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シール 態およびプラズマ さまざま ガス 液体が される。 って されているシールに シール ,耐 ,耐プラズマ ,耐 められる。 ,これら に対 きるさまざま メタルシールおよびゴムシールを した。 メタルシール して ,マスフローコントローラ メタル O リング, サンカップ ® ガス こら いアルミジャケットシール がある。 またゴムシール して ,耐 い「サンエラスト ® Ⅰ」,耐プラズマ れた「サンエラスト ® Ⅱ」, 1364-70,および 1349-80 した。 にゴムシール ゲートバルブ トリシールを した。 ,これら について,そ する。 キーワード:シール, 体, ,メタル O リング,サンカップ,耐 ,耐プラズマ ,ふっ ゴム, サンエラスト,UE RE-O ,パーティクル,あり Summary In the semiconductor manufacturing, various kinds of gases and liquids have been used under vacuum condition and irradiation of plasma. Accordingly, seals used for semiconductor manufacturing devices were required low leakage under vacuum condition, and also good resistance for chemicals, plasma and high temperature. Corresponding to such needs, various kinds of metal and rubber seals were developed by using our technology. In the metal seals, an ultra lapping Metal-O-Ring for mass flow controller, SUNCUP ® for integrated gas system, and an aluminum jacket seal which suppressed gas permeation were developed. Rubber materials such as SUNELAST ® , SUNELAST ® , material number 1364-70, and 1349-80 were also developed. Further, TRI seal that uniquely designed for gate valve was created. In this report, characteristics of these newly developed seals were explained. Key wordsSeal, Semiconductor, Vacuum, Metal O Ring, SUNCUP, Chemical Resistance, Plasma ResistanceFluorocarbon ElastomerStickingSUNELASTUE ModifyRE-O Modify, ParticleDovetail Groove 59 半導体製造装置用シール Seals Used for Semiconductor Manufacturing Devices *  ツ井  T. Mitsui T. Kariya M. Kawahigashi 一  K. Kobiki K. Nishida した シールについて る。 2.半導体の製造工程 するこ られたペー しい ,概 みを する。 を大 する Table 1 ように る。 あるパッキン・シール わりが 1.まえがき 核を っている。 プラズマエッチング ように される。そ されるパッキング・ガスケッ シールに される え,耐プラズマ ,耐ガス にわたる。 ,これら える多く シールを している。
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半導体製造装置用シール半導体製造装置用シール 要 約...

Feb 25, 2020

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Page 1: 半導体製造装置用シール半導体製造装置用シール 要 約 半導体製造工程では,真空状態およびプラズマ照射下でさまざまなガスや液体が使用される。従って製造装置に

半導体製造装置用シール

要  約

 半導体製造工程では,真空状態およびプラズマ照射下でさまざまなガスや液体が使用される。従って製造装置に使用されているシールには,真空シール性,耐薬品性,耐プラズマ性,耐熱性など過酷な仕様が求められる。当社

は,これらの過酷な仕様に対応できるさまざまなメタルシールおよびゴムシールを開発した。 メタルシール開発品としては,マスフローコントローラ用超研磨メタルOリング,集積弁用サンカップ®,低締付力でもガス透過が起こらないアルミジャケットシールなどがある。

 またゴムシール材としては,耐薬品性の良い「サンエラスト®Ⅰ」,耐プラズマ性に優れた「サンエラスト®Ⅱ」,発塵性の少ない材料1364-70,および真空用材料 1349-80を開発した。更にゴムシールの設計面では,当社独自の

ゲートバルブ用トリシールを作り出した。 本報では,これらの開発品について,その特長を紹介する。キーワード:シール,半導体,真空,メタルOリング,サンカップ,耐薬品性,耐プラズマ性,ふっ素ゴム,固着,

サンエラスト,UE改質,RE-O改質,パーティクル,あり溝

Summary

 In the semiconductor manufacturing, various kinds of gases and liquids have been used under vacuum condition

and irradiation of plasma. Accordingly, seals used for semiconductor manufacturing devices were required low

leakage under vacuum condition, and also good resistance for chemicals, plasma and high temperature. Corresponding

to such needs, various kinds of metal and rubber seals were developed by using our technology.

 In the metal seals, an ultra lapping Metal-O-Ring for mass flow controller, SUNCUP® for integrated gas system, and

an aluminum jacket seal which suppressed gas permeation were developed.

 Rubber materials such as SUNELAST®Ⅰ , SUNELAST®Ⅱ , material number 1364-70, and 1349-80 were also

developed. Further, TRI seal that uniquely designed for gate valve was created.

 In this report, characteristics of these newly developed seals were explained.

Key words: Seal, Semiconductor, Vacuum, Metal O Ring, SUNCUP, Chemical Resistance, Plasma Resistance,

Fluorocarbon Elastomer, Sticking, SUNELAST, UE Modify, RE-O Modify, Particle, Dovetail Groove

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半導体製造装置用シールSeals Used for Semiconductor Manufacturing Devices

* 部品事業本部 箕島製作所 技術開発部

三ツ井 孝 禎*   假 屋 隆 広*   川 東 正 記*

T. Mitsui T. Kariya M. Kawahigashi

木 挽 一 彦*   西 田 和 正*

K. Kobiki K. Nishida

 本報では,半導体の製造工程の概要を述べた後,当社が

開発した半導体製造装置用シールについて述べる。

2.半導体の製造工程

 半導体の製造工程を全て説明することは,限られたペー

ジ数では難しいので,概略のみを記述する。 製造工程を大別すると,Table 1のようになる。

 当社製品であるパッキン・シール類に関わりが深いの

1.まえがき

 半導体産業は,今日の産業全体のなかで中核を担う分野

となっている。半導体製造工程は複雑でその製造装置には,プラズマエッチングなどのように従来の装置にない仕様が要求される。その装置に使用されるパッキング・ガスケッ

トのシールに要求される特性も耐熱性に加え,耐プラズマ性,耐ガス性など多岐にわたる。当社は,これらの要求に

応える多くのシールを開発している。

Page 2: 半導体製造装置用シール半導体製造装置用シール 要 約 半導体製造工程では,真空状態およびプラズマ照射下でさまざまなガスや液体が使用される。従って製造装置に

三 菱 電 線 工 業 時 報 第97号 平成13年1月

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は,これらの内の主としてSiウェーハー製造工程の一部と

ウェーハープロセスである。 ウェーハープロセスから代表的な技術や工程,関連する装置などを紹介する。

2.1 熱処理工程

 熱処理の目的としては,熱酸化,熱拡散,各種目的を持っ

たアニールなどである。   熱酸化の代表的な例としては,“酸化膜形成”がある。これはSiの表面に酸化膜を形成するもので,均一な酸化膜を

安定して形成することが,ウェーハープロセスにとって重要となる。 熱拡散は,次に述べる 2.2節の不純物導入とラップする

もので,Si中への不純物を熱により拡散させるものである。 アニールには,金属間の反応を促すもの,結晶化,形成した膜の特性安定化,キュアを目的とするものなどさまざ

まな種類がある。 熱処理温度は,一般に熱酸化・熱拡散では1000℃を超える場合が多く,アニールは目的により300℃前後~1000℃

以上までさまざまである。

2.2 不純物導入工程

 ここで言う“不純物”とは“ドーパント”のことである。不純物導入の目的はウェーハーの特定部分にドーパントを導入することで,その部分をn型 あるいはp型半導体と

することにある。従って,導入されるドーパントとしては,リン(P),硼素(B),砒素(As)が主なものである。 前項で述べたように,初期の頃は不純物導入に熱拡散法

が使用されたが,現在では,イオンの加速電圧・イオン電流・時間を制御することで,より品質の安定したイオン注入(打込み)法が主役となっている。

2.3 薄膜形成工程

 一般に,この工程の中心をなすのは “CVD”(Chemical

Vapor Deposition)と“PVD”(Physical Vapor Deposition)である。 CVDの特徴として以下のものが挙げられる(Fig. 1)。

