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モデルコース 1.27 電子海図情報表示システム ECDIS)の実用的使用 (2012 年版) IMO(国際海事機関)
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電子海図情報表示システム ECDIS)の実用的使用 · モデルコース1.27 電子海図情報表示システム(ecdis)の実用的使用...

Mar 16, 2020

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モデルコース 1.27 電子海図情報表示システム(ECDIS)の実用的使用

モデルコース 1.27

電子海図情報表示システム (ECDIS)の実用的使用

(2012 年版)

IMO(国際海事機関)

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目次

はしがき 5

はじめに 6 モデルコースの目的 6

モデルコースの使用 6

授業計画 7

プレゼンテーション 7

実施 8

パートA:コースの枠組み 9 範囲 9

目的 9

参加基準 9

コースの証明書、修了証書、又は文書 10

コースの提供 10

コースの受け入れ人数の制限 10

スタッフの要件 10

教育設備及び機器 11

補助教材(A) 12

参考文献(B) 13

電子媒体(E) 13

IMOの参考資料(R) 14

テキスト(T) 14

パートB:コースの概要と時間割 15 概要 15

コースの概要 16

コースの時間割 18

パートC:詳細な指導要目 20 注記 21

学習目的 21

参考資料と補助教材 22

パートD:インストラクター向けマニュアル 35 インストラクター向けガイダンス 35

授業計画 36

パートE:評価及び査定 80 はじめに 80

STCW2010コード 80

査定計画 80

妥当性 80

信頼性 81

査定の作成 82

試験項目の質 83

ECDISのインストラクター向け付録 84 付録1:ECDISの運用入門 85

付録2:ECDIS性能基準の参考資料 86

付録3:ECDIS搭載要件 87

付録4:ECDIS訓練におけるシミュレータの使用に関するSTCW規則I/12及びA-I/12項、B-I/12項 91

付録5a:ECDISの使用に関する訓練生の技能チェックリストの例 111

付録5b:シミュレータに関する訓練生の評価の例 114

付録6:ECDIS訓練用機器の例 116

モデルコース実施ガイダンス 120

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モデルコース 1.27 電子海図情報表示システム(ECDIS)の実用的使用

国際海事機関(IMO)は、創設当初より、海事産業の発展に人的資源が重要で

あることを認識し、国および地域レベルの海事訓練設備の提供もしくは改良を通

して、発展途上国の海事訓練能力の向上を支援することを 優先に掲げてきた。

さらに、関係当局、港湾、海運業者、海事訓練機関の上級職員のために卒後教育

を必要とする途上国のニーズに応え、IMOは1983年、世界海事大学をスウェー

デン、マルメに設立した。

「1978 年の船員の訓練及び資格証明並びに当直の基準に関する国際条約(STC

W)」の採択後、複数のIMO加盟国政府より、同条約の施行を支援し、また、新

しい海事技術について情報や技術の迅速な普及を支援するモデル訓練コースを開

発すべきであるとの提案があった。ついで、発展途上国の訓練機関の視察後、I

MOの訓練アドバイザーやコンサルタントも、モデルコースを提供することで、

各講師がそれぞれの既存のコースの質を高め、関連する会議やIMO総会の決議

事項の実施に役立つとしている。

加えて、さまざまな分野の短期モデルコースを組み合わせた総合プログラムは、

海事学校での教育を補い、海事関係当局、港湾、海運業者の職員や専門技術者が

専門分野の知識や技術を向上させるのに役立つと評価されている。ノルウェー政

府の多大な支援を受けて、IMOは一般的に分かっている要求に応じてモデルコ

ースを開発し、IMOの規約に規定された要件の修正および現場における技術的

な進歩を考慮した定期的な改版プロセスによってモデルコースを 新に保ってい

る。

本モデルコースはどのような訓練機関でもお使いいただける。必要な資金が調達

できていれば、途上国がコースを実施する際に協力をする用意がある。

関水 康司

事務局長

はしがき

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■モデルコースの目的

IMOモデルコースは、海事訓練機関及びその教授陣による新しい訓練コースの

作成と導入、又は既存の訓練資料の改善、更新、補足による訓練コースの質と効

果の向上をサポートすることを目的とする。

本モデルコースプログラムは、インストラクターに「盲従」を要求するような厳

格な「指導パッケージ」を提供するものではない。また、インストラクターの代

わりとなる視聴覚資料又は「プログラム化された」資料を提供するものでもない。

あらゆる訓練の取り組みと同様に、インストラクターの知識、技能、熱心さが、

IMOモデルコース資料を通じて訓練を受ける訓練生に知識と技能を移転するた

めの重要な要素である。

海事分野における教育制度と訓練生の文化的背景は国によってかなり異なるため、

本モデルコース資料は、広く適用される用語で、各コースの基本的な参加要件と

訓練生のターゲットグループを特定すると同時に、IMOの条約と関連する勧告

の意図を満たすために必要な技術的内容と知識/技能レベルを明示するように設

計されている。

■モデルコースの使用

本モデルコースを使用するためには、インストラクターはコースの枠組みに定め

られている参加基準で提供されている情報を考慮に入れて、コースプランと詳細

な指導要目のレビューを行う必要がある。このレビューでは、訓練生の実際の知

識/技能レベルと過去の技術的教育を念頭に置き、詳細な指導要目内で、実際の

訓練生の参加レベルとコース設計者が想定するレベルとのギャップによる問題が

起きる可能性のある分野を特定する必要がある。このようなギャップを埋めるた

めに、インストラクターには、訓練生がすでに習得している知識や技能を取り扱

った項目を削除するか、重要性を下げることが求められる。またインストラクタ

ーは、訓練生が習得していない学問的知識、技能又は技術的訓練を確認する必要

がある。

はじめに

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モデルコース 1.27 電子海図情報表示システム(ECDIS)の実用的使用

詳細な指導要目と、技術分野の訓練を進めるために必要な学問的知識を分析する

ことにより、インストラクターは適切な訓練開始前のコースを設計するか、技術

コース内の適切な箇所で関連する技術訓練要素を補足するために必要な学問的知

識の要素を盛り込むことができる。

海事産業において訓練生がコース修了後に、モデルコースで明示された目的とは

異なる任務に就く予定であるときは、コースの目的、範囲、内容の調整が必要に

なる場合がある。

コースプランには各学習分野への予想割当時間が提示してある。ただし、これら

の割当時間は恣意的なものであり、訓練生がコースの参加要件をすべて満たして

いることを想定している。したがってインストラクターはこれらの予想時間を検

討する必要があり、それぞれの特定の学習目的を達成するために必要な時間の再

割当を行わなくてはならない場合がある。

■授業計画

訓練生の習得レベルやコースの目的の変更に合わせてコースの内容を調整した後、

インストラクターは詳細な指導要目に基づいて授業計画を作成する。詳細な指導

要目にはコースで使用予定のテキストや教材の詳細が記載されている。詳細な指

導要目の学習目的を調整する必要がないと判断した場合、授業計画は、詳細な指

導要目にインストラクターが資料のプレゼンテーションを行う際に役立つキーワ

ードやその他のアドバイスを付け加えるだけでもよい。

■プレゼンテーション

コンセプトと方法論に関するプレゼンテーションは、訓練生がそれぞれの特定の

学習目的を達成したことをインストラクターが納得するまで、様々な方法で繰り

返し行う必要がある。指導要目は学習目的を中心に記述されており、各目的は、

訓練生が学習成果として実行可能となるべき内容を定めている。

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■実施

コースの円滑かつ効果的な運営のために、以下が入手可能かつ利用できることに

十分注意を払う必要がある。

適切な資格を有するインストラクター

補助スタッフ

教室などのスペース

器具備品

テキスト、技術論文

その他の参考資料

準備段階がコースを効果的に実施するための鍵となる。IMOが作成した「IM

Oモデルコースの実施ガイダンス」は、この側面をより詳細に取り上げており、

本コースの付属文書に含まれている。

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モデルコース 1.27 電子海図情報表示システム(ECDIS)の実用的使用

■範囲

本モデルコースは、ECDIS を主な航行手段とする船舶を安全に運航するために必

要な ECDIS 及び電子海図の十分な知識と技能を提供し、理解を深めてもらうこと

を目的とする。本コースは様々な航行環境における ECDIS の適用と学習の両面に

重点を置いている。

本コースは、2010マニラ改正で規定されたECDIS の使用に関するSTCW条約の

要件を満たすように設計されている。同条約は特に表 A-II/1、A-II/2、A-II/3、

並びに表 B-I(36~66 項)に記載されている ECDIS の運用に関する訓練と評価、

表 B-II に記載されている航海当直及び能力評価に関する改正されたガイドライ

ンに適用される。

本コースは一般的なコースであり、実際に使用する、各船舶に搭載の個別のECDIS

の操作については別に精通のための体系的かつ補完的な訓練が必要となる。

■目的

本コースを無事修了した訓練生は、ECDIS ナビゲーション及び電子海図の十分な

知識、理解及び技能を発揮して、改正STCW条約で定義されている航海当直の

任務を引き受けることができるようになる。この知識、理解及び技能は表A-IIの

1欄に記載されているECDIS の能力を含むが、これらには限定されない。

ECDIS 動作の機能と制限、及びすべての表示サブトピックに関する知識

ECDIS とすべての表示サブトピックから入手した情報の運用/解釈/分析能

運用手順、システムファイルとデータ、及びすべての表示サブトピックの管

■参加基準

このコースを受講する訓練生は、地文航法に関する正式な教育を修了しているこ

パートA:コースの枠組み

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と、少なくともある程度は視覚ナビゲーションを熟知していること、一定期間に

おいて監督付きの船橋当直任務を遂行していること、及び事前に基本的なレーダ

ー/ARPA(自動衝突予防援助装置)のコースを修了していること(MC 1.07)を前

提とする。また訓練生は、パソコンのオペレーティングシステム、キーボード、

マウス/トラックボールを十分に使いこなせる必要がある。

■コースの証明書、修了証書、又は文書

本コースを無事修了した訓練生には、本モデルコースに基づく電子海図情報表示

システム(ECDIS)の航行使用と運用に関する訓練を修了したことを示す証書を発

行する。

■コースの提供

本コースの成果を得るには、教室やラボでのシミュレーションベースの訓練、実

地訓練、あるいは両者の組み合わせなど、さまざまな方法がある。ただし、各訓

練生は、制御された航行中視覚ナビゲーション環境で、練習又は評価の間は常に

ECDIS と航海用電子海図(ENC)データにアクセスできるものとする。

本コースの精通段階の補足として遠隔学習やコンピュータベースの訓練が行われ

る場合があるが、航行中の精通度の評価の代用にはならない。

■コースの受け入れ人数の制限

訓練生の 大人数は、本コースの範囲と目的を念頭に置き、利用できる設備と機

器に応じて決定する必要がある。

インストラクターと訓練生の比率は1:12までとする。1クラスの人数が12名を

超える場合は、インストラクター補佐が1名必要となる。

■スタッフの要件

IMOモデルコース1.27に準拠したコースを行うインストラクターは、 低限以

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モデルコース 1.27 電子海図情報表示システム(ECDIS)の実用的使用

下の資格を有することが望ましい。

.1 コースを承認する管理部門の判断により、甲板部に必要な資格の証明書、

他の資格もしくは経験を有する。

.2 認可されたECDIS コースを修了している。

.3 訓練に使用する機器と同種の機器について精通訓練を修了している。

.4 改正SOLAS条約V/2、V/19、V/20~27章の要件に精通している。

.5 現在使用されているIMOの ECDIS 性能基準についての 新の知識や関連

するSTCW要件・ガイダンスに関する知識を有する。

.6 航海用電子海図(ENC)についての 新の知識を有する。

.7 新の ENC データ転送基準及びIHO(国際水路機関)のプレゼンテーシ

ョンライブラリー、ENC のライセンス契約方法とアップデート方法、ECDIS

ソフトウェアや他の問題に関する 新のIMO勧告を把握している。

.8 新の当該指導資格を有するか、あるいはシミュレータによる訓練を含む、

STCW規則1/6及び1/12の要件を満たすトレーナー研修を修了している。

インストラクター補佐は、ECDIS 操作について当該知識を有すること。

■教育設備及び機器

ECDIS シミュレーション機器は、改正STCW条約の規則1/12に規定されている

性能基準で該当するものすべて、並びにB-I/12 項のガイダンスを満たしていなけ

ればならない。

付属書6に、ECDIS 訓練用の機器構成例を示す。

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ECDIS 教室/ラボ

講義は、訓練生全員の机/座席スペースを収容できる教室で行う。標準的な教室

に必要な設備は、ホワイトボードや黒板、プロジェクターなどである。

本コースの実習や評価は、各訓練生が ECDIS シミュレーターワークステーション

が使えるような設備のある場所で行う。机にディスプレーモニターを置くため、

機器類やプロジェクタースクリーンは、訓練生からよく見えるように配置を工夫

する。

訓練生用のワークステーションのほかに、インストラクター用に、演習問題や教

材を映すための専用プロジェクションシステム付きのステーションが必要になる。

インストラクター用のステーションに 1 台又は複数のディスプレーをネットワー

クで結んで、ARPAや ECDIS 情報(もしくはほかの教材)を訓練生が見られるよう

にすることが強く推奨される。

スペースがあれば、シミュレーションと講義を同じ部屋で行ってもよい。その場

合は、ワークステーションがあっても、ホワイトボードや黒板、プロジェクター

スクリーンがよく見えること、また、ノートをとったり筆記試験を行う十分なス

ペースがあることを確認する必要がある。

■補助教材(A)

A1 指導マニュアル(本コースのパートD)

A2 視聴覚教材:ビデオ/DVD プレーヤー、ビジュアル資料、ドキュメントプ

ロジェクターなど

A3 航行中というシチュエーションにおける自船の機能性がわかるシミュレ

ーター

A4 シミュレーションあるいはライブセンサーの入力から抽出したENCデータ

を含むECDIS ワークステーション

A5 許可証及び更新ファイルを含む、航海用電子海図(ENC)データ

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モデルコース 1.27 電子海図情報表示システム(ECDIS)の実用的使用

A6 許可証及び更新を含む、航海用ラスター海図(RNC)

■参考文献(B)

B1 NMEA インタフェーススタンダード0183 v.3.01(メリーランド州セヴァー

ナパーク、米国海洋電子機器協会、2002年 1月)

B2 電子海図と搭載輸送要件に関する真実、第2版(フィンランド海事管理局:

Primar Stavanger 及び IC-ENC、2007 年 5月)

B3 Gale, H.(2009 年)紙海図からECDIS へ。ロンドン:ノーティカル研究所

B4 Bole ら。(2005年)レーダー/ARPAマニュアル、第2版、10章「補助装

置」。マサチューセッツ州バーリントン:Elsevier

B5 米国実践ナビゲーター(Bowditch、刊行 No. 9)、2002年版、14章「電子

海図」

B6 シミュレーターリファレンスマニュアル(製造者、日付)

B7 訓練コース中に利用するECDISソフトウェア添付のユーザーズマニュアル

B8 IEC 61174 – 航海海運運行及び無線通信設備及びシステム – 電子海図情

報表示システム(ECDIS)– 運用及び性能要件、試験方法、及び所要試験

結果、3.0版、国際電気標準会議

B9 IHO S-66、電子海図及び輸送要件に関する事実、2010年 1月版

B10 IHO S-61、航海用ラスター海図の製品仕様、1.0版

B11 IHO S-52、ECDIS の海図内容及び表示方法の仕様、第5版、修正済み(IHB、

2001 年 12月)

B12 IHO S-100 ユニバーサル水路データモデル、1.0.0 版(モナコ:IHB、2010

年 1月)

B13 IHO S-57、航海用電子海図(ENC)、3.1版

■電子媒体(E)

E1 ECDIS、シーガルCBT、CD #64

E2 AIS、シーガルCBT、CD #109 v.A.、2003 年 8月

E3 ECDIS 訓練コース、Videotel CBT #871、2008 年 5月

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■IMOの参考資料(R)

R1 改正「船員の訓練及び資格証明並び当直の基準に関する国際条約」船員の

ための訓練、証明、及び見張りの基準(STCW条約コンベンション)、

修正済み

R2 1974 SOLAS条約コンベンション、規制V/19、V/20 及び V/27、2009

年改正に修正済み、IMO Res. MSC 282(86)

R3 ECDIS 実施基準改訂版、MSC.232(82)、IMO、2006年 12月

R4 ECDIS 実施基準、IMO決議 A.817(19) 付録 1~5を含め1995年 11月に

適用済み、1996年 11月 Res. MSC.64(67)では付録6を適用済み、1998年

12月 Res. MSC.86(70)では付録7を適用済み

R5 IMO MSC.1/Circ. 1391、ECDIS 内で識別された異常の処理

R6 IMO SN.1/Circ.266/第 1版、電子海図情報表示システム(ECDIS)ソフト

ウェアのメンテナンス

R7 航海計画のガイドライン、IMO Res. A.893(21)

R8 COLREGS ― 1972 年改正「国際海上衝突予防規則」防止国際規定、

1972年、修正済み

■テキスト(T)

T1 Norris, A. (2010 年)ECDIS と位置調整。ロンドン:ノーティカル研究

T2 Weintrit, A.(2009 年)電子海図情報表示システム(ECDIS):運用ハンド

ブック。グディニャ:グディニャ海洋大学、ポーランド、Balkema Book、

CRC Press, Taylor & Francis Group

T3 Hecht ら。(2011年)電子海図、原理、機能、データ、及びその他必須事

項。ECDIS 利用及び訓練」のためのテキストブック(第3版)Lemmer、オ

ランダ:Geomares Publishing

T4 ECDIS マニュアル、ECDIS Ltd., Witherby Seamanship International、2012

年版

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モデルコース 1.27 電子海図情報表示システム(ECDIS)の実用的使用

■概要

以下のセクションでは、概略形式で40時間のECDISコースのトピックを紹介する。

37のトピックが5つのサブジェクトエリアに区分されている。総時間の割り当て

は以下のとおり。

演習&講義 自立型ECDISによる航行 評価

29.0時間 8.0時間 3.0時間

各トピックに割り当てる時間はコースの時間割に記載されており、パートC ―

詳細な授業指導要目、及びパートD ― 授業計画と訓練にも記載されている。各

トピックの学習目標については、概要はパートCに、全詳細はパートDに記載さ

れている。

「パートA:コースの枠組み」で述べたように、教室では訓練生 1 人に各 1 台の

ワークステーションを用意し、すべてのワークステーションはシミュレーション

インストラクターとサーバーにネットワークで接続する。

パートB:コースの概要と時間割

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■コースの概要

サブジェクトエリア及びトピック 時間

ECDIS の要素 9.5時間

1. コースの紹介&精通計画

2. ECDIS の目的

3. 航行に対する価値

4. 正しい使い方と間違った使い方

5. ワークステーションの起動、停止及び配置

6. 船舶の位置

7. 位置情報源

8. 基本的なナビゲーション

9. 進路&偏流ベクトル

演習1 シミュレータ演習 ― 外洋(基本的な統合ナビゲーション)

10. 海図データの理解

11. 海図の品質と精度

12. 海図の構成

ECDIS による当直 9.0時間

13. センサー

14. ポート&データフィード

15. 海図の選択

16. 海図情報

17. 設定変更

18. 海図の縮尺

19. 情報レイヤー

演習2 シミュレータ演習 ― 沿岸水域(海図表示設定)

20. システム&ポジションアラーム

21. 深度&等深線アラーム

ECDIS によるルート計画と監視 9.0時間

22. 船舶操縦の特徴

23. 表によるルート計画

24. 海図によるルート計画

25. 航路の制限

26. 安全性確認計画

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モデルコース 1.27 電子海図情報表示システム(ECDIS)の実用的使用

サブジェクトエリア及びトピック 時間

演習3 シミュレータ演習 ― 沿岸水域及び制限水域(ナビゲーシ

ョンアラーム及びルートスケジューリング)

27. ナビゲーション付加情報

28. ルートスケジュール

29. ルート計画におけるユーザー海図

ECDIS のターゲット、海図及びシステム 6.5時間

30. ARPA/レーダーオーバーレイ

31. AIS 機能

32. 海図データの入手&インストール

33. 補正図のインストール

演習4 シミュレータ演習 ― 制限水域(ECDIS による高度な統合

ナビゲーション)

34. システムのリセット&バックアップ

35. ECDIS データのアーカイブとデータログの記録

ECDIS の責務及び評価 6.0時間

36. 責務

37. ECDIS による効果的な航行

評価1 文書による評価

評価2 シミュレータ演習 ― 沿岸水域及び制限水域(航行中

ECDIS 航行の評価)

合計 40.0 時間

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■コースの時間割

時限

日 1時限目(2.0時間) 2時限目(2.0時間) 3時限目(2.0時間) 4時限目(2.0時間)

1日目

ECDISの要素

1.コースの紹介

&精通計画

2.ECDISの目的

3.航行に対する

価値

4.正しい使い方

と間違った使

い方

5.ワークステー

シ ョ ン の 起

動、停止及び

配置

6.船舶の位置

7.位置情報源

8.基本的操作

9.進路&偏流ベ

クトル

10.海図データ

の理解

演習1

シミュレータ演

習 ― 外洋(基

本的な統合ナビ

ゲーション)

2日目

11.海図の品質

と精度

12.海図の構成

ECDISによる当

13.センサー

14.ポート&デ

ータフィー

15.海図の選択

16.海図情報

17.設定変更

18.海図の縮尺

19.情報レイヤ

演習2

シミュレータ演

習 ― 沿岸水域

(海図表示設

定)

3日目

20.システム&

ポジション

アラーム

21.深度&等深

線アラーム

ECDISによるル

ート計画と監視

22.船舶操作の

特徴

23.表によるル

ート計画

24.海図による

ルート計画

25.航路の制限

26.安全確認計

演習3

シミュレータ演

習 ― 沿岸水域

及び制限水域

(ナビゲーショ

ンアラーム及び

ルートスケジュ

ーリング)

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モデルコース 1.27 電子海図情報表示システム(ECDIS)の実用的使用

時限

日 1時限目(2.0時間) 2時限目(2.0時間) 3時限目(2.0時間) 4時限目(2.0時間)

4日目

27.ナビゲーシ

ョン付加情

28.ルートスケ

ジュール

29.ルート計画

におけるユ

ーザー海図

ECDISのターゲ

ット、海図及び

システム

30.ARPA / レ ー

ダーオーバ

ーレイ

31.AIS機能

32.海図データ

の入手&イ

ンストール

33.補正図のイ

ンストール

演習4

シミュレータ演

習 ― 制限水域

(ECDISによる

高度な統合ナビ

ゲーション)

5日目

34.システムの

リセット&

バックアッ

35.ECDISデータ

のアーカイ

ブとデータ

ログの記録

ECDISの責務及

び評価

36.責務

37.ECDISによる

効果的な航

評価1

文書による評価

評価2

シミュレータ演

習 ― 沿岸水域

及び制限水域

(航行中ECDIS

航行の評価)

注:この時間割の順序やそれぞれの科目に割り当てられた時間はあくまで目安なので、各クラスの訓練生

の経験や能力によって、あるいは訓練に使用できる機器やスタッフにより、インストラクターが調整すること。

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20

詳細な指導要目は学習目的フォーマットで記載されており、その目的の中では、

知識移転が行われたことを示すために訓練生がするべきことについて説明されて

いる。すべての目的は、「期待される成果は、訓練生が…できる」という文章とな

るようになっている。

インストラクターを支援するために、技術資料と補助教材の他に、学習目的に沿

った参考資料が記載されている。インストラクターはこれらを使用してコースの

教材を作成することができる。コースの枠組みに記載されている資料が、詳細な

指導要目を作成する際に使用されている。特に、以下の資料からはインストラク

ターに有益な情報が得られる。

補助教材(Aで表す)

