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調調査査22--33--22
環境観測技術衛星(ADEOS-Ⅱ)「みどりⅡ」の 運用異常について(その2)
平成15年11月7日
独立行政法人
宇宙航空研究開発機構
1. はじめに
環境観測技術衛星(ADEOS-Ⅱ)「みどりⅡ」に、平成 15 年 10 月 25 日(日
本時間)に生じた運用異常(太陽電池パドル発生電力の低下及びその後の
通信途絶)の原因究明作業について、現在までに判明した状況を報告す
る。
2. 運用異常の経緯及びデータ取得状況
表2-1に、「みどりⅡ」の運用異常の経緯を示す。
図2-1に、異常発生前後の発生電力の状況を示す。
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表2-1 「みどりⅡ」の運用異常の経緯 10 月
25 日 0:07(JST)頃
パース局 テレメトリデータを正常に受信した。
6:04 頃 アラスカ局 ミッション(地球観測)データを正常に受信した。(ミッション
データの送信時には、テレメトリデータを多重化して送信し
ている。)
6:22 頃 鳩山局 データ中継技術衛星「こだま」経由の「みどりⅡ」のミッション
データを正常に受信した。(データ中継衛星と「みどりⅡ」の
間の通信は正常であった。)
7:28 頃 筑波局 データ中継衛星と「みどりⅡ」の間の通信ができなかった。
7:28 頃 鳩山局 データ中継衛星経由の「みどりⅡ」のミッションデータを受信
できなかった。
8:00 頃 筑波宇宙セ
ンター
運用担当者が緊急時の手順に基づき、「みどりⅡ」の状態
を把握するため、臨時に、マスパロマス局における「みどり
Ⅱ」との交信を手配した。
8:30 頃 筑波宇宙セ
ンター
関係者を緊急招集した。
8:49 頃
マスパロマス
局
状況を把握するため、臨時にマスパロマス局でテレメトリデ
ータの受信を行ったところ、「みどりⅡ」が軽負荷モードにな
っていることが判った。また、受信途中(8:55 頃)で、テレメト
リデータが途切れ、「みどりⅡ」との通信が出来なくなった。
9:00 頃 筑波宇宙セ
ンター
可能な限り地上局を確保することを決定した。
9:23 頃 勝浦局 「みどりⅡ」と地上局との通信を回復するための送信機オン
コマンド信号を送信したが、「みどりⅡ」との通信は復旧しな
かった。
10:00 頃 筑波宇宙セ
ンター
それまでに取得したテレメトリデータを解析した結果、10 月
25 日午前 1 時 13 分頃から「みどりⅡ」の太陽電池パドルの
発生電力が約 6kw から約 1kw に低下していることが判明し
た。(注1)
11:05 頃 11:23 頃 12:49 頃 13:34 頃
沖縄局
パース局
沖縄局
サンチャゴ局
「みどりⅡ」と地上局との通信を回復するための送信機オン
コマンド、及び衛星の負荷電力を減らすためのミッション機
器/ヒータオフコマンドなどを送信したが、「みどりⅡ」との通
信は復旧しなかった。
15:00 頃 筑波宇宙セ
ンター
それまでに取得したテレメトリデータを解析した結果、10 月
25 日午前 7 時 18 分頃に軽負荷モードに移行したことが判
明した。
以降、衛星復旧のコマンドを打ち続けるが、「みどりⅡ」との
通信は復旧していない。
注1: 10 月 25 日 6:04 のアラスカ局で受信したテレメトリを解析し、確認した。
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3. 運用異常の状況
(資料中の時刻は、以後、世界標準時(UT)で示しており、【】で日本標準時
(JST)を示している。)
(1) 10 月 24 日 16:12【10 月 25 日 01:12】頃より太陽電池パドルからの発生
電力低下が始まり、16:13【01:13】からの約 3 分間で、シャント電流1及
び2が約 25Aから 0Aに、電力制御回路(PCU)への入力電流1及び2が
約 28Aから 10Aに低下した。この低下は、発生電力に換算して、約 6kwから約 1kw への低下に相当する。
図3-1に、内部回路を主体とした電源系の系統図を示す。
図3-2に、シャント電流及び PCU 入力電流の低下状況を示す。
(2) この間、姿勢制御系の姿勢角変化率(レート)及び太陽電池パドルに搭
載されている温度センサ等のデータからは、急激な姿勢変化やパドル
からのセンサデータの途絶は認められない。
(平成 9 年 6 月に生じた地球観測プラットフォーム技術衛星(ADEOS)
「みどり」では太陽電池パドル破断により姿勢の急激な変化やパドルか
らのセンサデータの途絶が生じた。)
図3-3にハーネスを主体とした電源系の系統図を示す。
(3) 太陽電池パドルからの供給電力が低下したことにより、日照中において
