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3 労働保険徴収法 労働保険徴収法の全体像 労災保険と雇用保険(失業保険)とは別個の制度であるため、元々はそれぞれ異なった 手続方法によって適用徴収の事務処理を行っていました。しかし、このような方法では、 事業主に過重の事務負担をかけることになり、また、保険事業運営の面からみても効率的 な事務処理が難しいという状況にありました。そこで、両保険の一元的な適用と保険料徴 収方法の一元化を行い、保険加入者の利便と両保険の適用徴収事務の簡素化、能率化を図 るために、昭和47年から施行されたのが「労働保険の保険料の徴収等に関する法律」です。 なお、「労働保険の保険料の徴収等に関する法律」は、その名称が長いため、「労働保険 徴収法」、「徴収法」などと省略して表記、呼称するのが一般的です。
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労働保険徴収法の全体像3 労働保険徴収法 労働保険徴収法の全体像...

Jan 16, 2020

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労働保険徴収法

労働保険徴収法の全体像

 労災保険と雇用保険(失業保険)とは別個の制度であるため、元々はそれぞれ異なった手続方法によって適用徴収の事務処理を行っていました。しかし、このような方法では、事業主に過重の事務負担をかけることになり、また、保険事業運営の面からみても効率的な事務処理が難しいという状況にありました。そこで、両保険の一元的な適用と保険料徴収方法の一元化を行い、保険加入者の利便と両保険の適用徴収事務の簡素化、能率化を図るために、昭和47年から施行されたのが「労働保険の保険料の徴収等に関する法律」です。

 なお、「労働保険の保険料の徴収等に関する法律」は、その名称が長いため、「労働保険徴収法」、「徴収法」などと省略して表記、呼称するのが一般的です。

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労働保険徴収法

【 労働保険徴収法の構成 】第1章 総則 制度の趣旨と定義を規定しています。

第2章保険関係の成立及び消滅

労働保険の適用に関連して、保険関係の成立、消滅と保険関係の一括について規定しています。

出題頻度が高い項目です。

第3章労働保険料の納付の手続等

労働保険徴収法の中核となる章で、労働保険料の種類、計算方法、納付方法などが規定されています。

この章の多くの項目が毎年出題されています。

第4章 労働保険事務組合労働保険事務組合に関する事項を規定しています。

出題頻度が高い項目です。

第4章の2 行政手続法との関係行政手続法の適用除外について規定している規定が一つのみある章です。

第5章 不服申立て及び訴訟政府の処分に対する不服に関する取扱いについて規定しています。

第6章 雑則 労働保険徴収法の規制を実効あらしめるために必要となる監督・罰則などを規定しています。第7章 罰則

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(1)趣旨(法1条)

 労働保険の事業の効率的な運営を図るため、労働保険の保険関係の成立及び消滅、労働保険料の納付の手続、労働保険事務組合等に関し必要な事項を定めるものとします。

(2)定義(法2条)

労働保険 労働者災害補償保険法による労災保険と雇用保険法による雇用保険の総称

労働保険料  労働保険の事業に要する費用に充てるため、政府が徴収する保険料

保険年度 「4 月 1日から翌年3月 31 日まで」をいいます。

参 考 :継続事業において、労働保険料の算定は、原則として年度単位に行います。

賃 金

趣旨 保険料の算定の基礎となるものを明らかにするため、賃金の定義を定めました。

 賃金とは、賃金、給料、手当、賞与、その他名称のいかんを問わず、労働の対償として事業主が労働者に支払うものをいいます。

Point :通貨以外のもので支払われるものであって、厚生労働省令で定める範囲外のものを除きます。

通貨以外のもので支払われる賃金の範囲

 食事、被服及び住居の利益のほか、所轄労働基準監督署長又は所轄公共職業安定所長の定めるものは、賃金に算入されます。

Point :その評価額は、所轄労働基準監督署長又は所轄公共職業安定所長が定めます。

賃金に該当するもの

 基本給、家族手当、通勤手当、賞与、休業手当(労基法26条の規定に基づくもの)、住宅の貸与(貸与を受けない者に対し均衡上住宅手当を支給する場合)等

賃金に該当しないもの

 休業補償、出張旅費、退職金・結婚祝金・災害見舞金(労働協約等で支給条件が明確であるとないとを問いません)、解雇予告手当、業務上必要な作業衣、住宅の貸与(一部の社員のみ貸与され、他の者になんら均衡給与も支給されない場合)等

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労働保険徴収法

労働保険徴収法では、具体的に届出期限や保険料の納期限を問う問題が出題されます。

その期限となる日の計算は、民法の規定に基づくことになりますが、「翌日起算」といわれるものと、「当日起算」といわれるものに分かれます。それぞれの規定において、使い分けられていますが、どちらなのかわからないと正しい解答を導き出せないことがあるので、期間計算の基本的な考え方を知っておきましょう。

