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NTT技術ジャーナル 2015.740
NTTは,2015年 4 月25~26日に幕張メッセで開催された「ニコニコ超会議2015」に昨年に引き続き出展しました.ここでは「NTT超未来研究所Z」と称したNTTブースの展示について紹介します.
「ニコニコ超会議」と「NTT超未来研究所Z」
「ニコニコ超会議」とは,株式会社ドワンゴが設立し,グループ企業の株式会社ニワンゴが運営する日本最大の動画サービス「niconico(ニコニコ動画,ニコニコ生放送などの総称)」のあらゆるジャンルを網羅したユーザ主体の超巨大イベントです.日本のサブカルチャーを代表するコンテンツをはじめ,さまざまなエンタテインメントが一堂に会し,素人から著名人まで垣根なく出演者が集まります. 4 回目の開催となる
「ニコニコ超会議2015」では,昨年に引き続く大相撲超会議場所2015の開催と,人気動画「SUMOU」とのコラボレーションに加え,プロレス興行,タルボサウルスの化石,パブロ ・ ピカソの絵画の展示など,幅広いジャンルの出展 ・ イベントが行われ,会場(リアル)来場者数15万1115人,生放送(ネット)視聴者数
₇₉4万4₉5人と,昨年を大きく上回り,大盛況のうちに幕を閉じました.
NTTは,2013年 ₇ 月 に 開 始 し たドワンゴと映像&ソーシャルサービスの高度化に関する業務提携(1)を進めていく中で,「niconico」の主たる視聴者である若いユーザ層に対して,「ニコニコ超会議」というリアルな場で,NTTグループと研究所の技術力の高さを “さりげなく,面白く” 伝え,認知度を高めることを目的に,昨年「ニコニコ超会議 3 」に「NTT超未来研究所」を初めて出展しました(2).いつもは堅苦しいと感じられる最先端技術を面白おかしくいい意味でNTTというブランドを裏切った展示を通じて,若いユーザ層に面白い企業であることをアピールした結果,メディアやSNSなどを通じて非常に好意的なコメントを多数いただくなど,大きな成果を得ることができました.
今回のニコニコ超会議2015においては,①レトロフューチャーな近未来の演出,②技術の無駄遣いといったコンセプトはそのままに,研究所の「最先端の研究」を「伝わりやすいように見せ方を工夫して披露する」ことを心掛け,「人を喜ばせる場,見せ方を研究する場,冒険がで
きる場への出展を通じて,研究の成果を得る」ことを新たな目的として,前年に引き続きNTTブースを出展しました.昨年の未来感をさらに一歩前進させ,未知への探究心と無限の可能性,そして,究極の研究までに近づけたいというさまざまな意味を込めて,ブース名は「NTT超未来研究所Z」と命名しました.
前回よりも規模を拡大しながら,アイドルやキャラクターに頼らず,技術主導で限界いっぱいまで多くのコンテンツを詰め込み,設計と運用の工夫で多くのお客さまにアピールしたブースは,昨年に引き続き大きな注目を浴びました(写真 ₁ ).
展示内容紹介
NTT超未来研究所Zでは, シンギュラリティが起こるといわれている,また民営化60周年を迎えている2045年の世界をモチーフとして,そのころの普及技術となるであろう,ロボット,人工知能,触感,仮想現実などの最先端技術から,そのころになっても今と変わらず守り続けている通信インフラ技術までを幅広く展示し,NTTグループと研究所の持つ先端かつ持続的な技術をリアル
「ニコニコ超会議」と「NTT超未来研究所Z」
展示内容紹介
ニコニコ超会議
コラボレーション
情報発信
ニコニコ超会議2015「NTT超未来研究所Z」出展報告
木きのした
下 真し ん ご
吾 /社し ゃ け
家 一いっぺい
平 /松ま つ だ
田 達た つ き
樹 /薄う す い
井 宗そういちろう
一郎NTT研究企画部門
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EVENT
REPORTS
に分かりやすく紹介しました.(1) ロボット系展示NTT超未来研究所Zのシンボルと
して,NTT民営化30周年を記念し,
高さ約 6 mにも及ぶオリジナルの合体ロボパネル「超通信合体ロボ グレートミンエイカー30」を製作し,ステージの中央に配置しました(写
真 2 ).NTTグループの主要 5 社のロゴを,各社の役割を考慮しながら配置することで,NTTグループとは何かということを分かりやすく表現しました.
