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伊勢湾高潮対策検討業務 調査課 1.概要 本業務は、四日市港、衣浦港の防波堤の高潮防護効果を定量的に評価することを目的として、防波堤の地 形条件を変更した高潮浸水シミュレーションを実施し、港内の波浪・潮位・浸水被害に対する浸水被害の予 測を行った。シミュレーションによって得られた予測計算結果より、現況天端高による計算結果と防波堤が 無い場合についての計算結果の比較を行い、浸水被害に対する防波堤の防護効果を確認した。また、現況天 端高による計算結果と地震による防波堤の沈下を考慮した場合の計算結果について比較することにより、防 波堤の沈下が発生した場合における高潮被害への影響の把握を行った。 2.高潮シミュレーション 高潮浸水シミュレーションは、図-1に示した計算フローに沿って外洋から伊勢湾全域の範囲で高潮推算を 行い、図-2に表す 2港湾周辺で陸域への浸水を予測した。高潮浸水予測モデルは、伊勢湾全域を 600mと 200m 格子で、2 港湾の港湾区域及びその背後を 50m 格子で地形近似し、多領域を同時計算処理した。陸域への浸 水量は、埋立地の岸壁及び防潮堤等の構造物位置で、越流公式に基づく越流量と期待越波流量の算定図に基 づく越波流量から求めた。防護施設からの越波現象を表現するため、エネルギー平衡方程式を基礎式とする 外洋波浪推算、伊勢湾内の浅海波浪推算と港内の波浪変形計算を並行して行った。 3.防波堤天端高の設定 (1) 防波堤天端高の設定ケース 本業務では、防波堤天端高を変更して高潮浸水シミュレ ーションを実施し、防波堤の高潮防護効果を定量的に評価 した。計算を実施したケースの一覧を表-1に示す。 ● 気圧・海上風の推算【①台風モデル】 台風モデルによる波浪及び高潮推算時の外力条件となる気圧・海上風の推算 台風条件の設定(伊勢湾台風) 高潮浸水シミュレーション時の外力となる気圧・海上風推算に必要な台風諸元を設定 台風経路(コース):各時刻の台風中心位置の緯度・経度 台風の中心気圧 :各時刻の台風の中心気圧 移動速度 :各時刻の台風中心の移動速度 台風半径 :各時刻の台風半径 【⑥高潮浸水シミュレーション】 海域の高潮推算と同時に,埋立地及び背後地への浸水計算を実施し,浸水域・浸水深・越 流量・越波量・浸水開始時間等を予測する. 浸水要因1:潮位が天端高を越える(越流)場合の越流量の計算は,本間式を導入 浸水要因2:潮位が天端高以下で越波が生じる場合は合田の越波流量算定図を導入 【⑤高潮推算】 高潮推算モデルの特徴 非線形長波式を採用 密度成層の効果(多層化の効果)による高潮増大を考慮 波浪による水位上昇効果を考慮 港湾区域及び背後地で浸水シミュレーション実施 【④ラディエーション応力】 波浪諸元(波高・周期等) 波浪諸元(波高・周期等) ● 高潮浸水シミュレーション ● 波浪推算(外洋~伊勢湾内)【②スペクトル法】 想定台風の海上風推算結果を外力条件とする波浪推 算を行う.波浪推算は,波の発達と浅海域の波浪変形(屈 折・浅水・砕波・回折変形)を同時に計算可能なスペク トル法浅海波浪推算法を採用 ● 波浪推算(名古屋港内)【③パラメータ法】 想定台風の海上風推算結果を外力条件とする港内(閉鎖海域)の 波浪推算を行う.港内波浪は,強風により発生する風波成分と港外 からの侵入波 の合成波として算出 【⑦波浪変形計算】 図-2 高潮浸水シミュレーションの対象港湾 図-1 高潮浸水シミュレーションの計算フロー 表-1 シミュレーション実施ケース 57
6

伊勢湾高潮対策検討業務伊勢湾高潮対策検討業務 調査課 1.概要...

