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自律分散型スマートグリッド i-Rene の理解促進のための ゲーミフィケーションによる体験型シミュレータ開発 Gamification on the training simulator for the distributed autonomous smartgrid i-Rene 立命館大学 ○ 矢野 史朗, 中村 仁美, 熊谷 歩, 谷口 忠大 Shiro Yano and Hitomi Nakamura and Ayumi Kumagai and Tadahiro Taniguchi Ritsumeikan University Abstract It has been an important issue for islands and developing countries to improve their energy independence. In this issue, renewable energy sources and micro energy-storages have been attracted in years past. We have proposed a concept which not only improves energy indepen- dence but also achieves an optimum allocation of renewables by introducing market mechanisms. Although such distributed network would play an important role to install further renewable en- ergy, there are no similar system in this real world today. Due to the requirement for pre-training tool to nurture resident’s appropriate response, we developed a hand-on simulator through the use of gamification concepts. In this study, we evaluate the effects of our gamification on the player’s motivation. 1 緒言 ,大 から された 域において, による されている [1].これに対し i-Rene[2] いう スマートグリッド 案している.こ ,各 帯が エネルギー し, によって い,また 為に するこ 案して いる.こ するために した うこ しており,そ する から する って いる( 1). よう エネルギーが大 される によって かうこ されているが [3]ステム にあり, にある. がら, されている システム i-Rene よう スマートグリッド 大きく異 っている.そ ため, される i-Rene よう それぞれに して,そ について に学 きるよう 意するこ えられる. ,学 に学 うに ,学 じた学 するこ 1: スマートグリッド i-Rene られている [4].学 ため に学 案, う一 ある. 育学 ,こ するために けが あるこ られている.また める て,Mcgonigal らにより されているゲーミフィケー ション いう概 されている [5].以 から に対してゲーミフィケーションを うこ によ り,学 に対する まり,学 が一 される 待される. そこ ,ゲーミフィケーションを いた体 13 第 57 回 システム制御情報学会研究発表講演会 Proceedings of the 57th Annual Conference of the Institute of Systems, Control and Information Engineerings (ISCIE), Kobe, May 15-17, 2013
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Apr 21, 2020

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自律分散型スマートグリッド i-Reneの理解促進のための

ゲーミフィケーションによる体験型シミュレータ開発

Gamification on the training simulator for the distributed

autonomous smartgrid i-Rene

立命館大学  ○ 矢野 史朗, 中村 仁美, 熊谷 歩, 谷口 忠大

Shiro Yano and Hitomi Nakamura and Ayumi Kumagai and Tadahiro Taniguchi

Ritsumeikan University

Abstract It has been an important issue for islands and developing countries to improve theirenergy independence. In this issue, renewable energy sources and micro energy-storages have beenattracted in years past. We have proposed a concept which not only improves energy indepen-dence but also achieves an optimum allocation of renewables by introducing market mechanisms.Although such distributed network would play an important role to install further renewable en-ergy, there are no similar system in this real world today. Due to the requirement for pre-trainingtool to nurture resident’s appropriate response, we developed a hand-on simulator through the useof gamification concepts. In this study, we evaluate the effects of our gamification on the player’smotivation.

1 緒言

発展途上国や先進国の離島など,大型電力系統から切

り離された地域において,分散電源と蓄電池による電

力の自給自足が注目されている [1].これに対し我々は

i-Rene[2]という自律分散型直流スマートグリッド構想

を提案している.この系では,各世帯が蓄電池と再生可

能エネルギー等の分散電源を設置し,自家発電によって

自身の世帯の電力需要を賄い,また地域の電力自給率向

上の為に余剰電力を世帯相互で融通することを提案して

いる.この世帯間の電力融通は,資源の最適な配分を実

現するために地域電力市場を介した市場取引で行うこと

を想定しており,その上で地域全体で電力が不足する場

合には,従来の大型電力系統から購入する構想となって

いる(図 1).

