ヒト腺癌の新規血清診断 バイオマーカーEPHA2 東洋大学 理工学部 生体医工学科 教授 加藤 和則
ヒト腺癌の新規血清診断バイオマーカーEPHA2
東洋大学 理工学部 生体医工学科
教授 加藤 和則
腫瘍マーカー検査
検査方法
血液検査 腫瘍マーカー検査
画像検査
超音波(エコー)検査
X線(レントゲン)検査
CT(コンピューター断層画像)
MRI(磁気共鳴撮影)
PET(陽電子放出断層撮影)
内視鏡検査
生検検査/病理検査
http://kenshin.nakayamakai.com/examination/shuyo-marcker.php
EphA2とは
• Ephファミリーの1つで、臨床的に多くの癌で発現する。
• EphA2発現陽性の患者は5年生存率が低く、予後不良である。
• 酵素により細胞表面から遊離し、可溶化体EphA2(sEphA2)として体液中に産生される。
• 癌の標的分子として医薬品の開発が進められている
Eph(erythropoietin-producing hepatocellular) A2
soluble form of EphA2 : “sEphA2”
MMP-?
Background
癌細胞
癌組織におけるEphA2発現の免疫染色
http://www.cstj.co.jp/products/6347.html
Ovarian cancer tissues stained with anti-EphA2 antibody (CST)
EphA2 IHC H/E staining
EphA2定量ELISAの感度
Detection limit
< 35 [pg/ml]
Coating: SHM41 (anti EphA2 mAb)
(独自に樹立した抗体)
Blocking
Sample: recombinant EphA2 protein,
Culture sup., Serum
Detection Ab-biotin: Polyclonal antibody
(R&D Systemsより購入)
HRP-Streptavidin
TMB Substrate
Absorbance at 450nm
EphA2定量ELISAの特異性
sEphA1 sEphA2 sEphA3 sEphA4
癌細胞表面におけるEphA2の発現
EphA2の発現
細胞数
膵臓癌・前立腺癌細胞膜表面においてEphA2発現を確認
22Rv1 LNCap PC3
TCC-Pan2PK-1 SUIT-2
膵臓癌
前立腺癌
sEphA2産生メカニズム
MMP-9がEphA2遊離に関与することが示唆
Culture sup. (Prostate Can.)
Concentrate culture sup.
Electrophoresis
Enzymatic reaction
CBB staining
Decoloration
MMP活性
22Rv1 ―
LNCap MMP-2
PC3 MMP-9
Sample Ave. SD
健常人
(Healthy Donors)0.25 ± 0.08
膵臓癌患者
(Pancreas Cancer)0.56 ± 0.37
前立腺癌患者
(Prostate Cancer)0.55 ± 0.30
膵臓癌および前立腺癌患者血清検体中におけるsEphA2
患者血清検体 陽性 陰性
膵臓癌
(Pancreas Cancer)
7/13
(54%)
6/13
(46%)
前立腺癌
(Prostate Cancer)
12/25
(48%)
13/25
(52%)
膵臓癌患者血清検体におけるCEACEA
CEAとsEphA2との間に正の相関が認められた。
sEphA2
CEA
前立腺肥大症・前立腺癌患者血清検体におけるPSA値
PSA
前立腺肥大症患者と前立腺癌患者
血清検体におけるPSAに有意な差
は認められなかった。
患者血清検体PSA
陽性 陰性
健常人(Healthy Donor)
5/25 15/25
前立腺肥大症(BPH)
9/10 1/10
前立腺癌(Prostate Cancer)
16/25 9/25
前立腺肥大症・前立腺癌患者血清検体におけるsEphA2値
sEphA2
前立腺癌患者において健常人・
前立腺肥大症患者より有意に
sEphA2が高値を示した。
患者血清検体sEphA2
陽性 陰性