参考文献一覧(Bで表す)

電子媒体(Eで表す)

IMO参考資料(Rで表す)

テキスト(Tで表す)

使用されている略語は以下のとおり。

add.:補遺

app.:付録:

art.:条項

ch.:章

encl.:同封物

p.:ページ

pa.:段落

reg.:規則

sect.:セクション

tab.:表

パートC:詳細な指導要目

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21

モデルコース 1.27 電子海図情報表示システム(ECDIS)の実用的使用

■注記

コース全体を通じて、現行の国際的な要件と規則を基準とした安全な作業手順を

明確に定義し、これに重点を置いている。本コースを実施する機関には、必要に

応じて、国内及び/又は地域の要件と規則への言及を含めることを推奨する。

■学習目的

サブジェクトエリアとトピックはパートBで概説されている。パートCでは、各

トピックに関連する学習目的、並びに補助教材と参考資料を提示している。パー

トDでは授業計画としてトピックを記載しており、さらに、ECDIS のインストラ

クターマニュアルの開発のために十分に詳細な学習目的の説明を記載している。

学習目的は結果指向の学習及び技能開発を促進するために動詞を中心とした表現

としている。すべての学習目的は、「期待される学習成果は、訓練生が. . . でき

る.」という文章となるようになっている。

本コース全体を通じて開発される包括的な能力とは、「航行中の安全を確保するた

めのECDIS の使用」(STCW、A-II/1, A-II/3, 運用レベル)及び「操船者意思

決定を支援する ECDIS と関連航行システムによる航行の安全性確保」(STCW、

A-II/2, 管理レベル)であることに留意する必要がある。ECDIS のインストラク

ターはできる限り航行状況、又はそれに近い状況ですべての学習目的を提示する

よう努める必要がある。習得及び応用のためのタスクとしてこれらの学習目的を

実践し、理解することにより、訓練生は目指す能力を身に着け、インストラクタ

ーは得点式の 終的な航行評価において訓練生の能力を評価することができる。

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22

知識、理解及び技能 補助教材 参考資料

ECDIS の要素(9.5時間)

1. コースの紹介&精通計画(0.5時間)

1.1. 概略紹介

1.2. 運営

1.3. ECDIS の学習環境の精通

A1

A3

A4

T3 ch.1

B6

B7

2. ECDIS の目的(0.5時間)

2.1. 改正されたIMOの ECDIS 性能基準(2006

年 6月、決議MSC.232(82))の紹介

2.2. 表示オプションの識別

2.3. ナビゲーションディスプレイ上の情報の種

類とエリアの確認

2.4. ECDIS データ表示の適用

A1

A2

A3

A4

A5

R3

T1 ch.3 &

10.3

T3 ch.2

B4 ch.10.2

B5 ch.14

3. 航行に対する価値(0.5時間)

3.1. 海図の表示を特徴付け、修正する要素の認識

3.2. データの品質を特徴付け、修正する要素の認

3.3. 自船の縮尺、範囲&位置の手動変更

3.4. ECDIS 操作におけるルートモニタリングモー

ドの評価

3.5. 航行に対するECDIS の価値に関する説明

A1

A2

A3

A4

A5

T1 ch.6.8

T1 ch.8.5

T3 ch.11.1

& 11.2

B4

ch.11.2.2

& 11.2.3

& 11.3

4. 正しい使い方と間違った使い方(0.5時間)

4.1. 一般的な航行状況におけるECDIS の使用

4.2. ECDIS への過度の依存を避ける方法の認識

4.3. システムと全データの完全性に関する継続

的な評価を含むECDIS の使用の精通

A1

A2

A3

A4

A5

T1 ch.8.7

T3

ch.11.3.2

& 7.5 &

8.1.1

B2

B3

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23

モデルコース 1.27 電子海図情報表示システム(ECDIS)の実用的使用

知識、理解及び技能 補助教材 参考資料

5. ワークステーションの起動、停止及び配置(0.5

時間)

5.1. ECDIS ワークステーションの標準的起動

5.2. 要求されたセンサー、検知されたセンサー、

及び選定した海図データの初期化のための

ECDIS 開始ウィンドウの解釈

5.3. アラーム(もしあれば)の検査及び ECDIS

ナビゲーション準備の初期状態の判断

A1

A2

A3

A4

A5

T1 ch.1

T3 ch.7.3

B7

6. 船舶の位置(0.5時間)

6.1. ユーザーインターフェース方法のレビュー

6.2. 船舶の位置表示のレビュー

6.3. 表示パネルの位置情報の検討

6.4. ECDIS の海図表示パネルに対する定位置の決

A1

A2

A3

A4

A5

T1 ch.6.7

B7

7. 位置情報源(1.0時間)

7.1. GNSS の基礎のレビュー

7.2. GNSS アンテナ位置設定の調整

7.3. 位置システムの選定

7.4. GNSS の測位品質(状態)の決定

A1

A2

A3

A4

A5

T1 ch.2

T3

ch.7.5.5

& 8.1.1

B7

8. 基本的なナビゲーション(1.0時間)

8.1.表示カテゴリと情報レイヤーの有効化

8.2. 船舶の安全性監視

8.3. ルートモニタリング機能の有効化

A1

A2

A3

A4

A5

T1 ch.6.2

B7

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24

知識、理解及び技能 補助教材 参考資料

9. 進路&偏流ベクトル(0.5時間)

9.1. 船舶の動きベクトルの作動

9.2. 測位システムからの船舶の進路と速度の取

9.3. 船舶の動きの解釈

9.4. ジャイロ誤差の影響の認識

9.5. ガードリングによる自船の孤立障害アプロ

ーチのグラフィックモニター

A1

A2

A3

A4

A5

T1 ch.8.1

R3

R4

B7

演習1 シミュレータ演習 ― 外洋(基本的な統合ナ

ビゲーション)(2.0時間)

A3, A4,

A5

10. 海図データの理解(1.0時間)

10.1. ECDIS の関連用語の定義

10.2. 電子海図システムとECDISの相違に関する

説明

10.3. 様々な電子海図データフォーマットに関

する説明

10.4. ECDIS データとディスプレイに表示される

情報の関係に関する説明

10.5. データベース内で対応する属性を有する

オブジェクトとして保存されている情報

のみが表示できることを説明

10.6. 表示用に選定された海図データに関する

説明

A1

A2

A3

A4

A5

A6

T1 ch.1 &

4

T3 ch.4 &

7.2 & 6

B5 ch.14

B7

B10

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25

モデルコース 1.27 電子海図情報表示システム(ECDIS)の実用的使用

知識、理解及び技能 補助教材 参考資料

11. 海図の品質と精度(0.5時間)

11.1 海図データの精度に影響を与える要因に関

する説明

11.2. さまざまな種類のデータに関連した ECDIS

の問題に関する説明

11.3. 不適切なデータ管理によるすべてのエラ

ー、不正確性、不明確性の評価

11.4. 安全な航行のために電子海図データを体

系的にアップデートする必要性と要件に

関する説明

11.5. コンピュータのモニターの解像度に関す

る問題のデモンストレーション

A1

A2

A3

A4

A5

T1 ch.9

T3 ch.5

B7

12. 海図の構成(0.5時間)

12.1. 海図データの配布構成の紹介

12.2. ECDIS データのローディング(取得)のデ

モンストレーション

A1

A2

A3

A4

A5

T1 ch.6.3

T3 ch.10

& 7.2.2

B7

ECDIS による当直(9.0時間)

13. センサー(0.5時間)

13.1. 位置、対地針路、船首方位、速度、深度、

レーダー、及びAISに関するデバイスの性

能限界の説明

13.2. ECDIS に表示する適切、明確、かつ正確な

センサーデータの選択の必要性に関する

説明

13.3. センサーの性能が低下又は機能しない場

合のECDIS の性能障害の評価

13.4. センサーの各種アラーム/表示の説明と

分析

A1

A2

A3

A4

A5

T1 ch.2.16

& 6.1 &

6.5.1

T3 ch.8

B7

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26

知識、理解及び技能 補助教材 参考資料

14. ポート&データフィード(0.5時間)

14.1. 一次位置情報源と二次位置情報源の選択

14.2. 二次位置情報源への自動切り替えの監視

14.3. 各接続センサーのデータ参照システムに

関する説明

14.4. 各接続センサーに割り当てられるデータ

ポートの確認

14.5. 各付属センサーのデータストリームの監

視、確認、及び限定的な範囲での解読

14.6. ECDIS に対するセンサー入力値の信頼性の

評価

14.7. センサーポートの不適切な選択による表

示情報への影響の評価

A1

A2

A3

A4

A5

T1 ch.8.2

& 8.3

B4 ch.10.4

B7

15. 海図の選択(0.5時間)

15.1. 海図データの様々なローディング/変更

方法のデモンストレーション

15.2. 表示用海図の不適切な選択による不正確

性と不明確性の評価

15.3. アップデートの内容を確認し、それらを

SENCに含めるためのアップデートの表示

15.4. 過度の拡大によるデータと海図のアラー

ムに関する説明と分析

15.5. WGS84 以外のデータを使用したデータと海

図のアラームに関する説明と分析

A1

A2

A3

A4

A5

T1 ch.6.4

& 9.1

T3 ch.5.3

& 7.2

B7

B8

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27

モデルコース 1.27 電子海図情報表示システム(ECDIS)の実用的使用

知識、理解及び技能 補助教材 参考資料

16. 海図情報(1.0時間)

16.1. ポジションモニタリング、ルートモニタリ

ング、ルート作成/編集、試験操縦、ユー

ザー定義のレイヤーの作成とアクセスに

適したタスクパネルの選択と機能の適用

16.2. 海図に記入されたオブジェクトに関する

情報の入手

16.3. 自船の位置に基づく航路標識表示の変更

方法のデモンストレーション

16.4. 表示カテゴリの不適切な選択による解釈

ミスのデモンストレーション

A1

A2

A3

A4

A5

A6

T1

ch.6.4.6

T3 ch.7.2

B7

B10

17. 設定変更(1.0時間)

17.1. ハードウェア、キーボード、マウス/トラ

ックボール、センサーデータ、及び海図デ

ータの主要機能の手動テスト

17.2. 主タスクパネル/主情報パネル上におけ

る適切な操作設定の確認及び/又は選択

17.3. アラーム/機能ステータスの表示に関す

る評価

17.4. 安全値の不適切な選択による解釈ミスの

デモンストレーション

17.5. 航路距離と精度の調整

17.6. ログテーブル(航海記録)に記録されてい

る情報範囲の評価

A1

A2

A3

A4

A5

T1 ch.6.3

& 8.6

T3 ch.7.6

B7

18. 海図の縮尺(0.5時間)

18.1. 電子海図表示の縮尺のデモンストレーシ

ョン

18.2. 海図の縮尺比率の自動変更の適用

18.3. 海図の縮尺に関する追加情報の適用

18.4. 縮尺による解釈ミスの確認

A1

A2

A3

A4

A5

T1 ch.6.4

T3

ch.7.2.4

B7

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28

知識、理解及び技能 補助教材 参考資料

19. 情報レイヤー(1.0時間)

19.1. 海図データがロードされ、海図領域が過度

に縮小された場合の情報レイヤーとステ

ータス表示に対する影響の観察

19.2. 適切な昼夜のパレット、表示カテゴリ、及

び縮尺のレビューと適用

19.3. 「その他のすべての情報」の表示カテゴリ

における情報オプションの選択

19.4. 情報レイヤー、ユーザー海図レイヤー、及

びイベントグラフィックの識別

19.5. 表示情報の喪失を示すインジケータへの

対応

A1

A2

A3

A4

A5

T1 ch.6.5

& 6.9 &

7.3

T3

ch.7.5.6

& 7.2.1

& 7.3.2

B7

演習2 シミュレータ演習 ― 沿岸水域(海図表示設

定)(2.0時間)

A3, A4, A5

20. システム&ポジションアラーム(0.5時間)

20.1. 一次/二次測位システムのアラームの確

認と対応

20.2. 海図関連のアラームの確認と対応

20.3. トラックコントロールのオートパイロッ

トからのECDIS アラームの確認と対応

A1

A2

A3

A4

A5

T1 ch.8.3

T3

ch.7.5.3

B7

21. 深度&等深線アラーム(1.5時間)

21.1. ルートモニタリングアラームの説明

21.2. 深度関連情報の確認

21.3. ルートモニタリングに対する安全値の設

21.4. 安全な水域に関する限度の設定

A1

A2

A3

A4

A5

T1 ch.8.4

& 6.5

T3 ch.7.5

B7

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29

モデルコース 1.27 電子海図情報表示システム(ECDIS)の実用的使用

知識、理解及び技能 補助教材 参考資料

ECDIS によるルート計画と監視(9.0時間)

22. 船舶操作の特徴(0.5時間)

22.1. 航路定点に接近時のホイールオーバー警

告方法の決定

22.2. 航海士は、特にECDIS がオートパイロット

に接続されている場合にポジショニング

を確認すること

A1

A2

A3

A4

A5

T1 ch.8.5

T3 ch.7.5

& 8.3

B7

23. 表によるルート計画(1.0時間)

23.1. 保存したルート計画の取得

23.2. 計画、安全性レビュー、監視に対する既存

ルートの承認

23.3. 航路全体の計画のための海域及び必要な

水域の選択

23.4. ルート計画表に航路定点データをアルフ

ァベット/数値で入力することによるル

ート計画の作成

23.5. 表内の航路定点の編集、追加、削除による

航路計画の調整

23.6. 曲線航路計画及びホイールオーバー表示の調整

23.7. ルートファイルの命名、リンク、名前の変更、

アーカイブ、取得、及び削除の手順確立

A1

A2

A3

A4

A5

T1 ch.7.1

& 7.5

T3 ch.7.4

B7

24. 海図によるルート計画(2.0時間)

24.1. 航路全体の計画のための海域及び必要な

水域の選択

24.2. ECDIS ディスプレイへの航路定点の直接入

力によるルートの作成

24.3. 航路定点のグラフィック編集によるルー

トの調整

24.4. 海図からの航路と距離の取得

24.5. 関連ルート計画情報の取得

A1

A2

A3

A4

A5

T1 ch.7.2

& 7.3

T3 ch.7.4

B7

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30

知識、理解及び技能 補助教材 参考資料

25. 航路の制限(0.5時間)

25.1. 船舶が監視中のルートに沿って進行中の

ときに使用されるアラーム設定のレビュ

25.2. 過去に保存したルートのXTE設定の修正

A1

A2

A3

A4

A5

T1

ch.6.5.3

& 8.3

T3 ch.7.5

B7

26. 安全性確認計画(0.5時間)

26.1. 過去に作成/保存したルートにおけるク

ロストラック距離の設定に従った航行の

横断の危険性に関する確認

26.2. 現在作成中のルートの上述の危険性に関

する確認

26.3. 安全性確認に基づくルート計画の評価

A1

A2

A3

A4

A5

T1 ch.7.4

& 7.7

T3 ch.7.4

B7

演習3 シミュレータ演習-沿岸水域及び制限水域

(ナビゲーションアラーム&ルートスケジュ

ーリング)(2.0時間)

A3, A4, A5

27. ナビゲーション付加情報(0.5時間)

27.1. ECDIS データベースで入手できる各種水文

気象データ(潮流、海流、天候など)につ

いての説明

A1

A2

A3

A4

A5

T3 ch.7.5

& 7.7 &

15.1

B7

28. ルートスケジュール(0.5時間)

28.1. 船舶がルートに沿って航行している際の、

使用中のルートスケジュール設定からの

逸脱の監視

28.2. 予想通過時間の判断

28.3. 計画ルート沿いの進行の計算に対する監

28.4. ECDIS の ETAアプリケーションを使用した

監視ルート上の選定航路定点における時

間又は速度の計算

A1

A2

A3

A4

A5

T1 ch.7.5

T3 ch.7.5

& 7.7

B7

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31

モデルコース 1.27 電子海図情報表示システム(ECDIS)の実用的使用

知識、理解及び技能 補助教材 参考資料

29. ルート計画におけるユーザー海図(1.5時間)

29.1. 船員記録(ユーザー海図)を作成するため

のECDIS 機能のレビュー

29.2. ユーザー海図に関する効果的な方針の策

29.3. 表示用のユーザー海図の選択

29.4. ユーザー海図の作成と修正のためのグラ

フィックエディタの使用

29.5. ユーザー海図上のアンカーサークルガー

ドゾーンの作成、保存、移動

A1

A2

A3

A4

A5

T1 ch.7.3

T3 ch.7.3

B7

ECDIS のターゲット、海図及びシステム(6.5時間)

30. ARPA/レーダーオーバーレイ(0.5時間)

30.1. ARPA ターゲットに対するセンサーの設定

要件の検討

30.2. ARPA ターゲットのデータ計算に使用され

る速度と進路のインプットの決定

30.3. ターゲット情報表示へのアクセス

30.4. ターゲット記号の特性の解釈

30.5. レーダーオーバーレイに対するユーザー

インターフェース制御の操作

30.6. イメージオフセット源のデモンストレー

ション

30.7. ECDIS が追跡するターゲットデータ計算源

の決定

30.8. ARPA で補足した基準点を使った自船の位

置の補正

A1

A2

A3

A4

A5

T1

ch.8.4.3

T3

ch.8.2.3

& 8.5

B7

T1

ch.8.4.4

T3

ch.8.2.1

& 8.2.2

& 11.1.5

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32

知識、理解及び技能 補助教材 参考資料

31. AIS の機能(0.5時間)

31.1. 船舶自動識別装置(AIS)と ECDIS の接続

によって実現される機能の説明

31.2. AIS ターゲットに対するセンサーの設定要

件の検討

31.3. AIS ターゲットに対するアラーム及びその

他の設定の決定

31.4. ターゲット情報表示オプションへのアクセス

31.5. AIS ターゲット記号の特性の解釈

A1

A2

A3

A4

A5

T1

ch.8.4.5

& 6.9

T3 ch.8.4

B4 ch.10.3

B7

32. 海図データの入手&インストール(1.5時間)

32.1. 海図データの構造、用語、インストール手

順のレビュー

32.2. ECDIS に対する海図フォーマットの要件の

レビュー

32.3. ENC に対するデータ供給源の検討

32.4. SENC 変換のためのデータ供給源の検討

32.5. 各種フォーマットのライセンス構造の検

討及びインストールの練習

32.6. インストール履歴に関する情報の抽出

A1

A2

A3

A4

A5

T1 ch.4.4

T3 ch.9.2

& 9.3 &

9.4

B7

33. 補正図のインストール(1.0時間)

33.1. 電子海図データが 新の補正により維持

される理由の説明

33.2. マニュアル補正による海図オブジェクト

の追加又は修正

33.3. 自動更新を利用するための製品ライセン

スオプションの検討

33.4. 様々な手法を用いた各種自動更新フォー

マットのインストール

33.5. 更新履歴に関する情報の抽出

33.6. 一時関係補正及び航行警告の適用

A1

A2

A3

A4

A5

T1 ch.4.5

& 6.3

T3 ch.10

B7

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33

モデルコース 1.27 電子海図情報表示システム(ECDIS)の実用的使用

知識、理解及び技能 補助教材 参考資料

演習4 シミュレータ演習 ― 制限水域(ECDIS による

高度な統合ナビゲーション)(2.0時間)

A3, A4, A5

34. システムのリセット&バックアップ(0.5時間)

34.1. ECDIS のバックアップ処理規則の目的に関

する説明

34.2. 単独型ECDISの故障時におけるバックアッ

プ手順の説明

34.3. (マスター)ECDIS の故障時におけるネッ

トワーク接続によるバックアップ手順の

説明

34.4. ECDIS のトラブルシューティングルーチン

の説明

34.5. トラブルシューティング中の航行の安全

性に対する影響の認識

34.6. ECDIS ワークステーション故障中のデータ

保存に対する影響の認識

A1

A2

A3

A4

A5

T1 ch.8.7

& 8.8

T3 ch.11.3

& 11.4

B7

35. ECDIS データのアーカイブとデータログの記録

(0.5時間)

35.1. ECDIS データ管理によるECDIS 操作関連フ

ァイルの処理の説明

35.2. ECDIS データ管理による選択データファイ

ルの記録媒体間の転送の説明

35.3. ECDIS における航海日誌タスクの要件と機

能の検討

35.4. 自船の軌跡及びAIS、ARPA のターゲットの

軌跡の表示機能に関する検討

35.5. 様々なハードコピーの印刷

A2

A4

A1

A3

A5

T1 ch.8.6

T3 ch.7.6

& 13.9

B7

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34

知識、理解及び技能 補助教材 参考資料

ECDIS の責務及び評価(6.0時間)

36. 責務(2.0時間)

36.1. COLREGSのレビュー

36.2. SOLAS改訂版のレビュー

36.3. 機器や設備のIMO承認のレビュー

36.4. IMOの船舶搭載要件のレビュー

36.5. 国内の ECDIS 船舶搭載規則のレビュー(該

当する場合)

36.6. 改訂版のSTCWコードのレビュー

36.7. 旗国(海事)の責務実施のレビュー

36.8. IMOのトレーニングガイダンスのレビ

ュー(及びコースのレビュー)

36.9. 船舶所有者と運航者に対するISM及び

IMO要件のレビュー

36.10. IHO関連の規則のレビュー

36.11. ECDIS のソフトウェアを常に 新の状態

に保つ必要性のレビュー

A1

A2

R1

R3

B11

B12

B13

R7

T1 ch.5

T3 ch.13.4

37. ECDIS による効果的な航行(1.0時間)

37.1. ECDIS を組み入れたブリッジ機能の説明

37.2. ECDIS を用いたサンプルブリッジ操作手順

の再検討

37.3. ECDIS を用いた安全かつ実用的な航行の定

37.4. ECDIS でよくある不具合の知識

A1

A2

T1 ch.10.2

T3 ch.7.3

& 8.1 &

11.2 &

16

R5,R6

評価1 文書による評価(1.0時間)

評価2 シミュレータ演習 - 沿岸水域及び制限水域

(航行中ECDIS 航行の評価)(2.0時間)

A3, A4, A5

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35

モデルコース 1.27 電子海図情報表示システム(ECDIS)の実用的使用

■インストラクター向けガイダンス

コースの概要と時間割(パートB)では教材への時間割り当てに関するガイダン

スが提供されているが、インストラクターは、必要だと判断した場合、この時間

割り当てを自由に変更することができる。詳細な指導要目(パートC)を入念に

検討し、適切な場合には、コース全体の基礎を提示しているパートDの内容を授

業計画又は講義ノートに取り入れる必要がある。評価のガイダンスはパートEに

示す。

本パートの授業計画と演習は、コース指導マニュアルの資料を使用して ECDIS に

よる航行指導を提供することを目的としている。パートDでは特に、本モデルコ

ース文書の前半に提示されている学習目的を詳細に説明している。本パートの内

容は、コースの開発者の方法論と構成に関する見解を反映するとともに、インス

トラクターとしての経験又は ECDIS によるブリッジ当直の応用に熟練している航

海士の経験に照らして、適切かつ重要であると考えられることを反映している。

初めは、この授業、演習、評価の方法が有用であると思うが、各インストラクタ

ーは独自の方法とアイディアを開発し、効果的な方法を特定・改良し、あまり効

果を発揮しない方法は捨てる必要がある。特にインストラクターは、訓練環境で

使用されている特定の ECDIS に合わせて訓練内容を調整することが重要である。

ECDIS 性能基準は設けられているが、各種の型式承認済みの ECDIS 装置間の共通

性には限界がある。また、必要に応じて、旗国の規則をレビューし、調整するこ

とが望ましい。

前のパートで述べたように、この40時間のコースは40の授業計画、4つの演習、

及び 終的な航行評価演習で構成されている。これらは本コースの 5 つの主要段

階に基づいて次のように分類される。

1 ECDIS の要素(9.5時間)

2 ECDIS による当直(9.0時間)

3 ECDIS によるルート計画(9.0時間)

パートD:インストラクター向けマニュアル

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4 ECDIS の海図、ターゲット及びシステム(6.5時間)