もバッテリからの放電状態が継続し、10 月 24 日 22:18【10 月 25 日 07:
18】頃に衛星は低電圧検知により軽負荷モードに移行した。
図3-4に、軽負荷モード移行時刻の推定を示す。
(4) 緊急に手配したマスパロマス局におけるデータ受信中に、10 月 25 日
23:55【10 月 25 日 08:55】、衛星の電源電圧低下に伴う通信機器動作停
止により、衛星からの通信が途絶した。
図3-5に、マスパロマス局可視中の電源(メインバス)電圧とテレメトリ
送信機の出力(USB 送信電力)を示す。
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4. テレメトリデータによる衛星状態の詳細評価
運用異常時の状況、搭載計算機による衛星各部へのコマンド履歴、ミッ
ション(地球観測)機器の温度状況等を確認した結果、以下に示す事項が
明らかになった。その他に、運用異常に結びつく異常なデータは確認されな
かった。軽負荷モード移行に伴う各搭載機器の動作も正常であった。
4.1 電源系及び太陽電池パドル系
(1) 「みどりⅡ」の太陽電池パドル発生電力低下時に加えて、打上げ(平成
14年12月14日)以後の太陽電池パドル系及び電源系のデータを調査・
分析した結果は次のとおりである。
①太陽電池パドルの発生電力低下時の電流値は、108A から 19A に減
少している。
②シャント1とシャント2の温度は、電流低下に伴って、低下している。
③パドル駆動機構の温度は、電流低下を境として低下傾向である。
④太陽電池パドルの発生電力は、平成 15 年 3 月から7月にかけて 100w単位で断続的な変化が生じていたほかに、特記すべき事象はない。
⑤太陽電池パドルの温度、ストロークモニタ及び張力モニタによる太陽電
池パドルの挙動、並びに太陽追尾状態は、運用異常前後を含め、異
常は見られない。
今後、15 年 3 月から 7 月にかけて発生した 100w 単位の発生電力変
動と今回の発生電力低下の関係について、更に詳細評価を行う。
図4.2-1に、シャント電流とシャント温度ならびにパドル駆動機構の
温度を示す。
図4.2-2に、太陽電池パドル発生電力の長期トレンドを示す。
図4.2-3に、太陽電池パドルの温度、ストロークモニタ及び張力モニ
タ状況、太陽追尾状態を示す。
(2)「みどりⅡ」の太陽電池パドル発生電力低下における電源系の状況は
以下のとおりである。
①16:12:25 頃、太陽電池パドルの発生電力低下が開始した。 ②発生電力低下当初は、各シャント回路が順次オフされることにより、メ
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インバス電圧が維持できた。 ③16:15:10 頃、全てのシャント回路のオフが終了した。 ④電源系は、全てのシャント回路がオフになっても必要な負荷電流を供
給できず、バッテリへの充電電流を絞ることによりメインバス電圧を維
持した。 ⑤16:16:00 頃、充電電流が 0 となりバッテリは放電を開始した。 ⑥16:16:30 頃、発生電力低下が止まった。
図4.2-4に、太陽電池パドル発生電力低下に伴う電源系動作を示す。
4.2 姿勢関係データの評価
(1)姿勢制御系全般
通信途絶直前(テレメトリによる最後の確認時点)まで、太陽電池パド
ルの太陽追尾制御も含め、姿勢制御系は正常であり、制御モードとして
は複合航法(注2)を維持していた。
(「みどり」事故で発生した姿勢異常検知による姿勢捕捉モードへの移行
は発生していない。)
(注2) GPS 信号を用いた高精度姿勢制御状態
(2)姿勢データの分析
「みどりⅡ」の姿勢データについて、回帰日数に相当する 4 日周期でほ
ぼ同じ状態が繰り返されていることを考慮し、通信途絶前 4 日分の姿勢
データを確認した。その結果、以下の2つの事象を除いて、特記すべき事
項はなかった。
① 10 月 24 日 16:00 頃の姿勢変動(事象 A)
ヨー軸まわりの推定姿勢角に-0.004 度程度の変動があり、日陰明
け直後の 15:45~15:57 の間にトルクが作用したと推測する。
この現象は、太陽フレアによる太陽輻射圧や大気抵抗が衛星のヨー
角に影響しやすい北極上空通過時に発生していることから、今後、そ
の影響などを検討する。
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② 10 月 24 日 16:15 頃の姿勢変動(事象 B)
16:13~16:17 に、ロール/ピッチ/ヨーの3軸全ての姿勢角に変動
が生じている。
電力低下が発生しているこの時間帯では、太陽電池パドルのアレイ
トリム動作、GLI(グローバル・イメージャ)のチルト動作、IOCS(軌道間
通信系)アンテナの駆動動作が行われているが、これらの動作だけで
はこの姿勢変動事象の説明は困難で、トルクが作用していたと推測す
