10,813 16 11,092 63 39 1 340 590 14 11,670 4 37 267 143 13,168 資源量 合計 63 39 264 340 590 14 0 22,483 20 37 267 143 24,260 埋蔵量 30 122 39 2,391 9 2,591 鉛(金属地金換算) 資源量 170 24 4 26 17 38 4,008 8 183 140 4,618 合計 200 24 126 26 0 17 77 6,399 9 8 183 140 7,209 単位:千 t 出典:IBM 鉱業年間 2004 年版 表1 インドの亜鉛 / 鉛埋蔵鉱量[2005 年 4月1日時点](UNFC 基準) 2. 鉛/亜鉛主要生産企業 2-1. 亜鉛/鉛鉱山 インドの亜鉛/鉛の地金生産は、現在、Hindustan Zinc 社(以下、HZL 社)、Binani Zinc 社の 2 企業が独 占する状態となっている。 HZL 社は、1966 年 1 月 10 日にインド金属会社 (Metal Coporation of India)(MCI)を母体に設立され る。その後、2002 年 4 月、インド政府は戦略的パート ナ ー ( SP:Strategic Partner) と し て Sterlite Opportunities and Ventures Ltd.(SOVL)に政府株式 26 %を売却し、SP は更に市場で株式 20 %を公開買い 付けし、2003/04 年度(4 ~ 3 月)の政府株 18.92 %の 取得によって、現在の権益比率は SOVL が 64.92 %、 政府が 29.54 %となっている(Vedanta Resources 社 の持分は権益52%に相当)。
13

国別デマンドサイド分析2006(1) ―インド(亜鉛・鉛)―mric.jogmec.go.jp/wp-content/old_uploads/reports/...シ リ ー ズ 国 別 デ マ ン ド サ イ ド

Feb 08, 2021

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  • シリーズ

    国別デマンドサイド分析2006

    (1)

    ―インド(亜鉛・鉛)―

    2007.9 金属資源レポート 147(435)

    1 亜鉛・鉛資源インドの鉛/亜鉛鉱床の埋蔵量は、約 126 百万 t で、

    地金換算で亜鉛 11 百万 t、鉛 2.6 百万 t となっている。

    一方、資源量は 397 百万 t とされており、鉛と亜鉛の

    含有量は前者 13 百万 t、後者 4.6 百万 t と見積もられ

    ている。これらを合わせると、約 522 百万 t となる。

    鉛資源の 89 %及び亜鉛資源の 93 %は Rajasthan 州に

    集中している。インドの鉛/亜鉛の採鉱・製錬は、同州

    に集中している。表 1 に UNFC(国連フレームワーク

    クラシフィケーション)に基づくインドの亜鉛/鉛埋蔵

    量(2005 年 4 月 1 日)を示す。

    国別デマンドサイド分析2006(1)

    ―インド(亜鉛・鉛)―

    はじめにインドの銅産業構造及び今後の銅需要動向予測について、金属資源レポート(2007.1 Vol.36 No.5)で紹介を行った。

    本稿では、インドの非鉄金属産業のうち亜鉛/鉛産業に焦点を当て、その産業構造と需要動向を紹介するものである。

    ジャカルタ事務所 次長[email protected] 池田 肇

    合  計

    アーンドラ・プラデーシュ (Andhra Pradesh)

    ビハル (Bihar) グジャラート (Gujarat)

    マドヤ・プラデシ (Madhya Pradesh) マハラストラ (Maharashtra)

    メガラヤ (Meghalaya)

    オリッサ (Orissa)

    ラジャスタン (Rajasthan) シッキム (Sikkim)

    タミール・ナードゥ (Tamil Nadu)

    ウッタランチャル (Uttaranchal)

    西ベンガル (West Bengal)

    埋蔵鉱物量

    埋蔵量 資源量 合計

    亜鉛(金属地金換算)

    791

    5,800

    1,080

    117,583

    500

    125,754

    5,829

    11,435

    329

    6,920

    9,272

    880

    670

    350,925

    450

    790

    5,620

    3,706

    396,826

    6,620

    11,435

    6,129

    6,920

    9,272

    880

    1,750

    468,508

    950

    790

    5,620

    3,706

    522,580

    埋蔵量

    263

    10,813

    16

    11,092

    63

    39

    1

    340

    590

    14

    11,670

    4

    37

    267

    143

    13,168

    資源量 合計

    63

    39

    264

    340

    590

    14

    0

    22,483

    20

    37

    267

    143

    24,260

    埋蔵量

    30

    122

    39

    2,391

    9

    2,591

    鉛(金属地金換算)

    資源量

    170

    24

    4

    26

    17

    38

    4,008

    8

    183

    140

    4,618

    合計

    200

    24

    126

    26

    0

    17

    77

    6,399

    9

    8

    183

    140

    7,209

    単位:千 t

    出典:IBM鉱業年間2004年版

    表1 インドの亜鉛 /鉛埋蔵鉱量[2005年4月1日時点](UNFC基準)

    2. 鉛/亜鉛主要生産企業2-1. 亜鉛/鉛鉱山インドの亜鉛/鉛の地金生産は、現在、Hindustan

    Zinc 社(以下、HZL 社)、Binani Zinc 社の 2 企業が独

    占する状態となっている。

    HZL 社は、1966 年 1 月 10 日にインド金属会社

    (Metal Coporation of India)(MCI)を母体に設立され

    る。その後、2002 年 4 月、インド政府は戦略的パート

    ナ ー ( SP:Strategic Partner) と し て Sterlite

    Opportunities and Ventures Ltd.(SOVL)に政府株式

    26 %を売却し、SP は更に市場で株式 20 %を公開買い

    付けし、2003/04 年度(4 ~ 3 月)の政府株 18.92 %の

    取得によって、現在の権益比率は SOVL が 64.92 %、

    政府が 29.54 %となっている(Vedanta Resources 社

    の持分は権益 52 %に相当)。

  • HZL 社は、以下の 5 鉱山(4 山が坑内掘り、1 山が

    露天掘り)と、Chanderiya、Debari、Vizag の 3 亜鉛

    精錬所を保有する(図 1)。

    1)Rampura Agucha Mine 鉱山(1991 年操業開始)鉱石品位が高く、亜鉛 13.5 % 、鉛 2.0 %である。鉱

    山で最初に発見されたのは、高品位な亜鉛鉱床で、埋

    蔵量は露天掘りに向いている 40 百万 t と、坑内掘り

    (将来に実施)に向いている 20 百万 t である。この鉱

    山には亜鉛の選鉱プラントが付設されており、精鉱が

    生産されている。(粗鉱)生産量は、操業当初は

    3,000t/日であったが、1999/2000 年度には 4,500t/日、

    2004 年までには 6,000t/日、2005 年までには 11,400t/

    日と、徐々に拡張されている。また、露天

    掘りの拡張に伴う最近の探鉱により10百万 t

    の追加埋蔵量を確認し新製錬所(Kapasan)

