平成23年度 橋梁長寿命化修繕計画 計 画 書 平成 24 年 3 月 長野県 宮田村
平成23年度
橋梁長寿命化修繕計画
計 画 書
平成 24 年 3 月
長野県 宮田村
――― 目 次 ―――
§1 長寿命化修繕計画策定の背景と目的
§2 長寿命化修繕計画の対象橋梁
§3 健全度の把握及び日常的な維持管理に関する基本的方針
§4 対象橋梁の長寿命化計画に関する基本方針
§5 対象橋梁ごとの次回点検時期及び修繕内容・時期または架け替え時期
§6 長寿命化修繕計画の金額的評価
§7 学識経験者による意見聴取
1971
§1 長寿命化修繕計画策定の背景と目的
【 背景 】
長野県宮田村が管理する橋梁は、台帳上では平成 23 年 12 月現在 111 橋であります。
このうち 20 年後には 50歳を超える 30年以上経過している橋梁も 24橋と多くあります。
今回は その中から、重要な道路網にかかる 31 橋(35 径間)を対象としました。
今後、架け替えに係る費用をできるだけ抑え、橋梁を補修して長寿命化して、できるだ
け経費を縮減する必要があります。これは従来の対症療法型維持管理手法を転換し、橋梁
の寿命を延ばすための予防保全型の維持管理手法を採用することを意味します。
架設後 50年以上経過する橋梁の占める率の現在と今後の推移を次の図1-1に示します。
現在(2011 年) 10 年後(2021 年) 20 年後(2031 年)
図1-1 架設 50年以上の橋梁の推移(橋梁数)
過去に建設された橋梁数の年次推移を次の図1-2に示します。
図1-2 過去に建設された橋梁数の年次推移
100% 65%
23% 35%
77%
1957
2011
50 歳未満 1961
1
【 目的 】
このような背景から、道路交通の安全性を確実に確保しながら、計画的に橋梁の補修を
行い、そのコストを縮減することに加え、毎年の補修予算を平準化する必要もあります。
以上の内容を宮田村橋梁長寿命化修繕計画として策定します。
§2. 長寿命化修繕計画の対象橋梁
2-1 概要
村が管理する橋梁全 111 橋のうち、重要な道路網にかかる橋梁 31 橋・35 径間を対象橋
梁として選定しました。
ここで径間とは、橋脚から橋脚を一跨ぎする単位で、長い橋梁では多径間で構成される
場合があります。(図2-1参照)
径間(径間長)
橋梁(橋長)
図2-1 径間の説明図
対象橋梁 31 橋を供用年数別に比較すると
50 年以上 0 橋
40 年以上~50年未満 11 橋
30 年以上~40年未満 13 橋
20 年以上~30年未満 5 橋
10 年以上~20年未満 2 橋
0 年以上~10 年未満 0 橋
となっており、今後 20 年以内に 50 歳を超す橋梁 24 を含み、重要で なおかつ 古い橋
梁を中心に選定しております。ただし、橋梁の寿命が 50 年という意味ではありません。
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2-2 対象橋梁の内訳 橋 径間 備考 全管理橋梁(2m以上) 111 120 うち計画の対象橋梁数 31 35
うち平成 23 年度計画策定橋梁数 28 32 レベル 2 以上 (1)その他重要な道路網の選定の考え方
1. 高速道路、鉄道等の重要な施設を跨ぐ橋梁
(特に交差通行に支障があると重篤な事態となるため、対人被害の面から重要と
なります)
2. 主要幹線道路に位置する橋梁
3. 村内の集落間を結ぶ区間に位置する橋梁
(2)年次計画の考え方 平成 22 年度に点検業務を実施し、それらに基づき、平成 23 年度に計画策定を実施
しました。 ○長寿命化修繕計画の対象: 対象と考えた 31 橋のうち、橋梁の簡易点検の結果、経年劣化しつつある橋梁 28 橋(32径間)を長寿命化計画対象橋梁とします。健全と判定された橋梁につきましては、今回
対象外の 80 橋と共に、§3 で述べる通り、今後の点検業務にて変状を追跡することにし
ます。 経年劣化が進行しつつあると判断された橋梁=(※)レベル 2 と判断された橋梁
(※)橋梁点検レベル 長野県が採用している点検マニュアルの手法で、 レベル 1 とは全ての橋梁で行い、経年劣化の兆候がなければ、点検を終了するが、
認められた場合はレベル 2 の点検に進むというものです。多数存在する橋梁点検を
少しでも簡便にするための簡易点検手法です。
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図2-2 レベル 1,2 の区分
宮田村の橋(上部工)の部分の構造材料種別の構成を次の図2-3に示します。なお RCは
鉄筋コンクリート、PCはプレストレスト・コンクリート(鋼材で締め付けてコンクリートを
補強したもの)、鋼は鋼鉄を意味します。
図2-3 橋(上部工)の部分の構造材料種別の構成(全 31橋中)
14 橋
(45.2%)
10 橋
(32.2%)
7 橋
(22.6%)
レベル 1
レベル 2
3 橋
3 径間
28 橋
32径間