・基板は加熱されるのが基本。・膜は表面反応(化学反応)により形成される。・金属(導体),絶縁膜,半導体のどの膜形成も可能。

・膜組成は,導入するガスの制御により可能。CVDの種類としては,常圧CVD,減圧CVD,プラズマCVD

などがあり,使用されるガスもH2,NH3,SiH4,SiCl4,

SiH2Cl2,TEOS,WF6,TiCl4 など目的に応じて,種々のものが単独あるいは組み合わせて使用される。 PVDとしては,真空蒸着,イオンプレーティング,スパッ

タリングがあるが,現在はスパッタリング(Fig. 2)が主流となっている。スパッタリングの特徴は以下のとおりである。

・基板は常温のものが多い。・真空中での工程となる。・主に金属(導体)膜の形成に使用される。

・組成制御はCVDに比べて難しい。

 スパッタリング装置は,真空中でターゲットにArイオンを衝突させることで,ターゲットから原子を飛び出させ基

板に堆積させている。ターゲット材としては,Al,Al合金,Tiなどが主なものである。

2.4 リソグラフィー工程

 リソグラフィー工程は,必要とされる配線パターンと素子を形成していくものである。配線パターンの形成はプリ

ント基板などでも行われているが,半導体チップでは,回路上に必要な素子をも作り込んで行くところが大きく異なっている。リソグラフィー工程の概略は Fig. 3のとおり

である。 回路設計図から展開された各層の配線パターンはフォトマスクに描かれている。基板に塗布されたフォトレジス

トへの露光は,ステッパと呼ばれる縮小投影露光装置を用いて行われる。 現像によりフォトレジストの除去された部分では,導体

Table 1 Category of semiconductor

fabrication

半導体製造工程の概略

Siウェーハー製造工程

ウェーハープロセス(前工程)

組立て工程(後工程)

検査工程(後工程)

Fig. 1 CVD

CVDの概略

ガス導入

基板/ヒータ

排気

Si Si

例えばSiH4-H2

Fig. 2 Sputtering

スパッタリングの概略

基 板

ターゲット(例えば Al)

排気

Al

Ar+Ar+

Al

Page 3: 半導体製造装置用シール半導体製造装置用シール 要 約 半導体製造工程では,真空状態およびプラズマ照射下でさまざまなガスや液体が使用される。従って製造装置に

半導体製造装置用シール

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や半導体が露出しており,エッチングによりその部分が除去されて配線パターンが形成される。 回路パターンのエッチングはドライエッチングが主で

あり,プラズマエッチング装置や反応性イオンエッチング装置が使用されるほか,スパッタリング装置によるエッチングも行われる。ドライエッチングは化学反応を利用した

ものであり,反応に使用されるガスとしては,O 2,C F 4,CHF3,BCl3,SiCl3,SF6 などがある。

2.5 その他

 2.1~2.4節以外にも,製造開始時や各工程間で行われる洗浄工程では,超純水やH2SO4,HCl,HF,H2O2 などを

用いて,パーティクルだけでなく有機物,Na+や K+などの汚染イオン,重金属などを除去している。 半導体の製造では,必要な回路の形成に向け前述の工程

や他の工程を数十回繰り返してデバイスを製造している。

2.6 シールとの関わり

 現在の半導体デバイスの最先端のものでは,配線ルール0.18µmのものが量産されている。今後とも高密度化やそれに伴う微細化が進み,処理能率向上のためSiウェーハー

の大径化も,ますます拍車がかかることが予想される。また,歩留まりの維持・向上のため素材・材料ガスの純度向上,素材ハンドリング・ガス供給系装置や配管での耐汚染

性も求められている。 このような状況から,パッキン・シール類に対する要求も高度化し,シール性の安定,耐溶剤性,耐薬品性,耐プ

ラズマ性,アウトガスの低減,使用温度域の拡大など多岐にわたっている。 以下の章で,当社でのシール類を中心とした半導体関連

製品の動向や開発状況について紹介していく。

3.メタルシール

3.1 超研磨メタルOリング

3.1.1 用途

 ゴムシールは,その取り扱い性の良さから半導体向けにも大量に使用されているが,一般に高温のベーキングが難

しいこと,気体の透過量が多いことから超高真空には不向きである。このため超高真空用のシールとしては,メタルOリングをはじめとしたメタルシールが使用されている�。

現在使用されている当社のメタルOリングは,高気密性を保持するため表面に金 , 銀などの軟質金属をめっきした仕様となっており,真空フランジや真空バルブなどのシール

材として適用されている。しかし近年,高機能化の一途をたどる半導体製造装置においては,超LSIの高集積化 ,高速化を実現するために,ウルトラクリーンプロセスが不可欠

となっている。このプロセスクリーン化の決め手の一つとして,ガス配管系の高性能化があり,供給ガスの高純度化に加え,微細なパーティクルの発生を抑えることが重要と

なっている。当然ながら使用されるシールにおいても,めっき表層から剥離するパーティクルの解消など,厳しい要求が課せられるようになってきている。

 ここでは,上記の要求を満足し,ガス供給ラインに使用されるウルトラクリーン対応のマスフローコントローラ(MFC)用に開発した,超研磨メタルOリングについて紹

介する。 MFCとは,半導体製造工程で使用されるプロセスガスを高精度に制御する機器で,基本構造は Fig. 4のとおり,流

量センサ ,バイパス ,バルブおよび電気回路から構成されている。 当社の超研磨メタルOリングは,MFCのセンサ,バルブ

および外部継手部分に採用されており,現在数サイズの製品をMFCメーカーに納入している。

3.1.2 構造および材料

 超研磨メタルOリングはFig. 5に示すように,従来のメタルOリング同様,ステンレスチューブをリング状に成形

し突き合わせ溶接したものであるが,問題とされるめっきを施さず,高気密性能が得られるよう,独特の研磨法により表面を超仕上げした仕様となっている。

 なお,チューブ材料はSUS316Lを採用している。これは,半導体製造プロセスで使用されるガスが反応性(腐食性)のものであるため,MFCのガス接触部同様耐食性に優れた

材料を選択している。

3.1.3 特長

 超研磨メタルOリングは,チューブ材料と研磨方法が従来のメタルO リングと異なっており,以下の特長がある。� チューブ材料に特有の性能を持たせることにより,

Fig. 3 Process flow

工程概略

露光

Siウェーハー

金属(導体)

フォトレジスト

a)フォトレジスト塗布

e)フォトレジスト除去

c)レジスト現像

d)エッチング

b)露 光

Page 4: 半導体製造装置用シール半導体製造装置用シール 要 約 半導体製造工程では,真空状態およびプラズマ照射下でさまざまなガスや液体が使用される。従って製造装置に

三 菱 電 線 工 業 時 報 第97号 平成13年1月

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めっきをせずに表面を超仕上げすることで,高気密性

(1× 10-12Pa·m3/sec[He]以下)が得られる。� めっきレスのため,メタルO リングからのパーティクル発生はなく,ウルトラクリーンを要求される用途に

