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地域協働研究教育センター 平成 29 年度「地域志向協働研究」<共同研究プロジェクト> 宇治市における観光の質の向上方策検討研究 ―インバウンド対応の質的向上を中心に ■ 研究代表者 : 森 正美 総合社会学部総合社会学科 教授 ■ 研究分担者 : 橋本 和也 総合社会学部総合社会学科 教授 片山 明久 総合社会学部総合社会学科 准教授 宮本 茂樹 クラブツーリズム (株) 顧問 多田 重光 公益社団法人 宇治市観光協会 専務理事 柯 慈樹 宇治市市民環境部商工観光課 課長 宮城 宏索 平等院 事務局長 1. 研究概要 平成 25年に宇治市においては、「宇治市観光振興計画―宇治茶に染める観光まちづくり」を策定し、 平等院修復事業完了の前後を挟んで、観光まちづくりに取り組んできている。従来の観光事業の充実に 加え、観光交通対策,サイン計画などの部会を立ち上げ、個別課題についても迅速で効果的な対応をと る努力をしてきた。しかし、振興計画のなかで謳われている観光の量から質への転換が十分に実現でき ているとはいえず、なかでもインバウンド対策についてはかなり遅れていると言わざるをえない。 一方、日本では 2013 年以来インバウンドが急増し、その傾向は今日まで継続している。しかしそれに 伴う問題や変化が早くも現れている。例えば訪日旅行のルート化による客数の地域格差が顕著である。 宇治においても電車で僅か 10 分の伏見稲荷に多くの訪日客が訪れているにもかかわらず、その客を僅か しか取り込めておらず今日の宇治のインバウンドにおける課題となっている。また訪日客の質的変化も 起こっている。2016 年半ばよりいわゆる「爆買い」は急速に無くなっており、加えて旅行の目的が物見 遊山的な観光から、美術、スポーツ、文化、ポップカルチャーなど多様化し個人化している。このよう な背景を基に宇治市のインバウンド振興を考えると、何よりも訪日客のニーズを的確に捉え、それに対 して的確に応えてゆく対応の質的向上が求められるだろう。 本研究では、これらインバウンド対応の質的向上をいかに実現してゆくかということを検討する。そ してそのために必要な組織や仕組み作り、施策について考えをまとめることを目的としている。 2017 年度は、研究の初年度として、以下の 6 つの研究項目について、合計 6 回の研究会、講演会やフ ォーラムなどを実施し、来年度以降の具体的な研究項目の焦点を絞るための検討の期間とした。 (1)外国人観光客受け入れの現状 (2)宇治における観光の課題の共有 (3)他の地域での受け入れ体制、取組内容 (4)外国人観光客が求めていること (5)質の向上のためにできること (6)新たな観光潮流と地域創生にむけて必要なこと 2. 研究成果 (1)第1回研究会 研究目的の共有と研究背景の理解 ①宇治市観光動向調査のポイントを踏まえ、宇治市における観光の質の向上が必要であるという認識を共
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宇治市における観光の質の向上方策検討研究 ―インバウンド対応 … ·...

Sep 25, 2020

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  • 地域協働研究教育センター 平成 29 年度「地域志向協働研究」<共同研究プロジェクト>

