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保健師の人材育成計画策定ガイドライン 平成 28 年 3 月
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保健師の人材育成計画策定ガイドライン - niph.go.jp保健師の人材育成計画策定ガイドライン 平成28年3月 保健師の人材育成計画策定ガイドライン

Mar 23, 2020

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保健師の人材育成計画策定ガイドライン

平成 28年 3月

         保健師の人材育成計画策定ガイドライン

                     平成28年3月

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保健師の人材育成計画策定ガイドライン

平成 28年 3月

         保健師の人材育成計画策定ガイドライン

                     平成28年3月

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はじめに

本ガイドラインは、平成 26~27 年度厚生労働科学研究費補助金(健康安全・危機管理対策

総合研究事業)「地域保健に従事する人材の計画的育成に関する研究」において取り組んだ研

究成果をまとめたものである。

近年、我が国では、急激な少子高齢社会の進展、保健医療サービス需要の増大、健康危機管

理事象の頻発かつ甚大化などによって、地域健康課題は複雑,多様化し、地域保健対策の主要

な担い手となる保健師は、より高度な専門性の発揮が求められている。一方、保健師を取り巻

く就労状況は、職域拡大による少数分散配置や、団塊の世代の保健師の大量退職等から急激な

世代交代がすすみ、これまで培われてきた保健師の活動の継承に影響をきたしている。

このような社会情勢の変化を受け、平成 25 年4月に示された「地域における保健師の保健

活動に関する指針」の中で「自治体に所属する保健師は、日々進展する保健、医療、福祉、介

護等に関する専門的な知識及び技術、連携・調整に係る能力、行政運営や評価に関する能力を

養成するよう努めること」とし、人材育成の必要性が記された。また「保健師の保健活動を組

織横断的に総合調整及び推進し、技術的及び専門的側面から指導する役割を担う部署を保健衛

生部門等に明確に位置付け、保健師を配置するよう努めること」とし、統括的な役割を担う保

健師の配置もすすみつつある。さらに昨今は、部長級以上の上位職位に就く保健師も増加し、

保健師としての専門性に加え、管理職としての機能を併せ持つことにより、地域健康課題解決

のための施策化などに果たす役割や期待は高い。このような、管理職保健師,統括的な役割を

担う保健師など、組織横断的な保健活動や、保健師の人材育成の推進の核となることが期待さ

れる高度専門家としての保健師の人材育成が今後、一層重要になる。

高齢化のさらなる進展、保健・医療・福祉・介護などの多様なサービスの需要の増大と多様

化は今後もさらに深刻化することが予測されている。また、これに伴い社会経済状況も大きな

変化が継続することが想定され、団塊のジュニア世代が 65 歳に達し始める 2035 年までに、世

界最高水準の健康,医療を享受でき、安心、満足、納得を得ることができる持続可能な保健医

療システムを構築することを目標とした「保健医療 2035 提言書」(平成 27 年 6 月)が示され

た。この目標の達成に向けたビジョンとアクションのひとつにグローバル・ヘルス・リーダー

「次世代型の保健医療人材の育成」が示されている。一人ひとりの住民が、主役となれる健や

かな社会の実現というビジョンを見据え、制度横断的な地域独自の意思決定に住民の生命と健

康に携わる専門職として、政策の立案・遂行能力などが発揮できる高度専門職の活躍とその育

成が期待されている。

本ガイドラインは、今後の我が国の社会の動向を見据え、高度専門職としての保健師を系統

的に育成するために参考となる基本的な考え方を示すものである。本ガイドラインを活用し、

各自治体の特性に応じた保健師の人材育成体制が一層推進され、個々の保健師が誇りと自信を

もって地域保健の向上へ寄与するための一助となることを期待している。

2016 年 3 月 研究代表者 奥田 博子

国立保健医療科学院

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目 次 はじめに Ⅰ.人材育成計画策定ガイドラインの基本的な考え方 ······························· 1

1.保健師の人材育成の理念 ····················································· 1 2.人材育成の体系 ····························································· 2 3.ガイドラインの活用方法 ····················································· 4

Ⅱ.保健師に求められる専門能力 ················································· 5

1.保健師のキャリアラダー ····················································· 5 1)キャリアラダーとは 2)実践能力の構造 3)キャリアラダーの能力の枠組み 4)キャリアラダーのレベル 5)キャリアラダーの順序だった能力の獲得 6)自治体保健師のキャリアラダー 7)実践能力獲得の評価

2.統括的な役割を担う保健師と専門能力 ········································ 16

1)統括的な役割を担う保健師の配置と調整機能 2)統括的な役割を担う保健師とキャリアラダー 3)統括的な役割を担う保健師に求められる能力

Ⅲ.保健師に求められる専門能力向上のための方法 ································ 19

1.専門能力向上のための教育・研修 ············································ 19

1)統括的な役割を担う保健師育成のための系統的な教育の考え方 2)統括的な役割を担う保健師に求められるコンピテンシー獲得に必要な教育・経験

2. 専門能力向上に効果的な自己啓発 ··········································· 21

1)自己啓発の意義 2)自己啓発の方法と保健師の専門能力向上

3.系統的な能力育成に効果的な自治体教育体系 ·································· 23

1)自治体における保健師の能力育成の方法 2)自治体・教育機関・国との連携による人材育成

4.専門能力向上のためのキャリアパス ·········································· 26

1)キャリアパス(制度)とは 2)キャリアパスとキャリアラダー 3)キャリアパス策定プロセスと留意事項 4)キャリアパスの活用に向けて

Ⅳ.人材育成推進のための体制整備 ·············································· 33

1.人材育成推進のための組織体制 ·············································· 33 1)自治体組織における体制整備 2)人材育成推進状況のモニタリング,評価

2.職務,研修などの履歴管理 ·················································· 36

1)職務・研修などの個人履歴管理の方法 2)職務・研修などの個人履歴の活用

3 個人特性を考慮した人材育成 ················································ 39

1)個人特性を考慮した人材育成のすすめ方 2)産前・産後休暇,育児休業取得に関するキャリア支援

参考文献、資料 ······························································· 42

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Ⅰ人材育成計画策定ガイドラインの基本的な考え方 1 保健師の人材育成の理念 ・保健師は、行政職員に求められる基本的な知識や姿勢に加え、地域住民の生命,健康,

暮らし,環境に深く関わる専門職であり、住民一人ひとりの健やかな暮らしと、生活者

としての価値観及び人権を尊重することを基本とし、そのために求められる専門知識,

技術及び倫理観は職業人として生涯にわたって研鑽することが求められる。

・地域健康課題の複雑化,高度化にあわせ地域保健関連施策等のめまぐるしい変化に伴い、

施策が分野ごとに実施され保健師の配属部署が多岐に広がるが、どのような所属体制下

においても、保健師が生涯にわたり必要な能力を継続的に育成する人材育成体制の整備

と推進が重要である。 ・保健師は、総合的に施策を推進する上で、組織内外にわたる連携調整能力の習得や施策

化などの高度専門性の発揮が求められており、このような能力を習得するための系統的

な教育,研修体制の構築が必要である。

・保健師の能力の育成には、一人ひとりの内発的な取り組みが基盤となる。そのためには

業務経験や研修などから獲得した能力などの現状を客観的に評価し、今後の進むべき方

向性や目標を明確にし、主体的に成長を図る「自律性」を高めることが求められる。

・個々の保健師が専門性を高めるためには、組織や職能全体で共に育ち合うという組織文

化(風土)の醸成を図ることが重要である。また保健師としての倫理観、価値観を基盤

とした人材育成を図るための組織体制の整備が図られ、時代や地域の変遷等に応じて見

直されていくことが重要である。

教育,研修とは

教育とは“教え育てること”“人の持つ諸能力を引き出すこと”“他から意図的に働き

かけ,望ましい姿に変化させ,その価値を実現させる行動”である。

学習者を、ある意図に基づいて変容(発達)させることを目的としてかかげ、その目的

を具体化した目標を設定して教育が行われることが研修である。

研修は意図的学習を促そうとするものであり、人材育成のための手段のひとつである。

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2 人材育成の体系 人材育成の方法は、日常の業務を通じて行われる「職場内教育(OJT)」,職場を離れて

実施される研修等を受講する「職場外教育(Off-JT)」,計画的な人事異動や配置換えを行

うことにより人材育成をめざす「ジョブ・ローテーション」,関連する知識, 技能,経験

などを他律的な形式に支配されず自主的に向上,啓発をめざす「自己啓発」がある。 新人看護職員研修ガイドライン「保健師編」には、新人保健師 1 人に対し実施指導者(プ

リセプター)がマンツーマンで担当する方法(プリセプターシップ)、決まった相談相手(チ

ューター)を配置し、仕事や悩み事などの精神面、生活などの広範囲にわたり相談する支

援方法(チューターシップ)、新任保健師を援助し、指導、助言、相談にのる役割を果たす

方法(メンターシップ)等を例示している(表1)。また新人保健師の指導体制として、地

域保健従事者現任推進事業等を活用し、退職保健師が指導者となり、新任期の保健師を育

成し、培われた技能の伝承を図るトレーナー制度を活用する自治体もある。一方、昨今は

自治体(行政)の方針として新人職員に即戦力を求める傾向があり、そのため保健師の採

用時点においても多様な前職歴や学歴を有する保健師が存在する。また、採用後も、育児

休暇制度などの活用によって、職場を離れる期間が長期化する場合もある。これらの現状

から、採用後の年数の単純換算等を区切りとした教育・研修体系だけではなく、個人の特

性、能力、経験、さらには今後のキャリア志向等を考慮した人材育成の検討が求められて

いる。本ガイドラインでは、統括的な役割を担う保健師を含む、より高度な専門性の発揮

や、制度横断的な総合調整、施策化などの機能を担うことを期待される保健師に求められ

る専門性を、新任期から系統的に育成するための職場内教育(OJT),職場外教育(Off-JT),ジョブ・ローテーション,自己啓発について例示した〈Ⅲ〉。 一般的に、自治体保健師の人材育成に係る所管部署は、自治体組織管理を担う総務部局

等の人事担当部署、保健・福祉等専門職の人材育成を担う医療保健福祉部局、保健師の人

材育成に特化した部署など、多様な組織体系によって教育・研修の機会や、人事管理の仕

組みが存在する。これらの機会を通じて得られた経験などの確認や記録のためのツールと

して人事記録、キャリアシート、ポートフォリオなどがある〈Ⅳ〉。また、専門能力の系統

的な獲得には、自治体の特性を考慮し、策定されたキャリアラダー〈Ⅱ〉、キャリアパス〈Ⅲ〉

などの活用がそのめやすとなる。さらに、人材育成の PDCA を実施するために、「人材育成

評価(検討)委員会(仮称)」などを設置し、所属や組織の理念に基づき、保健師個々のキ

ャリアに応じた系統的な人材育成の推進状況のモニタリングを含め、中長期的な専門職育

成のためのビジョンに基づく、人材育成体制の構築が重要である〈Ⅳ〉。 個々の保健師においては、各自の教育・研修や職務経験を通じて獲得された能力を客観

的に評価し、地域保健の向上へ一層の寄与が可能となるための、さらなるステップアップ

のために、主体的に教育・研修等の機会を活用することが望まれる。 (〈 〉参照:本ガイドライン該当章)

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図.保健師の人材育成の体系図 表 1. 新人保健師を支える組織体制

名 称 定 義 適 用

プリセプターシップ 新人保健師1人に対して決められた経験のある先輩保健師(プリセプター)がマンツーマン(同じ勤務を一緒に行う)で、ある一定期間新人研修を担当する方法。この方法の理念は、新人保健師のペースに合わせて(self-paced)、新人保健師自らが主体に学習する(self-directed)よう、プリセプターが関わることである

新人保健師が現場に出てすぐなど、ごく初期の時期で用いるのが効果的である。プリセプターは自分の担当する地区(部署等)での保健サービスを、担当の新人保健師(プリセプティー)とともに提供しながら、仕事を通してアセスメント、保健師技術、保健サービスを提供する仕組み、保健師としての自己管理、就業諸規則など広範囲にわたって手本を示す。

チューターシップ (エルダー制)

各新人保健師に決まった相談相手(チューター)を配置し、仕事の仕方、学習方法、悩みごとなどの精神面、生活など広範囲にわたり相談や支援を行う。

決められた相談相手がいることは新人保健師にとって心強いとの評価であり、新人保健師研修期間を通じてチューターを配置することが望ましい。この方法では日々 の業務における実践的指導ができないため、新人保健師と先輩がペアで住民・労働者や地域・職場を受け持つ方法とを組み合わせることが多い。

メンターシップ

メンターは新人保健師を援助し、味方となり、指導し、助言し、相談にのる役割である。通常、直接的な実地指導者として関わることはなく、支援者的役割を果たす。

メンターは中長期的なキャリア支援、動機付け、よき理解者として関わりながら、人間的な成長を支援する役割であるので、新人保健師研修後期以降の支援者としてふさわしい。

チーム支援型 特定の指導係を置くのではなく、 チームで新人保健師を教育支援する方法。

新人保健師1人に1人の指導者を付け ず、チームに参画しながら新人保健師を 教育・支援する。チーム内でそれぞれの メンバーが得意分野を指導するように役 割の分担がなされている。

新人看護職員研修ガイドライン「保健師編」(平成 23 年 2 月)

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3 ガイドラインの活用方法 1)ガイドラインの活用 本ガイドラインは、各地域(自治体)の特性,自治体保健師の実態(人材確保,人員配

置,人材育成体制,専門的能力等)に応じ、既存の人材育成ガイドライン(マニュアル)

や研修体系と照合する際の参考となる標準的な考え方を示した。

自治体や所属組織の人材育成に関する理念や体制と整合性を図り、自治体内や組織内部

だけではなく、人材育成に関連する地域の教育関連機関等との協働や連携強化も視野に入

れ、実効性のあるガイドラインの策定や人材育成体制整備の際の参考として活用されるこ

とを期待している。

2)活用により期待する効果 (1)自治体(組織) ガイドラインの策定や改訂の際に参考となる。 地域保健法第四条第一項の規定に基づく地域保健対策の推進に関する基本的な指針

(基本指針)には、「人材の資質の向上について都道府県及び市町村は、職員に対する現

任教育について各地方公共団体が策定した人材育成指針に基づき、企画及び調整を一元

的に行う体制を整備することが望ましい」と示されている。 本ガイドラインは、都道府県や市町村が基本指針に沿って、自治体独自のガイドライ

ンを策定あるいは改訂する際の参考資料として活用する。

(2)保健師(個人) 自律的に高度な専門能力を系統的に獲得していくために参考となる。 保健師職業人としての生涯にわたる経験が多様化し、個人特性を考慮した人材育成が

必要となっていることを考慮し、保健師個人が自律性を高め、専門能力を獲得する際の

参考資料として活用する。

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Ⅱ 保健師に求められる能力 1.保健師のキャリアラダー 1)キャリアラダーとは 保健師としての職業人生は、看護基礎教育における保健師教育に始まり、卒業後の長い

職業人生におけるキャリア開発では、現任教育が行われている。キャリアの開発について

勝原は「組織が個人を組織内でどう活かすかを考える視点(開発)と、個人が自分の課題

としてどのように成長していくかを考える視点(発達)」があり、「前者を”キャリア・マ

ネジメント”、後者を”キャリア・プランニング”」としている。 長い職業人生において、能力の成長発達を段階的に表し、各段階によって期待される能

力は示され、到達度によって能力評価がされるシステムをクリニカルラダーという。 保健師のキャリアの開発については、保健師指導者育成プログラムの開発においてキャ

リアラダーが定義されている。キャリアラダーとは「組織の人的資源管理ならびに総合的

な人材開発を目的とした個人支援システムであり、保健師の職務の目的、社会への成果責

任の特性をふまえて設定されるものであり、キャリアラダーの軸となるのは職業経験に伴

い発達確認ができる保健師のコンピテンシーである。」とされ、ガイドラインにおいても、

保健師のキャリアラダーの定義として用いている。 キャリアラダーは、キャリア形成のプロセスを示すものであり、将来の目標を見定めて

階段を上るように着実に実践能力を獲得するための指標の役割をはたす。個人の保健師だ

けでなく、組織的な人材育成においては、上司や指導者から見た部下の育成にも活用でき

るものである。 厚生労働省の雇用政策においては、キャリア目標を提示するものとしてキャリアマップ

が作成されている。キャリアマップとは、職業能力評価基準で設定されているレベル1~

4をもとに、該当業種の代表的な職種における能力開発の標準的な道筋を示したものであ

り、キャリアラダーと同様の人材育成のツールである。

2)実践能力の構造 保健師の実践能力の構造は、現在それぞれの自治体が人材育成マニュアルを作成した時

に利用された文献を基本として、その考え方を継承した。平成 15 年度「新任時期における

地域保健従事者の現任教育に関する検討会報告書」(厚生労働省)では、地域保健従事者の

求められる能力の専門性と共通性において、基本的能力、行政能力、共通の専門能力、保

健師としての専門能力という枠組みが示された。この報告書をもとに、平成 16 年度「新任

時期における地域保健従事者の現任教育に関する検討会報告書」、平成 17 年度「新任時期

の人材育成プログラム評価検討会報告書」、平成 18 年度「指導者育成プログラムの作成に

関する検討会報告書」が作成され、全国で活用されている。 平成 19 年度厚生労働科学研究「保健師指導者育成プログラムの開発」では、育成するコ

ア能力として、自治体における対応策のシステム化、スーパーバイズ、リーダーシップを

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発揮した活動の推進・評価、集団・地域を視野に入れた組織的対応の実施、個人家族への

責任のある対応がキャリアの段階と対応して示された。能力の枠組みは、対人支援、地域

マネジメント、健康危機管理、組織管理(職場組織/人材育成)であった。 一方、新任教育のマニュアルとしては「新人看護職員研修ガイドライン~保健師編~.

