RSS(RDF Site Summary)を活用した 新たな図書館サービスの展開 ―OPAC2.0へ向けて― 林 賢紀 1 ;宮坂和孝 2 著者抄録: RSS (RDF Site Summary) とは, タイトル, URL, 要約など更新情報を利用者に通知す るための仕組みであり, XMLで記述されている。 また, 名前空間の追加により, 書誌事項など詳細 な情報を加えることができ, 他のWebサービスなどと XMLにより連携した高度なサービスが可能と なる。本稿では, RSSの概要と現状について述べたほか, 農林水産研究情報センターの事例やRSSの 利点, サービス試行のための開発手法について紹介した。また, RSSを利用して, 書誌情報の閲覧だ けでなく利用者自らがこのデータを利活用して新たなサービスを構築可能とする新たな概念の OPAC (OPAC2.0) という方向性を示した。 キーワード:農林水産研究情報, インターネット, メタデータ, RSS, OPAC, Web2.0 Development of the new online library services with RSS —Road to the OPAC2.0— HAYASHI Takanori 1 ; MIYASAKA Kazutaka 2 Author Abstract: RSS (RDF Site Summary) written by XML, is used to deliver the information such as title, URL and description of literature. In addition of name-space information, more detailed bibliographical data can be included in the RSS, and sophisticated delivery services linked up with any other web or XML services can be provided. In this paper, we describe the summary and common usage of RSS, and show the case study of Agriculture, Forestry and Fisheries Research Information Center’s services. The RSS’s merits and developing methodology for practical service are also described. By using RSS, client-users can not only browse the information but also use the information to develop their new services. That is new concept of OPAC, OPAC2.0, and we summarized its future direction. Key words: Agriculture, Forestry and Fisheries Research Information, internet, metadata, RSS, OPAC, Web2.0 原稿受理 (2006-02-22) (情報管理 49 (1): 11-23) 1. RSS概況 1) 1.1 RSSとは RSS とは更新情報を利用者に通知するための仕 組みであり, XML で記述されている。このように 記述された情報はRSS フィードとも呼ばれる (以 下, 本稿では技術としてのRSS および情報として のRSS フィードを併せてRSS と記載する)。 1 農林水産省農林水産技術会議事務局筑波事務所研究情報課 (農林水産研究情報セン ター) (〒305-8601茨城県つ く ば市観音台2-1-9) Tel. 029-838-7283 E-mail: [email protected]1 Research Information Division, Tsukuba Office, Agriculture, Forestry and Fisheries Research Council Secretariat, Ministry of Agriculture, Forestry and Fisheries. (Agriculture, Forestry and Fisheries Research Information Center)(2-1-9 Kannon-dai, Tsukuba-shi, Ibaraki 305-8601) 2 農林水産省農林水産技術会議事務局筑波事務所電子計算課 (農林水産研究計算セン ター) Tel. 029-838-7330 E-mail: [email protected]2 Computer Division, Tsukuba Office, Agriculture, Forestry and Fisheries Research Council Secretariat, Ministry of Agriculture, Forestry and Fisheries. (Computer Center for Agriculture, Forestry and Fisheries Research)
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Development of the new online library services with RSS -Road to the OPAC2.0-
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RSS(RDF Site Summary)を活用した新たな図書館サービスの展開
―OPAC2.0へ向けて―
林 賢紀1 ;宮坂和孝2
著者抄録:RSS (RDF Site Summary) とは, タイトル, URL, 要約など更新情報を利用者に通知す
Development of the new online library services with RSS—Road to the OPAC2.0—
HAYASHI Takanori 1; MIYASAKA Kazutaka 2
Author Abstract: RSS (RDF Site Summary) written by XML, is used to deliver the informationsuch as title, URL and description of literature. In addition of name-space information, more detailedbibliographical data can be included in the RSS, and sophisticated delivery services linked up withany other web or XML services can be provided. In this paper, we describe the summary andcommon usage of RSS, and show the case study of Agriculture, Forestry and Fisheries ResearchInformation Center’s services. The RSS’s merits and developing methodology for practical serviceare also described. By using RSS, client-users can not only browse the information but also use theinformation to develop their new services. That is new concept of OPAC, OPAC2.0, and wesummarized its future direction.