5 ECDIS の責務(6時間)

本コースを効果的に実施するためには準備と計画が も重要な基準となる。また、

訓練生に主題を伝える際に 大限の効果を得るためにはコース教材が確実に入手

でき、適切に使用されることが不可欠である。使用する教育設備の機能と制限に

より、学習目的を調整しなければならない場合があるが、これは 小限に抑える

ことが望ましい。

訓練生は ECDIS を使用した安全な航行を学ぶ際に大きな課題と複雑性に直面する

可能性があるため、インストラクターは、効果的な航行評価を行うためにはでき

る限り多くの実地訓練が必要であることを認識しなくてはならない。航行におけ

るECDIS の利用の紹介(2010年版)で述べたように、講義とデモンストレーショ

ン、そして単独での使用機会の提供は、ほぼすべてのトピックのほぼすべての学

習目的に当てはまる。インストラクターは、教室でのデモンストレーションや演

習、又は単独のナビゲーション環境のいずれの場合でも、航行中に考えられるシ

ナリオに即して学習目的のプレゼンテーションの準備を行ったほうがよい場合も

ある。また、すぐ参照できるように参考資料をCDにまとめたものなど、その他の

資料を作成するのも大変役に立つ。有用なファイルと文書の索引は本コースの「イ

ンストラクター用の付録」のパートに記載されている。

■授業計画:ECDIS の要素(9.5時間)

1. コースの紹介&精通計画(0.5時間)

2. ECDIS の目的(0.5時間)

3. 航行に対する価値(0.5時間)

4. 正しい使い方と間違った使い方(0.5時間)

5. ワークステーションの起動、停止及び配置(0.5時間)

6. 船舶の位置(0.5時間)

7. 位置情報源(1.0時間)

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モデルコース 1.27 電子海図情報表示システム(ECDIS)の実用的使用

8. 基本的なナビゲーション(1.0時間)

9. 進路&偏流ベクトル(0.5時間)

10. 海図データの理解(1.0時間)

演習1 シミュレータ演習 ― 外洋(基本的な統合ナビゲーション)(2.5

時間)

11. 海図の品質と精度(0.5時間)

12. 海図の構成(0.5時間)

1. コースの紹介&精通計画(0.5時間)

インストラクターは 40 時間のコースの目標について説明し、訓練生はワークス

テーションとブリッジシミュレータでECDIS 機器の配置を覚える(T3 ch.1; B6;

B7 参照)。

1.1. 概略紹介

コースの目標とコースの検定を定義する。

訓練生全員が基本的なコンピュータ技能を有していることを確認

する(客観的評価)。

コースの構成と出席要件について説明する。

評価プロセスについて説明する。

訓練生は型式承認済みのECDIS を全般的に理解し、特にコースで使

用するシステムの使い方に精通することになるということを説明

する。

1.2. 運営

参考書とその他の参考資料を配布する。

コースの指導要目を見直す。

1.3. ECDIS の学習環境の精通

ワークステーションの起動及び ECDIS のソフトウェアの起動と終

了。

プロジェクターを使用してどのようにして ECDIS 機能のデモンス

トレーションを行うかを示す。

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ECDIS のユーザーマニュアルから情報を得る方法について説明す

る。

ECDIS のソフトウェアパッケージ内のヘルプ構成について説明す

る。

ECDIS ナビゲーション訓練に使用する教室とラボを見学し、ナビゲ

ーション/制御機器を確認する。

2. ECDISの目的(0.5時間)

インストラクターはECDISのデータ表示の主な特徴について説明し、ECDIS上で常

時表示される情報と、表示の選択が可能な情報を確認する(R3; T1 ch.3 & 10.3;

T3 ch.2; B4 ch.10.2; B5 ch.14参照)。

2.1. 改正されたIMOのECDIS性能基準(2006年6月、決議MSC.232(82))の

紹介

ECDISの定義。

安全で効率的な航行のために必要なすべての海図情報の表示能力。

ポジショニング、ルートモニタリング、ルート計画の迅速な実行。

適切なアラームと表示の装備。

2.2. 表示オプションの識別

電子航海用海図(ENC)とシステムENC(SENC)。

標準ディスプレイとディスプレイベース。

ENCデータ以外の情報の表示。

2.3. ナビゲーションディスプレイ上の情報の種類とエリアの確認

電子海図領域、情報領域、タスクパネル、その他のメニューオプシ

ョン。

位置、ジャイロヘディング、速度ログ、時間、安全値、対地針路、

対地速力などの船舶の安全性を監視するための自動表示。

2.4. ECDISデータ表示の適用

プレゼンテーションライブラリの主な規定。

縮尺、表示カテゴリ、昼/夜などの自動表示。

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39

モデルコース 1.27 電子海図情報表示システム(ECDIS)の実用的使用

真運動、ノースアップなどのモード

3. 航行に対する価値(0.5時間)

訓練生は、ECDISによる安全な航行のためには、一般的な状況に関する表示情報

の選択と分析が必要であることを認識する(T1 ch.6.8; T1 ch.8.5; T3 ch.11.1

& 11.2; B4 ch.11.2.2 & 11.2.3 & 11.3参照)。

3.1. 海図の表示を特徴付け、修正する要素の認識

映写、色、記号。

相違の評価。

3.2. データの品質を特徴付け、修正する要素の認識

精度、解像度、完全性。

相違の評価。

3.3. 自船の縮尺、範囲&位置の手動変更

海図の範囲(又は海域)と縮尺。

表示端に対する自船の位置。

3.4. ECDIS操作におけるルートモニタリングモードの評価

ルートモニタリングモード。

ナビゲーションモード。

3.5. 航行に対するECDISの価値に関する説明

ルート、航路、取得ターゲット、等深線、測深値、予測潮流/海流

に関する自船の位置。

複数の海図の読み込み、拡大縮小、海図上のオブジェクト情報。

ERBL、ユーザーレイヤー、レーダーの目標追尾、SAR、Navtex、AIS、

気象、港湾情報を含めたナビゲーションブリッジチームのための集

中情報ステーション。

4. 正しい使い方と間違った使い方(0.5時間)

訓練生は、ナビゲーションプロセス全体におけるECDISの役割を見極める(T1

ch.8.7; T3 ch.11.3.2 & 7.5 & 8.1.1; B2; B3参照)。

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4.1. 一般的な航行状況におけるECDISの使用

当直航海士のための航行原則と操作ガイダンスを提示する。(ST

CW、SOLAS)

ECDISが利用可能な各種ブリッジ業務をレビューする。

状況認識には、航行補助機能とセンサーの信頼性が含まれる。

ECDISは高性能で総合的なナビゲーションシステムであるが、ECDIS

を使用しても、他の手段で得られる情報を検証する必要がなくなる

わけではない。

航海当直は・つのシステムのみで実施されるものではない(このシ

ミュレーションと技能訓練ではほぼ避けられない)。

4.2. ECDISへの過度の依存を避ける方法の認識

システムの不具合とデータの不正確さは常に存在する可能性があ

る。

表示されている航行水路データはその基準となる調査データの信

頼性を超えることはない。

表示されているセンサーデータはそのデータを生成する各センサ

ーシステムの信頼性を超えることはない。

1つのサブシステムにエラーや不正確さがある場合、他のサブシス

テムも機能が低下し、その結果、ECDISが役に立たなくなる可能性

がある。

4.3. システムと全データの完全性に関する継続的な評価を含むECDISの使

用の技能

ただし、これらは十分な視覚的監視を含めた通常の見張りと組み合

わせて使用すると同時に、優れた状況認識能力を継続的に維持する

必要がある。

これを達成する一つの方法は、メニューや情報パネルのブラウズや

サーフィンをするのではなく、厳格かつ短い制限時間内で単独の目

的又は問い合わせのためにECDISを利用することである。7秒以内で

目視するというスキャニングテクニックはECDISが統合的な役割を

果たすのに役立つ。

もう一つの方法は、不十分な使用の問題を克服することである。

ECDISが十分に使用・応用されない場合、ユーザーはECDISをナビゲ

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モデルコース 1.27 電子海図情報表示システム(ECDIS)の実用的使用

ーションに利用する意欲が薄れ、結果としてECDISへの精通度と信

頼度が低下する。

5. ワークステーションの起動、停止及び配置(0.5時間)

訓練生は起動プロセスと通常の操作時のECDISの適切な機能の分析と評価を行う

(T1 ch.1; T3 ch.7.3; B7参照)。

5.1. ECDISワークステーションの標準的起動

一部のセンサーフィードは電源を切るか、もしくはECDISワークス

テーションのCOMポートから外さなければならない場合があるこ

と、ECDISワークステーションはハードウェア、オペレーティング

システム、メモリのあらゆる一般的な制限を受けることを前提とし

ていることを認識する。

ECDISは航行補助ツールであり、以下の特徴を有している。

-ハードドライブストレージ、RAM容量、電源の中断、ハードウェア

の不具合、全体的なシステムダウンなどの潜在的な制限

-オペレーティングシステム(通常はWindows)の起動手順及び内部

テスト

-ECDISメーカー製品の登録と使用許可に使われる、パラレルプリン

タポートにインストールする事前プログラム済みの「ドングル」

-OSとECDISソフトウェアの間違った使い方による機能不良の可能

5.2. 要求されたセンサー、検知されたセンサー、及び選定した海図データ

の初期化のためのECDIS開始ウィンドウの解釈

ECDISのアクティブキー(ドングル)及び関連ライセンスファイル

の重要性を認識する。

以下の手順によるECDISソフトウェアの起動(ロード):

-デスクトップを背景にした小さなウィンドウの表示

-フルスクリーンパネルの初期化の表示

-確認を求めるアラームインジケータ付きの(もしあれば)ECDISの

基本ディスプレイ

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5.3. アラーム(ある場合)の検査及びECDISのナビゲーション準備の初期状

態の判断

ECDISの初期化スクリーンは以下のオンラインテストを表示する。

-日時、位置、進路、速度に関する記録

-これらのインプットが期待されるプロトコルと一致した場合に

「受領」というメッセージを表示する(「受領」ステータスはデ

ータの精度に関するチェックとは異なる)

-これらのインプットが欠如しているか間違っている場合は「中断」

というメッセージを表示する

-インプットなしに起動を続けることはできるが、ECDISのディスプ

レイにはアラームが表示される

-ENCデータはライセンスに基づき海図ファイルからロードされる

6. 船舶の位置(0.5時間)

訓練生は船舶の位置情報に関する基本的なナビゲーションの機能と設定を操作

する(T1 ch.6.7; B7を参照)。

6.1. ユーザーインターフェース方法のレビュー

マウス/トラックボールとデバイスのボタン。

キーボードとホットキー。

標準カーソルとフリーマウスカーソルの制御。

ディスプレイ上でのカーソルとERBLの使用。

6.2. 船舶の位置表示のレビュー

ナビゲーションモードでディスプレイ上の船舶を移動させる。

船舶のシンボル。

船舶のGNSS位置情報(詳細はレッスン07に記述)。

船舶の位置の追跡(詳細はレッスン08に記述)。

船舶の動きベクトル(詳細はレッスン09に記述)。

6.3. 表示パネルの位置情報の検討

システム(位置上の潮高、海流、測深、潮流・風の流れ、偏流)。

ルート(ルート上の船舶の位置)。

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モデルコース 1.27 電子海図情報表示システム(ECDIS)の実用的使用

パイロット(ルートスケジュールデータに基づく次の航路定点に対

する位置)。

6.4. ECDISの海図表示パネルに対する定位置の決定

手動で方位線(LOP)を引き、移動させる。

ディスプレイ上に手動で位置をマークする。

7. 位置情報源(1.0時間)

訓練生は主要な船舶の位置情報源としてのGNSSの主な特長を認識する(T1 ch.2;

T3 ch.7.5.5 & 8.1.1; B7参照)。

7.1. GNSSの基礎のレビュー

衛星群、理論、空電。

信号の質の表示、HDOP、データの寿命、ステーションID。

精度(2 drmsの確率)。

7.2. GNSSアンテナ位置設定の調整

船体中心から船首尾方向並びに船腹方向のGNSSアンテナの位置を

設定する(共通基準位置 ― CCRP)。

NMEA/IEC61162データフィードにポートを割り当てて一次位置情報

源と二次位置情報源のスイッチを入れる。

7.3. 位置システムの選定

一次位置センサー

二次位置センサー

自動変更(推測航法位置への自動切り替え)。

7.4. GNSSの測位品質(状態)の決定

位置情報。

GNSSデータフィードの障害のアラームと表示。

一次位置センサーと二次位置センサーのずれの追跡。

GNSSデータポートの監視。

別の独自の方法により船舶の位置を確認する。

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8. 基本的なナビゲーション(1.0時間)

訓練生は様々な基本的なナビゲーションの機能と設定を操作する(T1 ch.6.2; B7

を参照)。

8.1. 表示カテゴリと情報レイヤーの有効化

ベース、スタンダード、オール、カスタム。

測深の限界を見極める(深度<= 安全設定値となっている箇所は太

文字で表示される)。

水路の制限、航行可能な水路、ランドマーク、特別地域、警告。

レイヤーがオフになった場合には、「レイヤーの喪失」というメッ

セージが表示される。

8.2. 船舶の安全性監視

位置、ジャイロ、速度記録、COG、SOG、時間を確認する。

孤立障害に関して海面からの安全な深度値を設定する。

安全な等深線を設定する。

ベースディスプレイに示される等深線を確認する。

無効にされることのないその他のベースディスプレイ情報を確認

する。

8.3. ルートモニタリング機能の有効化

進路、ログ、偏流の概要、センサーステータス、ターゲットの追跡、

縮尺、ルート情報、等深線、孤立障害、特殊区域、アラームリミッ

ト。

昼/夜のカラーセット、進路の表示、スケールバー、船舶のシンボ

ルを有効化する。

航海記録(航海日誌)のトラック間隔、精度、色、履歴、ルート情

報、フィルターを設定する。

9. 進路&偏流ベクトル(0.5時間)

訓練生は自船の船首方位ベクトル、対地進路ベクトル、ガードリングに関する基

本的なナビゲーションの機能と設定を操作する(T1 ch.8.1; R3; R4; B7を参照)。

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モデルコース 1.27 電子海図情報表示システム(ECDIS)の実用的使用

9.1. 船舶の動きベクトルの作動

1つ又は両方のベクトルをオン/オフにする。

船舶の等深線の調整。

ベクトル長を設定する。

9.2. 測位システムからの船舶の進路と速度の取得

COGとSOGは測位システム又はARPAリファレンスから取得できる。

HDGは真又は未定義(DRの場合のみに手動入力)。

LOGは海底、海域、ARPA、又は測位システムを参照している場合が

ある。

9.3. 船舶の動きの解釈

COG/SOGベクトルとHDG/LOGベクトル間のグラフィック上の相違は

偏流角である。

偏流角の表示は旋回時の船舶の推進力を示している。

定常状態の偏流角は船舶上の風と潮流の和を示している。

9.4. ジャイロ誤差の影響の認識

偏流角は補正処理をせずにジャイロデータから得られたものであ

る。

高速旋回によるジャイロプリセッションにより、ECDIS上のHDG表示

は信頼性が低くなる。

9.5. ガードリング又は同等のECDIS機能による自船の孤立障害アプローチ

のグラフィックモニター

演習1 シミュレータ演習 ― 外洋(2.0時間)

訓練生は外洋のルートモニタリングのためのタスクグループを構成する特定の

機能を操作し、基本的な安全な統合ナビゲーションに関連する情報を取得する。

威嚇的ではないARPAターゲットが存在する外洋環境で安全に航行

しながら、ECDIS上で以下のタスクのデモンストレーションを行う。

-海域の監視

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-インストラクターが設定した事前定義済みルートの使用

-事前定義済みの定位置による位置の確認

-事前定義済みのユーザーレイヤーの選択

-ベクトル時間、ディスプレイのリセット、情報レイヤー、アラー

ム、進路、センサー、自船の構成などの設定の確認

ベクトル時間、ディスプレイのリセット、情報レイヤー、アラーム、

進路、センサー、自船の構成などの設定を確認する。

インストラクター向けのガイドライン

演習概要に従ってシミュレーション演習を実施する。

-シミュレーションパラメータを設定する

-訓練生に事前定義済みルートを示す

-訓練生に要点を伝え、訓練生から報告を受ける

-演習概要に基づいてタスクの達成度を評価する

期待される成果

ECDISの使い方の精通

ECDISによる航行

SOG及びCOGの監視

10. 海図データの理解(1.0時間)

訓練生は電子海図の種類について説明し、ECDIS又は航海用電子海図システム

(SENC)のデータの特徴について説明する(T1 ch.1 & 4; T3 ch.4 & 7.2 & 6;

B5 ch.14; B7参照)。

10.1. ECDISの関連用語の定義

10.2. 電子海図システムとECDISの相違に関する説明

様々なECDISシステム。

ECDISとECS。

ベクトル海図とラスター海図。

10.3. 様々な電子海図データフォーマットに関する説明

ベクトルデータ。

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モデルコース 1.27 電子海図情報表示システム(ECDIS)の実用的使用

ラスターデータ。

10.4. ECDISデータとディスプレイに表示される情報の関係に関する説明

ECDISデータベースとその構造。

ENCデータとSENC。

手動アップデートのデータベースへの保存方法。

ENCの作成時の手順と責任。

10.5. データベース内で対応する属性を有するオブジェクトとして保存され

ている情報のみが表示できることを説明

10.6. 表示用に選定された海図データに関する説明

11. 海図の品質と精度(0.5時間)

訓練生は、不適切なデータ管理によるSENC内のすべてのエラー、不正確性、不明

確性を評価する(T1 ch.9; T3 ch.5; B7参照)。

11.1. 海図データの精度に影響を与える要因に関する説明 調査データとすべての水路データの精度。

ブイの移動。

海図データの範囲と完全性。 11.2. さまざまな種類のデータに関連したECDISの問題に関する説明

ポジショニングに使用される異なる参照システム(時間、方向、速

度)。

データの影響(水平、垂直)。

異なる測地座標システム。 11.3. 不適切なデータ管理によるすべてのエラー、不正確性、不明確性の評価 11.4. 安全な航行のために電子海図データを体系的にアップデートする必要

性と要件に関する説明 11.5. コンピュータのモニター表示の解像度に関する問題のデモンストレー

ション

海図の縮尺の潜在的なひずみ。

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画面に表示される情報量。

アダプタとデスクトップエリアの設定の表示。

表示に関する問題のトラブルシューティング。

12. 海図の構成(0.5時間)

訓練生はワークステーションでECDISデータを処理する(この知識はレッスン15、

33、34で広められまた、使用される)(T1 ch.6.3; T3 ch.10 & 7.2.2; B7参照)。

12.1. 海図のデータ配布構成の紹介

入手プロセス(ダウンロード)、インストール(アップデートにも

適用)、海図の種類(形式)の選択、初期化、及びローディング(位

置による自動ロード)によって、海図データの構成を説明する(レ

ッスン33でも復習)

型式承認済みのECDISに関連する海図データマネージャーアプリケ

ーションのデモンストレーションを行う。

型式承認済みのECDISに関連する海図データファイル構造について

説明する。

12.2. ECDISデータのローディング(取得)のデモンストレーション

入手可能な海図データのディレクトリから船舶の位置に対応した

自動ローディングを行う。

入手可能な海図データのディレクトリからカーソルの位置に対応

した自動ローディングを行う。

入手可能なデータのディレクトリから海図(セル)名による手動ロ

ーディングを行う。

■授業計画:ECDIS による当直(9.0時間)

13. センサー(0.5時間)

14. ポート&データフィード(0.5時間)

15. 海図の選択(0.5時間)

16. 海図情報(1.0時間)

17. 設定変更(1.0時間)

18. 海図の縮尺(0.5時間)

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モデルコース 1.27 電子海図情報表示システム(ECDIS)の実用的使用

演習2 シミュレータ演習 – 沿岸水域(海図表示設定)(2.0時間)

19. 情報レイヤー(1.0時間)

20. システム&ポジションアラーム(0.5時間)

21. 水深&等深線アラーム(1.5時間)

13. センサー(0.5時間)

訓練生はセンサーの性能限界について説明し、それらがECDISの安全な使用に与

える影響を評価する(T1 ch.2.16 & 6.1 & 6.5.1; T3 ch.8; B7参照)。

13.1. 位置、対地針路、船首方位、速度、深度、レーダー、及びAISに関する

デバイスの以下の性能限界の説明

有用性

精度

完全性

13.2. ECDISに表示される適切、明確、かつ正確なセンサーデータを選択する

必要性に関する説明

13.3. センサーの性能が低下した場合のECDISの性能障害の評価

13.4. センサーの各種アラーム/表示の説明と分析

ECDISが外部出力デバイスからデータを受領しない場合に作動す

る。

センサーアラームや表示がどこに表示されるか。

2行目のメッセージ上でアラームボタン又はフリーカーソルを使用

して、サウンドとディスプレイ上のメッセージを無効にする。

アラームのサブメニュー機能をオレンジのパラメータ返り値のま

まとして制限を設定するか、意図的に機能を停止する。

適切な対応は、動作と関連センサーの接続を確認することである。

14. ポート&データフィード(0.5時間)

訓練生はデータポートの確認と選択を行い、センサー入力値を評価する(T1

ch.8.2 & 8.3; B4 ch.10.4; B7参照)。

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50

14.1. 一次位置情報源と二次位置情報源の選択

14.2. 二次位置情報源への自動切り替えの監視

14.3. 各接続センサーのデータ参照システムに関する説明

測地システム。

アンテナの位置。

変換器の位置。

クロック/タイムソース。

14.4. 各接続センサーに割り当てられるデータポートの確認

14.5. 各付属センサーのデータストリームの監視、確認、及び限定的な範囲

での解読

センサーを選択し、データストリームを監視する(実環境又はシミ

ュレーション)。

センサーに関連する構文を全般的に認識する。

可能な場合、表示されている航海情報とデータを関連付ける。

14.6. ECDISに対するセンサー入力値の信頼性の評価

14.7. センサーポートの不適切な選択による表示情報への影響の評価

15. 海図の選択(0.5時間)

訓練生は海図の手動選択と自動選択に関するデモンストレーションを行い、不適

切な海図の選択によるECDISエラーの発生可能性について説明する(T1 ch.6.4

& 9.1; T3 ch.5.3 & 7.2; B7参照)。

15.1. 海図データの様々なローディング/変更方法のデモンストレーション

自動操作。

現在ロードされているルートに対する手動操作。

全ポートフォリオからの手動操作。

カーソル位置による手動表示。

操縦者の活動中におけるグラフィックカーソルの使用(詳細はレッ

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51

モデルコース 1.27 電子海図情報表示システム(ECDIS)の実用的使用

スン23 & 24の「ルート計画」及びレッスン29の「ユーザー海図」

に記載)。

15.2. 表示用の海図の不適切な選択による不正確性と不明確性の評価:

自船の位置が表示されている場合、海図データリストは縮尺別に分

類される。

自船の位置が表示されていない(別の画面で見る)場合、海図デー

タリストは名前別(アルファベット順)に分類される。

ECDISは 前面のレイヤーに 大縮尺のデータ( 小領域)を表示

するが、ユーザーはECDISをECDISモードに維持するために、フォー

マット別(特にENC)に優先順位を付けることができる。

自動海図ローディングはオン/オフの切り替えができる。また、ユ

ーザーが選択した海図を維持することもできる(固定)。

15.3. アップデートの内容を確認し、それらをSENCに含めるためのアップデ

ートの表示

内容を確認する。

それらがSENCに含まれていることを判断する。

15.4. 過度の拡大(ズームイン)と過度の縮小(ズームアウト)によるデー

タと海図のアラームに関する説明と分析

15.5. WGS84以外の測地データを使用したデータと海図のアラームに関する

説明と分析

16. 海図情報(1.0時間)

訓練生は表示情報を状況に適合させ、海図と海図のオブジェクトに関する情報を

どのようにして得るかデモンストレーションを行う(T1 ch.6.4.6; T3 ch.7.2; B7

参照)。

16.1. ポジションモニタリング、ルートモニタリング、ルート作成/編集、

試験操縦、ユーザー定義レイヤーの作成とアクセスに適した機能の適

航行監視中の継続的なポジショニング。

試験操縦。

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ルート計画とスケジューリング。

ユーザー海図の作成。

その他の機能。

16.2. 海図に記入されたオブジェクトに関する情報の入手

ベクトル海図の場合

ラスター海図の場合:同じフレームサイズの対応する上述のベクト

ル海図の情報のみが入手できる。

16.3. 自船の位置に基づく航路標識表示の変更方法のデモンストレーション

16.4. 表示カテゴリの不適切な選択による解釈ミスのデモンストレーション

17. 設定変更(1.0時間)

訓練生は操作設定の検証及び航行手順の安全評価の方法に関するデモンストレ

ーションを行う(T1 ch.6.3 & 8.6; T3 ch.7.6; B7参照)。

17.1. ハードウェア、キーボード、マウス/トラックボール、センサーデー

タ、及び海図データの主要機能の手動テスト

17.2. 関連するタスクパネル/主情報パネル上における適切な操作設定の確

認及び/又は選択

主タスクパネル。

主情報パネル。

船舶、アラーム、海図、航海日誌、ARPA。

構成、追加情報(ユーザーレイヤー)、ルート

17.3. アラーム/機能ステータスの表示に関する評価

アラーム、時間、位置の更新、船首方位、速度記録。

ルートの維持、進路ベクトル、海図の縮尺、航路、航海日誌の機能。

17.4. 安全値の不適切な選択による解釈ミスのデモンストレーション

安全水深、安全等深線。

小深度のアラーム、対地アラーム。

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53

モデルコース 1.27 電子海図情報表示システム(ECDIS)の実用的使用

ルート沿いの航海に対するアラーム。

17.5. 航路距離と精度の調整

17.6. ログテーブル(航海記録)に記録されている情報範囲の評価

航行状況(自船の進行状況、海図の表示等)を確認する。

航路事象を確認する(手書きの記録を含む)。

システム事象を確認する。

追加データグループを表示する。

18. 海図の縮尺(0.5時間)

訓練生は海図の縮尺の使用方法に関するデモンストレーションを行い、縮尺によ

る解釈ミスについて説明し、これを回避する(T1 ch.6.4; T3 ch.7.2.4; B7参照)。

18.1. 電子海図表示の縮尺のデモンストレーション

縮尺値を(調整して)選択する。

海図の自動ロードのスイッチを入れた状態で、ズーム機能を使う。

カーソルを使用して注目する領域周辺に四辺形を作成し、拡大す

る。

18.2. 原本の紙海図と同じ縮尺で電子海図を表示するために使う。

18.3. 海図の縮尺に関する追加情報の適用

水平画面の長さ。

海図の縮尺、縮尺バー、太細の縮尺角度の表示。

使用縮尺におけるディスプレイ全体の算定範囲(距離)。

縮尺の選択に関する警告メッセージ。

18.4. 縮尺による解釈ミスの確認

ディスプレイを過度に拡大した場合、海図とユーザー情報が拡散

し、距離を概算するために頻繁に使用するキューが失われる可能性

がある。

ディスプレイを過度に縮小した場合、一部の情報が見えなくなる可

能性がある。

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SCAMINをオフにして過度に縮小した場合、データ密度により許容で

きないクラッターが生じる可能性がある。

適切な縮尺の選択を確認する。

19. 情報レイヤー(1.0時間)

訓練生は情報レイヤーを理解し、十分に使いこなせることを示す(T1 ch.6.5 &

6.9 & 7.3; T3 ch.7.5.6 & 7.2.1 & 7.3.2; B7参照)。

19.1. 海図データがロードされ、海図領域が過度に縮小された場合の情報レ

イヤーとステータス表示に対する影響の観察

海図データがロードされたときの本来の縮尺を決定する。

海図領域が過度に縮小されたときのSCAMIN機能のオンとオフの違

いを観察する。

縮尺値の表示を観察する。

ENCに重ねるレイヤーの枚数は表示がぼやけない程度にする。

19.2. 適切な表示モードのレビューと適用

昼又は夜の表示。

縮尺。

表示の種類。

19.3. 「その他のすべての情報」の表示カテゴリにおける情報オプションの

選択

19.4. 情報レイヤー、ユーザー海図レイヤー、及びイベントグラフィックの

識別

情報レイヤー(海図表示カテゴリ)及びユーザー海図レイヤー。

手動による修正、航海計画記録などの海図の入力事項の追加及び削

除。

ディスプレイ上の事象及び航海日誌に記載された記録の追加。

19.5. 表示情報の喪失を示すインジケータへの対応

レイヤーの喪失。

位置の喪失。

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モデルコース 1.27 電子海図情報表示システム(ECDIS)の実用的使用

演習2 シミュレータ演習 ― 外洋(2.0時間)

訓練生は外洋のルートモニタリングのためのタスクグループを構成する特定の

機能を操作し、基本的な安全な統合ナビゲーションに関連する情報を取得する。

威嚇的ではないARPAターゲットによる外洋環境で安全に航行しな

がら、ECDIS上で以下のタスクグループのデモンストレーションを

行う。

-海域の監視

-インストラクターが設定した事前定義済みルートの使用

-事前定義済みの定置による位置の確認

-事前定義済みのユーザーレイヤーの選択

-ベクトル時間、ディスプレイのリセット、情報レイヤー、アラー

ム、進路、センサー、自船の構成などの設定の確認

インストラクター向けのガイドライン

演習概要に従ってシミュレーション演習を実施する。

-シミュレーションパラメータを設定する

-訓練生に事前定義済みルートを示す

-訓練生によるECDISの使用を遠隔監視する

-訓練生に要点を伝え、訓練生から報告を受ける

-演習概要に基づいてタスクの達成度を評価する

期待される成果

ECDISによる航行

単独当直

ユーザーレイヤーやアラームの適切な選択

手動位置の測位ができる

20. システム&ポジションアラーム(0.5時間) 訓練生はシステムと位置に関するステータス表示とアラームについて説明し、適

切な対応を示す(T1 ch.8.3; T3 ch.7.5.3; B7参照)

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20.1. 一次/二次測位システムのアラームの確認と対応

一次(二次)システムの障害。

一次(二次)システムの差動モードの喪失。

一次(二次)システムの位置の逸脱。

エコーリファレンスの損失。

一次(二次)システムのデータがWGS84ではない。

一次(二次)システムの不確かな位置。

20.2. 海図関連のアラームの確認と対応

誤った海図。

非公式のデータ。

不明データ。

AG(対地)モニタリングオフ。

20.3. インストラクターは、特にどのアラームがユーザー設定可能かに重点

を置いて説明し、適切な設定の仕方を教えなければならない。とりわ

け、「特殊な条件下で、ある地域に接近する」ためのアラームや表示

の設定制御について説明することは、非常に重要である。設定を間違

うと、アラームが頻繁に鳴り操作の邪魔になるからである。

21. 水深&等深線アラーム(1.0時間)

訓練生はルート計画とモニタリングにおける水深と等深線に関するステータス

表示とアラームについて説明し、適切な対応を示す(T1 ch.8.4 & 6.5; T3

ch.7.5; B7参照)。

21.1. ルートモニタリングアラームの説明

安全等深線の逸脱。

禁止領域又はその他の領域。

トラックエラー(XTE)の許容値。

航路定点の到着円。

安全等深線の変更。

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モデルコース 1.27 電子海図情報表示システム(ECDIS)の実用的使用

21.2. 深度関連情報の確認

安全水深。

海図に記載された障害物。

水深測定器関連のアラーム。

水深測定器からの深度。

安全等深線の水深値。

21.3. ルートモニタリングに対する安全値の設定

安全等深線は海図データ内の既存の等深線のみを使用する。

望ましいアンダーキールクリアランスのための安全等深線の値を

設定する。

安全水深の値を設定する。

地点測深表示カテゴリの値を設定する。

21.4. 安全な水域に関する限度の設定

4つのシェードのENCオプションを適用する。

浅い等深線は少なくとも自船の深喫水以上に設定すべきである。

航行上の危険。

水深測定器の限界。

指定の安全等深線に接近する前進時間を設定する。

潮汐のある水域では、安全等深線より浅い水域を航行しなければな

らない場合がある。ほかの情報モードをすべて使う必要性を強調す

ること。

■授業計画:ECDIS によるルート計画と監視(9.0時間)

22. 船舶の操縦性能(0.5時間)

23. 表によるルート計画(1.0時間)

24. 海図によるルート計画(2.0時間)

25. 航路の制限(0.5時間)

26. 安全性確認計画(0.5時間)

27. ナビゲーション付加情報(0.5時間)

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28. ルートスケジュール(0.5時間)

29. ルート計画におけるユーザー海図(1.0時間)

演習3 シミュレータ演習 ― 沿岸水域(2.0時間)

22. 船舶の操縦性能(0.5時間)

訓練生はルート計画と操縦情報のディスプレイに表示されている船舶詳細の使

用方法に関するデモンストレーションを行い、解釈ミスの可能性について説明す

る(T1 ch.8.5; T3 ch.7.5 & 8.3; B7参照)。

22.1. 航路定点に接近時のホイールオーバー警告方法の決定、たとえば

自船の旋回半径の操船特性はECDISルート計画における曲線航路に

当てはまる。

円周がECDISルート上のホイールオーバーポイントと交差する、航

路定点を中心とした到着円。

22.2. 航海士が、特にECDISがオートパイロットに接続されている場合に、ポ

ジショニングを確認する必要があることの説明

一般的に、「観察対象の位置」のみが制御される。

ECDISの曲線予測システムを使用する場合は、注意が必要である。

高度な流体力学の計算ではなく、瞬間的な旋回率しか推定できず、

精度が不十分な場合がある。

23. 表によるルート計画(1.0時間)

訓練生は表によるルート計画に関するすべての機能を操作し、すべての関連情報

を取得する(T1 ch.7.1 & 7.5; T3 ch.7.4; B7参照)。

23.1. 保存されたルート計画の取得

ルートモニタリング用。

計画とレビュー用。

航行中に一時的な変更ができるように、作業中のルートとして名前

を変更する。

表に表示されている航路定点リストから航路と距離を取得する。

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モデルコース 1.27 電子海図情報表示システム(ECDIS)の実用的使用

23.2. 計画、安全性レビュー、監視に対する既存ルートの承認

系統的な検査方法を用いる。

ルートに沿って適切な海図データを活用する。

アラームパラメータを設定する。

クロストラック区域を調整する。

安全分析のために海図上でスケールインを行う。

日付依存データ用のルートをチェックする。

23.3. 航路全体の計画のための海域及び必要な水域の選択

23.4. ルート計画表に航路定点データをアルファベット/数値で入力するこ

とによるルート計画の作成

23.5. 表内の航路定点の編集、追加、削除による航路計画の調整

23.6. 曲線航路計画及びホイールオーバー表示の調整

自船操縦の特徴。

航路定点のスペーシングを含めた安全な航行計画の要件。

23.7. ルートファイルの命名、リンク、名前の変更、アーカイブ、取得、及

び削除の手順確立

ルートファイルの命名/リンク/名前変更テクニック。

ルート計画のアーカイビング。

ルート計画の削除。

24. 海図によるルート計画(2.0時間)

訓練生は海図によるルート計画に関するすべての機能を操作し、すべての関連情

報を取得する(T1 ch.7.2 & 7.3; T3 ch.7.4; B7参照)。

24.1. 航路全体の計画のための海域及び必要な水域の選択

24.2. ECDISディスプレイへの航路定点の直接入力によるルートの作成

初にルート区間を大まかに描き入れることが望ましい(航程線と

大圏を使用して)。

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レーダー/視覚ナビゲーション、トラフィックパターン、ENCデー

タの質の指標などの実際的な航行上の考慮事項に基づき、航路定点

位置、進路区域、及び旋回半径の微調整を行う(信頼地帯)。

24.3. 航路定点のグラフィック編集によるルートの調整

24.4. 海図からの航路と距離の取得

カーソルの位置。

ルートセグメントの選択。

24.5. 関連ルート計画情報の取得

海上風、波、表層海流に関する情報。

潮高と海流。

水路書誌(港湾情報)。

特殊な状況(投錨、海図データの品質、特殊区域、操縦術、検疫等)。

25. 航路の制限(0.5時間)

訓練生はルート計画における航路の制限を設定するためにすべての機能を操作

し、すべての関連情報を取得する(T1 ch.6.5.3 & 8.3; T3 ch.7.5; B7を参照)。

25.1. 船舶が監視中のルートに沿って進行中のときに使用されるアラーム設

定のレビュー

計画ルートで設定された進路角からの逸脱。

XTE(クロストラックエラー)がルートデータ表に設定された値を

超えている。

安全等深線の横断に関するガードベクトル。

特殊目的領域への侵入に関するガードベクトル。

孤立障害標識の横断に関するガードリング。

25.2. 過去に保存したルートのXTEの設定の修正

XTE区域の設定に基づいて、航行ルートにおける横断の危険性を再

確認する。

修正したルート区間に沿って進みながら、アラームトリガを観察す

る。

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モデルコース 1.27 電子海図情報表示システム(ECDIS)の実用的使用

適切な縮尺の海図データに基づいて、結果をグラフィカルに検討す

る。

26. 安全性確認計画(0.5時間)

訓練生はルートにおける航行への危険の存在を確認するためにすべての機能を

操作し、すべての関連情報を取得する(T1 ch.7.4 & 7.7; T3 ch.7.4; B7参照)。

26.1. 過去に作成/保存したルートにおけるクロストラック距離の設定に従

った航行の横断の危険性に関する確認

安全等深線。

孤立障害。

特殊目的領域の制限。

26.2. 現在作成中のルートの上述の危険性に関する確認

セーフティチェックを用いて、ルート沿いに航路定点と区間を追加

する。

セーフティチェックを用いて、既存の区間又は航路定点を変更す

る。

26.3. 安全性確認に基づくルート計画の評価

予測可能な航路沿いの危険要因をすべて検討し、それが確実に安全

であるかどうかを評価する。

終的に取るべきルートを評価する。

どの通過領域と通過点が重要であるかを評価する。

孤立障害の場合、ECDISアラームが作動しない場合があるので、安

全性確認の機能を使用するほか、 大縮尺ENCを手動でチェックす

る必要がある。

27. ナビゲーション付加情報(0.5時間)

27.1. ECDISデータベースで入手できる各種水文気象データについての説明、

たとえば

潮流

海流

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気候

天候

28. ルートスケジュール(0.5時間)

訓練生はルートスケジューリングに関するすべての機能を操作し、すべての関連

情報を取得する(T1 ch.7.5; T3 ch.7.5 & 7.7; B7参照)。

28.1. 船舶がルートに沿って航行している際の、ルートスケジュール設定か

らの逸脱の監視

28.2. 予想通過時間の判断

ルートスケジュール表を使用してルートに沿って進む。

計算の際に表層海流と潮流の影響を考慮に入れる。

航路定点のETDとETAからスケジュールを計算する。

航路定点のETDと対水速力からスケジュールを計算する。

必要に応じて入力データを編集する。

28.3. 計画ルート沿いの進行の計算に対する監視

ルート及びそのルートに対して作成したルートスケジュールをロ

ードする。

ルートを監視する。

ECDIS情報パネルにルートモニタリングデータを表示する。

ECDIS情報パネルにスケジュール情報を表示する。

28.4. ECDISのETAアプリケーションを使用した監視ルート上の選定航路定点

における時間又は速度の計算

表示された航路定点(及びディスプレイ)に対する対水速力(STG)

航路定点におけるETA。

29. ルート計画におけるユーザー海図(1.5時間)

訓練生は自身(ユーザー)の海図入力と計画記録の使用に関連するすべてのナビ

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モデルコース 1.27 電子海図情報表示システム(ECDIS)の実用的使用

ゲーション機能を操作する(T1 ch.7.3; T3 ch.7.3; B7参照)。

29.1. 船員記録(ユーザー海図)を作成するためのECDIS機能のレビュー

ユーザー海図はSENC内で特定属性を有する追加的な図形/文字レ

イヤーを作成するためのベクトルエディタである。

ユーザー海図のオブジェクトは、あらゆる海図データを変更するこ

となく、その海図上に重ねて表示される(レイヤー化)。

システムディレクトリには多くのユーザー海図を保存することが

できるが、通常同時に表示されるのは1-2件である。

1つのレイヤーに属する航海計画の記録とオブジェクトは他のレイ

ヤーに属するファイルと一つにまとめ、新しい名前を付けて、又は

名前を変えずに、合成ファイルとして再保存することができる。

また、ユーザー海図は、様々な記録へのリンクやハイパーリンクさ

れたファイルを示す記号で構成される場合がある。これには写真や

文書などが含まれる。

29.2. ユーザー海図に関する効果的な方針の策定

それぞれのファイル、海図、又はレイヤーの目的(訂正、注記、参

照等)。

表示データ及びデータファイルへのリンクに関する内容。

目的と地理的位置に基づいた命名。

29.3. 表示用のユーザー海図の選択

適切なディレクトリに保存済みの各種ユーザー海図をロード/ア

ンロードする。

表示用の特定の情報レイヤーを選択する。

ユーザー海図の保存、再保存、名前の変更を行う(命名方法に従う)。

29.4. ユーザー海図の作成と修正のためのグラフィックエディタの使用

様々な種類の新しいオブジェクトを、縮尺の使用に注意を払いなが

ら、必要な位置に追加する。

オブジェクトと情報の編集。

オブジェクトの移動。

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ユーザー海図の結合。

29.5. ユーザー海図上のアンカーサークルガードゾーンの作成、保存、移動

アンカーサークルにはECDISの共通基準位置(CCRP)によって引き

起こされる「危険」属性が含まれる場合がある。

直径は船舶の 大旋回サークルを示していなくてはならない。

ユーザー海図のアンカーサークルは、錨が降ろされた時点の船舶の

錨鎖管上に位置を合わせる必要がある。

ECDISに搭載されているアンカーガードゾーン機能(GNSS装置に搭

載されているものと同様)は通常、船舶の碇の位置や船舶の旋回サ

ークルを参照しない。

演習3 シミュレータ演習 ― 沿岸水域及び制限水域(2.0時間)

訓練生は外洋のルートモニタリングのためのタスクグループを構成する特定の

機能を操作し、基本的な安全な統合ナビゲーションに関連する情報を取得する。

威嚇的ではないARPAターゲットによる沿岸環境で安全に航行しな

がら、ECDIS上で以下のタスクグループのデモンストレーションを

行う。

-海域の監視

-ルートスケジュールを含め、訓練生が作成したルートの使用

-訓練生が作成したユーザーレイヤーの選択

-代替方法による自船の位置の確認

-ベクトル時間、ディスプレイのリセット、情報レイヤー、アラー

ム、進路、センサー、自船の構成などの設定の確認

-潮流、海流、風、波などの環境条件の評価,

-指示に従った選定ルートの修正、安全性の確認、ルートスケジュ

ールの調整

インストラクター向けのガイドライン

演習概要に従ってシミュレーション演習を実施する。

シミュレーションパラメータを設定する。

訓練生によるECDISの使用の監視

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モデルコース 1.27 電子海図情報表示システム(ECDIS)の実用的使用

訓練生に要点を伝え、訓練生から報告を受ける。

演習概要に基づいてタスクの達成度を評価する。

期待される成果

ECDISによる航行

単独当直

ユーザーレイヤーやアラームの適切な選択

ルートの監視ができる。

レーダー/ARPAオーバーレイの使用

ルートの修正ができる。

船舶の喫水とアンダーキールクリアランスを考慮してルートを作

成できる。

■授業計画:ECDIS のターゲット、海図及びシステム(6.5時間)

30. ARPA/レーダーオーバーレイ(0.5時間)

31. AIS の機能(0.5時間)

32. 海図データの入手&インストール(1.5時間)

33. 海図データのインストール(1.0時間)

演習4 シミュレータ演習 – 制限水域(ECDIS による高度な統合ナビゲー

ション)(2.0時間)

34. システムのリセット&バックアップ(0.5時間)