期間の計算 原則として、期間を計算する場合には、期間の初日は算入しません。つまり、翌日から起算します。ただし、その期間が午前0時から始まるときは、その日から起算します。

具体例①「保険関係が成立した日から○日以内」というような場合には、保険関係が成立した日 は含めず、その翌日を1日目として計算します。

②「保険年度の初日から○日以内」というような場合には、その期間が午前0時から始 まることになるので、その日を1日目として計算します。

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(3) 事業(法39条、則 66条ほか)

事 業

 経営上一体となっている企業を指すのではなく、個々の本店や支店など 1つの経営組織として独立性を持った経営体をいいます。

Point :事業は、労災保険及び雇用保険の適用の単位(保険関係の成立単位)となります。

参 考 :保険関係とは、保険事故が生じた場合に労働者は、保険者に対して保険給付を請求する権利をもち、これに対応して保険加入者(事業主)は、保険者に保険料を納付する義務を負うという、権利義務関係の基礎となる継続的な法律関係をいいます。

事業主 法律上の権利義務の主体となるものが事業主です。個人事業においては個人事業主、法人においては法人そのものが該当します。

事業の分類

 事業を分類する場合、次の3つの方法により分類することができます。

① 適用事業と暫定任意適用事業 労働保険が強制的に適用される事業であるか否かによる分類

② 有期事業と継続事業 事業の期間が定められているか否かによる分類

③ 一元適用事業と二元適用事業 労災保険の保険関係と雇用保険の保険関係とが一元的に適用されるのか否かによる分類

① 適用事業と暫定任意適用事業

適用事業 事業主や労働者の意思に関係なく、事業が行われている限り法律上当然に保険関係が成立する事業をいいます。

暫定任意適用事業

 事業主が加入の申請をして、厚生労働大臣の認可を受けて、保険関係が成立する事業をいいます。

② 有期事業と継続事業

有期事業

 事業の期間が予定される事業、すなわち事業の性質上一定の予定期間内に所定の事業目的を達成して終了する事業をいいます。具体的には、次の事業が該当します。

① 建設の事業② 立木の伐採の事業

注 意:徴収法上、有期事業として扱われるのは、労災保険に係る保険関係だけです。雇用保険に係る保険関係は有期事業として扱われません。

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労働保険徴収法

事業の分類

継続事業 事業の期間が予定されない事業をいいます。一般の工場、商店、事務所が該当します。

< 継続事業 >

事業開始   4/1       4/1       4/1

                               事業の終了が予定                               されていない 各保険年度ごとに保険料を算定し、納付します。

< 有期事業 >

工事                         工事開始                         終了

                            事業の終了が予定                            されている

事業期間における保険料をまとめて算定し、納付します。

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事業の分類

③ 一元適用事業と二元適用事業

一元適用事業

 労災保険に係る保険関係と雇用保険に係る保険関係とを一体的な1つの労働保険関係として取り扱い、保険関係の適用及び保険料の徴収等の事務が一元的に処理される事業です。

二元適用事業

 労災保険に係る保険関係と雇用保険に係る保険関係とを別個の事業として取り扱い、保険関係の適用及び保険料の徴収等の事務が労災保険、雇用保険の別に二元的に処理される事業をいいます。 具体的には、次の①~⑤に掲げる事業が該当します。

① 都道府県及び市町村が行う事業② ①に準ずるものが行う事業

③ 港湾労働法2条2号の港湾運送の行為を行う事業④ 農林、畜産、養蚕、水産の事業⑤ 建設の事業

注 意:国の行う事業⇒労災保険が適用されないため、二元適用する余地がないので、二元適用事業とはなりません。

参 考:労災保険及び雇用保険の両保険で適用労働者の範囲が異なる事業や従来からの両保険の適用の仕組み等が著しく異なる事業については、両保険の適用徴収事務を一元的に処理することは実情に即さないことから、二元適用事業という概念を設けています。

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労働保険徴収法

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(4) 事務の所轄(法45条、則1条ほか)

 労働保険に関する事務(労働保険関係事務)は、次の区分に従い、都道府県労働局長、労働基準監督署長及び公共職業安定所長が行います。

労働基準監督署長が行う事務 公共職業安定所長が行う事務

一元適用事業

労働保険事務組合に事務処理を委託していない事業に係るもの

・労働保険事務組合に事務処理を委託し ている事業に係るもの・労働保険事務組合に事務処理を委託し ていない事業のうち、雇用保険に係る 保険関係のみ成立している事業に係る もの