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§3 健全度の把握及び日常的な維持管理に関する基本的方針
1)定期点検の実施と日常の維持管理の徹底
日常的な維持管理としては、月1回のパトロールと、年1回の巡回、そして定期的に簡
易点検を繰り返し、異常の早期発見に努めるとともに、以下のような小規模な維持作業を
随時実施します。
◎ 簡易な維持作業 ・ 路面の舗装補修 ・ 排水桝、沓座付近の土砂撤去等
◎ 月1回のパトロールの重点監視箇所 ・ 路面のクラック・穴、伸縮部の段差
・ 高欄(ガードレール)の鉛直方向のたわみ ・ 外力(交通事故)等による変形
◎ 年1回の巡回の重点監視箇所
・ 排水桝の詰まり ・ 支承付近の土砂 ・ 伸縮装置の詰まり
◎ 定期的に行う簡易点検
・ 「あなたにもできる橋の点検」NPO 法人橋梁メンテナンス技術研究所編 の手法に
従い、前回点検の写真をプリントアウトし、比較しながら点検を継続することに
より、橋梁の損傷状況を把握し、安全の確保に努めます。
2)健全度の把握
宮田村では、長野県が採用している点検マニュアルの手法に従い、点検を継続すること
により、橋梁の損傷状況を把握し、安全の確保に努めます。特に今回レベル 2(経年劣化あ
り)と判定された橋梁 28橋に加え、レベル 1(経年劣化なし)と判定された橋梁も、(※)
潜伏期にある場合があり、点検に加えることとします。
(※)潜伏期
橋梁の劣化は、潜伏期 → 進展期 → 加速期 → 劣化期 と進行します。特に
潜伏期は、目視点検のみでは異常が分かりません。劣化原因によっては、進展期でも
見逃すことがあります。
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§4 対象橋梁の長寿命化計画に関する基本方針
各橋梁の管理情報と現況調査に基づき、①重要度、②損傷度、③緊急度に基づいて点数
化して、その総和を総合評価点とし、基本的にはこの点数の高い(つまり重要度、損傷度、
緊急度が総合的に高い)橋梁順に補修対象とします。その上で、④各橋梁の修繕費、架け
替え費などを算定し、⑤コスト縮減効果の判断を行います。なお、長寿命化計画の全体像
を次のページの図4-1に示します。
◎ 図4-1の解説
この図は長寿命化修繕計画の全体像です。図中の灰色の四角の中が「長期的維持管理」
と称し、国土交通省はこの部分のみを行って、橋梁の健全度を確保しています。
しかし、平成 18 年度(平成 19 年 5 月)に閣議決定された、地方自治体向けの「長寿命
化修繕計画」では、この「長期的維持管理」を効果的に推進するため、④、⑤を加えて、
具体的な計画策定を行うことを推奨しています。
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図4-1 長寿命化計画の全体像
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§5 対象橋梁ごとの次回点検時期及び修繕内容・時期または架け替え時期
5.1 概要
前項の結果を踏まえ、以下のことを考慮して、修繕年度計画を策定しました。
① 年次計画は、今回の 1 回目の点検をベースに作成するため、あまり長期計画とせ
ず、5か年を目安としました。
② 補修順位は、橋面防水を優先し、上部工内に侵入した水が自然蒸発する時期を経
て着手するよう計画しました。
③ 総合評価点順に補修することと、E1 ランクと評価された橋梁を優先することを念
頭に、年間予讃がなるべく平準化するよう計画しました。
④ 年間予算は、1,300 万円を計画しました。
表5-1 橋梁の健全度ランク
国 宮田村
E1 橋梁構造の安全性の観点から、緊急対
応の必要がある。 橋梁構造の観点から、次回点検の5年以内
に緊急対応の必要がある。
E2 その他、緊急対応の必要がある 鉄道・歩行者・駐車場・公園等と交差して
対人被害が予測される橋梁 S 詳細調査の必要がある 詳細調査の必要がある
C 速やかに補修等を行なう必要がある 速やかに補修等を行なう必要がある B 状況に応じて補修を行なう必要がある 状況に応じて補修を行なう必要がある M 維持工事で対応する必要がある 舗装更新または、高欄・地覆・排水の部分
更新 A 損傷が認められないか、損傷が軽微で
補修を行なう必要がない 損傷が認められないか、損傷が軽微で補修
を行なう必要がない
- 橋梁定期点検要領(案)(平成 16 年 国土交通省 国道・防災課)より -
5.2 結果
次ページ以降に示します。
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H30年度
1 770 38820035 0 1 東河原橋 PC橋 12.9 S S46 41 舗装 床版 点検コンクリート桁
伸縮装置コンクリート桁
2 645 38820037 0 1 大鼓橋 PC橋 18.1 S S46 41 舗装 床版 点検
伸縮装置コンクリート桁
3 510 38820118 0 1 宮田霊園橋 PC橋 33 E2 S49 38 舗装 コンクリート桁 点検伸縮装置
