ペロブスカイト太陽電池における 正孔輸送層/ペロブスカイト層の 界面制御 産業技術総合研究所 太陽光発電研究センター 1 有機系薄膜チーム、 2 化合物薄膜チーム、 3 熊本大学、 4 東京大学 小野澤 伸子 1 、村上 拓郎 1 、舩木 敬 1 、KAZAOUI Said 1 、 近松 真之 1 、反保 衆志 2 、 WANG Wei-Wei 3,4 、杉本学 3,4
ペロブスカイト太陽電池における正孔輸送層/ペロブスカイト層の
界面制御
産業技術総合研究所 太陽光発電研究センター1有機系薄膜チーム、 2化合物薄膜チーム、
3熊本大学、 4東京大学
小野澤 伸子1、村上 拓郎1 、舩木 敬1 、KAZAOUI Said1 、
近松 真之1 、反保 衆志2 、 WANG Wei-Wei 3,4、杉本学3,4
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ペロブスカイト太陽電池の変換効率の推移
ペロブスカイト23.3% (CAS, 中国)
有機薄膜、色素増感など
NRELのBest Research-Cell Efficienciesより抜粋 (2018.7)
ペロブスカイト太陽電池の変換効率は近年急激に上昇している。
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c-TiO2
m-TiO2
ペロブスカイト
ホール輸送層
金属電極
導電性ガラス基板
ホール輸送層
ペロブスカイト
電子輸送層
金属電極
導電性ガラス基板導電性ガラス基板
順構造(メソポーラス)型 プラナー型 逆構造(OPV)型
ペロブスカイト太陽電池の素子構造
ここ数年で大幅に性能向上し、実用太陽電池並みの高変換効率を達成。塗布・印刷プロセスで作製可能な為、大幅な低コスト化に期待。超軽量・フレキシブル化により用途拡大も可能。
ペロブスカイト太陽電池の
一般的な組成
3
-
-
+
-
+
+
PerovskiteHTL
h+
e-
界面のトラップサイトは電荷の再結合を引き起こす×
×
性能低下の要因となる
ペロブスカイト太陽電池の高効率化のために
• 適切な材料の選択• デバイス構造• 成膜性の向上• 適切な界面の制御
TiO2
ペロブスカイト太陽電池の界面制御について
4
ペロブスカイト/正孔輸送層(HTL)の界面制御
報告例 1
D. W. deQuilettes et al., Science, 348, 683 (2015).
報告例 2
ヨードペンタフルオロベンゼン(IPFB) F
I
FF
F
F
A. Abate, H. J. Snaith et al., Nano Lett. 14, 3247 (2014).
ルイス酸、ルイス塩基等を用いた報告例があり。
HTL
ペロブスカイト層
酸化物
h+ペロブスカイト/HTL界面へ有機材料修飾することにより界面制御
・ホールトラップを除去することで高効率化・ペロブスカイト層をパッシベーションすることで高耐久化・ぬれ性制御
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FTO
c-TiO2
m-TiO2
PbI2のDMF溶液をスピンコート
70℃30分加熱
70℃1時間加熱
2液法によるペロブスカイト太陽電池の作製方法
Ref. M.Grätzel et al., Nature, 499, 316 (2013).