    宇治市における観光の質の向上方策検討研究

    ―インバウンド対応の質的向上を中心に

    ■ 研究代表者 : 森 正美 総合社会学部総合社会学科 教授

    ■ 研究分担者 : 橋本 和也 総合社会学部総合社会学科 教授

    片山 明久 総合社会学部総合社会学科 准教授

    宮本 茂樹 クラブツーリズム (株) 顧問

    多田 重光 公益社団法人 宇治市観光協会 専務理事

    柯 慈樹 宇治市市民環境部商工観光課 課長

    宮城 宏索 平等院 事務局長

    1. 研究概要

    平成 25年に宇治市においては、「宇治市観光振興計画―宇治茶に染める観光まちづくり」を策定し、

    平等院修復事業完了の前後を挟んで、観光まちづくりに取り組んできている。従来の観光事業の充実に

    加え、観光交通対策,サイン計画などの部会を立ち上げ、個別課題についても迅速で効果的な対応をと

    る努力をしてきた。しかし、振興計画のなかで謳われている観光の量から質への転換が十分に実現でき

    ているとはいえず、なかでもインバウンド対策についてはかなり遅れていると言わざるをえない。

    一方、日本では 2013年以来インバウンドが急増し、その傾向は今日まで継続している。しかしそれに

    伴う問題や変化が早くも現れている。例えば訪日旅行のルート化による客数の地域格差が顕著である。

    宇治においても電車で僅か 10分の伏見稲荷に多くの訪日客が訪れているにもかかわらず、その客を僅か

    しか取り込めておらず今日の宇治のインバウンドにおける課題となっている。また訪日客の質的変化も

    起こっている。2016年半ばよりいわゆる「爆買い」は急速に無くなっており、加えて旅行の目的が物見

    遊山的な観光から、美術、スポーツ、文化、ポップカルチャーなど多様化し個人化している。このよう

    な背景を基に宇治市のインバウンド振興を考えると、何よりも訪日客のニーズを的確に捉え、それに対

    して的確に応えてゆく対応の質的向上が求められるだろう。

    本研究では、これらインバウンド対応の質的向上をいかに実現してゆくかということを検討する。そ

    してそのために必要な組織や仕組み作り、施策について考えをまとめることを目的としている。

    2017年度は、研究の初年度として、以下の 6つの研究項目について、合計 6回の研究会、講演会やフ

    ォーラムなどを実施し、来年度以降の具体的な研究項目の焦点を絞るための検討の期間とした。

    (1)外国人観光客受け入れの現状

    (2)宇治における観光の課題の共有

    (3)他の地域での受け入れ体制、取組内容

    (4)外国人観光客が求めていること

    (5)質の向上のためにできること

    (6)新たな観光潮流と地域創生にむけて必要なこと

    2. 研究成果

    (1)第1回研究会 研究目的の共有と研究背景の理解

    ①宇治市観光動向調査のポイントを踏まえ、宇治市における観光の質の向上が必要であるという認識を共

  • 有。H28年度宇治市観光動向調査によると、(1)情報発信力の不足、(2)交通・駐車場の問題、(3)観光

    基盤の改善・観光地としての演出不足、(4)外国人観光客(インバウンド)対策不足、(5)おもてなし意識

    が希薄、(6)リピーターが少ない、(7)商品開発力の不足などが宇治市の現在の課題として指摘されてい

    る。実際に、平等院修復事業の完了に加え、世界的な抹茶ブームも相俟って、宇治への観光客、とくに外国人

    観光客の増加による様々な課題が露呈してきている。そのため、このような現状を踏まえ、エリア的にも数の

    増加だけを追い求めるのではなく「質の向上」をめざす必要、とくに遅れているインバウンド対策は急務で

    あることを確認した。

    ②片山明久准教授「日本におけるインバウンドの現状と課題」報告(要約)

    片山報告では、「ビジットジャパン」キャンペーンに代表される日本政府の政策によって、外国人観光客が

    増加しており、とくに近年の訪日ビザの規制緩和などにより2013年以降急激に増加している現状などが紹介

    された。また外国人観光客の数の増加以上に、観光行動の関心の中心がモノ消費からコト消費へ移行しつつ

    あるという重要な指摘がなされた。

    00

    以上の片山報告に加えて、宇治市におけるインバウンドの状況と、受け入れ体制をみてみると、課題がさ

    らに明確になった。(図6,7,8,9参照)

    7

    図1

    図2

    図3 図4

    図5

  • (2)第2回研究会 観光関係者対象講演会 「嵐山の観光振興から宇治が学ぶこと」

    宇治市観光振興計画後期アクションプラン策定委員会の委員長である坂上英彦(嵯峨美術大学教授)を招

    き、宇治市商工観光課と連携して、観光事業者や関係者を対象とした研修目的の講演会を開催した。

    京都市内の先進的観光地である嵐山での活動事例を宇治市内の関係者に知ってもらい、今後の宇治での対策の

    ヒントにしてもらうことを目的とした。内容としては、観光客の8割が外国人になっている地域での、嵯峨嵐

    山おもてなしビジョン推進協議会の活動、京都市、京都商工会議所との連携や予算補助、日常情報を共有す

    るニュースレターの発刊の取組など、これまでの蓄積が紹介された。また取組の展開として、産学協働で観

    光地の背景となる環境保護活動、新規事業としての嵐響夜舟や月見イベントの開催、外国人向けの冊子の作

    成、16時以降の営業対応などが紹介された。

    (3)第3回研究会 「やさしい日本語ツーリズム」とは何か

    ①「やさしい日本語ツーリズム」のすすめ 吉開章氏(株式会社電通)、船見和秀氏(日本語教師)

