1 働くタンパク質 - 酵素パワーとその仕組み - 金沢大学工学部物質化学工学科 分子設計講座 国本 浩喜
1
働くタンパク質 - 酵素パワーとその仕組み -
金沢大学工学部物質化学工学科
分子設計講座
国本 浩喜
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あれも酵素 これも酵素
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講演内容
• 身近な酵素 消化酵素
• 生体(高)分子– でんぷんとセルロース
– タンパク質とアミノ酸
– 核酸(DNA とRNA)
– 脂質
• 酵素とは– 発見の歴史と特徴
– 分子の大きさ
– 酵素反応の特徴
– 酵素の種類
– 酵素の合成
• 酵素の利用
• 洗剤入り酵素
• バイオ化粧品
• 健康診断と酵素
– 人間ドック項目
– オキシドールによる消毒
– 血液生化学検査
– 尿試験紙
• 発酵と酵素
– 微生物
– 発酵食品
• 酵素技術の展開
– 酵素の固定化
– 遺伝子組み替え
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身近な酵素 -消化酵素
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消化酵素の働き
ペプチダーゼアミノ酸ペプチド
マルターゼブドウ糖麦芽糖
ラクターゼブドウ糖とガラクトース乳糖
弱アルカリ性スクラーゼブドウ糖と果糖砂糖腸液
ペプチダーゼアミノ酸ポリペプチド
リパーゼ脂肪酸とグリセリン脂肪
弱アルカリ性マルターゼブドウ糖麦芽糖すい液
酸性ペプシンポリペプチドタンパク質胃液
中性アミラーゼ麦芽糖でんぷんだ液
液性酵素生成物基質消化液
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でんぷんの分子構造(1)
でんぷんの光学顕微鏡写真
じゃがいも
でんぷんの電子顕微鏡写真
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でんぷんの分子構造(2)
拡大
でんぷん顆粒の概念図
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でんぷんの分子構造(3)
アミロース アミロペクチン
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炭水化物(多糖)構造
単糖 単糖+
+ H2O
二糖の加水分解
二糖の生成
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でんぷんの消化http://www.ultranet.com/~jkimball/BiologyPages/C/Carbohydrates.html#starches
http://www.wantashi.com/aroma/refre/page12.html
消化
唾液アミラーゼ
膵液アミラーゼ
消化 膵液と腸液のマルターゼでんぷん
二酸化炭素
水
ATP (エネルギー)通貨
代謝
各種の酵素
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「消化」の化学的意義•消化 = 加水分解(水を使って分解)
•消化酵素 = 加水分解を助ける酵素
•アミラーゼ = アミロース + アーゼ
“mono”:1つ
”di”: 2つ
“tri”: 3つ
モノマー
ダイマー
トリマー
ポリマー
”poly”:多数の
共有結合
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膵臓の消化酵素
酵素 はたらき
• トリプシン ポリペプチドの加水分解
• キモトリプシン ポリペプチドの加水分解
• アミラーゼ でんぷんの加水分解
• マルターゼ 麦芽糖の加水分解
• リパーゼ 脂肪の加水分解
• ヌクレアーゼ 核酸の分解
• カルボキシペプチダーゼ ポリペプチドのC末端からの加水分解
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腸液の酵素
酵素 はたらき
• エンテロキナーゼ トリプシノーゲンをトリプシンにする。
• マルターゼ 麦芽糖をブドウ糖に分解する。
• 腸リパーゼ 脂肪を分解する。
• ラクターゼ 乳糖をブドウ糖やガラクトースに分解する。
• シュクラーゼ 蔗糖をブドウ糖や果糖に分解する。
• ジペプチダーゼ ジペプチドをアミノ酸に分解する。
• アミノペプチダー ゼ ポリペプチドのN末端から分解する。
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講演内容
• 身近な酵素 消化酵素
• 生体(高)分子– でんぷんとセルロース
– タンパク質とアミノ酸
– 核酸(DNA とRNA)
– 脂質
• 酵素とは– 発見の歴史と特徴
– 分子の大きさ
– 酵素反応の特徴
– 酵素の種類
– 酵素の合成
• 酵素の利用
• 洗剤入り酵素
• バイオ化粧品
• 健康診断と酵素
– 人間ドック項目
– オキシドールによる消毒
– 血液生化学検査
– 尿試験紙
• 発酵と酵素
– 微生物
– 発酵食品
• 酵素技術の展開
– 酵素の固定化
– 遺伝子組み替え