平成 23 年」(厚生労働省)が活用されている。保健師の実践能力の構造は、保健師活動に

関する技術を支える要素として 5 項目が示された。実践能力は 3 項目で、専門職としての

能力(1.個人・家族・小グループへの支援、2.集団・地域への支援、3.施策化能力)、

組織人としての能力(1.所属組織の理解、2.組織内コミュニケーション)、自己管理・

自己啓発に関する能力(1.研究成果の活用、2.継続的学習、3.ストレスマネジメン

ト、健康管理)であった。 また、アメリカ公衆衛生看護団体協議会では、保健師のコアコンピテンシーを 8つの領

域に分類し、領域 1 分析とアセスメントのスキル、領域 2 政策開発、施策化のスキル、領

域 3 コミュニケーションのスキル、領域 4 文化的能力のスキル、領域 5 地域における実践

の諸要素、領域 6 公衆衛生学のスキル、領域 7 財務計画と管理のスキル、領域 8 リーダー

シップとシステム思考のスキルが示された。

3)キャリアラダーの能力の枠組み 保健師のキャリアラダーの枠組みは、平成 19 年度厚生労働科学研究で開発したキャリア

ラダーをもとに、前述の実践能力の構造及び先行研究等の成果を踏まえて作成した。 キャリアラダーの能力の枠組みは、保健師の実践活動を類型化し、「保健師活動の領域」

とした。活動の領域は、自治体に勤務する保健師の活動を、総合して行政職としての活動

とした。どのような職種であれ、行政組織に働く職員に共通するのが「組織人としての活

動」である。保健師という専門性を持った資格職の活動は「専門職としての活動」とし、

さらに 5 領域に区分した。保健師としての専門性だけでなく、さらに行政機関における管

理的な活動を職位と連動させて「行政の管理職としての活動」とした。活動領域の詳細に

ついては後述する。

表2 行政職としての活動

活動領域 活動内容例

行政の管理職として

の活動 行政の管理的活動 組織管理、政策策定と評価

専門職としての活動

管理的活動 組織管理、業務管理

情報管理、人事管理、人材育成

システム化・政策化の

ための活動 施策化・自治体レベルの計画策定

中期計画策定・評価

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事業計画作成・評価、予算獲得

ケアシステム構築、地域ケアの質の評価

地域支援活動 地区活動、地域組織支援

保健事業の実施、評価

対人支援活動 個人・家族への支援、小集団への支援

ケース・マネジメント

保健師活動の基盤 組織人としての活動 行政組織活動の基盤

(1)組織人としての活動 a.行政組織活動の基盤 行政組織活動の基盤となる主な能力は、行政職員として職務を遂行するための基本となる

行政職員に共通して求められる能力である。 組織関与の面からは、組織の使命を理解し、組織の一員としてメンバーシップをとるこ

とができる能力である。立場に応じて、部署内の風土づくりができる能力も必要である。 組織体系の面からは、組織の構成や意思決定構造および財政のしくみを理解し、「ホウレ

ンソウ」の確実な実施ができる能力は最も基本の能力である。また、組織外の関係機関の

理解を広げ、外部の関係機関とネットワークを構築することができる能力も含まれる。 職務関与の面からは、ワークライフバランスを取りながら発展的に仕事ができる能力も

必要である。

(2)専門職としての活動 a.保健師活動の基盤 保健師活動の基盤となる主な能力は、保健師のアイデンティティを持って、保健師とは

何かについて説明できる能力が最も基盤になる。さらに保健師の活動の理念である社会的

公正について理解して、活動の倫理的判断ができる能力である。 活動の対象である個人・家族、組織の持つ多様な価値観を理解し、それぞれの対象と多

様なコミュニケーションが取れる能力が必要である。 活動においては、自己の能力を客観視でき、自己の限界を理解して他者と共同して、保

健活動を進めることができる能力も、能力の開発につながる。 学会への参加や発表など、専門職としての自己研鑽や自己開発の能力も、保健師の基盤

として求められる能力である。 また、保健師として自己の健康管理ができること、メンタルヘルスの管理ができること

も自己管理能力として重要である。

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b.対人支援活動 対人支援活動において求められる主な能力は、個人・家族への支援、小集団への支援、

ケース・マネジメントのための能力である。 個人・家族への支援のための能力とは、地域に暮らす人々の生活の多様性を理解し、家

庭訪問、来所相談、健康相談の場面などあらゆる保健師活動の場面で、個人および家族へ

の支援ができる能力である。医学的・心理学的・社会学的な知識を基に、健康と生活の多

面的なアセスメントを行い、保健指導、面接やカウンセリング、健康教育、直接的なケア

などを実際に提供できる能力である。支援を評価して、次の支援に結びつけることができ

る能力も含まれる。 小集団への支援のための能力とは、グループを対象に健康課題解決のためにアセスメン

ト、支援の実際、評価という一連の過程を実施できる能力である。 ケース・マネジメントの能力とは、個人・家族・小集団の事例の支援において、必要な

資源を導入し、その調整を行い、効果的効率的な支援を行う能力である。事例との関係構

築はもとより、関係機関との連携や調整の能力が必要である。

c.地域支援活動 地域支援活動において求められる主な能力は、地区活動、地域組織支援、保健事業の実

施・評価などのための能力である。 地区活動のための能力とは、担当地区のアセスメントと課題を明確化し、地域の健康課

題を地域組織および関係機関と協働して解決することができる能力である。地区活動にお

いては、健康課題により、地域の人々の権利擁護を行い、代弁者の役割をとる能力が必要

なこともある。担当地区内の個別事例の管理をする能力も含まれる。 地域組織支援のための能力とは、地域の健康課題に応じて地域組織を育成し協働できる

能力である。 保健事業の実施・評価のための能力とは、計画された事業を地域で実践し、その成果を

評価できる能力である。時には地域の代表者と交渉・調整して協働活動を推進する能力も

求められる。

d.システム化・政策化のための活動 システム化・政策化のための活動で求められる主な能力は、施策化・自治体レベルの計

画策定、中期計画策定・評価、事業計画作成・評価、予算獲得、ケアシステム構築、地域

ケアの質の評価のための能力である。 施策化・自治体レベルの計画策定のための能力、中期計画策定・評価の能力、事業計画

作成・評価の能力は、自治体の施策体系の理解と法的根拠の理解、計画のレベルと内容に

合わせた地域のデータ収集と分析ができ、その分析に基づいて計画が立案と評価ができる

能力である。その過程では、疫学、統計、研究的手法を活用できる能力が必要である。

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予算獲得のための能力とは、自治体の財政システムを理解し、計画の必要性の説明を簡

潔に行える能力である。 ケアシステム構築、地域ケアの質の評価のための能力とは、地域の健康課題の分析に基

づき必要な新たな制度や施設を創設したり、その制度が効果的効率的に運営できるように

調整や改善を行い、さらにはそのケアシステムもしくはケア自体の質の評価を行える能力

である。 e.管理的活動 保健師の管理的活動で求められる主な能力は、組織管理、業務管理、情報管理、人事管

理、人材育成のための能力である。管理的な立場ではなくても、専門職として保健福祉の

業務全体を把握し、理解することが必要である。 組織管理のための能力とは、効果的効率的な保健福祉活動のために係や課を超えて必要

な調整ができるなど組織の体制を整備し調整できる能力である。 業務管理のための能力とは、複数の担当する保健福祉事業の進行管理ができるなど業務

をマネジメントする能力である。 情報管理のための能力とは、情報を収集し、適切な保管と管理、開示と保護ができる能

力である。 人事管理のための能力とは、保健師の採用基準や採用にかかわること、保健師の人事評

価などを行う能力である。 人材育成のための能力とは、プリセプター役割を担える、後輩の指導ができる、人材育

成計画を作成し遂行できるなど、組織や人を育てる能力である。

(3)行政の管理職としての活動 a.行政の管理的活動 行政の管理的活動において求められる主な能力は、組織管理の能力と政策策定・評価の

能力である。保健師の専門領域での管理的な能力とは異なり、行政組織のライン職(課長、

部長、局長など)として、広範な業務を統括し、行政の代表として責任を負う立場での管

理業務を行うための能力である。 組織管理のための能力とは、国の動向や組織トップの方針を理解して活動方針のビジョ

ンを示すこと、健康危機時に保健医療福祉組織を代表して提言し組織内外の調整ができる

こと、担当部署の全職員の資質の向上のしくみづくりとその変革ができることなどの能力

である。 政策策定・評価のための能力とは、自治体を代表して上位の外部の関係機関との調整や

交渉を行い、自治体総合計画に参画し、議会対応や首長への対応ができる能力である。

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4)キャリアラダーのレベル キャリアラダーは4段階(レベルⅠ~Ⅳ)に区分した。従来の人材育成では、主として

経験年数に応じて「新任期」「中堅期」「管理期」と整理されることが多かった。本ラダー

では、能力の発達段階を区分して表現した。教育背景や職務経験が多様化する中で保健師

の能力は経験年数毎に一様というわけではなく個人差があることから、各保健師の能力の

獲得状況を把握できるようなキャリアラダーが必要である。 課長や部長など管理職に就く保健師が増加傾向にあるため、専門職としての能力だけで

なく、行政組織における管理的役割を持つ保健師に求められる能力を明確にするため、新

たに管理職としてのレベル(レベルⅣ)を設定した。

(1)レベルⅠ レベルⅠ-1 自治体保健師の新任者として、組織の規則等を習得し、個別支援や地区診断に基づく地

区管理等の能力を醸成し、保健師としての基本的な視点及び実践能力を獲得する時期であ

る。社会人として、公務員として、保健師として成長する最初の段階であり、指導者の丁

寧な指導が必要である。 レベルⅠ-2 レベル I の後期として、基本的な日常業務を自立して行える時期である。しかし、複雑な

状況下での十分な判断は難しく、相談や見守りが必要である。

(2)レベルⅡ レベルⅡ-1 業務全般を理解した上で、保健師の通常の業務全般について自立して行える時期である。

自身が担当する業務だけでなく、所属する組織やチームを見渡し、職場においては、上司

と若い世代とのパイプ役割を担い、プリセプターなどの組織的な役割を担うことができる。

また、地域診断や基本的な施策化を自立して行える。 レベルⅡ-2 地域診断に基づく施策化ができ、地域や関係機関の信頼を得て協働活動ができる。複雑

な課題にも対応でき、組織人としても自立して職務を遂行できる。係内でチームのリーダ

ーシップをとって保健師業務を推進できる。次期指導者としての役割を獲得する段階であ

る。

(3)レベルⅢ レベルⅢ 保健師としての経験を積み、対人支援および地域支援の実践に関して、指導的役割を果

たす段階である。職場においては、総括的機能を果たす保健師として、保健活動全般を視

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野に入れ、組織横断的に調整機能を発揮するとともに、後輩保健師の実践への指導・助言

を行い指導的役割を果たし、リーダーとしての役割を発揮する段階である。また、専門職

として、特定分野のエキスパートとしての役割を担う。

(4)レベルⅣ

レベル Ⅳ-1

レベルⅢと同様の段階であるが、さらに、組織では係長や班長など小さな単位の組織を

取りまとめる指導的役割、組織管理的役割を果たす段階である。

レベルⅣ-2

保健師の専門分野のみならず、複数の係や幅広い業務を所管し、組織の管理職としての

役割を果たす段階である。課長職として、広い視野で業務を遂行し、組織管理ならびに人

材育成を行う時期である。

レベルⅣ-3

部長もしくは局長として、対外的に自治体組織を代表して業務を遂行し、組織の管理と

開発を継続して行う段階である。

5)キャリアラダーの順序だった能力の獲得

キャリア開発におけるキャリアラダーは、個々の保健師の成長発達の目標であり、評価

の指標である。実践の場において保健師が向き合う事例は、社会の格差が拡大するにつれ、

社会不適応や虐待、暴力など複雑困難な課題を抱える人々が多くなっている。保健師基礎

教育での学びを基盤にして、一歩ずつ実践能力を向上させることが専門職としての責務で

ある。

能力の獲得は、単純から複雑なことへ、自分自身のことからより広範囲なことへと視野、

思考および知識を拡大し、実践活動においては調整やマネジメントの範囲を拡大すること

であり(図 1)、結果として成長につながる。能力のレベルは、知っているというレベルか

らその意味や本質を理解するレベルへ深化し、さらに実践へと発展していく。実践につい

ても、指導のもとでできる、一部できるレベルから、自立してできるレベルへ、さらには

他者に指導をする、他者へ指示ができるというレベルへと発展していく(表3)。

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図1 実践能力の拡大

表3 キャリアラダーにおける到達レベルの順序だった能力の獲得の考え方

レベルⅠ レベルⅡ レベルⅢ レベルⅣ

LⅠ-1 LⅠ-2 LⅡ-1 LⅡ-2 LⅢ LⅣ-1 LⅣ-2 LⅣ-3

他組織 ☆ △ △ 〇 ◎

自部局内(対他課) ☆ △ 〇 〇 ◎

自課内(対他係) ☆ △ 〇 ◎ ◎

自係内(対他スタッフ) ☆ △ 〇 ◎

自担当事業・事例 △ 〇

到達レベル ☆ 理解している、 △ 指導のもとで実施できる

○ 自立して実施できる ◎ 指導、他者への指示ができる

6)自治体保健師のキャリアラダー

自治体に勤務する保健師のキャリアラダーは、表4に示すようにレベルⅠ~Ⅳの 4 段階

に区分され、段階を追って実践能力を修得することを示している。

保健師のキャリアパスは多様化しており、新任期においては、保健師基礎教育が養成所・

短期大学専攻科・学部統合カリキュラム・学部選択制・大学院と多様であり、看護師の経

験や他の自治体での経験を持つ保健師、非常勤での経験がある保健師などの背景があり、

個々人のスタート地点は一律ではない。個人の状況に合わせて実践能力をアセスメントし、

キャリアラダーのどの位置にいるかを確認することから始める。

また、レベルⅡ-1の段階であっても、それまで保健師として経験をした所属が、保健

センターか地域包括支援センターかもしくは本庁部門かによって、修得した実践能力が異

なることがある。個人の特性においても得意な領域や不得意な領域がある。キャリアラダ

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ーの指標は、能力開発の目標でもあるが、個々人の保健師の現時点での能力の評価を行う

にあたっては、成長発達の途上の位置を知ることにも活用できる。保健師としてのキャリ

アのマップを広げた時に、保健師として必要な能力の 7 つの領域について、どの程度の能

力を獲得できたかを評価することができる。

7)実践能力獲得の評価

保健師の実践能力を適正に評価することで、個々人が自己のキャリア発達を促すことが

でき、現任教育明確な目標設定をすることができる。

実践能力の自己評価ができるとは、それぞれの保健師が日常の業務遂行において、「でき

ていること」と「できていないこと」を自覚し、できていることに自信を持ち、できてい

ないことに対して目標を持って挑戦することである。正当に自己評価できることは、保健

師としての自信につながり、職務満足にもつながる。

現実的には、客観的に自己評価をするのは困難であり、上司や指導者との面談等の機会

を持って実践能力の到達度を評価できるのが望ましい。360 度評価の考え方からは、同僚か

らの評価、関係機関の協働者からの評価、事業や支援の対象者からの評価も実践能力の評

価のための材料となる。

また、組織においては、実践能力を評価することで個々の保健師の課題を明確にして、

異動や研修への派遣などキャリアパスの計画に活用できる。所属内でキャリアラダーをも

とに保健師の機能が理解されると、より効果的な活動の展開が期待できる。

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レベルⅢ レベルIV

LⅠ-1 LⅠ-2 LⅡ-1 LⅡ-2 LIV-1 LⅣ-2 LⅣ-3

自治体保健師の新任者として、組織の規則等を習得し、個別支援や地区診断に基づく地区管理等の能力を醸成し、保健師としての基本的な視点及び実践能力を獲得する時期である。社会人として、公務員として、保健師として成長する最初の段階であり、指導者の丁寧な指導が必要である。

レベルIの後期として、基本的な日常業務を自立して行える時期である。しかし、複雑な状況下での十分な判断は難しく、相談や見守りが必要である。

 業務全般を理解した上で、保健師の通常の業務全般について自立して行える時期である。自身が担当する業務だけでなく、所属する組織やチームを見渡し、職場においては、上司と若い世代とのパイプ役割を担い、プリセプターなどの組織的な役割を担うことができる。また、地域診断や基本的な施策化を自立して行える。

地域診断に基づく施策化ができ、地域や関係機関の信頼を得て協働活動ができる。複雑な課題にも対応でき、組織人としても自立して職務を遂行できる。係内でチームのリーダーシップをとって保健師業務を推進できる。次期指導者としての役割を獲得する段階である。

 保健師としての経験を積み、対人支援および地域支援の実践に関して、指導的役割を果たす段階である。職場においては、総括的機能を果たす保健師として、保健活動全般を視野に入れ、組織横断的に調整機能を発揮するとともに、後輩保健師の実践への指導・助言を行い指導的役割を果たし、リーダーとしての役割を発揮する段階である。また、専門職として、特定分野のエキスパートとしての役割を担う。

レベルⅢと同様の段階であるが、さらに、組織では係長や班長など小さな単位の組織を取りまとめる指導的役割、組織管理的役割を果たす段階である。

保健師の専門分野のみならず、複数の係や幅広い業務を所管し、組織の管理職としての役割を果たす段階である。課長職として、広い視野で業務を遂行し、組織管理ならびに人材育成を行う時期である。

 部長もしくは局長として、対外的に自治体組織を代表して業務を遂行し、組織の管理と開発を継続して行う段階である。

行政の管理職としての活動

行政の管理的活動

組織管理政策策定と評価

   

行政の管理職としての活動

行政の管理的活動

組織管理政策策定と評価

組織内外の保健福祉部局外の部局とのネットワークを活用できる課長の代行としての役割がとれる人材育成を意図して担当部署の業務配分ができる担当部署内の情報管理のしくみを構築できる

自治体の保健福祉のビジョンを描き、示すことができる財政部門との交渉ができる外部の関係機関との調整、交渉ができるプロジェクトの企画・マネジマントができる議会対応、首長への対応ができる課単位の業務管理ができる健康危機時に保健医療福祉組織を代表して提言し、組織内外の調整ができる担当部署の全職員の資質の向上のしくみづくりができる