このような地域自給自足型の電力網は,予測や制御の

困難な再生可能エネルギーが大量導入される事によって

実現に向かうことが予想されているが [3],具体的なシ

ステムの設計は途上の段階にあり,実現には遠く及ばな

い段階にある.当然ながら,現在日本で利用されている

電力供給システムは i-Rene のような変動価格制の自律

分散型スマートグリッドとは大きく異なっている.その

ため,将来的に予想される i-Reneのような地域自給型

電力網それぞれに関して,その系の特性について住人が

事前に学習できるような機会を用意することは重要と考

えられる.

過去の研究で,学習者が効率的に学習を行うには,学

習内容に応じた学習方略を習慣化することが重要であ

図 1: 自律分散型直流スマートグリッド i-Reneの概要図

ると知られている [4].学習方略とは,目標達成のため

に学習者自身が必要な学習方法を立案,選択し準備を行

う一連の過程である.教育学分野では,この学習方略の

使用を促進するために内発的な動機付けが有効であるこ

とが知られている.また内発的動機を高める仕組みとし

て,Mcgonigalらにより提唱されているゲーミフィケー

ションという概念が近年注目されている [5].以上から

学習方略に対してゲーミフィケーションを行うことによ

り,学習方略に対する内発的動機が高まり,学習が一層

促進されると期待される.

そこで本研究では,ゲーミフィケーションを用いた体

’13 第 57 回 システム制御情報学会研究発表講演会

Proceedings of the 57th Annual Conference of the Institute of Systems, Control and Information Engineerings (ISCIE), Kobe, May 15-17, 2013

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験型シミュレータを開発し,ユーザに自律分散型スマー

トグリッドにおける効率的な消費行動について,自発的

な学習を促すことを目標とする.従来の i-Rene研究で

は,i-Rene内での電力売買は,住民負担の軽減の為,人

工知能エージェントによる自動化を目指してきたが,本

研究では系に対する住人の理解を目指す事から,体験

型シミュレータ内ではプレイヤは電力取引に必要なパラ

メータを手動で制御し,パラメータの最適化についても

プレイヤ自身の試行錯誤によって学習するよう設計する.

2 ゲーミフィケーション

ゲーミフィケーションとは,困難な課題であるにも関

わらずプレイヤを熱中させるようなゲームのノウハウ

を,ゲーム以外の領域における課題解決に用いることで

ある [5].

ゲームには明確な目標,素早いフィードバック,そし

て最適なチャレンジとスキルのバランスなどのゲームに

没頭しやすい仕組みが存在する.フローは高すぎず低す

ぎず処理できる程度のチャレンジを克服することに没頭

しているときに起こり,個人的成長を導くものであるが

[6],ゲームにおける上記のような目標,フィードバック,

難易度設定などはプレイヤにフロー状態を引き起こさせ

る役割であり,意識的に設計に取り込む事が必要となる.

このようなゲーム設計の考え方を応用する事で,ゲー

ム以外の様々な課題についても,ユーザをフロー状態に

させ,長期間作業に没頭させ,個人的成長を導くことが

できると期待されている [5].

3 先行研究

ゲーミフィケーションを用いてユーザの電力消費行動

を変化させる研究には,以下のような先行研究がある.

Gnaukら [7]は,ユーザに自身の次の日の電力使用計

画を提出させ,地域全体での需要に応じてユーザに電力

使用計画を交渉したり,消費行動に対するフィードバッ

クを行う方法を提案し,これに対してゲーミフィケー

ションを用いた.電力使用計画の提出や交渉,消費行動

のフィードバックはすべてUI上で行われた.また,ユー

ザの内発的動機を高めるために望ましい消費行動に対し

てポイントを与えた.評価実験では,ユーザはほとんど

のタスクを直感的に行うことができ,UIについて非常

に高い評価を得られた.この研究では消費行動に応じた

ポイントを与えることで,ユーザの電力消費に対して影

響を与えることが可能であると分かった.