    への自給が可能となる見通しである。

    2)Rajpura-Dariba Mine(1983 年操業開始)坑内掘りで、付設の選鉱プラントと、2

    つの立坑から構成される。生産量は長期に

    渡って 600t/日が維持されているが、直ぐ

    に鉱量が枯渇する見通しで、その替わりと

    なる Sindheswar-Khurd 鉱山(坑内掘り)の開発が現

    在、進められている。2008/09 年度には、生産能力を

    1,000t/日に拡大する計画である。

    3)Zawar 鉱山(1942 年操業開始)Zawar 鉱山は、以下の小規模鉱山から構成される。今

    後、15年間に合計 7.5 百万 tの生産量が期待されている。

    a)Central Mochia:通常の操業が行われており、まだ掘削されていないピラーが 1 ~ 2 個、残っ

    ている。

    b)West Mochia:長さ 230 ~ 300 m、深さ 30 m のレンズ状鉱脈で、亜

    鉛品位は 6.5 ~ 7 %、生産量は

    350 ~ 500t/日となっている。こ

    の鉱脈は下部が開いているため、

    更なる探鉱が必要とされる。

    c)Balaria: 現在、操業中で、鉱石品位が高い。坑内壁からの地下水の

    流出が操業上の問題となっている。

    河川の下部にある広い区画での採

    鉱の安全性が課題となっている。

    d)Zawarmala:操業中の鉱山であるが、粗鉱が破砕されている上、坑

    道の傾斜の状態も良くなく、可採

    鉱石の量と品位に影響を与えてい

    る。埋め立てシステムの検討も課

    題となっている。

    e)Baroi:Mochia 鉱山に替わる新鉱山であるが、鉛資源が多い。詳細

    調査の段階で、地質学的構造も未

    だ全ては分かっていない。

    4)Sargipal l i 鉛鉱山(オリッサ州)(1984 年操業開始)埋蔵量は 2.06 百万 t、年間生産量は

    150 千 t である(坑内掘り)。2004/05 年度には、深部

    での資源が枯渇したために生産を停止している。

    5)Agnigundala 鉱山A.P.HCL(Hindustan Copper)社から移管を受けた鉛鉱

    山(坑内掘り)で、生産量は 240t/日であったが、数

    年前から経済性が悪化したため生産を停止している。

    2-2. 可採埋蔵量HZL 社の鉛/亜鉛鉱山の埋蔵量は、表 2 に示すとお

    りである。

    これらの埋蔵量に加え、新たな 109 百万 t の埋蔵量

    が確認されている。過去 2 年間の探鉱によって、可採

    埋蔵鉱量が正味 2 百万 t 増加している。このような探

    鉱は各鉱山で行われており、今後も鉱山寿命を延ばす

    ことになると考えられる。

    シリーズ

    国別デマンドサイド分析2006

    (1)

    ―インド(亜鉛・鉛)―

    2007.9 金属資源レポート148(436)

    図 1 インドにおけるHZL社の亜鉛鉱山(Binani Zinc社は、南インドのCochin に位置する)

    鉱山 /鉱床

    Rampura Agucha

    Zawar Group

    Rajpura Dariba

    坑内掘り

    坑内掘り

    露天掘り 3.75 2008年までに5百万 t/年に拡張

    1.02 2010年までに1.35百万 t/年に拡張

    0.75 2010年までに1.25百万 t/年に拡張

    埋蔵量(百万t) 平均生産量(百万t/年) 鉱山寿命 摘  要

    53.4

    9.4

    5.8

    68.6

    11

    10

    6

    合 計

    表2 HZL社の鉱山の可採埋蔵量(2006年4月1日現在)

  • シリーズ

    国別デマンドサイド分析2006

    (1)

    ―インド(亜鉛・鉛)―

    2007.9 金属資源レポート 149(437)

    インドでは、現在の鉱山の操業や拡張の状況からも、

    第 11 次 5 ヵ年計画以降の亜鉛地金の十分な原料(精鉱)

    供給のためには、埋蔵鉱量を確保することが重要であ

    り、経済性のある鉱床を発見するための探鉱計画が必

    要となっている。

    HZL 社は、インドで亜鉛/鉛鉱山を保有する唯一の

    鉱山会社である。同社は、これまでに最先端の技術/制

    御システムを利用してRampura Agucha 鉱山(露天掘

    り)の生産能力の向上と選鉱工場の処理能力の改善に

    取り組んできた。また、2つの坑内掘り鉱山では、鉱

    石運用上のボトルネックを解消し、処理場の運転効率

    の改善に取り組んでいる。

    2-3. 粗鉱生産能力HZL 社の粗鉱生産能力は表 3 に示すとおり、現在、

    5.52 百万 t/年であるが、2008 年には Rampura Agucha

    鉱山の能力が 5 百万 t にまで拡張される予定である。

    また、Kayar の新鉱床も、2010 年の操業開始(現在は

    F/S 調査の段階)に向けて、計画が進められている。

    HZLの鉛/亜鉛粗鉱生産量は、2004/05 年度で 392 万

    8,540t、2005/06 年度には増加して 479 万 5,124 t とな

    っている。

    2-4. 鉛・亜鉛精鉱生産量インドで亜鉛/鉛精鉱の生産を行うのはHZL 社のみ

    で、表 4 に亜鉛精鉱及び鉛精鉱の生産量の実績と今後

    の予想量を示す。

    なお、HZL 社は、自社の亜鉛製錬能力では処理しき

    れない余剰精鉱は中国の受託製錬所に輸出しており、

    2005/06 年度の輸出量は 19 万 805t で 190 百万 US$ の

    売り上げ、2004/05 年度の輸出量は 57,699t で 80 百万

    US$ の売り上げとなっている。但し、2008 年中には同

    社の製錬所の能力拡大が完了するため輸出は停止され

    る予定である。また、HZL 社は現在、Rajasthan から

    Vishakapatnam 製錬所への精鉱供給も行っているが、

    今後はその輸送距離が長いことからも、この製錬所は、

    今後、輸入精鉱を供給源とすることになりそうである。

    2-5. 鉛・亜鉛精鉱輸入量Binani Zinc 社は、自社鉱山を保有しないため、亜鉛

    精鉱を輸入し製錬を行っている。Binani Zinc 亜鉛製錬

    所の 2001 ~ 2011 年の亜鉛輸入量(2006 年以降は予想)

    を表 5に示す。

    なお、鉛精鉱の輸入については、インドの鉛再生業

    者の一部が、鉛電池のスクラップとブレンドするため

    に若干量を輸入している。表 6 には、過去 3 年間にお

    けるインドの亜鉛・鉛精鉱の輸入量/額(百万US$)を

    示す。

    3. 製錬/精錬所3-1. 生産能力第 9 次 5 ヵ年計画に係る最終年度(2001/02 年度)

    の一次亜鉛製錬能力は、199 千 t/年(HZL 社 169 千 t/

    年、Binani Zinc 社 30 千 t/年)であった。第 10 次 5 ヵ

    年計画の開始時期には、HZL 社の製錬能力が、ボトル

    ネックを解消し製錬所の近代化などによって大幅に増

    量された。HZL 社は、199 1 年に Ra j a s t h an 州

    Rampura Agucha鉱山

    Rajpura Dariba鉱山

    Zawar Group鉱山

    3.75

    0.75

    1.02

    5.52

    鉱  山 生産能力(百万t/年)

