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魚類筋肉ミオグロビンのメト化率測定法の検討
誌名誌名 日本水産學會誌
ISSNISSN 00215392
巻/号巻/号 813
掲載ページ掲載ページ p. 456-464
発行年月発行年月 2015年5月
農林水産省 農林水産技術会議事務局筑波産学連携支援センターTsukuba Business-Academia Cooperation Support Center, Agriculture, Forestry and Fisheries Research CouncilSecretariat
Nippon Suisan Gakkaishi 81 (3), 456-464 (2015)
魚類筋肉ミオグロビンのメト化率測定法の検討
井ノ原康太, 1尾上由季乃, 2木村郁夫1,2*
(2014年 11月 13日受付, 2015年 2月9日受理)
l鹿児島大学大学院連合農学研究科, 2鹿児島大学水産学部食品工学研究室
Method of measuring the ratio of metmyoglobin formation in fish meat
Fig. 1 SDS-PAGE pattern of various purified Mbs. a: purified yeJlowtail Mb, b: puri五edspotted mackerel Mb, c: puri邑edchub macker巴1Mb, d: purified red sea-bream Mb, e: purified southern bluefin tuna Mb. M molecular weight markers. a, b, c and d were prepared from dark muscle, e from ordinary muscle.
(14,800) ,マダイ (15,200),ミナミマグロ (15,200)
であり,魚種により多少の違いはあるが約 15,000を示
した。 Figure2に各魚種の deoxyMb,oxyMbおよび
metMbの可視部吸収スペクトルを示した。各魚種の
Mbは典型的な 3状態 (deoxy-,oxy-, met-型)の可視部
吸収スベクトルを示した。5)これら 3状態の Mb可視部
吸収スペクトルはいずれの魚種でも等吸収点 (isosbes-
tic point, IS点と略)を有した。 IS点の波長と deox-
yMb,oxyMbの吸光値が交差する波長 (Ao)をTable1
に示した。各魚種MbのIS点の波長は 523-525nmで
あり, Mbのメト化率 0%の指標として採用した deox-
yMbとoxyMbが交差する波長 (Ao)は547-549nmを
示した。
Mbメ卜化率測定法の検討 各魚種 Mbメト化率算出
式の検討は,前報5)に準じて行った。即ち, deoxyMb,
oxyMb, metMbの可視部吸収スペクト lレを測定し, 3
状態の Mbが混在しても同ーの吸光値を示す IS点を基
準値としてメト化率算出式を導出した。各魚種の deox-
yMb,oxyMbが交差する波長は 3点を示したが, 3波長
のうち Mbメト化率 0%の指標となる吸光値は 540nm
付近の値を選択した。 (Fig.2) これらのスペクトlレ特
性を応用し, Mbメト化率算出式を導出した。以下に本
研究で検討を行ったブリ Mbを例として説明する。ブ
リの deoxyMb,oxyMb, metMbの可視部吸収スペクト
ルを測定した結果を Fig.2(a)に示した。 IS点の波長は
524nmであった。 deoxyMbとoxyMbのスベクトルは
548, 572, 588 nmの3波長で交差し,赤色の強さは 540
nm付近の吸光値が反映されるので 548nmの吸光値を
採用した。この 548nmにおける吸光値をAoとした。
吸光値AoはdeoxyMbとoxyMbが同じ値を示す波長で
の吸光値なので, deoxyMbとoxyMbが混在している
メト化率 0%の状態を示す値である。 IS点の吸光値(B)
とAoの吸光値比 (Ao/B)をメト化率 0%の値とした。
一方,メト化率 100%の吸光値比は, metMbの548
nmにおける吸光値 (C) とIS点である 524nmの吸光
値 (B)を用いて求めた (C/B)値とした。ブリ Mbの
メト化率 0%のAo/B値は1.65土0.05(平均値±標準偏
差,n = 39) を,メト化率 100%のC/B値は 0.65:t
0.02 (η=39)を示した。以上の結果よりブリ Mbのメ
ト化率算出式(1)を得た。
metMb(%) = -99.70(A/B) +164.96 (1)
なお,A及びBはMb溶液の A (548 nm), B (524
nm)における吸光値である。
ゴマサパ,マサパ,マダイ,ミナミマグロについても
Fig.2の結果より各魚種 MbのdeoxyMbとoxyMbの
スベクトルが交差する波長 (Ao) および IS点の波長
(Table 1)における吸光値を求め,Ao/B値,C/B値を
算出した結果を, Table 2に示した。 Table1および2
の結果より各魚種 Mbのメト化率算出式を求め以下に
示した。
ゴマサパ
me品。(%)= -98.53 (A/ B) + 162.83 (2)
なお,A及びBはMb溶液の A (547 nm), B (524
nm)における吸光値である。
マサパ
metMb(%) = -98.79 (A/B) +164.87 (3)
