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花きセミナー「海外の花需要と国産花き輸出の可能性と課題」
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問題になってからは日本産が一番人気です。
そのような意味ではアジアに関して、日本の
花はブランド化できるのではないかと思いま
す。国内のマーケットの将来について、悲観
的な話が多い中、今後縮小するであろうと言
われている花の消費マーケットを海外に広げ
ていくことで次世代の農業者の販売先を確保
できると思っています。
最後に、資料には入っていないのですが、
一般社団法人日本植物輸出協議会についてご
紹介します。切り花、鉢物、花き全般の輸出
促進団体として社団法人化し、現在会員募集
をしています。生産者さん、行政関係の方、
入会費は無料ですからぜひお問い合わせくだ
さい。Facebook ページもありますし、ホー
ムページも開設しています。入会申込書はホ
ームページからダウンロードできますので、
気になる方はのぞいて見てください。入会さ
れていいことはあっても、悪いことはありま
せん。
(質疑応答)
Q:いろんな産地さんが輸出に取り組んでい
ると思うが、1 番古いところやこれから伸び
ていく産地さんは?市場側からすると産地が
直接取引をしている傾向が強いように思う。
公開できる範囲でかまわないので、仕入れの
仕方等も教えていただきたい。
A:基本的に農協の輸出事業は市場を通して
います。今、切り花を輸出している方も何人
かいますが、市場を帳合機能として活用して
いて、市場に荷物を集めないことには花を輸
出できません。例えば静岡で花を出そうとし
たとき、県だけでは海外のニーズに応えるだ
けのカバーができません。食べ物であれば米
だけでコンテナを作ることもできますが、花
の場合コンテナを 1 つの産地で埋めたらもの
すごい金額になります。そのような輸出はで
きません。花の輸出では市場、流通機能を最
大限生かして輸出しないとまず成功しないと
私は思っています。
今まで産地さんが県の事業を使って海外に
農産物を売り込んだ事例は多くありますが、
各県から同じものを持って行って売ってくだ
さい、といっても公平にやりづらい。花の場
合は市場が集約して持って行くので、いろん
な県から同じものが重複して来なくていいと
言われています。高い花を効率化して出して
いくには、1 つの場所に集約、リパックして
混載で輸送しボリュームをかさ上げしていく。
ばらばらに 1 つの産地だけでやるのは難しい
のが現状です。基本的には市場の役割が花の
輸出に関しては大きな存在です。新いわてさ
んの場合は特殊ですが、りんどうは輸送効率
がよく重量もあってオランダの市場でセリに
もかけられるということで、単独でりんどう
だけを輸出していますが、それ以外の花で単
独で送り、採算にのった事例はありません。
必ず市場が中心となって輸出しています。
Q:輸出用の梱包資材と国内流通用とでは違
う点があるか?また、コストや現地での販売
額はどのぐらいか?
A:今回の配布資料の中にあった国の事業で
箱のサイズの検討ができるようですが、産地
さんからきた箱で、グロリオーサなんかは 20
本入っていたものを 40 本入りにするとかし
て運賃効率を良くしていましたが、産地や品
目によって箱のサイズがまちまちなので単純
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に到着価格でいくらとは答えられないところ
があります。規格箱を作って 10、15、20、
25 キロときりのいい数字にして、この花材が
何本詰められるかというデータベースを作っ
ています。そうすると概算の現地到着の値段
が出せるので、輸出をしていく上では箱を規
格化することが大事です。スイートピーは国
内では小さな箱で流通していますが、輸出の
15 キロ箱を使って 800 本詰めています。800
本ぎゅうぎゅうに詰めてアメリカに十何時間
かけて送っても平気なので、最初は勇気もい
りましたが、1 本あたりの運賃も一桁になり
ます。現地で販売されている価格がいくらか
は、マーケットの特性によっても違いますが、
香港だと現地到着価格の 2.5 倍ぐらいで売ら
れています。卸売業者さんだと掛け率も高く