    表3 HZL社の粗鉱生産能力

    第9次5ヵ年計画期間

    1997/98

    1998/99

    1999/2000

    2000/01

    2001/02

    第10次5ヵ年計画期間

    2002/03

    2003/04

    2004/05

    2005/06

    2006/07※

    第11次5ヵ年計画期間※

    2007/08

    2008/09

    2009/10

    2010/11

    2011/12

    60,800

    62,727

    62,615

    54,227

    52,106

    55,806

    74,316

    84,251

    95,738

    122,000

    132,000

    159,000

    170,000

    170,000

    170,000

    年 度 鉛精鉱 亜鉛精鉱 合 計

    292,235

    349,890

    359,512

    365,838

    398,332

    486,027

    614,938

    666,424

    889,007

    992,000

    1,067,000

    1,316,000

    1,316,000

    1,316,000

    1,316,000

    353,035

    412,617

    422,127

    420,065

    450,438

    541,833

    689,254

    750,675

    984,745

    1,114,000

    1,199,000

    1,475,000

    1,486,000

    1,486,000

    1,486,000

    ※予想

    表4 HZL社の鉛/亜鉛精鉱の生産量(t)

    2001

    2002

    2003

    2004

    2005

    2006

    2007※

    2008※

    2009※

    2010※

    2011※

    ※予想

    年 輸入量(t)

    43,600

    69,540

    56,311

    60,050

    40,500

    80,000

    80,000

    80,000

    80,000

    80,000

    80,000

    表5 Binani Zinc亜鉛製錬所の亜鉛精鉱輸入量(t)

    2003/04年度

    2004/05年度

    2005/06年度

    年 度 輸入量(t) 輸入額 輸入量(t) 輸入額

    61,041

    62,791

    49,760

    18.7

    24.2

    39.8

    864

    1,972

    2,159

    0.19

    0.70

    0.92

    亜鉛精鉱 鉛精鉱

    表6 インドの精鉱輸入量/額

  • Chittorgarh 県の Chanderiya に ISP 方式(鉛・亜鉛の

    同時溶鉱炉製錬法:図 2 のとおり)製錬所を建設した

    後、2005 年に同地で湿式製錬所(170 千 t/年)を新た

    に建設し、操業を開始した。Chanderiya の新製錬所は、

    最新技術を使用した世界規模のもので、旧式の工場と

    比較して非常に低いコストで亜鉛製錬を行うことがで

    きる。HZL は、この製錬所の建設によって、亜鉛製錬

    能力が 169 千 t/年から 411 千 t/年に増え、世界第 6 位

    の規模の亜鉛製錬業者に成長した。

    シリーズ

    国別デマンドサイド分析2006

    (1)

    ―インド(亜鉛・鉛)―

    2007.9 金属資源レポート150(438)

    銅 抽出

    高 温鉛精錬

    精鉱

    再生微粉

    溶剤

    SOガス

    溶 鉱炉

    ガ ス

    ISF亜鉛

    銅 ドロス

    ブ リオン

    金 アノード

    酸素ガス

    FIN

    S Lum

    pLump焼

    結炉

    焼結炉

    FIN

    S Lum

    p焼結炉

    コーク

    スラグ

    銅ドロス

    腐食性

    腐食性カドミウム

    腐食性カドミウム

    鉛精錬で

    生じる副産物

    カドミウム

    SHG亜鉛

    GOB亜鉛

    亜鉛精錬

    カドミウム

    プラント

    カドミウムダスト

    ISF

    コンデンサー

    ISF

    プラント

    焼結

    プラント

    亜鉛/鉛

    分離

    貴石

    プラント

    硫酸

    酸プラント

    水銀除去

    ガス

    クリーニング

    図2 ISP方式亜鉛製錬の過程

  • シリーズ

    国別デマンドサイド分析2006

    (1)

    ―インド(亜鉛・鉛)―

    2007.9 金属資源レポート 151(439)

    インドの現在の一次亜鉛生産量は、Binani Zinc 社の

    能力(38 千 t/年)も含めると、449 千 t/年となってい

    る(表 7のとおり)。

    場  所

    1. HZL社

    Chanderiya(ISP方式)  ― 1991年操業開始

    Chanderiya(湿式)    ― 2005年操業開始

    Debari(湿式)      ― 1968年操業開始

    Vishakapatnam(Hydro) ― 1977年操業開始

    小 計

    2. BINANI ZINC社

    Cochin (湿式)     ― 1962年操業開始

      合計(インド国内総計)

    現在の能力(t/年)

    105,000

    170,000

    80,000

    56,000

    411,000

    38,000

    449,000

    表7 インドの亜鉛生産量能力(2006年4月1日現在)

    インドの亜鉛製錬所

    Vishakapatnam亜鉛製錬所 Binani亜鉛製錬所(Cochin)

    Debari亜鉛製錬所

  • HZL 社・ Binani Zinc 社の操業は全て、ISO 9001

    (品質管理システム)、ISO 14001(環境マネジメントシ

    ステム)、OHS18001(労働安全衛生システム)の認定

    を受けている。インドの亜鉛生産業者は、理念の実現

    と世界的な競争力強化のため、生産コストの節減に常

    に力を入れている。2005/06 年度、HZL 社は、操業効

    率の改善と処理能力の拡大により、若干ではあるが生

    産コストの節減(695US$/t → 691US$/t)を実現した。

    HZL 社は、世界やインド国内での亜鉛需要の高まりに

    伴い、Chanderiya の亜鉛製錬所の生産能力の拡張

    (170 千 t/年、投資額約 300 百万 US$、発電所を併設し

    て 2008 年に完成の予定)を計画している。また、既存

    の製錬所のボトルネック解消や、近代化も引き続き行

    われる予定で、2008 年には、HZL 社の亜鉛製錬能力は

    600 千 t/年、インド全体で 640 千 t/年にまで増加する

    見通しとなっている。

    Binani Zinc 社は、ベルギーのM/s UM Engg 社と共

    同で製錬所の近代化/拡張プログラムを実施しており、

    現在は、ISO14001、SA 8000、OHS18001 の認定の製

    錬所において、価値付加型の SHG(最純)亜鉛

    (99.995 %)を生産することが可能となっている。

    インドでは、上記のような近代化や拡張が完了すれ

    ば、SHG 亜鉛の生産増が可能となり、それらの生産能

    力が亜鉛生産に占める率が 65 %(2005/06 年度は

    15 %)にまで増加すると見込まれている。また、亜鉛

    生産業者は、亜鉛地金に CGG(連続溶融亜鉛メッキグ

    レード)の処理を施して、付加価値の高い亜鉛アルミ

    ニウム合金を製造することを検討している(現在、イ

    ンド国内ではこの種の合金の潜在的ニーズが発生して

    いるため、設備の導入も可能な状態である)。

    インドの主要鉛生産業者は、HZL 社のみで、その生

    産能力は、Chanderiya 鉛製錬所 2 基の 85 千 t/年であ

    る(このうちの 1基は 2005 年に操業が開始され、環境

    配慮型のAusmelt 技術を使用、生産能力は 50 千 t/年

    となっている)。Vishakapatnam 鉛製錬所は、環境面

    から、数年前に操業が停止されている。

    3-2. 国内生産量インドでの第 9次~ 11 次の 5ヵ年計画の期間におけ

    る一次亜鉛の生産量の実績と予想を表 8に示す。

    シリーズ

    国別デマンドサイド分析2006

    (1)

    ―インド(亜鉛・鉛)―

    2007.9 金属資源レポート152(440)