なお,A及びBはMb溶液の A (547 nm), B (523
nm)における吸光値である。
マダイ
metMb(%) = -100.09(A/B) + 166.85 (4)
なお,A及びBはMb溶液の A (549 nm), B (525
nm)における吸光値である。
ミナミマグロ
metMb(%) = -96.23(A/B) +162.79 (5)
なお,A及びBはMb溶液の A (549 nm), B (524 nm)における吸光値である。
本研究で確立した Mbメ卜化率測定法と尾藤法との
関係前報5)では新たに確立したカンパチ Mbメト化率
測定法で得られる Mbメト化率の値と尾藤法を応用し
て算出した値との関係について検討を行い,両方法によ
り得られる値は異なるものの直線関係が認められること
から尾藤法により算出した値から正しいメト化率に換算
が可能であることを明らかにした。本研究においても,
新たに確立した各魚種Mbメト化率測定法で求められ
るメト化率と尾藤法を応用して得られる値との関係につ
魚類ミオグロビンのメト化率測定法
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Fig. 2 Visible absorbance spectra of deoxyMb, oxyMb and metMb from dark muscle of yellowtai!, spotted mackerel, chub mack-erel and red seabream and from ordinary muscle of southern bluefin tuna: (a) yellowtail, (b) spotted mackerel, (c) chub mack-erel, (d) red seabream, (e) southern bluefin tuna. The visible absorbance spectra of deoxyMb (一), oxy Mb (-..) and metMb (一)were measured. Protein concentration of Mb was measured as 0.25 mg/mL in 0.1 M KCI-20 mM Tris四HCl(pH 7.5).
いて検討を行った。各魚種血合肉より調製した Mbの
濃度を O.5mgjmLに調整し,これにヒドロ亜硫酸ナト
リウムを添加して deoxyMbとした後,スターラー撹枠
により oxyMbを調製した。この oxyMbを250
Cで加熱
処理した時の可視部吸収スペクトルの経時変化を測定し
た結果を Fig.3に示した。加熱時間に対応して oxyMb
のβピークと αピークが減少し metMbの生成が進行し
た。精製 Mbを還元剤や酸化剤で処理して調製した
deoxyMb,oxyMbおよび metMbの可視部吸収スベクト
ルから求められた IS点の波長は, oxyMbの加熱処理で
生成した metMbとoxyMbの混合液においても同様に
IS点の波長として確認できた。 Figure3のデータを用
460 井ノ原,尾上,木村
Table 1 Wavelength ofAo and isosbestic point measured in spectra of deoxyMb, oxyMb and metMb prepared from yellowtail, spot-ted mackerel, chub mackerel, red seabream and southern bluefin tuna
Wavelength of Ao (nm)
Wavelength of 1.S. (nm)
Yellowtail Spotted mackerel
548
524
547
524
Chub macker巴l
547
523
Red seabream Southern bluefin tuna
549
525
549
524
Ao means the wavelength at crossing of spectra of oxyMb and deoxyMb in the βpeak of oxyMb. I.S., isosbestic point, means the wavelength at crossing of spectra of oxyMb, d巴oxyMband metMb.
Table 2 The ratio of absorbance at Ao and B (100% oxyMb) or C and B (100% metMb) of fish Mb
Ao is the absorbance of oxyMb at the wavelength of crossing of oxyMb and deoxyMb spectra as in Table 1. B is the absorbance at the wavelength of the isosbestic point. The ratio of Ao/ B means 100% of oxyMb. C is the absorbance of metMb at the wavelength of crossing of oxyMb and deoxyMb spectra as in Table 1. The ratio of C/B means 100% of metMb. Numbers show average value and standard deviation.