4 435 38820065 0 1 長坂橋 PC橋 38.4 E2 S49 38 舗装 点検伸縮装置
5 435 38820065 0 2 長坂橋 PC橋 38.4 E2 S49 38 舗装床版
6 435 38820065 0 3 長坂橋 PC橋 38.4 E2 S49 38 舗装伸縮装置
7 415 38820003 0 1 北田圃3号橋 RC橋 7 C S42 45 点検 舗装 床版
8 395 38820011 0 1 郷倉橋 RC橋 7.2 S S58 29 点検 舗装 床版床版
9 365 38820034 0 1 仙丈橋 PC橋 12.8 S S46 41 点検 舗装伸縮装置床版コンクリート桁
10 340 38820106 0 1 真米橋 PC橋 44.1 E2 S49 38 点検 舗装伸縮装置
11 340 38820106 0 2 真米橋 PC橋 44.1 E2 S49 38 点検 舗装 コンクリート桁伸縮装置
12 340 38820106 0 3 真米橋 PC橋 44.1 E2 S49 38 点検 舗装伸縮装置
13 315 38820030 0 1 中越川原橋 鋼橋 14.6 C S47 40 点検 舗装伸縮装置
14 310 38820040 0 1 からす橋 鋼橋 11.3 C S47 40 点検15 310 38820052 0 1 赤坂1号橋 RC橋 3 C S42 45 点検16 285 38820043 0 1 新小田切川橋 鋼橋 9.9 C S49 38 点検17 280 38820004 0 1 大沢橋 RC橋 7.3 C S45 42 点検18 275 38820007 0 1 町諏訪形線南橋 RC橋 9.8 C S57 30 点検19 270 38820010 0 1 沖の芝原橋 RC橋 10.8 C S57 30 点検20 245 38820033 0 1 小田切川橋 PC橋 12.8 C S46 41 点検21 230 38820012 0 1 桑の木田橋 RC橋 10 C S58 29 点検22 205 38820024 0 1 抜井橋 RC橋 8.3 C S56 31 点検23 205 38820095 0 1 北沢政広宅 北 RC橋 7.2 C S56 31 点検24 200 38820002 0 1 北田圃2号橋 RC橋 7 M S42 45 点検25 195 38820028 0 1 小田切川1号橋 鋼橋 14.8 C S46 41 点検26 180 38820091 0 1 第一トリート南 RC橋 8.2 M S47 40 点検27 120 38820020 0 1 蚕玉北橋 RC橋 6.3 M S53 34 点検28 105 38820090 0 1 駒ケ原跨線橋 PC橋 21.8 M S55 32 点検29 100 38820039 0 1 中学校南橋 鋼橋 12.2 M S53 34 点検30 85 38820114 0 1 新数奇屋橋 鋼橋 6.5 M H05 19 点検31 70 38820029 0 1 小田切川2号橋 鋼橋 14.5 M S45 42 点検32 50 38820032 0 1 ふれあい橋 PC橋 15 M H11 13 点検
表5-2 宮田村 年次計画
径間番号
分割番号
橋梁コー
ド
総合評価点
補修順位
上部工橋材
判定結果
橋長
橋梁名
H29年度H25年度 H26年度 H27年度 H28年度橋暦
完成年度
供用年数
箇所
箇所
箇所
箇所
箇所
箇所
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§6 長寿命化修繕計画の金額的評価
6.1 長寿命化修繕計画の金額的評価方法
長寿命化計画で修繕する場合の修繕費と、修繕しないで健全度がなくなる時に架け替え
る場合の架け替え投資相当額との比較を、金額そのもので行います。該当全橋梁の修繕費
と架け替え投資相当額をそれぞれ総計すると、全対象橋梁に関する長寿命化と架け替えの
金額的な比較ができ、全体のコスト縮減率も分かります。
6.2 計算結果
長寿命化計画で、修繕したほうがコスト縮減効果が高い橋梁全てを修繕するとした場合
の総費用は 8,900 万円で、修繕しないで架け替えるとした場合の総費用は 3億 4700 万円で
した。したがって、総額 2億 6000 万円のコスト縮減となります。
ただし、予算の制約があり、実際に修繕の対象となるのは、§4で説明したように、重
要度・損傷度・緊急度が総合的に高い橋梁から、順次修繕可能な橋梁について長寿命化計
画が策定されますので、実際にこれだけのコスト縮減が行われるわけではありません。
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§7 学識経験者等による意見聴取
1)計画策定担当部署
宮田村 建設課 建設係 ℡ 0265-85-5863
2)意見を聴取した学識経験者等の専門知識を有する者
元信州大学工学部土木工学科 教授
三井 康司(みつい やすし)工学博士
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