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Transcript
二〇一七年の秋、このような本が出版さ
れました。堀井憲一郎著『愛と狂瀾のメ
リークリスマス
―
なぜ異教徒の祭典が日
本化したのか』(講談社)です。日本では
キリスト教徒でもないのになぜ皆クリスマ
スを祝うのか?という多くの人が抱く疑
問 ― その疑問の一つには、なぜクリスマ
スは恋人と過ごすべき日になっているのか
謎だ、も含まれるでしょう
―
を、日本の
約五〇〇年間の歴史から説明してみせてい
るものです。
この本によれば、西洋と異なって日本に
おけるクリスマスは、日露戦争に日本が勝
利した後の一九〇六年から「大人たちが大
騒ぎする日」になったこと、そして一九四
五年以降の戦後の高度経済成長期には「子
どもの楽しみの日」となっていったこと、
それが一九七〇年代からは「若者」が中心
となり、さらに一九八〇年代から、消費文
化社会の担い手として女性が主体となるに
つれ、クリスマスはロマンティックに過ご
したいと女性たちが願い、それに男性が応
じてきた、という趣旨のことが、著者の綿
密な文献調査から明らかにされています。
ここから私が気づかされたことは、今
は、恋人と過ごすべきクリスマスというイ
メージが大変強いわけですが、日本におけ
るクリスマスのこれまでの祝いで一貫して
いることは、仲間と騒ぐ、家族と過ごす、
恋人と過ごす、というように、いずれも誰
か〝人〟と一緒に過ごすことにこそ、意味・
価値を見出してきたようだ、という点でし
た。そう、クリスマスは人と人の絆を確か
める時と、どうやら日本では多くの人は思
いこんでいる
―
さて、クリスマスの時期、一般世間は非
常に華やいだ雰囲気となります。それは周
囲を見渡せばすぐに分かることです。しか
しその一方で、その華やいだ雰囲気の中で、
心から喜ぶことのできない方たちが一定数
いるのもまた事実です。具体的には、誰か
と、たとえば家族や恋人と一緒に過ごすこ
とができず、孤独を感じている方たちのこ
とです。いや、家族・恋人がいても、また
子どもがいても、そこに心の溝があれば、
その孤独感はむしろ一人で過ごす以上に辛
いものがあるでしょう。そのようになって
しまう理由を、私の神学校時代の同級生
で、知人の牧師である齋藤真行・別府不老
町教会牧師は、日本における世の中のクリ
スマスが「人と人の絆の祭り」、「人間愛の
祭り」となってしまっているからだと言い
ました1。
それだけに、私たちは、齋藤牧師の示唆
に従って、本来クリスマスは「人間愛の祭
り」などではないということに気づきた
い。クリスマスは、イエス様が、ヨセフと
マリアの間から、今から約二〇〇〇年前に
お生まれになったことをお祝いする日です
けれども、そのイエス様の誕生の光景はと
いうと、馬小屋・飼い葉桶での出産
―
現
代で言えば、事情があってほとんど誰から
も見守られないで生まれてくる出産の光景
か
―
、貧しい羊飼いたちの登場
―
現代
で言えば、過酷な環境下でありながら社会
からは尊敬されることの少ない労働者の
姿か
―
、またヘロデ王の追手から逃げ
るヨセフとマリアの姿
―
現代で言えば、
権力者の横暴に苦しむ小さくされた人々
か
―
と、聖書のクリスマスには「人間愛
の祭り」としての要素はほとんどありませ
ん。し
かし、まさにイエス様は、その真っ只
中にお生まれになられたのでした。神様の
独り子として、父なる神様から遣わされた
のでした。それは、神の愛のあらわれであ
り、真実に「わたしたちが生きるようにな
るため」です(ヨハネの手紙一
四・9)。
つまり、クリスマスは、神様と人との愛の
交わりの証しであります。クリスマスの本
当の喜び
―
それは「人間愛の祭り」を超
えて、私たちをひたすらに愛してくださる
お方がおられることを知る喜びです。皆様、
クリスマス、おめでとう。
注1
https://www.facebook.com
/
saitomaiku/posts/2099250883487145
神と人とのクリスマス
文学部宗教主事
落
合
建
仁
「
神は、独り子を世にお遣わしになりました。
その方によって、わたしたちが生きるよう
になるためです。ここに、神の愛がわたし
たちの内に示されました。」
ヨハネの手紙一
四:九
2019年12月1日 第276号
主を畏れることは知恵の初め。 TIMOR DOMINI PRINCIPIUM SCIENTIAE(Proverbis 1.7.)