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<先輩インタビュー 第6回>
宮前ガーデニング倶楽部
(平成 13年度~平成 15年度資金支援)
(訪問日 平成 26年 9月 1日)
【インタビュー:宮前ガーデニング倶楽部 代表 石川和子氏 会計 細谷章子氏】
◆「ガーデニングを道具としてコミュニティづくり」
◆きっかけは「ガーデン区構想を実現しよう!」という想い
この活動を始めたきっかけは、平成9年に策定された「宮前区区づくりプラン」です。区民が主体となって練
り上げられたこのプランで打ち出された「ガーデン区構想」を実現するために、私達の活動はスタートしたので
す。
東急田園都市線沿線は転出入がとても多い地区なので、当時はまだ住民同士のコミュニケーションが十分でな
かったのです。マンションや社宅がどんどん増え、緑も少なくなっていました。
「まちのコミュニティを作りたい」という区づくりプラン推進委員、「ゴミを捨てたくなくなるようなまちに
したい」と願う美化推進委員、「区民が集ってガーデニングを楽しめる市民の花壇づくりの組織を作りたい」と
考えていた3者が出会い、花や緑がいっぱいの豊かなコミュニティ作りについて話し合い、宮前ガーデニング倶
楽部を作りました。
「私たちは“ガーデニングを道具としてコミュニティづくり”を目指しているんです
つまり活動の目的はコミュニティづくり。ガーデニングはそのための手段というわけです」
平成11年からずっと代表を努めてこられた石川さんは、まず最初にこのように説明をしてください
ました。
行政・企業などとも連携し、ダイナミックに展開してこられた活動の土台は、このような大きな目的と
それを支える理念に基づいていたのです。
“人と人とが知り合うことがコミュニティ創りの第1歩”、だから“ガーデニングは出会いの場を作るた
めの道具”。示唆に富んだ言葉にたくさん出会えたインタビューでした。
左:細谷章子氏 右:石川和子氏
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◆8人の仲間が1000円ずつ出し合ってスタート!
①田園都市線沿線を花いっぱいのまちにする
②市民と市民が知り合いコミュニティを広げる
③市民と企業、行政の協力関係を深める
こんな目標を掲げて、参加の呼びかけに賛同してくれた人たちと8人でスタート
しました。宮前土木事務所に交渉して、ポケットパーク(宮前平駅から区役所への
上り坂の中間地点にある花壇)にパンジーを植えたんです。それが最初の活動でし
たね。西部公園事務所が提供してくれた苗では足りなくて、でもまだ資金も何もな
かったから、皆で 1000円ずつ出し合って、区内のパンジー生産農家から苗を買い足
したの。
◆これって私達がやっていることそのものじゃない?
そのころ、日経新聞に「アメリカにおける市民主体のまちづくり」というコラム
が掲載されました。筆者はコミュニティガーデン研究会の越川秀治氏でした。
「コミュニティガーデンは都市に散在する様々な空き地を生かした地域再生の
手法であり、地域の人々の出会いや学びの場となる」として、アメリカの事例を紹
介し、これからは日本にもこのような取り組みが望まれるという内容でした。
これを読んだメンバーの一人が「これって私達がやっていることそのものじゃな
い?」と言って記事を持ってきて見せてくれました。
入会して間もない方でしたのに、私達の活動の趣旨をしっかり理解している、賛
同していると感じられて、とても嬉しかったですね。
まだまだ世間には知られていなかった「コミュニティガーデン」という考え方が、理解され、受け入れられ、
広がっていける!と自信がつきましたし、元気づけられました。
更に「私達の活動を是非越川さんにお知らせしましょうよ!」と発案され、皆で相談して越川さんに私達の会
報をお送りしたんです。平成 12年のことでしたね。
すると私達の活動に興味をもってくださった越川さんが、活動の見学に来られたんです!
◆「コミュニティガーデンパイロット事業」に選ばれました!