最適である。また,脱ガス量が少ないので超高真空が容易に得られ,半導体製造ラインにおける供給ガスの高純度化に対応可能である。さらに,めっきを不要とした

ことで,コスト低減 ,納期短縮が可能となった。� チューブ材料を耐食性のある SUS316Lにしているため,多様なガスに使用可能で,特にハロゲン系の腐食性

ガスに対して有効である。� メタルシールに最適な超仕上げする研磨技術を確立したことで,安定した高い品質レベルが維持される。この

技術は,他の半導体用メタルシールにも採用しており,数多くの実績がある。

3.1.4 機能特性

 本用途の製品のうち,代表的なAと Bの超研磨メタルO

リングについて,機能特性を説明する。なお,上記 2サイ

ズはそれぞれ,外径寸法がφ 6.35mmとφ 17.48mmに相当するメタルOリングである。

 上記以外にも,C(φ 7.92mm),D(φ 12.70mm)を現在量産している。 さらに口径の大きいE(φ25.40mm)まで,同等の機能

特性を有することを確認している。

�締付力

 メタルOリングをMFCに組み付ける時は,各サイズで設定したトルクにてボルトを締め付けるため,メタルOリングの締付力は重要な特性の一つである。

 Fig. 6に測定方法の概略図を示す。 締付力とは,上下鏡面フランジの間にセットしたメタルOリングを,引張り試験機で徐々に圧縮したときに得られ

る「つぶし量と圧縮荷重の関係」を求めたものであり,その関係を Fig. 7に示す。

�リテーナ厚さとシール性 MFCで使用される超研磨メタルOリングは,リテーナによってつぶし量が管理されている。リテーナの厚み寸法が

ばらつくと,当然ながらつぶし量が変わり,その変化に対するシール性についても確認しておく必要がある。さらに,使用する上では,�項の締付力と合わせて,最適なつ

Fig. 4 Structure of MFC

MFCの基本構造

層流素子バイパス�(株)エステック殿の�   カタログより�

流量センサー�

メタル�ダイヤフラム�

流量制御�バルブ�

ピエゾ�アクチュエータ�

流量出力信号�

補正回路�

増幅回路�

ブリッジ�回路�

比較制御�回路�

バルブ�駆動回路�

流量設定信号�

駆動電源�●構造/動作原理�

Fig. 5 Design of ultra lapping metal-O-ring

超研磨メタルOリングの構造

φ6.35~φ17.48

0.86~

0.91

(シール高さ)

超仕上げ(めっきレス)

ステンレスチューブ(SUS316L)

Fig. 6 Testing procedure for compression force measuring

締付力の測定方法概略図

メタルOリング

ロードセル

鏡面圧縮板

押えプレート

受けプレート

Fig. 7 Compression forces of metal-O-rings

超研磨メタルOリングの締付力

0.0

2.0

4.0

6.0

8.0

10.0

12.0

14.0

16.0

18.0

20.0

0.00 0.05 0.10 0.15 0.20 0.25 0.30

つぶし量 [mm]

締付力 

[kN

]

A

B

Page 5: 半導体製造装置用シール半導体製造装置用シール 要 約 半導体製造工程では,真空状態およびプラズマ照射下でさまざまなガスや液体が使用される。従って製造装置に

半導体製造装置用シール

ぶし量を設定できることになる。 Fig. 8にリークテスト方法を示す。リークテストは,常温

にてリテーナ厚さを変化させたときのシール性を,フード法で確認している。また,シール性については,再使用の場合を考え,同一フランジに 3回まで着脱した時の性能を

確認しており,その結果を Table 2に示す。

 常温においては,リテーナ厚さ0.55~0.80mmの範囲でリークはなく(検出感度以下),高いシール性を発揮する。ただし,リテーナ厚さが小さい範囲,すなわちつぶし量が

大きくなると,フランジのダメージや締付力が増大するので,リテーナ厚さは0.70mm,つぶし量で言うと 0.2mm前後を推奨する。逆にリテーナ厚さが大きいとき,すなわち

つぶし量が小さいと,僅かな表面欠陥などでリークにつながる可能性がある。

�ヒートサイクル性 半導体製造装置では,超高真空を得る手段として必ずと

いっていい程,装置類のベーキングを実施している。勿論,それら装置類に使用されるシールも同じ温度に曝されることになり,超研磨メタルOリングも例外ではなく,ベー

キング温度においてもシール性を維持することが要求される。ここでは,ベーキング温度以外に,低温での保管状態も考慮に入れた,-20℃×1h 200℃×1h, 3サイクル

の条件でヒートサイクルを行い,サイクル前後のリークテストにてシール性を確認している。リークテスト方法は,Fig. 8と同じだが,リテーナ厚さは,推奨値の 0.7mmに設

定している。 ヒートサイクルテストの結果を Table 3に示すが,シール性を充分維持できることを確認できた。

メタルOリングの再使用性

 当社では,基本的にメタルOリングは再使用しないことを推奨しているが,ここではあえて常温のリークテストにて再使用性を確認した。テスト方法は Fig. 8に示す方法で

行っているが,リテーナ厚さは0.7mmとした。ただし,フランジは常に新しいものを使用した。 Table 4に,超研磨メタルOリングの再使用テスト結果を

示す。いずれのメタルOリングでも,5回までの再使用が可能であることを確認しているが,フランジの状態によって結果は左右されるので,再使用の場合フランジの状態を

十分に確認する必要がある。

3.1.5 まとめ

 各種テストにより超研磨メタルOリングのシール性など

について評価したが,メーカでの実機評価でも優れたシール性を持つことが確認され,マスフローコントローラ用のシールとして既に量産納入中である。

 今後の動向として,クリーン化や耐食性などの観点から,次世代のMFC用材料としてダブルメルト材が有力とされており,現在でも一部分でこの材料を採用する動きがあ

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着脱

回数* 2

1回

2回

3回

1回

2回

3回

リテーナ厚さ(つぶし量* 1)[ m m ]

0.6

(0.29)

OK

OK

OK

OK

OK

OK

Table 2 Relation between retainer thickness and sealing

performances

リテーナ厚さとシール性の関係

P/N

A

B

OK···リークなし(最小検出感度 1× 10-12Pa·m3/sec)NG···リークあり(10-12Pa·m3/sec以上)

0.55

(0.34)

OK

OK

OK

OK

OK

OK

0.65

(0.24)

OK

OK

OK

OK

OK

OK

0.7

(0.19)

OK

OK

OK

OK

OK

OK

0.75

(0.14)

OK

OK

OK

OK

OK

OK

0.8

(0.09)

OK

OK

OK

OK

OK

OK

0.85

(0.04)

OK

OK

OK

OK

OK

NG

*1 つぶし量は,メタルOリングのシール高さを 0.89mmとした場合の計算値。

*2 フランジは着脱 3回まで再使用する。

Fig. 8 Testing procedure for metal-O-rings under higher

vacuum condition

リークテスト方法

メタルOリング メタルOリング

押えフランジ

押えフランジ

ベースフランジ

Heリークディテクター

Heリークディテクター

ポリエチレン袋(フード)

押えフランジ

M4×4

M4×4

M4×2

テストフランジへの装着(例)

He

ヒートサイクル前

OK

OK

Table 3 Test results after heating cycles

ヒートサイクル性

P/N

A

B

ヒートサイクル後

OK

OK

OK···リークなし(最小検出感度 1× 10-12Pa·m3/sec)

1回目

OK

OK

Table 4 Test results of re-used metal-O-

rings

超研磨メタルOリングの再使用性

P/N

A

B

2回目

OK

OK

3回目

OK

OK

4回目

OK

OK

5回目

OK

OK

OK···リークなし(最小検出感度 1× 10-12Pa·m3/sec)

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三 菱 電 線 工 業 時 報 第97号 平成13年1月

要が増加している。 Table 5にサンカップの材料を示す。

3.2.3 荷重特性

 荷重特性はシール性にとって重要な特性であり,サン

カップの特長としては,使用つぶし範囲で,荷重値の変化が少ないことが挙げられる。一例として内径φ7.2mm,ステンレスジャケット品の荷重特性を Fig. 10に示す。

 サンカップの基本構成は Fig. 9のとおりであるが,ジャケット肉厚,ばね径およびばね素線径の変更や後加工などによる,ユーザーごとの仕様を設けており,実際の荷重曲

線は仕様ごとに異なっている。

3.2.4 最近の動向

 従来の用途としては,材料ガス供給用の配管継ぎ手部分が主なものであった。しかし,高集積化やウェーハーの大径化,プロセスの複雑化に伴い,使用されるガス量の増加

や種類の多様化が進んできている。このため,個々の装置や付属する供給系の省スペース化やメンテナンス性の向上,更なるシール性の向上が求められている。

�従来の配管接続 従来,ガス供給系では配管チューブを汎用の継ぎ手を用

いて接続することが一般的であった。(Fig.11(a))この方法は工場内の配管と同じ接続部品を使用するため,継ぎ手以外の特殊な部品を使用することがなく,配管工事に必要