Liuら [8]は,家庭内の省電力行動を促す目的でゲーミ

フィケーションを利用し,また利用しなかった場合にお

ける省電力行動の比較を行った.ユーザは自身で電力消

費の上限値を設定し,実際の消費行動は携帯電話で申告

した.評価実験では,実験期間が短いためにゲーミフィ

ケーションを利用した場合と利用していない場合に,差

は見られなかった.このことから,ゲーミフィケーショ

ンを用いたシステムの評価実験をする際には,長期的な

実験を行う必要があるとわかった.

また,Fosterら [9]は,ユーザ間に競争を促すような

社会的な構造をシステムに取り入れ,省電力行動を促し

た.この実験では社会的な構造を取り入れることで,シ

ステムの使用回数が社会的な構造を取り入れなかった場

合の 5 倍になった.この研究では,競争を促す社会的構

造を取り入れることで,ユーザの電力消費行動に大きな

影響を与えられる事が分かった.

本研究では,これら先行研究で効果的だった方法を取

り入れ,シミュレータ内では消費行動に応じたポイント

を与え,ユーザの内発的動機を高めることを試みる.ま

た,社会的な構造を取り入れることによってユーザ同士

の競争を促し,ユーザがより意欲的に学習に取り組める

ようなゲーミフィケーションを用いた体験型シミュレー

タを開発する.

4 本研究で提案するゲーム

本研究で開発するシミュレータでは,ユーザに自律分

散型スマートグリッドの系について,また効率的な消費

行動についての自発的学習を促すことを目標とする.先

行研究により,ユーザの自発的な学習を促すにはポイン

ト性の導入や社会的な構造を取り入れたゲーミフィケー

ションが効果的であるとわかった.そこで,本研究にお

いても上記のようなゲーミフィケーションに基づいた体

験型シミュレータを開発する.

自律分散型スマートグリッドの概要図を図 4に,本研

究でのシミュレータの概要図を図 4に,現実世界とゲー

ムの要素の対応関係を表 1に示す.現実世界では電力

消費のために余剰電力を地域内市場で売買し,なるべく

安価な時間帯で購入し蓄電池に充電する.ゲーム内では

取引されるものをデンリョクと呼んでいるが,実質的に

はプレイヤがゲームをするための権利に相当している.

現実世界で家庭用電気機器を使用して欲望を満たすよう

に,シミュレータ内ではユーザが敵を倒すことでポイン

トを得る.ゲーム内で敵を倒すスケジュールはプレイヤ

がゲームをしたいと考えているタイミング通りに行うこ

とが可能であるが,実際に敵を倒すにはデンリョクが必

要であり,なるべく安価な時間帯でデンリョクを購入し

ておく必要がある. 

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表 1: 現実世界とゲームの要素の対応関係現実世界の要素 ゲーム内の要素

効用 ポイント

金銭 金銭

家庭内電気機器 カデモン (ユーザが使用するモンスター)

欲望 欲望を象徴する敵

電力 デンリョク

図 2: 自律分散型スマートグリッドの概要図

図 3: 実装するゲームの概要図

以上のようにポイントは現実世界において電力消費か

ら得られる効用に相当しており,ゲーム内ではプレイヤ

が望むスケジュール通りにゲームをプレイすることで加

算される.ゲーム内でのプレイヤの目標は,ポイントの

最大化と支払い額の最小化である.

本研究で開発したシミュレータでは,ユーザは欲望と

の戦闘とデンリョクの売買戦略の2つを効率的に行うこ

図 4: 敵選択画面

とで目標を達成することができる.以下に敵との戦闘,

デンリョクの売買戦略,そしてゲームにおける目標につ

いて記述する.

