携帯電話と私たちの環境 =資源としてのレアメタル= 化学科 勝又 哲裕 現代文明論2
携帯電話と私たちの環境=資源としてのレアメタル=
化学科 勝又 哲裕
現代文明論2
内容
• 1回目:携帯電話の中の先端科学リチウムイオン電池の化学
• 2回目:生活の中の希少金属携帯電話で使われるレアメタル
• 3回目:携帯電話と私たちの環境
資源としてのレアメタル
前回まで
• 携帯電話の先端化学リチウム電池の話
• 生活の中の希少金属レアメタルの話
携帯電話と環境レアメタルと環境の話
今回は・・・・
資源としてのレアメタル
レアメタル
使用されている量は少しだけど、産業になくてはならない物質(元素) 産業のビタミン
資源量が少なく、偏在している 戦略資源
資源としてのレアメタル
元素の囲い込み 資源ナショナリズムの台頭
レアメタルの将来は・・・・・
レアメタルの環境負荷
ニューカレドニアのニッケル鉱山
ニューカレドニア
ニューカレドニア島
ゴロ ニッケル鉱山
世界自然遺産 ニューカレドニア
世界のニッケルの1割が眠る資源の島
ニューカレドニア観光局 http://www.newcaledonia.jp/
ゴロ周辺の美しい風景
http://doraku.asahi.com/lifestyle/earthphoto/100812.html#photogallery
鉱山の開発による森林破壊
海に近い尾根にあるゴロ・ニッケル鉱山
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「ラテライト」とよばれる赤土の下にニッケル鉱床が広がる
鉱山の開発による森林破壊
むき出しになった赤土
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ゴロ・ニッケル鉱山で出た不要な土砂をためるためにできたダム。
鉱山での諸設備
鉱山の開発による森林破壊
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鉱山の開発による森林破壊
ゴロ・ニッケル鉱山では固有種の苗を栽培、土砂流出を防ぐなどの対策もとられている。
植物の研究所
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レアメテルは環境に冷たい?
レアメタルの特徴産業に不可欠・少しの量で大きな役割
使用量が少ない=環境負荷も小さい?
エコロジカルリュックサックを考える
環境にかかる負荷
1. 生産の場(鉱山)での負荷
2. 選鉱・製錬の場での負荷
3. 製品製造(工場)での負荷
4. 製品利用時(家庭)での負荷
5. 廃棄するときの負荷
環境に負荷をかける機会
レアメタル 1,2の環境負荷が大きい
採掘での負荷って?鉱山では必要な資源だけを選んで掘り出すことはできない
サイコロ位の金(1cm X 1cm X 1cm)
ドラム缶4本程度の鉱石金の場合
ドラム缶4本程度の鉱石を掘るためにはさらに多くの土砂を掘らないと・・・・
多分・・・・・
関与物質総量(エコロジカルリュックサック)
関与物質総量 全物質量 隠れた物質量
関与したすべての物質量鉱石の不要な部分・はぎ取った地表の土砂・・・・
= +
金の場合 : 関与物質総量は物質量の1,100,000倍
10gの金には 1100トンの土砂!!!
環境負荷を考えるには関与物質総量が重要
元素ごとの関与物質総量
鉄亜鉛
アルミニウム
白金 インジウム
希土類元素(レアアース)
レアメタルは関与物質総量が多い
リチウム ニッケル
元素が環境に与える負荷関与物質総量 × 年間消費量 = 1年で掘る土砂の量(年間関与物質総量)
1年間採掘したときにかかる環境への負荷
レアメタルは使用量は少ないが環境にかかる負荷はベースメタルに匹敵
レアメタルは環境に冷たい
使用量は少ないが環境にかかる負荷は大きい
今後、使用量の増大が予想される
ますます環境を壊していく・・・・・
レアメタル
何らかの対策をとらなくては!!
レアメタルのリサイクル
=都市鉱山=
知ってる? “都市鉱山”
都市鉱山:1980年代に提唱されたリサイクル概念
廃棄された家電製品多くの貴金属・レアメタルが含まれている
分別・回収することで資源として再利用
“都市にある鉱山”
携帯電話の場合
経済産業省が2009年11月から2010年2月にかけて実施
「たんすケータイあつめタイ\(^o^)/」
回収された携帯電話 56万7056台
金 22kg銀 79kg銅 5670kgパラジウム 2kg
7700万500万350万300万
8850万!!
すべての電化製品をあわせたら・・・・・・
都市鉱山の埋蔵量
すべての家電製品を合わせるとどれくらいの?