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生体高分子
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でんぷんとセルロース
(1) でんぷんの構造 (2) セルロースの構造
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アミノ酸の種類
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ペプチドの生成
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ポリペプチドの生成
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タンパク質の分子構造(1)
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タンパク質の分子構造(2)
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タンパク質の分子構造(3)
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タンパク質の分子構造(4)
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タンパク質分子構造(5)
一次構造
二次構造
三次構造
四次構造
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核酸(ポリヌクレオチド)の構造
A = アデニンG = グアニンC = シトシンT = チミンU = ウラシル
リボースまたはデオキシリボース
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DNA の分子構造
二次構造(二本鎖)
一次構造(一本鎖)
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脂肪の分解
+ H2O
リパーゼ +
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脂肪酸の分子構造
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脂質の分子構造
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講演内容
• 身近な酵素 消化酵素
• 生体(高)分子– でんぷんとセルロース
– タンパク質とアミノ酸
– 核酸(DNA とRNA)
– 脂質
• 酵素とは– 発見の歴史と特徴
– 分子の大きさ
– 酵素反応の特徴
– 酵素の種類
– 酵素の合成
• 酵素の利用
• 洗剤入り酵素
• バイオ化粧品
• 健康診断と酵素
– 人間ドック項目
– オキシドールによる消毒
– 血液生化学検査
– 尿試験紙
• 発酵と酵素
– 微生物
– 発酵食品
• 酵素技術の展開
– 酵素の固定化
– 遺伝子組み替え
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酵素の発見の歴史
• 1787年 ラザロ・スパランツアーニが肉片を鷹に飲み込ませる実験
• 1810年 ゲイリュサックが酵母が糖を分解するときの生成物がエタノールと二酸化素であることを示す。
• 1833年 ペイアン、ペルソ(フランス)麦芽から「ジアスターゼ(アミラーゼ)」発見
• 1836年 シュヴアン(ドイツ)胃壁から「ペプシン」発見
• 1861年 パスツール(フランス)酵母によるアルコール発酵
• 1878年 キューネが触媒作用するものをエンザイム(Enzyme)と命名。ギリシャ語で「酵母の中にあるもの」という意味
• 1898年 デユークローは酵素に‘アーゼ(ase)’という接尾語つけることを提唱
• 1897年 ブフナー兄弟(ドイツ)がすりつぶした酵母によりアルコール発酵
• 1900年 フィッシャー(ドイツ)酵素の立体選択性発見
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酵素の本体
1837年 ベルセリウス(スエーデン)
「化学反応の触媒作用」提唱
1926年 サムナー(アメリカ)
ナタ豆から、尿素を加水分解してアンモニアと二酸化炭素にするウレアーゼ (UREASE)を結晶として取り出しそれがタンパク質であることを示す。
現在まで約10万ほどの酵素のうち数千が知られその内約千が結晶化されている。
リボザイム以外はすべての酵素はタンパク質で出来ている
ウレアーゼの結晶
尿素の加水分解
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酵素の特徴http://www.biochem.arizona.edu/classes/bioc462/462a/NOTES/ENZYMES/enzyme_kinetics.html
酵素 (Enzyme)
• 1878年 キューネ提唱 “酵母の中にあるもの( in yeast )”
• 生化学的触媒
1. 触媒とは化学反応(共有結合の組替え)の速度を増加させる物質
2. 大抵はタンパク質である
