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RSS(RDF Site Summary)を活用した 新たな図書館サービスの展開 ―OPAC2.0へ向けて― 賢紀 1 ;宮坂和孝 2 著者抄録: RSS RDF Site Summary) とは, タイトル, URL, 要約など更新情報を利用者に通知す るための仕組みであり, XMLで記述されている。 また, 名前空間の追加により, 書誌事項など詳細 な情報を加えることができ, 他のWebサービスなどと XMLにより連携した高度なサービスが可能と なる。本稿では, RSSの概要と現状について述べたほか, 農林水産研究情報センターの事例やRSS利点, サービス試行のための開発手法について紹介した。また, RSSを利用して, 書誌情報の閲覧だ けでなく利用者自らがこのデータを利活用して新たなサービスを構築可能とする新たな概念の OPAC OPAC2.0) という方向性を示した。 キーワード:農林水産研究情報, インターネット, メタデータ, RSSOPACWeb2.0 Development of the new online library services with RSS —Road to the OPAC2.0— HAYASHI Takanori 1 ; MIYASAKA Kazutaka 2 Author Abstract: RSS (RDF Site Summary) written by XML, is used to deliver the information such as title, URL and description of literature. In addition of name-space information, more detailed bibliographical data can be included in the RSS, and sophisticated delivery services linked up with any other web or XML services can be provided. In this paper, we describe the summary and common usage of RSS, and show the case study of Agriculture, Forestry and Fisheries Research Information Center’s services. The RSS’s merits and developing methodology for practical service are also described. By using RSS, client-users can not only browse the information but also use the information to develop their new services. That is new concept of OPAC, OPAC2.0, and we summarized its future direction. Key words: Agriculture, Forestry and Fisheries Research Information, internet, metadata, RSS, OPAC, Web2.0 原稿受理 (2006-02-22(情報管理 49 (1): 11-231. RSS概況 1) 1.1 RSSとは RSS とは更新情報を利用者に通知するための仕 組みであり, XML で記述されている。このように 記述された情報はRSS フィードとも呼ばれる (以 下, 本稿では技術としてのRSS および情報として RSS フィードを併せてRSS と記載する)。 1 農林水産省農林水産技術会議事務局筑波事務所研究情報課 (農林水産研究情報セン ター) (〒305-8601茨城県つ く ば市観音台2-1-9Tel. 029-838-7283 E-mail: [email protected] 1 Research Information Division, Tsukuba Office, Agriculture, Forestry and Fisheries Research Council Secretariat, Ministry of Agriculture, Forestry and Fisheries. (Agriculture, Forestry and Fisheries Research Information Center)(2-1-9 Kannon-dai, Tsukuba-shi, Ibaraki 305-8601) 2 農林水産省農林水産技術会議事務局筑波事務所電子計算課 (農林水産研究計算セン ター) Tel. 029-838-7330 E-mail: [email protected] 2 Computer Division, Tsukuba Office, Agriculture, Forestry and Fisheries Research Council Secretariat, Ministry of Agriculture, Forestry and Fisheries. (Computer Center for Agriculture, Forestry and Fisheries Research)
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Development of the new online library services with RSS -Road to the OPAC2.0-

Apr 27, 2023

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RSS(RDF Site Summary)を活用した新たな図書館サービスの展開

―OPAC2.0へ向けて―

林 賢紀1 ;宮坂和孝2

著者抄録:RSS (RDF Site Summary) とは, タイトル, URL, 要約など更新情報を利用者に通知す

るための仕組みであり, XMLで記述されている。 また, 名前空間の追加により, 書誌事項など詳細

な情報を加えることができ, 他のWebサービスなどとXMLにより連携した高度なサービスが可能と

なる。本稿では, RSSの概要と現状について述べたほか, 農林水産研究情報センターの事例やRSSの利点, サービス試行のための開発手法について紹介した。また, RSSを利用して, 書誌情報の閲覧だ