また,NTT東日本のCMなどで注目を集める独自の世界観と優れたデザイン性を持つ外骨格ロボット「スケルトニクス」の搭乗体験が楽しめる「スケルトニクス×NTT駆動式」を展示しました.加えて,「スケルトニクス×NTT鼓動式」では,着るだ け で 生 体 情 報 を 取 得 で き る“hitoe” で計測した情報を通じて,
スケルトニクスに取り付けた人工心臓や人工血管を動かすことで,「人間とロボットの融合」という新しい世界感の表現にチャレンジしました
(写真 3 ).(2) 人工知能展示NTTが長年研究開発を続けてき
た,コンピュータやスマートフォンなどに使われている,「音声認識技術」
「雑談対話技術」「音声合成技術」を1 つに結集させ,「いつもとはちょっと違う自分!?」と話すことができる展示「ドッペルへんガー」を出展しました(写真 4 ).熱気あふれる会場の環境の中で,高精度の音声認識技術によって問いかけを認識し,会話するキャラクターに合わせた声で,キャラクターに合わせた内容や話し方で答えるという,高い技術力に大きな評価をいただきました.
また,ディープラーニング(深層学習)技術によって,映像中の人物の属性を “ニコ超度” として測定,表示する技術「ニコニコ ・ スキャナー」も人気を集めました.
写真 2 グレートミンエイカー30 写真 3 スケルトニクス×NTT鼓動式
写真 1 NTT超未来研究所Z
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(3) 触感展示昨年,触覚に着目し全く新しい「声
と触感の両方を使ったコミュニケーション」を実現した「超未来式体感型公衆電話」を,プッシュボタンを押すとさまざまな触感が相手の身体を貫通 ・ 刺激しつつ,いわゆる「グレ電」のディスプレイに「貫通スタンプ」とともにタイムラインに表示されるよう進化させました(写真5 ).声 ・ 触感に視覚を加え,見ているだけで楽しい「未来の公衆電話」は昨年に引き続き笑いが絶えませんでした.
さ ら に,NTTの 研 究 員 に 加 え,大学の研究者やアーティスト,デザイナーらとともにボトルから飲料を注いだ際の振動を再現したり,犬にリードを引かれる感覚を実現するなど,「振動で伝える触感の未来」を具現化し,一堂にそろえた「振動触感フェスタ」では,ふるえる触感による「未来のコミュニケーション」に期待する等のコメントを多くいただ き ま し た. な お 本 展 示 に は,NTT西日本が開発した,心音を活用した新しいコミュニケーションのかたちを提案するサービス「Heart Beat Memory」(3)も展示しました.
(4) 仮想現実技術NTTが開発した,「全天球映像の
視聴している方向の映像のみを高精細に配信することでネットワーク負荷を抑える」技術,「特殊なマイクロホンアレイで収録した局所領域の音信号を視点に合わせて再現する」技術を使って,迫りくるイケメンたちに “壁ドン” されるといったドキドキ体験を体感いただきました(写真 6 ).
特に,映像と音の圧倒的な臨場感に加え,最後に座っている椅子が大きく振動するというオチが加わった楽しいコンテンツに対するクオリティの高さが体験いただいた方に好評でした.
(5) いつまでも守り続ける通信インフラ技術
昨年人気を集めたマンホールに引き続き,NTT筑波研究開発センタから,高さ 6 mの「電柱」を “力技で” 持ち込み展示しました.電柱にぶら下がる箱「クロージャ」を使った,光ケーブルの接続工事体験では,安全ベルトを取り付けて作業を行うリアル感が体験いただいた方に好評でした.さらに,ニコニコ超会議ならではともいえる,通信インフラ技術と人間の感覚情報処理の最先
端研究を融合させた展示として,2015年 2 月に報道発表を行い,大きな反響を得た光のパタンを投影することで,止まった画像にリアルな動きの印象を与えることのできる光投影技術「変幻灯」(4)を用いて,未来の電柱に設置した広告の顔や手を動かしました.止まっているはずのものが動いて見えるという,かつてなかった視覚体験に驚きの声が上がりました(写真 7 ).
また,現在も戸外における通信手段の確保に貢献する公衆電話の役割
写真 5 超未来式体感型公衆電話
写真 6 超全天・パノラマワールド
写真 7 電柱と変幻灯写真 4 ドッペルへんガー
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EVENT
REPORTS
を再認識いただくべく,「NTT技術史料館」と,NTT東日本が保有する,カラフルでちょっと懐かしい歴代の
「公衆電話」を一堂にそろえ展示しました.
(6) NTTコミュニケーションズブースとのコラボレーション
NTT超未来研究所Zブースから50 m離れた場所に出展した,「OCN モバイル ONE」のTVCMでお馴染みのロボマツコを活用し,ドワンゴとの連携サービス「OCNニコニコ動画プレミアム」や,「OCN モバイル ONE」 を ア ピ ー ル し たNTTコミュニケーションズの「超ロボマツコ」ブースとのコラボレーション企画として,「超ロボマツコ」ブースにスピーカーとアンテナを設置し,
「超ロボマツコ」の話す声をNTT超未来研究所Zブースで集音したり,お互いのブースの映像をミリ波無線技術を用いて4K映像でリアルタイム伝送する実験を行いました(写真₈ ).はるかかなたの音がクリアに聞こえ,高画質な4K映像をリアルタイムで伝送するという,NTTの持つ最先端技術を大いに無駄遣いした壮大な実験は無事成功し, NTTグループの本気度を大いにアピールするかたちとなりました.
