─ 81 ─ 〔新 日 鉄 住 金 技 報 第 405 号〕 (2016) 1. はじめに 鉄まくらぎは,ヨーロッパやアフリカ,アジア諸国など では古くから使われており,我が国においても製鉄所構内 に使用されているほか,貨物ヤードを中心に一部 JR の本 線やアプト式区間などにも使用されている。鉄まくらぎの 特徴としては以下が挙げられる。 (1) 100%リサイクルが可能で,環境に優しい材料である。 (2) 鋼製であるためプレス製造による加工自由度が高く, 多様なサイズ及び形状への対応が容易である。 (3) 大きな道床横抵抗力を有し,軌道狂いの抑制効果が高 い。 (4) 荷重分散効果が高く,道床厚を薄くできる。 (5) 重量は木まくらぎ同等であり,運搬,施工が容易である。 この特徴を生かし,新日鐵住金(株),日鉄住金テックス エンジ(株)は製鉄所構内及び鉄鋼他社,民間鉄道への外販 用として鉄まくらぎの製造,販売を行っている(写真1)。 本報では,新日鐵住金が鉄まくらぎの開発に着手した背景 から今日までの技術開発の歴史を振り返ると共に,最新の 利用技術向上に向けた取組みを紹介する。 2. 鉄まくらぎの開発 NSC(Nippon Steel Corporation)式鉄まくらぎの開発は, 海外の鉱山鉄道向け輸出用まくらぎとして,1982 年に検討 着手したことに始まる。その後 1984 年 1 月に軽軸重用(軸 重 P = 18 ~25 t)鉄まくらぎの圧延開始を経て,1985 年 7 月には旧設備技術本部 土木建築技術室 開発グループの線 路開発チーム発足による “ 長寿命軌道構造研究 ” をスター UDC 625 . 142 . 3 技術論文 鉄まくらぎの歴史と最新の技術開発 History of the Steel Sleepers and the Latest Development 山 田 祐 輝 * 大 場 耕 司 冨 永 知 徳 上 田 宏 Hiroki YAMADA Koji OOBA Tomonori TOMINAGA Hiroshi UEDA 川 端 慧 野 口 信 人 坂 田 哲 郎 薄 秀 俊 Kei KAWABATA Nobuhito NOGUCHI Tetsurou SAKATA Hidetoshi SUSUKI 抄 録 新日鐵住金(株),日鉄住金テックスエンジ(株)で製造,販売している鉄まくらぎは,1982年に海外鉱 山鉄道向けの外販用として開発に着手した。欧米の鉄まくらぎ形状,設計法を参考にしながら,独自に鉄 まくらぎ軌道の安全性や長寿命化効果を定量的に評価し,更に製品の安価化と高機能化に向けた締結装 置の改良を行い,現在の形状に至っている。本稿では,鉄まくらぎ開発の歴史を振り返ると共に,近年実 施している製鉄所構内重軸重用鉄まくらぎの最適仕様開発の内容について述べた。 Abstract The development of steel railway sleepers, which are manufactured and marketed by Nippon Steel & Sumitomo Metal Corporation and Nippon Steel & Sumikin Texeng. Co., Ltd., started in 1982 as export products for foreign mining railways. The shape of present sleepers is basically designed based on the shape and design method of steel sleepers in Europe and America, but it has been improved based on the quantitative research on safety and long service-life performance. Also, development on fastening devices has been given for improved usability and cost efficiency. This report reviews the history of developments in steel sleepers and introduces the recent optimization of heavy-weight heavy-duty steel sleepers applied in steel making plant railways. * 設備・保全技術センター 土木建築技術部 土木技術室 主幹 千葉県富津市新富 20-1 〒 293-8511 写真1 鉄まくらぎ Steel sleeper
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AbstractThe development of steel railway sleepers, which are manufactured and marketed by Nippon
Steel & Sumitomo Metal Corporation and Nippon Steel & Sumikin Texeng. Co., Ltd., started in 1982 as export products for foreign mining railways. The shape of present sleepers is basically designed based on the shape and design method of steel sleepers in Europe and America, but it has been improved based on the quantitative research on safety and long service-life performance. Also, development on fastening devices has been given for improved usability and cost efficiency. This report reviews the history of developments in steel sleepers and introduces the recent optimization of heavy-weight heavy-duty steel sleepers applied in steel making plant railways.