健常人(Healthy Donor)
1/25 24/25
前立腺肥大症(BPH)
1/10 9/10
前立腺癌(Prostate Cancer)
12/25 13/25
前立腺癌におけるsEphA2とPSAの相関
PSA陰性
前立腺癌患者
sEphA2
PSA
PSAとsEphA2との間に弱い正の相関が認められた。
PSA陰性の2検体でsEphA2は高値を示した。
Sample Ave. SD
健常人(Healthy Donors)
0.20 ± 0.07
肺癌患者(Lung Cancer)
1.20 ± 0.72
卵巣癌患者(Ovarian Cancer)
0.63 ± 0.38
肺癌・卵巣癌患者血清中におけるsEphA2
肺癌の従来マーカーCYFRAとの相関
卵巣癌の従来マーカーCA125との相関
coating: anti-EphA2 Abs (230-1)↓blocking↓Antigen: standard rhEphA2 (R&D)↓biotinylated 57-1(anti-EphA2 Ab)↓Streptavidin-HRP↓Peroxidase Substrate↓stop solution↓read at 450 nm
・230-1xbiotin-57-1・高感度のバッファー系・EphA2標準蛋白の定量曲線
EphA2 mAbによる新規ELISA構築
1 10 100 1000 10000
0.01
0.1
1
10
y = -6E-11x3 + 1E-07x2 + 0.0006x + 0.0144R² = 0.99983
Absorb
ance a
t 450nm
(re
f.570nm
)
rhEphA2 concentration (pg/ml)
新規EphA2-ELISAの特異性と血清値A
bso
rba
nce
at 4
50
nm
(re
f.5
70
nm
)
Protein concentration (pg/ml)
EphA2
EphA1, EphA3, EphA4
本研究シーズのまとめ•がん患者血清中に存在するEphA2を高感度かつ高特異的に検出できるELISA系の構築に成功。
•健常人血清と比較して、膵臓がん、前立腺がん、肺がん、卵巣がん患者由来血清中のEphA2は有為に高値を示した。
•既存の血清バイオマーカーCYFRA(肺がん)、CEA(膵臓がん)と正の相関性を示した。
•既存バイオマーカーが陰性のがん患者を検出可能
(PSA陰性前立腺がん)
新技術の特徴・従来技術との比較•従来技術の問題点であった、ポリクローナル抗体(市販)を、モノクローナル抗体1クローン(12クローン中)を選択することに成功した。
•従来はポリクローナル抗体を使用していたために、ロット間の反応性の補正が必要であったが、均一に生産できるモノクローナル抗体に変更することで、データの再現性、特異性および感度が向上した。
•本技術に使用しているハイブリドーマ(抗体産生細胞株)を保有しているために、安定した大量産生が可能となる。
実用化に向けての課題•本研究に用いた患者血清は市販購入品であるために、詳細な患者情報に制限がある。
• また同一患者の経時的な血清が入手不可能であった。
•実用化に向けて、①対象癌種を決定する、②詳細な臨床データとリンクした患者血清を測定する必要あり。
•癌検診などの初期診断に適応できるバイオマーカーなのか、病態および治療効果を判定するバイオマーカーなのかを検討する必要あり。
企業への期待•臨床検査薬としての実用化を目指した、共同研究企業を希望。
• ELISA法ではなく、迅速かつ高感度測定技術を有している企業との共同研究を希望。特にマルチマーカーを一度に測定する技術や、イムノクロマト法などに応用できる技術を有する企業を希望。
•血清検査だけではなく、in vivoイメージングなどの新分野への応用も期待。
本技術に関する知的財産権
•発明の名称 :抗EPHA2抗体及びこれを用いたEPHA2の免疫学的検出
•出願番号:特願2017-009349
•出願人 :東洋大学、第一三共(株)
•発明者 :加藤和則、我妻利紀、長谷川純
お問い合わせ先
東洋大学 産官学連携推進部
産官学連携推進課 松浦徹治、早川克也
TEL 03-3945 - 7564
FAX 03-3945 - 7906
e-mail tetsuharu@toyo.jp