3. 物質 代謝の反応速度調節
化学触媒とは性質が異なる-
• 複雑な分子構造(アミノ酸配列)をもつ
• 特異的な基質にのみ作用する
• 反応の方向を変えない
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鍵と鍵穴
鍵と鍵穴モデル
http://wunmr.wustl.edu/EduDev/LabTutorials/Carboxypeptidase/carboxypeptidase.html
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カルボキシペプチダーゼA-基質複合体
カルボキシペプチダーゼA基質複合体カルボキシペプチダーゼA
http://wunmr.wustl.edu/EduDev/LabTutorials/Carboxypeptidase/carboxypeptidase.html
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酵素分子の大きさ
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酵素分子の大きさ
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分子の大きさ
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タンパク質分子の大きさ
約 1,000,000
~ 2,000,000
グルタミンシンセターゼ
約 97,000コハク酸デヒドロゲナーゼ
約 15,000リゾチーム
3 nm x 4.5 nm約 13,000リボヌクレアーゼ
サイズ分子量 酵素
0.2 nm x 0.3 nm2水素 (H2)
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酵素反応の特徴 反応の活性化エネルギー(Ea )を下げることにより反応を促進
酵素・基質複合体を形成する
E + S <---> [ES] <---> E + P酵素 基質 酵素・基質複合体 酵素 生成物
カタラーゼ
2 H2O2 --------> 2 H2O + O2
条件 Ea 反応速度
(lt/mol/sec)
非触媒反応 18,000 10-7
Fe 触媒 10,000 56
カタラーゼ 2,000 4 x 106
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酵素反応モデル
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酵素の変性
http://ntri.tamuk.edu/cell/enzyme.html
変性剤
酵素の化学変性
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酵素の再生
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酵素の命名法
• 常用名酵素が触媒となる反応を簡単に表しその後に
アーゼ(ase)をつける。
例)アルコールデヒドロゲナーゼ
アルコールから脱水素(デヒドロゲンーション)する酵素
トリプシンやペプシンのように古くから用いら
れてきたものはそのまま用いる。
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酵素の分類(1)-系統名-
• 「国際生化学連合」の国際酵素命名委員会
• 4 つの番号で酵素を分類する [1.2.3.4.]– 1番目の番号… 酵素の触媒する反応による主分類
– 2番目の番号… 副分類 (作用する結合のタイプ)
– 3番目の番号... 副分類 (作用する官能基、必要な補酵素など...)
– 4番目の番号... 通し番号 (酵素がリストに加えられた順番)
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酵素の分類(2)EC(酵素分類) の主分類
1. オキシドレダクターゼ... [デヒドロゲナーゼ]
酸化還元反応を触媒する
NAD+/FAD等の補酵素を使うことがある
例) アルコールデヒドロゲナーゼ [EC 1.1.1.1]
エタノール + NAD+ -------> アセトアルデヒド + NADH
2. トランスフェラーゼ....
ある原子団(リン酸基やアミノ基)をある物質から別の物質へ転移する反応を触媒する
例) ヘキソキナーゼ [EC 2.7.1.2]
D-グルコース + ATP ----------> D-グルコース-6-P + ADP
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酵素の分類(3)3. ヒドロラーゼ .… 加水分解反応を触媒する
例) カルボキシペプチダーゼ A [EC 3.4.17.1]
[アミノ酸-アミノ酸] n + H2O ---->
[アミノ酸-アミノ酸] n-1 + アミノ酸
4. リアーゼ ....ある原子団を二重結合につけたり、その逆反応を触媒する
例) ピルビン酸デカルボキシラーゼ [EC 4.1.1.1]
ピルビン酸 -----> アセトアルデヒド + CO2