けでなく利用者自らがこのデータを利活用して新たなサービスを構築可能とする新たな概念の

OPAC (OPAC2.0) という方向性を示した。

キーワード:農林水産研究情報, インターネット, メタデータ, RSS, OPAC, Web2.0

Development of the new online library services with RSS—Road to the OPAC2.0—

HAYASHI Takanori 1; MIYASAKA Kazutaka 2

Author Abstract: RSS (RDF Site Summary) written by XML, is used to deliver the informationsuch as title, URL and description of literature. In addition of name-space information, more detailedbibliographical data can be included in the RSS, and sophisticated delivery services linked up withany other web or XML services can be provided. In this paper, we describe the summary andcommon usage of RSS, and show the case study of Agriculture, Forestry and Fisheries ResearchInformation Center’s services. The RSS’s merits and developing methodology for practical serviceare also described. By using RSS, client-users can not only browse the information but also use theinformation to develop their new services. That is new concept of OPAC, OPAC2.0, and wesummarized its future direction.

Key words: Agriculture, Forestry and Fisheries Research Information, internet, metadata, RSS,OPAC, Web2.0

原稿受理 (2006-02-22) (情報管理 49 (1): 11-23)

1. RSS概況1)

1.1 RSSとは

RSSとは更新情報を利用者に通知するための仕

組みであり, XMLで記述されている。 このように

記述された情報はRSSフ ィード とも呼ばれる (以

下, 本稿では技術と してのRSSおよび情報と して

のRSSフィードを併せてRSSと記載する)。

1 農林水産省農林水産技術会議事務局筑波事務所研究情報課 (農林水産研究情報センター)

(〒305-8601茨城県つくば市観音台2-1-9) Tel. 029-838-7283 E-mail: [email protected] Research Information Division, Tsukuba Office, Agriculture, Forestry and Fisheries Research Council Secretariat, Ministry of

Agriculture, Forestry and Fisheries. (Agriculture, Forestry and Fisheries Research Information Center)(2-1-9 Kannon-dai, Tsukuba-shi, Ibaraki 305-8601)

2 農林水産省農林水産技術会議事務局筑波事務所電子計算課 (農林水産研究計算センター)

Tel. 029-838-7330 E-mail: [email protected] Computer Division, Tsukuba Office, Agriculture, Forestry and Fisheries Research Council Secretariat, Ministry of Agriculture,

Forestry and Fisheries. (Computer Center for Agriculture, Forestry and Fisheries Research)

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情報

管理 Vol. 49 No. 1 April 2006

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1.2 RSSの歴史と経緯

RSSそのものの歴史は古く,1999年3月にNetscape

社が自社のポータルサイ トMy Netscapeに 「チャン

ネル」 としてWebサイ トの見出し一覧を登録する

ための手段と して開発・公開したものがRSSバー

ジョン0.9 (以下 「RSS0.9」 のように表記) である。

さらに, 記述する要素に概要などが加えられるな

ど伝達する情報の内容とXMLの定義手法を中心に

改良,バージョンアップが重ねられ,現在はRSS1.0,

RSS2.0などの異なるバージョンが存在し, それぞ

れ名称も

・ RDF Site Summary (RSS0.9, RSS1.0)

・ Really Simple Syndication (RSS2.0)

