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学士論文 測定器の温度モニターとしての 非接触型赤外線温度計の性能評価 東京工業大学 理学部 物理学科 柴田研究室 栗原篤志 平成 29 2 16
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Jun 06, 2020

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学士論文

測定器の温度モニターとしての非接触型赤外線温度計の性能評価

東京工業大学理学部物理学科柴田研究室栗原篤志

平成 29年 2月 16日

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概要

素粒子物理などの実験では、測定器の本体やエレクトロニクスの温度を定期的に長時間にわたってモニターすることが必要になる場合が多い。例えば SeaQuestのドリフトチェンバーについては、1)ドリフトチェンバー本体の温度モニターと、2)信号の読み出し回路の温度モニターが考えられる。ドリフトチェンバー本体の温度は室温程度で、読み出し回路は 40 oC∼50 oC程度の温度になる。ドリフトチェンバー本体の温度の変化は電子のドリフト速度に影響を与える可能性がある。ドリフトチェンバーの電子のドリフト速度、すなわち時間と荷電粒子の通過位置の較正は荷電粒子のトラック自身を用いて較正されている。したがって温度モニターの役割は相対的な温度変化をモニターし、温度が大きく変化していないか確認することである。一方、読み出し回路は常に空冷されているが、その温度が過剰な温度にならないように管理することは重要である。いずれの場合も温度モニターは時間的な相対的な変化のモニターのためのものであるが、重要な役割を果たす。どちらの場合でも、非接触温度計の方が接触型温度計より使いやすい。そのため、本研究の目的は素粒子物理の実験において、測定器の温度モニターとして非接触型赤外線温度計をどのように活用できるかを検討することである。本実験で使用した温度計は非接触型赤外線温度計で、物体から放射される赤外線の分光放射輝度を測定することにより物体に触れることなく温度を測定することができる。赤外線の分光放射輝度は、物体の温度とその物体から放射される赤外線の波長から決定されるプランクの放射則に従うので、その関係を用いて温度を決定している。今回の解析ではステファン・ボルツマンの法則を用いて非接触型赤外線温度計の測定値の解析を行った。本実験では、非接触型温度計としては 2種類の非接触型赤外線温度計を用いた。1つは小型で持ち運びが容易で手軽に温度を計測できる手動の非接触型赤外線温度計であり、もう1つはエレクトロニクスに接続して継続的に自動で温度計測ができる非接触型赤外線温度計である。初めに室温での壁の温度を 2種類の非接触型赤外線温度計で計測し、その精度を調べた。続いて、自動の非接触型赤外線温度計 2台を用いて、加熱したアルミ板(20 oC∼100 oC)の温度を測定し、その温度の精度を調べた。その結果、ドリフトチェンバー本体と読み出し回路の温度をモニターするために必要な精度を満たしていることがわかった。また、比較のため、接触型温度計(熱電対)も 20 oC∼100 oCの温度範囲で測定を行い、非接触型赤外線温度計の測定値の平均を熱電対の測定値と比べた。その結果、両者の間ではあらかじめ温度較正を行う必要があるとわかった。これらの結果から非接触型赤外線温度計はあらかじめ温度較正をすれば温度モニターとして物理実験に使うことが可能であることがわかった。

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目次

第 1章 序論 2

第 2章 温度計の原理 32.1 非接触型赤外線温度計 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 3

2.1.1 熱放射エネルギー . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 32.1.2 プランクの放射則 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 32.1.3 放射率 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 42.1.4 放射温度計の指数 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 52.1.5 ステファン-ボルツマンの法則 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 62.1.6 サーモパイル . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 82.1.7 測定視野範囲 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 10

2.2 接触型温度計(熱電対) . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 102.2.1 ゼーベック効果 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 10

第 3章 非接触型赤外線温度計の性能評価 123.1 手動の非接触型赤外線温度計 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 12

3.1.1 実験セットアップ . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 123.1.2 結果と考察 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 13

3.2 自動の非接触型赤外線温度計 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 173.2.1 実験セットアップ . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 183.2.2 結果と考察 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 21

第 4章 接触型温度計との比較 244.1 セットアップ . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 244.2 接触型温度計との比較 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 27

第 5章 まとめと今後の方針 385.1 まとめ . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 385.2 今後の方針 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 38

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第1章 序論

学術的に初めて温度及び温度計の研究を行ったのはガリレオ・ガリレイである。ガリレイは 1603年空気の膨張を利用して温度計を作った。しかし、これは気圧の変化に影響される欠点を持っていた。気圧の影響をほとんど受けない液体の温度計を作って、温度目盛を考案したのはダンチヒのダニエル・ガブリエル・ファーレンハイトであった。ファーレンハイトはアルコール温度計、続いて水銀温度計を製作し、1724年に現在華氏と呼ばれる温度目盛を定めた。その後、1742年にスウェーデンのアンデルス・セルシウスが現在の摂氏の基となる目盛を持つ水銀温度計を発表した。1800年にはイギリスのフレデリック・ウィリアム・ハーシェルが、分光した太陽光による水銀温度計の温度上昇を測ることにより赤外線放射を発見した。この赤外線の発見は多くの分野での発展を促した。非接触型赤外線温度計もその1つである。非接触型赤外線温度計とは、物体から放射される赤外線の強度を測定することにより物体に接触することなく、物体の表面温度を測定する温度計である。素粒子物理の実験において、例えば、SeaQuest実験のドリフトチェンバーは内部のガスの温度が変化することにより、電子のドリフト速度が変化する可能性がある。また、そのドリフトチェンバーの読み出し回路は空冷されて基本的に 20 oC∼50 oC程度の温度に保たれているが、過度な高温(100 oCなど)にならないように温度をモニターする必要がある。いずれの場合も±1.0 oCの精度で温度測定を行うことが必要である。しかし、どちらの状況でも非接触型赤外線温度計の方が接触型赤外線より使いやすい。そこで本研究では、素粒子実験の測定器の温度モニターとして非接触型赤外線温度計をどのように活用できるかを検討する。本論文の構成は以下のようである。第 2章では本実験で使用した温度計の測定の原理を説明する。第3章では実際に使用した非接触型赤外線温度計について説明し、室温での測定精度を決定する。第 4章では接触型温度計である熱電対の説明を行い、熱電対と合わせて測定を行い、20 oC∼100 oCの温度範囲で非接触型赤外線温度計の測定精度を決定する。第 5章では本論文で述べた内容をまとめる。