Key words: Agriculture, Forestry and Fisheries Research Information, internet, metadata, RSS,OPAC, Web2.0
原稿受理 (2006-02-22) (情報管理 49 (1): 11-23)
1. RSS概況1)
1.1 RSSとは
RSSとは更新情報を利用者に通知するための仕
組みであり, XMLで記述されている。 このように
記述された情報はRSSフ ィード とも呼ばれる (以
下, 本稿では技術と してのRSSおよび情報と して
のRSSフィードを併せてRSSと記載する)。
1 農林水産省農林水産技術会議事務局筑波事務所研究情報課 (農林水産研究情報センター)
(〒305-8601茨城県つくば市観音台2-1-9) Tel. 029-838-7283 E-mail: [email protected] Research Information Division, Tsukuba Office, Agriculture, Forestry and Fisheries Research Council Secretariat, Ministry of
Agriculture, Forestry and Fisheries. (Agriculture, Forestry and Fisheries Research Information Center)(2-1-9 Kannon-dai, Tsukuba-shi, Ibaraki 305-8601)
2 農林水産省農林水産技術会議事務局筑波事務所電子計算課 (農林水産研究計算センター)
Tel. 029-838-7330 E-mail: [email protected] Computer Division, Tsukuba Office, Agriculture, Forestry and Fisheries Research Council Secretariat, Ministry of Agriculture,
Forestry and Fisheries. (Computer Center for Agriculture, Forestry and Fisheries Research)
情報
管理 Vol. 49 No. 1 April 2006
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1.2 RSSの歴史と経緯
RSSそのものの歴史は古く,1999年3月にNetscape
社が自社のポータルサイ トMy Netscapeに 「チャン
ネル」 としてWebサイ トの見出し一覧を登録する
ための手段と して開発・公開したものがRSSバー
ジョン0.9 (以下 「RSS0.9」 のように表記) である。
さらに, 記述する要素に概要などが加えられるな
ど伝達する情報の内容とXMLの定義手法を中心に
改良,バージョンアップが重ねられ,現在はRSS1.0,
RSS2.0などの異なるバージョンが存在し, それぞ
れ名称も
・ RDF Site Summary (RSS0.9, RSS1.0)
・ Really Simple Syndication (RSS2.0)
などと異なっている。
2000年以降のblog (日記形式で頻繁に情報が更
新・発信できるWebサイ ト作成システム) が流行
し,その代表的なシステムであるMovableTypeなど
が更新内容をRSSで配信する機能を標準で有して
いたことが, RSSの利用や普及・RSSリーダなど周
辺のソフトウエアの開発を活発にした。 また, 仕
様がオープンであり, 簡易なXMLで記述されてい
たため, Perl, PHPなどWebで使用される主要なス
クリプト言語での処理が容易であったこともRSS
の普及を後押しした。
現在では, blogのみならず, 朝日新聞, 日経BP,
J-Waveなどニュースサイ トやマスコミ ・一般企業
などのサイ トでも更新情報を通知するサービスと
してRSSの提供が始まっている。
1.3 RSSの仕組み
RSSの実体は, タイ トル, URL, 要約, 更新日時
などの更新情報の概要を,規格に沿ったフォーマッ
トでタグ付けされたXMLファイルである。更新情
報の提供者はこのファイルをWebサイ トに置き,利
用者はこれをRSSリーダなどを用いて参照するこ
とでWebサイ トの更新情報を取得できる。RSSの取
得は定期的に行われ, その間隔は, 提供者がRSSの
中に記述するこ とも, 利用者がRSSリーダ側で指
定することもできる。 RSSのダウンロードは定期
的・自動的に行われ, 利用者からはあたかもWeb
サーバから更新情報が利用者に定期的に送り込ま
れているかのように見える。このため, RSSによる
サービスはプッシュ型のサービスともいえる。
Webにより情報を発信する側においては,RSSを
用意し利用者にこれを取得させることで, 従来の
ようにWebページを更新したことをホームページ
に記載し一方的にアクセスされることを待つので
はなく, 能動的に最新の情報を提示し見てほしい
情報そのものに利用者を誘導することが可能とな
るなどの利点を有している。 また, XMLで記述さ