などと異なっている。

2000年以降のblog (日記形式で頻繁に情報が更

新・発信できるWebサイ ト作成システム) が流行

し,その代表的なシステムであるMovableTypeなど

が更新内容をRSSで配信する機能を標準で有して

いたことが, RSSの利用や普及・RSSリーダなど周

辺のソフトウエアの開発を活発にした。 また, 仕

様がオープンであり, 簡易なXMLで記述されてい

たため, Perl, PHPなどWebで使用される主要なス

クリプト言語での処理が容易であったこともRSS

の普及を後押しした。

現在では, blogのみならず, 朝日新聞, 日経BP,

J-Waveなどニュースサイ トやマスコミ ・一般企業

などのサイ トでも更新情報を通知するサービスと

してRSSの提供が始まっている。

1.3 RSSの仕組み

RSSの実体は, タイ トル, URL, 要約, 更新日時

などの更新情報の概要を,規格に沿ったフォーマッ

トでタグ付けされたXMLファイルである。更新情

報の提供者はこのファイルをWebサイ トに置き,利

用者はこれをRSSリーダなどを用いて参照するこ

とでWebサイ トの更新情報を取得できる。RSSの取

得は定期的に行われ, その間隔は, 提供者がRSSの

中に記述するこ とも, 利用者がRSSリーダ側で指

定することもできる。 RSSのダウンロードは定期

的・自動的に行われ, 利用者からはあたかもWeb

サーバから更新情報が利用者に定期的に送り込ま

れているかのように見える。このため, RSSによる

サービスはプッシュ型のサービスともいえる。

Webにより情報を発信する側においては,RSSを

用意し利用者にこれを取得させることで, 従来の

ようにWebページを更新したことをホームページ

に記載し一方的にアクセスされることを待つので

はなく, 能動的に最新の情報を提示し見てほしい

情報そのものに利用者を誘導することが可能とな

るなどの利点を有している。 また, XMLで記述さ

れていることから, 他の情報とのリンクも容易に

行え, 同じRSSで記述された異なる情報源からの

情報を組み合わせひとつのRSSとして提供するこ

とも可能である。

1.4 RSSリーダ

利用者が各Webサイトで提供されているRSSを講

読するには, RSSリーダと呼ばれるソフ トウエア

などを利用する。 このRSSリーダを用いることで,

利用者が登録したRSSを定期的に取得して, 更新

された情報の概要をまず把握し, その内容を取捨

選択した上でWebサイ トにアクセスすることが可

能である。 また, 複数のRSSを1つのRSS リーダで

同時に取得することで, 複数のWebサイ トの更新

内容を一度に把握できる。

また, 提供されるRSS中には幾つかの記事の更

新情報が記載されているが, それぞれの記事につ

いてあたかも電子メールのように既読・未読の管

理も容易に行える。 また, キーワードなどによる

フ ィルタリングも可能である。 これによ り, 関心

のあるWebサイ トが更新されているかどうかを確

認するために, 従来のようにWebブラウザなどに

よ り手動で巡回することなく, 複数のWebサイ ト

の更新情報を自動的に把握できる。

このように, RSSを利用することにより, Web上

の最新情報に効率的に, かつ迅速にアクセスでき

る。情報を受け取る利用者においても, 分散した

情報源から選択した情報だけが自動的に配信され

閲覧できるシステムは, インターネッ ト上の情報

源を渡り歩いて情報の検索と収集を行う従来のス

タイルに変革をもたらすものである。

2. 学術分野での適用事例,サービス提供の可能性

2.1 国外における利用事例

RSSを利用した図書館, 学術分野でのサービス

についてその可能性を考えてみたい。例えば, 自

館の休館日やサービス変更のお知らせなどの通知

をはじめ, 雑誌の目次情報や図書館での新着受け

入れ情報など, 速報性が重視される情報源につい

てRSSによ り情報配信を行うことは有効なサービ

スである と考えられる。現在の主流であるblogを

中心と したRSSの利用と比較して, 学術分野での

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RSS(RDF Site Summary)を活用した新たな図書館サービスの展開

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利用は端緒についたところであり, 今後さまざま

なサービスが登場することが予想される。

RSSによる学術情報提供については国外が先行

している。例えばカナダのアルバータ大学図書館

では, 図書館からのお知らせだけでなく, 新着図

書について学内の図書館ごとに, またサブジェク

トごとに分類したRSSを提供している2)。

またNature, Scienceなど主要な学術雑誌の目次

情報のアラートサービスとして, 従来から提供さ

れていた電子メールに加えRSSによる提供が始まっ

ている。例として, 当センターが提供している電

子メールによる洋雑誌目次情報提供サービス3)のう

ち各研究機関からの提供希望が多い主な外国雑誌

と出版社などが提供するRSSのURLを表1に示す。

参照頻度の多い雑誌のほとんどがRSSに対応して

いることがわかる。

RSSはXMLであるため, 名前空間 (モジュール)

を追加することで要素を拡張することができる。

多くの学術雑誌の場合, 一般的なRSSの記述要素

(表2) に加え, 掲載誌名, 著者, 巻号, ページなど

論文の書誌事項を詳細に記載するため, 名前空間

としてPRISM注1)やDublin Core注2)の要素を, さらに

詳細な例では著者の姓と名の別についてFOAF注3)