ドライチャンバー内で作製
室温下、MAIのIPA溶液中に浸漬3分間
PbI2からCH3NH3PbI3を生成。
ペロブスカイト
6
m-TiO2
FTO
c-TiO2
HTL
Au
Spiro-OMeTAD界面処理剤
N
NN
N
N 芳香族N-ヘテロ環化合物に効果があることに着目し、検討した。
スピンコートによるペロブスカイトの界面処理法
真空蒸着で電極をつける
ペロブスカイト
7
N
NN
N
N
芳香族N-ヘテロ環化合物を中心に検討を行ったところ窒素数の増加に伴い電圧向上
ピリミジン トリアジンピリジン
N
3種類の芳香族N-ヘテロ環化合物を界面処理剤として用いたセルの電池性能 (9個のセルの平均値)
Treatment Jsc/mA cm-2 Voc/V FF PCE/%
Blank 20.6±0.6 0.97±0.02 0.62±0.03 12.4±0.9
Pyridine 19.2±1.0 0.99±0.01 0.65±0.01 12.6±0.8
Pyrimidine 21.1±0.2 1.00±0.02 0.68±0.02 14.2±0.9
Triazine 21.3±0.4 1.01±0.01 0.69±0.03 14.8±0.6
0
5
10
15
20
25
0 0.2 0.4 0.6 0.8 1
8
塗布なしJsc 20.7 mA cm-2
Voc 0.98 VFF 0.68PCE 13.8%
塗布有りJsc 21.3 mA cm-2
Voc 1.02 VFF 0.74PCE 16.0%
Voltage/V
トリアジン塗布による電池性能の比較P
hoto
curr
ent d
ensi
ty/m
Acm
-2
0
20
40
60
80
100
400 500 600 700 800 900
Fig.1 J-V 曲線
Fig. 2 IPCE スペクトル
Wavelength/nm
IPC
E/%
9
塗布有り塗布なし
1µ
(a)
1µ
(b)
Fig. 3 トリアジン塗布なし(a)と塗布有り(b)のペロブスカイト表面のSEM画像
1.5 cmx1.5 cmActive area 0.119 cm2
トリアジン塗布によるペロブスカイト表面の変化はあまり見られない。
10
トリアジン
ピリミジン
ピリジン
塗布なし
N
NN
N
N
N10
100
1000
104
0 20 40 60 80 100
Coun
t
Time/ns
蛍光寿命測定結果
τ1/ns τ2/ns
Blank 2.16 7.08Pyridine 2.53 8.19Pyrimidine 2.77 8.92Triazine 3.31 11.20
トリアジン塗布による蛍光寿命の長寿命化
ペロブスカイトーHTL界面における再結合の抑制に寄与
Fig.4 蛍光減衰曲線
11
Ener
gy (e
V)
VB
CB
Energy alignments
-1.728
-5.822 -5.894
-2.289
-6.522
-2.709
-1.645
-3.922
-4.762
-3.582
C5H5N C4H4N2 C3H3N3 Spiro-OMeTAD PVK
The energy alignments are obtained by slab calculations using Dmol3 software.
熊本大学杉本学先生による計算結果
HOMOの準位はピリジン>ピリミジン>トリアジン
12
FTO
c-TiO2
m-TiO2
spiro-OMeTADの溶液をスピンコート
100℃1時間加熱
真空蒸着で電極をつける
Au
できあがり
1液(貧溶媒滴下)法によるペロブスカイト太陽電池の作製方法
CsI+FAI+MABr+PbI2+PbBr2前駆体 クロロベンゼン
界面処理剤
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CsI+FAI+MABr+PbI2+PbBr2前駆体、m-TiO2電極構造Perovskite/HTM界面にトリアジン処理したセルのJ-V 曲線 (1step, 貧溶媒滴下法)
Jsc / mA
cm-2 Voc / V FFPCE
/ %
FW 22.6 1.01 0.63 14.4BW 22.5 1.07 0.79 19.0
Jsc / mA
cm-2 Voc / V FFPCE
/ %
FW 22.3 1.01 0.54 12.1BW 22.1 1.06 0.77 17.9
塗布なし
塗布有り
2液法で作製したセルの方がトリアジン塗布による効果は大きかった。ペロブスカイトの種類、膜質により効果の程度は差があることがわかった。
0
5
10
15
20
25
0 0.2 0.4 0.6 0.8 1 1.2Voltage/V
Pho
tocu
rren
t den
sity
/mA
cm-2
Fig.5 J-V 曲線
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1. 芳香族N-ヘテロ環化合物をペロブスカイト/HTLの界面処理剤として作製したセルは窒素数が増加することにより、Vocが向上し、トリアジンでは50 mV程度上昇することがわかった。
2. 蛍光寿命測定からトリアジンを塗布したものが塗布していないものよりも蛍光寿命が長いことがわかった。界面での再結合の抑制に寄与していると考えられる。
3. 計算結果からHOMOの準位はピリジン>ピリミジン>トリアジンの順で負になることがわかった。この順にHTLに移動したホールはペロブスカイトの電子と再結合しにくくなっていると推定される。
本研究内容はJpn. J. Appl. Phys., 57, 08RE08 (2018)に掲載。本研究は新エネルギー・産業技術総合開発機構 (NEDO)の委託により実施されたものである。
まとめ