Jan 28, 2021

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  • 伊勢湾高潮対策検討業務

    調査課

    1.概要

    本業務は、四日市港、衣浦港の防波堤の高潮防護効果を定量的に評価することを目的として、防波堤の地

    形条件を変更した高潮浸水シミュレーションを実施し、港内の波浪・潮位・浸水被害に対する浸水被害の予

    測を行った。シミュレーションによって得られた予測計算結果より、現況天端高による計算結果と防波堤が

    無い場合についての計算結果の比較を行い、浸水被害に対する防波堤の防護効果を確認した。また、現況天

    端高による計算結果と地震による防波堤の沈下を考慮した場合の計算結果について比較することにより、防

    波堤の沈下が発生した場合における高潮被害への影響の把握を行った。

    2.高潮シミュレーション

    高潮浸水シミュレーションは、図-1に示した計算フローに沿って外洋から伊勢湾全域の範囲で高潮推算を

    行い、図-2に表す 2港湾周辺で陸域への浸水を予測した。高潮浸水予測モデルは、伊勢湾全域を 600m と 200m

    格子で、2 港湾の港湾区域及びその背後を 50m 格子で地形近似し、多領域を同時計算処理した。陸域への浸

    水量は、埋立地の岸壁及び防潮堤等の構造物位置で、越流公式に基づく越流量と期待越波流量の算定図に基

    づく越波流量から求めた。防護施設からの越波現象を表現するため、エネルギー平衡方程式を基礎式とする

    外洋波浪推算、伊勢湾内の浅海波浪推算と港内の波浪変形計算を並行して行った。

    3.防波堤天端高の設定

    (1) 防波堤天端高の設定ケース

    本業務では、防波堤天端高を変更して高潮浸水シミュレ

    ーションを実施し、防波堤の高潮防護効果を定量的に評価

    した。計算を実施したケースの一覧を表-1に示す。

    ● 気圧・海上風の推算【①台風モデル】

    台風モデルによる波浪及び高潮推算時の外力条件となる気圧・海上風の推算

    ● 台風条件の設定(伊勢湾台風)

    高潮浸水シミュレーション時の外力となる気圧・海上風推算に必要な台風諸元を設定

    ○ 台風経路(コース):各時刻の台風中心位置の緯度・経度

    ○ 台風の中心気圧 :各時刻の台風の中心気圧

    ○ 移動速度 :各時刻の台風中心の移動速度

    ○ 台風半径 :各時刻の台風半径

    【⑥高潮浸水シミュレーション】

    海域の高潮推算と同時に,埋立地及び背後地への浸水計算を実施し,浸水域・浸水深・越

    流量・越波量・浸水開始時間等を予測する.

    浸水要因1:潮位が天端高を越える(越流)場合の越流量の計算は,本間式を導入

    浸水要因2:潮位が天端高以下で越波が生じる場合は合田の越波流量算定図を導入

    【⑤高潮推算】

    高潮推算モデルの特徴

    ○ 非線形長波式を採用

    ○ 密度成層の効果(多層化の効果)による高潮増大を考慮 ○ 波浪による水位上昇効果を考慮

    港湾区域及び背後地で浸水シミュレーション実施

    【④ラディエーション応力】 波浪諸元(波高・周期等)

    波浪諸元(波高・周期等)