な設備・工具類さえあれば実施できるため,簡便な方式として長く用いられてきた。しかし,ガス供給系に使用する場合の問題点として,以下のものが挙げられる。

る。 このため当社では,次世代のMFC用として,現行の超研

磨メタルOリングをダブルメルト化する評価を行っており,良好な結果を得ている。 今回の超研磨メタルOリングの他に,耐アルカリ性に優

れたNiを表面にめっきしたメタルOリングもあり,一部のMFCメーカに量産納入している。

3.2 サンカップ®

3.2.1 サンカップの構成

 サンカップは,当社のばね入りCリング製品の登録商標

である。ばね入り C リングの構成は次のとおりである(Fig. 9)。

 直接シール面として機能するのは金属ジャケットであ

り,サンカップに使用される金属では,樹脂などに比べてガス透過が実用上は無視できる。 金属シールで超高真空レベルのシール性を求める場合,

銀めっきなどの軟質金属をシール面に被覆するのが一般的であるが,半導体のガス供給系で使用する場合,めっきが吸着物やアウトガスなどの不純物の供給源と成り得る

ため,めっきを使用せず,ジャケット素材表面そのものを特殊な研磨方法により,鏡面に近い Rmax0.4µm以下に仕上げることで,シール性を確保している(使用の際は相手

フランジも鏡面加工が必要である)。サンカップでは,使用時に与えるつぶしにより,内部のばねがジャケットをフランジに押しつけることで,超高真空でのシール性を確保し

ている。 従来は配管継ぎ手での使用が主なものであったが,通常の固定フランジと異なり,継ぎ手の場合は継ぎ手締結時に

継ぎ手フランジ部が回転するため,サンカップのシール面で摺り合わせが起こる。この状態でシール性を確保するためにも,ばねによる反力は不可欠の要素となっている。

3.2.2 素 材

 以前は,ジャケット素材としてニッケルが主であった

が,ニッケルのカルボニル腐食が問題となったこともあって,特に一酸化炭素と接触する可能性のある場合は,使用されなくなっている。このため最近は,ステンレス品の需

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Fig. 9 Structure of SUNCUP®

サンカップ®の構成

シール内径�ジャケット�

ば ね�

ばね

SUS-304

ジャケット

SUS-316L

ニッケル

Table 5 Materials of SUNCUP®

サンカップ®の材料

Fig. 10 Compression force of SUNCUP®(φ 7.2mm)サンカップ®(φ 7.2mm)の荷重特性

00

1

2

3

4

5

6

7

8

9

0.1 0.2 0.3 0.4 0.5つぶし量 [mm]

総締付力 [k

N]

Page 7: 半導体製造装置用シール半導体製造装置用シール 要 約 半導体製造工程では,真空状態およびプラズマ照射下でさまざまなガスや液体が使用される。従って製造装置に

半導体製造装置用シール

�バルブとMFCのような機器間を,直接接続することができない。接続には最低限継ぎ手部分間にいくらかの

配管チューブが必要となるため,この部分が余剰スペースとなる。

�接続済みのユニットの中で機器を交換する場合,交換する部分以外に,周辺機器の取り付け部分も外す必要のある場合がある。これは省スペース化のため継ぎ手

間の配管チューブを短くした場合には,一層顕著なものとなる。

 これらを解決する手段として,ガス供給系ではシステムの高密度,高信頼性を目的とした各種の“集積化ユニット”

が普及してきている。

� 集積化ユニット

 トップマウントとも呼ばれる集積化ユニットは,先に述べた問題点を解決するものであるが,ユニットを構成する

ブロックやシールは,開発した各社で独自の規格のものが使用されている。これらの各社の仕様は SEMI2787 に個別に規格化されている。一例として CKD�殿の“集積弁”を

Fig. 12に示す。 集積化ユニットの基本的構成は,流体の通路を持ったス

テンレスを主としたベースブロックと必要な各機器を組合せてガス供給系を組み立てたものであり,構成要素は次のとおりである。

�継ぎ手を使用せず,ブロックにシール溝が加工されている。機器側の接続も同仕様の溝とし,シールを使用

して直接機器をブロックに取り付ける。�全ての構成品の着脱が一方向(ベースを水平にした場合には上側)から可能となっている。

この結果,接続されたユニットは板状のベースブロックのトップ(上側)に,種々の機器が取り付けられた

形となる。

 このメリットは以下のとおりである。

�継ぎ手および継ぎ手間の配管チューブが無いため,同等経路の従来の配管に比べ1/2~ 1/4のスペースでユニットが形成できる。(Fig.11(b))

�面積が縮小されているが,機器が全てベースブロックの上側に取り付けられているため,目的機器のボルト

を取り外すだけで,交換が可能となっている。

 また,サンカップを本用途に使用する場合のメリットに以下のようなものがある。�継ぎ手での仕様を想定したサンカップを,集積化ユ

ニットのような固定フランジで使用する場合は,装着時のシール面の摺動が無くなるため,ばねによる反力

と相まって,より安定したシール性を発揮する。�いずれの方式でも,当初の組み込みやシール交換の場合などに,金属シールにキズを付けず,かつシール溝

への位置合せも簡便に行えるように,リテーナが用いられている。サンカップでは外周部に開口部があるた

め,リテーナを装着するのに無理が無く都合が良い。

 集積化ユニット自体は,半導体における今後のガス供給

の本流となっており,その優れた特長から,今後ますます普及拡大を続けると考えられる。サンカップも従来用途に

加え,集積化ユニットやその補用品での使用も併せて,今後需要がますます拡大するものと期待している。

3.3  アルミジャケットシール

3.3.1 用途

 3.1節の超研磨メタルOリングで述べたとおり,近年の半導体は,超 LSIを製造するための,環境のクリーン化や供給ガスの高純度化などを実施している。そういったことか

- 65 -

Fig. 11 Circuit figure with conventional and integrated gas

system

従来の配管および集積ユニットの回路

(a)従来の配管 (b)集積ユニット

CKD(株)殿提供資料

Fig. 12 Schematic structure of integrated gas system

集積弁の概略構造

取付けボルト

MFC

メタルガスケット

ガスケットリテーナ

CKD(株)殿提供資料�

バルブモジュール

Page 8: 半導体製造装置用シール半導体製造装置用シール 要 約 半導体製造工程では,真空状態およびプラズマ照射下でさまざまなガスや液体が使用される。従って製造装置に

三 菱 電 線 工 業 時 報 第97号 平成13年1月

ら,装置に使用するシールには,プロセスクリーン化を実現するための厳しい要求があり,超研磨メタルOリングは,

ウルトラクリーン対応のMFC用シールとして開発・量産納入に成功した製品の一例である。 アルミジャケットシールも,プロセスクリーン化を実現

することを目的に,L型バルブの外部シールをはじめとし,真空チャンバの固定シール,あるいはセンターリングなどの用途として開発している製品である。ただし,開発に際

しては,メタルシール並みの高いシール性とゴムシール(ゴムOリング)並みの低い締付力を併せ持つ,従来にはないシールを目標としている。             

 これは,現在のゴムシールとの両立性をも考慮にいれた仕様であり,高い技術や品質が要求される場合においては,ゴムOリングとの置き換えが可能となるシールである。

 現段階においては,各種機能特性を確認中で,量産納入には至っていないが,当社では次世代のシールとして非常に期待している。

3.3.2 構造および材料

 アルミジャケットシールは,Fig. 13に示すように,ゴム

Dリングを,アルミのジャケットで覆った構造である。Dリングは,耐熱性と真空用途で実績のある当社配合番号1349-80のふっ素ゴムとし,ジャケットは相手面とのなじ

み性と他のメタルシールでも実績の多い純アルミニウムの A1050としている。 目標とする特性を得るため Fig. 13に示す構造としてい

るが,それぞれのポイントを以下に説明する。まず,低締付力を得るためゴムの弾性を利用し,シール性を安定させるために断面形状がDのゴムDリングを採用した。また,

ガスの透過とアウトガスを抑制し高気密性を得るために,シール表面に純アルミの金属層を設けた仕様としている。

3.3.3 特長

 このアルミジャケットシールは,従来にはない以下の特長を持ったシールである。

� プロセスクリーン化のために必要な,メタルシール並みの高いシール性(1× 10-11Pa·m3/sec[He])を持つ。

� 締付力は,ゴムシールに近く,従来のメタルシールに比

べ非常に小さい。� 上記2つの特性を併せ持つことで,ゴムシールと置き換えることにより,装置・機器のウルトラクリーン化が

可能となる。

3.3.4 機能特性

 現在得られている機能特性について説明する。

�締付力 目標とする重要な特性の一つである締付力を,超研磨メタルO リングと同様な方法で確認している。

 前述したが,締付力とは,引張り試験機で徐々に圧縮した時に得られる「つぶし量と圧縮荷重(締付力)の関係」を求めたものである。その関係を他のシール(製品径は同等)