二元適用事業

労災保険に係る保険関係が成立している事業に係るもの

雇用保険に係る保険関係が成立している事業に係るもの

保険関係労災保険に係る保険関係のみに係るもの

雇用保険に係る保険関係のみに係るもの

労働基準監督署長が行う事務及び公共職業安定所長が行う事務以外の労働保険関係事務は、都道府県労働局長が行います。

Point :労働保険関係事務のうち、労働保険料及びこれに係る徴収金の徴収に関する事務は、都道府県労働局労働保険特別会計歳入徴収官(都道府県労働局歳入徴収官)が行います。

権限委任

 労働保険徴収法に定める厚生労働大臣の権限は、厚生労働省令で定めるところにより、その一部を都道府県労働局長に委任することができます。

Point :委任される権限① 請負事業に係る下請負事業の分離に係る認可② 継続事業の一括に係る認可及び指定事業の指定③ 労働保険事務組合の認可、業務廃止届の受理、認可の取消し④ 暫定任意適用事業に係る認可

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労働保険徴収法

労働保険料を扱う事務官

① 都道府県労働局労働保険特別会計歳入徴収官(都道府県労働局歳入徴収官)② 都道府県労働局労働保険特別会計資金前渡官吏(都道府県労働局資金前渡官吏)  ⇒ 労働保険料の還付請求先とされています。

③ 都道府県労働局労働保険特別会計収入官吏(都道府県労働局収入官吏)  ⇒ 労働保険料の納付先とされています。

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① 個人経営の事業主が行う林業の事業であって、常時3人の労働者を使用するものは、 労災保険の適用事業であるが、雇用保険については暫定任意適用事業とされる。

② 徴収法において保険年度とは、1月1日からその年の12月 31日までをいう。

③ 農林、水産、畜産又は養蚕の事業は、二元適用事業である。

④ 建設の事業は二元適用事業とされている。

⑤ 徴収法上の有期事業は、建設の事業に限られている。

⑥ 臨時に支払われる賃金は、賃金に該当しない。

⑦ 国の事業は二元適用事業とされている。

⑧ 労働保険料の徴収に関する事務は、都道府県労働局長のほか労働基準監督署長及び公 共職業安定所長が行う。

⑨ 労働保険徴収法は、労働保険の事業の効率的な運営を図るため、労働保険の保険関係 の成立及び消滅、労働保険料の納付の手続、労働保険事務組合等に関し必要な事項を定 めるものとする。

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労働保険徴収法

① ○ ② ×(4月1日から翌年の3月31日までです) ③ ○ ④ ○ ⑤ ×(立木の伐採の事業も有期事業とされます)⑥ ×(賃金となります)⑦ ×(国の事業は二元適用事業ではありません)⑧ ×(労働保険料の徴収に関する事務は歳入徴収官が行います)⑨ ○

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(1)保険関係の成立(法3条、4条、4条の2)

労災保険

 労災保険の適用事業の事業主については、

① その事業が開始された日② 暫定任意適用事業が適用事業に該当するに至った日いずれかの日に、労災保険に係る保険関係が成立します。

Point :法律上当然に保険関係が成立します。このような事業を強制適用事業といいます。

雇用保険

 雇用保険の適用事業の事業主については、

① その事業が開始された日② 暫定任意適用事業が適用事業に該当するに至った日いずれかの日に、雇用保険に係る保険関係が成立します。

Point :法律上当然に保険関係が成立します。このような事業を強制適用事業といいます。

保険関係の成立の届出

 保険関係が成立した強制適用事業の事業主は、その成立した日(翌日起算)から 10 日以内に、所定の事項を政府に届け出なければなりません。⇒ 保険関係成立届を所轄労働基準監督署長又は所轄公共職業安定所長に提  出しなければなりません。

注 意:保険関係成立届の提出先は、事務の所轄区分によります。

変更の届出

 保険関係成立届の記載事項のうち一定の事項に変更があったときは、変更が生じた日の翌日から起算して 10 日以内にその旨を政府に届け出なければなりません。⇒ 「名称、所在地等変更届」を所轄労働基準監督署長又は所轄公共職業安定 所長に提出しなければなりません。

保険関係成立票

 労災保険に係る保険関係が成立している事業のうち建設の事業に係る事業主は、労災保険関係成立票を見易い場所に掲げなければなりません。

擬制任意適用

 労災保険又は雇用保険の強制適用事業に該当する事業が、暫定任意適用事業に該当するに至ったときは、その翌日に、その事業につき、労災保険又は雇用保険の任意加入に係る厚生労働大臣の認可があったものとみなされ、保険関係は引き続き成立します。