る。本現象について、トルク発生メカニズム等の詳細検討を行う。
図4.3-1に、発生電力低下前後の姿勢角を示す。
(1) 加速度データの分析
姿勢データと同様に 4 日間分の加速度データを確認した。その結果、
以下の事象を除いて、特記すべき事項はなかった。
日照期間中に、ときおり、パドル取付け加速度計(PMA)1~3に 0.3mG
程度のバイアスが発生している。この現象は発生電力低下開始後の 16:
15 前後にも 10 秒程度 2 回発生している。
このバイアスは、加速度データの固有振動数評価等に影響のないレベ
ルであるが、通常の運用では予想されない衛星の挙動を示すものであり、
過去のデータの確認も含めて詳細検討を行う。
図4.3-2に、発生電力低下直後の加速度データを示す。
(2) パドル固有振動数の解析
打ち上げから 10 月 24 日までの姿勢変化率データを用いて、衛星機体
特性を評価した。この結果、今回の運用異常前後で主要なモード(パドル
面内1次:0.13~0.14Hz、パドル面外1次:0.11~0.12Hz)には変化がな
いと判断している。
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5. 軌道データの評価
(1)通信リンク途絶前
「みどりⅡ」の軌道は、地上局からの測距データ及び搭載されている
GPS 受信機(GPSR)の GPS 観測データにより通信リンク途絶までモニタを
継続していた。
高精度軌道決定システム(注3)による発生電力低下前日(10 月 24 日)
の決定値による軌道伝播値と搭載 GPSR による単独航法解(注4)を比較
すると、発生電力低下と同じ 10 月 24 日 16:15【10 月 25 日 01:15】頃から、
スラスタが噴射していないにもかかわらず、衛星進行方向に差異が生じて
いる。この差は、軌道長半径に換算して-2m(速度換算では、1mm/秒の減
速)程度に相当する。
注3 : 高精度軌道決定システム
地上 GPS 観測網データと搭載 GPSR データを使用して、GPS 衛星及
びユーザ衛星(「みどりⅡ」)の高精度軌道決定を行なう地上システム
注4 : 搭載 GPSR による単独航法解
搭載 GPSR がカルマンフィルタを用いて単独でリアルタイム軌道推定
した結果(軌道決定値)
図5-1に、直前の高精度軌道決定値による軌道伝播値と搭載 GPSR
による単独航法解の差を示す。
(2)通信リンク途絶後
通信リンク途絶以降は、NORAD 提供の2ライン軌道要素及び試験運転
中の上斎原レーダー観測データにより評価した。
NORAD 軌道要素及び上斎原レーダー観測データによる軌道決定値の
双方に、衛星が増速している(軌道長半径に換算して 30~40m 程度)よう
な状況も観測されている。
しかしながら、太陽面爆発に起因する大気抵抗の増加(2m/日→9m/日)
も発生しており、衛星自身の正確な増速量算出は困難である。
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なお、テレメトリデータがないため推定となるが、通信途絶後でもバス電
圧 20V 程度まではスラスタの動作が可能で、1次電源電圧低下によるミッ
ション機器の回転停止に伴い、姿勢系の異常検知機能が働いてスラスタ
を噴射した可能性は否定できない。
6. レーダー観測画像の解析
ドイツの応用自然科学研究協会(FGAN)高周波物理研究所(FHR)の協
力を得て、逆合成開口レーダーにより「みどりⅡ」の撮像を3回実施した。
これにより以下の事実が判明した。
① (「みどり」事故で観察されたような)パドルが完全に破断している状況
は観測されなかった。
② 画像解析により得られたパドルへの太陽光の入射角は、3回の観測毎
に異なる。
これらにより、衛星は軌道周期程度の周期でゆっくりと回転していると考
えられるが、最終安定姿勢(重力傾斜姿勢)へはまだ入っていないと推定さ
れる。
図6-1に、FGAN により撮像された ADEOS-Ⅱの画像を示す。
図6-2に、ADEOS-Ⅱの最終安定姿勢(重力傾斜姿勢)を示す。
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7.異常事象の分析
今回の異常の根元事象として、
発生電力が約 3 分間に約 6kw から約 1kw に低下 を位置づけ、この過程
及びその後に起こった以下の2つの特徴的な事象に着目して要因分析を行
っている。(図7-1参照)。
① 太陽電池パドル系から電源系の電力制御回路(PCU)までの1系及び
2系の電力が、ほぼ同期して、約 100w の倍数で低下。
② シャント温度、パドル駆動機構温度が電力低下後に低下。
7.1 故障部位及び発生事象の推定
テレメトリデータを解析した結果、可能性のある故障部位及び発生事象を
以下のとおり推定するに至った。