国の動向、組織トップの方針を理解して活動方針のビジョンを示すことができる自治体総合計画に参画できる自治体を代表して上位の外部の関係機関との調整、交渉ができる部局単位の業務管理ができる健康危機時に保健医療福祉組織を代表して提言し、組織全体の危機管理を担う組織の将来を見通した人材計画の下に、職員の資質の向上のための改革ができる

管理的活動

組織管理業務管理情報管理人事管理人材育成

配属された係内の保健福祉事業を把握している

複数の担当する保健福祉事業の進行管理ができる

プリセプター役割を助言を受けて遂行できる複数の保健福祉業務のマネジメントができる

チームの人材育成計画を作成し、実施できる保健師としての活動や保健福祉事業の評価を研究として報告できる

保健福祉の担当分野全体の業務管理ができる統括的な視点を持って保健師として、所属自治体の保健師活動の全体を把握できる効果的効率的な保健福祉活動のために、係や課を超えて必要な調整ができるチームの人材育成計画の推進、評価ができる

管理的活動

組織管理業務管理情報管理人事管理人材育成

担当部署の人材育成計画を作成し、組織として遂行できる保健福祉の担当分野全体の業務管理ができる統括的な視点を持って保健師として、所属自治体の保健師活動の全体を把握できる効果的効率的な保健福祉活動のために、係や課を超えて必要な調整ができるチームの人材育成計画の推進、評価ができる

保健師の採用基準を提言できる部署内の保健師の人事評価ができる

組織目的に適した保健師を採用できる

システム化・政策化のための活動

  施策化・自治体レベル   の計画策定  中期計画策定・評価  事業計画作成・評価  予算獲得  ケアシステム構築  地域ケアの質の評価

・地域(所属自治体)の概要を基本的なデータから把握できる・自治体の施策体系の理解ができる・担当事業の根拠法を理解している

担当事業についてのニーズ分析と評価を地域診断と関連させてできる継続した事業の企画が自立してできる

量的データ、質的データを収集、分析して地域の健康課題を明確にできる継続した担当事業を地域のニーズと合わせて評価ができる疫学や統計を活用した地域診断ができる

地域診断による新規事業計画を策定できる国の政策の変化に合わせて、既存事業を再編できる住民の声を反映した施策化ができる疫学や統計を活用した地域診断の指導ができる研究手法を活用して事業評価ができる地域ケアシステムの構築ができる

地域の健康課題の分析に基づき、地域ケアシステムの構築と調整ができる予算の獲得・予算管理ができる事業計画・事業評価の指導ができる地域ケアシステムの質の管理ができる健康危機発生時に、スタッフへの指示をだし、組織内のマネジメントができる

システム化・政策化のための活動

  施策化・自治体レベル   の計画策定  中期計画策定・評価  事業計画作成・評価  予算獲得  ケアシステム構築  地域ケアの質の評価

担当部署の保健医療福祉に関する中期計画の策定と評価および指導ができる地域の健康課題の分析に基づき、地域ケアシステムの構築と調整ができる予算の獲得・予算管理ができる事業計画・事業評価の指導ができる地域ケアシステムの質の管理ができる健康危機発生時に、スタッフへの指示をだし、組織内のマネジメントができる

地域ケアシステムの質の管理の指導ができる医療計画など自治体の保健医療福祉分野の計画の立案と評価の指導ができる

自治体の保健医療福祉分野の計画の長期のビジョンを提示し、策定の総括ができる

    地域支援活動

  地区活動  地域組織支援  保健事業の実施、評価

地域の人々の声から地域の特徴を理解できる担当地区の概要把握できる担当地区内の個別事例管理ができる

担当地区のアセスメントと課題の明確化ができる

地域の健康課題を地域組織および関係機関と協働して解決することができる

地域の健康課題に応じて、地域組織を育成し協働できる地域の人々の権利擁護を行い、代弁者の役割をとることができる

地区活動のスーパーバイズができる担当業務における地区活動についての指導と総括ができる地域の代表者と交渉・調整し、協働活動ができる

    地域支援活動

  地区活動  地域組織支援  保健事業の実施、評価

地区活動のスーパーバイズができる担当業務における地区活動についての指導と総括ができる地域の代表者と交渉・調整し、協働活動ができる

    対人支援活動

  個人・家族への支援  小集団への支援  ケース・マネジメント

基本的な事例の支援が自立して行える指導下において事例支援のために関係機関と調整ができる地域に暮らす人々の生活の多様性を理解できる

担当分野の個別支援、家族支援、小集団支援が自立して行える担当以外の分野の個別支援、家族支援、小集団支援が指導下で行える

すべての分野の基本的な事例への個別支援、家族支援、小集団が自立して行える複雑困難な事例への支援が行える

個別支援を施策につなげることができる

複雑困難な事例支援のスーパーバイズができる事例支援方法の開発と評価ができる特定の専門とする分野で高度な知識と技術をもった実践ができる

    対人支援活動

  個人・家族への支援  小集団への支援  ケース・マネジメント

複雑困難な事例支援のスーパーバイズができる事例支援方法の開発と評価ができる

保健師活動の基盤

保健師とは何かについて述べることができる自分の担当業務を説明できる自己の健康管理、メンタルヘルスの管理ができる自ら進んでコミュニケーションを展開できる

保健師のアイデンティティについて、自分の言葉で説明できる多様な人の価値観を理解し、相手を理解できる事例の支援において代弁者としての役割を理解できる

組織間でのコミュニケーションが取れる活動についてのプレゼンテーションができる複雑困難な事例の支援において、倫理的な判断ができる

学会や研修会への参加のリーダーシップをとることができる自己の活動と能力の限界を見定め、他者、他職種、他機関と積極的に協働活動を行うことができる

保健師として、総合的な広い視点で判断できる専門職としての責務とアイデンティティの育成の指導ができる

保健師活動の基盤

保健師として、総合的な広い視点で判断できる専門職としての責務とアイデンティティの育成の指導ができる

組織人としての活動

行政組織活動の基盤

組織の一員としてメンバーシップをとることができる組織の使命を理解している・所属の係内でのメンバーとして組織的な行動がとれる・事業担当者の指示のもと業務を遂行できる・他の係員の業務を理解している組織の構成、意思決定構造を理解している「ホウレンソウ」の確実な実施ができる

複数の担当事業の進行管理ができる所属課内の業務を理解している組織の財政の仕組みを理解している

係内で上司とスタッフ間のパイプ役割を遂行できる行政の役割を理解して、外部の関係機関とネットワークを構築することができる

部署内の風土づくりができる自治体組織内の所属部署を超えたネットワークを構築できるワークライフバランスを取りながら、発展的に仕事ができる

組織内外の保健福祉部局外の部局とのネットワークを活用できる

組織人としての活動

行政組織活動の基盤

組織内外の保健福祉部局外の部局とのネットワークを活用できる

各レベルにおける保健師活動に求められる能力

行政職としての活動 専門職として

の活動

表4 自治体保健師のキャリアラダー

レベルⅠ レベルⅡ

レベルの定義

保健師活動の領域 各レベルにおける保健師活動に求められる能力

レベルの定義

保健師活動の領域

行政職としての活動 専門職として

の活動

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2.統括的な役割を担う保健師と専門能力 1)統括的な役割を担う保健師の配置と調整機能

統括的な役割を担う保健師は、自治体の特性を鑑み、期待される役割を遂行するために望まし

い部署に配属された保健師が果たす機能といえる。「地域における保健師の保健活動について」

が示され、全国ではその配置がすすめられつつあるが、実態は多様であり試行錯誤の段階にある。 都道府県,政令指定都市等の人口や組織規模の大きな自治体では、本庁へ「本庁統括保健師」、

各地域の保健所(センター)へ「保健所(センター)統括保健師」と、各々、役割を分担し自治

体内に複数配置体制としている場合がある。この場合「本庁統括保健師」は、本庁内の複数部署

に配属される保健師に対する組織横断的な調整、自治体保健師全体の人材育成、国や他自治体や

外部組織等との調整、県内の各保健所(保健センター)統括保健師との調整などの機能を果たす。

一方「保健所(センター)統括保健師」は、所属内の複数部署に配属される保健師に対する組織

横断的な調整、管内市町村の統括保健師との連携,市町村を含む管内保健師の人材育成などの機

能を果たすことが求められる(表5)。また、それぞれの統括的立場の保健師が調整や連携を実

施する主な組織については以下の図に示すような機関がある。本庁,保健所,市町村の各組織の

統括的な役割を担う保健師間の連携は、他都市保健師等との協働支援が求められる大規模災害時

などにおいて、情報の共有、連絡・調整等を実施する際に欠かせないラインにも相当する。

そのため平常時から、自治体内の各部署の統括的な役割を担う保健師間の円滑な連携体制が構

築されていることが望ましい。

図.統括保健師の配置と連携・調整(例)

調整・連携(例)

・所内保健師配属部署長

・所内総務(人事,財政)

・管内市町村統括保健師

・管内市町村保健活動関連部署

・管内医療,保健,福祉,教育関係

機関 等

統括的な役割を担う保健師

「保健師の保健活動を組織横断的に総合調整および推進し、技術的及び専門的側面から指導す

る役割を担う部署を保健衛生部門等に明確に位置づけ保健師を配置するように努めること。」「地域における保健師の保健活動について」記の3(抜粋)〈平成 25 年 4 月 19 日付け健発 0419 第 1 号〉

c村b市

C保健所B保健所

本庁保健福祉総務分野

統括保健師

高齢分野の保健師

感染症分野の保健師

他分野の保健師

係員

(保健師)

母子分野の保健師

統括保健師

企画課保健師

TB感染症保健師

母子保健保健師

難病対策保健師

係員

係員

係員

組織横断的な取組

組織横断的な取組

a市健康づくり(保健)分野

統括保健師

係長

福祉分野保健師

介護分野保健師

係員

係員

係員

(保健師)

係員

(保健師)

組織横断的な取組

他分野保健師

県内統括保健師間の連携

管内統括保健師間の連携

都道府県

A保健所

調整・連携(例)

・国,他都市自治体 ・庁内保健師配属部署長

・県内各保健所統括保健師

・総務(人事,財政)部局

・医療,保健,福祉関係機関 ・教育,研究機関 ・国保連合会,協会けんぽ

・その他各種関連機関 等

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表5 統括的な役割を担う保健師の対象(例)

都道府県,政令指定都市等

市町村本庁

保健所

(センター,行政区)

統括を要する

保健師の配属

範囲(例)

県下自治体

全域

保健所(センター,行政区)

管内

*県型保健所;保健所内,

管内市町村含む

市町村自治体

全域

2)統括的な役割を担う保健師とキャリアラダー 統括的な役割を担う保健師は、所属する自治体の組織理念、配属された部署、組織内での職位

等に応じて、期待される役割の遂行に必要な能力を獲得し、機能を発揮することが求められる。

そのため、自治体や配属される部署などによって、統括的な役割を担う保健師に期待される役割

は多様であるが、一般的に、「地域における保健師の保健活動について」に示された役割を遂行

するためには、本ガイドラインで示したキャリアラダーの「レベルⅢ」以上に該当する実践能力

等を有する保健師であることが望ましいと考えられる。

また、統括的な役割を担う保健師が、所属する組織において、管理職の役職にある場合は「レ

ベルⅣ」に相当する実践能力をあわせて有することが必要となる。

本ガイドラインで示したキャリアラダーと、統括的な役割を担う保健師の関係性について、表

6に示した。本ガイドラインで示すキャリアラダーは、年齢階層による区分ではなく、実践能力

の獲得によってレベルを整理している。各自治体においては、統括的な役割を担う保健師の実態

を鑑み、次期統括的な役割を担う保健師等を計画的に育成する観点から、レベルⅠ~Ⅱのステッ

プアップに望ましい、教育・研修,実務経験の両側面での人材育成の推進を図ることが望まれる。

表6 キャリアラダーと統括的な役割を担う保健師の関連

レベルⅠ レベルⅡ レベルⅢ レベルⅣ

LⅠ-1 LⅠ-2 LⅡ-1 LⅡ-2 LⅢ LⅣ-1 LⅣ-2 LⅣ-3

統括的な役割を

担う保健師の

ポジション

3)統括的な役割を担う保健師に求められる能力 統括的な役割を担う保健師が果たしている(求められている)機能と、その機能を発揮するた

めに必要と考えられる実践能力の主なものについて、本ガイドラインで示したキャリアラダーの

保健活動の領域に区分して示した(表7)。

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表7

統括的

な役割

を担

う保健

師に

求め

られ

る機

能と

機能

を発

揮す

るた

めに

必要

な能

力(例

保健

活動の

領域

レベルⅢ~Ⅳ

行政

の管理

職と

しての

活動

行政

の管理

活動

域健康課題の解決や、保健活動の推進のための政策提言を行う

こと

がで

きる

治体の総合計画に参画し、自治体全体の総合的観点から具体案

を示

すこ

とが

でき

健活動の意義,評価について住民や関係者との合意形成を図る

こと

がで

きる

政の役割や公的責任の明確化を図ることができる

域保健従事者の人材育成体制の推進を図ることができる

専門

職と

して

の活動

管理

的活動

自治体との連携,ネットワークを形成することができる

践活動の評価を通じて必要な施策を企画し、実現に向けた調整

を図

るこ

とが

でき

域保健に関連する時代や国の動向にアンテナを張り情報の分析

をし

た結

果、

自組

織の

あり

方を

示す

こと

がで

きる

健師の所属する部署全体へ対し、組織運営管理機能が果たすこ

とが

でき

健師の専門能力向上のための人材育成体制の整備,推進を図る

こと

がで

きる

シス

テム化

政策

化のた

の活

域ケアシステム構築,推進のためのリーダーシップの発揮する

こと

がで

きる

織内外の関係者との連携,調整,ネットワークの確立すること

がで

きる

康危機管理事象に対するリーダーシップを発揮することができ

康危機管理事象の発生に備えた予防的な取り組みの強化ができ

康危機管理事象発生時の対応策の想定に基づく提言ができる

策化のためのリーダーシップを発揮することができる

地域

支援活

域支援活動に対するスーパーバイズ(課

題解決能力向上への支

援)

を果

たす

こと

がで

きる

域支援活動に関連する関係機関,関係者との連携,調整ができ

保健

師活動

基盤

域への責任として保健師間でサービスの質を担保することがで

きる

的根拠,理論,概念に基づく保健師活動への指導を行うことが

でき

健師の専門性の伝承を図ることができる

世代の統括保健師の育成を図ることができる

組織

人と

して

の活動

行政

組織活

の基

会対応などのためのプレゼンテーションができる

19

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Ⅲ.保健師に求められる専門能力向上のための方法

1.専門能力向上のための教育・研修

1)統括的な役割を担う保健師育成のための系統的な教育の考え方

統括的な役割を担う保健師に期待される役割と機能を発揮するには、新任期から経験

を積み重ねその経験から学びを得て能力を獲得し、その能力を向上させていくことが大

事である。そのためには、系統的な教育が求められる。

現任教育の内容には、職場内教育(OJT:On-the-Job Training)、職場外教育(Off-JT:

Off-the-Job Training)、ジョブ・ローテーションがあり、キャリアラダーの「レベルⅠ」、

「レベルⅡ」、「レベルⅢ以降」の各段段階に応じて教育内容を配置することが望ましい。

2)統括的な役割を担う保健師に求められるコンピテンシー獲得に必要な教育・経験

本ガイドラインのキャリアラダーで示すレベルⅠ」、「レベルⅡ」、「レベルⅢ以降」の

時期別に、統括的な役割を担う保健師に求められるコンピテンシー獲得に必要な経験と

教育内容を整理した(表8)。

20

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表8 統括的な役割を担う保健師に求められるコンピテンシー獲得に必要な教育・経験

レベルⅠ レベルⅡ レベルⅢ~

必要な

経験

家庭訪問や個別での継続援助事例の経験を積む 事例を通して関係者と連携する 地区活動を通して住民組織と連携する 担当業務の企画、運営をする 担当業務の全体を知る 業務研究を実施し発表する 上司等に助言や指導を請う 希望する部署を自ら申し出る

複雑な事例対応の経験を積む プロジェクトや一人配置の場で、保健師としての役割を遂行する 本庁勤務で事務職等から学ぶ 新たな健康課題について学び直す 先輩や上司との対話により、自分の思考を言語化する 継続的に、業務研究を実施する仕組みをつくる

・実践や組織の課題を保健

師間に投げかけ問う

・政策と予算決定の流れと

ポイントを知る

・時代の動きにアンテナを

張り、新たな考え方や知

識を学習する

・保健師の専門能力向上の

ための場,体制をつくる

・自らを導いてくれる指導

者,助言者等との人脈を

形成する ・次世代の保健師に積極的

に声をかける(人材育成)

OJT

・基本的な援助を実施

し、自己評価すると

共に、プリセプター

や同僚、上司から助

言を受ける

・地域活動、住民との

組織活動に継続的に

参加し、住民と協働

する

・担当業務の企画運営

など組織でのルーチ

ーンの役割を確実に

行う。

・目指す保健師像を描

き、実行計画を上司

と確認する

・職場での教育活動や

研究活動に加わる

・複雑な事例への対応お

よび、助言者としての

役割を担う

・課題の分析とそれに対

する事業の PDCA サイ

クルを回す

・庁内の施策化プロジェ

クトに加わる

・先輩や上司と日常的に

対話をする

・職場での教育活動や研

究活動において指導

的役割をとる

・社会から保健師や組織に

求められる課題につい

て部署を超えて話し合

い、組織的広範囲に対策

をする上で指導的役割

をとる

・組織内外の調整や発信を

活用したネットワーキ

ングをする

・職場での教育活動(勉強

会や研修会)や研究活動

を組織的に行うよう指

導的役割をとる

Off-JT

保健師が困難に感じる事例の援助技術研修(アセスメント、具体的対応方法、記録など) 地域診断、PDCAサイクル

新たな健康課題や新たな概念等についての研修 効率的、効果的な業務の推進と発展のマネジメントに関する研修 地域ケアシステムに関する研修

人を動かす組織管理に関することや人材育成のマネジメントに関する研修 資料作成やプレゼンテーションに関する研修 施策化、予算化に関する研修

ジョブ・ローテーション

保健衛生部門への配置(3年程度)