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酵素の分類(4)
5. イソメラーゼ… [ムターゼ]
異性化反応を触媒する
例)マレイン酸イソメラーゼ [EC 5.2.1.1]
マレイン酸 ----------> フマル酸
6. リガーゼ…
ATPのエネルギーを利用して2つの分子を結合する反応を触媒する
例) ピルビン酸カルボキシラーゼ [EC 6.4.1.1]
ピルビン酸 + CO2 + ATP ----> オキサロ酢酸 + ADP + P
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酵素反応の反応速度酵素が触媒する反応の反応速度の数学的またはグラフ的表現
例) カタラーゼ 2 H2O2 ----> 2 H2O + O2
生成する酸素量
過酸化水素量
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酵素の触媒能力
• カタラーゼ
酵素1分子は1秒間に90,000個の過酸化水素を分解する
2H2O2 → 2H2O + O2
• カルボニックアンヒドラーゼ
酵素1分子は1秒間に1,000,000個の二酸化炭素を水に結合させる
CO2 + H2O → H2CO3
• DNAポリメラーゼ
酵素1分子は1秒間に15個の基質を変化させる
• リゾチーム
酵素1分子は1秒間に0.5分子の基質を変化させる
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代表的な酵素反応の反応速度パラメータ
4 x 1051.0 x 1040.025尿素ウレアーゼ
3.6 x 1079002.5 x 10-5マレイン酸フメラーゼ
1.6 x 1088005 x 10-6フマル酸フメラーゼ
4.0 x 1081.0 x 1070.025H2O2カタラーゼ
1.5 x 1074.0 x 1050.026HCO3-炭酸脱水素酵素
8.3 x 1071.0 x 1060.012CO2炭酸脱水素酵素
1.5 x 1061.4 x 1049.5 x 10-5アセチルコリン
アセチルコリンエステラーゼ
Kcat/Km (M-1 s-1)
Kcat (s-1)Km (M)基質(S)酵素(E)
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酵素の生合成
動物細胞
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核でのタンパク生合成
prtsynth.mov
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講演内容
• 身近な酵素 消化酵素
• 生体(高)分子– でんぷんとセルロース
– タンパク質とアミノ酸
– 核酸(DNA とRNA)
– 脂質
• 酵素とは– 発見の歴史と特徴
– 分子の大きさ
– 酵素反応の特徴
– 酵素の種類
– 酵素の合成
• 酵素の利用
• 洗剤入り酵素
• バイオ化粧品
• 健康診断と酵素
– 人間ドック項目
– オキシドールによる消毒
– 血液生化学検査
– 尿試験紙
• 発酵と酵素
– 微生物
– 発酵食品
• 酵素技術の展開
– 酵素の固定化
– 遺伝子組み替え
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加水分解酵素の利用http://www.asahi-net.or.jp/~hi2h-ikd/biology/enzyme.htm
• デキストラナーゼ : デキストラン分解酵素 → 歯垢の分解(歯磨き)
• アルカリセルラーゼ : セルロース(繊維素)分解酵素 → 酵素入り洗剤
• アミラーゼ : 糖結合を切断 → 消化酵素
• リゾチーム : 溶菌酵素 → 風邪薬
• ラクターゼ : ラクトース(乳糖)分解酵素 → 低乳糖牛乳
• パパイン : パパイヤにふくまれるタンパク質分解酵素
→ 消化酵素、肉を柔らかくする
• ペクチナーゼ : 果皮の不溶性ペクチンを分解する酵素
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異性化酵素の利用
• イソメラーゼ
甘味料の生産に利用される。バイオリアクターに酵素を固定化し,大量生産する。ブドウ糖をイソメラーゼによって果糖に変えた物を「異性化糖」とも言い、ブドウ糖よりも甘味が増し、菓子などにも使用されている。
ブドウ糖 果糖
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酸化還元酵素の利用
• オキシダーゼ = 酸素により酸化を進ませる酵素
皮をむいたリンゴが赤くなる。ナスの切り口が黒ずむ。組織が壊れ,オキシダーゼ が働き,ポリフェノールが着色する。
• ミロシナーゼ
大根をおろすと組織が壊れ,辛味成分が遊離する。大根の尾の方が辛い。消化を助けるのはアミラーゼ。
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その他の酵素利用
• 緑茶を紅茶にする酵素がある。
• ミソ・醤油・お酒など発酵に利用される酵素がある。
ポリフェノールオキシダーゼの作用
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講演内容