    ● 高潮浸水シミュレーション

    ● 波浪推算(外洋~伊勢湾内)【②スペクトル法】

    想定台風の海上風推算結果を外力条件とする波浪推

    算を行う.波浪推算は,波の発達と浅海域の波浪変形(屈

    折・浅水・砕波・回折変形)を同時に計算可能なスペク

    トル法浅海波浪推算法を採用

    ● 波浪推算(名古屋港内)【③パラメータ法】

    想定台風の海上風推算結果を外力条件とする港内(閉鎖海域)の

    波浪推算を行う.港内波浪は,強風により発生する風波成分と港外

    からの侵入波の合成波として算出

    【⑦波浪変形計算】

    図-2 高潮浸水シミュレーションの対象港湾 図-1 高潮浸水シミュレーションの計算フロー

    表-1 シミュレーション実施ケース

    57

  • (2) 現況天端高の天端高設定

    衣浦港・四日市港における防波堤の現況天端高は、既往の測量データ資料に基づいて設定した。図-3は現

    況天端高の状況を示したものである。

    図-3 衣浦港・四日市港における現況天端高

    (3) 地震による防波堤沈下時の天端高設定

    防波堤沈下時の天端高は、既往調査で解析された沈下量をもとに設定した。図-4は、防波堤の沈下量を図

    示したものである。ケース②では、防波堤の基準高さを計画天端高として天端高を沈下させた。また、ケー

    ス④では現況天端高からケース②と同じ沈下量で沈下した場合を想定し、防波堤の基準高さを現況天端高と

    して天端高を沈下させた。

    図-4 地震による防波堤沈下量

    4.衣浦港における防波堤効果の検討

    衣浦港について、表-1に示した 4 ケースの高潮浸水シミュレーションを実施した。台風条件は伊勢湾台風

    を想定し、潮位条件は海岸保全施設の計画条件である台風期平均満潮位(T.P.+0.90m)とした。

    (1) 防波堤の有無による比較

    実施したシミュレーションのうち、現況天端高(ケース①)と防波堤なし(ケース③)のケースについて

    比較を行い、防波堤による高潮防護効果について検討を行った。図-5および図-6は、現況天端高と防波堤な

    しのケースにおける最大潮位と波高の平面分布である。防波堤が無い場合、港内の最大潮位は現況天端高の

    ケースより中央ふ頭南側で 3cm、中央ふ頭北側で 2cm 高くなる。港内の波高は、防波堤から中央ふ頭付近ま

    では現況天端高のケースに比べて高く、地点 1では現況天端高のケースより+0.18m となるが、中央ふ頭より

    港奥では現況天端高のケースと明確な違いはない。

    0.0

    天端高2.0 (+4.0m)

    4.0 (+2.0m)

    0 (m)2500 2800

    沈下

    量(m

    300 1100 1325

    天端高+6.0m 天端高+6.0m

    +3.54m

    (↓2.46m)

    +4.29m

    (↓1.71m)

    +1.17m

    (↓4.83m)

    +5.76m

    (↓0.24m)+5.71m

    (↓0.29m)

    衣浦港

    2450 0 0 514.10m

    0.0

    1.0

    2.0

    0.0

    1.0

    300

    護岸延長(m)

    4.0沈

    下量

    (m

    防波堤延長(m)

    1700 300

    3.0

    2100

    2.0

    3.0

    沈下

    量(m

    ③SD+置換砂(-16m)断面区間

    ②置換砂(-19m)断面区間

    ①置換砂(-12m)断面区間

    ④ブロック式断面区間

    ⑤ケーソン式断面区間

    +6.57m

    (↓0.73m) +7.04m

    (↓0.26m)

    防波堤天端高+5.8m

    防波堤天端高+7.3m

    +2.99m

    (↓2.81m)

    防波堤天端高+7.3m

    +5.70m (1.60m↓)

    +3.18m

    (2.62m↓)

    +4.20m (1.60m↓)

    四日市港

    霞ヶ浦防波堤 D.L.+5.48~6.11m

    東防波堤 D.L.+5.42~7.28m

    旭防波堤 D.L.+5.84~6.78m

    計画天端高 D.L.+5.80m

    計画天端高 D.L.+7.30m

    計画天端高 D.L.+6.50m四日市港西防波堤 D.L.+5.29~6.16m

    東防波堤 D.L.+5.59~5.98m

    計画天端高 D.L.+6.00m

    衣浦港

    58

  • 図-7は、最大浸水深の平面分布である。防波堤がな

    い場合、港口周辺の波高が高いために越波による浸水

    は増加する。また、港内の潮位偏差が増大することか

    ら、越流による浸水量についても増加する。その結果、

    防波堤が無い場合の最大浸水深は防波堤がある場合と

    比較して地点 1 では+3cm、地点 2 では+4cm、地点 3 で

    は+10cm と高くなり、防波堤が存在することによる浸

    水被害の低減効果が確認された。

    (2) 防波堤の沈下による影響

    現況天端高(ケース①)と防波堤沈下(ケース④)のケースについて比較を行い、防波堤の沈下が高潮被

    害に与える影響について検討を行った。図-8および図-9は、現況天端高と防波堤沈下のケースにおける最大

    潮位と波高の平面分布である。防波堤が沈下した場合は、西防波堤は高潮発生時に全て水没する。また、中

    央防波堤の西側部分についても、高潮発生前の時点(台風期平均満潮位)で水没する。その結果、港内の最

    大潮位は現況天端高のケースより中央ふ頭南側で 1cm、中央ふ頭北側で 1cm 上昇する。港内の波高において

    も、防波堤が水没する影響により開口部が大きくなることから、現況天端高のケースより高くなる。防波堤

    から中央ふ頭付近までは、防波堤の沈下の影響を大きく受けるため、地点 1 では現況天端高のケースより

    +0.18m となるが、中央ふ頭より港奥では影響は小さく明確な違いは発生しない。

    図-10は、最大浸水深の平面分布である。防波堤がない場合、港口周辺の波高が高いために越波による浸水

    地点 1 0.87m (現況差:+0.16m)