① 太陽電池パドルの電力ラインの開放または短絡
② 太陽電池パドルハーネス(パドルとパドル駆動機構間の電力ライン)の
開放または短絡
③ パドル駆動機構接続ハーネス(パドル駆動機構とシャント間の電力ライ
ン)の開放
上記の推定に至った理由は以下による。
【電源系(シャント、電力制御回路、バッテリ充電制御器、バッテリ)】
a) 電力低下後にパドル駆動機構の温度が低下していることから、パドル
駆動機構より太陽電池パドル側で電流が止まっていると考えられるた
め、電源系における短絡故障はないと考えられる。(×)
b) シャント回路の1系と2系は別筐体となっており、「①太陽電池パドル
の電力ラインの開放または短絡」の事象のように、それぞれに実装さ
れている多数のブロッキングダイオードがほぼ同期して連続的に開放
することは考えられない。(×)
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c) シャントより下流にある電力制御回路及び負荷側の機器については、
シャント回路の出口で、1系及び2系のそれぞれの全電力ラインが電気
的に1つに接続されているため、ここで開放あるいは短絡が発生した場
合には1系あるいは2系の電力が 0w に落ちるはずであり、約 100w の
倍数で低下するようなことは考えられない。従って、電力制御回路及び
負荷側の機器の開放及び短絡故障はないと考えられる。(×)
【太陽電池パドル系】
a) 太陽電池パドルの電力ライン(アレイ回路、銅ハーネス)の開放または
短絡により当該事象を生じる可能性がある。(△)
b) 太陽電池パドルハーネスは、(電力ライン 52 回路+ブーム展開信号
ライン)と(電力ライン 12 回路+各種テレメトリ信号ライン)の2束にまと
められている。前者の開放又は短絡により、当該事象を生じる可能性
がある。(△)
c) 太陽電池パドル駆動機構内のスリップリング、ブラシブロック、コネクタ、
ハーネスについて検討を行ったところ、導電性の異物混入による HOT
(太陽電池(+)側ライン)と RTN(太陽電池(-)側ライン)のリング同士
が短絡する場合が考えられるが、約 50 回路分の HOT が RTN と短絡
する可能性は極めて小さい。さらに、スリップリングとブラシブロック間
の開放についても、約 50 個ものブラシブロックが同時に壊れる可能性
は考えられない。したがって、パドル駆動機構内の開放及び短絡故障
はないと考えられる。(×)
図7-2に、太陽電池パドルの断面図を示す。
図7-3に、接続ハーネス詳細図を示す。
図7-4に、パドル駆動機構詳細図を示す。
【接続ハーネス】
a) 太陽電池パドル駆動機構接続ハーネスの電力ラインの開放により当
該事象は生じる可能性がある。(△)
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b) シャントと電力制御回路間のハーネスについては、シャント回路の出
口で、1系及び2系のそれぞれの全電力ラインが電気的に1つにまとめ
られているため、開放あるいは短絡が発生した場合には1系あるいは
2系の電力が 0w に落ちるはずであり、約 100w の倍数で低下するよう
なことは考えられない。従って、シャントと電力制御回路間のハーネス
の開放及び短絡故障はないと考えられる。(×)
7.2 想定される異常発生の要因
7.1項①~③に示す開放または短絡を生ずる要因として以下のものが考
えられる。
①10 ヶ月の経年変化(熱サイクル、振動、放射線、原子状酸素)による材
料の特性変化から破損
②設計、製造不良
③デブリによる破損
④突発的な宇宙環境の変化(太陽フレア)による破損
・高エネルギー陽子及び高エネルギー電子
・低エネルギー電子、イオン(オーロラ粒子)
・磁場変化、プラズマ
⑤上記の複合による破損
なお、高エネルギー陽子及び高エネルギー電子による太陽電池アレイ
回路の劣化は、搭載宇宙環境計測装置(TEDA)によりこれらの陽子及
び電子の増加は観測されていないため除外した。
上記の要因について、故障の木解析(FTA)、試験、解析を行い、現在詳
細に検討を進めている。
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図7-1 異常事象分析
【事象】
● 発生電力が約 3 分間に約 6kw から約 1kw に低下
(1)1系及び2系がほぼ同期して約 100w の倍数で低下
(2)シャント温度、パドル駆動機構温度が電力低下後に低下
電力供給回路の開放
電源系の故障 (×)
シャント回路の故障 ×
電力制御回路の故障 ×
バッテリー制御回路の故障 ×
バッテリーの故障 ×
太陽電池パドルの故障 (△)
パドルの故障 △
電力ラインの開放 △
パドル駆動機構の故障 ×
電力ラインの開放 ×
パドル/パドル駆動機構間ハーネスの故障 △
接続ハーネスの故障 (△)