保健師一人配置部門への配置 本庁勤務

管理職への登用

21

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2.専門能力向上に効果的な自己啓発(Self Development : SD)

専門能力の獲得は、日常のOJT,Off-JT,ジョブローテーションなどの機会を通して経

験を積むことも可能であるが、配属先や担当業務によっては経験したいと思ってもできな

いことも生じ得る。業務の中でできる経験の限界性を認識し、また幅広い知識や経験を得

るためにも自己啓発に意図的に取り組むことが能力開発に有効な手段となる。自己啓発は、

職員が自身の能力や知識における課題を発見し、その課題を解決するために学習し、自分

を高めていくものであり、個々の能力開発の基礎となる重要な方法である。

1)自己啓発の意義

・自己啓発とは、必要な知識や能力について自ら認識し、自分の意志を持って能力の

開発のために学習することである。

・保健師一人ひとりが専門職としての自覚を持ち、専門能力の開発は「自ら育つ」と

いう自分の将来に「展望」を持った個々の職員の意欲から始まり、専門職において、

自ら学び、学習し、成長するプロセスである自己啓発をすることは不可欠である。常

に変化、進歩する関連情報を収集し、知識・技術を習得していく姿勢は専門職として

基本的に求められるものであることから新任期から自己研鑽を習慣化することが重要

である。

・自分が有している専門能力について正しく評価し、不足していると考える知識や技

術について自己啓発により獲得していくことが専門能力向上には不可欠である。

2)自己啓発の方法と保健師の専門能力向上

(1)保健師の専門性向上のための自己啓発の方法

・最新の知識・技術の習得(研修会,講演会,専門書,資料等)

・各種研究会,研究会,学術学会等への参加(発表)

・専門技能を高めるための資格取得や進学

・自主的な学習会組織等の構築や参画

・職能関連組織活動,役員(委員会)などの活動

・ボランティア活動 など

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(2)統括的な役割を担う保健師に求められるコンピテンシー獲得に必要な自己啓発

統括的な役割を担う保健師など、高度な専門性の発揮を求められる保健師は、自己啓

発の機会においても初任期から系統的に学習することが、職務を通じた経験の深まりにも

つながり、期待される役割の発揮に有効な能力の基盤を形成することになる。

キャリアラダーで示すレベルの時期別に、統括的な役割を担う保健師に求められるコ

ンピテンシー獲得に必要な経験をふまえて、各時期の自己啓発の方法の例を表9に整理し

た。

表9 統括的な役割を担う保健師に求められるコンピテンシー獲得に必要な自己啓発

(例)

レベルⅠ レベルⅡ レベルⅢ~

・保健師が困難に感じる事

例の対人援助技術に関

する研修 (アセスメント,具体的対

応方法,記録) ・学会への参加と発表 ・卒後教育 (大学院,認定教育機関に

よる教育など)

・保健師が困難に感じる事

例の対人援助技術に関

する研修 (アセスメント,具体的対

応方法,記録) ・キャリア開発に関する研

修 (PDCA サイクル,組織分

析,アサーティブコミュ

ニケーション,キャリア

ラダーなど) ・学会への参加と発表 ・職能団体等における活動

への参加 ・卒後教育 (大学院,認定教育機関に

よる教育など)

・自身の持つ情報(知識・

技術等)の更新のための

研修 ・キャリア開発に関する研

修 ・職能関連団体等における

活動への参加、役職等の

経験 ・学会への参加と指導 ・卒後教育 (大学院、認定教育機関に

よる教育など)

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3.系統的な能力育成に効果的な自治体教育体系 1)自治体における保健師の能力育成の方法

全国都道府県と中核市・指定都市および特別区の保健師人材育成担当者を対象に、実施

した調査(平成 26 年 11 月から平成 27 年 1 月)によると、自治体における現行の保健師

現任研修は、概ね、新任期、中堅期、管理期をレベル区分として実施されていた。 研修の内容は、「個別支援」「地域診断・PDCA」「人材育成」が三大テーマであった。

これらのテーマは、配置部署にかかわらず、すべての保健師にとって、共通して必要な実

践的能力である。これらの能力を育成するための教育方法について、図に例示した。

(1)研修企画委員会(プロジェクト)

研修企画委員会(プロジェクト)を構成し、内容を検討することが重要である。

また、保健師にとって必要な能力と育成のための体制を検討することは、保健師のある

べき姿を描くことにつながり、具体的な目標設定と能力獲得へのプロセスを明確にするこ

とができる。したがって、各自治体において、保健師の研修体系と教育方法を「研修企画」

として、自治体(都道府県、指定都市、中核市、特別区、市町村など)と教育機関等で構

成する委員会または、プロジェクト方式で、関係者の合意を得ながら毎年立案することが

望ましい。

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(2)集合研修と OJT を組み合わせた研修方法

「個別支援」「地域診断・PDCA」「人材育成」など、保健師の専門能力を育成する教

育方法は、集合研修と保健所管内の OJT の組み合わせが効果的である。集合研修は、

講義、グループワークで構成し、保健所管内の OJT では、集合研修の課題を、保健所

管内のメンバーで一緒に検討しまとめる内容とする。

(3)集合研修

①講義

「個別支援」「地域診断・PDCA」「人材育成」など、育成する「能力」について、

これらの理論とともに、保健師業務における、実践方法や課題について解説する。

②グループワーク

育成する「能力」を開発するトレーニングとして、グループワークを行う。グルー

プワークの内容は、課題シートを用いて、思考プロセスを重視しながらすすめる。

③課題シートの様式

課題シートの作成は、研修企画委員会(プロジェクト)で検討し作成する。その

際、国立保健医療科学院の研修で使用している、地域ケアシステム、人材育成のシ

ートが参考になる。各自治体で育成しようとする能力を引き出す「仕掛け」として、

課題シートを作成することが望ましい。また、実際に使用した後、改善修正を重ね

れば、精度の高い「仕掛け」となり、保健師の能力を開発するシートとなっていく。

④ファシリテーター

研修のグループワークにおいて、実践現場の保健師がファシリテートすると、研

修受講者の思考が整理され、より効率の良いグループワークが展開される。また、

日常業務の実践の意味づけが深められる。ファシリテーターもこの作業をともにす

ることで、地域診断や業務の評価をとおして受講者同様の実践能力を向上させるこ

とにつながる。また、研修受講者のトレーニングに寄り添い、支えることによって

受講者の実践能力を引き出すリーダーシップの方法の習得に繋がる。つまり、ファ

シリテーターは、リーダーシップ能力や業務・地域管理能力を育成する。

(4)保健所管内の OJT によるフォロー体制

集合研修のフォローとして、保健所管内の OJT によって課題の作業をすすめる

方法は、能力育成の効果を保健所管内に波及させ、地域全体の保健従事者の能力を

確実に向上させることが期待できる。同時に、そのプロセスは、保健所の教育機能

を充実させ、保健所と市町村の協働体制を強化する。これは、すでに多くの自治体

において、実践されている手法で、効果の手応えが確認されている。保健所と市町

村の保健師の連携が希薄になりつつある現状において、有効な教育体系である。全

国的な展開を期待したい。

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2)自治体・教育機関・国との連携による人材育成

講義担当講師は、都道府県では県内大学教員、国立保健医療科学院の研究者が多いのに

対して、指定都市、中核市および特別区では、管轄外大学教員という特徴がみられた。

これは、国立保健医療科学院の教育が主に都道府県を対象に実施されてきた経緯と、自

治体の管轄範囲の違いが反映されたものと考えられた。各自治体内で研修講師を担当でき

る人材育成や人材派遣や紹介システム化が充実されると、全国レベルで保健師の研修体制

が系統的に確立される。また、指定都市、中核市および特別区の研修では、県の主催する

研修と独自の研修を組み合わせて教育体系を整えている自治体もあり、相互の研修企画運

営は、県が集積してきた研修企画スキルの伝承を可能にし、今後の保健師の専門能力の向

上に寄与できるものと考えられる。

保健師研修の三大テーマ「個別援助」「地域診断・PDCA」「人材育成」は、国立保健医療

科学院で実施されている研修内容と一致している。科学院の研修課題様式の活用、講師の

派遣や研修修了生が研修のファシリテーターを担っているなどの実態からも、科学院がこ

れまで我が国の現任教育の中枢として積み重ねた実績であり、今後も期待される国の重要

な保健師の教育機関である。中堅期研修の実施時間数が都道府県で平均 6 日間であること

を考えると、その研修講師を毎回、科学院や他県から派遣依頼することには限界がある。

このような研修内容を毎年実施するならば、各県ごとに保健師現任教育を企画実施できる

人材の育成および確保が求められる。

それには、自治体が保健師の現任教育を意図して科学院などの研修受講を活用する仕組

みの構築(研修企画などの主軸を担う保健師の人材育成を意図した派遣)が望まれる。ま

た、地元の教育機関の基礎教育に携わる大学教員に、前項 1)で示した研修企画委員会(プ

ロジェクト)参加とともに、自治体の保健師研修のアドバイザーや講師としての人材確保

を行うことが望まれる。

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4.専門能力向上のためのキャリアパス

1)キャリアパス(制度)とは

キャリアパス(Career path)とは,キャリア(経験,スキルアップ)を積むパス(道筋)で

あり,人材育成制度にくみこまれているものである。

保健師等の専門職が,将来,専門職としてどのように貢献できるようになりたいか,そ

こに到達するためにどのような経験やスキルを,どの部署で経験をすることがより良いの

かを示した道筋のことである。

組織がキャリアパスを設定することにより,保健師の独断ではなく,組織の一員として

目標がより明確となる。また,パスを意識することによって,仕事への高いモチベーショ

ンをもち,能動的に必要な研修を選択したり,どの順番で職務に就くかという異動(ジョ

ブローテーション)や昇進・昇格のためのチャレンジをどのような計画で進めていくかの

見当をつけていけるようになる。

注)ここで述べるキャリアパスは,転職を繰り返すことでキャリアアップを

することを意味しているのではなく,あくまで同一組織内で,前向きに働き

続ける環境整備としてのキャリアパスのことである

【行政組織にとってのメリット】 1 目の前の業務に翻弄されるのではなく,職員一人ひとりの“成長したい”が惹起される

環境は,仕事あるいは,自分に課せられた使命に対するモチベーションの高い優秀な人

材を集めることにもつながるといわれている。 2 キャリアパスを個人のものに止めず,人材育成制度として組織で取り組むことで,職員,

特に保健師など専門職の専門性が見えやすくなり,その適性を全体的に把握することに

つながることから,効果的かつ効率の良い配置や人事異動ができ有益である。 3 組織として,成長を促す職場環境や仕組みづくりに取り組むことは,職員に“やるべき

こと”を気づかせ,行動できるよう促すとも言われる。その仕組みづくりの一つが,「キ

ャリアパス制度」導入である。充実したキャリアパス制度は,行政の成長と利益,住民

の安全と安心の確保につながるもので,利点が多い。

【医療・保健専門職にとってのメリット】

キャリアパスの活用者にとってのメリットは,企業など一般的にいわれていることと大

きな違いはない。おおよそ以下の 4点がメリットであると解釈されている。

1 専門性の可視化とそれに伴って,効果的/効率的な専門職としての活用につながりやすい 2 専門職としてのアイデンティティの確立と自律型人材育成(自ら主体的に考え行動する

専門職)の促進 3 職務意欲の向上と組織の活性化 4 スキルが高まることを自覚でき,専門職全体のボトムアップが期待できる

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2)キャリアパスとキャリアラダー

従来からキャリアパスと言えば,「職位」の道筋を示したものが大半だった。最近では,

専門職用のキャリアパスの要請も高く,職位の道筋のみではなく,複線型のキャリアパス

が存在する。「長期的な見通し」をイメージし,保健師等の専門職としてのスキルを活かす

保健医療のスペシャリスト,あるいは管理職への道に役立つ経歴の積み上げへの道筋を示

したものである。

一方、キャリアラダーは、保健師の実践能力(~ができる)を段階的に示したものである。

特に保健師のキャリア開発を組織的に実践するうえでキャリアパスと連動し,パスを使う

ときの重要なものさしになる。

本ガイドラインでは,前章で述べたように,高度実践者に向かう能力ステージ「レベル

Ⅰ,レベルⅡ,レベルⅢ,レベルⅣ」(「レベルⅣ」は管理職への能力)として,ステージ

ごとに定義をつけ,そのステージの能力をクリアすべき詳細を領域別に示している。

《グループインタビューの結果から抜粋》 ・事務職に保健師の活動がわかるキャリアラダーのようなものがあれば保

健師の異動や評価,昇進などに活用できるのではないかと声をかけられ

た。 ・若いうちから未来の道筋がイメージできると、先を見据えながら活動が

展開できる。これはすごく大事なことだと思う。

・謙虚と無責任は紙一重。保健師らしくどう進むかは自ら勉強する必要が

ある時代。キャリアパスはその契機になる。 ・偶発的に人は育たない。今は「たまたま研修に行った」「たまたま配属

になった」そして「たまたまこの業務をこなしている」。

・「保健師」として育てるような仕組みが必要。保健師等医療職のキャリ

アパスがモデルとして提示されていると,それが 1 つのロールモデルにな

り,保健師として方向性が見出だしやすい。今はそれがない。

・個別支援一つにしても個人差がありすぎる。キャリアラダーで自分の経

験や力を確認し着実に歩むためにパスがあることは大事。

・異動による経験の積み重ねを自覚する仕組みがない。

中板育美:自治体保健師のキャリアパスモデルの開発分担研究報告書

(平成 27年度厚生労働科学研究補助金(健康安全・危機管理対策総合研究事業)地域

保健に従事する人材の計画的育成に関する研究(研究代表者:国立保健医療科学院 奥

田博子)

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保健師としての資質のベースとなるジェネラリストの能力から始まり,高度実践家や管

理職(組織管理・政策実現への参画)にむけて獲得すべき能力まで示している。

今の仕事でどのような実績をあげたか,次にその実績を元にどのような場所でどのよう

なスキルを身につけていくのかなどは,キャリアパスとキャリアラダーの基準(「プロフ

ェッショナルスタンダード」)が明確になっていると,自身でどのような能力を持つべき

か,どの道が自分には合っているか,具体にどこで何に取り組めばいいのかなどが,個々

に意識しやすくなる。

レベルⅠ,レベルⅡなど最初の何段階かは,保健師としての統一したキャリアを積み,

そこからはレベルⅢかレベルⅣに枝分かれしたり,レベルⅢを経てレベルⅣに進むなど自

分のキャリアデザインに見合った実践的な能力(ラダー)をアレンジしてクリアしていく

ことになる。もちろん,組織内でのことであるから,上司や仲間の理解のもとになる。組

織も,専門的技術の客観的評価など複線型のキャリアパスを設定し,人事制度と連動でき

ることが理想である。

(本ガイドラインでは,保健師に特化した記載になりますが,専門職とは,本来は栄養士

や歯科衛生士などを含む行政で働く保健医療専門職全般のキャリアパスを意味する。)

【キャリアパスとキャリアラダーの関係】

LevelⅠ求められる能力

LevelⅡ求められる能力

LevelⅢ求められる能力

価評

キャリアラダー

キャリアパス

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≪保健師のキャリアについて整理した(概念分析)≫

公衆衛生看護実践者としての保健師のキャリアとは、「過去から現在に至るま

での経験や経歴であり、自己が責任を持って創造していく価値である。それは他

者に委ねるものではなく,自己決定によってなされるものであり、私生活を含む

社会的役割を包含するものである」

保健師がキャリアを積み重ねて形成させていくには,

その前提(先行要件)として,◆保健師及び看護師の国家資格を有する者である

こと,◆公衆衛生看護の実践者であること,またはその領域に何らかの形で携わ

っていること,◆保健師として就職、又は活動をしていることが必要である。

そして,保健師としてのキャリア形成は,◆活動の量や質(=つまり住民との関

係性や地域とのかかわりにおいて,躓きや揺れ、もがき,後悔、あるいは感銘、

驚き、発見など),◆時期や内容において適切な研修の受講(機会),◆自己(私)

を認めてくれる他者/仲間の存在と,ロールモデルからの学びから影響を受ける。

その結果(帰結),◆新人のころから保健師という職業へのアイデンティティの獲得

につながる、◆管理職になってもそのアイデンティティが崩れることはなく,む

しろ豊かになる,◆保健師であるという自己の経験や専門職としての自信獲得に

つながる,◆保健師としての欲求、研鑽意欲、価値観、能力への問いと向き合う,

◆保健師という職業を通して,人生の価値に影響を与える(自己実現) であると

考える。

中板育美.「保健師のキャリア」関する概念の分析 分担研究報告書

(平成 26年度厚生労働科学研究補助金(健康安全・危機管理対策総合研究事業)地域保健に従

事する人材の計画的育成に関する研究(研究代表者:国立保健医療科学院 奥田博子)