    地点 2 0.40m (現況差:0.00m)

    防波堤天端高 西防波堤:D.L.+3.28~4.07m 東防波堤:D.L.+0.76~5.71m

    地点 1 4.62m (現況差:+0.01m)

    地点 2 5.14m (現況差:+0.01m)

    【D.L.基準】

    防波堤水没箇所

    地点 1 4.61m

    地点 2 5.13m

    【D.L.基準】 防波堤天端高(格子設定値) 西防波堤:D.L.+5.29~6.16m 東防波堤:D.L.+5.59~5.98m

    防波堤なし

    地点 1 4.64m (現況差:+0.03m)

    地点 2 5.15m (現況差:+0.02m)

    【D.L.基準】

    図-6 衣浦港・有義波高(防波堤の有無の比較)

    地点 1 0.71m

    地点 2 0.40m

    地点 1 0.89m (現況差:+0.18m)

    地点 2 0.40m (現況差:0.00m)

    図-5 衣浦港・最大潮位(防波堤の有無の比較)

    図-7 衣浦港・最大浸水深(防波堤の有無の比較)

    地点 1 4.61m

    地点 2 5.13m

    【D.L.基準】 防波堤天端高(格子設定値) 西防波堤:D.L.+5.29~6.16m 東防波堤:D.L.+5.59~5.98m

    図-8 衣浦港・最大潮位(防波堤沈下の比較)

    地点 1 0.71m

    地点 2 0.40m

    図-9 衣浦港・有義波高(防波堤沈下の比較)

    堤外地 堤内地 合計

    最大浸水面積(ha) 596 41 637

    最大浸水量(千m3) 4,310 283 4,593

    :海岸保全施設

    浸水面積・浸水量集計範囲

    地点 10.77m

    地点 21.39m

    地点 30.01m

    ケース①

    堤外地 堤内地 合計

    最大浸水面積(ha) 662 64 726

    最大浸水量(千m3) 4,639 345 4,984

    :海岸保全施設

    浸水面積・浸水量 集計範囲

    地点 1 0.80m (+3cm)

    )

    地点 2 1.43m (+4cm)

    地点 3 0.11m

    (+10cm)