    第9次5ヵ年計画期間

    1997/98

    1998/99

    1999/2000

    2000/01

    2001/02

    第10次5ヵ年計画期間

    2002/03

    2003/04

    2004/05

    2005/06

    2006/07※

    第11次5ヵ年計画期間※

    2007/08※

    2008/09※

    2009/10※

    2010/11※

    2011/12※

    年度

    136,271

    141,806

    145,796

    148,092

    172,140

    202,828

    220,664

    212,445

    282,668

    385,000

    450,000

    590,000

    600,000

    600,000

    600,000

    28,321

    31,152

    29,162

    29,973

    29,000

    28,459

    29,218

    26,346

    17,000

    38,000

    38,000

    38,000

    38,000

    38,000

    38,000

    164,592

    172,958

    174,958

    178,065

    201,140

    231,287

    249,882

    238,791

    299,668

    423,000

    488,000

    628,000

    638,000

    638,000

    638,000

    39,010

    35,766

    35,120

    34,840

    30,975

    32,542

    25,089

    15,727

    23,636

    63,000

    74,000

    89,000

    95,000

    95,000

    95,000

    HZL

    鉛 亜 鉛

    Binani Zinc 合 計 HZL

    最小値 99.9944%

    0.0020%

    0.0017%

    0.0001%

    0.0017%

    0.0001%

    0.0001%

    0.0001%

    1. SHG(最純)亜鉛

    亜鉛

    カドミウム

    砒素

    アンチモン

    2. HG(高品位)亜鉛

    最小値 99.95~99.97%

    0.0170%

    0.0020%

    0.0020%

    0.0010%

    亜鉛

    カドミウム

    3. Prime Western

    亜鉛

    カドミウム

    アンチモン

    最小値 98.68%

    1.1998%

    0.0225%

    0.0049%

    0.0185%

    0.0052%

    表8 生産量(t)

    表9 HZL社の亜鉛の品質

     HZL社が生産する亜鉛の品質は、表9のとおり。

    ※予想

  • シリーズ

    国別デマンドサイド分析2006

    (1)

    ―インド(亜鉛・鉛)―

    2007.9 金属資源レポート 153(441)

    HG(高品位)亜鉛 SHG亜鉛

    亜鉛

    カドミウム

    タリウム

    インジウム

    不純物

    亜鉛

    カドミウム

    タリウム

    インジウム

    不純物

    最小値 99.95%

    0.025%

    0.020%

    0.010%

    0.001%

    0.002%

    ― 

     ― 

    0.05%

    最小値 99.99%

    0.003%

    0.003%

    0.003%

    0.001%

    0.002%

    0.001%

    0.0005%

    0.001%

    表10 Binani Zinc社の亜鉛の品質

     Binani Zinc社が生産する亜鉛の品質は表10のとおり。

    4. 亜鉛/鉛地金の国内販売4-1. 亜鉛HZL 社の亜鉛販売量は、2004/05 年度で 288,866t、

    2005/06 年度で 322,744t(受託製錬によるものも含む)

    となっている。一方、Binani Zinc 社の亜鉛販売量は、

    2004/05 年度で 26,300 t、2006/07 年度で 17,700t とな

    っている。生産の過程で生じた亜鉛アッシュ/スカムの

    再生品は、零細な亜鉛メッキ業者に販売されている。

    4-2. 鉛HZL 社の鉛販売量は、2004/05 年度で 14,622t、

    2005/06 年度で 26,928t となっている。中古電池から再

    生された鉛は、合金または酸化物として、電池製造業

    者に販売されている。

    5. 亜鉛/鉛製品の輸入5-1. 地金インドの亜鉛メッキ鋼板/建材の輸出業者は、亜鉛地

    金の輸入に関し関税が免除されている。ダイカスト合

    金や亜鉛乾電池の製造業者も亜鉛地金を輸入している。

    精錬亜鉛の多くは豪州、韓国、ベルギー、スイス、カ

    ザフスタン、ウズベキスタンなどから輸入している。

    インドの鉛電池製造業者は通常、鉛や鉛合金を豪州、

    韓国、日本、マレーシア、ベルギー、英国などから輸

    入している。表 11 には、インドの精錬亜鉛・精錬鉛/

    鉛合金の輸入量/額を示す。

    6. 亜鉛/鉛の需給インドの亜鉛消費量は、現在、一人当たり 0.4kg(世

    界平均は 1.3 kg)、2005/06 年度の全消費量は 430 千 t

    である。亜鉛需要は、インフラ産業と建設業界の伸び

    に支えられた鉄鋼産業の成長に便乗して増加中である。

    一方、鉛の消費量は、現在、一人当たり 0.24 kg(世

    界平均は 1.0 kg)、2005/06 年度の全消費量は、240 千 t

    近くとなっている。鉛の需要も、亜鉛と同様、自動車

    産業、UPS(無停電電源装置)や電力変換機の製造産

    業の高成長に牽引され増加している。

    インドの亜鉛/鉛需要は今後も川下産業の急成長、生

    活水準の向上、消費者意識の向上などに支えられ堅調

    に増加すると見られる。

    6-1. 亜鉛亜鉛産業は、第 11 次 5 ヵ年計画の期間(2007/08 ~

    2011/12 年度)に、年複利成長率が 8%となると予想さ

    れている。これは、北米や欧州への亜鉛メッキ鋼板の

    輸出の大幅増と、海外でのターンキー電源プロジェク

    トへの亜鉛メッキ鋼材の輸出増及び国内インフラ(電

    源、高速道路、電気通信など)や建設業界の継続的な

    成長による亜鉛需要の伸びによるものと考えられる。

    また、電気機器や個人消費者向けデジタル製品に使用

    される乾電池、自動車に使用されるダイカスト部品、

    建築用ハードウェアなどに使用される亜鉛の需要も、

    近い将来に増加すると予想されている。

    インドの亜鉛の需要及び需給に関する、第 9 次~ 11

    次の 5ヵ年計画の期間における実績と予想を表 12 に示

    す。表 12 を見ると、第 9 次の期間と、第 10 次の最初

    の 4 年間は供給不足であることが分かる

    が、これは主に、輸入品と再生品によって

    補われている。しかし、今後は、HZL 社

    の製錬能力の拡大(170 千 t/年)により、

    輸入量は確実に減り続け、インドの亜鉛需

    要はほぼ自給の形で賄われることになるだ

    ろう。第 11 次の期間においては、亜鉛地

    金の供給超となることが予想され、国内需要を上回っ

    た分は、輸出される見通しである。

    今後の地金供給はリサイクル部門の成長やパフォーマ

    ンス、あるいは一次製錬の能力の稼働率に左右されるこ

    年 度

    2003/04年度

    2004/05年度

    2005/06年度

    亜鉛地金

    88,021

    115,516

    145,639

    輸入量(t) 輸入額(百万US$)

    77.66

    107.14

    215.38

    111,705

    146,424

    164,356

    輸入量(t) 輸入額(百万US$)

    68.6

    138.6

    165.0

    鉛地金と鉛合金

    表11

  • とになる。第 11 次 5 ヵ年計画の期間においては、地金

    の供給超となることが予想されるが、国内需要の成長に

    より、製錬能力の拡大が必要となる可能性もある。

    6-2. 鉛インドでは、防衛部門、電力、自動車、IT/CT、そ

    の他エンドユーザーの産業での蓄電池の需要が大幅に

    増加しており、第 11 次 5 ヵ年計画の期間の鉛産業の年

    複利成長率は、10 %となると予想されている。表 12

    には、インドの鉛の需要及び需給に関する、第 9 次~

    11 次 5 ヵ年計画の期間の実績と予想が示されている。

    鉛地金の供給不足は、一次製錬の能力の拡大に限りが

    あることから今後も続くものと予想され、それらは主

    に電池の再生と輸入品によって賄われると考えられる。

    但し、今後の需給差は、一次製錬の拡大と、スクラッ

    プ再生などによって、狭まるものと予想される。

    シリーズ

    国別デマンドサイド分析2006

    (1)