• 身近な酵素 消化酵素
• 生体(高)分子– でんぷんとセルロース
– タンパク質とアミノ酸
– 核酸(DNA とRNA)
– 脂質
• 酵素とは– 発見の歴史と特徴
– 分子の大きさ
– 酵素反応の特徴
– 酵素の種類
– 酵素の合成
• 酵素の利用
• 洗剤入り酵素
• バイオ化粧品
• 健康診断と酵素
– 人間ドック項目
– オキシドールによる消毒
– 血液生化学検査
– 尿試験紙
• 発酵と酵素
– 微生物
– 発酵食品
• 酵素技術の展開
– 酵素の固定化
– 遺伝子組み替え
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酵素入り洗剤
•洗剤に添加されている酵素
蛋白分解酵素 アルカラーゼ(アルカリプロテアーゼ)
繊維分解酵素 アルカリセルラーゼ
脂肪分解酵素 リパーゼ
これらの酵素は枯草菌から取り出したものである。バイオテクノロジーにより枯草菌を大量製造し、死亡した菌体を粉末にして、合成洗剤にわずかに添加している。
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酵素活性とpH
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酵素活性と温度
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酵素活性と時間
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市販の酵素入り洗剤洗濯用洗剤の家庭用品品質表示法に基づいた成分表示
界面活性剤(34%)
アルファスルフォ脂肪酸エステルナトリウム
直鎖アルキルベンゼン系
脂肪酸ナトリウム(純石けん分)
アルミノけい酸塩
炭酸塩
酵素配合
けい酸塩蛍光剤配合
洗濯用合成洗剤○ップ スーパーコンパクトR 社
界面活性剤(37%)
直鎖アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム
ポリオキシエチレンアルキルエーテル
アルキル硫酸エステルナトリウム
脂肪酸ナトリウム(純石けん分)
アルミノけい酸塩
炭酸塩
けい酸塩蛍光剤配合
酵素配合
洗濯用合成洗剤○○ック 新コンパクトK 社
成 分品 名商 品 名メーカー
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酵素入り洗剤の上手に使う
• 1時間以上つけおくと洗浄力がグンとアップする。
• 40℃前後の水温でもっとも酵素の働きが活発になるので、 白い木綿の下着や靴下などは、お風呂の残り湯でつけおき洗いをすると効果的である。
• つけおきするときは洗剤液の濃度を濃くするのがコツ。界面活性剤は一定以上 の濃度にすると洗浄力が頭打ちになるのに対して、酵素は濃度が高くなるほど 分解がすすんで汚れ落ちがよくなる。
• 洗い桶に残り湯を入れ、洗濯機1回分の洗剤をよく溶 かしてから洗濯物をつけ込 む。翌朝、つけおきした液ごと洗濯機に移し、規定の水量まで水をた してふつうに洗う。
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講演内容
• 身近な酵素 消化酵素
• 生体(高)分子– でんぷんとセルロース
– タンパク質とアミノ酸
– 核酸(DNA とRNA)
– 脂質
• 酵素とは– 発見の歴史と特徴
– 分子の大きさ
– 酵素反応の特徴
– 酵素の種類
– 酵素の合成
• 酵素の利用
• 洗剤入り酵素
• バイオ化粧品
• 健康診断と酵素
– 人間ドック項目
– オキシドールによる消毒
– 血液生化学検査
– 尿試験紙
• 発酵と酵素
– 微生物
– 発酵食品
• 酵素技術の展開
– 酵素の固定化
– 遺伝子組み替え
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バイオ化粧品
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メラニンの形成
http://www.sas.upenn.edu/~mtc/Sunscreen.htm
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しみ・そばかすの生成• シミ・ソバカスは過剰なメラニン色素が生成されることによって引き起こさ
れる。
• メラニン色素の生産のメカニズム
太陽光の中の紫外線、ストレス、大気汚染などにさらされることで肌の中でフリーラジカル(活性酸素)が発生し、その刺激によってメラノサイト(色素細胞)が活性化される。
活性化したメラノサイトは、メラニン色素生産の原因となる酵素チロシナーゼの働きを活発にさせる。その結果、メラノサイト内のチロシン(アミノ酸の一種)が酵素チロシナーゼによってメラニン色素に変換されシミ・ソバカスの原因となる。
• 美白化粧品に用いられる美白成分には、その作用機構によって2つのタイプがある。第一のタイプは、できてしまったメラニン色素を還元して色を薄くするもので、ビタミンCなどが代表的な有効成分である。第二のタイプは、酵素チロシナーゼに直接作用してメラニン色素の生産を抑制するもので、コウジ酸、アルブチン、エラグ酸などが代表的な有効成分である。
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チロシナーゼ抑制美白成分