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第2章 温度計の原理

2.1 非接触型赤外線温度計2.1.1 熱放射エネルギー温度が 0 K以上にある物体は、その表面から物体の温度に応じた量の熱放射エネルギーを放射している。この熱放射エネルギーは空間を伝搬してエネルギーを輸送する性質があるので、物体とセンサーを接触させなくても被測定物の温度が測定できる。熱放射エネルギーの波長は、0.1∼1000 µmに分布するが、温度測定には可視及び赤外域が利用され、その波長は 0.4 µm∼25 µmである。熱放射エネルギーの波長分布は温度によって決まり、温度が高いほど短波長帯に多くのエネルギーが分布する。このため高温測定には短波長帯を利用し、低温測定には超波長帯が利用される。

2.1.2 プランクの放射則熱放射エネルギーは、その物体の温度に依存し、物体が完全放射体(黒体)の場合は、その分光放射輝度 L (λ,T )と熱力学温度 T との関係はプランクの放射則によって次式で表される。

L(λ,T ) =C1

λ5

1exp(C2/λT ) − 1

(2.1)

ここで、分光放射輝度とは、単位表面積、単位波長間隔あたり単位立体角に波長 λで黒体から放射される放射線量のことである。λは物体からの放射の波長であり、C1、C2は放射の第 1、第 2定数と呼ばれ次式で表される。

C1 = c2h =5.9548 × 10−17 Wm2sr−2 (2.2)

C2 = ch/k =0.014388 mK (2.3)

ただし、cは真空中の光速度、hはプランク定数、kはボルツマン定数である。また、単位の srとは立体角の単位で、ステラジアンである。プランクの放射則の関係のグラフを図 2.1に示す。測定する波長帯域が限定されている場合には、その帯域(上限を A、下限を B)での放射輝度 LB−>A(T )は分光放射輝度 L(λ,T )を測定波長帯域で積分すれば求まる。

LB−>A(T ) =∫ A

BL(λ,T )dλ (2.4)

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図 2.1: プランクの放射則。縦軸は分光放射輝度、横軸は赤外線の波長を表している。

実際の非接触型赤外線温度計では、測定系を構成するレンズ、フィルタ、検出器などのそれぞれに波長選択特性があるため、観測される放射輝度 LD(T )は、

LD(T ) =∫ ∞

0L(λ,T )F(λ)dλ (2.5)

となる。ただし、F(λ)は波長選択特性に対応する関数である。ここで LD(T )は、測定系が一定に維持され F(λ)に変化がなければ、T のみに依存し値が決まる。実際の非接触型赤外線温度計は、式(2.5)の関係を用いて温度を測定している。これらの非接触型赤外線温度計では、式(2.5)から決まる放射輝度 LD(T )が L(λe,T )に比例しているとみなして、

L(λe,T ) = C∫ ∞

0L(λ,T )dλ (2.6)

から決まる実効的な測定波長 λeを評価して、実効波長または測定波長と呼ぶ。ただし、Cは検出器の変換効率などによって決まる比例定数である。

2.1.3 放射率物体から放射される熱放射エネルギーは、同一温度の物体では完全放射体が最も大きく、一般の物体ではその分光放射輝度 Lは、

L = εL(λ,T ) (2.7)

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となる。ここで、L(λ,T )は式(2.1)で表される完全放射体の分光放射輝度、εは物体を形成する物質の特性とその表面状態及び形状などによって決まる定数で、放射率と呼ばれる。放射率には、物質固有の性質で決まる放射率(固有放射率もしくは放射率)と物体の形状や温度分布などを考慮して評価される放射率(実効放射率)がある。固有放射率 εは 0 < ε < 1の定数で、吸収率に等しく(キルヒホフの法則)、その物質の反射率 ρと透過率 τとの間には、

ε + ρ + τ = 1 (2.8)

という関係が成り立つ。一般的には、放射率はその物体の温度と測定する波長によっても変化するので、非接触型赤外線温度計で測定される温度は、測定対象が完全放射体でない場合、真温度とは一致しない。この時、測定値として得られる見かけの温度を真温度と区別する場合は、輝度温度と呼ぶ。この輝度温度 S と真温度 T、放射率 εの関係は、

L(λe, S ) = εL(λ,T ) (2.9)

と表される。すなわち、波長 λeでの分光放射輝度が温度 S の完全放射体の分光放射輝度に等しいことを表している。

2.1.4 放射温度計の指数式(2.1)では温度変化に対して分光放射輝度がどのように変化するかが一目ではわかりにくい。そのため、放射温度計での測温では近似的な方法として完全放射体の分光放射輝度 L(λ,T )を

L(λ,T ) = κT n (2.10)

と置いて求まる指数 nを利用して測温性能を表す指標としている。κを定数として、指数 nは

n =dL(λ,T )

dTT

L(λ,T )(2.11)

で求まる。これをプランクの放射則の式(2.1)と式(2.2)で表すと、

n =C2

λTexp(C2/λT )

exp(C2/λT ) − 1(2.12)

となる。この関係を図 2.2に示す。この指数を利用することにより式(2.9)、(2.10)から、

L(λ, S ) = εκT n (2.13)

と表すことができる。

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図 2.2: 指数

2.1.5 ステファン-ボルツマンの法則式(2.1)で表したプランクの放射則は、分光放射発散度Wλで表される場合もある。

Wλ =2πC1

λ5

1exp(C2/λT) − 1

(2.14)