    ―インド(亜鉛・鉛)―

    2007.9 金属資源レポート154(442)

    7. 産業別の鉛・亜鉛消費7-1. 亜鉛インドでは、最近、亜鉛消費が大幅に増加しており、

    2005/06 年度の消費量は約 430 千 t となっている。

    2005/06 年度の用途別の内訳は表 13 のとおりである。

    世界とインドの用途別比較を図 3、4に示す。

    第9次5ヵ年計画期間

    1997/98

    1998/99

    1999/2000

    2000/01

    2001/02

    第10次5ヵ年計画期間

    2002/03

    2003/04

    2004/05

    2005/06

    2006/07※

    第11次5ヵ年計画期間※

    2007/08※

    2008/09※

    2009/10※

    2010/11※

    2011/12※

    年度

    224,000

    237,000

    254,100

    270,000

    297,000

    326,000

    375,000

    396,000

    420,000

    455,000

    491,000

    530,000

    572,000

    618,000

    667,000

    172,592

    181,958

    191,958

    206,065

    226,140

    256,287

    274,882

    263,791

    324,668

    453,000

    528,000

    668,000

    678,000

    678,000

    678,000

    -51,408

    -55,042

    -62,142

    -63,935

    -70,860

    -69,713

    -100,118

    -132,209

    -95,332

    -2,000

    37,000

    138,000

    106,000

    60,000

    11,000

    94,400

    97,500

    114,600

    122,600

    132,000

    155,000

    171,000

    215,000

    239,000

    275,000

    302,000

    333,000

    366,000

    403,000

    443,000

    64,626

    61,918

    62,630

    59,013

    70,975

    82,542

    75,089

    65,727

    73,626

    123,000

    149,000

    164,000

    170,000

    170,000

    170,000

    -29,771

    -35,582

    -51,970

    -63,587

    -61,025

    -72,458

    -95,911

    -149,273

    -165,364

    -152,000

    -153,000

    -169,000

    -196,000

    -233,000

    -273,000

    需 要

    鉛 亜 鉛

    供 給 需給差 供 給 需 要 需給差

    表12 インドの亜鉛需給の実績と予想(t)

    ※予想

    (1)亜鉛メッキ

    (2)乾電池

    (3)ダイカスト合金、ブラス(真鍮)

    (4)化学製品その他

    70%

    10%

    10%

    10%

    (1)鉛電池

    (2)合金、化学製品

    (3)ケーブル被覆

    75%

    20%

    5%

    亜鉛消費分野 鉛消費分野

    表13 鉛亜鉛消費分野

    ダイカスト、 合金、ブラス 10%

    化学製品、 その他 10%

    亜鉛メッキ 70%

    ブラス、 ブロンズ 19%

    亜鉛メッキ 47%

    電池 79%

    その他 2%

    顔料など 8% 合金

    3%

    弾丸/火薬 2%

    乾電池 10% 合金

    16%

    化学製品 7%

    半加工品 7%

    パウダー、ダスト 1%

    ケーブル 5%

    その他 3%

    合金、化学製品 20%

    圧延/押出製品 6%

    電池 75%

    図4 鉛の用途 図3 亜鉛の用途

    インド 世界 インド 世界

  • シリーズ

    国別デマンドサイド分析2006

    (1)

    ―インド(亜鉛・鉛)―

    2007.9 金属資源レポート 155(443)

    (1)亜鉛メッキインドの現在の鉄鋼消費量は約 43 百万 t であるが、

    このうちで亜鉛メッキされたものは 6.1 百万 t と、未だ

    全体の僅か 12 %であるため、今後、このシェアが急速

    に伸びることが期待されている。また、一人当たりの

    鉄鋼/亜鉛消費量が非常に低い(鉄鋼で 35 kg、亜鉛で

    0.4 kg。世界平均は前者 125 kg、後者 1.3kg)ことも、

    今後の市場と亜鉛/亜鉛メッキ産業の大幅な成長を示唆

    している。現在、インドで製造される亜鉛メッキ鋼製

    品の種類と総量は、表 14 のとおり。

    建設業界でも、現在や今後の 5 ヵ年計画におけるイ

    ンフラ開発に伴い、投資が大幅に増加する見通しであ

    るため、亜鉛メッキ鉄鋼、すなわち亜鉛の需要が益々

    増えると予想される。

    2005/06 年度の亜鉛メッキ消費量は、300 千 t 以上で

    ある。インドの亜鉛メッキ産業は、①鋼板メッキ

    (50 %)、②管メッキ(30 %)、③一般メッキ(15 %)、

    ④ワイヤメッキ(5 %)の 4 部門から成っている(括

    弧内の数字は、亜鉛メッキ市場でのシェア率)。

    ①鋼板メッキインドでは、亜鉛メッキ鋼板は、国有の総合製鋼所

    と民間 1 社のみで製造されていた。だが、1980 年代に

    なると、傾斜地での屋根、器具、トランク、冷房機の

    ボディーなどに使用されるトタン板の国内需要が増し、

    この年代の半ばには、これらの民間製造企業が次々と

    設立された(但し輸入も多く、インドは 1980 年代を通

    じて亜鉛メッキ鋼板の主要輸入国となっている)。現在、

    インドの亜鉛メッキ鋼板の生産能力は 4 百万 t で、第

    11 次 5 ヵ年計画の期間が終了するまでに 4.5 百万 t に

    まで拡大される見通しである。2005/06 年度の GP/GC

    鋼板の生産量は 3.75 百万 t で、これに使用された亜鉛

    の量は、200 千 t とされている。インドの鋼板メッキ

    業者は、国内需要に対応するだけではなく、製品の多

    くを海外に輸出しており、その多くは建設部門(例:

    エアコンのダクトなど)で使用されている。インドの

    2005/06 年度の GP/GC 鋼板の輸出量は、1.70 百万 t と

    なっている。Tata 製鉄は最近、合金化溶融亜鉛メッキ

    鋼板(塗装耐久性に優れ、機具/自動車部品に多く利用

    される)の生産ラインを設置した他、豪州の

    Bluescope 社の協力を得て工場を設立し、 ガルバリウ

    ム(亜鉛とアルミの合金)鋼板を、機具/自動車部品産

    業などの耐久材部門に販売する予定でもある。インド

    国内では今後、塗装ラインが数基設立され、亜鉛需要

    の増加に貢献する見通しである。塗装鋼板は、その審

    美的外見から人気が高まっており、工業建設、地下鉄

    の駅、建築資材などの分野で幅広く利用されている。

    GP/GC 鋼板の用途シェアは、屋根、パネル、空調ダク

    ト(57 %)、トランク、ドラム缶、樽など(18 %)、白

    電化製品(10 %)、家具(5 %)、農具(5 %)、穀物貯

    蔵容器(3 %)、自動車(2 %)[出典: Joint Plant

    Committee(鉄鋼省)]のとおりとなっている。

    ②管メッキインドでの 2005/06 年度における鋼パイプ/管の生産

    量は約 1.5 百万 t で、これらに使用された亜鉛の量は、

    約 125 千 t となっている。また、鋼管のうちでメッキ

    加工が施されたものとそうでないもの(ブラックパイ

    プ)のシェアは、前者 75 %、後者 25 %である。国内

    市場で、鋼管は硬質 PVC管との競争が厳しい状況にあ

    り、亜鉛メッキ管の一部は、国外に輸出されている。

    ③一般メッキ一般亜鉛メッキ部門は、送電線タワー(2005/06 年

    度の送電線タワーの建設量は、重量で 300 千 t)、高マ

    ストの照明タワー、高速道路のガードレール、鉄道配

    電タワー、電信タワー、ハミルトン柱の加工業者、及

    び、ファスナー、パイプ建具、ケーブルトレー、バケ

    ツなどを製造する中小企業から成る。

    インド政府は第 11 次 5 ヵ年計画の最終年度までに国

    内の送電能力を 6 万 2,000MW拡大し、Power Grid 社

    (インド電力網社)を通じて送電網の拡張に 8,800 百万

    US$ を投資する計画であるため、今後、亜鉛メッキの

    送電線タワーや電灯の需要が増えることが予想される。

    この計画では、地方の送電開発に特に力が入れられて

    おり、2005/06 年度の地方電力インフラの開発村数の

    目標は 10,000 村と、前年度の実績の 15 倍、2006/07 年

    度の目標村数は 40,000 村となっている。また、インド

    は、携帯電話の使用率が世界でも非常に高いため、亜

    鉛メッキの携帯電話用シグナルタワーの市場機会が増

    大している。

    インドの一般亜鉛メッキ業者の多くは、東南アジア

    諸国、米国 、アフリカ諸国などに向けて、ターンキー

    送電プロジェクトの輸出や請負(設計から実施まで)

    を行っているが、これまでの実績からも、これは更に

    拡大するものと考えられる。

    道路運輸高速道路省は、段階 V と VI において、8

    つの高速道路プロジェクト(6 レーンまたは 4 レーン、

    全長 1,405km)を計画中であるが、これによって、多

    くの亜鉛メッキのガードレール、電灯、補強建材が必

    要となると予想される。

    鉄道の配電施設の製造においても、一般亜鉛メッキ

    の業者がある程度、関与している。但し最近では、イ

    ンド鉄道がゲージ交換、複線鉄道、安全強化などの方

    に力を入れるようになっているため、帯電設備は以前

    ほど増えておらず、2005/06 年度に電化された路線は、

    500km 足らずである。だが、インド鉄道は、蒸気機関

    車を段階的に廃止していく計画なので、それに替わる

    その他製品

    ワイヤ

    合計

    3.8

    1.5

    0.5

    0.3

    6.1

    製品種類 製造量(百万t)

    表14 亜鉛メッキ鋼製品の種類

  • 電気/ディーゼルエンジンの使用において、鉄道の電化

    が不可欠となっている。

    2005 年の一般亜鉛メッキの消費量は約 65 千 t で、

    その用途の内訳は、電力関係(46 %)、通信(12 %)、

    工業プロジェクト(11 %)、鉄道(2.5 %)、防衛など

    のその他の用途(残り率)である。

    ④ワイヤメッキワイヤ亜鉛メッキ業者は、有刺鉄線、鉄線、ワイヤ

    ロープ(多くが輸出向け)、ケーブル外被などの製造に

    おいて、約 25 千 t の亜鉛を消費している。

    (2)乾電池乾電池は、取り扱いが易しく、持ち運びに便利な電

    源であるため、ラジオ、ポータブルオーディオプレイ

    ヤー、シェーバー、玩具、時計、電卓などに利用され、

    インドでの一人当たりの使用量は 2.1 個となっている。

    だが、この産業の成長は、農村地帯での電源獲得に直

    接、結びついているので、変動し易い。インド国内の

    乾電池製造業者は、大手業者が 3 社ある他、地元での

    供給を行う中小企業が何社かあり、全体の製造能力は

    約 25 億個、実質製造量は 20 億個とされている。製造

    される乾電池のサイズは様々で、大型が 67 %、鉛筆サ

    イズが 29 %、中サイズが 4 % の内訳となっている。

    インドでの乾電池使用は、以前は農村部の方が多かっ

    たが、最近では、都市部や半都市部の方が増える傾向

    となっている。また、近代的な小型電化製品の普及や

    生活水準の向上から、亜鉛乾電池の需要が増えている。

    (3)ダイカスト亜鉛ダイカストは、自動車部品(キャブレター、オ

    ートロック、ドア取手など)、消費者向け製品(LPG

    レギュレータ、錠、玩具、バックルなど)、ジッパー、

    建材ハードウェア(ドア取手など)、電気付属品(結合

    装置、コネクターなど)などに使用されている。2006

    年の亜鉛ダイカストの製造量は約 25 千~ 30 千 t で、

    その種類別シェアはジッパー(29 %)、自動車部品

    (20 %)、消費者向け製品(16 %)、電気付属品(15 %)、

    その他(20 %)の内訳で、自動車や LPG コネクショ

    ンの利用の増加、生活水準の向上、建設活動の増加な

    どを反映したものとなっている。また、これらの他に

    も、ダイカストは、建築用ハードウェア、ヒートシン

    ク(放熱板)、装飾品などでも利用されている。

    シリーズ

    国別デマンドサイド分析2006

    (1)

    ―インド(亜鉛・鉛)―

    2007.9 金属資源レポート156(444)

    亜鉛メッキ電灯

    亜鉛メッキ鉄筋を使用のBahaii(蓮)寺院(300t亜鉛使用)

    亜鉛メッキ鉄筋 亜鉛メッキガードレール

  • シリーズ

    国別デマンドサイド分析2006

    (1)

    ―インド(亜鉛・鉛)―

    2007.9 金属資源レポート 157(445)

    ヒートシンク、ハードウェアなど、新しい分野での

    ダイカスト利用を促進するには、集中的な市場開発や、

    薄肉ダイカストの製造が更に進められる必要がある。

    7-2. 鉛鉛は、世界中で、電池、化学製品(薬品)、原子炉、

    防音装置などに幅広く利用されている。インドの鉛消

    費は、1991 年半ばに施行された経済自由化によって著

    しく成長しており、2005/06 年度は、239 千 t(輸入品、

    再生品を含む)であった。鉛の用途は非常に広いにも

    関わらず、最近においては鉛の毒性が環境に与える影

    響を考慮して代替品の使用が増えてきている(顔料、

    塗装材料、はんだ合金、あるいは、ケーブル被覆にお

    けるプラスチック代替など)。しかし、鉛電池や防音装

    置分野では、今後 20 年間は代替品が高コストとなるた

    め代替品は登場しないものと考えられる。

    インドでの現在の消費者の鉛使用のシェア内訳は、

    図 4のとおりである。

    近年、鉛電池の製造産業は、自動車、変換機、UPS

    などの製造や、鉄道、通信、電力などの産業における

    幅広い需要に伴い堅調に成長し続けており、大手の電

    池製造業者は既にインド国内外での需要増に対応する

    ため、製造能力の拡大に着手している。

    鉛電池の需要増は、主に自動車製造業での増加によ

    るものである。文房具用や工業用の電池もインド国内

    の各地における深刻な電力不足が原因で、大幅に増加

    している。今後の各部門における電池需要の成長率予

    想は、表 15 のようなものとなっている。

    コンピューター製造とテレビ製造の 2 産業の急成長

    も鉛の需要に大いに貢献すると予想されている。例え

    ば、IT産業協会(NASSCOM)は、インドのコンピュ

    ーター産業は年間 15 %の割合で急成長すると予想して

    いるためUPS の需要が大幅に増加すると期待される。

    また、インド国内のほぼ全域で起きている電力不足

    によってトランスの需要が増しているため、鉛電池の

    需要も増加しており、また、以下の鉛電池の開発も進

    んでいる。

    ①負荷平準化電池インドでは、電力消費のピーク時に対応するための

    大型鉛電池の使用頻度が非常に大きく、今後もそれが

    増加する見通しである。この電池は、電力消費が少な

    い時間帯に充電され、消費ピーク時に電力を供給する

    もの(従来型の鉛電池、VRLA 型の両方が使用可能)