と比較してFig. 14に示す。また,各種シールで単位長さ当たりの締付力比較をしたグラフを Fig. 15に示す。

 締付力は,他のメタルシールと比べて非常に小さく,ゴムOリングと同等とはいえないが,十分に近い特性になっている。

�シール性 ステンレスあるいはアルミフランジを使用し,常温で確

認した真空シール性は,1× 10-10~ 1× 10-11Pa·m3/secで,メタルシールと同等の特性が得られた。ちなみに,ゴムシールは,仕様にもよるが,透過の影響で 1× 10-6~ 1×

- 66 -

Fig. 13 Design of Al jacket seal

アルミジャケットシールの構造

ふっ素ゴム(1349-80)

純アルミニウム(A1050)

Fig. 15 Comparison of compression force for unit length

各種シール別実用域での単位長さ当たりの締付力

比較

0

500

1000

1500

2000

2500

3000

3500

単位長さ当たりの締付力

[N/c

m] アルミジャケットシール

メタルOリング(W=3.18mm,t=0.80mm)

メタルCリング(W=3.65mm,t=0.60mm)レジリエントシールDMF-K型サンカップ(W=3.60mm)

ゴムOリングJBG(W=3.10mm,硬さ80)

ゴムOリングAS568(W=3.53mm,硬さ80)

Fig. 14 Compression force of Al jacket seal

アルミジャケットシールの締付力

1

10

100

1000

10000

100000

0 0.5 1 1.5つぶし量 [mm]

締付力

[N]

AlジャケットシールメタルOリング(3.18×0.8)ゴムOリング(3.53 硬さ80)

Page 9: 半導体製造装置用シール半導体製造装置用シール 要 約 半導体製造工程では,真空状態およびプラズマ照射下でさまざまなガスや液体が使用される。従って製造装置に

半導体製造装置用シール

10-8Pa·m3/secとなり,シール性の向上は明確である。 以上のように,アルミジャケットシールは,プロセスク

リーン化に対応できるシール性を有しているといえる。

�ヒートサイクル性

 アルミジャケットシールが使用される箇所も,半導体製造装置あるいは周辺機器になることから,超高真空を得る手段として,装置類のベーキングが実施される。したがっ

て,超研磨メタルOリング同様,ベーキング温度においてシール性を維持することが要求される。ここでは,常温

150℃×24h保持を10サイクル繰り返し,サイクル前後

は勿論,その途中においてもリークテストを行い,シール性を確認している。 現在,ヒートサイクルテストにおいて,一部の条件で目

標とするシール性は得られていないが,シール性向上の改良を継続実施中である。

3.3.5 まとめ

 アルミジャケットシールは,透過やアウトガスがない従来のメタルシール並みの優れた真空シール性を有し,かつ

締付力は約 1/10~ 1/3と低く,ゴムシールとも置き換え可能な画期的なシールとして期待の持てる製品である。 今後は,早期に量産へ移行できるよう,更なる品質の向

上と,コスト改善等を実施する予定である。また,超高真空用途ばかりでなく,圧力用途やガラス等の特殊相手材への応用も展開する予定である。

4.ゴムシール

4.1 ゴムシール材料

 半導体製造工程はさまざまなプロセスがあり,シールに対する要求性能はプロセスごとにそれぞれ異なる。代表的

な要求性能は以下のとおりである。

�耐薬品性

 ウェットプロセスでは酸,アルカリ,有機溶剤などが使用されるため,優れた耐薬品性が必要とされる。

�耐プラズマ性 ドライプロセス(プラズマエッチング処理)では,腐食性のあるハロゲン系ガスあるいは酸素ガスがプラズマ化

されて使用されるため,耐プラズマ性および低発塵性が要求される。

�真空シール性 多くのプロセスは真空下で行われる。よって,真空度を維持するため,ガス透過が少ないこと,放出ガスが少ない

こと,放出水分が少ないことなどが求められる。

非固着性 チャンバーの覗き窓やゲートバルブなどにおいてはス

ムーズな開閉が必要とされるため,シールと相手金属間の非固着性が要求される。

 これら苛酷な要求に加え,耐熱性も必須であることから,半導体製造装置用ゴムシール材としては,耐久性に優れたふっ素ゴムが主に用いられる。本章では,最初にふっ

素ゴムの種類について簡単に説明し,その後,当社の半導体製造装置用ふっ素ゴム材料を紹介する。

4.1.1 ふっ素ゴムの種類b

 Table 6に主なふっ素ゴムの構造と種類を示す。

 � ビニリデンフロライド-ヘキサフロロプロピレン

(VDF-HFP)系 耐熱性,耐薬品性,圧縮永久ひずみに優れており,加工性およびコストの点でもバランスが良く,最もポピュラー

なふっ素ゴムである。 � ビニリデンフロライド-ヘキサフロロプロピレン-テ

トラフロロエチレン(VDF-HFP- TFE)系 VDF-HFP系よりもさらに耐薬品性に優れているが,耐熱性,圧縮永久ひずみにやや劣る傾向がある。

� テトラフロロエチレン-プロピレン(TFE- Pr)系 耐蒸気性,耐酸性(ただし硝酸を除く),耐塩基性に優れ

ている。

ビニリデンフロライド-テトラフロロエチレン-パー

フロロメチルビニルエーテル(VDF- TFE- PMVE)系 VDF-HFP系よりも低温性に優れ,耐熱性,耐薬品性も兼ね備えている。

- 67 -

Table 6 Structures and types of typical fluorocarbon

elastomers

主なふっ素ゴムの構造と種類

-(CH2-CF2)X-(CF-CF2)Y-

|

CF3

-(CH2-CF2)X-(CF-CF2)Y-(CF2-CF2)Z-

|

CF3

-(CF2-CF2)X-(CH2-CH)Y-

|

CH3

-(CH2-CF2)X-(CF2-CF2)Y-(CF2-CF)Z-

|

OCF3

-(CF2-CF2)X-(CF2-CF)Y-

|

OCF3

特   長

・圧縮永久ひずみ

が最良。

・圧縮永久ひずみは二

元系より劣るが,耐

薬品性が良い。

・1 5 0℃以上のス

チーム,重油用。

・耐薬品用。

・低温性が最良。

  (-30~-40℃)

・耐熱性,耐薬品

性が最良。

VDF-HFP

(FKM)

VDF-HFP- TFE

(FKM)

二元系

三元系

TFE- Pr

(FEPM)

VDF- TFE- PMVE

(FKM)

TFE- PMVE

(FFKM)

分     類

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三 菱 電 線 工 業 時 報 第97号 平成13年1月