    発想の転換による受け入れ環境の整備、おもてなし環境、おもてなし意識の向上、リピーター獲得につな

    がるようなコミュニケーションの質の向上を図る必要があることを、福岡県柳川市における具体的な事例を

    通じて詳しく報告頂いた。

    一般的な外国人観光客の受け入れというと、言語的には英語学習が想起されやすいが、実際には、その対

    象となる言語は英語には限定されない。図10に示されているように、日本語を勉強していて使用してみたい

    と考えている外国人観光客は多い。とくに調査対象となっている台湾、香港、韓国などのアジア諸国では予

  • 想以上にその数は多い。

    図11に示されるようなゴールを示すこの「やさしい日本語ツーリズム」という取組は、アジア系の外国人

    観光客が多い宇治市には、とくにマッチングするのではないかと思われる。そういう意味では、今後のイン

    バウンド対策としては、語学の堪能さよりも、直接的なコミュニケーションによる楽しさを重視するという

    発想の転換を学んだ。

    ②「アジア・欧米豪訪日外国人旅行者の意向調査概括」 宮本茂樹氏

    平成28年度の「DBJ(株)日本政策投資銀行・JTBF(公財)日本交通公社調査」によると、幅広い分野の体

    験に関心が高まり、リピーター中心に地方観光へ高い訪問意向が現れてきている。課題としては、受け入れ

    体制整備や再訪に繋げるための、地域としての戦略的な取り組みが必要となってきている。

    訪問の動機について、TOP2は 自然や風景と日本食であり、アジア勢は温泉。欧米豪勢は文化・歴史・ラ

    イフスタイルへの関心が強い。観光地の認知度としては、依然として ゴールデンルート・北海道・沖縄な

    どが高いが地方への展開が予想され、特にリピーターは幅広い観光地に対しての訪問意向を持つ。その中で

    欧米豪は認知度の高い観光地に限られる傾向があり、地方観光地は今後さらにPRが必要であることが指摘さ

    れた。

    (4)第4回研究会 「インバウンド事業事例を学ぶ」

    松村嘉久氏(阪南大学国際観光学部教授)を招き、大阪新今宮から始めたインバウンド事業の取組の内容

    や特徴、そしてそこからの大阪全域への展開について報告頂いた。

    新今宮での旅行案内所TIC を2009年から16年までゼミで運営し(現在は休止中)、バックパッカーなどを

    はじめとした個人旅行者(FIT)が何を求め、何に困っているかを調査し、それらのニーズに応えるために具

    体的な方策を講じてきた。これらの活動は、現場からの声を吸い上げ、宿泊地を起点とする観光開発を展開

    することでもあった。

    また、鉄道事業者とも連携し、大阪に宿泊している観光客の大阪を起点とした観光プランなどの提案も行

    ってきた。なかでも、フランス人の視点から考えた、フランス人からみて美しい高野山写真による情報発信

    など、外国人旅行者当事者目線での資源発見やプラン作成を展開し、「でしか」「ならでは」を生み出す工

    夫を重ねてきた具体的な事例を紹介して頂いた。

    18歳〜64歳男女 台湾 香港 (広東語話者のみ)

    韓国

    今日本語を 勉強しています

    12.8% 9.7% 16.3%

    今日本語を勉強している人数

    170〜 240万人

    35〜 52万人

    493〜 654万人

    少しは日本語で 話せます 41.5% 31.3% 40.7%

    (日本語を勉強している人) 2回以上日本にいったことが

    あります 57.1% 65.8% 46.9%

    (日本語を勉強している人)日本旅行では日本人と日本語

    で話したいです。 66.1% 65.8% 62.2%

    国際交流基金(JF)・電通共同調査 台湾・香港・韓国日本語学習者調査(2016年12月20日発表)