なお「超ロボマツコ」ブースでは,「OCN モバイル ONE」の「けっこう,浮く.」を体感してもらうVRゲームを展示し,ロボマツコ人気と最新の映像技術活用の迫力あるゲームにより, 2 日間絶え間なく行列ができる大盛況ぶりでした.
ときどき ドキドキ!心拍放送局Z
昨年に引き続き,着るだけで生体情報が計測できる機能素材「hitoe」を用いて,さまざまなイベントを心拍の変化を通じて楽しみました.「第2 期 “hitoe” 心拍将棋名人戦」は,2015年 3 月に開催された予選からニコニコ生放送に視聴制限がかかるほど注目を集め,昨年と同一対局となった名人戦では,「伊藤真吾五段」
「石田直裕四段」による手に汗握る真剣勝負に両棋士の正反対な心拍の動きもあいまって大きく盛り上がりました(写真 ₉ ).
また,昨年より大きくなったステージ上での剣道やヨガを実践する
「心拍スポーツ(実践編)」では,緊張した間合いやゆったりとしたヨガの動きと心拍変化のコラボレーションがステージに全く新しい新鮮な感
覚を与えました.さらに,人気ゲーム実況者の心拍変化を実況プレイを通じて楽しむ「心拍ゲーム実況」では,ゲーム実況者の意外な心拍変化に,会場は大きく盛り上がりました.これらのステージコンテンツを通じて,hitoeが持つポテンシャルの高さを改めて認知してもらうことができました.
また,東京大学の中澤公孝先生,元プロ野球選手福田岳洋氏,そしてNTTの野球好き研究者という 3 名の「野球マニア」が,心拍や筋電などの生体情報のスポーツへの応用,スポーツと脳の関係などについて熱い談義を繰り広げた「心拍スポーツ
(理論編)」や,人間の錯覚を巧みに利用した変幻灯について,その誕生につながる人間の感覚情報処理の研究,人間が自然な動きを知覚する際に働く視覚メカニズムの科学的知見を直接レクチャーした「ガチ ・ ニコ生セミナー」といった解説コンテンツも好評を博しました.
本イベントは,ニコニコ生放送「ときどき ドキドキ!心拍放送局Z」として 2 日間通して配信し,約₈₈00人という多くの方にご覧いただ
ときどき ドキドキ!心拍放送局Z
写真 ₈ 「超ロボマツコ」ブース(上)と50 m伝送の様子(下) 写真 ₉ 心拍将棋
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くとともに,約 2 万4000件ものコメントを頂戴しました.
ノベルティ
約20年前,NTTの研究所が開発し,1₉₉₈年の長野冬季オリンピックで利用実験を行った当時世界最小
(45 g)だったスマートウォッチを,「ペーパーウォッチ」として復刻し配布しました.スマートウォッチがはやりつつある今,すでに20年前に開発していたことを改めて認識いただき,NTTの研究開発の歴史と凄みを少し楽しいかたちで表現するという意外性がSNSなどで大きな話題となりました(写真₁₀).
出展を終えて
NTT超未来研究所Zは多くのスタッフの協力をいただきながら,ブースを体験いただいた方だけで延べ₈350人を数えるなど,好評のうちに終了することができました(写真₁₁). 2 度目の出展ということで昨年を上回る反響があるかどうか心配な部分もありましたが,SNSなど
を通じて研究所が最先端の研究を,伝わりやすいように見せ方を工夫した成果に対して,非常に好意的なコメントを多数頂戴し,出展を通して,NTTの持つ最先端研究を多くの方に体感いただくという目的は大いに達成できたのではないかと思います.今回得られた反響や,アドバイスは今後の研究開発にフィードバックし,来場いただいた皆様の大きな期待にこたえられるよう一層努力していきます.
■参考文献(1) http://www.ntt.co.jp/news2013/130₇/130₇2₉a.
html(2) http://www.ntt.co.jp/news2014/1404/140416b.
html(3) http://www.ntt-west.co.jp/ikouze/heartbeat/
memory.html (4) http://www.ntt.co.jp/news2015/1502/15021₇a.
html
ノベルティ
出展を終えて
(左から)松田 達樹/ 社家 一平/ 木下 真吾/ 薄井 宗一郎
2年目の出展も大盛況で好評のうちに終えることができました.来年はその真価が問われる3年目となります.さらに技術を尖らせ,最先端の研究を披露する場にできるようもう一段進化させていきたいと思っています.併せてNTT R&Dチャンネルを通じて最新の研究成果の定期的な情報発信を継続していきます.ご期待ください.
◆問い合わせ先 NTT研究企画部門 R&D推進担当 E-mail rdplan-pr ml.hco.ntt.co.jp
写真11 NTT超未来研究所Zスタッフ
写真10 腕時計型PHSの実物と,復刻版ペーパーウォッチ