を使用するなど, 一般的なRSSの記述要素では記

載しきれない情報を表している。 また, オンライ

ンジャーナルに収載された論文の確実な所在を記

述するため, DOI注4)を併せて記載する例が多い。

このような記述要素の拡張は, 単にRSSリーダで

の利用にとどまらず, 将来的には他のデータベー

スやWebサービスとXMLによ り連携し, よ り高度

なサービスを可能とするための布石であろう。

データベースの検索結果もRSSで受信可能であ

る。National Library of Medicineが作成し, 無償で提

供している医学・生物学分野のデータベースであ

るPubMedの検索結果については, テキストファイ

ルでのダウンロードや電子メールでの送信が可能

であるが, RSSでも受け取れる。検索結果の出力先

として 「RSS Feed」 を選択すると, 出力件数とRSS

の名称 (初期値は検索したキーワード) を選択で

き, 「Create Feed」 ボタンを押すと専用のRSSのリ

ンクが生成される。このURLをRSSリーダに登録す

れば定期的に検索結果が配信され,興味のあるキー

ワードについての最新情報を追うことができる。

表1 農林水産省試験研究機関主要購入洋雑誌とRSS

※特に記載がない場合はRSSの基本要素のみを使用

雑誌名上段:雑誌 Web サイト URL 付加情報 追加され

ている名前空間下段:RSS フィード URL RSS バージョン

American Naturalist http://www.journals.uchicago.edu/AN/home.html DOI, 抄録有り─

http://www.journals.uchicago.edu/cgi-bin/rss?jrnl=AN&type=pwr 2.0

Nature http://www.nature.com/nature/current_issue DOI, 抄録有り PRISM,DC

http://www.nature.com/nature/current_issue/rss 1.0

Plant Journal http://www.ingentaconnect.com/content/bsc/tpj DOI 有り PRISM,DC,FOAF

http://api.ingentaconnect.com/content/bsc/tpj/latest?format=rss 1.0

Proceedings of the National Academy of Sciences of The USA

http://www.pnas.org/ DOI 有り PRISM,DC

http://www.pnas.org/rss/current.xml 1.0

Science http://www.sciencemag.org/ ─ DC

http://www.sciencemag.org/rss/current.xml 1.0

表2 RSS1.0 記述要素

要素名一般的な記載内容

情報センターが OPAC で出力している内容

title タイトル 書誌名

link URL 書誌詳細表示の URLdescription ページの内容

または概要書誌事項 (資料区分 ,出版者, 出版年 , 所蔵年次・巻次 ,配架場所 )