日本に持ち込まれる金属量 ー 日本から持ち出される金属量
= 日本に蓄積している金属量
都市鉱山の埋蔵量
都市鉱山の驚くべき埋蔵量
レアメタル世界埋蔵量(千トン)
都市鉱山蓄積量(千トン)
都市鉱山埋蔵量の割合
埋蔵量国別順位
リチウム 4100 150 3.8% 6
金 426 6.8 16.3% 1
白金 71 2.5 3.6% 3
インジウム 2.8 1.7 61% 1レアアース 88000 300 0.35% 6
コバルト 7000 130 1.9% 6
タンタル 43000 4.4 10.4% 3
物質・材料研究機構プレスリリース http://www.nims.go.jp/news/press/2008/01/p200801110.html
すでに資源大国!!!
地球何個養える?
InTaLiV白金
CoSn鉛鉄銅銀金
物質・材料研究機構プレスリリース http://www.nims.go.jp/news/press/2008/01/p200801110.html
都市鉱山“採掘”への取り組みDOWAホールディングスのリサイクル事業
小坂鉱山(1990年廃坑)銅・亜鉛・鉛など採掘
リサイクル専用の精錬所を建設
企業の紹介
DOWAエコシステム(株) (もともとは同和鉱業という鉱山の会社)
鉱山から金属が取れなくなった・・・
金属精錬の技術を利用して廃棄物からの金属の回収
• 資源リサイクル事業• 廃棄物処理事業• 土壌浄化事業• 環境コンサルティング事業• グリーンテクノロジー企業
ホームページ : http://www.dowa-eco.co.jp/
リサイクルへの障壁1.経済性の問題回収・分別・製錬にかかるコストリサイクル > 原料から製造
2.社会意識の問題分別・回収に対する意識コスト負担に対する意識環境に対する意識
儲かるのか?
儲からないからやらない面倒だからやらない
それでいいの?
元素戦略プロジェクト
元素戦略プロジェクト
希少金属代替材料プロジェクト (経済産業省)元素戦略プロジェクト (文部科学省)
2007年~
レアメタルを使わない代替材料の開発インジウムを使わない透明電極の開発ジスプロジウムを使わない希土類磁石開発タングステンを使わない超硬工具の開発
レアメタルを分離・回収する技術の開発
元素戦略研究
• 酸化アルミニウム膜を使ったメモリーの開発
• 貴金属を使わない排気ガス除去用触媒の開発
• 鉛を使わない強誘電体の開発
• ITO代替としての二酸化チタン系透明導電極材料の開発
• 透明電極向けインジウム代替材料開発
• エコフレンドリーポストリチウムイオン二次電池の創製
• 希土類磁石向けディスプロシウム使用量低減技術開発
• ケイ素酸素系化合物の精密合成による機能設計
• 材料ユビキタス元素協同戦略
・・・・・・・・
などなど、全25のテーマで研究がおこなわれていた
元素戦略・希少金属代替材料開発第4回合同シンポジウムより (http://e-codia.jp/element/index.html)
普遍的な元素(ユビキタス元素)で機能性材料を作ろう
セメントが超伝導に!?東京工業大学 細野グループの取り組み
12CaO・7Al2O3 (C12A7)石灰 焼き物
セメントの原料
現代化学2004年2月号より抜粋
C12A7の特徴
Al・Ca・Oでできたゲージ(かご)
自由に動けるO2-
12CaO・7Al2O3 Ca24Al28O66 = [Ca24Al28O34] 4+- + 2O2-
エレクトロライドになる!!
エレクトロライドとは電子が陽イオンの間に入り、陰イオンのような働きをする物質
不安定ですぐ分解しちゃう・・
[Ca24Al28O64] 4+ ・2O2- + 2Ca[Ca24Al28O64]4+・(4e-) + 2Ca2+O2-
エレクトロライド
C12A7から酸化物イオンを抜くと・・・
現代化学2004年2月号より抜粋
籠の中の電子が伝導する
籠の外へ自由に出入りできる
宮川 仁, 金 起範, 神谷 利夫, 平野 正浩, 細野 秀雄: 表面科学 29, 2 (2008)
電気伝導性が出現する
宮川 仁, 金 起範, 神谷 利夫, 平野 正浩, 細野 秀雄: 表面科学 29, 2 (2008)
これを特別な方法で膜にすると
透明電極になる!!
超伝導にまで・・・
電気抵抗ゼロ=超伝導
Miyakawa et al., J. Am. Chem Soc. (2007), 129, 7270-7271
普遍的な元素から機能性材料を
“いつでも、どこでも、だれにでも”手に入る元素で
機能性材料は開発できる
レアメタルがいらなくなる日がくるかも・・・・