Point :この場合、特に届出を必要としません。

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労働保険徴収法

< 記載事項 >

保険関係成立届の記載事項 名称、所在地等変更届に係る事項

① 成立した日

② 事業主の氏名又は名称及び住所又は所在地

③ 事業の種類

④ 事業の行われる場所

⑤ 事業の名称

⑥ 事業の概要

⑦ 事業に係る労働者数

⑧ 有期事業にあっては、事業の予定される期間

保険関係成立届は何のために提出するのですか? 保険関係は法律上当然に成立しますが、その成立したことを保険者が知らなければ保険料を徴収したり、保険給付を行ったりすることができません。そこで、労働保険の適用を円滑に行うために、それぞれの事業主が保険関係の成立したことを保険者に届け出ることを義務づけたのです。

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(2)暫定任意適用事業に係る保険関係の成立(法附則2条、整備法5条)

保険関係 暫定任意適用事業の保険関係は、その事業が強制適用事業に該当した場合以外においては、事業主の申請に基づく厚生労働大臣の認可により成立します。

労災保険暫定任意適用事業 雇用保険暫定任意適用事業

加入要件

原則 事業主の加入申請事業主の加入申請

Point :労働者の2分の1以上の同意が必要です。

申請義務

労働者の過半数が希望するときは、事業主に申請義務が生じます。

労働者の2分の1以上が希望するときは、事業主に申請義務が生じます。

通 達 同意又は希望に係る「労働者」には、

 適用事業となった場合に被保険者とな らない労働者を含みません。

事業主は、労働者が保険関係の成立を 希望したことを理由として、労働者に 対して解雇その他不利益な取扱いをし てはなりません。

提出書類 任意加入申請書① 任意加入申請書② 労働者の2分の1以上の同意を証明で きる書類

提出先所轄都道府県労働局長(所轄労働基準監督署長を経由)

所轄都道府県労働局長(所轄公共職業安定所長を経由)

保険関係成立日

厚生労働大臣の認可があった日

Point :認可に係る権限は、都道府県労働局長に委任されています。

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労働保険徴収法

 労災保険の加入手続には労働者の同意は不要なのでしょうか?

 雇用保険の保険関係が成立した場合、被保険者となった者には保険料の負担が生じます。そのため、被保険者となる者の多数の同意を求めています。これに対して、労災保険の保険関係が成立したとしても労働者に保険料負担は生じません。したがって、わざわざ労働者の同意を求めなくてもかまわないということです。

<暫定任意適用事業の保険関係の成立と消滅>

労  災 雇  用

労働者が加入希望 過半数が希望 2分の1以上が希望

事業主が加入希望 同意不要 2分の1以上の同意

消滅申請の要件・過半数の同意・保険関係成立後1年以上経過等

4分の3以上の同意

労働者が消滅希望 消滅に係る手続を行う必要なし

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(3)保険関係の消滅(法5条、法附則4条、整備法8条)

保険関係の消滅

 保険関係が成立している事業は、その事業が廃止され、又は終了したときは、その事業についての保険関係は、その翌日に消滅します。

Point :強制適用事業、暫定任意適用事業どちらについても保険関係が消滅します。

注 意:保険関係消滅のための手続は特に必要としませんが、労働保険料の精算をしなければなりません。

暫定任意適用事業に係る保険関係の消滅

労災保険暫定任意適用事業 雇用保険暫定任意適用事業

消滅要件

 次のいずれをも満たした場合に、保険関係を消滅させることができます。

① 事業主の消滅の申請

② 厚生労働大臣の認可③ 労働者の過半数の同意④ 保険関係成立後1年を経過していること

Point :特例による保険給付が行われることとなった労働者に係る事業にあっては、労災保険の特別保険料が徴収される期間を経過していること ⇒【図 1】

 次のいずれをも満たした場合に、保険関係を消滅させることができます。

① 事業主の消滅の申請

② 厚生労働大臣の認可③ 労働者の4分の3以上の同意

注 意:労働者の多数が希望したとしても、事業主に保険関係を消滅させる義務は生じません。

提出書類

① 保険関係消滅申請書

② 労働者の過半数の同意を証明できる書類

① 保険関係消滅申請書

② 労働者の4分の3以上の同意 を証明できる書類

提出先所轄都道府県労働局長(所轄労働基準監督署長を経由)

所轄都道府県労働局長(所轄公共職業安定所長を経由)

保険関係消滅日

厚生労働大臣の認可があった日の翌日

Point :認可に係る権限は、都道府県労働局長に委任されています。

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労働保険徴収法

【図1】特例による保険給付と特別保険料 労災保険未加入時の事故であっても、労働者の保護や事業主の負担軽減という観点から事業主の申請に基づき特例的に保険給付を行う場合があります。これを特例による保険給付といいますが、この場合、保険料を納付していない期間中に生じた事故について保険給付を行うことになるので、その費用を通常の保険料とは別に徴収することになります。そのため、その徴収が行われている期間中は任意に脱退できないようにしたものです。

保険関係成立

暫定任意適用事業

事故発生 申請保険給付

保険関係成立後の事故とみなす