ここで、分光放射発散度とは、単位表面積、単位波長間隔あたり、波長 λで黒体から半球内へ放出される放射線量のことなので、

Wλ = 2πL(λ,T ) (2.15)

となっている。絶対温度 T の黒体から半球面内へ発散されるエネルギーW∞は

W∞ =∫ ∞

0Wλdλ = σT 4 (2.16)

と表される。ここで、σはステファン-ボルツマン定数で、

σ =2π5k4

15c3h3 = 5.6697 × 10−16 Wm−2K−4 (2.17)

という値を持つ。ここに放射率 εを合わせて考えることにより、

W∞ = εσT 4 (2.18)

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を得る。放射率が波長によって変化する場合もあるので、全てがこの式 (2.18)に従う訳ではないが、この式(2.18)を用いて評価を行う。ここで非接触型赤外線温度計の計測ではすべての波長で計測するのではなく、今回の温度計では 8 ∼14 µmのように決まった領域の波長で温度を計測している。なので、分光放射発散度の 8 ∼14 µmでの積分値と温度の 4乗がどの程度対応しているかの関係を確認する必要がある。その関係の図を図 2.3、2.4に示す。この時、

W =∫ 14µm

8µmWλdλ (2.19)

とする。図 2.4は分光放射発散度の積分値Wを cT 4で割った値を縦軸としており、横軸は温度である。係数部分 cは今回の計算には影響してこないので、温度によって分光放射発散度の積分値Wと温度の 4乗の比がほとんど変わらないということから、ステファン・ボルツマンの法則が測定値を評価する際に使用できることがわかる。

図 2.3: 分光放射発散度の積分値Wと T 4の関係。横軸は温度(K)、縦軸は分光放射発散度の積分値W(W/m2)

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図 2.4: 分光放射発散度の積分値Wと T 4の関係。横軸は温度(K)、縦軸は分光放射発散度の積分値Wを cT 4で割った値

2.1.6 サーモパイル熱放射を利用する放射温度計では、放射エネルギーを検出器で受け取り、それにより生じる温度上昇を電気信号に変換して温度測定が行われる。この種の検出器は熱型検出器と呼ばれ、サーモパイル検出器、焦電効果を利用した焦電検出器、金属または半導体の電気抵抗が温度によって変化することを利用した、ボロメータと呼ばれる検出器などがある。今回使用した非接触型赤外線温度計はサーモパイルを検出素子として利用している。サーモパイルとは、10∼20対の細い熱電対を直列に接続して受熱面上に配置し、受熱面上の微小な温度変化による熱起電力の変化を高め、これを電圧出力として取り出す赤外線センサである。サーモパイルの構造とその受光面をそれぞれ図 2.5と図 2.6に示す。

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図 2.5: サーモパイルの断面

図 2.6: 赤外線受光素子の断面

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2.1.7 測定視野範囲測定視野範囲とは、温度を計測する際の測定面の大きさである。ただし、非接触型赤外線温度計の測定視野範囲は、円形であり、温度計と測定面の距離によって変化する。そのため、温度計と測定面の距離を d、測定視野範囲の直径を sとして、d : sの比で測定視野範囲を表す。非接触型赤外線温度計は測定視野範囲の平均温度を測定するため、1つの物体の温度を計測する場合、測定視野範囲より測定物が大きい必要がある。

図 2.7: 測定視野範囲の図

2.2 接触型温度計(熱電対)2.2.1 ゼーベック効果図 2.8に示すように、2種類の均質な金属導体(A、B)で閉回路を作り、両接合点の温度を T1、T2とするとき、T1 > T2ならば iの方向に電流が流れ、T1 = T2ならば電流は流れず、T1 < T2ならば iと逆の方向に電流が流れる。この現象をゼーベック効果という。回路内に電流が流れるためには、回路内に起電力が発生している必要がある。この起電力を熱起電力という。「熱起電力の極性と大きさは、閉回路を形成する 2種類の導体の材質(A、B)2箇所の接合点の温度(T1、T2)のみによって決まる」という原理が確認されている。したがって、A、Bの材質が均質ならば、長さや太さや機械的形状によって影響を受けない。また、T1、T2以外の導体中間部分の温度の影響も受けない。さらに注意しておきたいこと

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図 2.8: 熱電対

は、熱起電力は T1、T2によって決まるのであって、T1 − T2によって決まるのではないということである。図 2.8に示したような 2種類の金属導体と 2箇所の接合点から形成され、ゼーベック効果を利用して温度を測定する道具を熱電対という。

2箇所の接合点のうち、既知の一定温度に保つ接点を基準接点という。温度測定に使用する接点を測温接点という。また、熱電対を構成する 2種類の金属導体のうち、測温接点の温度が基準接点の温度より高い場合に電流が測温接点から基準接点の方向に流れる導体を +脚といい、もう一方の導体を −脚という。読み出し回路を用いて温度を計測する場合、その読み出し回路内で別に基準接点の温度を計測しており、その温度から測温接点の温度を決定している。

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第3章 非接触型赤外線温度計の性能評価

今回使用した非接触型赤外線温度計は手動で計測するタイプのものと自動で計測するタイプのものが存在する。

3.1 手動の非接触型赤外線温度計まず、手動で計測するタイプの非接触型赤外線温度計のみを使用する。

3.1.1 実験セットアップ

図 3.1: 本研究で使用した非接触型赤外線温度計の一つ。図の左側に赤外線の受光面があり、受光面を測定物に向けてラグビーボールの形をした白いボタンを押すと、液晶に測定値が表示される。

実際に使用した手動の非接触型赤外線温度計は図 3.1である。この非接触型赤外線温度計の仕様書に記載されている性能を表 3.1にまとめた。

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表 3.1: 手動の非接触型赤外線温度計の仕様書による性能製品 : スカイニー社 SM-220

