ブマスクによる人工呼吸、胸骨圧迫、酸素投与などを習得。続いて「女性傷病者の評価」をテーマに、女性傷病者の観察や妊婦外傷への対応、妊婦の心肺蘇生などを学んだ。インストラクターは「女性に処置を行う際は診察時にプライバシーを確保し、本人の同意を得てから開始してください」、「妊婦の心肺蘇生法は一般成人の救命処置に準拠するのが原則です」などポイントを解説。また、大島病院の救急車を用いて、救急車内分娩の対応などに関しても受講者はレクチャーを受けた。この後、学んだことを振り返り、適切な情報伝達ができるかどうかを確認するため、いくつかのシナリオに沿った症例検討を実施。患者・家族役に扮したキャンディデイトからの電話を受講者が受け、搬送先に伝えるべき情報を聞き出したり、必要な処置を検討したりした。最後に筆記試験と実技試験を実施、受講者全員が無事合格。「喜界島では空港での出産事例もあったと聞いています。今後も奄美群島内で定期的に開催していきたいと考えています」と小田切部長は展望を語っている。受講した大島病院の坂口有希子看護師は「これまで分娩介助など経験したことがありませんでしたが、実際の事例に遭遇したら今回学んだことを生かしたいと思います」と意欲的。大島地区消防組合龍郷消防分署の栁昭栄・救急救命士は「産科救急の事案に対応する際の自信をつけることができました。リアルな人形などを用いた演習によりイメージをつかむことができました」と充実した表情を浮かべる。大島地区消防組合笠利消防分署の泉成海・救急隊員は「成人とは異なる新生児の蘇生法など学ぶことができ、とても勉強になりました」と話している。キルの向上を感じます」と手応えを示す。12 月2日のプロバイダーコースでは、まず「分娩介助」をテーマに、分娩介助手技や臍さいたい帯切断、胎盤娩べん出しゅつ、分娩後大出血、肩甲難産(胎児の頭部が出た後、前の肩[前在肩甲]が母体の恥骨にひっかかって娩出困難になること)の対処法などを学んだ。演習では「娩出後に新生児が落ちないよう、頭から手を離さないでください」、「出産後は時間と場所を確認するようにしてください。救急車内で出産した場合も必ず住所を確認し記録してください」といったアドバイスが飛んだ。次に「新生児蘇生」では、新生児を模した人形を用い、新生児蘇生法アルゴリズムに基づき、蘇生の初期処置(保温、体位保持、気道開通、皮膚乾燥、刺激)や、呼吸・心拍の評価、バッグバル病院産婦人科の小田切幸平部長は「今回のインストラクターコースで、8人のアシスタントがキャンディデイトに昇格しました。今後、奄美群島出身のインストラクターを増やし、奄美群島内からも、できるだけ講師を輩出していきたい」と人材育成にも注力していく意向だ。続けて「母子の生命にかかわる1分1秒を争うのが産科救急です。迅速で適切な対処に加え、救急隊員と医療機関との間でのスムーズな情報伝達が欠かせません。これまで数回開催してきた奄美大島や徳之島では、医療スタッフ・救急隊員のスを務めたのは、石川県や東京都、沖縄県、大阪府など鹿児島県内外から集まった産婦人科医や救急科医、救急救命士、看護師、助産師。インストラクターやキャンディデイト(インストラクター候補者)、アシスタントといった資格を有する。今回は奄美群島で初めて、通常の受講者向けに開催するプロバイダーコースに加え、プロバイダーコースでの講師の担い手を育成するインストラクターコースを、前日の12 月1日に開催した。インストラクターを養成奄美群島出身増やしたいプロバイダーコースディレクターを務めた名瀬隊員も、分娩を含む産科救急の場面に遭遇した際に的確な対応を行い、妊産婦さんや新生児の死亡・後遺症を防ぐためのスキルを身に付ける重要性が高まっている。2018年12 月2日に開催された「BLSOin 奄美2018」で講師BLSOは産科救急の患者さんに遭遇する可能性がある救急隊員や看護師、救急医、総合診療医などを主な対象として開催されている。筆記試験と実技試験に合格すると、米国家庭医学会とALSO Japan から5年間有効な認定証を受けることができる。産科医や分娩施設の不足は全国的な課題だ。医療資源の少ない離島・へき地では、より深刻な状況となっているのが現実。こうしたことから産科以外の医療スタッフや救急名瀬徳洲会病院(鹿児島県)は「BLSOin 奄美2018」を開催した。会場は鹿児島県立大島病院救命救急センター。BLSO(Basic Life Support in Obstetrics )は病院外での産科救急の処置法を学ぶトレーニングコースで、奄美群島での開催は今回で7回目。奄美大島内の救急救命士や救急隊員、看護師ら計23 人が受講し、講義や、リアルなマネキンや胎盤モデルを用いた演習を通じ、病院外での分ぶんべん娩介助、新生児蘇生、女性傷病者の評価などを学んだ。