35. ECDIS データのアーカイブとデータログの記録(0.5時間)

30. ARPA/レーダーオーバーレイ(0.5時間)

訓練生はECDISのARPA機能の使用方法に関するデモンストレーションを行う(T1

ch.8.4.3; T3 ch.8.2.3 & 8.5; B7参照)。

30.1. ARPAターゲットに対するセンサーの設定要件の検討

ARPA出力に適合した関連COMポートと通信速度の識別。

センサー基準の正しい位置(共通基準位置)。

2009年1月1日以前にECDISを搭載した船舶では、ARPA オーバーレイ

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66

機能がない場合がある。

30.2. ARPA計算に使用される速度と進路のインプットの決定

30.3. ターゲット情報表示へのアクセス

カーソル(マウスを合わせる)。

データフィールドによる並べ替えが可能なターゲット表。

表のターゲット名フィールドは、海図への直接的な表示リンクを含

む場合がある。

30.4. ターゲット記号の特性の解釈

ARPAの番号別に、あるいはターゲット表に別名を記入することで識

別する。

レーダーが定める位置におけるベクトルとグリーンサークル。

CPAとTCPAの接近限界を超えたときにアラームを設定することがで

きる。

自船に対して設定した値と同じベクトル長。

ターゲットトラックはデイリーファイルに保存され、ディスプレイ

に表示するときに選択可能である。

30.5. レーダーオーバーレイに対するユーザーインターフェース制御の操作

ターゲット追跡

画像の記録

オーバーレイ画像は単一のインターフェースオプションによりデ

ィスプレイから削除できる。

30.6. イメージオフセット源のデモンストレーション

海図データとレーダーデータ間の不一致が生じる場合がある。

センサー位置の設定

レーダーデータ入力の進路のずれ(送受信機の問題などによる)。

位置センサーのエラー

海図に記載されていないオブジェクト、海図の記載が間違っている

オブジェクト、及び海図データのエラー

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67

モデルコース 1.27 電子海図情報表示システム(ECDIS)の実用的使用

30.7. ECDISが追跡するターゲットデータ計算源の決定

ECDISの速度と進路の入力はECDISが追跡するターゲットのデータ

計算に使用される。

レーダーの移動ベクトルは対地ではなく対水となる場合がある。

CPAとTCPAはレーダーとは別個にECDISから得られる。

30.8 ARPAで補足した基準点を使った自船の位置の補正

ARPA/レーダーで補足した基準点を使った自船の位置の補正

レーダー航法技術を活用し、既知のオブジェクトを基にした位置の

チェック

31. AISの機能(0.5時間)

訓練生はECDISの船舶自動識別装置(AIS)の使用方法に関するデモンストレーシ

ョンを行う(T1 ch.8.4.5 & 6.9; T3 ch.8.4; B4 ch.10.3; B7参照)。

31.1. 船舶自動識別装置(AIS)とECDISの接続によって実現される機能の説

AISを送信する他のターゲットに関する識別/航行情報の受信。

ターゲットの対地運動の分析。

ECDISからの自船の静的/航海データの潜在的制御。

データ文字列は相当量のカプセル化データで構成される。

データ文字列は、視界が限られた典型的なラインのVHFデータリン

ク(VDL)により送信される。

2009年1月1日以前にECDISを搭載した船舶では、AISセンサー入力が

ない場合がある。

31.2. AISターゲットに対するセンサーの設定要件の検討

AISインターフェースに適合した関連COMポートと通信速度の識別。

センサー基準の正しい位置(共通基準位置)。

31.3. AISターゲットに対するアラーム及びその他の設定の決定

AISターゲットに対するアラーム及びその他の設定はECDISターゲ

ットパネルで行われる。

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68

AISターゲットに関するCPAとTCPAの計算はECDISからの速度と進路

の入力値に基づいて行われる。

31.4. ターゲット情報表示オプションへのアクセス

カーソル。

データフィールドによる並べ替えが可能なターゲット表。

表のターゲット名フィールドは、海図への直接的な表示リンクを含

む場合がある。

31.5. AISターゲット記号の特性の解釈

記号の位置はターゲットが送信した(D)GNSSアンテナの位置を示し

ている。

AISターゲットは、船舶の船首方位(送信された場合)を示すグリ

ーンの二等辺三角形としてグラフィック表示される(旋回方向を示

すフラグを含む)。

ECDISのCOG計算に基づく自船に対して設定した値と同じ長さの追

加ベクトル。

COG/SOGベクトルの船首方位表示器からの逸脱はターゲットの偏流

角を示している。

ターゲットは衝突回避のために、追跡ターゲットと同じ原則に基づ

き、ECDISによって処理される。

静的情報が確立するまではMMSI番号が識別に用いられる。その後、

船名とコールサインが表示される(表に別名を記入することによ

り)。

ECDIS上のARPAの追跡は既存のAISターゲットと関連付けることが

できる。

CPAとTCPAの接近限界を超えたときにアラームを設定することがで

きる。

ターゲットトラックはデイリーファイルに保存され、ディスプレイ

に表示するときに選択可能である。

32. 海図データの入手&インストール(1.5時間)

訓練生は海図ライセンスソフトウエアと各種フォーマットの海図データをイン

ストールする(T1 ch.4.4; T3 ch.9.2 & 9.3 & 9.4; B7参照)。

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モデルコース 1.27 電子海図情報表示システム(ECDIS)の実用的使用

32.1. 海図データの構造、用語、インストール手順のレビュー

SENC及び各種フォーマット

オペレーターがデータの入手、インストール/アップデート、選択

を行い、ECDISが初期化、ロードを行う(レッスン12で紹介)。

32.2. ECDISに対する海図フォーマットの要件のレビュー

ECDISは、正式に承認を受けた政府水路部が発行する正式なフォー

マットの海図を使用する必要がある。

これらの海図は現在、S 57指定ENC(各地域の水路部が作成した)

である。現在、S-101 ENC製品規格が開発中である。 近、S-100 IHO

ユニバーサル水路データモデルが開発された。これは水路データ/

アプリケーションをより簡単に地理空間ソリューションに組み込

むことができ、 終的にはS-57に取って代わる予定である。

32.3. ENCに対するデータ供給源の検討

Primar(ノルウェー水路部による運営)、IC-ENC(英国水路部によ

る運営)などの地域/国際調整センター(RENC)がENCデータの配

布に携わっている。

これらのセンターは参加国の水路部から海図データベースを収集

し、品質基準が満たされているか確認し、それらのデータをエンド

ユーザーが入手できるように配布業者に提供する。

32.4. SENC変換のためのデータ供給源の検討

ENCプロバイダのPrimar、IC-ENC、NOAAからSENCサービスにより配

布されるS 57/ENCは、インストールとアップデートを簡素化するた

めにCD8 SENCフォーマットに変換されている。

S-57(ENC)フォーマットの海図をSENCフォーマットに変換する手

順はDNV(ノルウェー船級協会)とIHOの要件に依る。

32.5. 各種フォーマットのライセンス構造の検討及びインストールの練習

ライセンス/許可構造は海図データフォーマットによって異なる。

ライセンス/許可のインストールは通常、ECDISに使用する海図デ

ータ管理ユーティリティによって行われる。

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32.6. インストール履歴に関する情報の抽出

インストール中、インストール履歴は保持される。

履歴には個々の海図/セルの追加と削除が含まれる。

履歴ファイルには通常、ECDISに使用する海図データ管理ユーティ

リティ経由でアクセスできる。

33. 補正図のインストール(1.0時間)

訓練生は、電子海図の手動/自動アップデート(補正)を行い、アップデートの

重要性を評価する(T1 ch.4.5 & 6.3; T3 ch.10; B7参照)。

33.1. 電子海図データが 新の補正により維持される理由の説明

安全な航海のためには、補正によりデータを常に 新の状態にして

おく必要がある。

SOLASが定義する耐航性の責務を果たすためには、予定してい

る航海に対する 新の海図が必要である。

33.2. マニュアル補正タスクや適切なECDIS機能による海図オブジェクトの

追加又は変更

ECDISのマニュアル補正タスクを使用して、海図オブジェクトレイ

ヤーを追加又は変更することができる。

マニュアル補正は属性とリンクを含み、非表示、タイムアクティブ、

削除が可能である。

33.3. 自動更新を利用するための製品ライセンスオプションの検討

海図データライセンスのオプションには自動更新サービスが含ま

れることがある。

専有海図データに関するメンテナンスとみなされる場合がある。

33.4. 様々な手法を用いた各種自動更新フォーマットのインストール

-ECDISプログラムに使用する海図管理ユーティリティを使って、入

手可能であれば以下をインストールする。

-入手又はダウンロードしたENCの更新

-入手又はダウンロードしたRNCの更新パッチファイルT&P(一時関

係)通報や航行警告用データ。一時関係通報/航行警告のオーバ

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モデルコース 1.27 電子海図情報表示システム(ECDIS)の実用的使用

ーレイは標準のECDIS海図表示の上に追加情報として重ねて表示

される。

海図などの更新を行う際は注意が必要であることを説明する。制限

水域や船舶交通量の多い水域を通過中は更新は行わない。出航前に

行うことが望ましい。

33.5. 更新履歴に関する情報の抽出

アップデート中、インストール履歴は保持される。

履歴には個々の海図/セルの追加と削除が含まれる。

履歴ファイルには通常、ECDISに使用する海図データ管理ユーティ

リティ経由でアクセスできる。

演習4 シミュレータ演習 ― 制限水域(2.0時間)

訓練生は、制限水域内の航路監視を行いながら、安全な航海のためのすべての関

連情報を取得し、衝突回避のための各機能を操作する。

特定の水域に複数のターゲットが存在する制限水域で安全に航行

しながら、ECDIS上で以下のタスクグループのデモンストレーショ

ンを行う。

-海域の監視

-ルートスケジュールを含め、訓練生が作成したルートの使用

-訓練生が作成したユーザーレイヤーの選択

-1つ又は複数のセンサーインプットが失われた場合に代替方法に

より自船の位置を確認する。

-ベクトル時間、ディスプレイのリセット、情報レイヤー、アラー

ム、進路、センサー、自船の構成などの設定の確認

-COLREGSの遵守

-落水警報(MOB)機能の使用

インストラクター向けのガイドライン

演習概要に従ってシミュレーション演習を実施する。

-シミュレーションパラメータを設定する。

-訓練生のECDISの使用の仕方を監視する。

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-訓練生に要点を伝え、訓練生から報告を受ける。

-演習概要に基づいてタスクの達成度を査定する。

-1つあるいは複数のセンサーインプットの消失をシミュレーショ

ンする。

-落水のシミュレーションをする。

-推測航法を用いる。

期待される成果

ECDISによる航行

単独当直

ルート計画ができる。

ルートの監視

代替方法により測位ができる。

落水者の救助ができる。

34. システムのリセット&バックアップ(0.5時間)

訓練生は、ECDISに不具合が生じた場合に、基本的なトラブルシューティングを

実行し、バックアップシステムを使用する(T1 ch.8.7 & 8.8; T3 ch.11.3 &

11.4; B7参照)。

34.1. ECDISのバックアップ処理規則の目的に関する説明

ECDISのバックアップ処理に関する規則は、電子/紙海図のオプシ

ョンを通じてバックアップが確実に行われることを意図している。

ナビゲーションセンサーに接続され、「マスター」又は「スレーブ」

ステータスを割り当てた同一のECDISのワークステーション2台を

同じコンピュータネットワークに連結することにより、システムの

1つに障害が発生した場合にデータを失うことなく切り替えができ

るようにする。

ECDIS機器が1式のみ設置されている場合(単独型)、又はENCが予

定ルートを網羅していない場合は(ENCデータの代わりにラスター

式又は専有海図データが提供されているなど)、一連の 新の紙海

図が利用可能でなくてはならない。

バックアップ処理は、航海の主要手段としてのECDISの性能低下又

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73

モデルコース 1.27 電子海図情報表示システム(ECDIS)の実用的使用

は損失が生じた場合に、航海の安全を確保することを目的としてい

る。

34.2. 単独型ECDISの故障時におけるバックアップ手順の説明

海図には予定ルートが含まれる。

制限水域内を航行中の船舶の位置の定期的なプロッティング。

34.3. (マスター)ECDISの故障時におけるネットワーク接続によるバックア

ップ手順の説明

ルート、海図データ、ユーザーデータの事前の同一化を含む。

34.4. ECDISのトラブルシューティングルーチンの説明、たとえば

損傷した初期化及び構成ファイル。

ケーブルの整合性とCOMポートの整合性。

センサーの配置と構成。

34.5. トラブルシューティング中の航行の安全性に対する影響の認識

軌跡表示、オートパイロット機能、及びECDISからのデータフィー

ドを得るその他のシステムを含む。

34.6. ECDISワークステーション故障中のデータ保存に対する影響の認識

センサーが継続的に機能しているにもかかわらず、ECDISのワーク

ステーションの故障中にはすべてのデータ保存が停止する。

ECDISのワークステーションの復旧直後には、ディスプレイ上のグ

ラフィックのギャップとそれに付随する電子航海日誌データのギ

ャップが生じる。

35. ECDISデータのアーカイブとデータログの記録(0.5時間)

35.1. ECDISデータ管理を使用したECDIS操作関連ファイルの処理の説明

様々な航行データファイルグループ(航海日誌、自船の軌跡、ター

ゲットの軌跡、ユーザー海図、ルート、船舶のモデル、システムロ

グ、S57ログ)を選択する。

35.2. ECDISデータ管理による選択データファイルの記録媒体間の転送の説

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ファイルの取り込みと保存のためのECDISディレクトリ構造を認識

する。

他のディレクトリやドライブにコピー又は移動できるファイルを

認識する。

35.3. ECDISにおける航海日誌タスクの要件と機能のレビュー、たとえば

航海記録は24時間ごと(グリニッジ標準時の午前零時に日付が変わ

る)のデータファイルで構成されている。

日付変更時に、すべてのアラーム機能と設定条件の全ステータスチ

ェックを行う。

次の時点におけるすべてのフィールドの収集

-航路定点と当直の交代(基本)

-手動トリガイベント

-ディスプレイのリセット(真運動と相対運動)と縮尺の変更によ

るスクリーン座標の変更

-表示海図データの変更

-アラームのステータスと条件の変更

海図データフィールドには表示海図番号(ENCの場合は情報源、版、

日付、セルも含む)が含まれる。

モニタリングで使用されるルート又はルートスケジュールは含ま

れない。

35.4. 自船の軌跡及びAIS、ARPA、オーバーレイのターゲットの軌跡の表示機

能に関するレビュー

大1秒ごとの位置/船首方位データを含むが、ECDISとその設定に

よってはその頻度が低い場合がある。

当日ではなく、別の日付の自船の軌跡履歴を表示することもできる

(ただし、意図していなかった場合、不明確さをもたらす)。

表示される軌跡の日付にかかわらず、直近の6分間の軌跡が表示さ

れる。

ARPA、レーダーオーバーレイ、AIS(接続されたセンサーとして)

で追跡されるターゲットはトラックファイルに含まれる。

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モデルコース 1.27 電子海図情報表示システム(ECDIS)の実用的使用

■授業計画:ECDIS の責務及び評価(6.0時間)

36. 責務(2.0時間)

37. ECDIS による効果的な航行(1.0時間)

評価1 文書による評価(1.0時間)

評価2 シミュレーション評価 ― 沿岸水域及び制限水域(2.0時間)

36. 責務(2.0時間)

訓練生はECDISの使用における重要な法的側面と責務について説明する(R1; R3;

R5; R6; R7; T1 ch.5; T3 ch.13.4参照)。

36.1. COLREGSのレビュー

現在のところCOLREGSでは、ECDIS(又は測位やAIS)につい

ては特に言及されていない。

ただしECDISの使用は、あらゆる視界状況下の船舶の航行において

「利用できるあらゆる手段」(監視(5)、衝突のリスク(7))という

言い回しで暗黙的に表現されている(規則4-10)。

36.2. SOLAS改訂版のレビュー

不完全又は未更新の海図データを用いてECSとECDISを操作したこ

とが、 近起きた数件の大事故の要因だと考えられている。SOL

AS V/2, V/19 & V/27規則は以下の問題を取り上げている。

-海図の船舶搭載

-ENCフォーマットのベクトル海図と紙海図の等価性・

-その他のフォーマットの不等価性

SOLAS V/19は2009年6月に改正され、船舶へのECDISの搭載が

義務付けられた(MSC.282(86)参照)。

36.3. 機器や設備のIMO承認のレビュー

機器や設備についてはIEC 61174 ed. 3.0に明記されている(ECDIS

の操作/性能要件、試験方法、(購入のために)必要な試験結果)。

設備に関するその他の言及は以下の通りである。

-IMOの改定ECDIS性能基準、MSC.232(82)

-ECDISソフトウェアのメンテナンスに関するSN.1/Circ.266/Rev.1

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(2010年12月)も参照のこと。

-ブリッジの設計に関するSN.1/Circ.265(2007年10月)も参照のこ

と。

36.4. IMOの船舶搭載要件のレビュー

決議MSC 86/26付属書1により改正され、2009年6月に採択

(MSC.282(86))されたSOLAS ch. V Reg. 19.2.10及び19.2.11

は、2012年7月から2018年7月までの段階的スケジュールでECDISの

船舶搭載を義務付けている。

36.5. 国内のECDIS船舶搭載規則のレビュー(該当する場合)

寄港する船舶は、ECDISに関する国内の規則に従わなければならな

い場合がある。

36.6. 改訂版のSTCWコードのレビュー

現在、国際的なECDIS訓練要件は、2010年のマニラ改正によるST

CW 2010パートA(コード)に盛り込まれている。これは2012年1

月に発効し、5年間の移行期間が設けられている。

基本的なSTCWの能力として、ECDISを使用して航海の安全を維

持することが要求される。操作レベルの航海士と管理レベルの甲板

部士官では適用が異なる。

-表A-II/1、運用レベルの航行、500 GT以上

-表A-II/2、管理レベルの航行、500 GT以上

-表A-II/3、運用レベルの航行、500 GT未満

36.7. IMOのトレーニングガイダンスのレビュー(及びコースのレビュー)

現在、ECDISの運用のための訓練と評価に関する詳細な説明はST

CW 2010マニラ改正、パートB:ガイダンスに盛り込まれている

が、必須又は法的強制力があるとはみなされていない。

SN.1/Circ.207/Rev.1「RCDSとECDISの相違」も参照のこと。

この改定モデルコース1.27(2010年版)は、ECDISに関する主なS

TCWの能力「ECDISの使用による航海の安全の維持」の評価と資

格証明に関するガイダンスのための詳細な訓練コースを国内当局

に提供するものである。

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モデルコース 1.27 電子海図情報表示システム(ECDIS)の実用的使用

36.8. 船舶所有者と運航者に対するISM及びIMO要件のレビュー

ISMコード(国際船舶管理コード)の条項に基づき、船舶の所有

者又は運航者は、船員に各自の任務の理解を徹底させる責任があ

る。

規格に準拠したECDISを船舶に装備している場合、当該船舶の所有

者はECDISの訓練を提供し、ECDISのユーザーが使用前に適切な訓練

を受け、船舶搭載機器に精通するようにする必要がある。(ISM

コード第6.2、6.3、6.5項を参照のこと)。

STCW条約、規則1/14の条項

「会社の責務は、

1 A-1/14項の条項に基づき、各行政機関は、各社が、自社の船舶

の船員を現行の条約に従って配置するよう責任を負わせなければ

ならない。さらに、かかる会社が以下の義務を果たすように求めな

ければならない。

....船舶の各所に配置された船員が、個々の任務や、個々の日常/

非常時の任務に関係する船舶全体の配置、設備、機器、手順、船舶

の特性に精通しているようにすること。」

37. ECDISによる効果的な航行(1.0時間)

訓練生はECDISを使用した効果的な航法について説明する(T1 ch.10.2; T3

ch.7.3 & 8.1 & 11.2 & 16参照)。

37.1. ECDISを組み入れたブリッジ機能の説明

ECDISは多くの重要なブリッジ機能を支援するために使用すること

ができるが、このような支援には自身の技能と知識を必要とする。

以下は追加ブリッジ機能の構成要素である。

-視覚的監視 ― 効果的な監視、視覚的接触の検証

-計画 ― 海図、更新、ルート、気象予報、気象航法

-運航 ― 進路変更、推測航法、船位、レーダーオーバーレイ、位

置履歴、アラーム履歴

-操船 ― 状況(風、潮流、海流、氷、気候データ)、船舶の特性、

ドック、投錨、はしけ運搬、運河通過

-投錨 ― 位置の監視、その他の交通の監視、潮流

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37.2. ECDISを用いたサンプルブリッジ操作手順のレビュー

ECDISを用いた簡素化したブリッジ操作手順には以下が含まれる

(ただし、これらに限定されない)。

-ARPAとECDISによって補完された視覚的監視の維持

-電子機器が正常に機能していることの定期的な確認

-海図データベースと更新の管理

-航海計画・ファイルの維持(承認済みの保管コピーと合致)

37.3. ECDISを用いた安全かつ実用的な航行の定義

ECDISを用いた安全かつ実用的な航行には以下が含まれる(ただし、

これらに限定されない)。

-ECDIS装置単体の使用

・ 特定の状況に対する設定の選択

・ ブリッジチームのメンバーがECDISを見る目的は様々なので、

設定に融通性を持たせる必要がある。

・ ECDISのページ/スクリーンに対して視覚的走査手法を用い

る。

-ECDISに統合された機器の使用(情報の集中管理)

・ あらゆる他の可能な手段による、表示された情報のクロスチェ

ック(信頼性があっても検証する)

・ ECDISに接続されたセンサーの設定と機能の検証

-「部分的使用の問題」に関する認識(装置及び/又は手順に精通

していない場合、問題解決の実施時期を逸す、あるいは装置をま

ったく使用しないことがある。これらはいずれも、航海の安全を

高めることはできない)。したがって、航海士には次のことが求

められる。

・ 必要性が生じる前に、達成できることとできないことを知って

いる。

・ 限定的な使用により、設定が確認できず意図するところと異な

ってしまう場合があるということを知っている。

・ 紙海図で行ったことをECDIS上で実行する。

・ 他の手段では効果的又は効率的に実行できないことをECDIS上

で実行する。

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モデルコース 1.27 電子海図情報表示システム(ECDIS)の実用的使用

-以下の場合、ECDISの性能に影響を及ぼす場合がある。

・ ECDISは、ハードウェア、ソフトウェア及びデータを用いて運

用する。航海の安全のためには、ECDIS内のアプリケーション

ソフトウェアが性能基準に従って十分に機能し、航海用電子海

図(ENC)に含まれるすべての関連デジタル情報を表示できる

ことが重要である。

・ IHO基準の 新版に更新していないECDISは、SOLAS規

則V/19.2.1.4に規定されている海図搭載要件に適合しない可

能性がある。

・ 新版の製品仕様もしくはS-52プレゼンテーションライブラ

リーに適合するようECDISがアップグレードされていない場

合、 新の海図の地物が正しく表示できない可能性がある。加

えて、地物がENCに含まれているにもかかわらず、適切なアラ

ームや表示が作動しない場合もある。同様に、S-63データ保護

基準の 新版に準拠すべく更新されていないECDISも、ENCを復

号できなかったり正しく認証できなかったりして、読み込みや

インストールができない場合がある。

37.4. ECDIS 使用上の不具合

訓練生は、ECDISの不具合の性質、リスク、解決方法を十分認識し

なければならない。特に、ソフトウェア駆動システムであるECDIS

は不具合が起こりやすく、この件についての助言やガイダンスが時

おり船舶に対して与えられるということを理解する必要がある。

評価1 文書による評価(1.0時間)

訓練生はECDISの学習エリアで、ワークステーションのタスクやシミュレーショ

ン演習では活用されない知識と理解力を発揮する。

評価2 シミュレーション評価 ― 沿岸水域及び制限水域(2.0時間)

訓練生は通過のシミュレーションを正しく作成できる(付録5のシミュレータに

関する訓練生の評価の例を参照のこと)。

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80

■はじめに

評価の有効性は、どういうことを査定するのかをいかに正確に表現できるかによ

る。詳細な指導要目で使用している学習の目的、STCWコードの表A-II/1、

A-II/2、A-II/3の第3欄「能力の証明方法」及び第4欄「能力評価の基準」に評価

の方法と基準が述べられている。

インストラクターは査定を計画する際に、これらを参照しなければならない。

これは、技能の発揮と実用的な理解力は直接観察により判断され、知識と理論的

理解力は様々な質問形式による筆記試験により判断されるというSTCWの意図

と一致している。

■STCW2010コード

本条約に定める船員の訓練と査定は、STCW条約の規則 1/6 の規定に従って行

い、管理、監督、監視しなければならない。

査定については、IMOモデルコース(3.12及び 6.09A)にも詳述している。

■査定計画

査定計画は、具体的、測定可能、達成可能、現実的で、期限のある(SMART)もの

でなければならない。コースやレベルにより以下のような様々な査定方法が用い

られるが、すべて個別のニーズに合わせて調整する必要がある。

観察(口答試験、シミュレーション演習、実演)

質疑応答(筆記又は口答)

試験

シミュレーション(STCWコード2010の A-I/12 項も参照のこと)

■妥当性

評価方法は明確に定義された目的に基づき、真に査定すべきことを反映するもの

パートE:評価及び査定

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モデルコース 1.27 電子海図情報表示システム(ECDIS)の実用的使用