の案内金物を介し,鉄まくらぎ素材が仰向け姿勢の状態で設置される。また,上型ポンチ金物は,プレス加工機の上部圧下シリンダに繋いでおり,昇降動作を自在にしている。成形時のプレス動作及び成形状況を以下に記す(図4)。① 上型ポンチ金物(upper die punch)の圧下より,素材両端部は外開き扁平形となり,折曲げポンチと接した部分より曲がる。② 上型ポンチ金物の型曲げポンチ(bend punch)を型曲げダイス(bend die dice)に接するまで圧下すると,まくらぎ長手方向型曲げ(カント)と両端部折曲げが並行して完了する。
③ 金型の特徴として,上型折曲げポンチがローラー型(bend punch(roller type)),下型折曲げダイス(bend die dice)はローラー中央にタイヤ型の突起(wheel type prominence)を有し,端部折曲げ部に強制的に凹部を形成し且つ,無用な幅方向の広がりを防ぐ。
鉄まくらぎ母材より熱間プレスにて座盤形状をプレスアップすることで,締結装置の材料費及び取付費用の削減を目指した一体座盤の開発に着手した。母材の強度及び耐久性は,PCまくらぎと同等若しくはそれ以上であることが既往の研究により明らかであるが,プレス加工にて成形された座盤部に,レール圧力及び横圧力を作用させるため,本部にも母材と同等の耐久性が求められた。(1)座盤部の熱間プレス成形開発当初,座盤形状は既存線ばね用座盤の形状を模して,線ばね挿入孔は両サイド開孔タイプとした。開発要素として,以下の項目を研究(検証)した。 ① スリット(溝)位置,形状寸法及び加工方法 ② 加熱温度,加熱範囲及び加熱方法 ③ 上下金型形状 ④ プレス回数 ⑤ 冷却方法これら開発課題に対し検討を進め,最終的には線ばね挿入孔を片サイド開孔タイプに改良することで,規定寸法の座盤形状及び板厚(≧7.5 mm)を確保した。
• CASE 1:基本ケース(座盤幅 70 mm)• CASE 2:グラインダー処理• CASE 3:残留応力処理• CASE 4:グラインダー+残留応力処理• CASE 5:ビード短縮• CASE 6:ビード短縮+グラインダー処理• CASE 7:座盤拡幅(70 mm → 120 mm)• CASE 8:4辺溶接それぞれの対策の特徴について以下に述べる。
写真3 疲労試験概要Fatiguetest
図6 き裂進展モードCrackprogressmode
図7 FEM解析結果Resultoffiniteelementmethod
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鉄まくらぎの歴史と最新の技術開発
CASE 2,4,6で採用したグラインダー処理はロータリーバー型グラインダーを用い,アンダーカットの除去と溶接止端部の曲率を滑らかにし,更に溶接により発生する残留引張応力を低減することを目的に母材を深さ方向に 0.5 mm程度掘り込むように切削した。処理管理方法は鋼構造物の疲労設計指針・同解析に記載のコインチェック法に準拠した。
CASE 3,4で採用した残留応力処理は鉄まくらぎ背面側から過載荷した後除去することで,スプリングバックが起こり溶接止端部に圧縮残留応力を付与させることを目的とした。事前確認試験の結果,溶接止端部における溶接残留引張応力は平均約 143 MPaであったが,過載荷後は平均−178 MPaとなった。
CASE 5,6のビード短縮は,溶接止端部に発生する応力は,輪重と横圧によるものが主であり,応力が大きい場所から溶接止端部を遠ざけることで発生応力を低減させることを目的とした。
CASE 7で採用した座盤の拡幅は,基本ケースにおいて溶接止端部からまくらぎ肩に近づくほどひずみが小さくなることに着目して座盤幅を広くした。また,機械による搗き固め作業において,ビーターの爪が線ばねクリップに当たらない限界の幅 120 mmに設定した。
CASE 8は基本ケースの3辺溶接では板曲げ変形を受けて必然的に溶接止端部に引張応力が発生するため,4辺溶接に変更することで発生引張応力の低減効果に期待した。各 CASEの疲労試験結果を図8に示す。結果として,
CASE 6(ビード短縮+グラインダー処理),CASE 7(座盤幅 120 mm)が FEM解析を含めて良い結果を示した。残留応力処理は,それのみ(CASE 3)では,アンダーカッ
トの存在が過載荷処理時に悪影響を与えたことも推察され,グラインダー処理を加えた CASE 4を実施したが,期待した程の効果は得られなかった。作用する荷重の大きさにより,改善された圧縮残留応力が再配分されて消失したものと推定される。
4.3 ハイブリット型新まくらぎの開発一方,鹿島製鉄所では 1999年から写真4に示す光亜式鉄まくらぎ(Koa Iron Crosstie)を採用している。これは,鋼矢板の背面にコンクリートを充填した構造であり,疲労耐力上最も弱い締結装置溶接部に発生する応力を小さくでき,耐疲労性向上には有効であると考えられた。光亜式鉄まくらぎと同様に熱押し座盤鉄まくらぎの背面