    ケース③

    59

  • は増加する。また、わずかではあるが港内の潮位偏差

    が増大することから、越流による浸水量についても増

    加する。その結果、防波堤が無い場合の最大浸水深は

    防波堤がある場合と比較して地点 1 では+1cm、地点 2

    では+1cm、地点 3では+8cm と高くなることから、防波

    堤の沈下により浸水被害が拡大する可能性が懸念され

    る。

    (3) 衣浦港における防波堤効果

    防波堤による高潮のピークカット効果を

    確認するため、現況天端高(ケース①)、

    防波堤なし(ケース③)、防波堤沈下(ケ

    ース④)の各ケースの水位を図-11に整理し

    た。防波堤によるピークカット効果は、防

    波堤なしのケースと現況天端高のケースを

    比べると、3~4cmの低減効果が確認される。

    防波堤沈下ケースと現況ケースでは開口部

    付近で 2cm 程度のピークカット効果である

    が、港内では平均的に 1cm 程度である。

    また、衣浦港内の海岸線の最大水位およ

    び最大波高について、防波堤の影響を最も

    受けやすい防波堤の開口部付近である 1 号

    地地区から 7 号地地区において、各ケース

    の結果を整理した結果が図-12である。最大

    水位は、防波堤がない場合が高いもののそ

    の差はわずかであるが、最大波高は現況天

    端高より防波堤沈下、防波堤なしのケース

    の方が高くなる。以上のように、衣浦港に

    おける防波堤の高潮浸水被害に対する低減効果は、最大水位のピークカット効果よりも港内波高が抑えられ

    ることにより越波流量が減少することの方が大きいものと考えられる。

    5.四日市港における防波堤効果の検討

    四日市港について、表-1に示した 4 ケースの高潮浸水シミュレーションを実施した。台風条件は伊勢湾台

    風を想定し、潮位条件は海岸保全施設の計画条件である台風期平均満潮位(T.P.+1.05m)とした。

    (1) 防波堤の有無による比較

    実施したシミュレーションのうち、現況天端高(ケース①)と防波堤なし(ケース③)のケースについて

    比較を行い、防波堤による高潮防護効果について検討を行った。なお、防波堤なしのケースでは、東防波堤

    および旭防波堤が存在しない場合を対象として計算を実施している。図-13および図-14は、現況天端高と防

    波堤なしのケースにおける最大潮位と波高の平面分布である。防波堤が無い場合、港内の最大潮位は現況天

    端高のケースより東防波堤背後で 2cm、霞ヶ浦防波堤背後で 1cm とわずかに低下する。港内の波高は、防波

    堤が無いことにより、東防波堤背後の波高は、現況天端高と比較して 1.91m 高くなる。

    図-10 衣浦港・最大浸水深(防波堤沈下の比較)

    データ抽出点

    図-11 衣浦港防波堤における高潮ピークカットの検証

    抽出範囲

    堤外地 堤内地 合計

    最大浸水面積(ha) 617 48 665

    最大浸水量(千m3) 4,401 304 4,705

    :海岸保全施設

    浸水面積・浸水量 集計範囲

    地点 1 0.78m (+1cm)

    )

    地点 2 1.40m (+1cm)

    地点 3 0.09m (+8cm)

    ケース④

    堤外地 堤内地 合計

    最大浸水面積(ha) 596 41 637

    最大浸水量(千m3) 4,310 283 4,593

    :海岸保全施設

    浸水面積・浸水量集計範囲

    地点 10.77m

    地点 21.39m

    地点 30.01m

    ケース①

    0.0

    1.0

    2.0

    3.0

    4.0

    5.0

    6.0

    水位

    ,天

    端高

    (m)

    1号地~7号地地区 天端高(T.P.基準) 現況天端高 防波堤沈下(計画基準)

    防波堤なし 防波堤沈下(現況基準)

    0.0

    1.0

    2.0

    3.0

    4.0

    5.0

    6.0

    波高

    ,天

    端高

    (m)

    1号地~7号地地区 天端高(T.P.基準) 現況天端高 防波堤沈下(計画基準)

    防波堤なし 防波堤沈下(現況基準)

    7 号地地区 5 号地地区 3 号地地区1 号地地区

    7 号地地区 5 号地地区 3 号地地区1 号地地区

    最大水位

    最大波高

    天端高(T.P.基準) 現況天端高防波堤沈下(計画基準) 防波堤なし

    防波堤沈下(現況基準)

    天端高(T.P.基準) 現況天端高防波堤沈下(計画基準) 防波堤なし

    防波堤沈下(現況基準)

    図-12 衣浦港防波堤背後の海岸線における波高・水位

    2.4

    2.6

    2.8

    3.0

    3.2

    3.4

    3.6

    3.8

    4.0

    4.2

    4.4

    4.6

    -8,000.0 -4,000.0 0.0 4,000.0 8,000.0 12,000.0 16,000.0

    最大

    潮位

    (T.P

    .:m)

    防波堤開口部からの距離(m)

    現況天端高 防波堤沈下 防波堤なし

    防波堤開口部

    港外側 港内側

    中央ふ頭

    -0.05

    -0.04

    -0.03

    -0.02

    -0.01

    0.00

    0.01

    0.02

    0.03

    0.04

    0.05

    -8,000.0 -4,000.0 0.0 4,000.0 8,000.0 12,000.0 16,000.0

    潮位

    差(m

    防波堤開口部からの距離(m)

    (防波堤沈下-現況天端高) (防波堤なし-現況天端高)

    防波堤開口部 中央ふ頭

    港外側 港内側

    現況天端高 防波堤沈下 防波堤なし

    (防波堤沈下-現況天端高) (防波堤なし-現況天端高)

    60

  • 図-15は、最大浸水深の平面分布である。防波堤がな

    いケースは、東防波堤が無いことにより波高が高いた

    め、越波による浸水が増加する。その結果、霞ヶ浦地

    区および四日市地区の浸水範囲が拡大し、現況天端高

    のケースと比較して、霞ヶ浦地区の地点 3 の浸水深は

    +14cm、四日市地区の地点 2の浸水深は+48cm と高くな

    る。また、四日市地区では、現況天端高では堤内地の

    浸水は発生しないが、防波堤が無い場合では堤内地に

    も広範囲に浸水が発生する結果となるなど、防波堤が

    設置されていることによる浸水被害の低減効果が確認

    された。

    (2) 防波堤の沈下による影響

    現況天端高(ケース①)と防波堤沈下(ケース④)のケースについて比較を行い、防波堤の沈下が高潮被

    害に与える影響について検討を行った。図-16および図-17は、現況天端高と防波堤沈下のケースにおける最

    大潮位と波高の平面分布である。防波堤沈下のケースでは、東防波堤の北側は高潮偏差のピーク前後で水没

    するため、高潮ピーク時の開口部が広くなる。その結果、東防波堤背後の波高は、現況天端高と比較し 0.36m

    高くなるが、港内の最大潮位ではほとんど差は生じない。

    地点 1 1.36m (現況差+0.36m)