パドル駆動機構/シャント間のハーネス故障 △
シャント/電力制御回路間のハーネス故障 ×
電力供給回路の短絡
電源系の故障 (×)
シャント回路の故障 ×
電力制御回路の故障 ×
バッテリー制御回路の故障 ×
バッテリーの故障 ×
太陽電池パドルの故障 (△)
パドルの故障 △
ハーネスの短絡 △
パドル駆動機構の故障 ×
電力ラインの短絡 ×
パドル/パドル駆動機構間ハーネスの故障 △
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接続ハーネス (×)
パドル駆動機構/シャント間のハーネス故障 ×
シャント/電力制御回路間のハーネス故障 ×
太陽電池アレイ回路の機能劣化 ×
太陽電池パドルの指向方向変動
太陽電池パドルの駆動異常 ×
姿勢の異常 ×
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8. 今後の計画
現時点は、状況の一次把握がほぼ終了した段階であり、今後は以
下の作業を中心に原因の絞込みを実施していく予定である。
(1) 故障の木解析(FTA)の詳細検討、原因の絞込み
(2) FTA 等に応じたデータの二次評価
(3) 姿勢・軌道データの変動要因の分析
(4) 100w 単位の断続的な変動との共通事項の分析
(5) 「みどり」事故との共通事項の分析
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調調査査22--33--22 添添付付資資料料
環境観測技術衛星(ADEOS-Ⅱ)「みどりⅡ」の 運用異常について(その2)
図表集
平成 15 年 11 月 7 日 独立行政法人
宇宙航空研究開発機構
1
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注1:20:51:51-20:53:17,21:05:14-21:31:11のテレメトリデータは22:28頃取得予定であったが、軽負荷モード(LLM)発生のため取得できず。注2:21:42:49-23:49:38までのテレメトリデータは10/25 00:15以降に取得予定であったが、「みどりII」とリンクが取れず、取得出来ていない。注3:マスパロマス局(23:49-23:55)はHK運用であるため、加速度計データは取得されていない
- 1 -図2-1 発生電力と取得データの期間
15:00 16:00 17:00 18:00 19:00 20:00 21:00 22:00 23:00 00:00 01:00 UT
-1000W
0W
1000W
2000W
3000W
4000W
5000W
6000W
7000W
00:00 01:00 02:00 03:00 04:00 05:00 06:00 07:00 08:00 09:00 10:00 JST
発生電力
15:00 16:00 17:00 18:00 19:00 20:00 21:00 22:00 23:00 00:00 01:00
日照
日陰
15:00 16:00 17:00 18:00 19:00 20:00 21:00 22:00 23:00 0:00 1:00
加速度計データあり
加速度計データなし
注3
注1
注2通信リンク途絶23:55:11
MDR再生MDR再生
LLM(22:18)
2
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電源系システム
図3-1 内部回路を主体とした衛星電源系 系統図
32段
シャント素子
シャント1
1段目
Aシャント電流1
32段
シャント素子
シャント2
1段目
Aシャント電流2
シャント制御信号
シャント制御信号32回路
32回路
太陽電池アレー回路No.63
太陽電池アレー回路No.64
太陽電池アレー回路No1
太陽電池アレー回路No2
RTN
電源バス
Aバス電圧
パドルの発生電力が衛星の必要な電力より大きくなると、シャント1、2のシャント素子(トランジスタ)を1段目から順次オンにし、アレー回路を短絡させて衛星に必要な電力とパドルの発生電力の平衡を保つ
PCU入力電流1
PCU入力電流2
1系
2系
32段目
32段目
PCU
バッテリ
バッテリ充電制御器
A
V
太陽電池パドル(PAD)駆動機構
パドル
2 3
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図3-2 シャント電流およびPCU入力電流の低下状況
0
20
40
60
80
100
120
16:10 16:15 16:20
太陽
電池
発生
電流
[A
]
EP9002 太陽電池パドル発生電流
UT
注 : PCU入力電流1/2およびシャント電流1/2の総和平均108A
平均19Aパドル発生電流が1/5.7に低下
0
5
10
15
20
25
30
16:10 16:15 16:20