    2015年JF調査日本語学習者数 (学校で学ぶ現役学生数) 220,045人 22,613人 556,237人

    ① 日本国内で外国人と話すとき、 「日本語」は有力な選択肢の1つ

    こんなかんたんなことに気がつくだけで、 日本の、地方の未来が変わる。 みなさんの人生が変わる。

    ② 日本語初心者にも伝わるよう、 「やさしい日本語」で話そう

    まとめ

    図 10

    図 11

  • (5)第5回研究会 フォーラム「宇治市の観光を考える」

    京都文教大学で開催された「ともいきフェスティバル」と同時開催で、一般市民への公開型で、宇治市観光

    振興計画の後期アクションプラン初案を資料としてフォーラムを開催した。宇治市商工観光課との共催で海

    佐入れたフォーラムでは、①「観光振興計画後期アクションプラン初案概要説明」(柯慈樹氏)②「日本にお

    ける近年の観光動向とインバウンド観光(宮本茂樹氏)③「宇治の魅力を発見発信する市民からの活動」(森

    田誠二氏)④「新たな観光潮流と宇治市の観光(片山明久氏)という 4つの報告をし、さらにその報告に基づ

    き、パネルディスカッション(研究代表者の森がコーディネーター、宇治市観光協会 多田専務理事参加)を

    展開した。

    それぞれの報告とディスカッションの概要を再掲する。

    ①観光振興計画後期アクションプラン初案概要説明」(柯慈樹氏)・宇治市観光客数について

    ・宇治市観光振興計画の計画期間について(後期アクションプラン策定について、パブリックコメント募集の

    お知らせ)・数値目標について(宇治市観光動向調査より)・後期アクションプランのトピックス(項目の整理、

    周遊性の記載、観光案内の強化、民泊の記載、外国人観光客についての章立て)・宇治市観光計画、基本理念、

    コンセプトについて

    ②「日本における近年の観光動向とインバウンド観光(宮本茂樹氏)

    観光産業の特徴、日本観光の現状(日本の観光の歴史、基幹産業である観光の目的・4つの柱)、観光を核

    とした地域の再生・活性化(国としての海外への取り組み、地域の観光の方向性)、インバウンド(外国人観

    光客について、「アジア・欧米豪訪日外国人旅行者の意向」アンケート調査の結果概要、宇治市の観光の今後

    について)

    ③「宇治の魅力を発見発信する市民からの活動」(森田誠二氏)

    「ちはやぶる宇治の未来をつくる会」概要、ソーシャルキャピタルづくりとしての活動の説明(短歌会、巨

    椋池のVR、フリーマーケット、やまぶき市、ITを活用した情報発信)、魅力発信・情報発信(日本書記の

    中での宇治市、市民が歴史を知る必要性)、宇治のトータルプランニング(「ちはやぶる」ということばと宇治

    について、宇治が人を受け入れてきた歴史、兎道稚朗子について)、市民が自分達のすばらしい宇治を伝えて

    いく必要性

    ④「新たな観光潮流と宇治市の観光(片山明久氏)

    観光の楽しさとは(食、景色、経験→消費の楽しみ/思い出、親睦→精神・交流の楽しみ/インスタ、現地

    での体験→創造・表現の楽しみ)、創造・表現の楽しみ(1000 年前の菅原考標女・更級日記)、「創造・表

    現の楽しみ」においての宇治市の観光(「響け!ユーフォニアム」からの観光)、観光の仕組みづくり(もの

    がたり観光、ロゲイニング)