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3)キャリアパス策定プロセスと留意事項

各自治体において保健師等医療専門職のキャリアパスの活用が推進されるためには,キ

ャリアパスを組織合意の元に策定されることが望ましい。その際の留意事項を整理した。

(1) まずは,自組織内の保健師全体が,キャリアラダーやパスの必要性とその意義を理

解し,保健師活動の可視化など「メリット」を十分に共有することが大切である。

(2)キャリアパスを創るにあたっては、これまでの自組織の人材活用に関連する目標や

方向性,人事異動の考え方を理解し,「個人の能力や成長を伸ばしたい」と言う考

え方が乖離することがないよう十分な話し合いのもとに,キャリアパス作成に取り

くむ合意をすることが重要である。

(3)キャリアパス策定の際には,保健師間の共有も重要だが,保健師が所属する部署や

人事担当者などとともに取り組む体制をつくることが不可欠である。

(4)キャリアパスには、計画的な人事異動(ジョブローテーション)や組織の試験制度,

個々のポートフォリオに含むべき最小限の内容を盛り込む大切である。

(5)さらに、適切な評価が行わなければ,キャリアパスは組織の中には浸透していかな

いため、評価の仕組みを組織的に働きかけることが必要である。

(6)他の保健、医療、福祉等の専門職にも理解を得ていくと共に、組織の人材育成は,

例えば栄養士等との整合性にも配慮する必要がある。

(7)階層別の研修機会,特に新任期から「自組織での人材に対する期待と成長の仕組

み」を明確に伝える機会を定例化するなど,成長に対する主体性を引き出す仕組

みを用意することが効果的である。

4)キャリアパス活用にむけて

本来,キャリアパスは,階段を登るための条件として,必要な能力(キャリアラダー)

が示されて,さらにそれが客観的に評価される仕組みがあることが前提である。

(1)キャリアパスがあると,各自治体の教育研修や学会参加/発表,業務マニュアルがキ

ャリアラダーのどの部分とマッチしているか,あるいはマッチさせるように研修が

組み立てられているかがわかるので,目的意識をはっきりさせて研修に参加できる。

(2)人事管理を人材育成の一環と位置づけることは効果的な人材活用にもつながる。自

身の長けている部分や,専門知識,希望の配属などの申告(自己申告制度)に反映

させたり、研修成果の効果測定、自己啓発によって取得した資格も人事考課へ反映

できるよう働きかける。

(3)職員の能力開発は, Off-JT(職場外研修)だけではなく,日々の活動を通じて図ら

れるという側面が非常に大きく OJT の重要性はいうまでもない。組織として策定し

たキャリアパスに沿って,自らのポートフォリオを作成するのが望ましい。

31

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一般的:年数 5年目~

(参考:年齢) 22歳 27歳

大学院卒等の年数 1年 3年目~

(参考:年齢) 24歳   26歳

主任 係長

表10 自治体保健師のキャリアパスモデル

リーダー的な活動プリセプターへのバックアップ、保健師活動全体への助言

保健衛生部門異動(本庁、分散配置先)

業務内容や受け持ち地区の変更

3~4年程度のスパンで、保健衛生部門と分散配置先、本庁と保健所などを交互に経験(30歳までには本庁での活動を経験)

係員       主査

ジョブローテーション

統括保健師(課長補佐、課長)、部長、局長 等

実務経験

年数

1~3年目

本庁で、組織全体を見渡し、ジョブローテーションや配置に意見具申(計画的な採用や人材発掘)

24年目

   プリセプターとして後輩を指導

管理期相当:個人の志向や目指すべき方向によって異なる(複線型)

 LevelⅣ 管理職(発展期)

・後輩への高い保健師技術や専門性の指導

・潜在化している健康課題やニーズを捉える(地区診断、これまでの活動の総括、関係者との連携などを統合)ことができる・幅広い視野で予測的判断をもち、能動的に公衆衛生看護を実践することができる。・意図的に収集した情報等を統合し、住民や地域のニーズを捉え、支援を実施することができる。・複雑で困難なケースにも対応し、解決を図るための支援や調整を行うことができる。・支援に必要な関係者を特定し、関係者と情報交換、積極的なかかわりができる。・住民や地域をとりまく関係機関の力を調整し、連携することができる。・後輩(新人、新任期保健師)が自立して公衆衛生看護活動が実践できるようになるため指導を行い、相談相手になることができる。・ 向上心をもって公衆衛生看護活動の知識やスキルの習得、人的ネットワーク拡大することができる。

・多様な分野の活動経験を支援・多様な価値観の保健師や他職種との交流・長期研修(国立保健医療科学院)の受講・統括保健師人材育成プログラムの受講・昇任試験受験の動機づけ

職務

キャリア開発の条件

・個別の対人支援サービスの一連を、基本的な技術を用い、自立して実施(家庭訪問、継続訪問、報告・連絡・相談)できる。・個別の対人支援を通し、その家族の抱える健康課題や地域のもつ健康課題に関するアセスメントができる。・顕在化している個人や地域の健康課題、二-ズを捉え、担当地区の健康課題を見出し、改善を提案することができる。・担当事業や活動を、基本的な技術を用い、自立して実施できる。・関係者との良好な連携・協働ができる。・自身の支援の振り返りができる。

職位※各組織によって職位の呼び方は様々

ライフイベント

キャリア構築の手段

・OJTとOff-JT(新任研修)を連動させての実践の強化・プリセプターから濃密な指導を受け、自身の保健活動の振り返りや発展(保健指導ミーティング受講)・行政組織、組織内での昇任・昇格制度等の人事に関する学習・管内の保健師との交流・先輩保健師(モデル)との出会い・学会参加

(キャリアラダー)

・ベテラン(熟達)保健師としての知識や技術を活用、後輩への指導・行政組織内での交渉、プレゼンテーションの学習・長期研修(国立保健医療科学院)の受講・統括保健師人材育成プログラムの受講・昇任試験受験の動機づけ

~子育て~ 親などの介護

・公衆衛生看護視点を持ち、個別から集団へと総合的に情報を統合・アセスメントできる。・優先度を勘案した上で一定の健康課題の改善・評価ができる。・他者とも協働しながら、活動が展開できる。

46歳

20年目

44歳

・自治体の方針に基づき、組織横断的な連携を図りながら、幅広い視野で公衆衛生看護活動や職務が遂行できる。・より複雑であり、かつ緊急性の高い健康課題に対して、迅速かつ的確に対応できる。・自身だけでなく、部下の業務遂行や問題解決に柔軟に的確に対応し、責任を全う(部下や後輩の報告を正確に聴き、組織内に必要な情報を判断して、適切な情報提供を行う) できる。・行政組織内での議会対応や予算獲得などができる。・首長をはじめとする上司や関係者に、意見具申や交渉ができる。・関係者との信頼関係を気づきながら円滑な組織運営を行う・後輩の経験や能力等を的確に把握したうえで、指導や助言を行う。また、人材育成のための体制づくりが実施できる。・他機関との人的ネットワークを活用し、有用な協力・連携ができる。

 ※別途作成されているキャリアラダー等を連動させていく

~結婚 出産~

・活動の場の拡大に伴う動機づけ(中堅研修、ケースカンファレンス)・中堅期研修(中堅期コンサルテーションプログラム等受講)・出産などで一時職場を離れてもキャリアを継続するような情報提供や学習機会

・実践力の強化(カンファレンスや研修への積極的な参加)・新たな職場(異動部署)への適応状況の把握と支援・プリセプターとなるための支援(プリセプター研修・指導者研修)・学会での活動の発表・報告等

現場での熟達したスペシャリスト(発展期)一人前 中堅期 (前期:チャレンジ期) (後期:展開期)新任期(自立期)

LevelⅠ(新任期相当)    LevelⅡ(中堅期前期相当)       LevelⅢ(中堅期後期相当)

マネジメント型志向

スペシャリスト志向

人事交流や長期研修へ

一人前

自身で選択・適時変更が可能

管理職補佐

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Ⅳ人材育成推進のための体制整備

1 人材育成推進のための組織体制 1)自治体組織における体制整備

(1)人材育成担当部門(本庁等) 自治体に勤務する保健師の人材育成に関連する部署は一般的に以下の体制に大別される。

各自治体において、保健師の人材育成に関連する各部署で実施される研修体系を把握し

た上で、個々の保健師のキャリアに適した人材育成の体系が整備されることが重要である。

そのためには、以下のような取り組みを参考に統括的な役割を担う保健師等が連携体制を

整備することが望ましい。

①人事担当部署との連携

・研修計画(評価)会議(仮称)などへの関与

・保健師の採用,異動,保健師の専門(実践)能力の評価等のための連携を図る

②公衆衛生専門職(保健・医療・福祉等専門職)統括部署との連携

・専門職人材育成推進会議(仮称)等に保健師が参画し企画,評価に関わる

レベルⅣ レベルⅢ

政策課題研修

業務革新評価研修等

行政職共通

研修体系

保健師

研修体系

地域保健従事者

専門職研修体系

リーダー

研修等

調整能力

研修等

レベルⅡ

自治体政策

公務員倫理等

対人支援

研修等レベルⅠ

総務部局

自治体人事管理

保健師統括部署

保健師人事管理

保健福祉部局

部局内人事管理

管理職

研修等

採用

企画評価

研修等

・・・他

健康づくり

高齢・介護

母子保健

【自治体職員としての総合的な人事管理】

自治体組織(全庁的)管理を担う総務部局等の人事担当部署

【公衆衛生専門職(保健・医療・福祉等)に共通する専門能力の育成】

公衆衛生専門職(保健・医療・福祉等)の人材育成を担う保健福祉部署

【保健師の職能に特化した専門能力の育成】

・保健師の職能に特化した専門性の向上のための人材育成を担当する本庁部署

・保健所等において管轄内の市町村保健師の人材育成を含めの統括的立場の保健師

等が配属される部署における担当部署

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(2)人材育成推進のための組織体制 人材育成体制は、本庁等の担当部署が研修の企画,実施,評価の主体を担う以外にも、

保健所等の研修(教育)担当制により実施する自治体もある。人材育成を効果的に推進す

るために担当部署や担当体制を検討し、研修企画・運営を担当する保健師は、人材育成に

関連する中央研修等の受講を図ることが望ましい。

・パターンⅠ:保健所担当制

自治体内の各保健所と県立大学などの教育機関が、キャリア別研修担当制により実施す

る。 ・パターンⅡ:教育保健所制

新任期ガイドライン(保健師編)で示された教育保健所体制である。

自治体内の 1か所の保健所を人材育成の中核を担う保健所として位置付け(教育担当保

健所体制)実施する。

担当保健所 県立看護大学

看護研究・研修センター 担当保健所 担当保健所

新任保健師

研修Ⅰ 新任保健師

研修Ⅱ

中堅保健師

研修Ⅰ

リーダー保健師

研修 中堅保健師

研修Ⅱ

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2)人材育成推進状況のモニタリング,評価 体系的な人材育成の推進を図るためには、実施している教育や研修が保健師の専門性向

上に効果的であるかについてのモニタリングや、評価を実施するための組織的な体制の確

立が必要である。そのため、自治体の保健師の人材育成担当部署が人材育成推進状況のモ

ニタリング,評価のための事務局の機能を果たし、人材育成推進委員会(仮称)等を設置

する方法が一般的である。 委員会の委員は、前項1)で示した自治体内の人材育成に関連する部署、および自治体

の人事に関連する部署、保健師の人材育成に関連する組織内外の機関の代表者などにより

構成し、年度ごとに定期的に開催する委員会において自治体保健師の人材育成について検

証を図る。 また保健所では統括的な役割を担う保健師などが、管内の各市町村の人材育成の実態や

体制について共に検討する機会を設け、管内における保健師の人材育成の推進のために有

効な研修の企画、実施や、全県的な研修の企画への提言を図るなどの役割を担い、自治体

全体の保健師の専門能力向上のための連携を図ることが望ましい。

本庁専門職人材育成

担当部署

看護大学等

教育研究機関

都道府県看護協会

保健師職能委員会

保健所保健師 市町村保健師 退職保健師

(トレーナー)

保健師人材育成推進委員会 【事務局】

本庁保健師人材育成担当部署

図 自治体における保健師人材育成推進体制 例

本庁総務等

人事担当部署

保健所長会

保健師長会

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2.職務・研修などの履歴管理 1)職務・研修などの個人履歴管理の方法 保健師に必要とされる資質の向上には、個人のめざす目標を明確にし、これまでに獲得

した能力や成果を蓄積するためのキャリアシートやポートフォリオなどのツールの活用が

効果的である。 新人看護職員研修ガイドライン「保健師編」(平成 23 年 2 月)においても、ポートフォ

リオやパーソナルファイルと呼ばれる研修手帳(研修ファイル)の活用が示されている。 自治体独自の個人の履歴管理ツールの検討や、個々の保健師の資質向上の確認や振り返

りの参考としてキャリアシートと,ポートフォリオを例にしてその特性について示す。

(1)キャリアシート(carrier sheet) 専門能力を生涯にわたって系統的に獲得するために、個人の職務,研修,自己啓発等を

含む自己の人材育成に関わる記録を蓄積する個人の履歴記録である。 表11 キャリアシート項目(例)

職務履歴(異動,派遣,休職等) 期間,所属部署(係),職位,担当業務,獲得した専門能力, 特筆すべき取り組み(難易度の高い業務実績:例)新規プロジェクト・予算獲得,

地域組織等立ち上げ,災害派遣)等

研修受講履歴 時期,期間,研修名,主催部署,獲得した専門能力

研究発表、学術集会発表 時期,内容(集会・ワークショップ名,表題,発表者・共同演者, 一般演題・シンポジスト等)

論文・原稿投稿,書籍執筆 時期,内容(掲載誌名,表題,単著・共著等)

その他(委員,講師,表彰,自己研鑽(進学,資格取得)等) 時期,内容,業務への活用,職場(組織)等への貢献

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(2)ポートフォリオ(portfolio) ポートフォリオは、「書類綴じこみケース(flat case for keeping loose papers, drawing, etc.)」を意味し、教育実践としてのポートフォリオは、実際の教育に関する各種記録,資

料,成果物などを集積し保管するための入れ物を意味している。 個々の保健師が業務や研修、自己学習などの機会を通じて得た散々する情報(成果)を一

つのファイルに事項別や時系列で綴じることにより、これまでの成長のプロセスが可視化

される活動歴,実績歴のファイルである。ポートフォリオは、1冊のクリアポケットタイ

プのファイルやバインダー等を用いて作成をすすめることが一般的である。 ポートフォリオで収集,整理される情報の種類や内容の例を以下に示す。一般的にはファ

イルの初めに「個人目標(何をより遂げたいのか)」と「そのための具体的なプラン」を記

載しておくと目標に向かうプロセスの過程で収取された情報やアイディア、経歴が蓄積さ

れ、機会あるごとに目標に立ち返ることができて効果的であるとされる。 また出産や子育て等による休職期間中においても、日々の生活、経験の中で感じたこと体

験したこと、気づきなどを継続的にポートフォリオに入れて作り続けていくことにより、

自己が変わらずキャリアストーリーの途上にあることが確認でき、休暇取得後の復職の前

においても、復帰後の業務に必要なことは何かを考え、その手がかりや資料を入れるプロ

セスを通じて知識やスキルの確認や復職への足場となることも可能とされる。 表12 ポートフォリオ 種類と内容(例)

パーソナルポートフォリオ(キャリア,実績等) ・目的:自己表現 ・内容:キャリアプラン,自己の行動や活躍の記載されたもの(写真,記事) 資格,認定(表彰,免許等),考えた事のメモや記録等

専門(テ―マ)ポートフォリオ(能力獲得等)

・目的:自己成長 ・内容:職務履歴,研修履歴,研究・発表履歴,業務(活動)による成果物等 入手した関連資料(研修資料,論文,リーフレット,切抜き等)

ライフポートフォリオ(個人特性,個人的情報等)

目的:ワークライフバランス,健康管理 内容:身体(健康),生活等に関連する情報(健康診断,病歴,服薬記録等)

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2)職務・研修などの個人履歴の活用 キャリア・シートやポートフォリオの目的は、定められた項目にそって網羅的な記録(記

述),や資料等の保管を実施することではなく、目標達成のために意図的,計画的,組織的

に活用をすることが重要である。そのため、「与えられる」、「教えてもらう」、「指示にそっ

て機会的に実施する」という受け身の記録方法にとどまらず、自ら必要なものを学びとる

という、“自律”した学びや意識によって記録を蓄積し、定期的に自己の行動,思考,目標

へ向かうプロセスや進捗状況を客観的に振り返る「目標管理」に活かすことが重要である。

また、保健師に求められる能力の系統的な獲得のために、自治体等の組織において実施さ

れる人事・履歴管理と、保健師の専門性を考慮した個人のキャリア形成ツール等の双方向

で、経験や能力の獲得を確認し、個々の実情に応じた効果的なジョブローテーションや研

修受講などに活かされることが望ましい。

【キャリア・シート、ポートフォリオなどのツールの活用 例】

・個々の保健師が経験や獲得できた能力,現在の自己の成長を確認し、自ら学び、育つ意

識を保ち、今後の目標設定、進むべき方向性を見定める際の参考にする

・自治体内の保健師で共通のツールを用いることにより、他の保健師との情報共有から自

己成長に活かすことができる

・指導者との面談等の際に内容の共有,達成状況の確認をする際などの、評価の根拠資料

として示すことができ、今後の自身のキャリアアップのための希望に対するアピール等

に活用できる。 ・指導者は部下の目標達成,進捗状況,プロセスの全容の確認ができ、今後の成長へ向け

た適切な助言,支援,推薦などに活かすことができる ・所属上司との人事評価面接等の際に共有することで、ジョブローテーションや研修受講

などの配置に考慮することができる

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3 個人特性を考慮した人材育成 1)個人特性を考慮した人材育成のすすめ方 保健師の採用時等において、前職歴等を有する職員や中途採用となる職員等については、