いて,本研究で確立した各魚種 Mbのメト化率算出式
で求めたメト化率の値と尾藤法を応用して得られた値と
の関係を Fig.4に示した。ミナミマグロ以外の魚種で
は,尾藤法を応用して求めた値はメト化率が低い範囲で
15-19%ほど高い値を示す結果となった。一方,ミナミ
マグロ Mbの場合は, (5)式で求めたメト化率と尾藤法
で得られるメト化率の値は,尾藤法で 3-7%ほど高い
もののほぼ同じ値を示す結果となった。前報5)では,カ
ンパチ Mbのメト化率について,尾藤法を応用して求
めた値と前報で確立したカンパチ Mbメ卜化率算出式
で得られるメト化率がほぼ直線関係を示すことから,尾
藤法を応用して求めた値から正確なメト化率に換算する
ことが可能であることを示した。本研究でも各魚種 Mb
のメト化率を算出するために尾藤法を応用して求めた値
について,本研究で確立した方法で求められる正確なメ
ト化率に換算するための式を魚種ごとに求めることが可
能なので以下に示した。
ブリ
metMb (%) = (A-17.10)/0.85
ゴマサパ
metMb (%) = (A-14.73)/0.96
マサバ
metMb (%) = (A -18.78) /0.83
マダイ
metMb (%) = (A -14.86) /0.86
ミナミマグロ
(6)
(7)
(8)
(9)
metMb (%) = (A -7.00) /0.94 (10)
なお,Aは尾藤法で求めた値である。換算式は Mbメ
ト化率算出式と同様に各魚種間で異なる式を示す結果と
なった。ミナミマグロの換算式(10)は,他の魚種の場
合に比べて尾藤法で求められる値との差が小さいことを
示した。
考 察
血合肉や赤身魚の普通肉の赤い色調は刺身等において
重要な商品指標である。これらの色調は, Mbの酸素結
合状態や鉄原子の酸化・還元により影響を受けるた
め, 2)Mbが酸化した状態である metMbの存在比は色調
の重要な指標となる。魚類 Mbのメト化率測定方法と
しては,マグロ Mbを対象とした尾藤法, 6)カルボニル
MbとmetMbを調製して求める佐野らの方法18,19),お
よび畜肉 Mbのメト化率測定法20)を利用した方法など
が報告されている。尾藤法に比べて他の方法は煩雑であ
り一般的な品質分析への応用例は少ない。そのため,尾
藤法はマグロ Mbを対象としたメト化率の簡易測定法
であるが,マグロ以外の魚種の Mbのメト化率測定に
応用されてきた。21-24)前報5)において,カンパチ Mbの
メト化率の測定で尾藤法を応用して得られる値は,活き
しめ直後の高鮮度状態でも 20%以上の高い値を示すこ
とを認めた。その原因を濁りのない精製 Mbで検討し
たところ,尾藤法で採用されている波長の 503nm
(metMbの吸収極大波長として定義されている)におけ
るmetMbとoxyMbの吸光値比がマグロ Mbと大きく
異なるためであることを明らかにした。魚種により Mb
のメト化率測定方法を検討する必要があることが示唆さ
れたため,本研究ではゴマサパ,マサパ,マダイ,ブ
リ,ミナミマグロを対象としてメト化率測定法の検討を
行った。各魚種の Mbから調製した oxyMb,deoxyMb,
metMbの可視部吸収スペクトルはいずれも IS点を有
し,この IS点における吸収値を基準値としてメト化率
測定式(式 1-5)を導くことができた。各魚種 oxyMbの
加熱処理を行い尾藤法と本報告の方法で Mbメト化率
461 魚類ミオグロビンのメト化率測定法
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Fig. 3 Changes in visible absorbance spectra of purified oxyMb during heat treatment at 250
C・(a)yellowtail, (b) spott巴dmack
巴rel,(c) chub mackerel, (d) red seabream, (巴)southern bluefin tuna. The pl川fiedoxyMb (0.5 mg/mL) from each fish was
treated at 250C in 0.1 M KCI-20 mM Tris-HCl (pH 7.5) solution. Measurem巴ntof the spectra was carried out every 2 minutes
for 1 hour. Color lines show incubation time at 250
C
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井ノ原,尾上,木村462
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Fig. 4 The relationship between data on the ratio of metMb calculated by the Bitou method and each scheme of (1)一(5)from the spectra shown in Fig. 3.0: Data of ratio of metMb calculated by each scheme of (1)ー(5),.: Data of ratio of metMb calculated by the Bitou method. Scheme (1): scheme for yellowtail Mb, scheme (2): scheme for spotted mackerel Mb, Scheme (3): scheme for chub mackerel Mb, scheme (4): scheme for r巴dseabream Mb, scheme (5): scheme for southern blue tuna Mb.