- 68 -

� テトラフロロエチレン-パーフロロメチルビニルエーテル(TFE- PMVE)系

 一般にパーフロロエラストマーと呼ばれ,代表的な材料としてカルレッツ®(デュポン社の登録商標)がある。カルレッツは一般のふっ素ゴムでは使用が困難であるエーテ

ル類,アミン類,ケトン類,酸,アルカリにも十分な耐性があり,かつ300℃近くの耐熱性を兼ね備えているため,現有のゴム材料の中では最も耐久性が高い材料と言えるが,

高価である。

 当社は,先に述べた要求性能に適合し,かつコストバラ

ンスの良い材料の開発に尽力している。次に,当社の特徴あるふっ素ゴム材料について,要求性能別に紹介する。

4.1.2 耐薬品性材料「サンエラスト®Ⅰ」c

 「サンエラスト /SUNELAST」は当社の登録商標である。 前述のとおり,一般のふっ素ゴムは一部の薬品(例えば,

メタノール,アセトン,エチレンジアミン,水酸化ナトリウム,アンモニア水,トルエンなど)に対しては使用することができない。このような場合,高価なパーフロロエラ

ストマーが用いられることが多かった。これに対し,当社

は耐薬品性と低価格を兼ね備えた高機能性ふっ素ゴム「サンエラストⅠ」(当社配合番号:3301-70)を開発した。

 サンエラストⅠ,パーフロロエラストマーおよび従来のふっ素ゴムの耐薬品性の比較をFig. 16に示す。サンエラストⅠの耐薬品性は,パーフロロエラストマーには僅かなが

ら及ばないが,従来のふっ素ゴムと比べると格段に優れていることがわかる。 コストとのバランスから,サンエラストⅠの需要は着実

に増えている。

4.1.3 耐プラズマ性材料

 当社の耐プラズマ性ゴム材料を Table 7に示す。ゴム材料の種類としては,シリコーンゴム(当社配合番号:1298-

70),ふっ素ゴム(当社配合番号:1320-75,1364-70)お

よび高機能性ふっ素ゴム「サンエラストⅡ」(当社配合番号:3310-75)がある。以下に,これらの材料の比較を行った。

�耐酸素(O2)プラズマ性 各材料の酸素プラズマ照射後の質量減少量を Fig. 17に

示す。ふっ素ゴム,シリコーンゴム,パーフロロエラスト

Fig. 16 Chemical resistances of SUNELAST®Ⅰ , perfluoro elastomers and standard fluorocarbon elastomer

サンエラスト® Ⅰ,パーフロロエラストマーと従来のふっ素ゴムの耐薬品性

A社パーフロ�

B社パーフロ�

従来のふっ素ゴム�

-10 0 10 20 30 40 50 60 70 80体積変化率(%)�

ラッカーシンナー(室温×7日)�

サンエラスト サンエラスト

A社パーフロ�

B社パーフロ�

従来のふっ素ゴム�

0 10 20 30 40 50 60 70 80体積変化率(%)�

28%アンモニア水(70℃×7日)�

溶解�

A社パーフロ�

B社パーフロ�

従来のふっ素ゴム�

0 50 100 150 200 250体積変化率(%)�

メチルエチルケトン(室温×7日)�

サンエラスト サンエラスト

A社パーフロ�

B社パーフロ�

従来のふっ素ゴム�

0 20 40 60 80 100 120体積変化率(%)�

99%酢酸(室温×7日)�

A社パーフロ�

B社パーフロ�

従来のふっ素ゴム�

0 10 20 30 40 50 60 70 80 90体積変化率(%)�

メタノール(室温×30日)�

サンエラスト サンエラスト

A社パーフロ�

B社パーフロ�

従来のふっ素ゴム�

0 50 100 150 200 250体積変化率(%)�

テトラヒドロフラン(室温×30日)�

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半導体製造装置用シール

- 69 -

マー(ここではA社パーフロ,白)を比較すると,シリコー

ンゴム,パーフロロエラストマー,ふっ素ゴムの順で酸素プラズマ照射後の質量減少率が小さい。また,ふっ素ゴムの中でも個々の材料によって質量減少率が異なっており,

小さいものから順に並べると,無機系充填剤を配合したサンエラストⅡ,ホワイトカーボンを配合した1364-70,カーボンブラックを配合した 1320-75となる。このような耐プ

ラズマ性の違いについて,更に詳細に考察する。 ゴム材料には一般的に機械的特性を向上させるため充填剤が配合されている。このような材料にプラズマを照射

するとゴム分はエッチングされ,材料中の充填剤が露出してくる�,�。つまり,プラズマによるゴム材料のエッチング過程は次の3段階(Fig. 18)で進行すると考えられる。

・第1段階:ゴム材料の表面がプラズマによりエッチングされ,ゴム分子が分解・気化する。

・第2段階:ゴムに配合されている充填剤が表面に露出する。

・第3段階:露出した充填剤はパーティクル状に飛散する

か,もしくはゴム材料表面に留まりプラズマを遮へいする。

 Fig. 17で見られたふっ素ゴム間での質量減少量の違い

は,配合している充填剤のプラズマ遮へい効果の差に起因すると考察される。つまり,カーボンブラックよりもホワイトカーボンが,ホワイトカーボンよりもサンエラストⅡ

中の無機系充填剤がプラズマ遮へい効果が高いと言える。 なお,ふっ素ゴムとシリコーンゴムとを比較すると,質量減少率はシリコーンゴムの方が小さいが,これは充填剤

であるシリカのプラズマ遮へい効果に加え,シリコーンゴム分子自身の耐酸素プラズマ性が高いことによると考えられる。

�耐ハロゲン(CF4)プラズマ性 各材料のCF4プラズマ照射後の質量減少量をFig. 19に示

す。サンエラストⅡがふっ素ゴムの中で最も質量減少率が小さく,A社パーフロ(白)もそれとほぼ同等であることが判る。これらふっ素ゴム材料間の耐CF4プラズマ性の違い

は,前述の充填剤による遮へい効果の差が原因と考えられる。 また,ふっ素ゴムは酸素プラズマよりもCF4プラズマで

の質量減少率が小さく,シリコーンゴムは逆に酸素プラズマでの質量減少率が小さくなっている。これはポリマー鎖の種類によってプラズマに対する耐性が異なることを示

しており,シリコーンゴムの分子主鎖はCF4プラズマよりも酸素プラズマに強く,ふっ素ゴムの分子主鎖は酸素プラズマよりもCF4プラズマに強いと言える。

�発塵性 Fig. 20に酸素プラズマ照射後の発塵性(パーティクル

配合番号

耐熱温度(℃)*1

硬さ(ショア A)

引張強さ(MPa)

伸び(%)

圧縮永久ひずみ*2(%)

*1 実用可能温度は使用条件により変わるので注意のこと*2 圧縮永久ひずみ試験条件:175℃× 22時間

高機能ふっ素ゴム

〔サンエラストⅡ〕

3310-75

淡茶

- 20~ 200

75

18

190

6

1320-75

- 20~ 200

73

16

220

4

1364-70

ベ-ジュ

- 20~ 180

70

24

470

11

シリコーンゴム

1298-70

透明

- 50~ 150

70

9

530

30

ふっ素ゴム

Table 7 Rubber materials with plasma resistance

耐プラズマ性ゴム材料

Fig. 17 O2 plasma resistances of silicone elastomer

compound, fluorocarbon elastomer compounds and

SUNELAST®Ⅱシリコーンゴム,ふっ素ゴムおよびサンエラスト®Ⅱ

の耐酸素(O2)プラズマ性

1298-70 1320-75 1364-70

シリコーンゴム ふっ素ゴム�ふっ素ゴム

サンエラスト A社パーフロ(白)

0

10

20

30

40

質量減少率(%)

酸素(O2)プラズマ出力:300W,時間:120分

Fig. 18 Degradation mechanism of filler filled

elastomer under irradiation of plasma

充填剤配合ゴムのプラズマによる分解

メカニズム

プラズマ

第1段階

第2段階�

第3段階�

飛散�遮へい�

充填剤

エラストマー

気化

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三 菱 電 線 工 業 時 報 第97号 平成13年1月

