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次世代電力需給プラットフォーム構築に向けて ー電力インフラのDigital Transformationー
電力中央研究所 エネルギーイノベーション創発センター(ENIC) 研究参事 浅野 浩志
配電システムユニット ユニットリーダー上村 敏
2018年5月28日 第7回E-Tech研究会
配電部門変化の論点とDX:能動化する需要家と協調。データの収益化
電力インフラのデジタル化技術の事例 電力需給PFとは NY州の事例:州政府が主導するPF PF構築に向けたシミュレータ群・ツール
資料4
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論点に関連して
電力小売全面自由化、再エネ導入拡大に伴い、配電・小売・サービス分野はどう変化し、何が求められるか。
配電の変化:分散型電源(PV)などDERの活用に向けて、地点別の接続価値・費用の可視化、つながる価値を訴求。将来、ローカル取引の技術的実現、ローカル市場運営の可能性
再エネの大量導入(電源の分散化・広域化)に伴い配電事業のあり方はどう変化するか。
電源の分散化:自家消費(prosumer)モデルへの対応、分散型蓄電池活用など
広域化:DER普及に伴い上位系統との連携強化を伴う
その将来像を実現するために、配電事業者に求められる技術・ノウハウ(特にデジタル化に関連して)とは。何が足りないのか。
DER管理システム(発電量、配電電圧・潮流リアルタイム監視)
需要データの解析
センサの面的整備
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次世代配電ネットワーク変革のドライバー:4つのシフト
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デマンド (人口動態、省エネ)
エネルギー (低炭素電化社会)
バリュー (モノからコト)
デジタル
需要縮減 自由化の進展
プロシューマ化 再エネ大量導入 需要家機器の 制御技術の進展
デジタル技術の 急速な進展
FIT終了、自家消費型へ 電気自動車の普及
低炭素社会へ
需給協調へ
発送電分離 電力市場
託送収入の減少
設備保全、運用改善に有効活用
配電系統運用とローカル取引(市場)のプラットフォーム化
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既に生じ始めている事業環境の変化
再エネ機器の大量導入
電力品質維持の複雑化、低炭素化ニーズ
デジタル技術の進展
ネットワーク高速化、センサ等の低価格化、
需要家機器制御技術の進展
高経年設備の大量発生
設備維持・更新経費増大
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配電用変電所
センサ
ベクトル分解法を開発し、配電線センサ情報から太陽光発電(PV)の出力を高精度に推定
PVが急に停止しても発電量を把握できているため、迅速に対応可能
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太陽光発電の出力と 消費電力が混ざっている
センサ
配電線センサデータの活用
坂口、上村:配電線センサー情報による区間単位での太陽光発電出力推定手法の開発、電力中央研究所報告R14012、2015
0
1000
2000
3000
4000
5000
6000
7000
6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18
太陽光発電出力
[kW
]
時刻
正解(実測値)
推定値
平均誤差5%
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デジタル化による高経年設備運用・保全の高度化
配電設備データベースの構築
塩害などによる劣化評価
配電系統影響評価や災害復旧支援に活用
AI/IoTの活用:劣化診断、最適補修
配電柱腕金の再利用判定
コンクリート柱のひび割れ判定
変圧器の油中ガス分析
アナログメータ読み取り
IoTプラットフォーム開発
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これから生じうる事業環境変化
顧客のプロシューマ化の進展
高価格買取終了後(ドイツより早く)、蓄電池利用自家消費モデルの普及
収益構造の変化
kWh需要低下、託送収入減
これらに対応するには配電システムをベースとした電力取引・情報交換を可能とする
次世代の電力需給プラットフォーム への進化が解決策の一つ
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次世代の電力需給プラットフォームのイメージ
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電気機器 家庭・事業所 メーカ ユーザ
電力会社
電気機器 家庭・事業所
メーカ +
サービス 提供者
ユーザ + プロシューマ
次世代の電力需給プラットフォーム
PV・EV・電池
電力会社
ベネフィット
電力
電力 ネガワット
ベネフィット
情報
電力
これまで
これから
情報
配電システム
配電システム
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NY州配電事業者によるプラットフォームビジネス
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州政府が配電事業者によって運営される配電プラットフォーム(DSP: distributed service platform)の創設を目指している
配電設備計画の最適化 系統運用の高度化 DER市場の運営と卸市場との連携
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需要家参画型(需給協調型)次世代ネットワークのメリット
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送電事業者
配電事業者
小売電気事業者
需要家 (プロシューマ)
再エネ発電 事業者
経費削減と 収益向上 調達コスト低減、負荷平準化、インバランス回避、新サービス創出(エネルギー最適利用支援ツール)
便益の向上 電気支出低減(経済運用、出力抑制回避)、利便性・快適性の維持、生産性の維持、停電回避
分散型エネルギー資源
PV、PCS、EV、蓄電池、コージェネ、HP給湯機、各種可制御負荷(産業用含む)
アグリゲータ・VPP
出力抑制回避