与論徳洲会病院(同)を会場に「与論BLSO」も開催されている。徳洲会グループは、グループ初の陽 子線治療などに取り組む「湘南鎌倉 総合病院先端医療センター」の建設 工事に着工する。湘南鎌倉総合病院 (神奈川県)の南西側の隣接地に地下 1階地上4階建ての建物をつくる計 画で、2019年5月に着工し、20年9月 の開設を目指す。 同センターは、がん医療に関して 化学療法や放射線治療の標準治療は もちろん、先進的な臨床・研究施設 として、陽子線治療やBNCT(ホウ素 中性子捕捉療法)、RI (放射性同位元 素)内用療法、PET(陽電子放射断層 撮影)を用いた創薬研究・支援など に取り組む方針だ。 陽子線治療装置やBNCTは1階に配 置する。陽子線は体表面から深い位置でエネルギー が急速に高まり、その後、急速に低下する。狙った病 変に強い線量を効率良く集中し、正常組織へのダメー ジを軽減できるのが特徴だ。18年4月の診療報酬改定 で保険適用が拡大し、現在、頭 とうけい 頚部がん、骨軟部がん、 前立腺がん、小児がんの一部が保険診療となっている。 BNCTは、がん細胞に取り込まれやすいホウ素化合 物を利用した治療法。ホウ素化合物を静注して中性子 を照射するとα線が発生、がん細胞を内部から破壊す る。国内では、まだ未承認の治療法で、現在は臨床 試験や治験が行われている段階だ。 地下1階と地上1階にはPET検査装置や、PET検査の 診断薬(ブドウ糖にPET用放射性物質を標識した診断 薬=FDGと他のさまざまなPET診断薬)を作製する設備 を導入。PET検査装置は、治療効果の判定や治験参加 者のスクリーニング(選別)などにも活用できる。 またPETを用い、医薬品開発の早期の段階に、新薬 の候補物質をヒトに低用量投与し、薬物動態を調べる マイクロドーズ試験(新薬として見込みのある物質を絞 り込む試験)も視野に入れ、創薬研究・支援に取り組む。 2階にはCT(コンピュータ断層撮影)、MRI ( 磁気共鳴 画像診断)、マンモグラフィー(乳房X線撮影)、内視鏡 室などを備えた健診センターを設置し、将来的には遺 伝子診断も取り入れる。3階には医薬品・医療 機器開発の早期探索臨床試験・第Ⅰ相試験(フ ェーズⅠ)などを行う研究施設や外来化学療法 室を配置。4階は幹細胞などを用いた再生医療 設備を入れる。 RI内用療法は、RIを組み込んだ薬剤を、がん 細胞に選択的に取り込ませて攻撃する治療法。 とくにα線核種を用いた RI内用療法は放射線の エネルギーが強く、がん細胞に大きなダメージ を与えること が で き る。 さらに飛程 距離が短い ため他の細 胞への影響 を抑えられ るなどメリッ トがある。 5月に先端医療センター着工湘南鎌倉総合病院先端医療センター完成予 想図(赤線で囲んだ部分) 陽子線装置など導入新春特別企画徳洲会この1年㊥演習にも熱が入る(写真は分娩介助の様子) 救急救命士や救急隊員、看護師が参加 「奄美群島出身のインス トラクターを増やしてい きたい!」と小田切部長 院外産科救急の処置学ぶ 名瀬病院 BLSO in 奄美2018開催 開催年月 主催 会場 2012年12月 名瀬徳洲会病院 奄美大島(名瀬徳洲会病院) 2013年 6月 NPO法人親子ネットワークがじゅまるの家 徳之島(徳之島町保健センター) 2014年 2月 名瀬徳洲会病院 奄美大島(大島支庁) 2015年 3月 名瀬徳洲会病院 徳之島(農協会館) 2016年 9月 徳之島の将来の医療と福祉を考える会 徳之島(天城町保健センター) 2018年11月 NPO 法人親子ネットワークがじゅまるの家 与論島(与論徳洲会病院) 2018年12月 名瀬徳洲会病院 奄美大島(鹿児島県立大島病院) 奄美群島での BLSO 開催状況 徳 洲 新 聞 徳 洲 新 聞 生 い の ち 命だけは平等だ ❶ 平成 31 年 1 月 21 日 月曜日│No. 1168 1 月21 日 月曜日 発行:一般社団法人徳洲会 〒102-0074 東京都千代田区九段南1-3-1 東京堂千代田ビル14階 TEL:03-3262-3133 制作:一般社団法人徳洲会 広報部 〒102-0074 東京都千代田区九段南1-3-1 東京堂千代田ビル14階 TEL:03-3288-5580 FAX:03-3263-8125 Email:news@tokushukai.jp No. 1168 21/JAN. 2019 TOKUSHUKAI MEDICAL GROUP NEWS ALL LIVING BEINGS ARE CREATED EQUAL