    で発電所の発電能力拡大に替わる役割を果たすものと

    なっている。

    ②RAPS(遠隔地電力供給)用電池再生可能エネルギー発電(太陽発電・風力発電・水

    力発電)に鉛電池を利用することに高い関心が寄せら

    れている。再生可能エネルギーは出力量が安定してい

    ないため、一定した電力供給のためには、これらを予

    め貯蔵しておく必要があり鉛電池が必要となる。

    RAPS 用電池は、以前はメンテナンスに手間が掛かっ

    たが、今はメンテナンス不要の密閉型電池の登場によ

    って解決されている。このタイプの電池の必要条件は

    リサイクル性と長期耐用性である。

    ③電気自動車用電池電気自動車向けの電池は、いくつかの種類が検討さ

    れてきたが鉛電池が経済的であるだけでなく、環境へ

    の影響が少なく最も適したものとなっている。インド

    では、原油価格の継続的な高騰と、化石燃料の減少に

    より、電気自動車への関心が再び高まっている。これ

    らの車は、高重量、かつ短寿命という弱点があるが、

    環境面での長所を持つ鉛電池の使用によって、それが

    大きく改善されることになっている。

    電気自動車に使用される鉛電池の環境面での長所は、

    鉛が容器内に密封されている、電池の鉛のリサイクル

    率が高いなどである。

    鉛電池を使用した電気自動車は、研究所内の移動な

    どで広く利用されている( Indian Institute of

    Technology(IIT)、All India Institute of Medical

    Sciences(AIIMS)などの例)他、観光地や空港での

    使用に向いている。

    8. 鉛/亜鉛のスクラップ消費8-1. 亜鉛スクラップインドでは、年間に 75 千~ 80 千 t の亜鉛ドロス、

    亜鉛アッシュ/スカムが発生する。また、亜鉛再生業者

    や合金製造業者の中には、亜鉛ダイカスト、亜鉛メッ

    キ板、亜鉛を使用した金属製品のスクラップを輸入し

    ている。過去 3 年度における亜鉛スクラップの輸入量

    を表 16 に示す。これらのスクラップは、主にフランス、

    ドイツ、ギリシア、英国、タイ、チュニジア、米国、

    アラブ首長国連邦、カメルーン、豪州などから輸入さ

    れている。

    用 途

    自動車

    鉄道

    電力

    通信

    UPS

    20%

    15%

    20%

    15%

    30%

    需要成長率(%)

    表15 電池需要

    出典:電池産業

    電気自動車

  • シリーズ

    国別デマンドサイド分析2006

    (1)

    ―インド(亜鉛・鉛)―

    2007.9 金属資源レポート158(446)

    8-2. 鉛スクラップ鉛スクラップの大半は、鉛電池やケーブルから生じ

    たもので、通常は、政府や企業の競売で売買される。

    また、鉛板・パイプ・銃弾・中張り容器などのスクラ

    ップも輸入されている。過去 3 年度における鉛スクラ

    ップの輸入量を表 16 に示す。これらのスクラップは、

    英国、豪州、アラブ首長国連邦、米国、ヨルダン、カ

    タール、クウェート、ドイツ、ルーマニアから輸入さ

    れている。

    9. インドの亜鉛/鉛リサイクル-現状と今後の予想

    9-1. 亜鉛リサイクルインドでは、亜鉛メッキの工程で生じる廃棄物や残

    渣(亜鉛ドロス/アッシュ/スカムなど)は全てリサイ

    クルの原料とされる。リサイクルは、単純な溶融作業

    を通して行われ、出来た製品は、付近の亜鉛メッキ工

    場に販売される。亜鉛ドロスは主に、中小業者によっ

    て気化方式で酸化亜鉛に再生され(生産量は約 50 千 t/

    年)、塗料や顔料またはゴム製造などに利用される。亜

    鉛アッシュ/スカムは、本質的には酸化物であるが、硫

    酸で処理を施されて硫酸亜鉛に変換され、微量栄養素

    として農業に利用される。インドでは、多くの州で農

    業用土壌に著しい亜鉛欠乏が認められるため、硫酸亜

    鉛を他の肥料と共に定期的に使用することが農作者に

    義務付けられている。そのため、年間の硫酸亜鉛の需

    要量は 200 千 t となっている。亜鉛アッシュ/スカムも、

    電解法を通して亜鉛に再生されたり(生産量は 35 千 t/

    年)、溶剤製造産業や電池製造産業で使用される塩化亜

    鉛に生産されたりする。1998 年、インド政府は、亜鉛、

    鉛、カドミウムの含有量がそれぞれ 65 %以上、1.25 %

    以下、0.1 %以下の亜鉛アッシュ/スカムの輸入を、中

    央公害管理委員会の登録を受けた業者に限り許可する

    措置を講じた。また、上記含有量の条件を満たさない

    亜鉛アッシュ/スカムの輸入は、政府から輸入ライセン

    スを取得することを義務付けている(但し、このよう

    なライセンスはこれまで 1度も発行されていない)。

    リサイクルに関する工業施策は“奨励策”や“被害

    の予防原則”というよりも“懲罰原則”や“罰金原則”

    の傾向が強い。したがって、同分野では政府と産業界

    が協力し合って社会責任としての取り組みを達成して

    いく必要がある。また、産業界は、環境の安定が、良

    い事業実践をもたらすということを認識すべきである。

    9-2. 鉛リサイクルインドでの鉛再生は、国内/輸入の中古鉛電池を原料

    に行われていたが、それらは主に時代遅れの技術を用

    いた家内工業によるものであった。そのため鉛の回収

    率は悪く、著しい大気汚染も引き起こしていた。

    1996/97 年度には、最高裁判所が、環境保護の面から

    輸入鉛電池のリサイクルを禁じる判決を下し、その後、

    インド政府が環境配慮型のリサイクル方法を導入する

    ために、以下の数々の施策を発表した。これにより、

    多くの企業が、環境を配慮する企業としての登録と、

    “グッド・プラクティス”の実践を課せられ国家大気汚

    染委員会による定期調査を受けることになった。現在、

    インドで鉛リサイクルを行う企業は、これら企業に限

    定され、スクラップ調達も、ユーザー団体(運輸、通

    信、電力関係の会社など)からの競売、あるいは電池

    製造業者からの引取りを通じて行われるようになって

    いる。インドの鉛リサイクル量は、現在、90 千~ 100

    千 t とされているが、これらの一部は零細業者(これ

    らの業者も、統制機関の監視のもとに技術向上が図ら

    れる予定である)によるものである。

    インド政府は、数年前、「非鉄スクラップ売却、処分

    は全て環境配慮型の技術を使用する業者のみを対象に

    した競売や処分依頼に限る」とする法律を施行したた

    め、家内工業的取引業者や工場の事業活動は抑制され

    ることになった。

    インドでスクラップや廃棄物から金属再生を行う業

    者は、以下のような条件を満たさなくてはならない。

    (1)水・大気法の定める要求事項や認可を遵守ある

    いは取得している。

    (2)金属の再生を、(環境配慮型の)クリーン技術で

    行う。

    (3)中央公害管理委員会(Central Pollution Control

    Board。以前は環境森林省の独立機関であった)