PC
U入
力電
流1 [
A]
EP2003 PCU入力電流1
UT
0
5
10
15
20
25
30
16:10 16:15 16:20
PC
U入
力電
流2 [
A]
EP2004 PCU入力電流2
UT
0
5
10
15
20
25
30
16:10 16:15 16:20
シャ
ント
電流
1 [
A]
EP2005 シャント電流1
UT
0
5
10
15
20
25
30
16:10 16:15 16:20
シャ
ント
電流
2 [
A]
EP2006 シャント電流2
UT
パドル発生電流の低下開始(詳細は図4.2-4参照)
シャント電流1、2低下開始
入力電流1、2低下停止
- 3 - 4
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55,680枚の高効率シリコンセル(2.07cm×4.0cm)を、174直列の5並列で1つのアレー回路を構成し、計64アレー回路を配置している。
衛星構体
<電源系>
パドル駆動機構
太陽電池パドルハーネス
電源バス
太陽電池パドル
バッテリ
バッテリ充電制御器
パドル駆動機構接続ハーネス
※いずれも、1系あたり32回路分(HOT/RTN)計64本の電力線
シャント/電力制御回路間ハーネス2本(HOT/RTN)
シャント回路2
シャント回路1
電力制御回路・
・・・・
HOT : 太陽電池 (+)側ラインRTN : 太陽電池 (-)側ラインシャント : 余剰電力調整装置
回路1 回路3 回路61 回路63
回路61 回路63回路2 回路3
太陽電池セル搭載面 2系32回路
太陽電池セル搭載面 1系32回路
全面銅ハーネス(電力ライン)
加速度センサ信号
ストロークモニタ信号
加速度センサ電源
温度センサ信号
(束ね方は、図7-2参照)
図7-2 接続ハーネス詳細図
図7-3 パドル駆動機構部詳細図
図3-3 ハーネスを主体とした電源系統図
- 4 -
※内部については図7-3参照
5
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5
図3-4 軽負荷モード移行時刻の推定
0
10
20
30
40
50
60
15:00 16:00 17:00 18:00 19:00 20:00 21:00 22:00 23:00 00:00 01:00
バス電圧[V]
0
1000
2000
3000
4000
5000
6000
発生電力[W]
バス電圧
発生電力
軽負荷モード(LLM)移行
△記録開始
LLMシーケンスによるHKMU動作
マスパロマス局で得られたHKMU記録アドレスから、記録時間を逆算してLLM発生位置を特定した
22:18
軽負荷モードとは 異常発生時に衛星が消費する電力を抑え、安全なモードに自動移行するモード。基本的にはミッション機器ヒータとバス機器等の必要最低限な機器のみがONであるモード。 以下の異常に対して実施される。本事象では①により軽負荷モードに移行した。
①バッテリ電圧低下 ②姿勢異常 ③自動制御用オンボードコンピュータの異常 ④テレメトリ・コマンド系コンピュータの異常 ⑤テレメトリ・コマンド用信号の応答時間超過
6
Page 21
0
5
10
15
20
25
30
35
23:49:00 23:50:00 23:51:00 23:52:00 23:53:00 23:54:00 23:55:00 23:56:00
図3-5 マスパロマス局可視中のメインバス電圧とUSB送信電力
送信
電力
(dbm
)
25
26
27
28
29
30
31
32
メイ
ンバ
ス電
圧(V
)
Sバンド送信電力
メインバス電圧
メインバス電圧低下等のため通信が途絶えたと考えられる。
- 6 -
7
Page 22
図4.2-1 シャント電流とシャント温度、パドル駆動機構温度
シャント電流
0
5
10
15
20
25
30
35
40
45
05:00 06:00 07:00 08:00 09:00 10:00 11:00 12:00 13:00 14:00 15:00 16:00 17:00 18:00 19:00 20:00 21:00 22:00 23:00 00:00
[A]
EP2005 シャント1電流
EP2006 シャント2電流
シャント温度
-40
-30
-20
-10
0
10
20
30
40
05:00 06:00 07:00 08:00 09:00 10:00 11:00 12:00 13:00 14:00 15:00 16:00 17:00 18:00 19:00 20:00 21:00 22:00 23:00 00:00
[℃]
EP3002 SHNT1 TEMP
EP3003 SHNT2 TEMP
PDM温度
0
5
10
15
20
25
30
35
40