個別のキャリアや能力を考慮した人材育成を実施することが望ましい。 たとえば、前職歴が“看護職”である場合においても、他の自治体での行政保健師(常

勤,非常勤),職域保健,学校保健,臨床看護,在宅看護,教育機関など、前職として従事

した経験,年数,立場(職位)などは多様である。 そのため、自治体の基本的な人材育成方針や、所属する組織目標などを踏まえた上で、

保健師の専門職として求められる能力についてキャリアラダーやキャリアパスなどのツー

ルを活用し、自己および指導者との双方で確認を行い、人事配置、OJT、Off-JT、ジョブ

ローテーションなどを考慮することが望ましい。

STEP1 採用者の経験,知識,専門能力の把握 資格の保有,過去の職歴,経験などについて面接時のヒアリングなどを通じて本人と

管理者(指導役割担当者など)の双方で確認を行う。

STEP2 採用者に応じた教育体制,研修の受講などの計画を立案

本人のセルフチェックや指導者との面接によって確認した能力や経験、本人の意向を

考慮し、配属組織で望ましい職務経験,指導体制,研修計画を立案する。 【例】 ・他の自治体の保健師の経験者等で、すでに充分な経験により獲得すべき知識や技術が

あるとみなされる内容に該当する研修は受講の対象外とする。 ・前職歴を有する者であっても、その経験が自治体保健師としての経験ではない場合は新

期採用保健師と同様にプリセプター配置による個別指導を行い、新任研修も受講する。

STEP3 実施状況の確認,評価 前職歴や、中途採用者においては、採用(配属)時点に立案した計画の進捗状況につい

て、6 か月目,1 年目など、当初に設定した時期に目標の達成状況を本人と担当者を交え

た話し合いなどにより実施し、現状に応じて今後の目標や計画の修正などを行う。

採用者のセルフチェック による専門能力の確認

担当者とのヒアリング等

によるキャリアの確認

キャリアラダー

キャリアパス

キャリア・シート

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2)産前・産後休暇,育児休業取得に関するキャリア支援 育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律(平成三年五

月十五日法律第七十六号)が施行され、保健師もこの制度を活用し、妊娠・出産・子育て

の経験を経て職場へと復帰することがある。また、国内の急激な少子化の進行等の現状を

鑑み、次代の社会を担うすべての子どもが健やかに生まれ、かつ、育成される環境整備を

図ることが社会的に求められており、地域や職場における、総合的な次世代育成支援体制

を推進するため、児童福祉法等の一部を改正する法律が交付され(平成 20 年 12 月(法律

85 号))、次世代育成支援体制推進法の一部が改正された。これにより、仕事と家庭の両立

を支援するための雇用環境の整備等について、事業主が策定する一般事業主行動計画が従

業員 100 人以上の企業に義務づけられ、社会全体において妊娠・出産・子育てと、仕事と

の両立や継続に向けた体制推進が図られている。地方自治体においても総務・人事部局等

が、自治体の全職員を対象とした本制度を活用する職員に対する育児・産後休暇を支援す

る体制を整備しつつある。 保健師にとって、妊娠,出産,育児を経験することは、業務に携わる上でも自身の経験

を糧とした保健活動の充実にもつながる貴重な体験といえる。一方で、この制度を活用す

る保健師の多くは自治体において中核的な役割を担う、あるいは次期リーダーを担うこと

を期待される時期に相当する人材であることが多い。そのため、本制度活用の期間中に、

経験可能である、職務上の実経験,研修等の教育受講経験、業務などに関連する法制度改

革や最新の情報など、直接的な知識・スキルを取得する機会が途絶することによって、制

度取得後の復職に対する不安や、復帰後の自己のキャリア形成に悩むケースがある。専門

職としての能力の形成については、所属組織(総務・人事部局等)が実施する自治体職員

全員を対象とした一般的な産休・育児休暇支援制度と併せ、専門性とキャリアの継続とい

う観点を考慮した支援体制についての配慮も必要な場合があり、自治体では試行錯誤がな

されている。保健師のキャリア継続を目的に、産前・産後休暇、育児休業取得から復職後

までの時期に応じた支援内容の例を別紙に示した(図)。 上記に示した多様な支援策については、すでに実施されている自治体もあるが、ひとり

一人の専門能力の獲得は、休暇取得の有無に関わらず、個々の保健師自身の自律が基盤と

なることに変わりはない。そのため、心身の状況,自己の生活などの実情に応じて、自治

体や職能等から提供される支援策の有効かつ積極的な活用を図ることが望まれる。また、

このような、自治体等から提供される支援策の活用にとどまらず、現在までの自身のキャ

リア、復職後に想定される期待される役割等を考慮し、自己啓発などの多様な方法にも主

体的に取り組むことが、休暇制度取得後の円滑な職場復帰、継続的なキャリア形成に有効

である。

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図.

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主な参考文献 キャリアラダーに関する文献

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Nursing.Public Health Nursing 30; 519-536.2013. ・岡本玲子.各国の保健師・地域看護師の実践能力の枠組み.平成 23-24 年度科学研究費助成事業報告

書.現代社会の健康課題解決に資する新しい公衆衛生看護学の構築(代表:村嶋幸代).2013. ・厚生労働省.平成16年度「新任時期における地域保健従事者の現任教育に関する検討会報告書」.2005. ・新任時期の人材育成プログラム評価検討会.平成17年度「新任時期の人材育成プログラム評価検討会

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その他共通に関連する文献

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(*根拠法令出典は参考資料編、該当ページに附記)

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参考資料編

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地域における保健師の保健活動について 1

(各都道府県知事・保健所設置市長・特別区長あて厚生労働省健康局長通知)

地域における保健師の保健活動は、地域保健法(昭和 22年法律第 101号)及び同法第 4条第 1

項の規定に基づき策定された、「地域保健対策の推進に関する基本的な指針」(平成 6年厚生省告

示第 374号。以下「地域指針」という。)により実施されてきたところであり、保健師は地域保

健対策の主要な担い手として重要な役割を果たしてきた。

また、「地域における保健師の保健活動について」(平成 15年 10月 10日付け健発第 1010003

号)等により、地域における保健師の保健活動の充実強化に向けた取組を要請するとともに、保

健師の保健活動に関し留意すべき事項や取り組むべき方向性を示してきたところであるが、介護

保険法の改正による地域包括支援センターの設置等地域包括ケアシステムの推進、特定健康診

査・特定保健指導制度の導入、がん対策、自殺対策、肝炎対策、虐待防止対策等に関する法整備

等、保健師の活動をめぐる状況は大きく変化してきた。

こうした状況の変化も踏まえ、地域指針が大幅に改正され(平成 24年厚生労働省告示第 464

号)、多様化、高度化する国民のニーズに応えるため、ソーシャルキャピタル(地域に根ざした信

頼や社会規範、ネットワークといった社会関係資本等)を活用した自助及び共助の支援を推進し

ていくこと等が新たに盛り込まれた。また、健康増進法(平成 14年法律第 103号)に基づく新た

な「国民の健康の増進の総合的な推進を図るための基本的な方針」(平成 24年厚生労働省告示第

430号。以下「健康日本 21(第二次)」という。)では、健康寿命の延伸や健康格差の縮小の目標

を達成するため、生活習慣病の発症予防に加え、重症化予防の徹底、ライフステージに応じたこ

ころ、次世代及び高齢者の健康の推進等についての新たな方向性が盛り込まれた。

以上のような背景の下、生活習慣病対策をはじめとして、保健、医療、福祉、介護等の各分野

及び関係機関、住民等との連携及び協働がますます重要となってきている。さらに、地方分権の

一層の進展により、地域において保健師が保健活動を行うに当たっては、保健師の果たすべき役

割を認識した上で、住民、世帯及び地域の健康課題を主体的に捉えた活動を展開していくことが

重要となっており、地域保健関連施策の担い手としての保健師の活動の在り方も大きく変容しつ

つある。

これまでの保健師の保健活動は、住民に対する直接的な保健サービスや福祉サービス等(以下

「保健サービス等」という。)の提供及び総合調整に重点を置いて活動するとともに、地域保健

関連施策の企画、立案、実施及び評価、総合的な健康施策への積極的な関与を進めてきたが、今

後はこれらの活動に加えて、持続可能でかつ地域特性をいかした健康なまちづくり、災害対策等

を推進することが必要である。

ついては、下記により地域における保健師の保健活動のさらなる推進が図られるようお願いす

るとともに、別紙のとおり、都道府県及び市町村(特別区を含む。)が留意すべき事項(「地域に

おける保健師の保健活動に関する指針」)を定めたので、御了知の上、その適切な運用に努めら

れたい。各都道府県においては、管内市町村(保健所設置市及び特別区を除く。)等に周知を図る

とともに、その円滑な実施について遺憾のないよう御指導願いたい。

なお、本通知は、地方自治法(昭和 22年法律第 67号)第 245条の 4に規定する技術的助言であ

ることを申し添える。

おって、「地域における保健師の保健活動について」(平成 15年 10月 10日付け健発第 1010003

号)及び「地域における保健師の保健活動について」(平成 15年 10月 10日付け健総発第 1010001

号)は廃止する。

1 都道府県及び市町村(特別区を含む。以下同じ。)は、保健師が地域の健康課題を明らかに

し、住民の健康の保持増進のため重要な役割を担うものであることを踏まえ、地域保健関

連施策の企画、立案、実施及び評価を行うことができるような体制を整備すること。保健

師の保健活動の実施に当たっては、訪問指導、健康相談、健康教育、その他の直接的な保

1厚生労働省 健発 0419 第 1 号 平成 25 年 4 月 19 日

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健サービス等の提供、住民の主体的活動の支援、災害時支援、健康危機管理、関係機関と

のネットワークづくり、包括的な保健、医療、福祉、介護等のシステムの構築等を実施で

きるような体制を整備すること。その際、保健衛生部門においては、管内をいくつかの地

区に分けて担当保健師を配置し、保健師がその担当地区に責任をもって活動する地区担当

制の推進に努めること。また、各種保健医療福祉に係る計画(健康増進計画、がん対策推進

計画、医療費適正化計画、特定健康診査等実施計画、母子保健計画、障害福祉計画、介護

保険事業支援計画又は介護保険事業計画、医療計画等)の策定等に保健師が十分に関わるこ

とができるような体制を整備すること。

2 都道府県及び市町村は、保健師の職務の重要性に鑑み、また、保健、医療、福祉、介護等

の総合的な施策の推進や住民サービス向上の観点から、保健師の計画的かつ継続的な確保

に努めること。なお、地方公共団体における保健師の配置については、地方交付税の算定

基礎となっていることに留意すること。

3 都道府県及び市町村は、保健師が、住民に対する保健サービス等の総合的な提供や、地域

における保健、医療、福祉、介護等の包括的なシステムやネットワークの構築とその具体

的な運用において主要な役割を果たすものであることに鑑み、保健、医療、福祉、介護等

の関係部門に保健師を適切に配置すること。加えて、保健師の保健活動を組織横断的に総

合調整及び推進し、技術的及び専門的側面から指導する役割を担う部署を保健衛生部門等

に明確に位置付け、保健師を配置するよう努めること。

4 都道府県及び市町村は、保健師が新たな健康課題や多様化、高度化する住民のニーズに的

確に対応するとともに、効果的な保健活動を展開するために、常に資質の向上を図る必要

があることから、保健師の現任教育(研修(執務を通じての研修を含む。)、自己啓発の奨励、

人材育成の観点から計画的な人事異動その他の手段による教育をいう。以下同じ。)につい

ては、「地方自治・新時代における人材育成基本方針策定指針について」(平成 9年 11月 28

日付け自治能第 78号)に基づき、各地方公共団体において策定した人材育成指針により、

体系的に実施すること。また、特に新任期の保健師については、「新人看護職員研修ガイド

ライン~保健師編~」(平成 23年 2月厚生労働省)に基づき、各地方公共団体において研修

体制を整備すること。なお、現任教育については、日々進展する保健、医療、福祉、介護

等に関する知識及び技術、連携及び調整に係る能力、行政運営や評価に関する能力を養成

するよう努めること。

(別紙)

地域における保健師の保健活動に関する指針

第一 保健師の保健活動の基本的な方向性

保健師は、個人及び地域全体の健康の保持増進及び疾病の予防を図るため、所属する組織や

部署にかかわらず、以下の事項について留意の上、保健活動を行うこと。

(1) 地域診断に基づく PDCAサイクルの実施

保健師は、地区活動、保健サービス等の提供、又、調査研究、統計情報等に基づき、住民の

健康状態や生活感境の実態を把握し、健康問題を構成する要素を分析して、地域において取

り組むべき健康課題を明らかにすること(以下「地域診断」という。)により、その健康課題

の優先度を判断すること。また、PDCA サイクル(plan-do-check-act cycle)に基づき地域保健

関連施策の展開及びその評価を行うこと。

(2) 個別課題から地域課題への視点及び活動の展開

保健師は、個々の住民の健康問題の把握にとどまらず、地域特性を踏まえて集団に共通する

地域の健康課題や地域保健関連施策を総合的に捉える視点を持って活動すること。また、健

康課題の解決に向けて住民や組織同士をつなぎ、自助及び共助など住民の主体的な行動を促

進し、そのような住民主体の取組が地域において持続するよう支援すること。

(3) 予防的介入の重視

保健師は、あらゆる年代の住民を対象に生活習慣病等の疾病の発症予防や重症化予防を徹底

することで、要医療や要介護状態になることを防止するとともに、虐待などに関連する潜在

的な健康問題を予見して、住民に対し必要な情報の提供や早期介入等を行うこと。

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(4) 地区活動に立脚した活動の強化

保健師は、住民が健康で質の高い生活を送ることを支援するために、訪問指導、健康相談、

健康教育及び地区組織等の育成等を通じて積極的に地域に出向き、地区活動により、住民の

生活の実態や健康問題の背景にある要因を把握すること。また、地区活動を通じてソーシャ

ルキャピタルの醸成を図り、それらを活用して住民と協働し、住民の自助及び共助を支援し

て主体的かつ継続的な健康づくりを推進すること。

(5) 地区担当制の推進

保健師は、分野横断的に担当地区を決めて保健活動を行う地区担当制等の体制の下、住民、

世帯及び地域全体の健康課題を把握し、世帯や地域の健康課題に横断的・包括的に関わり、

地域の実情に応じた必要な支援をコーディネートするなど、担当する地区に責任をもった保

健活動を推進すること。

(6) 地域特性に応じた健康なまちづくりの推進

保健師は、ライフサイクルを通じた健康づくりを支援するため、ソーシャルキャピタルを醸

成し、学校や企業等の関係機関との幅広い連携を図りつつ、社会環境の改善に取り組むなど、

地域特性に応じた健康なまちづくりを推進すること。

(7) 部署横断的な保健活動の連携及び協働

保健師は、相互に連携を図るとともに、他職種の職員、関係機関、住民等と連携及び協働し

て保健活動を行うこと。また、必要に応じて部門や部署を越えて課題等を共有し、健康課題

の解決に向けて共に検討するなど、部署横断的に連携し協働すること。

(8) 地域のケアシステムの構築

保健師は、健康問題を有する住民が、その地域で生活を継続できるよう、保健、医療、福祉、

介護等の各種サービスの総合的な調整を行い、また、不足しているサービスの開発を行うな

ど、地域のケアシステムの構築に努めること。

(9) 各種保健医療福祉計画の策定及び実施

保健師は、地域の健康課題を解決するために、住民、関係者及び関係機関等と協働して各種

保健医療福祉計画(健康増進計画、がん対策推進計画、医療費適正化計画、特定健康診査等実

施計画、母子保健計画、障害福祉計画、介護保険事業支援計画又は介護保険事業計画、医療

計画等をいう。以下同じ。)を策定するとともに、それらの計画が適切かつ効果的に実施され

るよう各種保健医療福祉計画の進行管理及び評価を関係者及び関係機関等と協働して行うこ

と。

(10) 人材育成

保健師は、これらの活動を適切に行うために、主体的に自己啓発に努め、最新の保健、医療、

福祉、介護等に関する知識及び技術を習得するとともに、連携、調整や行政運営に関する能

力及び保健、医療、福祉及び介護の人材育成に関する能力を習得すること。

第二 活動領域に応じた保健活動の推進

保健師は、所属組織や部署に応じて、以下の事項について留意の上、保健活動を行うこと。

なお、地方公共団体ごとに組織体制等は様々であるため、各地域や組織の実情を踏まえた保

健活動を実施すること。

1 都道府県保健所等

都道府県保健所等に所属する保健師は、所属内の他職種と協働し、管内市町村及び医療機関

等の協力を得て広域的に健康課題を把握し、その解決に取り組むこと。また、生活習慣病対

策、精神保健福祉対策、自殺予防対策、難病対策、結核・感染症対策、エイズ対策、肝炎対

策、母子保健対策、虐待防止対策等において広域的、専門的な保健サービス等を提供するほ

か、災害を含めた健康危機への迅速かつ的確な対応が可能になるような体制づくりを行い、

新たな健康課題に対して、先駆的な保健活動を実施し、その事業化及び普及を図ること。加

えて、生活衛生及び食品衛生対策についても、関連する健康課題の解決を図り、医療施設等

に対する指導等を行うこと。さらに、地域の健康情報の収集、分析及び提供を行うとともに

調査研究を実施して、各種保健医療福祉計画の策定に参画し、広域的に関係機関との調整を

図りながら、管内市町村と重層的な連携体制を構築しつつ、保健、医療、福祉、介護等の包

括的なシステムの構築に努め、ソーシャルキャピタルを活用した健康づくりの推進を図るこ

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と。市町村に対しては、広域的及び専門的な立場から、技術的な助言、支援及び連絡調整を