アルブチン
エラグ酸 コウジ酸
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エラグ酸の日焼け予防効果http://www.lion.co.jp/life/life3p2a.htm
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講演内容
• 身近な酵素 消化酵素
• 生体(高)分子– でんぷんとセルロース
– タンパク質とアミノ酸
– 核酸(DNA とRNA)
– 脂質
• 酵素とは– 発見の歴史と特徴
– 分子の大きさ
– 酵素反応の特徴
– 酵素の種類
– 酵素の合成
• 酵素の利用
• 洗剤入り酵素
• バイオ化粧品
• 健康診断と酵素
– 人間ドック項目
– オキシドールによる消毒
– 血液生化学検査
– 尿試験紙
• 発酵と酵素
– 微生物
– 発酵食品
• 酵素技術の展開
– 酵素の固定化
– 遺伝子組み替え
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健康診断(人間ドック)項目
血液検査の詳細
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検査結果(1)
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検査結果(2)
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検査結果(3)
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オキシドールによる消毒
2H2O2 2 H2O + O2
2.5~3.5%過酸化水素水はオキシドールと呼ばれ消毒に使う。
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カタラーゼ立体構造http://www.labbench.com/sample/active.html
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基質特異性
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誘導適合
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酵素機能のpH依存性
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ウシ肝臓カタラーゼ
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生化学検査
• ジーオーティー (GOT),ガンマジーティーピー (γ-GTP), コレステロール(T-Cho), 血糖 (BS) 等の検査項目がある。
• 採血室で採血された血液は搬送機に乗って検査室に運ばれる.
固まるのを待って(約15分)遠心分離機にかけ,血球部分と液状部分(血清)に分離し,この血清の中の成分を測定する.
• 血清の中には食物に由来する栄養成分や細胞から出てくる成分,老廃物として捨てられる成分,ウイルスのように体外から入ってきた成分など,さまざまな成分がある.その中で病気と関係の深い項目を選んで測定するのが生化学検査である.
• 項目の中には、肝臓、膵臓、腎臓、胆嚢、心臓などそれぞれ関係の深いものがあり、 肝機能検査や腎機能検査などと呼ばれる.測定には自動分析器を使う。
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血液生化学検査http://www.drakahige.com/FAMILY/SPECIAL/HEALTH/2001/2001092501.shtml
• 肝臓に多く存在するGOT (Glutamic Oxaloacetic Transaminase )、GPT(GlutamicPyruvic Trasaminase)
GOT(AST) 肝細胞の中に含まれる=肝臓細胞の障害を見る
GPT(ALT) 肝細胞の中に含まれる=肝臓細胞の障害を見る
• 飲酒の習慣のある人はγ-GTP (g- Glutamyl Traspeptidase、γ-グルタミールトランスペプチダーゼ) に注目。飲酒により値が高くなる。
• 胆汁の流れがとどこおるとLAP (ロイシンアミノペプチダーゼ)が上昇
• その他の指標
LDH (Lactate Dehydrogenase, 乳酸脱水素酵素)
コリンエステラーゼ (ChE) 肝臓の合成能(物を作る力)
アルカリフォスファターゼ (ALP) http://www.jaclap.org/labo/labo-276.html
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GOT(Glutamic-oxaloacetic transaminase)http://www.hamt.or.jp/KENSA/VISITOR/TEST/test-index.html
• AST (aspartate aminotransferase) はGOTと呼ばれてきたが、酵素名称の
標準化によりASTの方が今後広く使われるようになると思われる。