4.1 敵との戦闘

本研究で開発したシミュレータでは,自身が所持して

いるカデモンを使用して欲望を象徴する敵を倒すことが

できる.敵を倒すと,ポイントが得られる.カデモンを

使って攻撃する際,カデモンにデンリョクという餌を与

える必要がある.デンリョクは地域市場内での売買で取

引され,また再生可能エネルギーの発電に相当する効果

よって自動的に補充される.デンリョクの売買について

は次で記述する.カデモンと敵にはタイプが存在し,適

したタイプのカデモンで敵を攻撃すると,より少ないデ

ンリョクで敵を倒すことができる.

図 4 に敵選択画面を示す.欲望を象徴する敵はゲーム

内で1時間経過すると1つ右に移動する.ユーザが右端

の敵を倒していない場合は,右端の敵は自動でカデモン

に倒される.自動で敵を倒しているときは戦うカデモン

をランダムに決定しており,タイプについて考えた効率

的な戦い方をしていない.よって,自動で敵を倒すより

もユーザ自身が敵を倒した方がより効率的な戦い方がで

きる.

4.2 デンリョクの売買戦略

デンリョクはその日の天気に応じて1時間ごとに自動

的に補充される.一方で,デンリョクが余っている場合

はデンリョクを売って金銭を得ることができ,またデン

リョクが足りない場合は金銭でデンリョクを買うことも

できる.

プレイヤは次の日に切り替わる前に,前日のデンリョ

ク価格を参照して図 5に示すスライダーを調整し,次の

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日のデンリョクの取引戦略を決定する.デンリョクの市

場価格 p∗t と出荷量mitはこの取引戦略と前日のデンリョ

ク価格をもとに,谷口らの先行研究 [10]に従って以下の

式で決定する.

p∗t = γtH(pt;ω) (1)

mit = Si

max(p∗tpit

− Simax − sit + lit

Simax

) (2)

式 (1)のH(pt;ω)は以下のように求められる.

H(pt;ω) = (∑i

ωi1

pit)−1 (3)

このモデルにおいて,ゲームのプレイヤが調整するデ

ンリョクの取引戦略は,時刻 tにおける電力の価値 pitに

相当する.iはプレイヤの番号を表す.γtは系内の蓄電

残量である.ωは系内においてエージェント iが持って

いるバッテリーの割合を表す.これらの変数を用いて市

場価格 p∗t を決定する.電力の出荷量mitは市場価格 p∗t,

エージェント iの時刻 tにおける電力の価値 pit,蓄電池

の容量 Simax,蓄電残量 sit,そして電力消費量 litを用い

て求められる.同様にデンリョクの売買量mitは,ユー

ザが設定した pit に基づいて自動で計算される.

図 5: 戦略を決定するためのスライダー

4.3 ゲーム内のポイント加算方法

現実世界では家庭用電気機器を使用して欲望を満たし

て効用を得る.ゲーム内ではユーザがカデモンを使い攻

撃することによって敵を倒し,ポイントを得る.カデモ

ンを使って敵を攻撃するにはデンリョクが必要となる.

欲望に適したカデモンを選択して攻撃することによっ

て,省デンリョクで効率的に敵を倒すことができる.ま

た何度も敵を倒すことによって,様々な欲望に対して省

デンリョクで対応できるようなカデモンを選択可能にな

り,一層効率的にポイントを得ることができる.ゲーム

においてこれらの要素をユーザが理解し,ポイント最大

化することを通して,自律分散型スマートグリッドの系

や効率的な消費行動について学習することを期待する.

5 実験

本実験では,ゲームに社会的な構造を取り入れること

によってユーザの学習意欲にどのような差が現れるか分

析する.

5.1 実験方法

実験は 18歳から 23歳の大学生男女 14名の被験者に

対して行った.他ユーザの情報を公開しているゲームを

7名の被験者に利用してもらい,残りの 7名は他ユーザ

の情報を一切公開していないゲームを利用してもらった.