測定温度範囲 : -33 oC ∼ 220 oC表示分解能 : 0.1 oC測定精度 : ±2 %または ±2 oCのどちらか大きい方

測定視野範囲 : 1:1放射率 : 0.95(0.05 ∼ 1.00  0.01ずつ可変)

外形寸法 : 68 × 37 × 18 mm重量 : 約 32 g

手動の温度計では継続的なモニターや長時間のモニターは困難である。しかし、この手動の非接触型赤外線温度計はその大きさと重さから、持ち運びすることの簡便性を持つ。そのため、任意の場面で任意の箇所に対して温度モニターを行うことができるという点で有用である。測定は、室温の壁の温度が変化しないと仮定して、室温の壁から 5 cmの距離で 10秒間隔で計測を行った。温度計は手で持って測定した。

3.1.2 結果と考察非接触型赤外線温度計で計測した室温の壁の温度の時間変化を図 3.2に示す。また、温度計が表示した温度のヒストグラムを図 3.3に示す。手動で計測する温度計なので、一回の計測で表示する温度の正確さが重要になる。同じ温度のものを測定した際、同じ温度を表示するのであれば、温度の変化を確認することができる。そのため、表示する温度がどの程度安定して同じ値を表示するのかという点での測定精度を評価する。今回の計測で測定した温度は 22.8 oC∼ 23.9 oCの 1.2 oCの幅の範囲に収まっている。図 3.3を見ればわかる通り、ガウス分布になっていない。そのため、単に標準偏差を測定精度とすることはできない。今回は測定値の幅の ±0.60 oCの測定精度があるとする。温度が変化する原因としては、手で持っての測定であるため、測定面との距離、角度の変化、壁の赤外線反射、壁自体の温度の変化、読み取りの誤差、などが挙げられる。まずはじめに、測定面との距離、角度の影響であるが、物体は温度一定の時、全立体角について合計して考えれば常に同じ量の赤外線を放射している。そのため、点状の赤外線源から距離 rの位置にある点で観測される赤外線量 Lrは 1/r2に比例する。

Lr ∝1

4πr2 (3.1)

それに対して、測定視野の直径 sは測定物との距離 dに比例する。すなわち測定視野 S d

は d2に比例する。

S d ∝ s2 ∝ d2 (3.2)

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図 3.2: 手動の非接触型赤外線温度計で壁の温度を 10秒間隔で計測した場合の温度の時間変化。横軸は測定を開始してからの経過時間(s)、縦軸は表示した温度(oC)。数値表示が 0.1 oCステップなので、このような離散的な数値表示になっている。

図 3.3: 手動の非接触型赤外線温度計で壁の温度を 10秒間隔で計測した場合の温度分布のヒストグラム。横軸は非接触型赤外線温度計の示した温度(oC)、縦軸はその温度を表示した回数。

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図 3.4: 距離依存の計算の参考の図

赤外線源は点ではないため観測される赤外線量Lは、この2つの式(3.2)、(3.1)を用いて点源からの赤外線量 Lrを測定視野 S dで積分して求める。

L =∫

S d

LrdS ∝∫

1r2 sds =

∫s

s2 + d2 ds =∫ ϕ

0

d2 tan ϕ 1cos2 ϕ

d2(tan2 ϕ + 1)dϕ =

∫ ϕ

0tan ϕdϕ (3.3)

ここで

r2 = s2 + d2 (3.4)

s = d tan ϕ (3.5)

を用いた。また、ϕは測定視野の角度であり温度計ごとに決まる定数である。式(3.3)の右端は測定物との距離 dに依らない定数であるとわかる。そのため、測定物との距離は計測結果に効いてこないことがわかる。すなわち測定面が温度計に対して傾いた場合もその傾きに依らず温度が計測できる。ただし、測定面と温度計の距離が大きく離れてしまった場合は大気による赤外線吸収及び散乱が起こる可能性がある。その場合、吸収係数 α、散乱係数 s、消衰係数 k、光路長 dを用いて、透過した赤外線の強度 Iと入射した赤外線の強度 I0の比は

II0= e−(α+s)d = e−kd (3.6)

と表されるが、大気による赤外線の吸収及び散乱の影響は小さく、光路長が数 km程度にならなければ測定値に影響を与えるほどにはならない。また、波長 8 ∼14 µmの波長領域

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は大気の透過率が非常に大きく、大気の窓と呼ばれている。そのため今回の実験では、

II0∼ 1 (3.7)

として考える。続いて、壁による赤外線の反射であるが、測定面の分光放射輝度を L(λ,T )、観測される輝度を Ldとすると、測定面が黒体の場合、

Ld =

∫L(λ,T )dλ (3.8)

となるが、黒体でない場合は、

Ld =

∫dλ(ελL(λ,T ) + ρλL(λ,Tb)) (3.9)

となる。ただし、εは分光放射率、ρλは分光反射率、Tbは周囲の温度である。つまり、測定する輝度は測定面だけではなく測定面が反射した周囲の温度にも影響されるということである。ステファン-ボルツマンの法則の式(2.16)、(2.18)を用いて∫

L(λ,T )dλ = cT 4 (3.10)

とできる。ここで cは定数である。分光放射率 ελ、分光反射率 ρλを波長に依らないと仮定して ε、ρと置き直すと

Ld ∼ εcT 4 + ρcT 4b (3.11)

とすることができる。温度計内部では

Ld = εcT 4d (3.12)

であるとして、表示する温度 Tdを求めている。式(3.11)、(3.12)をそれぞれ TbTdで微分すると

dLd

dTd= 4cεT 3

d (3.13)

dLd

dTb∼ 4cρT 3

b (3.14)

なので、この2つの式を両辺で割ることにより

dTd

dTb∼ ρε

(Tb

Td

)3

(3.15)