を求め Table3に示した。ミナミマグロ Mbの吸光値比
は0.59と他魚種の吸光値比と大きく異なる結果となっ
た。すなわち,マグロ以外の各魚種Mbの503nmにお
ける oxyMbの吸光値がマグロ Mbに比べて metMbの
吸光値に近い値を示しているので,尾藤法を応用すると
metMbがほとんど生成していない場合でもメト化率が
高く算出される結果となることが明らかとなった。
また,本研究では近縁種であるゴマサバとマサバのメ
ト化率算出式の関係について検討を行った。両魚種Mb
を測定した結果, oxyMb調製直後において尾藤法で得
られる値が約 15-19%高いことをミナミマグロ以外の
各魚種 Mbで確認した。 (Fig.4)Mb溶液が清澄である
にもかかわらず尾藤法で解析するとミナミマグロ以外の
魚種で高い値を示すが,この原因として尾藤法で採用し
た503nmにおける oxyMbとmetMbの吸光値の魚種
特性が影響することが推察された。5)各魚種Mbの可視
部吸収スベクトル測定結果 (Fig.2) より, 503 nmに
おける oxyMbとmetMbの吸光値比 (oxyMb/metMb)
ると測定に使用するカルボニル Mbのα極大の現れる
波長およびこの波長におけるカルボニル MbとmetMb
の吸光係数が異なることを予測し,魚種毎にメト化率測
定法を検討しなくてはいけないことを指摘している。本
研究では各魚種の metMbとoxyMbの 503nmにおけ
る関係がそれぞれ異なる結果を得ているが,これは佐野
らが指摘したことに対応すると推察される。ヘム構造は
同一なのに oxyMb,deoxyMb, metMbの可視部吸収ス
ペクトルやこれらスペクトルの関係が魚種により異なる
結果が得られることを説明するためには,へム構造とタ
ンパク質との関係について検討が必要である。魚肉のへ
ムはへム bであり, Mbのタンパク質とは非共有結合に
より結合している。25)また,へムはその大きさから,巨
大な Mb分子に埋まっている状態にある。しかも, Mb
タンパク質は一酸化炭素や酸素分子などと結合するとき
に形を変えることが明らかにされている。26)Mbメト化
率測定法が魚種ごとに異なる理由を明らかにするため
に,魚種ごとの Mbタンパク質の構造特性とヘムとの
関係について今後検討を予定する。
水産物加工や鮮度保持技術の開発検討を行う際に,鮮
度状態や色調を数値として示すことは非常に重要であ
る。現在,赤身魚の重要魚種であるサンマ Cololabis
saira , マイワシ Sardinopsmelaηostictus , マアジ
Trachurus japonicusの Mbのメト化率測定法につい
て,本研究と同様の方法で測定法を構築したので次に報
告を予定している。
463 魚類ミオグロビンのメト化率測定法
Table 3 Ratio of the absorbance of oxymyoglobin and metmyoglobin at 503 nm
Fig. 5 The relationship between schemes 2 and 3 for spotted mackerel and chub mackerel by using the data of changes in spectra of chub mackerel Mb shown in Fig. 3 (c). 0: Data of ratio of metMb calculated by scheme 3 for chub macker巴1Mb from Fig. 3(c), .: Data of ratio of metMb calculated by scheme 2 for spotted mackerel Mb from Fig. 3(c).
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文
5)
6)
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1)
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4)
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のIS点は 524nmと523nmとわずかな差を示した
が,両魚種の Mbメト化率算出式の(2)と(3)は非常に
近い算出式である。ゴマサパ Mbメト化率算出式(2)で
マサパ Mbメト化率を算出した場合の両値の関係を
Fig.5に示した。ゴマサパ Mbのメト化算出式を応用し
て得られた値はマサパ Mbメト化率算出式で得られる
値とほぼ同じ値を示したので,マサパ Mbメト化率算
出式とゴマサパ Mbメト化率算出式は同じ式として扱
えることが明らかとなった。
また,尾藤法と本報告で確立した Mbメト化率算出
法の関係では,算出される Mbメト化率の両値はすべ
ての魚種でほぼ直線関係を示したことから,尾藤法を応
用して算出した値から正確なメト化率を求める換算式も
得られた。マグロ Mbのメト化率測定法である尾藤法
を本研究で検討した各魚種の Mbに応用し算出したメ
ト化率は,測定時の Mb溶液に濁りが無ければ正確な
値に換算することが可能である。なお魚の普通肉や血合
肉から抽出した粗 Mb溶液の清澄化法については,前
報で示した硫安分画法が簡便で効果的な方法である。5)
本研究で,魚種ごとに Mbメト化率測定法の構築が
必要であることが明らかとなった。マグロ Mbのメト
化率測定方法を最初に確立した佐野らは18)魚種が異な
464 井ノ原,尾上,木村
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