でなければならない。たとえば、関連のある判断基準のみ、当該の指導要目やコ

ースガイドのみを基準とする。サブジェクトトピック間、また訓練生の概念に関

する知識、理解及び技能を試験する場合も合理的なバランスを考える必要がある。

■信頼性

査定は信頼性のあるものでなければならない(類似のグループや学習者に対して

査定を行った場合にも、類似の結果が得られるか)。複数のグループが別々のと

きに同一のサブジェクトを学ぶ場合がある。もし、別の査定官が同じコース/レ

ベルの訓練生を査定する場合、全員が同じ判断を下すようにする必要がある。信

頼性のある評価をするには、使用する文書や試験にかかわらず、結果に合理的な

一貫性がなければならない。

インストラクターが自身の訓練生の査定を行う場合、どういうことを査定するの

か知ったうえでどのように行うか決める必要がある。どういうことを査定するか

は各種基準や当該コース/レベルの学習の成果による。どのように行うかは、課

題や試験に含まれていればすでに決まっている場合もある。

インストラクターは、学習者の技能、知識、態度を査定する 善の方法を考える

必要がある。つまり、形成的、累積的な評価か、査定の妥当性と信頼性はどうか

を考える。

査定した成果はすべて、妥当で、信ぴょう性があり、 新のものであり、十分で

信頼性がなければならない。これは VACSR(妥当な査定が標準的な結果をもたら

す)と呼ばれることもある。

妥当 - その成果は、査定に用いた標準や判断基準に対して適切なものであ

る。

信ぴょう性 - その成果は当該学習者のみによるものである。

新 - その成果は査定の時点においても適切なものである。

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十分 - その成果は標準や判断基準全体を網羅している。

信頼性 - その成果はあらゆる学習者を通し、また時を経ても、当該レベル

に対して一貫性がある。

能力査定の試験を行う様々な領域に対して、そのすべてに関する知識や技能を 1

つの方法だけで十分に測るということはできない。したがって、試験を行うそれ

ぞれの能力の領域に一番合う方法を注意して選択しなければならない。その際、

実際に船上での仕事で求められることを想定してできる限り現実的に関連する質

問を作成する必要性を念頭に置くこと。

■査定の作成

各審査機関がそれぞれの規則を設定しているが、資格証明のために受験者の能力

を査定するのに費やす時間は実務的、経済的、社会的制約によって制限される。

したがって、査定システムの作成・運営の責任者の主要な目的は、もっとも効率

的、効果的、経済的な能力査定方法を見つけることである。審査システムは、受

験者が携わることになる仕事に関係するサブジェクトエリアの知識、理解及び技

能の全範囲を効果的に試験するものでなければならない。すべてのエリアについ

て完全に審査することは不可能なので、実際には、時間の許す限り広範囲を網羅

するようにし、選択したエリアでの知識、理解及び技能の深さをテストすること

で、受験者の知識、理解及び技能を測るようにする。

査定全体で、各受験者の原理、概念、方法論の総合的な理解、原理、概念、方法

論の応用力、事実、考え、論理を体系化する能力、当該資格で認められる任務を

果たすための能力や技能を審査しなければならない。

すべての評価・試験手法には長所と短所がある。審査機関は、具体的に何を試験

すべきか、試験できるか、入念かつ緻密に分析しなければならない。試験・評価

方法を慎重に選択し、現在ある手法の中で 善の方法を使用するようにする。す

べての査定は、当該学習の成果や査定対象の能力にもっとも適したものでなけれ

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モデルコース 1.27 電子海図情報表示システム(ECDIS)の実用的使用

ばならない。

■試験項目の質

試験の種類にかかわらず、設問を読む時間も試験の時間に含まれるので、すべて

の設問と試験項目はできるだけ簡潔であることが肝要である。さらに、設問は明

確で不足がないようにしなければならない。そのためには、第三者に見直しても

らう必要がある。設問には、関係のない情報が含まれないようにしなければなら

ない。

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ECDIS の

インストラクター向け付録

モデルコースの本パートには以下の付録が含まれている。

付録1:ECDIS の運用入門

付録2:ECDIS 性能基準の参考資料

付録3:ECDIS 搭載要件

付録4:ECDIS 訓練におけるシミュレータの使用に関するSTCW規則I/12及

び A-I/12 項、B-I/12 項

付録5a:ECDIS の使用に関する訓練生の技能チェックリストの例

付録5b:シミュレータに関する訓練生の評価の例

付録6:ECDIS 訓練用機器の例

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ECDIS の

インストラクター向け付録

本文書はIMOが2000年に 初に発行したECDISモデルコース1.27の改定第一版

である。過去10年間においていくつかの重要な進展が見られた。

ソフトウェア、海図データ、PC、ハードウェア、及び重要な船舶機能との統

合を含めた型式承認済みのECDISの包括的な改良

ECDIS搭載船舶による効果的な航行に関する広範な経験

ECDISに関するテキストブック、記事、及び情報小冊子の発行

船舶制御を伴う航行環境におけるECDISワークステーションを各訓練生に提

供するシミュレーションの開発

型式承認済みの装置が設置されている場合は必ず、すべての当直航海士に

ECDISの使用能力を要求する旨のSTCWの改正

ECDISから制御情報を取得する航路制御オートパイロットの出現

新世代の当直航海士がLOPのプロッティングなどのバックアップ技能の演習

をほとんど又はまったく必要としないペーパーレス・ブリッジの出現

付録1:ECDIS の運用入門

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当機関が採択した現行の電子海図情報表示システムの性能基準は以下の通り。

決議MSC.232(82)、以前の性能基準の改正:

-2009 年 1月 1日以降に搭載の新しいECDIS 機器設備に適用

決議A.817(19)、電子海図情報表示システム(ECDIS)に対する性能基準;決

議MSC.64(67)、付属書5、決議A.817(19)の改正;決議MSC.86(70)、付属書

4、決議A.817(19)の改正

-1996 年 1月 1日から2009年 10月 1日までに搭載のECDIS 機器設備に適用

付録2:ECDIS 性能基準の参考資料

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ECDIS の

インストラクター向け付録

付属書1

決議MSC.282(86)

(2009年6月5日採択)

改正1974年「海上における人命の安全のための国際条約」の改正の採択

海上安全委員会

同委員会の機能に関する国際海事機関条約第28条(b)を想起し、

さらに、1974年「海上における人命の安全のための国際条約(SOLAS)」

(以下「同条約」という)の同付属書(第I章の条項を除く)に適用される改正手

続きに関する同条約の第8条(b)も想起し、

第86回会合において同条約の第8条(b)(i)に従って提案及び配布された同条約

の改正を考慮し、

1. 同条約の第8条(b)(iv)に従って、同条約の改正(その原文は本決議の付属書

に記載されている)を採択し、

2. 同条約の第8条(b)(vi)(2)(bb)に従って、かかる改正は2010年7月1日に承認

されたとみなされることを決定し(ただし、その日付以前に、同条約の加盟国政

府の3分の1以上、又はすべて合わせると、世界中の商船隊の総トン数の50%以上

を構成する加盟国政府がかかる改正に対して反対を表明した場合を除く)、

3. 同改正は同条約の第8条(b)(vii)(2)に従って、上記の第2項に基づくSOL

ASの加盟国政府の承認をもって、2011年1月1日に発効することに留意するよう

SOLASの加盟国政府に要請し、

4. 事務局長に対し、同条約の第8条(b)(v)に従って、本決議及び付属書に含ま

れている改正の原文の認証済みの写しを条約の全加盟国政府に送信するよう要請

付録3:ECDIS 搭載要件

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し、

5. さらに事務局長に対し、本決議及びその付属書の写しを、条約の加盟国政府

以外の、本機関の加盟組織に送信するよう依頼する。

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ECDIS の

インストラクター向け付録

付属書

改正 1974年「海上における人命の安全のための国際条約」の改正

[...]

第5章

航海の安全

規則19 ― 船舶航法システム/機器に対する搭載要件

3 第 2.1項では、既存の第4号が以下の文言に差し替えられる。

「“.4 予定している航海に対する船舶のルートの計画と表示、及び航海全体に

わたる位置のプロッティングと監視を行うための海図と水路書誌。電子海図情

報表示システム(ECDIS)も本号の海図搭載要件を満たすものとして認められ

る。第 2.10 項が適用される船舶は本書に詳述されている ECDIS の搭載要件を

遵守するものとする」

[...]

5 既存の第 2.9 項の後に、新たに以下のように第 2.10 項及び第 2.11 項が追加

される。

「2.10 以下に該当する国際航海に携わる船舶は電子海図情報表示システム

(ECDIS)を搭載するものとする。

.1 2012 年 7月 1日以降に建造される500総トン以上の旅客船

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.2 2012 年 7月 1日以降に建造される3,000 総トン以上のタンカー

.3 2013 年 7月 1日以降に建造される 10,000 総トン以上のタンカー以外の貨

物船

.4 2014 年 7 月 1 日以降に建造される 3,000 総トン以上~10,000 総トン未満

のタンカー以外の貨物船

.5 2012 年 7 月 1 日以前に建造された 500 総トン以上の旅客船は、2014 年 7

月 1日以降の 初の検査*までに搭載

.6 2012 年 7 月 1 日以前に建造された 3,000 総トン以上のタンカーは、2015

年 7月 1日以降の 初の検査*までに搭載

.7 2013 年 7月 1日以前に建造された 50,000 総トン以上のタンカー以外の貨

物船は、2016年 7月 1日以降の 初の検査*までに搭載

.8 2013年 7月1日以前に建造された20,000総トン以上~50,000総トン未満

のタンカー以外の貨物船は、2017 年 7 月 1 日以降の 初の検査*までに搭

.9 2013年 7月1日以前に建造された10,000総トン以上~20,000総トン未満

のタンカー以外の貨物船は、2018 年 7 月 1 日以降の 初の検査*までに搭

2.11 行政機関は、第 2.10 項第 5 号から第 9 号に明記された実施日から 2 年以

内に恒久的に運行を中止する船舶に対しては、第 2.10 項の要件の適用を

免除することができる。」

* SOLAS規則で言及されている「 初の検査」という用語の統一的解釈を参照のこと

(MSC.1/Circ.1290)

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ECDIS の

インストラクター向け付録

規則I/12

シミュレータの使用

1 STCWコードA部第I/12節の性能の基準その他の規定及びSTCWコード

A 部に定める関連するすべての証明書に関するその他の要件は、次の事項につい

て遵守しなければならない。

.1 シミュレータの使用が義務付けられた訓練

.2 シミュレータを用いて実施される能力の評価であってSTCWコード A 部

の規定により要求されるもの

.3 STCWコード A 部の規定により要求される持続的な技能のシミュレータ

を用いた証明

A-I/12 節

シミュレータの使用を規律する基準

第1部 性能基準

訓練に使用されるシミュレータの一般的な性能基準

1 締約国は,シミュレータを使用した強制訓練に使用されるすべてのシミュレ

ータが次の要件を満たしていることを確保しなければならない。

.1 選択された目的及び訓練内容に沿ったものであること。

.2 機器の作動については,訓練目的に合った現実に近い水準で,機器の性能

や限界そして可能性のある誤差を含めて模擬できること。

付録4:ECDIS訓練におけるシミュレータの使用に関する

STCW規則I/12及びA-I/12項、B-I/12項

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.3 訓練生が訓練目的に合った技能を修得することが可能なように,作動に十

分な現実性を有していること。

.4 訓練目的に応じて,非常事態や危険な状態又は異常な状態を含め,様々な

状態の設定が可能な動作環境を与えることができること。

.5 訓練生が機器と,模擬された環境及び適切ならば,これに加えて教官との

間に,相互に作用することが可能なインターフェースを有すること。

.6 訓練生に対する効果的な事後説明のため,教官による操作,監視及び記録

が可能であること。

能力評価のために使用されるシミュレータに対する一般的な性能基準

2 締約国は,条約により要求される能力評価又は能力維持の証明のために使用

されるシミュレータは次の要件を満たしていることを確保しなければならない。

.1 特定の評価目標を満たすことが可能であること。

.2 機器の作動については,評価目的に合った現実に近い水準で,機器の性能

や限界そして可能性のある誤差を含めて模擬できること。

.3 資格証明を得ようとする者が訓練目的に合った技能を修得することが可能

なように,作動に十分な現実性を有していること。

.4 資格証明を得ようとする者が機器と模擬された環境との間に,相互に作用

することが可能なインターフェースを有すること。

.5 訓練目的に応じて,非常事態や危険な状態又は異常な状態を含め,様々な

状態の設定が可能な動作環境を与えることができること。

.6 資格証明を得ようとする者に対する効果的な事後説明のため,教官による

操作,監視及び記録が可能であること。

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ECDIS の

インストラクター向け付録

追加の性能基準

3 1 及び 2 に規定する基本要件に加え,本節が適用するシミュレーション機器

は,当該機器の種類に従って,次に掲げる性能基準に適合しなければならない。

レーダシミュレーション

4 レーダシミュレーション装置は,機関(IMO)により採択された性能基準*

に適合する航海用レーダ機器を模擬することが可能なものであり,次の機器を備

えなければならない。

.1 安定な相対運動並びに対水及び対地安定の真運動の各モードで作動可能な

こと。

.2 気象,潮流,海流,陰影部,偽像及び伝播効果を模擬し,海岸線,航海用

ブイ及び捜索・救助トランスポンダを発生させること。

.3 針路・速力の変更ができる自船が 低2隻あり, 低20隻の目標船が設定

でき,適切な交信設備を持ち,実時間で運用することができる環境を創り

出すこと。

ARPA シミュレーション

5 ARPA シミュレーション機器は,機関(IMO)により採択され,適用される

すべての性能基準*に適合する ARPA の作動性能を模擬することが可能でなければ

ならず,次に掲げる機能を有しなければならない。

.1 手動及び自動による目標捕捉

.2 過去の航跡情報

* 組織が採用している当該の性能基準を参照のこと。

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.3 除外区域の設定

.4 ベクトル又はグラフィックのタイム・スケール及びデータの表示

.5 試行操船

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ECDIS の

インストラクター向け付録

第2部 その他の規則

シミュレータ訓練の目的

6 締約国は,シミュレータを使用した訓練目的及び目標が全体的な訓練計画の

範囲内で定義されること,及び特定の訓練目標及び業務が船内における業務及び

慣行にできる限り関連があるよう選択されることを確保しなければならない。

訓練の手順

7 シミュレータに基づいた強制訓練を行うに当たり,教官は次の事項を確保しな

ければならない。

.1 訓練生が実習目的及び業務につき事前に適切な説明を受け,実習開始前に

十分な準備の時間を与えられること。

.2 訓練生は,訓練又は評価が開始される前に,シミュレータ及び関連機器に

対する十分な習熟時間を持つこと。

.3 与える指針や訓練項目は,特定の訓練目標や業務にそしてまた訓練生の経

験に応じたものであること。

.4 訓練は,訓練生の行動に関する音声及び映像による観察や,事前及び事後

の実習評価報告により,効果的に監視され,適切に支援されること。

.5 訓練目的が適合したものであること及び実際に行われる操作技能が承認さ

れた基準どおりであることを確認するため,訓練生は効果的に事後説明を

受けること。

.6 事後説明の中で他の訓練生の評価を用いることを奨励すること。

.7 シミュレータ実習が,一定の訓練目的に適合することを確保するため計画

され,吟味されること。

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評価の手順

8 能力水準を証明するため,資格証明を得ようとする者の能力の評価にシミュレ

ータが使用される場合には,評価者は次の事項を確保しなければならない。

.1 性能基準が明確かつ明示的に定義され,資格証明を得ようとする者に有効

かつ利用可能であること。

.2 評価基準を明確に確立し,評価の信頼性及び統一性を明示的にし,かつ,

客観的な手法及び評価を 大限に利用して主観的な判断を 小限にするこ

と。

.3 資格証明を得ようとする者が,評価されるべき業務及び/又は技能,並び

に彼らの能力が決定される業務及び行動基準について明確に説明を受ける

こと。

.4 行動の評価にあたっては,通常の運用手続,及びシミュレータ管理者又は

シミュレータを同時に使用している他の資格証明を得ようとする者との相

互影響を考慮すること。

.5 行動評価のための得点付け又は階級付けは,有意性が確認されるまでは慎

重であること。

.6 資格証明を得ようとする者が評価者を満足させるように安全かつ効果的に

課題を遂行する能力を証明することが第一の基準であること。

教官及び評価者の資格

9 締約国は,教官及び評価者が,第 I/6 規則及び A-I/6 節に掲げるように,一

定の訓練の種類及び水準並びに関連する能力の評価について,資格及び適切な経

験を有することを確保しなければならない。

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ECDIS の

インストラクター向け付録

B-I/12 節

シミュレータの使用に関するガイダンス

電子海図表示装置(ECDIS)の運用の訓練と評価

36 電子海図表示情報装置(ECDIS)の運用の訓練又は評価のためにシミュレータ

が使われる場合、そのような訓練又は評価においては次のような暫定的指針を考

慮に入れなければならない。

37 ECDIS の運用の訓練及び評価は、

.1 ECDIS シミュレーション装置を併用し、かつ

.2 次の 38から 65に規定される事項を下回ることなく、基準に従うこと。

38 ECDIS シミュレーション装置は、改正されたSTCWコードのA部第 I/12節

に記載の適用される性能基準をすべて満たしているだけでなく、機関によって採

択されたすべての適用される性能基準を満たす航海機器及び船橋制御装置を模擬

でき、水深データを発生させる設備を付加していなければならない。そして、

.1 遂行すべき航海及び当直業務並びに評価の対象となる操船技術に対応した

航海機器及び通信機器並びに設備を含む、リアルタイムの運航環境を再現

し、

.2 気象、潮流及び海流の影響をはじめとする外洋条件における「自船」の特

性を現実的に模擬できなければならない。

39 ECDIS 使用のデモンストレーション及び実習は、適切な場合、シミュレータ

を用いて行うこと。ECDIS の不適切な使用による危険性について訓練生の意識を

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高めるため、訓練実習はリアルタイムで行うことが望ましい。時間を短縮する場

合はデモンストレーションのみに限定すること。

全般事項

ECDIS 訓練プログラムの目的

40 ECDIS 訓練の訓練生は以下についての能力を有すること。

.1 ECDIS 装置を運用し、ECDIS の航法機能を使用し、あらゆる関連情報を選択

及び評価をし、不具合の場合は適切な措置をとること。

.2 表示されているデータの潜在的な誤差及びデータの解釈におけるよくある

誤りを説明できること。

.3 ECDIS が航法援助装置として頼るべき唯一のものではない理由を説明でき

ること。

理論及びデモンストレーション

41 ECDIS を安全に使用するには ECDIS データの基本的原理及び表示規則、並び

に表示されているデータの潜在的誤差、ECDIS に関連する限界及び潜在的な危険

等についての知識と理解が必要となるため、理論的な説明を含む多くの講義が行

われなければならない。これらの講義は可能な限り親しみやすい方法で行い、実

例を用いるべきである。講義はシミュレータ実習によってさらに補強される。

42 ECDIS 設備と ECDIS 関連情報(ECDISの航法機能の使用、適切な情報の選択及

び評価、ECDIS のマン・マシン・インターフェイス機能に関して精通すること)

の安全な操作のために、ECDIS シミュレータを使った実務的な実習と訓練を課程

の主な構成内容としなければならない。

43 訓練目的を明確にするよう、訓練内容の構成を定義しなければならない。ま

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ECDIS の

インストラクター向け付録

た、この構成に含まれる各題目ごとに学習目標の詳細が策定されなければならな

い。

シミュレータ実習

44 訓練生が必要な実務技能を獲得できるよう、実習は個別の ECDIS シミュレー

タごと又は ECDIS を含むフルミッション仕様の航海シミュレータで実施されなけ

ればならない。リアルタイムの航海実習のためには、航海シミュレータは複雑な

航海状況を網羅していることが望まれる。訓練生が個々に直面する状況に合わせ

て装置を使用できるよう、実習は利用可能なさまざまな縮尺、航法、表示方法の

使用についての訓練でなければならない。

45 実習及びシナリオの選択は利用するシミュレータ設備によって決まる。1 台

以上の ECDIS ワークステーションとフルミッションシミュレータが利用できる場

合は、ワークステーションは主として ECDIS 設備使用における基本訓練及び航路

計画の実習にあて、フルミッションのシミュレータは主に、航海当直の作業全体

と関連させてできる限り現実的に、リアルタイムの航路監視関連の実習に使うこ

と。学習項目のすべての状況を習得できるまで、訓練プログラムの中の課題の難

易度を上げて行くべきである。

46 実習は極めて高度な現実感を生み出さなければならない。このためシナリオ

は架空の海域を設定しなければならない。さまざまな学習目標に対応するため、

異なる海域で起こる学習項目に合った状況、機能及び措置が一つの実習の中に統

合されて、リアルタイムで経験させなければならない。

47 シミュレータ実習の主目的は、ECDIS の運用において、訓練生が安全に関連

したすべての状況責任を理解し、使用するシステムと設備について完全に精通す

ることである。

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ECDIS システムの主な種類とその表示特性

48 訓練生は、ECDIS の主な種類、そのさまざまな表示特性及びデータ構造を知

るとともに、下記についても理解しなければならない。

.1 ベクトル海図とラスター海図の相違

.2 ECDIS と ECSの相違

.3 ECDIS と RCDS の相違

.4 ECDIS と ECS、RCDS 等の他のシステムの特徴

.5 特殊目的(異常事態、非常事態)システムの特徴

ECDIS への過度の依存の危険性

49 ECDIS 運用の訓練では、下記について説明しなければならない。

.1 航海機器としてのECDIS の限界

.2 システム誤作動の潜在的な危険

.3 センサーの限界を含む、システムの限界

.4 水路データの不正確さ、ベクトル及びラスター電子海図の限界(ECDIS 対

RCDS、ENC対 RNC)

.5 人為的ミスの潜在的な危険

適正な見張りの維持、及び特に船位について定期的な確認を ECDIS とは独立した

別の方法で実施する必要性を強調しなければならない。

誤情報表示の察知

50 ECDIS の安全使用のためには、装置の限界と誤った情報表示の察知について

の知識が必須である。訓練においては、下記の要素を強調しなければならない。

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101

ECDIS の

インストラクター向け付録

.1 装置の性能基準

.2 電子海図上でのレーダ情報の表示、レーダ画像と電子海図の不一致の除去

.3 電子海図と紙海図の間に生ずる可能性のある図法の相違

.4 海図データ作成の元となるデータの縮尺と電子海図データの表示において

起こる縮尺の問題(過度の拡大・縮小表示)

.5 異なる測地系を用いた場合の影響

.6 横軸と縦軸で異なる基準を用いることによる影響

.7 航海中の船体運動による影響

.8 ラスター海図表示モードにおけるECDIS の限界

.9 下記の表示で起こりうる誤差

.9.1 自船の位置

.9.2 レーダ情報、ARPA及び AIS情報

.9.3 異なる測地座標系

.10 手動又は自動データ補正結果の検証

.10.1 海図データ及びレーダ画面

.10.2 他の独立した位置測定システムによる自船位置の確認

51 情報の誤った解釈、及び解釈ミスを回避するためにとられた適切な措置につ

いて説明すること。以下の事項に潜在する意味:

.1 過度な過大表示を行わないこと

.2 自船位置をむやみに信用すること

.3 表示モードの混用

.4 海図縮尺の混用

.5 参照システムの混用

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102

.6 異なる表示モード

.7 異なるベクトル安定化モード

.8 真北とジャイロ・ノース(レーダ)の相違

.9 同じデータ参照システムの使用

.10 適切な海図縮尺の使用

.11 状況に も適したセンサーの使用

.12 正しい安全データ数値の入力

.12.1 自船の安全等深線

.12.2 安全水深(安全水域)