電力品質確保と投資抑制 余剰電力抑制、調整力確保、周波数調整、同期化力確保、電圧調整(地域供給系統)
電力品質確保と投資抑制 適正電圧維持、線路損失低減、 潮流平準化(設備スリム化)
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次世代の電力需給プラットフォーム
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電気機器 ユーザ+プロシューマ
次世代の電力需給プラットフォーム
電力 ネガワット
ベネフィット
電力
メーカ+サービス提供者
アグリゲータ
配電システム
配電システムに連携する関係者や機器と様々な情報のやり取りを実現 情報の分析と活用により、お客さまへのベネフィット提供、VPPなど需給協調
の実現で配電システム等の効率的な運用を同時に達成 プラットフォームを中心にエコシステムを形成し魅力的で不可欠な存在に
情報
・電気機器 (PV・EV・電池・・) ・サービス(見守り・・)
個人・家庭・事業所・・(パーソナライズ)
情報
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プラットフォーム設計・構築のための シミュレータ開発
次世代の電力需給プラットフォームに連携する需要家や事業者の動きを解析し、全体最適とそれぞれに有益な情報を導くための各種シミュレータを開発中
地域供給系統の電気特性に関する解析
配電系統総合解析ツール (CALDG)
電力各社の配電設備データと連携
配電設備データ抽出システム
地域供給系統の電力売買、EMSに関する解析
Hプログラム (開発コード名)
需要家のエネルギー消費に関する解析
需要シミュレータ、次世代自動車交通シミュレータ
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…
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配電系統の各種制御を詳細模擬 配電系統の電圧制御、再エネの出力制御、需要家の力率制御など
配電系統全体の様相を解析 配電線各部の電圧、潮流、高調波などを算出
スマートメータ(SM)や電気自動車(EV)情報の活用 今後はSMやEVの充放電などの情報をリンクし、需要家単位での 解析を可能とする計画
配電系統総合解析ツール CALDG の開発
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上村、三宅:配電系統総合解析ツールの開発(その2)、電力中央研究所報告R15024 、2016
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配電設備データ抽出システムの開発
電柱単位の配電設備データとCALDGなど当所開発の配電関連プログラムを自動リンク、利用を簡素化
配電設備データ(電柱単位)の入力を省力化 2017年度までに電力3社の設備データとのリンク完了、今後拡大予定
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-2000
-1000
0
1000
2000
3000
0 3 6 9 12 15 18 21 24
配電線の潮流(電気の流れ)[k
W]
時刻
24円/kWh
11円/kWh太陽光発電の
買取価格の変化
エリア運用による配電系統への影響評価 プログラム(開発コード:Hプログラム)の開発
需要家のプロシューマ化やアグリゲータ、VPP事業者の出現に伴い複雑化した場合のエリアの需給運用の配電系統への影響を評価
FIT終了後における電力負荷カーブやフィーダ潮流の変化を推定 エリアの需給運用と配電運用の協調制御方法の検討に貢献
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CALDGと連携 次世代自動車交通シミュレータと連携
勤務地 充電
その他 スーパー等 での充電
自宅 充電
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需要把握・制御 アンシラリー価値の評価
開発中シミュレータ群の連携イメージ
配電設備データ
抽出システム
地域供給系統の 電気特性
(電圧、電流) に関する解析 (CALDG)
地域供給系統の 電力取引、 需要家EMSに 関する解析
(Hプログラム)
基幹系統の電力需給調整に関する解析 (需給シミュレータ:Wプログラム、柔軟性資源計画:Tプログラム)
需要家のエネルギー消費に関する解析 (需要シミュレータ、次世代自動車交通シミュレータ)
系統計画・運用
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次世代配電ネットワーク
①配電事業者がアグリゲータと協力して配電系統容量の増強投資の抑制のた
めのデマンドレスポンス活用
②配電事業者とアグリゲータで蓄電池をシェアリングし、需要家に設置した蓄電池のビジネスモデルの構築
③総合エネルギー事業者が需要家、サービス提供者、配電事業者を含むプラットフォーム形成によるビジネスモデルの構築
④系統需給運用(TSO)と配電運用(DSO)との連携→配電計画と送電計画の融合による更なる投資繰延べ効果
目的:デジタル技術を活用し、 • 効率的な設備保全・運用改善(電力品質・信頼度維持)に加えて • ネットワーク維持のため、新しい収益源を求めてサービスや事業モデルを創出する
必要がある • 電気事業者と規制当局が協力して、次世代事業モデルの構築へ • イノベーションを促進するインセンテイブを与える送配電規制方式の見直しを伴う
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IoTを活用した見守り支援
IoTを活用したエネルギーマネジメント
インフラAI
クラウドロボティクス
需要家サービス研究
共同研究
国等受託研究
共同研究
B電力
屋外複合センサIoT-PF*
送電設備保全研究
火力 研究
家庭内モニタIoT-PF*
長期観測IoTメータ読取
省エネアドバイスツール
エネルギー消費解析ツール
需要予測ツール
* IoT-PF: IoTプラットフォーム。センサ等のデータを遠隔広域で収集、クラウド等に格納、AI等による分析を行えるICT環境。
IoT 研究 テーマ
創出技術・ツール
送電設備保全
空調保全
新サービス
低炭素社会推進
事業所 エネマネ
AIマップ クラウドAI
クラウドを介したロボット群の頭脳
設備保全分野の新たな応用
予測活用 サービス
AI適用
A電力
関連 活動
新
新
電中研におけるIoT研究
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参考