となり、背景の温度変化に対する表示する温度の変化の関係が導けた。すなわち、測定面と周囲の温度がほぼ同じ温度の時、周囲の温度変化に対する測定値の変化は測定面の

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放射率と反射率の比で決まる。金属などの物質の放射率は小さいが、今回計測した壁など身近な多くの物質は放射率は 0.90∼1.00なので放射率を 0.95として計算すると、

dTd

dTb≤ 0.05

0.95=

119

(3.16)

となる。実際の状況で数値を入れると、測定値の値は平均値の 23.31 oCを用いて、周辺の温度は 24.4 oCであったので、これを用いて

dTd

dTb≤ 0.05

0.95

(273 + 24.4

273 + 23.31

)3

=1

19

(297.4

296.31

)3

∼ 0.053 (3.17)

となる。実験室に特別温度の高いものはなく、測定者自身が写り込んでいる可能性以外に周辺温度の影響を受けるとは考えにくい。測定者もなるべく反射した赤外線が測定値に影響を与えないように測定面から距離を取っていた。そのため、視野の 1/4だけ人が写り込んだため、その部分を 35 oCの背景が占めていた場合を考える。その場合、背景の平均の温度は

35 [oC] × 14+ 24.4 [oC] × 3

4= 27.5 [oC] (3.18)

なので、3.1 oC上昇したことになり、式 3.17を掛けて、

3.1 [oC] × 0.053 = 0.16 [oC] (3.19)

となり、測定値に 0.16 oCの誤差を与えることになる。読み取りの誤差は、この温度計の表示分解能が 0.1 oCなので ±0.050 oCの読み取りの誤差がある。測定値の幅 ±0.60 oCは統計誤差として手動の非接触型赤外線温度計の精度を表している。また、赤外線反射の影響±0.16 oCと読み取りの誤差±0.05 oCは系統誤差として手動の非接触型赤外線温度計の精度を表している。以上のことから手動の非接触型赤外線温度計の精度は

0.60 + (0.16 + 0.05) = 0.60 + 0.21 (3.20)

とわかった。この時式(3.20)の第 1項は統計誤差、左の第 2項は赤外線反射の影響、第3項は読み取りの誤差、右の第 2項は系統誤差である。

3.2 自動の非接触型赤外線温度計続いて、自動で計測するタイプの非接触型赤外線温度計の性能を評価する。ここからは自動で計測するタイプの非接触型赤外線温度計のみを使用する。

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3.2.1 実験セットアップ実際に使用した非接触型赤外線温度計は図 3.5である。この非接触型赤外線温度計の仕様書に記載されている性能を表 3.2に示す。本実験ではこの製品を 2台使用して実験を行った。測定値は電圧として出力されるが、

1 [V] = 100 [oC] (3.21)

と変換して温度を得る。

図 3.5: 本研究で使用した非接触型赤外線温度計の一つ。赤外線の受光面は右側にあり、左側から伸びるコードを読み出し器と電源に接続することで測定値を得る。

表 3.2: 自動の非接触型赤外線温度計の仕様書による性能製品 : ユーロトロン社 Rayomatic4

検出素子 : サーモパイル測定温度範囲 : 0 oC ∼ 500 oC測定波長 : 8 ∼ 14 µm測定精度 : ±1.5 %または ±1.5 oCのどちらか大きい方再現性 : ±0.75 %または ±1 oCのどちらか大きい方

測定視野範囲 : 12:1放射率 : 0.95固定

測定は、室温の壁の温度が変化しないと仮定して、2台の非接触型赤外線温度計を使用して、室温の壁から 5 cmの距離で 500 msの間隔で計測した。電源は ±24 Vとグランドが必要である。図 3.6に電源の図を示す。

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図 3.6: 本研究で使用した電源。電源下部の 5つのポートのうち右端が+24 V、左端が-24V、中央の 3つは 0 Vになっている。高さ 14 cm ×横幅 25 cm ×奥行 26.7 cm.

図 3.7: 本研究で使用した読み出し器。高さ 15 cm ×横幅 22.5 cm ×奥行 4 cm.

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図 3.8: 非接触型赤外線温度計のエレクトロニクス。電源と読み出し器につなぐだけで使用出来る。

図 3.9: 測定部の様子。

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3.2.2 結果と考察2台の非接触型赤外線温度計を使用したので、非接触型赤外線温度計 1つ目と 2つ目というように呼び分ける。1つ目と2つ目の非接触型赤外線温度計で室温の壁の温度の時間変化をそれぞれ図3.10、

3.11に示す。自動で温度を計測する温度計も、長時間にわたって測定物の温度が異常に変化しないようにモニターする必要があるので、手動の温度計と同じように、表示する温度がどの程度安定して同じ温度を表示するのかという点での測定精度を評価する。2つの温度計の測定値はどちらも飛び飛びの値になっているが、これは読み出し器の表示が 4桁までであるためである。この時間変化を見ると、0.04 oCの幅でまとまって温度が変化し、そのまとまりは 0.5

oCジャンプするように変化している。これはこの非接触型赤外線温度計の特徴である。また、1つ目の温度計の測定値は 18.46 oCから 18.59 oCの 0.14 oCの幅に収まっており、2つ目の温度計の測定値は 18.95 oCから 19.17 oCの 0.23 oCの幅に収まっているとわかった。そのため、1つ目と2つ目の温度計の測定精度はそれぞれ、±0.070 oC、±0.115 oCとわかった。

図 3.10: 1つ目の自動の非接触型赤外線温度計で常温の壁の温度を計測した場合の温度の時間変化。数値は 0.01 oCステップなので、このような離散的なグラフになる。

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図 3.11: 2つ目の自動の非接触型赤外線温度計で常温の壁の温度を計測した場合の温度の時間変化。数値は 0.01 oCステップなので、このような離散的なグラフになる。