.12.3 事象

.13 あらゆる入手可能情報の適切な使用

52 ECDIS はあくまでも航海支援装置の一つに過ぎないことを正しく認識し、R

CDSモードで運用している時は、適切な 新の紙海図一式とともに ECDIS を使

用すべきであることの理解。

.1 SN.1/Circ.207/Rev.1「RCDS と ECDIS の相違」に記述されているとおり、RCDS

モードでの運用上の違いを理解すること

.2 いかなるモードにおいても、訓練では適切な 新の海図を使用しなければ

ならない。

システムの性能と精度に影響する要因

53 以下の完全な実際知識とともに、ECDIS の原則についての初歩的な理解を得

ること。

.1 ECDIS の起動と設定;情報収集センサー(衛星及び無線航海装置受信機、

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103

ECDIS の

インストラクター向け付録

レーダ、ジャイロ・コンパス、ログ、音響測深機)の接続;計測誤差を含

むこれらのセンサーの精度と限界及び船位の精度、操縦による針路指示器

の性能の精度、コンパス誤差による針路指示器の精度、浅水域によるログ

の性能の精度、ログの補正による速力計算の精度、海面状態の外乱による

音響測深機の精度

.2 機関(IMO)によって採択された電子海図表示情報装置に関する現行の

性能基準

実地

表示の設定及び維持

54 以下の事項に関する知識と技能を得ること。

.1 ECDIS 情報の 適な表示を得るための正しい始動手順

.2 表示の情報提示方法の選択(標準的表示、初期表示、その他要求に応じて

個々に表示される各種の情報)

.3 適なデータ表示のため、すべてのレーダ/ARPA 表示制御を調整すること

.4 便利なシステム構成の選択

.5 必要な場合、船速のECDIS への入力の選択

.6 移動ベクトル表示の時間の選択

.7 船位、レーダ/ARPA、コンパス、船速入力のセンサー及びECDIS の性能チェ

ック

運用時の電子海図の使用

55 以下の事項に関する知識と技能を得ること。

.1 ECDIS 情報表示の主な特徴と航海のための適切な情報の選択

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104

.2 船位、方位/ジャイロコース、船速、安全数値及び時間の表示など、船舶

の安全を監視するために必要な自動化機能

.3 手動機能(カーソル、電子方位線(EBL)、距離環による)

.4 電子海図の内容の選択及び修正

.5 縮尺(過小縮尺と過大縮尺を含む)

.6 ズーム

.7 自船の安全データの設定

.8 昼間又は夜間表示モードの使用

.9 すべての海図記号と略号の解読

.10 航海データを取得するための各種のカーソル及び線の使用

.11 異なる方向の海域の表示と自船位置付近の海域に戻って表示すること

.12 緯度経度により必要な海域を表示すること

.13 航海状況に対応した不可欠なデータレイヤを表示すること

.14 適切かつ明確な情報(船位、針路、船速等)の選択

.15 操船者のメモを入力すること

.16 ノースアップ方位表示及びその他の方位表示法の使用

.17 真運動モード及び相対運動モードの使用

航路計画

56 以下の事項に関する知識と技能を達成すること。

.1 自船の特性をECDIS に入力すること

.2 航路計画のための海域の選択

.2.1 海上運航に必要な海域の概観表示

.2.2 海図縮尺の切換え

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105

ECDIS の

インストラクター向け付録

.3 適切で 新の海図が入手可能かどうかの確認

.4 画面編集機能を使い、航程線と大圏航海を考慮に入れた、ECDIS による画

面上の航路計画

.4.1 航海、水路・気象その他のデータを入手するための ECDIS データベ

ースの利用

.4.2 縮尺によって海図に表示される場合には、旋回半径及び転舵開始地

点/線を考慮に入れること

.4.3 危険な水深及び海域をマークし、警戒水深を提示すること

.4.4 変針点の追加、移動、削除とともに、等深線を横切る点及び計画航

路からの危険な横距離(ずれ)をマークすること

.4.5 安全な船速を考慮に入れること

.4.6 安全な航海のため、事前に計画された航路をチェックすること

.4.7 警報や警告の発生

.5 下記を含む、計算に基づいた表形式の航路計画

.5.1 変針点の選択

.5.2 変針点の一覧表の呼び出し

.5.3 計画メモ

.5.4 計画航路の微調整

.5.5 安全航海のため、事前に計画された航路をチェックすること

.5.6 代替の航路計画

.5.7 計画航路の保存、読み込み、使用終了又は削除

.5.8 表示画面の画像コピー作成及び航路の印刷

.5.9 計画航路の編集及び作成

.5.10 船体の大きさ及び操縦パラメータに応じた安全値の設定

.5.11 復路計画

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.5.12 複数航路の接続

航路監視

57 以下の事項に関する知識と技能を得ること。

.1 船位を制御するため、ECDIS とは別の独立したデータ又は ECDIS 内の代替

装置の使用

.2 予測(先読み)機能の使用

.2.1 海図及びその縮尺の変更

.2.2 海図の概観表示

.2.3 移動ベクトル時間の選択

.2.4 一定時間後の船位の予測

.2.5 計画された航路の変更(航路変更)

.2.6 風及び潮流の見込みに関する個々のデータのの入力

.2.7 警報に対する適切な反応

.2.8 測地系の不一致に対する補正入力

.2.9 航路上への予定通過時刻の表示

.2.10 船位の手動入力

.2.11 海図上での位置(緯度、経度)、針路、方位及び距離の測定

警報の取扱い

58 以下の場合において、音響及び視覚による警報信号装置の切換えを含む、航

海センサー、指示器、データ及び海図警報及び指示器警告などすべてのシステム

を適切に解釈し対応するための知識と能力を得ること。

.1 次に用いるべき海図がECDIS データベースの中に無い場合

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107

ECDIS の

インストラクター向け付録

.2 安全等深線を超えた場合

.3 XTE(クロストラックエラー:計画航路からの横距離偏差)が許容範囲を

超えた場合

.4 計画航路からの偏差

.5 変針点への接近

.6 危険な地点への接近

.7 変針点への計算上の到着時間と実際の到着時間がずれた場合

.8 過度な拡大と縮小表示

.9 孤立した航海上の障害物又は危険水域への接近

.10 指定した水域を横切る場合

.11 異なる測地系の選択

.12 他船への接近

.13 当直の終了

.14 タイマーの切換え

.15 システムテストの不具合

.16 ECDIS で使用している測位システムの不具合

.17 推測航法の失敗

.18 航法装置を用いた船位測定が不可能な場合

船位及び運動パラメータの手動補正

59 以下の手動補正を行う際の知識と技能を得ること。

.1 衛星及び無線航海装置の受信機の電源が断の場合の推測航法モードにおけ

る船位

.2 自動的に得られた緯度経度が不正確な場合の船位

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108

.3 針路及び船速の数値

航海日誌の中の記録

60 以下の事柄に関する知識と技能を得ること

.1 航海自動記録

.2 以下を考慮に入れた過去の航跡の再生

.2.1 記録メディア

.2.2 記録の間隔

.2.3 用いられているデータベースの確認

.3 電子航海日誌中の記録の閲覧

.4 電子航海日誌への記録の即時記入

.5 船内使用時の変更

.6 付加的データの入力

.7 電子航海日誌の内容の印刷

.8 自動記録間隔の設定

.9 航海データの構成と報告

.10 航海情報記録装置(VDR)とのインターフェイス

電子海図の改補

61 以下の事項に関する知識と技能を得る

.1 手動による電子海図改補の実施。その際、準拠楕円体の整合性及び電子海

図で用いられている単位と改補データの単位との整合性に特に注意するこ

.2 電子海図フォーマットでの電子メディアで得られたデータを使った、半自

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109

ECDIS の

インストラクター向け付録

動による電子海図改補の実施

.3 電子データ通信回線を通じて得られた 新ファイルを使った、自動による

電子海図改補の実施

危険な状況を作り出すため、あえて改補されていないデータを用いたシナリオに

おいては、訓練生は海図についてその都度、改補が課せられるべきである。

レーダ/ARPA が接続されている場合のECDIS の運用

62 以下の事項に関する知識と技能を達成すること。

.1 ARPA の ECDIS への接続

.2 目標の速度ベクトルの表示

.3 目標の航跡の表示

.4 目標の航跡の保存

.5 目標の一覧表閲覧

.6 レーダの重畳映像と海図の地理的特性による表示位置調整の確認

.7 複数の繰船方法を模擬すること

.8 ARPA によって得られた顕著な地点を用いた自船位置の補正

.9 ARPA の電子カーソル及線を用いた補正

シミュレータ(レーダと ARPA に関連)の使用に関する B 部 I/12 節の指針、特に

17から 19及び 36から 38を参照のこと。

AIS が接続されている場合のECDIS の運用

63 以下の事項に関する知識と技能を得ること。

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.1 AIS とのインターフェイス

.2 AIS データの解釈

.3 目標の速度ベクトルの表示

.4 目標の航跡の表示

.5 目標の航跡の保存

運用上の警告及びその利点と限界

64 訓練生は ECDIS 運用上の警報の使用及びその利点と限界、疑わしいインター

フェイスがある場合の正しい設定について、正しい認識を身につけなければなら

ない。

システムの運用テスト

65 以下の事項に関する知識と技能を得ること。

.1 機能自己テストを含むECDIS の不具合についてのテスト方法

.2 不具合が起こった後にとるべき対応措置

.3 適切なバックアップの純美(バックアップ・システムへの変更とそれによ

る航海)

実習の事後評価検討

66 教官は、各実習生が終了したすべての実習の結果をそれぞれ分析し、その結

果を印刷しなければならない。事後の評価検討に費やされる時間は、シミュレー

タ実習に使われる合計時間の10%から15%とすること。

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111

ECDIS の

インストラクター向け付録

これらのタスクは次の方法で も効果的に習得することができる。

発展段階に沿って進む

航行環境で(すなわち航行中に)これらを練習する

参考文献:型式承認済みのECDIS のユーザーマニュアル

その他のECDIS に関する文書:テクニカル、操作原理、ソフトウェア記述

基本タスク

1 すべての情報パネル及び機能を確認

2 パネルと機能の表示の有効化/無効化

3 画面のカラーパレットの設定 ― 昼/夜/その他

4 パネルと機能の開き方に慣れる

5 メインディスプレーの方向の設定 ― N/H/C

6 メインディスプレーのモードの設定 ― TM/RM

7 デュアルディスプレーの選択-配置/モード/方向/縮尺の選択

8 自船の表示への戻り方を覚える

9 相対運動で自船を再配置する

10 EBL と VRMの使用

11 ベクトル長の選択

12 各種海図フォーマットの選択

13 特定の海図の読み込み

14 オートロード、オートスケール、固定などが利用可能時の海図オ

プションの選択

15 海図レイヤーを表示するための正しい縮尺の選択 ― ズーム機能

の使用

16 海図の表示カテゴリーとレイヤーの選択

17 海図オブジェクト情報の取得(ベクター式海図)

18 座礁予防の設定 ― 安全等深線/深度

19 座礁予防の合図もしくは同等のECDIS の機能の設定 ディスプレイ表示全般

20 入手可能な 良の情報源からの位置と時間の選択

21 位置オフセットの取り消し/確認/変更

22 場所に合った海図と縮尺の選択

23 状況に応じた整然としたディスプレイの作成

24 もっとも適切な表示、方向、運動の選択

付録5a:ECDISの使用に関する

訓練生の技能チェックリストの例

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25 モニタリングのための事前確認/承認済みのルートのロード、既

存のスケジュールのロード

26 自船の位置、ルート、環境に適した安全パラメータの選択

27 TM モードの場合、適切な海図設定値と先行制御値の選択 中間タスク

28 ルート計画の作成 ― 草稿、保存

29 ルート計画の編集 ― ルートへのフォーカス、微調整、追加デー

タの入力

30 ルート計画の距離計算の調整

31 安全確認

32 ルートスケジュールの ETD、ETA、速度の作成と変更 ― 機能パネ

ル/スケジュール

33 ルート監視データの表示に適したパネルの選択

34 適切なアクティブ航路定点の選択

35 ルート監視アラームの設定と選択 ― 可能であれば、モニタリン

グ/航行アラーム

36 ルート監視に適した表示レイヤーの選択

37 関連する航行アラームの選択

38 アラーム状態(アラームパネル)の観察

39 船内時刻のタイムゾーンの設定

40 表示する時間アイコンの選択-UTC(協定世界時)/船内時刻

41 ターゲット情報の観察と評価

42 ARPA の設定

43 AIS の設定

44 アンカーウォッチガードリング&アラームの設定

45 ベクター式海図から潮流情報を選択する

46 利用可能な航海記録の閲覧

47 利用可能な航海記録の手動入力

48 既存のユーザー海図のロードとアンロード

49 ユーザー海図オブジェクトの作成

50 ユーザー海図オブジェクトの編集

51 手動補正の挿入

52 手動補正の削除

53 落水警報機能の作動とデータの閲覧 航海士のタスク

54 海図データのインストールと削除

55 RNC 用海図更新のインストール

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ECDIS の

インストラクター向け付録

56 ENC 用海図更新のインストール

57 自船の設定の修正

58 UTC と現地時間の切り替え

59 データファイルのインポート

60 データファイルのエクスポート

61 ルート計画の印刷

62 選択可能であれば、SARデータの作成

63 ルート計画の削除

64 航跡履歴の図示

65 選択可能であれば、ファイルの再生

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114

訓練生は沿岸水域及び制限水域のルート監視のための特定の機能を操作し、安全

な航行に関連するすべての情報を取得する。

特定の海域に複数のターゲットが存在する沿岸水域及び制限水域を安全に

航行しながら、ECDIS 上で以下のタスクグループのデモンストレーションを

行う。

-海域の監視

-ルートスケジュールを含め、訓練生が作成したルートを使用する。

-訓練生が作成したユーザーレイヤーの選択

-代替手段による自船の位置の確認

-ベクトル時間、ディスプレイのリセット、情報レイヤー、アラーム、進路、

センサー、自船の構成などの設定の確認。

-ECDIS の機能を利用して、ターゲットの脅威を評価し、進路及び/又は速度

の変更を行う

-安全を確認しスケジュールを調整して、指示通りにルートを修正する

-潮流と海流の評価、指示に基づく航路定点への指定時刻の到着に合わせた

ETAの調整

-COLREGSの遵守。

インストラクター向けのガイドライン

演習概要に従ってシミュレーション演習を実施する。

-シミュレーションパラメータを設定する。

- 低限のアンダーキール・クリアランス又は CPA への明らかな違反に関連

する危険な航行について定義する。これらの違反があった場合は航行査定

の再試験が必要となる。

付録5b:シミュレータに関する訓練生の評価の例

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ECDIS の

インストラクター向け付録

-訓練生による ECDIS の使用を監視し、スコアシートに記載されているすべ

てのタスクを採点する。

-訓練生に要点を伝える。

-各訓練生にデブリーフィングを行う。

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1 ECDIS 訓練用機器の仕様

下記の機器仕様は、ECDIS 訓練用の機器構成の例を示す。同等の機能性を発揮で

きれば、異なる構成でもかまわない。適切な機器を適切にレイアウトしてあれば、

ECDIS 船舶ミニシミュレータを本コース上のすべての関連する演習に使うことも

できる。 終航路計画演習にフルブリッジシミュレータが使われた場合、訓練生

は個々の当直任務を行わなければならない。

2 教室でのECDIS 訓練用機器の仕様

教室での ECDIS ワークステーション訓練用の機器で、ECDIS の機能性のデモンス

トレーションや練習を行うものである。ワークステーションの台数は訓練生の人

数や演習にかかる時間による。訓練生全員が機器を十分に操作し学習の成果を達

成できるよう十分な台数のワークステーションを用意しなければならない。

3 訓練生用ワークステーションに含まれるもの

.1 低限の ECDIS 表示要件を満たすデュアルモニターディスプレー、及び

ECDIS ソフトウェアと電子海図データを実行できる互換性のある OS を備え

たワークステーション。

.2 航行及び船舶制御機能のあるサーバーネットワークに組み込み、訓練生が

他の訓練生やインストラクターのワークステーションとやりとりできるワ

ークステーション。

.3 ECDIS 用モニター1台。

.4 もう 1 台のモニターは船舶制御、航行機器、レーダーに関する情報の表示

に用いる。スプリットスクリーン、メニュー選択、又は両方でもよい。ス

プリットスクリーンの場合、現実性を増すため、ブリッジから見える画像

も表示できるとよい。

.5 ECDIS用のモニターはレーダーとAISデータの両方を海図データと一緒に表

示できるものであること。

付録6:ECDIS訓練用機器の例

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117

ECDIS の

インストラクター向け付録

4 インストラクター用ワークステーションに含まれるもの

.1 1 台のワークステーションに、 低限のECDIS 表示要件を満たすデュアルモ

ニターディスプレー、又はスプリットスクリーン性能により同等の機能が

果たせる大型のモニター1台を備えたもの。

.2 インストラクター用シミュレータ制御&監視ソフトウェアを備えたワーク

ステーション。同ソフトウェアは、そのワークステーション上で局所的に

演習を作成することができ、演習をどのワークステーションでも実行及び

再生ができるものとする。ハードウェアが十分な性能であれば、インスト

ラクターのワークステーションとサーバー/ネットワークを 1 台にまとめ

ることもできる。

5 サーバー/ネットワークに含まれるもの

.1 必要なソフトウェアとデータを保存し実行するのに十分な性能のサーバー

システム。

.2 様々な特徴の訓練に適した自船モデルと訓練用の海域及び沿岸区域を含む

シミュレータシステムソフトウェア。

.3 インストールしたシミュレータソフトウェアと流体力学モデリングデータ

に適合するフルネットワーク制御。

.4 各種ハードウェア構成機器間のデータ転送は有線もしくは wi-fi で行う。

ただし、帯域幅に十分余裕があり持続的なサービスが見込めること。

6 プロジェクター

プロジェクター又はその他視覚用システムを用意し、ECDIS の機能性、自船の制

御、ECDISに基づく航行手法などのグループデモンストレーション演習を映して、

指導やフィードバック、話し合いに利用する。

7 ECDIS 航行ミニシミュレータの機器仕様

この機器は、訓練生の ECDIS を使ったブリッジ当直能力を査定できるように設計

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118

されていなければならない。たとえば、これより前の演習で作成した航海計画の

実行と監視を現実に即してシミュレーションすることを含む。

8 ルート監視演習に使用する訓練生用ECDIS 自船ミニシミュレータ

.1 ECDIS ソフトウェアと海図データ、及びインストールしたECDIS ソフトウェ

アと電子海図データを実行できる互換性のあるOSを備えたワークステーシ

ョン。

.2 3 台のモニター。1台目はECDIS データ、2台目はレーダー、3台目はエン

ジン制御航行機器をそれぞれ別々に表示する。

.3 ECDIS、展望塔、レーダーの画像を別々に継続的に表示できなければならな

い。

.4 航行及び船舶制御機能のある ECDIS 統合自船ネットワークに接続され、単

独であるいは双方向で動作するワークステーション。

.5 ECDIS用のモニターはレーダーとAISデータの両方を海図データと一緒に表

示できるものであること。

9 インストラクター用のミニシミュレータ用ワークステーションに

含まれるもの

.1 適切なディスプレーモニターと互換性のあるOSを備え、インストラクター

用シミュレータ制御&監視ソフトウェアをインストールしたワークステー

ション。

.2 演習を作成、実行できるワークステーション。

注:多重自船設定では、インストラクターのワークステーションは訓練生の自船シミュレータから離れた

場所に置くことが望ましい。

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ECDIS の

インストラクター向け付録

10 ミニシミュレータ用サーバー/ネットワークに含まれるもの

.1 必要なソフトウェアとデータを保存し実行するのに十分な性能のサーバー

システム。

.2 ワークステーションで使用している演習をすべてネットワークで制御する

ため、適切な自船モデル、訓練用地理的地域、流体力学モデリングデータ

を含むシミュレータシステムソフトウェア。

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120

モデルコース

実施ガイダンス

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121

モデルコース

実施ガイダンス

目次

パート1 準備 122

パート2 指導手法についての注意事項 128

パート3 カリキュラムの作成 130

付属書A1 準備チェックリスト 133

付属書A2 モデルコースシラバスの例 135

付属書A3 付属書A2の授業プラン例 141

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122

1 はじめに 1.1 どんな計画でも成功するかどうかは堅実で効果的な準備に左右される。

1.2 IMOモデルコース「パッケージ」は、必要なことはできるだけすべて

網羅するようにしているが、準備に十分な時間と資源をつぎ込むことが

肝要である。準備には、必要であれば運営や編成だけでなく、コース用

のメモ、図、スケッチ、OHPなども含まれる。

2 一般留意事項 2.1 コース「パッケージ」はよく読むこと。特に、コースのシラバスと関連

する教材は注意深く徹底的にすみずみまで確認する。これは、コースを

成功裏に実施するために必要なものを明確にする場合に重要である。

2.2 準備のすべての段階で付属書A1に示すようなチェックリストを用い、

必要なことをすべて予定通り効果的に行う。チェックリストを用いる

と、準備の進捗状況がわかり、予定通りに進めるために必要な是正措置

がわかる。関係者全員で打ち合わせを随時行い、準備の状況を確認し問

題があれば解決する。

2.3 コースで指導する講師とコースのシラバスについて話し合い、各講師が

指導する箇所について意見を聞く。シラバスを確認することで、受講生

が受講基準を満たすため事前の勉強が必要かどうかの判断ができる。詳

細なシラバスは、訓練の成果に基づいて構成されている。1つ1つの成

果は、受講生が具体的に何ができるようにならなければならないかが述

べられている。モデルコースのシラバスの例を付属書A2に示す。パー

ト3は、カリキュラムの作成について述べ、シラバスの構成方法と使用

方法を説明する。

2.4 コースで指導する講師は、目標とする成果を達成させるためのメモもし

くは授業プランを作成する必要がある。シラバスの例の1つのテーマに

ついて作成した授業プランの例を付属書A3に示す。

2.5 講師は、コース期間中、コースに対する評価を責任者に伝えることが重

要である。

パート1 準備

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123

モデルコース

実施ガイダンス

3 個別留意事項 3.1 コースの範囲

コースの範囲を検討する際、講師は、地方又は国の基準(パート3参照)