積極的に行うよう努めること。

(1) 実態把握及び健康課題の明確化

地域診断を実施し、地域において取り組むべき健康課題を明らかにするとともに、各種情報

や健康課題を市町村と共有すること。

(2) 保健医療福祉計画策定及び施策化

地域診断により明らかとなった地域の健康課題に取り組むために、目標の設定、保健事業の

選定及び保健活動の方法等についての検討を行い、各種保健医療福祉計画を策定するととも

に、これらの計画に盛り込まれた施策を事業化するための企画、立案、予算の確保を行い、

保健活動の実施体制を整えること。また、都道府県及び市町村が策定する各種計画の策定に

参画又は協力すること。

(3) 保健サービス等の提供

地域の各種保健医療福祉計画に基づき、訪問指導、健康相談、健康教育、地区組織活動の育

成及び支援等の活動方法を適切に用いて、ソーシャルキャピタルの醸成・活用を図りながら、

保健サービス等を提供すること。

ア 市町村及び関係機関と協力して住民の健康の保持増進に取り組み、生活習慣病の発症及び重

症化を予防すること。

イ 精神障害、難病、結核・感染症、エイズ、肝炎、母子保健、虐待等多様かつ複雑な問題を抱

える住民に対して、広域的かつ専門的な各種保健サービス等を提供すること。

ウ 災害対応を含む健康危機管理に関して、適切かつ迅速な対応を行うことができるよう、平常

時から体制を整えるとともに、健康危機の発生時には、関係職員と十分に連携を図り、協働して

保健活動を行うこと。また、災害発生時においては、市町村の被災者健康管理等に関する支援・

調整を行うこと。

エ 生活困窮者等に対し、社会経済状況の違いによる健康状態の差が生じないよう健康管理支援

を行うこと。

オ ソーシャルキャピタルを広域的に醸成し、その活用を図るとともに、ソーシャルキャピタル

の核となる人材の育成に努めること。

カ 生活衛生及び食品衛生に関わる健康問題に対して、他の専門職員等と十分に連携を図り、協

働して保健活動を行うこと。

(4) 連携及び調整

管内における保健、医療、福祉、環境、教育、労働衛生等の関係機関及び関係者の広域的な

連携を図るために、所属内の他の職員と協働して協議会等を開催し、その運営を行うこと。

また、管内の市町村間の連絡、調整を行うこと。

ア 管内市町村の健康施策全体の連絡、調整に関する協議会等の運営を行うこと。

イ 精神障害、難病、結核・感染症、エイズ等の地域のケアシステムを構築するための協議会を

運営し活用すること。

ウ 市町村の規模により、市町村単独では組織化が困難な健康増進、保健医療、高齢者福祉、母

子保健福祉、虐待防止、障害福祉等に関するネットワークを構築すること。

エ 関係機関で構成される協議会等を通じて、職域保健、学校保健等と連携及び協働すること。

オ 保健衛生部門等の保健師は、保健師の保健活動を総合調整及び推進し、技術的及び専門的側

面から指導を行うこと。

カ 保健師等の学生実習の効果的な実施に努めること。

(5) 研修(執務を通じての研修を含む。)

市町村及び保健、医療、福祉、介護等に従事する者に対する研修を所属内の他の職員等と協

働して企画及び実施すること。

(6) 評価

保健所等が行った保健活動について、所属内の他の職員とともに、政策評価、事業評価を行

い、保健活動の効果を検証し、必要に応じて保健事業等や施策に反映させること。

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2 市町村

市町村に所属する保健師は、市町村が住民の健康の保持増進を目的とする基礎的な役割を果

たす地方公共団体と位置づけられ、住民の身近な健康問題に取り組むこととされていること

から、健康増進、高齢者医療福祉、母子保健、児童福祉、精神保健福祉、障害福祉、女性保

護等の各分野に係る保健サービス等を関係者と協働して企画及び立案し、提供するとともに、

その評価を行うこと。その際、管内をいくつかの地区に分けて担当し、担当地区に責任を持

って活動する地区担当制の推進に努めること。また、市町村が保険者として行う特定健康診

査、特定保健指導、介護保険事業等に取り組むこと。併せて、住民の参画及び関係機関等と

の連携の下に、地域特性を反映した各種保健医療福祉計画を策定し、当該計画に基づいた保

健事業等を実施すること。さらに、各種保健医療福祉計画の策定にとどまらず、防災計画、

障害者プラン及びまちづくり計画等の策定に参画し、施策に結びつく活動を行うとともに、

保健、医療、福祉、介護等と連携及び調整し、地域のケアシステムの構築を図ること。

(1) 実態把握及び健康課題の明確化

地域診断を実施し、市町村において取り組むべき健康課題を明らかにするとともに、各種情

報や健康課題を住民と共有するよう努めること。

(2) 保健医療福祉計画策定及び施策化

地域診断により明らかとなった市町村における健康課題に取り組むために、目標の設定、保

健事業の選定及び保健活動の方法についての検討を行い、各種保健医療福祉計画を策定する

こと。これらの計画に盛りこまれた施策を事業化するための企画、立案、予算の確保を行い、

保健活動の実施体制を整えること。

(3) 保健サービス等の提供

市町村の各種保健医療福祉計画に基づき、ソーシャルキャピタルの醸成・活用を図りながら、

訪問指導、健康相談、健康教育、地区組織活動の育成及び支援等の活動方法を適切に用いて、

保健サービス等を提供すること。

ア 住民の身近な相談者として、総合相談(多様化している保健、医療及び福祉等に関するニー

ズに対応する総合的な相談事業をいう。)及び地区活動を実施し、また、住民の主体的な健康づ

くりを支援すること。

イ 生活習慣病の発症及び重症化を予防するため、一次予防に重点をおいた保健活動を実施する

とともに、地域の健康課題に応じて、適切な対象者に対し、効果的な健康診査及び保健指導を実

施すること。

ウ 介護予防、高齢者医療福祉、母子保健、児童福祉、精神保健福祉、障害福祉、女性保護等の

各種対策に関する保健サービス等を提供すること。また、適切な受療に関する指導を行うこと。

エ ソーシャルキャピタルを活用した事業の展開及びその核となる人材の育成に努め、地区住民

組織、ボランティア組織及び自助グループ等の育成及び支援を行うとともに、これらとの協働を

推進すること。

オ 災害対応を含む健康危機管理に関して、平常時からの保健所との連携の下、適切な対応を行

うこと。また、災害を含む健康危機の発生時には、平常時の地区活動等により把握した住民や地

域の実態を踏まえて、住民の健康管理等の支援活動を実施すること。

カ 生活困窮者等に対し、社会経済状況の違いによる健康状態の差が生じないよう健康管理支援

を行うこと。

(4) 連携及び調整

保健所や当該市町村の保健、医療、医療保険、福祉、環境、教育、労働衛生等の関係者、関

係部局及び関係機関との連携を密にし、総合的な調整を図り、効果的な保健活動を展開する

こと。

ア 高齢者医療福祉(認知症を含む。)、母子保健、児童福祉、精神保健福祉、障害福祉、女性保

護等に関するネットワークや地域のケアシステムの構築を図ること。

イ 健康増進を推進するための健康づくり推進協議会等を運営及び活用すること。その際、ソー

シャルキャピタルの核である人材の参画を得て、地域の健康課題を共有しながら地域保健関連対

策を一体的に推進すること。

ウ 保健所との連携の下に、職域保健及び学校保健等と連携した保健活動を行うこと。

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エ 保健衛生部門、国民健康保険部門及び介護保険部門においては、各部門が保有するデータ等

を含め密接な連携を図り、効果的に住民の健康増進、生活習慣病予防、介護予防等に取り組むこ

と。

オ 保健師等の学生実習の効果的な実施に努めること。

(5) 評価

保健活動について、他の職員とともに、政策評価、事業評価を行い、保健事業の効果を検証

し、必要に応じて保健活動や施策に反映させること。

3 保健所設置市及び特別区

保健所設置市及び特別区に所属する保健師は、上記 1及び 2の活動を併せて行うこと(都道府

県保健所等の機能のうち、市町村との関係に関する部分を除く。)。

4 都道府県、保健所設置市、特別区及び市町村の本庁

都道府県、保健所設置市、特別区及び市町村の本庁の保健衛生部門等に配置された保健師は、

保健所、市町村等の保健活動に対して技術的及び専門的側面からの指導及び支援を行うとと

もに、当該地方公共団体の地域保健関連施策の企画、調整及び評価を行うこと。

(1) 保健活動の総合調整及び支援を行うこと。

ア 保健師の保健活動の総合調整等を担う部署に配置された保健師は、住民の健康の保持増進を

図るための様々な活動等を効果的に推進するため、保健師の保健活動を組織横断的に総合調整及

び推進し、人材育成や技術面での指導及び調整を行うなど統括的な役割を担うこと。

イ 保健師の保健活動の方向性について検討すること。

ウ 保健師等の学生実習に関する調整及び支援を行うこと。

(2) 保健師の計画的な人材確保を行い、資質の向上を図ること。

ア 保健師の需給計画の策定を行うこと。

イ 地方公共団体の人材育成指針に基づき、職場内研修、職場外研修、人材育成の観点から異な

る部門への人事異動、都道府県と市町村(保健所設置市、特別区を含む。)間等の人事交流及び自

己啓発を盛り込んだ保健師の現任教育体系を構築し、研修等を企画及び実施すること。

ウ 現任教育の実施に当たり、地方公共団体の人事担当部門、研究機関、大学等の教育機関等と

の連携を図り、効果的及び効率的な現任教育を実施すること。

(3) 保健師の保健活動に関する調査及び研究を行うこと。

(4) 事業計画の策定、事業の企画及び立案、予算の確保、事業の評価等を行うこと。

(5) 所属する部署内の連絡及び調整を行うとともに、高齢者保健福祉、母子保健福祉、障害者

保健福祉、医療保険、学校保健、職域保健、医療分野等の関係部門及び関係機関とのデータ等を

含め密接な連携及び調整を行うこと。

(6) 災害時を含む健康危機管理における保健活動の連絡及び調整を行うこと。また、保健師を

被災地へ派遣する際の手続き等についてあらかじめ定めておくこと。

(7) 国や都道府県等の保健活動に関する情報を関係機関及び施設に提供すること。

(8) 国民健康保険団体連合会や看護職能団体等の関係団体との連携及び調整を行うこと。

(9) 国や地方公共団体の保健活動の推進のため、積極的な広報活動を行うこと。

(10) その他、当該地方公共団体の計画策定及び政策の企画及び立案に参画すること。

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地方公務員法 2

(昭和二十五年十二月十三日法律第二百六十一号)

最終改正:平成二六年六月一三日法律第六九号

(略)

第七節 研修及び勤務成績の評定

(研修)

第三十九条 職員には、その勤務能率の発揮及び増進のために、研修を受ける機会が与えられ

なければならない。

2 前項の研修は、任命権者が行うものとする。

3 地方公共団体は、研修の目標、研修に関する計画の指針となるべき事項その他研修に関す

る基本的な方針を定めるものとする。

4 人事委員会は、研修に関する計画の立案その他研修の方法について任命権者に勧告するこ

とができる。

(勤務成績の評定)

第四十条 任命権者は、職員の執務について定期的に勤務成績の評定を行い、その評定の結果

に応じた措置を講じなければならない。

2 人事委員会は、勤務成績の評定に関する計画の立案その他勤務成績の評定に関し必要な事

項について任命権者に勧告することができる。

2 総務省.地方公務員法.法令データ提供システム.電子政府の総合窓口. http://law.e-gov.go.jp/htmldata/S25/S25HO261.html (accessed 2015-12-01)

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地域保健法

第四条第一項の規定に基づく地域保健対策の推進に関する基本的な指針 3

(平成六年十二月一日厚生省告示第三百七十四号)

最終改正:平成二十七年三月二十七日厚生労働省告示第百八十五号

(略)

第三条 地域保健対策に係る人材の確保及び資質の向上並びに人材確保支援計画の策定に関す

る基本的事項

地域保健対策に係る多くの職種に渡る専門技術職員の養成、確保及び知識又は技術の向上

に資する研修の充実を図るため、市町村、都道府県及び国は、次のような取組を行うことが

必要である。

一 人材の確保

1 都道府県、政令市及び特別区は、地域における健康危機管理体制の充実等の観点から、

保健所における医師の配置に当たっては、専任の保健所長を置くように努める等の所管区域

の状況に応じた適切な措置を講じるように努めること。なお、医師である専任の保健所長の

確保が著しく困難である場合には、保健所長の職責の重要性に鑑み、臨時的な措置として、

令第四条第二項各号のいずれにも該当する医師でない地域保健法(昭和二十二年法律第百一

号)第五条第一項に規定する地方公共団体の長の補助機関である職員を保健所長として配置

するように努めること。

2 都道府県は、事業の将来的な見通しの下に精神保健福祉士を含む令第五条に規定する職

員の継続的な確保に努め、地域保健対策の推進に支障を来すことがないように配慮すること。

3 市町村は、事業の将来的な見通しの下に、保健師、管理栄養士等の地域保健対策に従事

する専門技術職員の計画的な確保を推進することにより、保健事業の充実及び保健事業と介

護保険事業等との有機的な連携その他の地域保健対策の推進に支障を来すことがないように

配慮すること。また市町村は、医師、歯科医師、薬剤師、獣医師、助産師、看護師、准看護

師、管理栄養士、栄養士、理学療法士、作業療法士、歯科衛生士、社会福祉士、介護福祉士、

精神保健福祉士、言語聴覚士等の地域における人的資源を最大限に活用すること。このため

地域の医師会、歯科医師会、薬剤師会、獣医師会、看護協会、栄養士会等の支援を得ること。

さらに、行政職員の育成のみならず、地域においてソーシャルキャピタルの核となる人材の

発掘及び育成を行うとともに、学校、企業等との仲立ちとなる人材の確保についても計画的

に取り組むこと。

4 国は専門技術職員の養成に努めるとともに業務内容、業務量等を勘案した保健師の活動の

指標を情報として提供する等の支援を行うこと。また健康なまちづくりの全国的な推進のた

め地方公共団体等が行うソーシャルキャピタルの核となる人材育成に係る支援に努めること。

二 人材の資質の向上

1 都道府県及び市町村は、職員に対する現任教育(研修及び自己啓発の奨励、地域保健対策

に係る部門以外の部門への人事異動その他の手段による教育をいう。以下同じ。)について各

地方公共団体が策定した人材育成指針に基づき、企画及び調整を一元的に行う体制を整備す

ることが望ましいこと。なおここでいう研修には執務を通じての研修を含む。

2 都道府県及び市町村は、地域保健に関わる医師、歯科医師、薬剤師、獣医師、保健師、助

産師、看護師、准看護師、管理栄養士、栄養士、理学療法士、作業療法士、歯科衛生士、社

会福祉士、精神保健福祉士、言語聴覚士等に対して、次に掲げる現任教育に関する事項を効

果的かつ効率的に実施すること。なお、実施に際しては必要に応じ関係部局と連携すること。

(一)次に掲げる事項に関する研修及び自己啓発の奨励

(1)専門分野及び行政運営に関する事項

3厚生労働省. 地域保健法第四条第一項の規定に基づく地域保健対策の推進に関する基本的な指

針.厚生労働省告示第百八十五号. http://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-10900000-Kenkoukyoku/0000079549.pdf

(accessed 2015-12-01)

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(2)保健、医療、福祉の連携を促進するための職種横断的な事項

(3)保健、医療、福祉に係る各種サービスの総合的な調整に関する事項

(二)人材育成を目的とした地域保健対策に係る部門以外の部門への人事異動、保健所

と市町村との間の人事交流、研究機関等への派遣等の推進

3 都道府県は、市町村の求めに応じ、都道府県及び市町村の職員の研修課程を定め、保健

所、地方衛生研究所等との間の職員研修上の役割分担を行って、現任訓練を含めた市町

村職員に対する体系的な専門分野に関する研修を計画的に推進するとともに、保健所職

員が市町村に対する技術的援助を円滑に行うことを可能とするための研修、保健所の企

画及び調整機能を強化するための研修並びに教育機関又は研究機関と連携した研修の推

進に努めること。

4 都道府県は、保健所において、市町村等の求めに応じ、市町村職員及び保健、医療、福

祉サービスに従事する者に対する研修を実施するとともに、町村職員が研修を受ける際

には、当該町村の事業が円滑に実施されるように必要に応じて支援すること。

5 国は、国立試験研究機関における養成訓練を始め、総合的な企画及び調整の能力の養成

並びに指導者としての資質の向上に重点を置いた研修の充実を図るとともに、効果的か

つ効率的な教育方法の開発及び普及を行い、市町村及び都道府県に対する技術的及び財

政的援助に努めること。

三 人材確保支援計画の策定

1 人材確保支援計画の策定についての基本的考え方

(一)市町村は、地域保健対策の円滑な実施を図るため、自ら責任を持って、住民に身近で

利用頻度の高い保健サービスに必要な人材の確保及び資質の向上を図ることが原則である。

しかしながら、町村が必要な対策を講じても地域の特性によりなお必要な人材を確保でき

ない場合には、都道府県は、特にその人材の確保又は資質の向上を支援する必要がある町

村について、町村の申出に基づき人材確保支援計画を策定するとともに、これに基づき人

材の確保又は資質の向上に資する事業を推進すること。

(二)国は、都道府県の行う人材確保支援計画において定められた事業が円滑に実施される

よう、別に定める要件に従い必要な財政的援助を行うとともに、助言、指導その他の援助

の実施に努めること。

(三)(一)及び(二)に掲げる措置により各町村は十分な保健サービス及び保健医療福祉の

連携の下で最適なサービスを総合的に提供するための調整を行うことのできる保健師、栄

養相談等を行う管理栄養士その他必要な職員の適切な配置を行うことが望ましいこと。

2 人材確保支援計画の策定及びこれに基づく事業の実施に当たっての留意事項

都道府県は、人材確保支援計画の策定及びこれに基づく事業については、特定町村との十分

な意思疎通及び共通の課題を抱える特定町村における当該事業の一体的な推進を図るほか、

地域の医師会、歯科医師会、薬剤師会、獣医師会、看護協会、栄養士会等の専門職能団体

及び医療機関との連携又は協力体制を確立すること等により、地域の特性に即し、効果的

に実施するよう留意すること。

第四条 厚生労働大臣は、地域保健対策の円滑な実施及び総合的な推進を図るため、地域保

健対策の推進に関する基本的な指針(以下「基本指針」という。)を定めなければならない。

2 基本指針は、次に掲げる事項について定めるものとする。

【地域保健法第四条第一項の規定に基づく地域保健対策の推進に関する基本的な指針(抜粋)】

第三 「地域保健対策に係る多くの職種に渡る専門技術職員の養成、確保及び知識又は技術 の向

上に資する研修の充実を図るため、市町村、都道府県及び国は、次のような取組を行うことが必

要である。

一 人材の確保(略)