    地点 2 2.42m (現況差 0.00m)

    【D.L.基準】

    地点 1 5.24m (現況差:0.00m)

    地点 2 5.35m (現況差:0.00m)

    防波堤天端高(格子設定値)霞ヶ浦防波堤:D.L.+5.48~ 6.11m 東防波堤:D.L.+2.61~5.68m 旭防波堤:D.L.+5.58~6.52m

    防波堤水没箇所

    【D.L.基準】

    地点 1 5.24m

    地点 2 5.35m

    防波堤天端高(格子設定値) 霞ヶ浦防波堤:D.L.+5.48~ 6.11m 東防波堤:D.L.+5.42~7.28m 旭防波堤:D.L.+5.84~6.78m

    【D.L.基準】

    地点 1 5.22m (現況差:-0.02m)

    地点 2 5.34m (現況差:-0.01m)

    防波堤天端高(格子設定値) 霞ヶ浦防波堤:D.L.+5.48~ 6.11m

    地点 11.00m

    地点 2 2.42m

    地点 1 2.91m (現況差+1.91m)

    地点 2 2.42m (現況差 0.00m)

    図-13 四日市港・最大潮位(防波堤の有無の比較) 図-14 四日市港・有義波高(防波堤の有無の比較)

    図-15 四日市港・最大浸水深(防波堤の有無の比較)

    【D.L.基準】

    地点 1 5.24m

    地点 2 5.35m

    防波堤天端高(格子設定値) 霞ヶ浦防波堤:D.L.+5.48~ 6.11m 東防波堤:D.L.+5.42~7.28m 旭防波堤:D.L.+5.84~6.78m

    地点 11.00m

    地点 2 2.42m

    図-16 四日市港・最大潮位(防波堤沈下の比較) 図-17 四日市港・有義波高(防波堤沈下の比較)

    堤外地 堤内地 合計

    最大浸水面積(ha) 474 186 660

    最大浸水量(千m3) 3,055 785 3,840

    地点 11.59m

    地点 20.00m

    地点 31.66m

    地点 41.21m

    川越地区

    浸水面積・浸水量集計範囲

    :海岸保全施設

    四日市地区

    ケース①

    堤外地 堤内地 合計

    最大浸水面積(ha) 502 368 870

    最大浸水量(千m3) 3,548 2,054 5,602

    :海岸保全施設

    浸水面積・浸水量 集計範囲

    四日市地区

    霞ヶ浦地区

    川越地区

    地点 11.58m(-1cm)

    地点 2 0.48m

    (+48cm)

    地点 31.80m

    (+14cm)