がある場合、その基準を満たすために調整が必要かどうかを判断する必

要がある。

3.2 コースの目的

3.2.1 コースの教材に記載されているコースの目的は、よく考えてそ

の意味を十分に理解すること。国や地方の基準が定めている任務でコー

スの目的に加える必要のあるものがないか確認する。逆に、コースに含

まれているもので該当する国の海事産業の要件で認証されていない要

素が含まれていないか確認する。

3.2.2 コースについての評価を行う際は、コースの目的も検討する。

3.3 受講基準

3.3.1 訓練生が受講基準に満たない場合は、受講準備コースを設けて

基準を満たすようにする。あるいは、不足している知識をコース自体に

加えてもよい。

3.3.2 受講基準が低すぎる場合は、指導の必要のない箇所は短縮もし

くは省略するか、復習として行う。

3.3.3 上記のことを念頭に、またコースの前に訓練生が事前の勉強を

する必要があるかどうか考えながら、コースの教材を吟味する。訓練生

の予習のための資料としては、復習ノート、テキストの抜粋、技術論文、

正規のコースの教材一式がある。事前の勉強用の資料とモデルコースの

教材を一部変えたものを組み合わせて使うという方法もある。モデルコ

ースの教材が改正後の 1978 年の「船員の訓練及び資格証明並びに当直

の基準に関する国際条約」(STCW)などの国際的基準に関係する箇

所では、基準を緩めてはならない。多くの場合、同条約では、より高い

資格証明を得るために訓練を受ける場合は、その知識を見直し、修正あ

るいは深めることとしている。

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3.4 コース修了証

修了を証明する書類が必要な場合は、修了証を発行する。修了証は、適

切な文言で、海事産業やすべての関係当局にその趣旨が十分認識できる

ものである必要がある。

3.5 コース定員

3.5.1 本コースでは、コースに参加する訓練生の人数について推奨す

る定員数を設けている。できるだけこの定員数を超えないようにする。

これより多くなるとコースの質が低下する恐れがある。

3.5.2 訓練生の宿泊、食事、交通手段の用意が必要な場合がある。こ

の点については、準備の早い段階で考える必要がある。

3.6 スタッフ要件

3.6.1 できればコースとカリキュラムの作成経験のある者がコース実

施の責任者になることが重要である。

3.6.2 そのような責任者は、「コースコーディネータ」や「コースディ

レクタ」などと呼ばれる。コースを効果的に実施するためには、講師、

ラボ技術者、ワークショップ講師など、その他のスタッフも必要になる。

指導を担当する講師には、彼らが扱うコースの内容についてきちんと説

明をし、講師が準備しなければならない教材をチェックする体制を整え

る必要がある。そのためには、シラバスをよく確認して、指導する講師

の能力により指導範囲を割り当てることが必須である。

3.6.3 コース実施の責任者は、多様な分野の指導の質及び方法、訓練

生との関係、コミュニケーション力などについて指導の質をチェックす

ることを考えること。また、同責任者はカウンセリングやサポートも行

う必要がある。

3.7 訓練設備及び装置

教室や他の設備 3.7.1 教室、ラボ、ワークショップなど必要な場所はできる限り予約

することが大切である。

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125

モデルコース

実施ガイダンス

装置 3.7.2 3.7.1 で述べた場所で使用する装置もコースを支援し、実施す

るために早い段階で手配する必要がある。たとえば以下のような装置が

考えられる。

1.黒板と筆記用具

2.実演や実験で使用するラボの器具

3.ワークショップで使用する機器及び装置

4.その他の場所で使用する装置や器材

(消火やサバイバルの実演など)

3.8 補助教材

コースに必要な補助教材は、作成、もしくは入手可能か確認して注文す

る。

3.9 視聴覚教材

学習の効果を高めるために視聴覚教材(AVA)を使った方がよい場合

がある。モデルコースのパートAに推奨する視聴覚教材を記載する。次

の点を念頭に置いて使用する。

1.オーバーヘッドプロジェクター(OHP) コースで提供されているOHP用のイラストは、よく確認して、授業で

扱う順に準備する。OHPを作成するには、コピー機でイラストをOH

Pシートにコピーする。あるいは、OHPシート上に直接文字や図を書

くこともできる。ポイントとなる箇所は色を変えると効果的である。プ

ロジェクターのランプはスペアを用意しておく。

2.スライドプロジェクター

コースの枠組みに記載されているスライドを準備する場合は、よく確認

して、授業で扱う順に揃える。スライドは通常、写真のネガから作る。

追加でスライドが必要な場合、スライドが作れないときは、OHPを使

用する。

3.シネプロジェクター

フィルムを使用する場合は、プロジェクターでフィルムの仕様を確認す

る(16mm、35mm、音声など)。フィルムが破損していないか事前に映し

てみること。

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4.ビデオ ビデオテープの種類を必ず確認する。通常、VHSとベータマックスの

2種類が使用される。どちらも再生できる機器もあるが、大半はどちら

か一方しか再生できない。VHSとベータマックスは互換性がないので

注意する。テープに合った機械を用意する。また、テープ録画に使用し

たテレビのラスター方式(走査線数、フレーム数/秒、走査順序など)

が使用するテレビと合っているかも確認する。(不明な場合は専門家に

相談する。)ビデオはすべてコースで使用する前に再生して確認する。

5.コンピュータ コンピュータを使用する場合は、プロジェクターとの互換性と必要なソ

フトウエアを確認する。

6.一般注意事項

電源の電圧とAC、DCの別を確認する。機器が正常かつ安全に動くよ

う必要な措置を講じる。適切に配置されたスクリーンを使用することが

重要である。部屋を暗くする必要がある場合もある。カーテンやブライ

ンドを利用できるか事前に確認する。使用する教材はトラブルを避ける

ためすべて事前に映写し、正しい順番になっているか再生して確認す

る。それぞれ識別し、コースのスケジュール及び授業プランと照らし合

わせる。

3.10 IMO参考資料

コースの内容、つまり扱っている基準は、関連するIMOの国際規約の

基準やモデルコースに記載されている他の文書の規定に基づく。関連す

る出版物はIMOの出版サービスから入手でき、引用があってもコース

の大要に含まれていない場合、少なくとも講師には配布する。

3.11 テキスト

詳細なシラバスが特定のテキストを引用している場合がある。これらの

テキストは訓練生全員に配布する。テキストの在庫数があまりない場合

は、貸し出し、コース終了時に回収する。コース大要には必要な教材が

すべて含まれていない場合がある。

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127

モデルコース

実施ガイダンス

3.12 参考文献

参考文献の一覧をモデルコースに挙げる。この一覧表は訓練生に配布

し、追加情報がどこで得られるかわかるようにする。各文献を 低2部

は図書館に用意して受講生が閲覧できるようにする。

3.13 スケジュール

モデルコースに記載されているスケジュールはあくまで目安である。

1,2セッションの授業だけで十分な場合もある。しかし、そのような

場合でも、訓練生のニーズや講師及び使用できる器具などによって、ス

ケジュールは変更されるものということを頭に入れておく。

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1 準備 1.1 シラバスのうちどの部分を取り上げるか確認する。

1.2 シラバスをすべてよく読み、学ぶ。

1.3 実施する訓練分野を含むテキストや参考文献を入手する。

1.4 必要な器具備品とコース運営に必要なスタッフを確認する。

1.5 授業プランを使用する。講義用メモの整理や授業の準備のための簡便な

フォーマットを提供する。授業プランは、教材を細かく段階に分けて、

簡単な説明やキーワードなどと各段階に費やす時間を記載している。視

聴覚教材を使う場合は、授業のどの時点で使用するか、どれぐらいの時

間をあてるかも記入する。視聴覚教材は、講義で使用する前にあらかじ

めテストをする必要がある。付属書A3に授業プランの例を示す。

1.6 シラバスは訓練の成果に基づいて構成されているので、授業中各訓練生

が授業の内容を理解できたかどうかが比較的簡単に判断できる。そのよ

うな評価は、シラバスにある学習目的について、話し合いや口頭での質

問、筆記試験、複数選択式の質問のような選択式の試験などで行われる。

選択式の試験やショートアンサーテストは、評価者の先入観が入らず客

観的な判断ができる。証明に関わる場合は、該当する訓練や評価につい

て適切な資格を有する者が判断を行う。

準備を怠ると生徒は興味を失ってしまうということを忘れずに!

1.7 授業を行う前に使用する教室を確認する。すべての器具の準備が整って

いるか、補助スタッフは準備ができているか確認する。特に、黒板がき

れいにふいてあり、筆記用具と黒板消しが用意してあるか確認する。

2 話し方 2.1 常に生徒に面と向かって話す。生徒に背中を向けたまま話さないこと。

2.2 全員に聞こえるようにはっきり大きな声で話す。

パート2 指導手法についての注意事項

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129

モデルコース

実施ガイダンス

2.3 興味を失わせないように、クラス全員と視線を合わせるようにする。(た

とえば、1人の生徒だけをずっと見たり、宙を見つめたりしない。)

2.4 人はみな違う。ふるまいも反応も人それぞれ。生徒同士が互いに関心を

持ってやりとりできるようにするのは講師の重要な仕事の1つである。

2.5 授業の内容の中には特に重要なポイントがある。重要なポイントは強調

する。重要なポイントを覚えてもらうために、何度か、できれば表現を

変えて、繰り返し言うように心がける。

2.6 黒板を使う場合、全員に見えるようにはっきり大きく書く。とくに図な

どでは、重要なポイントを強調する場合は色を変える。

2.7 非常に集中して興味を持っていられるのは比較的短い時間である。した

がって、1回の授業中に、話す、書く、図を描く、視聴覚教材を使う、

質疑応答をする、話し合いをするなど異なる活動を組み合わせて、 大

限の興味を保てるようにする。書いているとき、あるいは図を描いてい

るときは、生徒の間を回って、必要に応じて、一人一人に、コメントし

たり、助言を与えたりする。

2.8 話し合いをしているときは、一部の人だけが話すのではなく、皆がまん

べんなく自分の意見やアイディアを話すことができるようにする。

2.9 質問をするときは、全体に質問を投げかけない。同じ人だけが答えてし

まう場合もあるためである。全員が参加できるように、一人一人に順に

質問する。

2.10 シラバスの内容に沿って進める。難しすぎる教材やコースの目的に関係

のないものは使わない。講師の間で競ってレベルを上げる場合がある。

また、シラバスで求められているレベルに下げることに強い抵抗がある

講師も少なくない。

2.11 後に、効果的な準備は講義の成功に大きく寄与する。物事はうまくい

かない場合もある。そんなとき、準備と計画がきちんとなされていれば

解決が容易になる。施設や設備では教え方を改善できないが、教え方が

よければ施設の不備や機器の不足などの短所を補うことができる。

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1 カリキュラム 辞書の定義によると、カリキュラムは「定期的な学習課程」、シラバス

は「学習課程を形成する教科の簡潔な記述」である。一般的な言い方で

は、カリキュラムはコース、シラバスは一覧表(教えられる科目の一覧)

である。

2 コースの内容 訓練コースに必要な教科と、教科で求められる具体的な技能や知識の深

さは、コースの受講者が遂行する職務の綿密な評価(職務分析)によっ

て判断する。この分析によって、必要な訓練、それからコースの目的が

決まる。それらが決定すると、コースの範囲を特定できる。

(注:コースの目的が達成されたかどうかの評価は、ある程度時間が経

ってから、コースを修了した者の仕事上の実績を見るまでわからないと

いう場合もある。しかし、詳細な学習目的は非常に具体的であり、すぐ

に評価可能なものである。)

3 職務分析 職務分析を正しく行うには、コースが対象とする職務分野に関係する組

織や団体によって行わなければならない。分析結果は、現在その職務に

就いている者の審査を通して検証し、訓練不足あるいは過剰訓練を防

ぐ。

4 コースプラン コースの目的と範囲を決定したら、コースプラン又は概要を作成する。

コースが対象とする生徒を想定し(訓練対象群)、受講基準を決め、受

講条件を決定する。

5 シラバス 後のステップは詳細なシラバスと時間割りの作成である。訓練分野を

含むテキストや技術文書の中で該当する部分が十分に各学習目的に適

合しているか確認する。その際、学習目的を超えてはならない。また、

追加教材の副読本の文献リストを作成する。

パート3 カリキュラムの作成

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モデルコース

実施ガイダンス

6 シラバスの内容 シラバスの内容は固定ではない。技術は絶えず変わっているので、重複

を除き、現行の方式を反映させるため、コースの教材を見直す手段が必

要である。上記で定義したように、シラバスはいわば一覧表である。通

常、試験シラバスと講義シラバスがあり、それぞれ試験問題に含まれる

題材と教師が授業や講義で用いる題材を表す。

7 訓練の成果 7.1 シラバスで難しいのは、どうやって求められる知識の深さを伝えるかで

ある。そのため、シラバスは通常一連の「訓練の成果」として構成する。

7.2 したがって、カリキュラム作成では、訓練実施機関(講師、講義スタッ

フなど)を問わず、同じコースを受ける訓練生全員が、 低限到達でき

るレベルと範囲を確実にするように訓練の成果を行使する。

7.3 訓練の成果は訓練生本位になっており、訓練生が学習過程の結果として

達成すべき 終結果を示す。

7.4 学習の過程が実際の技能や作業に関連している場合がある。目的を達成

していることを適切に示すために、訓練生の対応は、実際の応用、使用

法や仕事の経験に基づく必要がある。

7.5 訓練の成果は、主に訓練生が特定の学習段階を達成することを目指して

いるが、同時に、講師にとっては授業を組み立てる上での枠組みとして

の役割を果たす。

7.6 訓練の成果は具体的で、訓練生が何をすれば、学習過程の 終成果とし

て知識、理解、又は技能を得たことを示すことになるかが明確に書かれ

ている。

7.7 学習の過程は、コースの間に「知識を得ること」であり、「技能を伸ば

すこと」である。その過程の成果は身についた「知識」、「理解」、「技能」

である。しかしこれらの言葉だけでは訓練の成果を表わすには明確では

ない。

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7.8 具体的な訓練の成果を作成する場合は、訓練生ができるようになること

を明確に定義するため、「計算する」、「定義する」、「説明する」、「一覧

表にする」、「解決する」、「述べる」といった動詞を用いる。

7.9 IMOのモデルコースプロジェクトでは、海事訓練の質を高めたり、

新にするため、また世界に共通の 小限の基準を確立する上で途上国の

講師を補助するために一連のモデルコースを提供することを目的とし

ている。訓練の成果を用いることは、この目的を達成するための目に見

える方法の1つである。

7.10 造船分野についての訓練形式のシラバスを作成した例を付属書A2に

示す。この種のシラバスの標準的な構成になっている。この場合、各分

野の成果は定義されており、評価手法に利用できるが、シラバスの構成

をよりコンパクトにするためこの段階は省かれる場合がある。

8 評価 訓練の成果は、訓練生が達成すべき成果を表す。同じく重要なのが、そ

のような成果の達成は、審査をする者の個人的意見や判断に影響をうけ

ずに客観的に測定することができるという事実である。客観的な試験や

評価を基に、理解度や身についた知識のレベルについて確実な判断がで

きる。

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モデルコース

実施ガイダンス

番号

項目

決定

予約

電源

購入

験済

承認

開始

完了

状態

OK

コー

スプ

ラン

スケ

ジュ

ール

シラ

バス

範囲

目的

受講

基準

準備

コー

コー

ス修

了証

参加

者数

10

スタッ

コー

ディ

ネー

ター

講師(

講義

講師(

実習

技術

その

付属書A1 準備チェックリスト

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番号

決定

電源

試験

承認

完了

態OK

11

設備

(a)教

ラボ

ワークシ

ョップ

その他

教室

(b)器

具備品

ラボ

ワークシ

ョップ

その他

12

AVA機器

と器材

OHP

スライド

フィルム

ビデオ

13

IMO参考

資料

14

テキスト

15

参考文献

一覧

付属書A1 準備チェックリスト(つづき)

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モデルコース

実施ガイダンス

分野: 造船

受講条件: 造船所での業務について幅広い理解があること。

一般目標: 造船に使われる材料、造船用鋼の規格及び承認手続きについての知

識を身につける。

テキスト: シラバスを構成するために特に決まったテキストはないが、Eyres

著「Ship Construction」(T12)や Taylor 著「Merchant Ship

Construction」(T58)などの造船に関する書籍を参考に講義用メモ

を作成する。

付属書A2 モデルコースシラバスの例

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コースの概要

知識、理解、技能

テーマ

ごとの

時間

達成要件を

満たすまでの

分野ごとの時間

能力: 3.1 トリム、安定性、

応力の制御

3.1.1 造船、トリム及び

安定性の基本的原理

1. 造船材料 3

2. 溶接 3

3. 隔壁 4

4. 水密扉及び風雨密扉 3

5. 腐食とその防止 4

6. 検査と乾ドック入れ 2

7. 安定性 83 102

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モデルコース

実施ガイダンス

パートC3:詳細な講義シラバス

はじめに

詳細な講義シラバスは、一連の学習目的で構成される。学習目的は、訓練生が何

をすれば知識や技能が身についたことを示すことになるかを表す。

したがって、各訓練の成果には、さらに訓練生が習得すべき達成要素が書かれて

いる。講義シラバスには、以下の表に訓練生に要求される達成度が記載されてい

る。

講師を補助するために、IMO参考資料、IMO出版物、テキスト、補助教材が

参考として示されているので、授業の準備をする際や授業をする際に役立ててく

ださい。

コースの枠組みで挙げた資料は、詳細な講義シラバスを作成する際に用いてい

る。特に次の資料からは有益な情報を得られる。

補助教材(Aで表す)

IMO参考資料(Rで表す)、及び

テキスト(Tで表す)

シラバスの表中の情報の解説

各表は次のような構成になっている。表の一番上の行は、訓練の対象となる職務

(Function)を示す。職務は、STCWコードで規定されている業務や責務を意

味する。船上におけるある専門領域や部門別の責務を構成する活動が記載されて

いる。

列の見出しには、能力(Competence)と書かれている。各職務には複数の能力が

含まれる。例えば、職務3の「船舶の運航を制御し、管理職として乗組員に対し

て責任を持つ」には、複数の能力が含まれる。各能力は本モデルコースでは固有

の番号で識別する。

上記の職務では、「トリム、安定性、応力の制御」がその能力になる。番号は3.1

で、職務3の1番目の能力であることを表す。この「能力」という言葉は、個人

が船上においてある仕事や責務を安全かつ効率的に時宜にかなって遂行するた

めの知識の応用、理解度、習熟度、技能、経験を意味する。

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その次に示されているのは、訓練の成果(Training Outcome)である。訓練の成

果は、訓練生が知識や理解度を示すべき、知識、理解、技能の分野である。各能

力には複数の訓練の成果が含まれる。例えば、上記の能力には3つの訓練の成果

が含まれる。1つ目は「造船、トリム及び安定性の基本的原理」の基本原則に関

連する。訓練の各成果は本モデルコースでは固有の番号で識別する。造船、トリ

ム及び安定性の基本的原理に関する番号は、3.1.1 である。例えば TRAINING

OUTCOME のように、訓練の成果はわかりやすいように、グレー地に黒で印刷して

いる。

各訓練の成果の後に、能力の根拠としての達成要件を列挙する。コースでの指導

や訓練、学習によって、訓練生が規定の達成要件を満たすように導く必要がある。

「造船、トリム及び安定性の基本的原理」に関する訓練の成果では、次の3つの

達成度が示される。

3.1.1.1 造船材料

3.1.1.2 溶接

3.1.1.3 隔壁

以下の達成要件の各番号付けされた分野には、訓練生が終了すべき活動の一覧及

び満たさなければならない能力の基準が列挙されている。これらは、講師が授業

や講義、試験、演習などを計画する際に使うためのものである。例えば、3.1.1.1

のテーマの達成要件を満たすためには次のことを達成する必要がある。

-鋼は鉄の合金であり、合金材料の種類と量によって特性が変わるとういこ

とを認識している。

-造船用鋼の規格は船級協会が定めるということを認識している。

-造船用鋼は、船級協会の検査員が試験をし、等級を定めて承認印を押すと

いうことを認識している。 など。

IMO参考資料(Rx)は表の右の欄に記載される。訓練の成果や達成要件に関連

する補助教材(Ax)、ビデオ(Vx)、テキスト(Tx)は、訓練の成果のタイトルの

すぐ下に記載される。

表に記載されている達成要件の順序どおりに授業を行う必要はない。シラバスの

表はSTCWコードの表 A-II/2 の能力に合せて作成したものである。授業は各

学校の運営に合せて行う。例えば、造船材料を安定性の前に学習しなければなら

ないということはない。必要なのは、すべての内容が含まれていることと、達成

要件の基準を満たすよう効果的な指導を行うということである。

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139

モデルコース

実施ガイダンス

職務3:船舶の運航を制御し、管理職として乗組員に対して責任を持つ

能力3.1 トリム、安定性、応力の制御 IMO

参考資料

3.1.1 造船、トリム及び安定性の基本的原理

テキスト:T.11, T12, T35, T58, T69

補助教材:A1, A4, V5, V6, V7

達成要件:

1.1 造船材料(3時間)

-鋼は鉄の合金であり、合金材料の種類と量によって特性が

変わることを認識している。

-造船用鋼の規格は船級協会が定めるということを認識し

ている。

-造船用鋼は、船級協会の検査員が試験をし、等級を定めて

承認印を押すということを認識している。

-等級AからEまでの軟鋼が船の大部分に使われていると

説明できる。

-薄い外板などの応力の高い箇所に高張力鋼が使われる理

由を認識している。

-軟鋼の代わりに高張力鋼を使うと同じ強度で重量を軽く

できると説明できる。

-以下の意味を説明できる。

張力

延性

硬度

靭性

-ひずみとは元の長さで除算した伸びであると定義できる。

-軟鋼の応力ひずみ曲線を描ける。

-以下を説明できる。

降伏点

極限引張応力

R1

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140

弾性率

-靭性は、脆性破壊を生じる傾向に関係があると説明でき

る。

-破壊応力は、プレートの小さなひびや欠けから引き起こさ

れると説明できる。

-低温条件下にあると脆性破壊が生じやすくなることを認

識している。

-封じ込めた液化ガスの非常に低い温度には軟鋼は適さな

いということを認識している。

-造船で使用される鋳物と鍛造物の例を挙げられる。

-上部構造にアルミニウム合金を使う利点を説明できる。

-アルミニウム合金は、船級協会の検査員が試験をし、等級

を定めるということを認識している。

-火災時、アルミニウム製の上部構造がどのように強度を保

つか説明できる。

-アルミニウム合金が鉄鋼に接続されている場合に必要な

防食措置を述べることができる。

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141

モデルコース

実施ガイダンス

主要

項目

具体

的な

訓練

成果と記

憶のた

めの

キーワー

指導方法

キス

IMO参

考資料

A/V教

講師

ガイ

ライ

講義用

メモ

時間

(分)

1.1 造

船材料

(3時

間)

鋼は

鉄の

合金

であ

り、

用い

られ

る合

金材

料の

種類

と量

によ

って

特性

が変

わる

とい

うことを

認識し

てい

る。

講義

T12, T58

STCW Ⅱ

/2,

A-Ⅱ/2

V5 to V7 A1

講師

作成

10

造船

用鋼

の規

格は

船級

協会

が定

める

とい

うことを

認識し

てい

る。

講義

T12, T58

STCW Ⅱ

/2,

A-Ⅱ/2

V5 to V7 A1

講師

作成

20

等級

Aか

らEま

での

軟鋼が船

の大部

分に

使われて

いると

説明

できる。

講義

T12, T58

STCW Ⅱ

/2,

A-Ⅱ/2

V5 to V7 A1

講師

作成

15

薄い

外板

など

の応

力の

高い

箇所

に非

常に

伸張

性の

ある

鉄鋼

が使

われ

る理

由を

認識

している

講義

T12, T58

STCW Ⅱ

/2,

A-Ⅱ/2

V5 to V7 A1

講師

作成

10

軟鋼

の代

わり

に高

張力

鋼を

使う

と同

じ強

度で重量

を軽く

でき

ると説明

できる

講義

T12, T58

STCW Ⅱ

/2,

A-Ⅱ/2

V5 to V7 A1

講師

作成

15

付属書A3 付属書A2の授業プラン例

分野:3.1

トリム、安定性、応力の制御

授業

No.:

1

授業時間:3時間

訓練分野:3.1.1

造船、トリム及び安定性の基本的原理