こちらの温度計でも温度が変化する原因は、測定面との距離、角度の変化、壁の赤外線反射、壁自体の温度変化、読み取りの誤差などがある。温度計の距離、角度の変化は式(3.5)∼(3.1)にかけて測定値に影響を与えないことを示した。また、温度計を固定しているので測定場所も一定である。壁の赤外線反射であるが、測定時の周囲の温度は 23.1 oCであった。1つ目の非接触型赤外線温度計の測定値の平均は 18.53 oCであったので、式(3.15)を用いて

dTd

dTb≤ 0.05

0.95

(273 + 23.1

273 + 18.53

)3

∼ 0.055 (3.22)

となる。また、2つ目の非接触型赤外線温度計の測定値の平均は 19.01 oCであったので、

dTd

dTb≤ 0.05

0.95

(273 + 23.1

273 + 19.01

)3

∼ 0.055 (3.23)

となる。今回も視野の 1/4だけ人が写り込んで、その分だけ 35 oCの背景が占めていたとすれば、

35 [oC] × 14+ 23.1 [oC] × 3

4∼ 26.1 [oC] (3.24)

となるので背景は 3.0 oC上昇したことになる。1つ目と2つ目の非接触型赤外線温度計の背景の温度変化に対する測定値の変化は同じ大きさなので

3.0 [oC] × 0.055 = 0.17 [oC] (3.25)

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となって、1つ目と2つ目の非接触型赤外線温度計の測定値どちらにも 0.17 oCの誤差を与える。読み取りの誤差は読み出し器の表示値が 4桁なので、±0.0050 oCの読み取りの誤差がある。式(3.20)と同様の考え方で1つ目の非接触型赤外線温度計は

0.070 + (0.17 + 0.0050) = 0.070 + 0.175 (3.26)

2つ目の非接触型赤外線温度計は

0.115 + (0.17 + 0.0050) = 0.115 + 0.175 (3.27)

であるとわかった。この時式(3.26)、(3.27)の第 1項は統計誤差、左の第 2項は赤外線反射の影響、第 3項は読み取りの誤差、右の第 2項は系統誤差である。

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第4章 接触型温度計との比較

4.1 セットアップ今回の実験では、接触型温度計として、J熱電対とT熱電対を用いた。実際に使用した

J熱電対と T熱電対を図 4.1、4.2に示す。また、J熱電対と T熱電対の構成材料及び使用温度範囲などを表 4.1にまとめた。ただし、コンスタンタンは銅やニッケルを主とした合金である。

表 4.1: 熱電対の説明T熱電対 J熱電対

製品名 JBS-7115-5M-T AGILENT34970-61606+脚 銅 鉄-脚 コンスタンタン コンスタンタン

使用温度範囲 -40∼200 oC 0∼600 oC

図 4.1: 本研究で使用した J熱電対

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図 4.2: 本研究で使用した T熱電対

非接触型赤外線温度計を用いて温度モニターをするにあたって、室温だけでなく比較的高温域でも安定した測定ができる必要がある。そのため温度を変えてその温度での測定値のばらつきという点での測定精度を確認し、指し示す温度が接触型温度計(熱電対)の測定値とどの程度合致しているか調べる。今回の実験は非接触型赤外線温度計と熱電対で同時に加熱したアルミ板の温度を測定し、その測定値を比較する。アルミ板の加熱には図 4.3のヒートガンを用いて、図 4.4のようにアルミ板を挟んで温度計の反対側から加熱した。また、図 4.5のように赤外線反射を抑えるために測定部を塗料で黒く塗った。非接触型赤外線温度計と熱電対の位置関係は図 4.5のようである。

2台の非接触型赤外線温度計をアルミ板から 5 cmの距離で 500 ms間隔で計測した。電源及び読み出し器は第 3章で使用したものと同じものを使用した。また、測定は 15分間行った。

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図 4.3: 加熱の際に使用したヒートガン(RHG-1500)

図 4.4: 非接触型赤外線温度計での測定と反対側からヒートガンでアルミ板を加熱している様子。

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図 4.5: 測定部の様子

4.2 接触型温度計との比較まず初めに、常温での温度変化のない時の熱電対の測定値の振る舞いを確認するために、第 3章で行った実験と同時に熱電対でも壁の温度を計測する実験を行った。その結果を図 4.6、4.7に示す。室温で温度変化のないと考えられる壁の温度を計測すると、J熱電対では ±0.15 oCの範囲に、T熱電対では ±0.1 oCの範囲に測定値が収まっていることがわかった。また、熱電対の測定値は小数第1位までなので、測定値が飛び飛びの値になっている。

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図 4.6: J熱電対で常温の壁の温度を計測した場合の温度の時間変化。

図 4.7: T熱電対で常温の壁の温度を計測した場合の温度の時間変化。

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続いて、2台の非接触型赤外線温度計と熱電対 2つの合計 4台の温度計を用いて加熱したアルミ板の温度を測定する。測定結果を図 4.8∼4.11に示す。ここから温度計同士の測定値の関係を導こうとした場合、2台の非接触型赤外線温度計同士や熱電対同士の温度対応は図 4.12のように直線で対応しているが、非接触型赤外線温度計と熱電対の温度対応は図 4.13のように不規則な形の曲線になる。これは、非接触型赤外線温度計は赤外線の量を計測して温度を導くのに対し、熱電対は接触部の金属の温度変化から温度を導いているので、測定方法の差から温度変化に対する感度に差が出てしまうことが原因であると考えられる。そのため、この方法では温度対応は導けない。

図 4.8: 1つ目の非接触型赤外線温度計で加熱したアルミ板の温度を計測した場合の温度の時間変化。

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図 4.9: 2つ目の非接触型赤外線温度計で加熱したアルミ板の温度を計測した場合の温度の時間変化。

図 4.10: J熱電対で加熱したアルミ板の温度を計測した場合の温度の時間変化。

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図 4.11: T熱電対で加熱したアルミ板の温度を計測した場合の温度の時間変化。

図 4.12: 1つ目と2つ目の非接触型赤外線温度計での測定値の関係。横軸は1つ目の非接触型赤外線温度計の測定値、縦軸は2つ目の非接触型赤外線温度計の測定値。

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図 4.13: 1つ目の非接触型赤外線温度計の測定値と J熱電対の測定値の関係。横軸は非接触型赤外線温度計の測定値、縦軸は J熱電対の測定値。