• 体の中ではあるアミノ酸から別のアミノ酸を作る作業が盛んに行われている。 その際にアミノ基の転移反応を触媒する酵素がトランスアミナーゼである。AST やALTもこのトランスアミナーゼで、補酵素としてピリドキサルリン酸(PALP,ビタ ミンB6誘導体)を必要とする。
• トランスアミナーゼはほとんど全ての細胞に含まれている酵素であり、細胞が 障害を受けることによって誘出してくる逸脱酵素で血清中に出てくる酵素量は臓 器の障害の程度、臓器の 酵素濃度、細胞数によって左右される。ASTは心筋、 肝臓、骨格筋、腎
臓などに多く含まれており赤血球中にも血清中の約40倍の ASTがある。
ASTAST
L-アスパラギン酸 + a-ケトグルタル酸 オキサロ酢酸 + L-グルタミン酸
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血糖測定
・ 電極チップを用います。
・ 血液を電極チップの先端に付けると、血液が吸引され、自動的に測定が始 まります。
・ 試験紙を用います。
・ 目視判定用カラーチャートと比べること
で、目視でも血糖値の確認ができます。
特徴
血液を電極チップに吸引させると、血液中のブドウ糖が試薬と反応して、電子が発生します。 発生した電子の量は、血液中のブドウ糖濃度に比例していますので、その電子の量を測ることによって、血糖値が測定できます。
試験紙に血液をつけると、血液中のブド ウ糖が試薬と反応して、色素が作られます。 作られた色素の量は血液中のブドウ糖濃に比例していますので、そ の色の濃さを測ることによって、血糖値が測定できます。
メカニズム
酵素電極法酵素比色法測定方法
88
測定原理 http://square.umin.ac.jp/̃jin/text/BS.html
(a) 酵素電極法
グルコースオキシダーゼ(GOD)法
グルコースデヒドロゲナーゼ(GDH)法
(b) 酵素比色(比色定量)法
ヘキソキナーゼ(HX)法
グルコースオキシダーゼ / ペルオキシダーゼ(GOD / POD)法
89
血糖自己測定器
品名 メーカー
ボアシスト ノボノルディスク
グルテストE 三和化学
グルコカード アベンティス
デキスターZ バイエル三共
メディセーフ テルモ
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血糖の比色定量
http://www.uemura-clinic.com/dmlecture/smbg.htm
比色定量用試験チップと専用リーダー(メディセーフ)
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血糖酵素電極による定量
固定化酵素電極とその測定器(グルコカード)
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グルコースオキシダーゼ / ペルオキシダーゼ(GOD / POD)法
o-トリジン
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自動グルコース分析器
http://www.toyobo.co.jp/seihin/xr/product/dsg/daiguka60/daiguka60.html
自動グルコース分析器
HEK-60 (東洋紡)
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測定原理 http://www.toyobo.co.jp/seihin/xr/product/dsg/daiguka60/daiguka60.html
電極に固定化されたグルコースオキシダーゼ(GOD)はβ-D-グルコースに特異的に作用し、グルコースが酸化され生成する過酸化水素を過酸化水素電極で測定する方式を取っていま す。
[ 原理 ]
1. β-D-グルコース+H2O+O2 →グルコン酸+H2O2
2.. H2O2 → 2H+ +O2 + 2e- (陽極)
3. 4H+ + O2 +4e -→ 2H2O (陰極)
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尿試験紙
ウロビュー糖・蛋白(日水)
ウロペーパーGP(田辺)
テス・テープA(塩野義)
ハイキャッチ尿糖・タンパク用(エーザイ)
ホームテスター糖・たんぱく(大正)
ワンヘルシーG・P(日東)
新ウリエース KC10 (テルモ)
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尿検査(1)
蛋白、ウロビリノーゲン、潜血、ケト
ン体など10項目が約1分間で検査
されます。
原理は、例えばブドウ糖に反応す
る試験薬を含んだ濾紙を尿に浸す
と、糖が存在すれば反応薬により
濾紙の色調が変化するというもで
す。
ウロペーパー II (栄研)
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尿検査(2)http://www.naramed-u.ac.jp/̃lab-h/labo-med/lectures/urinalysis/urinalysis.html
• 蛋白 試薬:TBPB,クエン酸buffer pH2-3