- 70 -

数)試験結果を示す。シリコーンゴムが格段にパーティクル数が少なく発塵性に優れている。次いでA社パーフロ

(白),1364-70,1320-75,サンエラストⅡの順となる。このような発塵性の違いも,充填剤の種類によって生じていると判断される。

 サンエラストⅡは,質量減少率の面ではふっ素ゴムの中で最も優れているが,発塵性の面では最も悪い。一方1364-

7 0 は,質量減少率ではサンエラストⅡよりも劣っているが,発塵性では格段に優れている。質量減少率と発塵性のバランスは充填剤の種類によって左右されるため,材料開

発においては,用途に応じた充填剤の選択が非常に重要である。

4.1.4 真空用材料(真空用ふっ素ゴム,1349-80)

 真空用途で重要な特性は,ガス透過性,ガス放出性,水分放出性である。

�ガス透過性 Fig. 21の条件で測定した当社の代表的なゴム材料のヘ

リウムガス透過量を Table 8に示す。ふっ素ゴムのヘリウムガス透過量は,ニトリルゴム,クロロプレンゴムに次いで少ない。特に真空用ふっ素ゴム 1349-80はクロロプレン

ゴムとほぼ同等のガス透過量を示し,真空用途に適している。

�ガス放出性 通常,ゴムコンパウンドには老化防止剤,可塑剤,加工

助剤などが配合されており,真空状況ではこれらの配合剤が気化・放出され,真空度が低下する場合がある。したがって,真空用途には配合剤が少ない材料が好ましい。Fig. 22

Fig. 20 Emitted Particle numbers from silicone elastomer

compound, fluorocarbon elastomer compounds and

SUNELAST®Ⅱ under irradiation of O2 plasma

シリコーンゴム,ふっ素ゴムおよびサンエラスト®Ⅱ

の発塵性(O2プラズマ照射後)

A社パーフロ(白)1298-70 1320-75 1364-70

10

100

1000

10000

100000

1000000

パーティクル数

酸素(O2)プラズマ出力:1300W,時間:60分

シリコーンゴム ふっ素ゴム�ふっ素ゴム

サンエラスト

Fig. 19 CF4 plasma resistances of silicone elastomer

compound, fluorocarbon elastomer compounds and

SUNELAST®Ⅱシリコーンゴム,ふっ素ゴムおよびサンエラスト®Ⅱ

の耐ハロゲン(CF4)プラズマ性

1298-70 1320-75 1364-70 サンエラスト A社パーフロ(白)

0

5

10

15

質量減少率(%)

ハロゲン(CF4)プラズマ出力:500W,時間:120分

シリコーンゴム ふっ素ゴム�ふっ素ゴム

Fig. 21 Test method of He gas leak

ヘリウムガス透過試験

左図のフランジ溝にOリングを装着し、フード法により透過量が平衝に達した時の値を測定。〈条件〉・圧縮率 20%    ・表面粗さ 1.6 mRa

Heガス室温�1気圧�

リークディテクター�

真空ポンプ�

ゴム材料

1115-70(ニトリルゴム)

1116-90(ニトリルゴム)

1232-70(シリコーンゴム)

1320-75(ふっ素ゴム)

1349-80(真空用ふっ素ゴム)

1501-70(クロロプレンゴム)

2104-70(エチレン・プロピレンゴム)

透過量(Pa·m3/s)

6.6× 10-10

4.4× 10-10

8.3× 10-8

2.2× 10-9

1.7× 10-9

1.5× 10-9

6.7× 10-9

Table 8 Leak rates of He gas for typical

elastomer compounds

代表的なゴム材料のヘリウムガス透

過性

Fig. 22 Mass spectra of gases released from nitrile and

fluorocarbon elastomers

ニトリルゴムとふっ素ゴムからの放出ガスの質量

スペクトル

Page 13: 半導体製造装置用シール半導体製造装置用シール 要 約 半導体製造工程では,真空状態およびプラズマ照射下でさまざまなガスや液体が使用される。従って製造装置に

半導体製造装置用シール

- 71 -

に,ニトリルゴムとふっ素ゴムの質量分析結果を示す�。ニトリルゴムでは非常に多くのピークが検出され,多成分

(つまり多配合)であるが,ふっ素ゴムではピークの数が少なく,単純な配合であることが判る。よってニトリルゴムはガス透過性には優れるが,ガス放出性の面で問題がある

ため,総合的にはふっ素ゴムが真空用途に最適と言える。 さらに,ふっ素ゴムの高温における放出ガスについて,Adissらが質量スペクトル分析を行っている(Fig. 23)�。こ

れによると,ふっ素ゴムは 295℃以上の温度で分解し,炭化水素ガスが放出されている。一般に,ふっ素ゴムの使用限界温度は約 250℃と設定されている。

 実際のシール用途では,200℃以下で使用されることが

多く,熱分解よりも水分放出の方が重要な問題である。次にふっ素ゴムの水分放出性について述べる。

�水分放出性 Fig. 24に,一般のふっ素ゴム(1320-75)と真空用ふっ素ゴム(1349-80)の放出水分量経時変化の比較を示す。明

らかに 1349-80の放出水分量は少ないことが判る。これは1349-80の吸湿水分量が少ないためと推測される。

 以上の優れた特性を併せ持つ 1349-80は一般の物性においても何ら遜色はなく(Table 9),真空用途で好評を得ている。

Fig. 23 Mass spectra of decomposition

gases of fluorocarbon elastomer in

various temperatures

さまざまな温度におけるふっ素ゴ

ムの分解ガスの質量スペクトル

10

OH

+

×10

×2×2

×IO

-H2O

+

CH

2CF

+×3

-CO

2+

CF

2+

–CO

2

CH

CF

2+

CH

2CF

2+

CF

3+

×2

–CO

+H2O

+

C+ HF

+

CF

+C

O+

O+

OH

+

ORDINATE.ION CURRENTIO–12AMP/DIVISION

MASS NUMBER20 30 40 50 60 70 80 90 100 110

a.65℃

b.100℃

c.210℃

d.265℃

e.295℃

f.310℃

g.AFTER 1 hr AT 300℃12

+

4.1.5 固着防止技術

 相手金属への固着を防止する方法は,オイル類をゴム表

面にブリードさせる,非固着性の材料を表面にコーティングする,低活性充填剤または固体潤滑剤を用いるなどがある。しかし,これらの方法では,オイルや充填剤およびコー

ティングの剥離による汚染の問題がある。当社は周辺を汚染せず,非固着性を実現する方法として,UE改質法(ふっ素ゴム対応)およびRE-O改質法(シリコーンゴム対応)

を開発した。 UE改質と非改質のふっ素ゴムの物性および固着力(Fig.

25の方法で測定)をTable 10に示す。UE改質ゴムの固着

Table 9 Physical properties of fluorocarbon elastomer

compounds (No.1349-80 and No.1320-75)ふっ素ゴムコンパウンド(配合番号 1349-80,

1320-75)の物性

真空用材料

1349-80

81

18.1

190

9.1

25.4

0

- 7

- 5

- 1

+3

±0

+1

- 2

- 3

- 3

+3

試験項目

硬さ (ショア A)

引張強さ (MPa)

伸び (%)

100%モジュラス(MPa)

圧縮永久ひずみ(200℃×7日)(%)

空気老化(230℃× 24時間)

硬度変化 (ポイント)

引張強さ変化率(%)

伸び変化率 (%)

油浸漬

JIS No. 1(175℃× 70時間)

硬度変化 (ポイント)

引張強さ変化率(%)

伸び変化率 (%)

体積変化率 (%)

油浸漬

JIS No. 3(175℃× 70時間)

硬度変化 (ポイント)

引張強さ変化率(%)

伸び変化率 (%)

体積変化率 (%)

標準材料

1320-75

74

12.5

220

4.7

23.2

+2

+2

- 8

- 1

+1

+3

+3

- 2

+1

+1

+4

Fig. 24 Amounts of moisture released from fluorocarbon

elastomers

ふっ素ゴムからの放出水分量

( )1320-75(ふっ素ゴム)