05:00 06:00 07:00 08:00 09:00 10:00 11:00 12:00 13:00 14:00 15:00 16:00 17:00 18:00 19:00 20:00 21:00 22:00 23:00 00:00
[℃]
PD3001 PDM TEMP1
PD3002 PDM TEMP2
- 7 - 8
Page 23
図4.2-2 太陽電池パドル発生電力の長期トレンド(日陰明け~+25分の最大/最小/平均値)
4500
5000
5500
6000
02/1
2/14
03/0
1/13
03/0
2/12
03/0
3/14
03/0
4/13
03/0
5/13
03/0
6/12
03/0
7/12
03/0
8/11
03/0
9/10
03/1
0/10
発生
電力
(50V
換算
)
最大値
平均値
最小値
100W単位の発生電力変動
- 8 - 9
Page 24
図4.2-3 太陽電池パドルの温度、追尾状態、ストローク&張力モニタ
注1 発生電力低下後のストロークモニタのスパイクノイズの消滅は、シャント動作の停止による。注2 日陰における張力モニタの固定値出力は、歪みセンサ一部剥離による0点校正不良による。
パドル温度
-100-80-60-40-20
0204060
12:00 13:00 14:00 15:00 16:00 17:00 18:00 19:00 20:00 21:00 22:00 23:00 00:00
温度
[℃
]
PD2002 パドル温度1 PD2003 パドル温度2 PD2004 パドル温度3
パドル関連温度
-10
0
10
20
30
40
50
12:00 13:00 14:00 15:00 16:00 17:00 18:00 19:00 20:00 21:00 22:00 23:00 00:00
温度
[℃
]
PD3003 SPSS1温度 PD3004 ブームダンパ温度
太陽追尾関連TLM
0
90
180
270
360
12:00 13:00 14:00 15:00 16:00 17:00 18:00 19:00 20:00 21:00 22:00 23:00 00:00
回転
角度
[de
g]
0.00.51.01.52.02.53.03.54.04.5
SP
SS D
ata
[deg]
PD2001 パドル回転角度 AC4049 SPSS DATA
地球アルベドの影響
アレイトリム
ストロークモニタ&張力モニタ
-300
-200
-100
0
100
200
300
12:00 13:00 14:00 15:00 16:00 17:00 18:00 19:00 20:00 21:00 22:00 23:00 00:00
スト
ロー
ク[m
m]
0
5
10
15
20
25
30
張力
[kgf
]
DM2001 ストロークモニタ DM2002 張力モニタ
注1
注2
パドル温度2,3
パドル温度1
SPSS1温度
ブームダンパ温度
パドル回転角度
SPSSデータ
ストロークモニタ
張力モニタ
- 9 - 10
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図4.2-4 発生電力低下にともなう電源系動作
メインバス電圧
40
42
44
46
48
50
52
V
発生電流 (PCU入力電流 +シャント電流)
0
10
20
30
40
50
60
A
発生電流1
発生電流2
PCU入力電流
0
5
10
15
20
25
30
A PCU 入力電流1
PCU 入力電流2
シャント電流0
5
10
15
20
25
30
16:12 16:13 16:14 16:15 16:16 16:17
A
シャント電流1
シャント電流2
シャント動作により、メインバス電圧を維持できている期間
充電電流を絞ることにより、メインバス電圧を
維持できている期間
バッテリ放電(~通信途絶まで)
△16:16:30頃
発生電力低下終了
△16:12:25頃
発生電力低下開始
△16:15:10頃
発生電力
低下開始
BATモード
移行
発生電力
低下終了
全シャント回路
動作停止
△16:16:00頃
10 11
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11
図4.3-1 発生電力低下前後の姿勢角
-0.020
-0.015
-0.010
-0.005
0.000
0.005
0.010
0.015
0.020
10/24 15:30 10/24 15:40 10/24 15:50 10/24 16:00 10/24 16:10 10/24 16:20 10/24 16:30 10/24 16:40
AC4177 EST ATT R DEG
-0.020
-0.015
-0.010
-0.005
0.000
0.005
0.010
0.015
0.020