一度の測定から温度の対応を導けないため、次の方法で温度対応を導いた。アルミ板の加熱具合を調整し、温度平衡になる温度を変える。(20 oC付近の測定ではヒートガンをつけずに温度を測定した。)温度平衡になった部分での温度 50秒間の平均値を測定点として取る。非接触型赤外線温度計の測定点と熱電対の測定点でグラフを作り、温度対応を見た。その結果を図 4.16∼4.19に示す。この時の考えられる誤差は、測定値のばらつきによる誤差、背景の赤外線反射、読み取りの誤差がある。背景の赤外線反射の影響は測定値の影響も受けるので、温度別に考える必要がある。また、測定値のばらつきを見て、その幅決定する。測定温度の平均値と測定値の幅、背景の赤外線反射による測定値の変化を表 4.2にまとめる。ただし、周囲の温度は 20 oC付近では 22.4 oC、40 oC付近では 21.6 oC、60 oC付近では 22.1 oC、70oC付近では 21.9 oC、80 oC付近では 22.0 oC、100oC付近では 22.3 oCであり、今回も視野の 1/4を 35 oCの人が覆った場合の温度上昇を背景の赤外線反射による影響として考える。読み取りの誤差は、熱電対は読み取りが小数第1位までなので ±0.05 oCの読み取りの誤差があり、非接触型赤外線温度計は読み取りが 4桁なので 100 oC付近以外の読み取りの誤差は ±0.005 oCで、100 oC付近は ±0.05 oCの読み取りの誤差がある。ただし、2つ目の非接触型赤外線温度計は 80 oC付近の測定の際に 100 oCで計測しているので、その値では読み取りの誤差 ±0.05 oCである。これらの誤差を足しあわせた値を図 4.16∼4.19の各点の誤差として用いているが、値が小さいためグラフ上では見えない。この時、20 oC付近の測定以外では測定物をヒートガンで加熱しているので、ヒートガンの加熱によって生じている温度変化も考慮する必要がある。1つ目の非接触型赤外線温度計の 80 oC付近の測定を拡大したグラフを図 4.14に示す。このグラフからわかるよ

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うに測定値は振幅 0.1 oC、周期 10 sで小さな振動をしていることがわかる。それに対して1つ目の非接触型赤外線温度計の 20 oC付近の測定を拡大したグラフを図 4.15に示す。こちらのグラフでは図 4.14に見られる小さな振動は見られない。この2つの計測の違いはヒートガンを用いた加熱をしているかしていないかという点にある。他の測定においても、加熱をした場合には同周期の振動が見られ、加熱をしない場合見られなかった。そのため、この温度の振動がヒートガンでの加熱のために起こるものである可能性が高い。

図 4.14: 1つ目の非接触型赤外線温度計の測定値を拡大したグラフ。80 oC付近の測定である。横軸は時間 (s)、縦軸は1つ目の非接触型赤外線温度計の測定値 (oC)。

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図 4.15: 1つ目の非接触型赤外線温度計の測定値を拡大したグラフ。20 oC付近の測定である。横軸は時間 (s)、縦軸は1つ目の非接触型赤外線温度計の測定値 (oC)。

熱電対での測定物の温度が測定値の幅に与える影響は小さく見えるが、式(3.15)からもわかるように、表 4.2の背景の赤外線反射の影響は測定物の温度が高くなるにつれて小さくなる。これに対して非接触型赤外線温度計の測定値の幅は温度が高い方が比較的高くなっているように見える。つまり、高温(100 oCなど)の測定での誤差は温度計の測定値のばらつきが大きく影響を与え、低温(20 oCなど)の測定での誤差は測定物が周囲の物質から放射される赤外線を反射したために起こる温度変化の影響が大きくなるとわかった。ただし、温度の実測値に対しての測定値の幅の割合は 0.1% ∼0.5%になっており、測定値の大きさと測定値のばらつきに関係があるのかは引き続き検討していく必要がある。想定している温度測定の条件では室温での測定がメインになるので、測定物の赤外線反射や周囲の環境に配慮して温度モニターの環境を設計する必要がある。図 4.16∼4.19のグラフでフィットされている直線の関数は、図 4.16が

y = (1.065 ± 0.005) x + (−2.0 ± 0.3) (4.1)

図 4.17が

y = (1.026 ± 0.005) x + (−1.7 ± 0.3) (4.2)

図 4.18が

y = (1.279 ± 0.006) x + (−6.2 ± 0.4) (4.3)

図 4.19が

y = (1.227 ± 0.005) x + (−5.6 ± 0.3) (4.4)

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である。すなわち、1つ目の非接触型赤外線温度計は熱電対に対してはほぼ 1:1で測定温度が一致しているが、2つ目の非接触型赤外線温度計は熱電対に対して 1.2倍程度の測定値を示している。この違いの原因が温度計の個体差によるものなのか、測定条件によって偶発的に起こることなのかは引き続き検討していく必要がある。しかし、今回の実験では測定値のばらつきの大きさを調べることを目的としており、その測定精度は 20oC∼100 oCの温度で目標としている測定精度±1.0 oCの 4倍以上に良い値である。そのため、測定値の精度は温度モニターを行うにあたって十分な値であるが、接触型温度計を用いてあらかじめ校正しておく必要があるとわかった。非接触型赤外線温度計の測定値の校正を行っておけば、非接触型赤外線温度計の測定値は熱電対の測定値に比例しているので容易に実際の測定温度を導くことができる。

表 4.2: 測定値の平均、測定値の幅、背景の赤外線反射による測定値の変化1つ目 [oC] 2つ目 [oC] J熱電対 [oC] T熱電対 [oC]

20oC付近 平均 17.91 18.54 20.11 20.10   幅 ±0.03 ±0.025 ±0.15 ±0.05   赤外線反射 0.18 0.18 — —