二 人材の資質の向上

1 都道府県及び市町村は、職員に対する現任教育(研修及び自己啓発の奨励、地 域保健対

策に係る部門以外の部門への人事異動その他の手段による教育をいう。 以下同じ。)につ

いて各地方公共団体が策定した人材育成指針に基づき、企画及び 調整を一元的に行う体制

を整備することが望ましいこと。なお、ここでいう研修 には執務を通じての研修を含む。

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「保健師助産師看護師法」5

(昭和二十三年七月三十日法律第二百三号)

最終改正:平成二六年六月二五日法律第八三号

(略)

第三章 試験

第二十八条の二 保健師、助産師、看護師及び准看護師は、免許を受けた後も、臨床研修その他の研修

(保健師等再教育研修及び准看護師再教育研修を除く。)を受け、その資質の向上を図るように努めな

ければならない。

5 総務省.保健師助産師看護師法.法令データ提供システム.電子政府の総合窓口.

http://law.e-gov.go.jp/htmldata/S23/S23HO203.html (accessed 2015-12-01)

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「看護師等の人材確保の促進に関する法律」6

(平成四年六月二十六日法律第八十六号)

最終改正:平成二七年五月二九日法律第三一号

(略)

第二章 看護師等の人材確保の促進

(病院等の開設者等の責務)

第五条 病院等の開設者等は、病院等に勤務する看護師等が適切な処遇の下で、その専門知識と技

能を向上させ、かつ、これを看護業務に十分に発揮できるよう、病院等に勤務する看護師等の処

遇の改善、新たに業務に従事する看護師等に対する臨床研修その他の研修の実施、看護師等が自

ら研修を受ける機会を確保できるようにするために必要な配慮その他の措置を講ずるよう努めな

ければならない。

(看護師等の責務)

第六条 看護師等は、保健医療の重要な担い手としての自覚の下に、高度化し、かつ、多様化する

国民の保健医療サービスへの需要に対応し、研修を受ける等自ら進んでその能力の開発及び向上

を図るとともに、自信と誇りを持ってこれを看護業務に発揮するよう努めなければならない。

6 総務省.看護師等の人材確保の促進に関する法律.法令データ提供システム.電子政府の総合窓口.

http://law.e-gov.go.jp/htmldata/H04/H04HO086.html (accessed 2015-12-01)

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育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律 7

(平成三年五月十五日法律第七十六号)

最終改正:平成二六年六月一三日法律第六七号

(略)

第二章 育児休業

(育児休業の申出)

第五条 労働者は、その養育する一歳に満たない子について、その事業主に申し出ることにより、育

児休業をすることができる。ただし、期間を定めて雇用される者にあっては、次の各号のいずれに

も該当するものに限り、当該申出をすることができる。

一 当該事業主に引き続き雇用された期間が一年以上である者

二 その養育する子が一歳に達する日(以下「一歳到達日」という。)を超えて引き続き雇用される

ことが見込まれる者(当該子の一歳到達日から一年を経過する日までの間に、その労働契約の期間

が満了し、かつ、当該労働契約の更新がないことが明らかである者を除く。)

(不利益取扱いの禁止)

第十条 事業主は、労働者が育児休業申出をし、又は育児休業をしたことを理由として、当該労働者

に対して解雇その他不利益な取扱いをしてはならない。

(子の看護休暇の申出)

第十六条の二 小学校就学の始期に達するまでの子を養育する労働者は、その事業主に申し出ること

により、一の年度において五労働日(その養育する小学校就学の始期に達するまでの子が二人以上

の場合にあっては、十労働日)を限度として、負傷し、若しくは疾病にかかった当該子の世話又は

疾病の予防を図るために必要なものとして厚生労働省令で定める当該子の世話を行うための休暇

(以下この章において「子の看護休暇」という。)を取得することができる。

2 前項の規定による申出は、厚生労働省令で定めるところにより、子の看護休暇を取得する日を明

らかにして、しなければならない。

3 第一項の年度は、事業主が別段の定めをする場合を除き、四月一日に始まり、翌年三月三十一日

に終わるものとする。

(準用)

第十六条の四 第十条の規定は、第十六条の二第一項の規定による申出及び子の看護休暇について準

用する。

第七章 時間外労働の制限

第十七条 事業主は、労働基準法第三十六条第一項 本文の規定により同項 に規定する労働時間(以

下この条において単に「労働時間」という。)を延長することができる場合において、小学校就学の

始期に達するまでの子を養育する労働者であって次の各号のいずれにも該当しないものが当該子を

養育するために請求したときは、制限時間(一月について二十四時間、一年について百五十時間を

いう。次項及び第十八条の二において同じ。)を超えて労働時間を延長してはならない。ただし、事

業の正常な運営を妨げる場合は、この限りでない。

一 当該事業主に引き続き雇用された期間が一年に満たない労働者

二 前号に掲げるもののほか、当該請求をできないこととすることについて合理的な理由があると認

められる労働者として厚生労働省令で定めるもの

第八章 深夜業の制限

第十九条 事業主は、小学校就学の始期に達するまでの子を養育する労働者であって次の各号のいず

れにも該当しないものが当該子を養育するために請求した場合においては、午後十時から午前五時

までの間(以下この条及び第二十条の二において「深夜」という。)において労働させてはならない。

ただし、事業の正常な運営を妨げる場合は、この限りでない。

一 当該事業主に引き続き雇用された期間が一年に満たない労働者

7総務省.育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律.法令データ提供シ

ステム.電子政府の総合窓口.http://law.e-gov.go.jp/htmldata/H03/H03HO076.html (accessed 2015-12-01)

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二 当該請求に係る深夜において、常態として当該子を保育することができる当該子の同居の家族そ

の他の厚生労働省令で定める者がいる場合における当該労働者

三 前二号に掲げるもののほか、当該請求をできないこととすることについて合理的な理由があると

認められる労働者として厚生労働省令で定めるもの

2 前項の規定による請求は、厚生労働省令で定めるところにより、その期間中は深夜において労働

させてはならないこととなる一の期間(一月以上六月以内の期間に限る。第四項において「制限期

間」という。)について、その初日(以下この条において「制限開始予定日」という。)及び末日(同

項において「制限終了予定日」という。)とする日を明らかにして、制限開始予定日の一月前までに

しなければならない。

3 第一項の規定による請求がされた後制限開始予定日とされた日の前日までに、子の死亡その他の

労働者が当該請求に係る子の養育をしないこととなった事由として厚生労働省令で定める事由が生

じたときは、当該請求は、されなかったものとみなす。この場合において、労働者は、その事業主

に対して、当該事由が生じた旨を遅滞なく通知しなければならない。

4 次の各号に掲げるいずれかの事情が生じた場合には、制限期間は、当該事情が生じた日(第三号

に掲げる事情が生じた場合にあっては、その前日)に終了する。

一 制限終了予定日とされた日の前日までに、子の死亡その他の労働者が第一項の規定による請求に

係る子を養育しないこととなった事由として厚生労働省令で定める事由が生じたこと。

二 制限終了予定日とされた日の前日までに、第一項の規定による請求に係る子が小学校就学の始期

に達したこと。

三 制限終了予定日とされた日までに、第一項の規定による請求をした労働者について、労働基準法

第六十五条第一項 若しくは第二項 の規定により休業する期間、育児休業期間又は介護休業期間が

始まったこと。

5 第三項後段の規定は、前項第一号の厚生労働省令で定める事由が生じた場合について準用する。

(労働者の配置に関する配慮)

第二十六条 事業主は、その雇用する労働者の配置の変更で就業の場所の変更を伴うものをしようと

する場合において、その就業の場所の変更により就業しつつその子の養育又は家族の介護を行うこ

とが困難となることとなる労働者がいるときは、当該労働者の子の養育又は家族の介護の状況に配

慮しなければならない。

(再雇用特別措置等)

第二十七条 事業主は、妊娠、出産若しくは育児又は介護を理由として退職した者(以下「育児等退

職者」という。)について、必要に応じ、再雇用特別措置(育児等退職者であって、その退職の際に、

その就業が可能となったときに当該退職に係る事業の事業主に再び雇用されることの希望を有する

旨の申出をしていたものについて、当該事業主が、労働者の募集又は採用に当たって特別の配慮を

する措置をいう。第三十条及び第三十九条第一項第一号において同じ。)その他これに準ずる措置を

実施するよう努めなければならない。

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労働基準法 8

(昭和二十二年四月七日法律第四十九号)

最終改正:平成二七年五月二九日法律第三一号

(略)

第六章の二 妊産婦等

(坑内業務の就業制限)

第六十四条の二 使用者は、次の各号に掲げる女性を当該各号に定める業務に就かせてはならない。

一 妊娠中の女性及び坑内で行われる業務に従事しない旨を使用者に申し出た産後一年を経過しな

い女性 坑内で行われるすべての業務

二 前号に掲げる女性以外の満十八歳以上の女性 坑内で行われる業務のうち人力により行われる

掘削の業務その他の女性に有害な業務として厚生労働省令で定めるもの

(危険有害業務の就業制限)

第六十四条の三 使用者は、妊娠中の女性及び産後一年を経過しない女性(以下「妊産婦」という。)

を、重量物を取り扱う業務、有害ガスを発散する場所における業務その他妊産婦の妊娠、出産、哺

育等に有害な業務に就かせてはならない。

○2 前項の規定は、同項に規定する業務のうち女性の妊娠又は出産に係る機能に有害である業務に

つき、厚生労働省令で、妊産婦以外の女性に関して、準用することができる。

○3 前二項に規定する業務の範囲及びこれらの規定によりこれらの業務に就かせてはならない者

の範囲は、厚生労働省令で定める。

(産前産後)

第六十五条 使用者は、六週間(多胎妊娠の場合にあつては、十四週間)以内に出産する予定の女性

が休業を請求した場合においては、その者を就業させてはならない。

○2 使用者は、産後八週間を経過しない女性を就業させてはならない。ただし、産後六週間を経過

した女性が請求した場合において、その者について医師が支障がないと認めた業務に就かせること

は、差し支えない。

○3 使用者は、妊娠中の女性が請求した場合においては、他の軽易な業務に転換させなければなら

ない。

第六十六条 使用者は、妊産婦が請求した場合においては、第三十二条の二第一項、第三十二条の四

第一項及び第三十二条の五第一項の規定にかかわらず、一週間について第三十二条第一項の労働時

間、一日について同条第二項の労働時間を超えて労働させてはならない。

○2 使用者は、妊産婦が請求した場合においては、第三十三条第一項及び第三項並びに第三十六条

第一項の規定にかかわらず、時間外労働をさせてはならず、又は休日に労働させてはならない。

○3 使用者は、妊産婦が請求した場合においては、深夜業をさせてはならない。

(育児時間)

第六十七条 生後満一年に達しない生児を育てる女性は、第三十四条の休憩時間のほか、一日二回

各々少なくとも三十分、その生児を育てるための時間を請求することができる。

○2 使用者は、前項の育児時間中は、その女性を使用してはならない。

(生理日の就業が著しく困難な女性に対する措置)

第六十八条 使用者は、生理日の就業が著しく困難な女性が休暇を請求したときは、その者を生理日

に就業させてはならない。

8労働基準法.法令データ提供システム.電子政府の総合窓口.

http://law.e-gov.go.jp/htmldata/S22/S22HO049.html (accessed 2015-12-01)

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雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等に関する法律 9

(昭和四十七年七月一日法律第百十三号)

最終改正:平成二六年六月一三日法律第六七号

(略)

(妊娠中及び出産後の健康管理に関する措置)

第十二条 事業主は、厚生労働省令で定めるところにより、その雇用する女性労働者が母子保健法

(昭和四十年法律第百四十一号)の規定による保健指導又は健康診査を受けるために必要な時間を

確保することができるようにしなければならない。

第十三条 事業主は、その雇用する女性労働者が前条の保健指導又は健康診査に基づく指導事項を守

ることができるようにするため、勤務時間の変更、勤務の軽減等必要な措置を講じなければならな

い。

2 厚生労働大臣は、前項の規定に基づき事業主が講ずべき措置に関して、その適切かつ有効な実施

を図るために必要な指針(次項において「指針」という。)を定めるものとする。

3 第四条第四項及び第五項の規定は、指針の策定及び変更について準用する。この場合において、

同条第四項中「聴くほか、都道府県知事の意見を求める」とあるのは、「聴く」と読み替えるものと

する。

9雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等に関する法律.法令データ提供システム.電子

政府の総合窓口.http://law.e-gov.go.jp/htmldata/S47/S47HO113.html (accessed 2015-12-01)

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Page 70: 保健師の人材育成計画策定ガイドライン - niph.go.jp保健師の人材育成計画策定ガイドライン 平成28年3月 保健師の人材育成計画策定ガイドライン

保健医療2035提言書(概要 抜粋)10 ・我が国の保健医療が目指すべき目標

人々が世界最高水準の健康、医療を享受でき、安心、満足、納得を得ることができる持続可能な保健

医療システムを構築し、我が国及び世界の繁栄に貢献する。

・基本理念

(1)公平・公正(フェアネス)

将来世代も安心、納得ができ、職業や年齢、所得、家族の有無等により健康水準に差を生じさせず、

医療サービスの価値に応じた評価が行われる。

(2)自律に基づく連帯

コミュニティや日常生活の中で、一人ひとりが役割を主体的に果たす。個々人の自立のみに依存せ

ず、必要十分なセーフティネットと、保健医療への参加を促す仕組みによって社会から取りこぼされ

る人々を生じさせない。

(3)日本と世界の繁栄と共生

保健医療への投資により、わが国及び世界の経済・社会システムの安定と発展に寄与する。保健医

療を我が国の国力の柱として、地球規模の課題解決を主導し、 国際社会との協働の下で、平和と繁栄

の中で共生できる世界を構築する。

・3つのビジョンとアクション

(1)「リーン・ヘルスケア 〜保健医療の価値を高める〜」

保健医療システムへの投入資源に対して、人々が得られる価値を最大化する。「より良い医療をより

安く」享受できるよう、患者にとっての価値に基づく医療の質の向上や効率化を促進し、地域主体で

その特性に応じて保健医療を再編する。

(2)「ライフ・デザイン 〜主体的選択を社会で支える〜」

人々が自ら健康の維持・増進に主体的に関与し、デザインする。また、健康は個人の自助努力のみ

で維持・増進できるものではなく、個人を取り巻くさまざまな環境、いわゆる「健康の社会的決定要

因」を考慮した取組を進める。

(3)「グローバル・ヘルス・リーダー 〜日本が世界の保健医療を牽引する〜」

国境のない新興・再興感染症の封じ込めや災害時の支援などに貢献する機能を強化。我が国が、グ

ローバルなルール作りに積極的に貢献し、諸外国の保健医療水準を向上させ、ひいては我が国の保健医

療の向上や経済の成長に資する好循環を生み出す。

・ビジョンを達成するためのインフラ

(1)イノベーション環境

新たな価値や新たなアイデアを創造することで、社会に変革をもたらすための環境を整備。技術開

発のみならず、それに対応したシステム(人材、情報、資金など)の確立が必須。

(2)情報基盤の整備と活用

ICT 等により、医療の質、価値、安全性、パフォーマンスを飛躍的に向上させる。

保健医療データベースを整備・活用し、遠隔診断・治療・手術などの基盤を整備。

(3)安定した保健医療財源

将来世代に負担を強いることのないよう、公的医療保険の機能と役割、給付と負担のあり方やあら

ゆる新たな財源確保策についても議論を重ね、財源を確保。

(4)次世代型の保健医療人材

あらゆる医療従事者が常に良い保健医療の提供に邁進できるようにする。複数の疾患を有する患者

を総合的に診る能力や、予防、公衆衛生、コミュニケーション、マネージメントに関する能力を有す

る医師の養成や保健医療と福祉の多職種連携を前提とした人材育成を推進。

(5)世界をリードする厚生労働省

徹底した業務改善を行い、必要な人員を確保した上で、横断的なマネージメントやコミュニケーシ

ョン機能と能力を強化し、機動的で積極的に現場とつながることのできる組織を作る。国際的にも、

グローバル・ヘルス、健康危機に対して迅速かつ的確に動く組織として認識される水準を目指す。

10 「保健医療2035」策定懇談会 平成27年6月

http://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-12601000-Seisakutoukatsukan-Sanjikanshitsu_Shakaihoshoutantou/0000088654.pdf (accessed 2016-1-20)

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平成 27年度厚生労働科学研究費補助金(健康安全・危機管理対策総合研究事業)

「地域保健に従事する人材の計画的育成に関する研究」

「保健師の人材育成計画策定ガイドライン」作成班員

(敬称略)

研究代表者

奥田 博子 (国立保健医療科学院 健康危機管理研究部 上席主任研究官)

研究分担者

宮﨑 美砂子 (千葉大学大学院 看護学研究科 教授)

守田 孝恵 (山口大学大学院 医学系研究科 教授)

佐伯 和子 (北海道大学大学院 保健科学研究院 教授)

中板 育美 (日本看護協会 常任理事)

福島 富士子 (東邦大学 看護学部 教授)

橘 とも子 (国立保健医療科学院 研究情報支援研究センター 上席主任研究官)

研究協力者

石丸 美奈 (千葉大学大学院 看護学研究科 准教授)

水野 亮子 (川崎市中原区役所 保健福祉センター 課長)

中西 信代 (大分県中部保健所由布保健部地域保健課長)

森永 裕美子 (国立保健医療科学院 生涯健康研究部 主任研究官)

勝又 浜子 (日本看護協会 常任理事)

橋本 結花 (日本看護協会 健康政策部)

村中 峯子 (日本看護協会 健康政策部)

渋井 優 (元・日本看護協会 健康政策部)

大木 幸子 (杏林大学 保健学研究科 教授)

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平成 27年度厚生労働科学研究費補助金(健康安全・危機管理対策総合研究事業)

「地域保健に従事する人材の計画的育成に関する研究」

「保健師の人材育成計画策定ガイドライン」

発行日 平成 28年 3月

編集発行 地域保健に従事する人材の計画的育成に関する研究班

研究代表者:奥田 博子

国立保健医療科学院 健康危機管理研究部

〒351-0197 埼玉県和光市南 2-3-6

TEL 048-458-6233(直通) FAX 048-468-7983(共有)