このことがきっかけになって、平成12年度「コミュニティガーデンパイロット事業(国土交通省が提唱し財
団法人都市緑化基金が実施)」に選ばれました。
まずこのパイロット事業を実施するために、宮前ガーデニング倶楽部のメンバーが中心となって“宮前・コミ
ュニティガーデン実行委員会”を立ち上げました。そして平成13年1月から8月にかけて「私たちの夢のコミ
ュニティガーデンをつくろう」と、ワークショップを 9回行いました。
ワークショップでは、皆で夢を語り合い、候補地を探して歩き、予定地を自分たちで測量し調査を行い、プラ
ンを考えたりデザインしたり、ユンボを使って整地も行いました。ユンボは地元の土木業者さんにお願いして入
れていただいたのですが、素人作業を見かねて近所の大工さんがボランティアで手伝ってくださったり。(笑)
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◆地域の交流の場「きせつのこみちグリーンガーデン」
こうして手がけた宮崎台小学校脇の荒れ地は、10年以上の時を経て、人々が集い、汗を流し、憩う「きせつ
のこみちグリーンガーデン」となりました。花の世話だけでなく、バーベキュー大会、コミュニティ市、ハーブ
講習会、小学校の青空教室などが定例となっており、今ではなくてはならない地域の交流の場となっています。
土地は市から借り受けています。隣接企業からは土地、電気、水を提供していただきました(現在企業は移転し、
住宅地になっています)。(公財)都市緑化機構、(公財)川崎市公園緑地協会から助成金をいただいています。ま
さに民・官・企業で創出した、文字どおりコミュニティのガーデンなんです。
◆世話をしている公園や広場の花壇は、10カ所近くになりました
宮前・コミュニティガーデン実行委員会の活動は、現在も順調に地域に浸透していますが、その間、宮前ガー
デニング倶楽部のほうも、宮前平地区、宮崎台地区など10カ所近くの公園や駅前広場に活動の場を広げていま
す。
区役所周辺や市民広場(区役所と市民館の中間の広場)、富士見台小学校土手、宮前平駅前ロータリー、矢上
川沿い、宮崎台駅前バス広場など、多くの区民の方がきっと目にしたことがあることと思います。
◆宮崎台駅前花壇は東急電鉄から“みど*リンク”事業に選ばれました
宮崎台駅前バス広場でも花壇を作っています。区長を通して土地を東急電鉄から借り受け、15年ほど続けて
きました。カチカチだった土を開墾したんです。
平成25年に東急電鉄が「みど*リンク」という、地域の緑化活動支援を始めたんで、それに応募して選出され、
東急電鉄さんからは、この花壇のために物品等の支援を受けることができるようになりました。
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◆“川崎国際生田ゴルフ場花壇”の世話で“報酬”をいただけるようになりました
川崎国際生田ゴルフ場は市の公園緑地協会が管理していたのですが、平成22年に6~7カ所あった花壇の世
話を市民ボランティアにやって欲しいという要請があってお引き受けすることになりました。十数名で月に2回
の作業をしていました。
平成25年に指定管理業者がゴルフ場を運営することになり、そちらの業者さんから「今まで通りやって欲し
い」と頼まれました。市から依頼されていた時も“活動協力費”はいただいていましたが、儲けるってわけには
いきません。(笑)
今はちゃんと“報酬”という形でいただけるようになり、定期的な事業収入ができました。
楽しみながら稼げるのですから、ありがたいです。(笑)
◆得意なことが役立つのだから楽しいです
私たちはとにかくよく話し合います。話し合えば、自分だけが主体ではなく、人の主体も
大切にする、そんな方向が見えてきますから。だから話し合うことをとても大切に考えてい
るんです。
それから無理はしないこと。無理をすると長続きしませんからね。
花作りは苦手だけれど会報や申請書類を書くのなら得意よという人や、
工事現場から廃材をもらいうけるのが得意な人や、講師・講演を得意とす
る人や、いろんな人が得意技を生かして活動に参加しています。
得意なことが役立つのだから、楽しいですよ。(笑)
◆受賞歴
全国花のまちづくりコンクール
平成14年 第12回 花のまちづくり優良賞 推進協議会長賞
「みどりの愛護」功労者国土交通大臣表彰
平成16年 第15回 国土交通大臣表彰受賞
川崎市わがまち花と緑のコンクール
平成17年 第1回 団体部門 大賞
熱意が人を動かし、人をつなぎ、そこに“ラッキー”が生まれる
あちこちに何度も足を運び、足りないものを工面する、行政や企業に交渉する、そんな道のりも楽しかっ
た!ラッキーだった!と笑って話してくださいました。
きっと皆さんの熱意が人を動かし、人をつなぎ、そこに“ラッキー”が生まれるのでしょう。
連携する団体、企業、グループ等がとても多いこともその証のように感じられます。
これからも楽しく活動を続け、後輩たちの指針となってくださるよう願ってやみません。
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平成20年 第4回 選考委員会特別賞
なごみ賞 (ダブル受賞)
平成21年 第5回 連続応募賞
◆質問コーナー
① 宮前区まちづくり協議会の助成金はどのように役立ちましたか
花壇の土留めなど土木関係のことに使いました。
② その後、また現在どのように資金調達しておられますか
会費、受託事業、イベントの売上、講師謝金や原稿料などです。
③ 地域や他団体との交流、協力体制について教えてください
*連携図を転載させていただきました。下図をご参照ください。
④ 現在抱えている問題、課題がありましたら教えてください
会員の高齢化ですね。これから役割を若い世代に移行していきたいと思っています。
◆宮前ガーデニング倶楽部協働の輪◆
宮前ガーデニング倶楽部ホームページ
花壇の画像および図表は宮前ガーデニング倶楽部からお借りしました。
担当:山田知子
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