測定原理:pH誤差法(蛋白が存在するとアルカリ側に反応するpH試薬を利用しているので,尿のpHが高すぎると偽陽性を示す。この反応はアルブミンにsensitiveである。
• 尿ブドウ糖 試薬:Glucose oxidase(GOD),Peroxidase(POD),クロモーゲン(ヨウ化カリウムなど)による酸化法
測定原理: GODがglucoseをグルコン酸に変換する時にH2O2が発生,PODがこれを分解する際にクロモーゲンを酸化して発色させる。glucose-specificである。酸化法なので還元剤(とくにビタミンC)があると反応が抑制される。
• ビリルビン
測定:ジアゾ反応(ジアゾニウム塩と反応してアゾ色素を生成する
• 潜血反応
測定:過酸化物(過酸化水素など),クロモーゲン(オルトトリジンなど)をヘモグロビンのPOD作用により酸化発色させる
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講演内容
• 身近な酵素 消化酵素
• 生体(高)分子– でんぷんとセルロース
– タンパク質とアミノ酸
– 核酸(DNA とRNA)
– 脂質
• 酵素とは– 発見の歴史と特徴
– 分子の大きさ
– 酵素反応の特徴
– 酵素の種類
– 酵素の合成
• 酵素の利用
• 洗剤入り酵素
• バイオ化粧品
• 健康診断と酵素
– 人間ドック項目
– オキシドールによる消毒
– 血液生化学検査
– 尿試験紙
• 発酵と酵素
– 微生物
– 発酵食品
• 酵素技術の展開
– 酵素の固定化
– 遺伝子組み替え
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微生物とは微生物(microorganism)とは一般に顕微鏡でなければ観察することの
できない、大変小さな生物の総称で、酵母・かび・細菌などのほか、藻
類・原生動物も含まれる。
醸造・発酵食品分野では古くから微生物を活用してきた。しかし、17世
紀に顕微鏡が開発されるまで、その姿を見ることはできなかった。その
後多くの科学者によって次々と新たな菌体が発見され、現在も続いて
いる。
微生物には人間の生活に役立つ働きをするものとそうでないものがありま
す。そのうち前者を有用微生物、後者を有害微生物と呼ぶ。だだ
し、それらは使用目的や環境によって逆の立場になることもある。
人間の生活に役立つ物質が出来る場合を発酵、有害な物質が出来る場合
を腐敗という。
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微生物の種類
醸造・発酵食品分野では様々な微生物が利用されているが、主なも
のとして酵母(yeast)、かび(mold)、細菌(bacteria)などがある。
一般的に使われているこれらの呼び方は俗名であり、学名ではそれぞ
れの菌体を属(genus)と種(species)によって細かく分類されてる。
Acetobacter, Bacillus, Lactobacillus, Pediococcus など細菌
Aspergillus, Mucor, Penicilliun, Rhizopus などかび
Saccharomyces, Candida, Torulopsis, Zygosaccharomyces など
酵母
属 名俗名
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酵母• Saccharomyces cerevisiae グルコース、フラクトース、マンノース、ガラクトース、シュクロース、マルトースを発酵するが、乳糖は発酵しない。 形は球形または卵形であり、アルコール生成力が強い。清酒、ビール、ワイン、パンなど非常に多くの食品で利用されている酵母。
• Zygosaccharomyces rouxiiアルコール発酵能は高くないが、耐塩性を有するため醤油に
など利用される。
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かび
• Aspergillus oryzae
コウジカビの代表種で黄麹菌とも呼ばれる。デンプン分解、タ ンパク質分解力が強い。利用分野は多岐にわたり、清酒・味噌・醤油・みりんなどがある。
• Aspergillus sojae
タンパク質分解力が特に強く、分生子の表面に小突起がある。醤油製造に利用される。
•Penicillium roqueforti
青かびと呼ばれるもので、ロックフォールチーズの製造に利用される。
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細菌
• Acetobacter aceti酢酸菌と呼ばれるもので、無胞子。エタノールから酢酸をつくるので、酢の
製造に利用される。
• Lactobacillus delbrueckii subsp. bulgaricus乳酸菌の一種で長桿菌。発酵乳の製造に利用されている。至適温度が高
いのが特徴。
• Pediococcus halophilus耐塩性の乳酸菌で4連球菌。醤油、味噌に利用される。
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発酵食品
微生物の代謝によってつくられるもの
酵母によるアルコール発酵 糖質をアルコールと二酸化炭素にする
酢酸菌による酢酸発酵 エチルアルコールを酢酸にする
乳酸菌による乳酸発酵 糖質を乳酸にする