10/24 15:30 10/24 15:40 10/24 15:50 10/24 16:00 10/24 16:10 10/24 16:20 10/24 16:30 10/24 16:40
AC4178 EST ATT P DEG
-0.020
-0.015
-0.010
-0.005
0.000
0.005
0.010
0.015
0.020
10/24 15:30 10/24 15:40 10/24 15:50 10/24 16:00 10/24 16:10 10/24 16:20 10/24 16:30 10/24 16:40
AC4179 EST ATT Y DEG
-20.00
0.00
20.00
40.00
60.00
80.00
100.00
120.00
140.00
10/24 15:30 10/24 15:40 10/24 15:50 10/24 16:00 10/24 16:10 10/24 16:20 10/24 16:30 10/24 16:40
EP9002 S/A GEN CUR A
AC4178 推定姿勢角(ピッチ) [deg]
AC4179 推定姿勢角(ヨー) [deg]
事象A
事象B
MDR
日陰明
GLIチルト
アレイトリム+事象B
AC4177 推定姿勢角(ロール) [deg]
EP9002 太陽電池パドル発生電流 [A]
発生電力低下開始
発生電力低下終了
12
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12
図4.3-2 発生電力低下直後の加速度計データ
拡大
バイアスが発生
食明け時の PDL 振動(正常動作)
発生電力低下時点
0.3mG のバイアスが発生
13
Page 28
13
-30
-20
-10
0
10
20
30
40
50
2003/10/2401:00
2003/10/2404:00
2003/10/2407:00
2003/10/2410:00
2003/10/2413:00
2003/10/2416:00
2003/10/2419:00
2003/10/2422:00
時刻(UTC)
差(m
)
通常の軌道伝播誤差通常は観測されない
軌道の動き
図5-1 直前の高精度軌道決定値による軌道伝播値と
搭載 GPSR による単独航法解の差(衛星進行方向)
14
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図6-1 応用自然科学研究協会(FGAN)高周波物理研究所(FHR)のレーダによる
「みどり2」の画像(2003年10月27日 21:01UT撮像)
FGAN : Forshungsgesellschaft fuer Angewandte Naturwissenschaften e.V.FHR : Forschungsinstitut für Hochfrequenzphysik und Radartechnik
14
15
Page 30
15
図6-2 ADEOS-Ⅱの最終安定姿勢
(重力傾斜姿勢)
16
Page 31
図7-2 太陽電池パドルの断面図
ブランケット断面図
銅ハーネス間隔:2mm銅ハーネス幅:10mm
銅ハーネス厚さ:35μm
17
Page 32
ー16ー
信号ライン
スリップリング
電力線 104本/束
電力線 24本/束+信号線
注:1回路=HOT+RTN=2本
Boom 展開信号
電力線 14本+信号線
電力線 25本+信号線
電力線 25本+信号線
電力線 25本
電力線 25本
電力線 14本+信号線
この場所のみ残ったら
12/(12+13*4)=1/5.3の電力低下
信号線は生きている
図 7-3 接続ハーネス詳細
8回路
8回路(注)
8回路
8回路
8回路
8回路
8回路
8回路
太陽電池パドル シャント1
シャント2 12回路
13回路
13回路
13回路
信号モニタ回路
13回路
13回路
13回路 13回路
13回路
12回路
パドル駆動機構 ここが断線すると
24/(104+24)=1/5.3の電力低下
18
Page 33
7cm 29cm
RETURN(5本)
HOT(64本)
信号(19本)
6cm
18cm
ブラシ(固定部)
摺動点
パドルへ(ハーネスごと回転)
スリップリング(回転部)
衛星本体へ
スリップリング断面概略
図7-4 パドル駆動機構詳細図(イメージ図)
RETURN(5本)
HOT(64本)
信号(19本)
スリップリング部の故障で、電力の4/5を3分程度の短時間で断続的に失うためには、
●図上の64本のHOTラインの4/5にあたる50本強のラインが、連続的にRETURNラインに短絡。(ショート故障)●2枚のブラシが同時に接触を失い開放する現象が、50本強のHOTラインに連続的に発生。(オープン故障)
の2通りのモードしか考えられないが「みどりII」のパドル駆動機構は上記いづれの故障モードも考えにくい構造となっている。
50本以上がほぼ同時に短絡又は開放するような事象は考えにくい
1719