    の登録を受けている。この登録制度は、企業の

    金属再生技術及び廃棄物処分方法の向上や、そ

    れらに対する投資を奨励している。

    鉛電池に関しては、2001 年の電池(管理及び取り扱

    い)規則の導入によって、新品の電池が販売される都

    度、同量の中古電池の回収が義務付けられ、電池の製

    造業者、取引業者、輸入者、消費者、再生業者は、電

    池回収の体系化と環境配慮型の再生を強制されること

    になった。この制度のもと国内での鉛の再生率、回収

    率(目標)などが長期計画に定められている。

    上記イニシアティブによって、インドの鉛再生は体

    系化、循環化することが予想され、これが成功すれば、

    他の製品分野においても同様の制度創設が行われる見

    通しとなっている。

    2003/04

    2004/05

    2005/06

    19,068

    36,731

    67,608

    10.58

    20.30

    45.10

    7,044

    18,544

    26,687

    2.81

    9.72

    19.93

    年 度

    輸入量(t) 輸入額(百万US$) 輸入量(t) 輸入額(百万US$)

    亜  鉛 鉛

    表16 スクラップの輸入量/輸入額

    インドは、バーゼル条約のもと、亜鉛 /鉛のスクラップの輸出を行っていない。

  • シリーズ

    国別デマンドサイド分析2006

    (1)

    ―インド(亜鉛・鉛)―

    2007.9 金属資源レポート 159(447)

    10. 今後の予想と競争性インドのGDPはここ数年、成長率が約 8%を維持す

    るなど、堅調に伸び続けている。これに最も貢献して

    いるのが製造業である。インドの製造業は、豊富な労

    働人口と人件費の安さによって部品や物資を低廉かつ

    安定的に供給できる基盤を有し、潜在的市場規模も大

    きいことから世界の製造拠点として注目を浴びている。

    また、GDP の成長は、過去 3 年間のモンスーンが定期

    的であったために農業に良い影響を与えたことも大き

    く関連している。金融業界も、最近、堅調かつ大きな

    伸びを見せている。このような要素からも現在のイン

    ドは、国内市場/輸出市場の拡大が進み、近い将来には

    中国と並び、経済大国となることが予想される。

    インドは、電力インフラの拡大により、亜鉛製錬能

    力が急速に拡大されており、世界順位において現在は

    第 6 位、2008 年までには新製錬所の完成によって第 4

    位となる見通しである。また、インドの亜鉛産業は、

    最近、コスト節減に成功したことにより競争力が益々

    伸びているため、将来的には、能力拡大、新技術、ス

    キル労働者などの要素も加わり、費用面で非常に競争

    力が高くなることが予想される。

    おわりにインドは、独立後間もない期間(1950 年代)におい

    ては、鉛と亜鉛をそれほど多く使用しておらず、その

    調達も輸入に頼っていた。だが、60 年代に入ると、現

    在の国内の 2 大製錬所の前身である M e t a l s

    Corporation と Cominco Binani Zinc が建設され、国内

    の鉛/亜鉛需要は、工業化と農業の成長に伴い増加した。

    また、インドではかつて、鉛/亜鉛の輸入は国有貿易会

    社Minerals & Metals Trading Company を通して行わ

    れていたが、1991 年の経済改革後には、貿易自由化の

    政策によって、民間輸入(輸入税が賦課される)も可

    能となった。このような輸入はしばらくの間続いたが、

    2002 年に HZL 社が民営化されると、同社による国内

    鉱山の採鉱能力の拡大や、新製錬所/発電所の建設が急

    速な勢いで進み、国内の亜鉛供給量が増大した。今後

    は、HZL社の鉱山拡張が既に完了し、新製錬所も 2008

    年までに完了する予定であることから、インドの亜鉛

    供給は、需要が急成長しない限り、ほぼ自給が可能と

    なる見通しである。

    鉛に関しては、歴史的には亜鉛と同様、国内生産が

    非常に少なく、輸入に頼っていた状況で、鉛電池スク

    ラップを原料とする鉛再生業者が多く一部で環境問題

    を惹起したが、1996 年に鉛電池スクラップの輸入に厳

    しい規制が設けられ、国内の電池生産業者や再生業者

    は、スクラップ電池の調達を体系化されたシステムの

    中で行うことが義務付けられ、環境問題等は大幅に改

    善されている。HZL 社の一次鉛生産能力は、最近、85

    千 t/年に拡大されているが、将来的には、国内の鉛需

    要の 4分の 3は再生によって調達される見通しである。

    インドでは最近、インフラ開発(電力、通信、高速道

    路など)の急増や、建設業界の成長によって、鉄鋼利

    用が 15 %も増えている(インド政府は、2015 年まで

    に 100 百万 t の鉄鋼生産量を達成するといった政策を

    掲げている)ため、(鉄鋼利用と強い関連を持つ)亜鉛

    の需要も増加している。また、小都市や農村地帯を中

    心に、亜鉛乾電池が、小型電化製品の最も安価なエネ

    ルギー源として広く利用されていることから、その製

    造業者が急速に増加している。インドの亜鉛メッキ鋼

    板や亜鉛メッキ建材の輸出も増加しており、今後もこ

    の傾向が維持される見通しである。

    インドで鉛の利用が最も多い産業は、電池製造産業

    である。インドは最近、乗用車、自動二輪車、スクー

    ターの世界的な市場に成長しており、日本、米国、韓

    国、ドイツなど、世界の主要な自動車メーカーは、こ

    の国が、将来、国内外の需要(インド国内の自動車利

    用は、2 桁の成長率を示している)を牽引しハブ地と

    なると予想し、工場を設立している。また、コンピュ

    ーター産業の急成長に伴い、バックアップ電源として

    の UPS(無停電電源装置)の需要が増加している。現

    在の電力不足によって、家庭、オフィス、病院、ホテ

    ルでの変換機の利用が一般化しているため、これらに

    使用される鉛電池の需要も急増している。

    (2007.7.26)

    国別デマンドサイド分析2006(1)—インド(亜鉛・鉛)—はじめに1 亜鉛・鉛資源2. 鉛/亜鉛主要生産企業2-1. 亜鉛/鉛鉱山2-2. 可採埋蔵量2-3. 粗鉱生産能力2-4. 鉛・亜鉛精鉱生産量2-5. 鉛・亜鉛精鉱輸入量3. 製錬/精錬所3-1. 生産能力3-2. 国内生産量4. 亜鉛/鉛地金の国内販売4-1. 亜鉛4-2. 鉛5. 亜鉛/鉛製品の輸入5-1. 地金6. 亜鉛/鉛の需給6-1. 亜鉛6-2. 鉛7. 産業別の鉛・亜鉛消費7-1. 亜鉛7-2. 鉛8. 鉛/亜鉛のスクラップ消費8-1. 亜鉛スクラップ8-2. 鉛スクラップ9. インドの亜鉛/鉛リサイクル−現状と今後の予想9-1. 亜鉛リサイクル9-2. 鉛リサイクル10. 今後の予想と競争性おわりに