実験前に被験者にはゲームの目的がポイントと金銭の最

大化であること,戦略についてなどを説明した.実験は

1週間行い,ゲームを自由に利用してもらった.また実

験終了後,被験者に対しアンケートを行った.ユーザの

ゲームプレイデータやアンケートから,ユーザの学習意

欲について検証を行う.

5.2 実験結果と評価

本実験ではユーザに対するアンケート結果とゲームプ

レイデータを用い,主観的評価と客観的評価を行った.

5.2.1 主観的評価

主観的評価は評価は実験終了後に行った感性アンケー

トを基に行った.図 6 にそれぞれの被験者群における

感性アンケートの結果を示す.社会的構造有り群と社

会的構造無し群のそれぞれの項目について,有意水準

α = 0.1で t検定を行った結果,p = 0.053 < 0.1となり

帰無仮説が棄却された.このことから,社会的な構造を

取り入れることで,ユーザ同士の対抗意識がより高くな

る傾向があるといる.

5.2.2 客観的評価

図 7にそれぞれのゲームにおけるユーザのログイン回

数を示す.この結果に関しても,有意水準 α = 0.1,帰

無仮説を「両群のログイン回数に差がない」とし,t検

定を行った.結果は p = 0.097 < 0.1となり帰無仮説が

棄却された.よって,i-Reneゲームに社会的な構造を取

り入れることで,ログイン回数がより多くなる傾向があ

るといえる.

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図 6: 両被験者群における感性アンケート結果

図 7: それぞれのゲームにおけるログイン回数

6 結言

本研究では,ゲーミフィケーションを取り入れた i-Rene

ゲームを開発した.また本稿では社会的な構造を取り入

れることによるユーザの学習意欲への影響を分析した.

社会的な構造を取り入れることで,ユーザ同士の対抗意

識がより高くなること,また i-Rene ゲームに取り組む

回数がより多くなる傾向があるということが分かった.

よって,社会的な構造を取り入れることでユーザはより

積極的にゲームに取り組み,作業に没頭することが可

能になると考えられる.ゲーミフィケーションにおいて

ユーザが自発的に作業に取り組むことは非常に重要であ

り,社会的な構造を取り入れることでそれが強化される.

今後のゲームの改善点として,はじめにゲーム内にお

けるポイントの定義が挙げられる.現在 i-Rene ゲーム

では,欲望を象徴する敵を倒すことで得られるポイン

トは敵の種類によって決められており,他の要素は考慮

されていない.現実世界において効用は欲望が出現して

から解消するまでの期間や時間帯など,効用が他の要素

にも依存している可能性がある.より現実世界を模した

i-Rene ゲームにするためには,欲望関数の定義を現実

世界でのユーザの効用に近づける必要がある.

次に,自動戦闘やデンリョクの自動取引など自動実行

部分の改善が挙げられる.自動戦闘やデンリョク取引が

行われた場合は,ゲーム中の履歴表示欄に文章で表示

されるようになっている.しかし,これではユーザ自身

がゲームを操作している場合と違い,デンリョクやポイ

ントの増減がわかりづらい.自動実行部分において文章

でフィードバックを行っているが,文章だけではフィー

ドバックが不十分である.自動で戦闘やデンリョクの

取引が行われた際にもユーザに認識してもらえるよう,

フィードバックをより充実したものにしていきたい.

また,今後分析する必要がある課題として,ユーザの

ゲーム内の行動についての分析が挙げられる.本研究で

は社会的な構造とユーザの学習意欲について分析した

が,消費行動などゲーム内でのユーザの行動については

分析していない.ユーザの消費行動の変化や市場価格に

対する個別最大価格など,今後はユーザの行動について

も分析していきたい.

参考文献

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icy; Renewable and Sustainable Energy Reviews,

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を目指した自律分散型直流スマートグリッドの構築;

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[5] J. McGonigal: Reality Is Broken: Why Games

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aging gamification in demand dispatch systems; In

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shops, pp. 103–110. ACM (2012)

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meta user interfaces, pp. 7–12. ACM (2011)

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