    地点 41.21m

    ケース③

    61

  • 図-18は、最大浸水深の平面分布である。防波堤沈下

    のケースでは、東防波堤背後の波高が高くなることに

    より、越波による浸水が増加する。その結果、防波堤

    が沈下する場合の最大浸水深は現況天端高のケースと

    比較して、霞ヶ浦地区の地点 3の浸水深は+3cm と増加

    する。また、四日市地区では、防波堤が沈下した場合

    では堤内地へのわずかな浸水が発生することから、防

    波堤の沈下により浸水被害が拡大する可能性が懸念さ

    れる。

    (3) 四日市港における防波堤効果

    四日市港の海岸線の最大水位および最

    大波高について、防波堤沈下および防波

    堤が無い場合の検討対象とした東防波堤

    の背後となる四日市地区において各ケー

    スの結果を整理した結果が図-19である。

    最大水位においてほとんど差はみられな

    いが、最大波高は現況天端高より防波堤

    沈下、防波堤なしのケースの方が高くな

    る。従って、四日市港における防波堤の

    高潮浸水被害に対する低減効果は、港内

    波高が抑えられることにより越波流量が

    減少することによるものと考えられる。

    7.まとめ

    衣浦港および四日市港について、それぞれ 4 つのケースについて高潮浸水予測計算を実施し、浸水状況を

    把握した。防波堤効果の整理として、現況天端高による計算結果(ケース①)と、防波堤沈下(ケース②お

    よび④)と防波堤が無い場合(ケース③)による計算結果の比較を行った。以下に、主要な結果をまとめる。

    【衣浦港】

    ① 高潮防波堤による最大潮位の低減効果が確認された。

    ② 中央ふ頭南においては、防波堤による波高の低減効果が確認された。中央ふ頭より湾奥については、

    防波堤が無い場合においても波高が小さいことから低減効果は現れなかった。

    ③ 高潮防波堤による、浸水面積・浸水量および浸水深の低減効果が確認された。

    【四日市港】

    ① 港内の最大潮位は、防波堤の有無や沈下による明確な差は現れない。

    ② 港内の波高については、防波堤による大きな低減効果が確認された。

    ③ 波高の低減効果により越波流量についても減少することから、浸水面積および浸水量、浸水深の低減

    効果が確認された。

    0.0

    2.0

    4.0

    6.0

    8.0

    水位

    ,天

    端高

    (m)

    四日市地区 天端高(T.P.基準) 現況天端高 防波堤沈下(計画基準)

    防波堤なし 防波堤沈下(現況基準)

    0.0

    2.0

    4.0

    6.0

    8.0

    波高

    ,天

    端高

    (m)

    四日市地区 天端高(T.P.基準) 現況天端高 防波堤沈下(計画基準)

    防波堤なし 防波堤沈下(現況基準)

    図-18 四日市港・最大浸水深(防波堤沈下の比較)

    堤外地 堤内地 合計

    最大浸水面積(ha) 474 186 660

    最大浸水量(千m3) 3,055 785 3,840

    地点 11.59m

    地点 20.00m

    地点 31.66m

    地点 41.21m

    川越地区

    浸水面積・浸水量集計範囲

    :海岸保全施設

    四日市地区

    ケース①

    堤外地 堤内地 合計

    最大浸水面積(ha) 486 203 689

    最大浸水量(千m3) 3,138 797 3,935

    :海岸保全施設

    浸水面積・浸水量 集計範囲

    四日市地区

    霞ヶ浦地区

    川越地区

    地点 11.58m

    地点 2 0.05m (+5cm)

    地点 31.69m(+3cm)

    地点 41.21m

    ケース④

    抽出範囲

    図-19 四日市港・防波堤背後の海岸線における波高・水位の比較

    最大水位

    最大波高

    天端高(T.P.基準) 現況天端高防波堤沈下(計画基準) 防波堤なし

    防波堤沈下(現況基準)

    天端高(T.P.基準) 現況天端高防波堤沈下(計画基準) 防波堤なし

    防波堤沈下(現況基準)

    62

    表紙はじめに目次平成22年業務内容設計分野平成22年度 管内防波堤安定検討業務津松阪港海岸保全施設(阿漕裏・御殿場地区、伊倉津地区、栗新町屋地区)概略検討業務四日市港霞ヶ浦南ふ頭岸壁(W26)劣化状況調査

    防災分野港湾施設機能維持方策検討業務港湾地域地震防災対策検討業務港湾における波浪・高潮防災対策に関する研究~漂流物の挙動推定に関する研究~港湾らおける波浪・高潮対策に関する検討業務~風場の推定に関する研究~伊勢湾高潮対策検討業務

    環境分野浮遊ゴミ移動予測システム高度化業務環境施策効果検討業務

    平成22年度 対外発表論文漂流物による建物破壊や道路閉塞を考慮した津波被害推定上部斜面堤 堤頭部周辺における消波工及び背面マウンド被覆材の安定特性について中部地方整備局管内におけるレベル2地震動の効率的な算定と施設の残存耐力評価手法について「伊勢湾・三河湾における海洋短波レーダーを用いた表層平均流に関する研究港湾施設の残存耐力評価指標の検討潜堤周辺における津波の流況特性についてPRACTICAL MODEL TO ESTIMATE DRIFT MOTION OF VESSELS BY TSUNAMI WITH CONSIDERATION OF COLLIDINGWITH STRUCTURES AND STRANDING伊勢湾再生の新たな展開 ~海の真実を解き明かす~

    平成22年度 主な行事平成22年度名古屋港湾空港技術調査事務所 組織体制おわりに裏表紙