経過時間(hr)

放出水分量(

%)

4

0.1

0.2

0.3

0.4

8 12 16

at 200℃

( )1349-80(真空用ふっ素ゴム)

Page 14: 半導体製造装置用シール半導体製造装置用シール 要 約 半導体製造工程では,真空状態およびプラズマ照射下でさまざまなガスや液体が使用される。従って製造装置に

三 菱 電 線 工 業 時 報 第97号 平成13年1月

 ゲートバルブ用シールとしては,プレートへの装着性が容易であること,シールが溝から離脱しないこと,最大荷

重負荷時にプレートと相手部材が接触(メタルタッチ)しないことなどが要求されている。 現在,半導体製造装置用ゲートバルブのシール部の多く

は,あり溝を加工したプレートとOリングの組み合わせで構成されている(Fig. 26)。この製品では,あり溝にOリングを装着する際,OリングがねじれてOリングのパーティ

ングラインがシール面を横切りリークが発生したり,Oリングとあり溝の摩擦によりダストが発生するといった問題がある。さらに,Oリングの場合,圧縮する際に大きな

荷重が必要となるが,機器に対する負荷が大きくなりその寿命を短くしていることも指摘されている。

 このたび,当社はこれらの問題点を改良し,ゲートバルブシールとしての要求を満たしたトリシールを開発した。このトリシールはユーザの実機試験で良好な結果が得ら

れており,ここに紹介する。

�トリシールの特長

 トリシールの形状を Fig. 27に示す。特長は次のとおり。・シールを溝に装着する際,シールがねじれない。・パーティクルがOリングよりも少ない。

・Oリングよりも低荷重化(低い荷重で変位量大)でき,機器への負荷が軽減できる。・O リング用あり溝での使用が可能である。

・トリシールの寸法を変えることにより,荷重特性を調整できる。

 プレートの溝設計は,ゲートバルブ開閉時に溝からシー

ルが離脱しないように従来どおりのあり溝設計を基本に

Fig. 25 Test method of sticking force

固着力測定方法

あり溝*に リング(AS568-324)を装着し、150℃で24時間放置。室温で1日冷却後、固着力測定。*フランジの材質:SUS304(0.8 mRa)   つぶし率:25%

φ42.79±0.1

φ20±1 3.25

約20

φ6

Fig. 26 Current gate valve

従来のゲートバルブ

こすれる

あり溝

(52)

(242)

(b)プレート略図(a)Oリング装着断面

AA

Oリング

A-A断面

- 72 -

力は,非改質ゴムのそれの約 1/3程度であることが判る。

 また RE-O改質と非改質のシリコーンゴムの物性および石英面との固着性を Table 11に示す。RE-O改質により石英面との固着が起こらず,取りはがし時の破損が無い

ことが確認されている。

 非汚染型固着防止技術は,今後ますますニーズが増えるものと見られる。

4.2 半導体製造装置ゲートバルブ用・トリシールの開発

�用途および現行品の問題点 半導体製造装置ではエッチングやC V D などの各工程が

それぞれチャンバ内で行われる。チャンバの半導体(半製品)出入口がゲートと呼ばれ,そのフタの部分にゲートバルブが使用されている。

非改質ふっ素ゴム

71

11.0

190

15

240

UE改質ふっ素ゴム

71

11.0

180

13

70

項目

硬さ(ウォーレス微小硬度)

引張強さ(MPa)

伸び(%)

圧縮永久ひずみ(%)

200℃× 70時間

固着力(N)

試料

Table 10 Physical properties of UE modified and non

modified fluorocarbon elastomers

UE改質ふっ素ゴムと非改質ふっ素ゴムの物性

注)配合: 1320-75

非改質シリコーンゴム

69

9.5

510

28

あり

RE-O改質シリコーンゴム

68

9.0

530

30

なし

項目

硬さ(ショア A)

引張強さ(MPa)

伸び(%)

圧縮永久ひずみ(%)

175℃× 22時間

石英面との固着

試料

Table 11 Physical properties of RE-O modified and non

modified silicone elastomers

RE-O改質シリコーンゴムと非改質シリコーン

ゴムの物性

注)配合: 1298-70

Fig. 27 Design of Tri-seal

トリシールの形状

(4.2)

トリシール1(専用あり溝)

トリシール2(Oリング用あり溝)

(3.

6)

(3.

6)

(3.9)

Page 15: 半導体製造装置用シール半導体製造装置用シール 要 約 半導体製造工程では,真空状態およびプラズマ照射下でさまざまなガスや液体が使用される。従って製造装置に

半導体製造装置用シール

- 73 -

した。シール設計については Fig. 27に示すような形状とし,従来のOリングよりも低荷重化(低い荷重で変位量大)

を達成している。また,荷重特性は専用溝よりも若干劣るが,Oリング用溝との互換性を考慮した設計も行っている。 荷重特性測定用の実験装置の概略をFig. 28に,実験結果

をFig. 29に示す。トリシールはOリングよりも低荷重であり,最大荷重負荷時(ここでは 1500N)においてもメタルタッチすることはない。また,ユーザで実機によるダスト

試験を行った結果,パーティクルは従来のOリングの約半分と良好であった。なお,トリシールはSMC殿との共同開発品で,特許を共同出願している。

5.む す び

 半導体製造装置用シールの概要と,当社の取り組み状況について紹介したが,いずれも当社独自の材料および設計

技術を応用して生まれた製品であり,優れた機能特性とユニークな特長を有している。これらの他にも,厳しい要求に応えるべく開発中の案件も数多く進行中である。これら

については,別の機会に紹介したい。 半導体の製造工程は複雑であり,当社が他の分野で培ったノウハウや経験だけでは対応が難しい要求仕様が多く

Fig. 28 Testing equipment for the gate valve seals

実験装置概略図

1mm/min.ロードセル

押さえプレート2点支持ゲートバルブ

シール

相手部品

Fig. 29 Stress-strain hysteresis loop of Tri-seals and O-ring

トリシールとOリングの荷重特性

00 0.5

圧縮

0リング

トリシール2

トリシール1

回復

変位置(つぶし量)(mm)

荷重(

N)

1.0

500

1000

1500

木挽一彦(こびき かずひこ)

部品事業本部 箕島製作所 技術開発部 第一グルー

ゴムシール材料の研究・開発に従事

日本ゴム協会会員

假屋隆広(かりや たかひろ)

部品事業本部 箕島製作所 技術開発部 第三グルー

プ(現在:技術本部 総合研究所 金属グループ)

金属シール・電波吸収体の開発

川東正記(かわひがし まさき)

部品事業本部 箕島製作所 技術開発部 第一グルー

ゴムシール材料の研究・開発に従事

三ツ井孝禎(みつい たかよし)

部品事業本部 箕島製作所 技術開発部 第三グルー

金属シール・電波吸収体の開発

西田和正(にしだ かずまさ)

部品事業本部 箕島製作所 技術開発部 第二グルー

シール製品の設計・開発に従事

ある。半導体関連技術の進展と共に,さらにこの傾向は強まると思われる。

 今後とも,半導体分野を含めた先端の技術革新やそれに伴う要求仕様の変化に応えられるようなシールの開発を進めていく所存である。

参考文献

� 日本真空協会.第33回夏期大学テキスト.1993,p.219.

� 木挽一彦.ふっ素ゴムについて.三菱電線工業時報.(93),1998,p.57-64.

� 木挽一彦.耐薬品用ふっ素ゴム「サンエラスト Ⅰ」.三

菱電線工業時報.(95),1999,p.69-72.

辻理.電子材料.No.7,1981,p.120.

� 穂積啓一郎.日本ゴム協会誌.59(11),1986,p.86.

� Barton, Govier. J. Vac. Sci. Technol..2, 1965, p.113.

R. R. Adiss. 7th Vacuum Symposium Transactions.