40oC付近 平均 40.37 44.00 39.9 40.68   幅 ±0.15 ±0.15 ±0.2 ±0.15   赤外線反射 0.15 0.14 — —

60oC付近 平均 60.62 67.81 56.05 58.43   幅 ±0.15 ±0.15 ±0.25 ±0.2   赤外線反射 0.12 0.11 — —

70oC付近 平均 70.83 80.20 65.33 68.35   幅 ±0.2 ±0.2 ±0.15 ±0.2   赤外線反射 0.11 0.10 — —

80oC付近 平均 87.71 101.5 84.94 87.20   幅 ±0.15 ±0.15 ±0.15 ±0.2   赤外線反射 0.10 0.09 — —

100oC付近 平均 101.6 119.4 100.0 104.4   幅 ±0.25 ±0.3 ±0.15 ±0.2   赤外線反射 0.08 0.07 — —

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図 4.16: 1つ目の自動の非接触型赤外線温度計と J熱電対の各温度での測定値比較。横軸は J熱電対の測定値、縦軸は1つ目の自動の非接触型赤外線温度計の測定値。誤差は小さいため、グラフ上では見えない。

図 4.17: 1つ目の自動の非接触型赤外線温度計と T熱電対の各温度での測定値比較。横軸は T熱電対の測定値、縦軸は1つ目の自動の非接触型赤外線温度計の測定値。誤差は小さいため、グラフ上では見えない。

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図 4.18: 2つ目の自動の非接触型赤外線温度計と J熱電対の各温度での測定値比較。横軸は J熱電対の測定値、縦軸は2つ目の自動の非接触型赤外線温度計の測定値。誤差は小さいため、グラフ上では見えない。

図 4.19: 2つ目の自動の非接触型赤外線温度計と T熱電対の各温度での測定値比較。横軸は T熱電対の測定値、縦軸は2つ目の自動の非接触型赤外線温度計の測定値。誤差は小さいため、グラフ上では見えない。

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第5章 まとめと今後の方針

5.1 まとめ本研究の目的は素粒子実験の測定器の温度モニターとして非接触型温度計を活用できるかを検討することである。非接触型温度計として非接触型赤外線温度計を用いた。非接触型赤外線温度計とは物体から放射される赤外線の強度を測定することにより物体に接触することなく、物体の表面温度を測定する温度計である。まず室温の温度測定を行った。室温の測定は手動と自動の二種類の非接触型赤外線温度計を用いて行い、その測定精度を決定した。その結果を以下に示す。

• 手動の非接触型赤外線温度計の精度は統計誤差としては 0.60 oCで、系統誤差としては 0.21 oCであるとわかった。

• 1つ目の自動の非接触型赤外線温度計の精度は統計誤差としては 0.070 oCで、系統誤差としては 0.175 oCであるとわかった。

• 2つ目の自動の非接触型赤外線温度計の精度は統計誤差としては 0.115 oCで、系統誤差としては 0.175 oCであるとわかった。

• どの非接触型赤外線温度計も必要としている測定精度 1.0 oCを満たしているとわかった。

続いて、自動の非接触型赤外線温度計についてのみ熱電対と合わせて測定を行い、20oC∼100 oCの温度範囲での測定精度の決定と測定値の比較を行った。その結果、表 4.2に示すように、どの温度帯でも 0.1 oC∼0.5 oCの精度で温度測定が行えていることがわかった。また、用いた 2台の非接触型赤外線温度計のうち、1台は熱電対に 1:1で比例した値を示していたが、もう 1台は比例関係であったが 1.2倍大きな値を示していたため、あらかじめ熱電対などの接触型温度計での温度較正をする必要があり、それにより真の温度を測定することができるとわかった。

5.2 今後の方針今後の方針としては、以下のものがある。

1). 2つ目の非接触型赤外線温度計の測定値が熱電対に 1.2倍で比例している原因を確認する。

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2). 測定視野範囲を実測する。

非接触型赤外線温度計は、その視野を十分に覆うような熱源について温度を正しく測定できるのであって、温度計から見る熱源の全体角が小さいと温度を正しく測定ができない。

このことを調べるために、具体的には、非接触型赤外線温度計の視野を横切るように熱した金属線を通し、その位置を上下させ、式(3.15)を用いて視野に収まった金属線の長さを導くことにより測定視野の円の直径を求める。そのためにはより正確な温度測定が必要になり、金属線の高さ調整や太さの計測を正確に行う必要がある。

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謝辞

本研究を進めるにあたり、ご指導、ご協力していただいた多くの方々に感謝を申し上げます。指導教員の柴田利明教授には、研究の初めから論文の執筆に至るまで多くの助言をいただきました。中野健一助教には、実験器材の発注、データの収集方法、研究の進行などについて多くの助言とご協力をしていただきました。永井慧氏には、ROOTを用いた解析方法をご指導いただくとともに、解析に関する多くの助言をいただきました。国定恭史氏、玉虫傑氏、五十嵐浩二氏、藤井勇紀氏には、ROOTを用いた解析や研究に関する議論を進めるにあたり多くの助言をいただきました。出水直也氏には、共に温度測定のデータ収集を行い、生活面においてもお世話になりました。以上の方々のおかげで、研究を行い、本論文を書き上げることができました。改めて皆様に感謝の意を表します。

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参考文献

[1] 小林大作『新編 温度計の正しい使い方』日本興業出版株式会社,2005

[2] A. D. Cross『赤外線吸収スペクトル入門』東京化学同人,1960

[3] 赤外線技術研究会『赤外線工学-基礎と入門-』オーム社,1991

[4] ニュートン別冊『センサのすべて』教育社,1985

[5] 金山豊作『赤外線工学』近代科学社,1963

[6] F. Sauli: Organisation Europeenne pour la recherche nucleaire CERN European organi-sation for nuclear research, Geneva

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