ないですが、小売りだと 2.5~3 倍ぐらいです。
アメリカも 3 倍ぐらいです。ロシアだと卸値
が仕入れの 5~7倍ぐらいで掛け率が高く、
小売りになると更に 2 倍ぐらいです。日本産
のトルコギキョウ 1 本が南米のトルコギキョ
ウ 1 束と同じぐらいの値段です。品質や品種
の違い、日持ち性の高さで受け入れてもらっ
ています。
Q:輸出の可能性はあると思うが、輸出でマ
ーケットを拡大しても、逆に日本の花が定着
すると、種苗会社がその種を諸外国に売って
現地生産を広げてしまうのではないか。
A:種苗の輸出に携わったこともありますが、
技術指導で日本の方が行っても日本人的な精
神がないとまずうまく作れません。カリフォ
ルニアだと日本の生産者を連れてきて一緒に
合弁会社を作りたいという方もいっぱいいま
すが、スペイン語を話す人たち、南米の人た
ちが労働者として働いていて、彼らに日本の
「作り魂」を理解させるのは難しい。1 回行
かれてみては?(笑)日本産の優れていると
ころは日持ちの良さやブランドイメージの高
さですが、日本からの輸出の値段が高すぎて
無理な地域、例えば、中国などで、河野メリ
クロンの農場で日本の人たちの技術をもとに
作った商品を見せてもらいましたが、結構い
いものを作っていました。ただ、日本産の純
正のタグをつけて売っている商品と、日本の
ライセンスのもと中国で作った商品とはブラ
ンドイメージが全く違います。また、現地に
日本の法人があるから作れるのであって、種
を送って 1 年に数回技術指導をしたぐらいで
はなかなか同じようなものはできません。現
地に住んでずっと指導をして私が作るんだと
いう意気込みで生産して、流通までカバーで
きるようになったら、国内で作るよりも儲か
るかもしれませんね。特にアメリカは市場が
ないので、自分で売り込める力をつければ大
もうけができるかもしれません。専用の飛行
機を持って飛び回れるような生活ができるか
もしれませんね(笑)。
Q:検疫制度でアメリカ、香港、シンガポー
ルでは輸出検疫の必要はないようだが、ロシ
アやカナダの検疫制度はどうか?
A:カナダも輸出検疫の必要はないです。ロ
シア向けは日本で植物検疫検査を受け、合格
証明書を発行してもらいます。ロシアには複
雑な制度がいろいろありまして、契約を結ん
だら番号を入れるとか、契約書に上限の取引
額を記載しなければいけないとか、書類がや
やこしいです。AWB(送り状)に運賃を書
くと課税されるから書かないようにしてくれ
だとか、箱の重さや商品の大きさを分けて記
載しなさいとか、かなり細かな要求がありま
す。ロシアに直接送っている人はまだ誰もい
ません。取組を始めたところですが、ウラジ
オストックは比較的簡単ですが、モスクワは
空港を牛耳っている人が厳しく大変な状況で
す。
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花きセミナー「海外の花需要と国産花き輸出の可能性と課題」
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Q:TPPが輸出に与える影響についてどう
考えるか?
A:日本は輸入切り花に関して何十年も前か
ら関税がかかっていないですよね。なのに、
海外に輸出しようとするとアメリカでも十
何%とられ、ヨーロッパもそうですし、おそ
らく関税がかかっていないのは香港ぐらいで
しょうか。シンガポールで 8%、ひどい国だ
と 200%かかります。そこでまず輸出原価が
高くなってものが動かないことがあります。
特恵原産地証明の話をしましたが、それがな
くてもその国の中で自由に動けるようになれ
ばいいですよね。例えば、香港に荷物を送る
となると、朝月曜日のセリで切り花が入って
きます。朝加工して空港に持って行き夕方の
飛行機に載せると夜中に着きます。そうする
と翌朝店頭にもう並びます。これは沖縄から
宅急便で東京に送るよりも早いです。関税が
なくなってアジアの中で花がもっと動きやす
くなれば輸出にとっては大きなプラスになり
ます。農協はTPP反対といいますが、輸出
している人たちはしらーっとしていましたね。
農協となると難しいと思いますが、花に関し
ては完全に自由化されていますので、もう失
うものは何もない。花の生産者さんは古くか
ら自由化されている中で生き残って成長され
てきたということを、もっと国や政治家に知
ってもらいたいと思います。
以上