    ⑤パネルディスカッション

    前期アクションプランにもとづき、交通渋滞対策や観光サインなどの改善、充実が実施されつつある。観

    光案内所、トイレやバリアフリーの対応などの充実が課題としてある。サービスを提供する/される、事業

    者/市民/観光者という関係性を超えて、自由なアイデアと深いコミュニケーションを通じて創造的に交流

    する観光へ変容。価値の多様化への対応が必要であり、魅力ある地域がファンをひきつけ、ファンが地域を

    育て、さらに魅力を伸ばす方向へ。

  • (6)第6回研究会

    京都市MICE推進室国際戦略係長である寺田敏隆氏をお招きし、京都市の観光政策およびインバウ

    ンド対策についてご報告頂いた。

    京都市が長年の取り組みを通じて、観光都市としてのブランド力を高め、多角的に観光政策を推進し

    てきたこれまでの経緯、現状などをご紹介いただき、さらに現在抱える様々な課題や新たな展開につい

    ても教えていただいた。

    毎年年4回実施されている 2000人の外国人観光客を対象とした調査を元に、観光の不満や課題を解決

    し、質の向上を図られていた。そして、地域住民との共存を通じて、さらなる京都経済の牽引役として

    の観光を育てていこうとする工夫に満ちた取り組みを紹介いただいた。京都市中央部が混雑しており、

    旅行客の分散が求められている。京北町などでも移住者による観光の取り組み事例なども出てきてお

    り、そういった取組を行政としても支援していく。宇治市としても京都市と連携できる具体的な事業を

    提案できそうであった。

    また組織体制としては、京都市観光協会をリニューアルした京都市 DMOの創設、コンベンションビュ

    ーローなどとの整理統合など、組織体制の見直しもはかられていた。

    観光の担い手育成事業として、通訳ガイド養成を手がかりに事業者にまで育てていく仕組みの構築な

    ど、よく練り込まれた取組が先進的に展開されており、たいへん参考になった。

    3. 研究成果の地域への還元方法、今後の地域連携への展望等

    (1)今年度の研究成果は、宇治市観光振興計画後期アクションプラン策定にも一定の参考とされている。と

    くに、新規の大きな項目として、「6.外国人観光客対策の強化」を追加した。具体的には以下の4項目であ

    る。

    ①外国人観光客に向けた効果的な情報発信の強化、② 外国人観光客誘客に向けた海外向けプロモーション

    の強化、③外国人観光客に宇治の魅力を伝えるコンテンツの研究、④外国人観光客受け入れ環境の整備:両

    替や免税サービスの導入促進の他、宇治に訪れた外国人観光客が快適に旅行を楽しめるよう、地域と連携し

    て文化的・宗教的背景に対応した受入環境の整備を研究・推進します。

    (2)フォーラム「宇治市の観光を考える」を通じて、現在の研究の進捗に基づき、宇治市の観光を市民と共

    に議論する場を設けた。(詳細は第5回研究会の内容を参照)

    (3)観光事業者向けの講演会の開催し、事業者の意識向上による体制整備をめざした。(詳細は第2回研究

    会の内容を参照)

    (4)宇治市魅力発信PF事業とも連携し、在住の外国人の視点からの宇治の魅力発信を考える機会を設け、

    図 12 フォーラムの様子

  • 当事者目線による観光の質の向上のヒントを得ることを計画している。

    (5)まとめとしては、民泊新法の制定など、増加する観光客と住民との共存を目指し、受け入れ体制を整

    備していく必要がある。そのためには住民の意識改革や理解促進、コミュニケーション方法の工夫などにも

    とづく「交流満足度の向上」を目指すことが、観光の質の向上に繋がるのではないかと考える。

    (6)来年度以降は、上記に述べた「交流満足度の向上」にむけて、具体的に宇治市において重点的に取り組

    むべき課題を絞り込み、対策の具体案や体制などについて検討を深めていきたいと考えている。

    現時点で想定される検討項目としては、いかにあげるような内容が考えられる。

    ① ニーズに対応する効率的な案内方法の構築に向けた情報収集、検討、またそれを実践する人材育成

    ② 着地型観光の質の向上に向けた具体的なメニューやツアー造成、また土産物や飲食などの質向上

    ③ 観光滞在時間や消費額の向上も視野にいれた宿泊を伴う宇治における観光スタイルの提案

    ④ 地域観光人材の育成と地域経済圏活性化を可能とするようなビジネス創出の可能性

    ⑤ 京都市、伏見区、など周辺地域との連携、およびお茶の京都 DMOなどとの連携を通じた観光施策および

    事業の展開

    以上のように、宇治市観光振興計画で重点化した項目も含めて、具体的な項目から事業化をめざし、検討を

    ひとつずつ深めることで、実行方策についてのアイデア、実行可能性、また実行スキームの構築につなげてい

    きたいと考えている。