れていることから, 他の情報とのリンクも容易に
行え, 同じRSSで記述された異なる情報源からの
情報を組み合わせひとつのRSSとして提供するこ
とも可能である。
1.4 RSSリーダ
利用者が各Webサイトで提供されているRSSを講
読するには, RSSリーダと呼ばれるソフ トウエア
などを利用する。 このRSSリーダを用いることで,
利用者が登録したRSSを定期的に取得して, 更新
された情報の概要をまず把握し, その内容を取捨
選択した上でWebサイ トにアクセスすることが可
能である。 また, 複数のRSSを1つのRSS リーダで
同時に取得することで, 複数のWebサイ トの更新
内容を一度に把握できる。
また, 提供されるRSS中には幾つかの記事の更
新情報が記載されているが, それぞれの記事につ
いてあたかも電子メールのように既読・未読の管
理も容易に行える。 また, キーワードなどによる
フ ィルタリングも可能である。 これによ り, 関心
のあるWebサイ トが更新されているかどうかを確
認するために, 従来のようにWebブラウザなどに
よ り手動で巡回することなく, 複数のWebサイ ト
の更新情報を自動的に把握できる。
このように, RSSを利用することにより, Web上
の最新情報に効率的に, かつ迅速にアクセスでき
る。情報を受け取る利用者においても, 分散した
情報源から選択した情報だけが自動的に配信され
閲覧できるシステムは, インターネッ ト上の情報
源を渡り歩いて情報の検索と収集を行う従来のス
タイルに変革をもたらすものである。
2. 学術分野での適用事例,サービス提供の可能性
2.1 国外における利用事例
RSSを利用した図書館, 学術分野でのサービス
についてその可能性を考えてみたい。例えば, 自
館の休館日やサービス変更のお知らせなどの通知
をはじめ, 雑誌の目次情報や図書館での新着受け
入れ情報など, 速報性が重視される情報源につい
てRSSによ り情報配信を行うことは有効なサービ
スである と考えられる。現在の主流であるblogを
中心と したRSSの利用と比較して, 学術分野での
RSS(RDF Site Summary)を活用した新たな図書館サービスの展開
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利用は端緒についたところであり, 今後さまざま
なサービスが登場することが予想される。
RSSによる学術情報提供については国外が先行
している。例えばカナダのアルバータ大学図書館
では, 図書館からのお知らせだけでなく, 新着図
書について学内の図書館ごとに, またサブジェク
トごとに分類したRSSを提供している2)。
またNature, Scienceなど主要な学術雑誌の目次
情報のアラートサービスとして, 従来から提供さ
れていた電子メールに加えRSSによる提供が始まっ
ている。例として, 当センターが提供している電
子メールによる洋雑誌目次情報提供サービス3)のう
ち各研究機関からの提供希望が多い主な外国雑誌
と出版社などが提供するRSSのURLを表1に示す。
参照頻度の多い雑誌のほとんどがRSSに対応して
いることがわかる。
RSSはXMLであるため, 名前空間 (モジュール)
を追加することで要素を拡張することができる。
多くの学術雑誌の場合, 一般的なRSSの記述要素
(表2) に加え, 掲載誌名, 著者, 巻号, ページなど
論文の書誌事項を詳細に記載するため, 名前空間
としてPRISM注1)やDublin Core注2)の要素を, さらに
詳細な例では著者の姓と名の別についてFOAF注3)
を使用するなど, 一般的なRSSの記述要素では記
載しきれない情報を表している。 また, オンライ
ンジャーナルに収載された論文の確実な所在を記
述するため, DOI注4)を併せて記載する例が多い。
このような記述要素の拡張は, 単にRSSリーダで
の利用にとどまらず, 将来的には他のデータベー
スやWebサービスとXMLによ り連携し, よ り高度
なサービスを可能とするための布石であろう。
データベースの検索結果もRSSで受信可能であ
る。National Library of Medicineが作成し, 無償で提
供している医学・生物学分野のデータベースであ
るPubMedの検索結果については, テキストファイ
ルでのダウンロードや電子メールでの送信が可能
であるが, RSSでも受け取れる。検索結果の出力先
として 「RSS Feed」 を選択すると, 出力件数とRSS
の名称 (初期値は検索したキーワード) を選択で
き, 「Create Feed」 ボタンを押すと専用のRSSのリ
ンクが生成される。このURLをRSSリーダに登録す
れば定期的に検索結果が配信され,興味のあるキー
ワードについての最新情報を追うことができる。
表1 農林水産省試験研究機関主要購入洋雑誌とRSS
※特に記載がない場合はRSSの基本要素のみを使用
雑誌名上段:雑誌 Web サイト URL 付加情報 追加され
ている名前空間下段:RSS フィード URL RSS バージョン
American Naturalist http://www.journals.uchicago.edu/AN/home.html DOI, 抄録有り─