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2.2 国内図書館での利用事例

国内の図書館においてもRSSの利用が増加して

いる。

京都大学図書館機構4), 一橋大学附属図書館5)な

どにおいては, ト ップページ上でサービスの案内

や更新情報を通知する 「最新のお知らせ」 などと

同じ情報をRSSでも配信している。この中でも, 京

都大学図書館機構ではWebサイ トの構築にオープ

ンソースのコミュニティサイ ト構築 ・管理ソフト

であるXOOPS6)が使用されている。図1に事例を示

す。 XOOPSは掲示板, ニュース, リンク集などさ

まざまな W eb ページ, サービスを従来のような

HTMLによるページ構築によらず独自の管理画面

を通じてWeb上で編集, 管理を行うことが可能で

ある。ニュースについてはRSSを出力する機能が

標準で用意されており, これらのソフトウエアの

利用によ り図書館Webサイ トの構築, 日々の管理

作業の効率化のみならず自館のお知らせなどのRSS

配信などを提供可能にしている。一橋大学附属図

書館は, これに加え図書の新着受け入れ情報の配

信をRSSで行っている先駆である。

また,「国立国会図書館デジタルアーカイブポー

タル プロトタイプ」 7)は,国内のデジタル情報を統

合してアクセスできる総合的なポータルサイ トの

技術検証用に構築されているが, 昨年12月から統

合検索の対象となるデジタルアーカイブと して,

「新書マップ」 が加えられている。 これは, 「新書

マップ」 内の1,000余のテーマについて記したRSS

を受け取り, この内容をメタデータとしてポータ

ルサイ トで処理し, 別の情報源から取得した各種

のメタデータと同様に統合検索を可能としている。

いずれもXMLで記述されているからこそ統合化が

容易に行えている。

3. RSSによるサービス提供の実際とその手法

3.1 農林水産研究情報センターにおける事例

農林水産研究情報センター(以下「情報センター」

という。) は, 農林水産分野に関する国内外の研究

情報を迅速かつ的確に収集・提供することを目的

に, 各種データベースの提供や関係文献などの収

集保存に努めている。

情報センターならびに農林水産省所管の試験研

究を業務とする独立行政法人など, 農林水産関係

研究機関 (以下 「各研究機関」 という。) では, 情

報センターで導入した 「図書資料管理システム」

(Agriculture Library Information System: ALIS) によ

り, 全国の56研究拠点で所蔵する図書資料類の書

誌及び所蔵情報を一元的に管理している。

情報センターにおいては2003年初頭よ りRSSを

利用した情報サービスを試行していた。試行の過

程から,RSSによるサービスにより従来の電子メー

ルなどと比較して速報性が高まること, またXML

図1 京都大学図書館機構WebサイトにおけるRSSフィード提供

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RSS(RDF Site Summary)を活用した新たな図書館サービスの展開

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で構造化されたデータは所有しているデータベー

スなど他の情報源との連携が容易であることから,

今後のサービス展開に有用と考えた。

そこで, まずALIS上で処理している図書・雑誌

の新着情報についてRSSによる提供を行うこととし

た。加えて, 雑誌については, 現在受け入れを行っ

ている図書室ごとに雑誌名, 所蔵機関と最新10件

の受け入れ巻号を掲載したRSSを提供している。

機能の実装であるが, ALISサーバ側に1日ごと,

また各研究機関ごとに新着図書・雑誌受け入れ情

報をHTMLで出力する機能を追加し, これをRSS配

信用サーバがHTTPにより1日1回自動取得,専用の

XSLスタイルシートによりRSSに変換しデータベー

ス (Intersystems製DBMSのcachéを使用) に格納し

ている。各研究機関Webサーバの新着情報につい

ては, 新着情報などを掲載しているページそれぞ

れの構造に合わせてXSLスタイルシートを用意し,

同様にRSSに変換, データベースに格納している。

また, 取得したデータは, Webサーバ更新情報, 新

着図書・雑誌受け入れ情報について各研究機関ご

とにIDを付与して管理している。 これら機関別新

着図書・雑誌受け入れ情報の出力については,OPAC

上に所蔵機関, 件数, 表示日数 (過去1~7日), 表

示形式を選択して表示する専用のページ (http://

opac1.cc.affrc. go.jp/alis/newarrival.csp) を用意してい

るほか,表3に示すとおりURL中のパラメータに必

要事項を記述し直接RSSあるいはHTMLでの表示を

行うことが可能である。主な出力要素は表2で示し

たとおりである。 RSSリーダなどではこの内容が

表示される。

こうして生成された情報は,OPAC上で提供する

だけでなく多方面で利用している。

例えば, 各研究機関のRSS配信ポータルである

MAFFIN News Feeds Center8)において,各研究機関

の更新情報や新着のプレスリ リースなどの提供を

開始した。また,情報センターホームページ(http:/

/ss.cc.affrc.go.jp/ric/home.html) では図書 ・雑誌新着

情報を参照できる(図2)。このサービスでは,「く っ

つきRSS」 9)というPerlスクリプトを利用して, RSS

によ り提供されている情報センターの新着図書・

雑誌受け入れ情報を表示している。これはRSSを取

得しタイ トル, リンク先URLなど必要な情報を取

り出し通常のHTMLに挿入可能なJavaScriptファイ

ルに変換するスクリプトで,HTMLにJavaScriptとし

て挿入すると取得したRSSがHTMLとして表示され

る。

他の情報源と組み合わせ, よ り利便性を高めた

サービスの実験も行っている。電子メールによる

洋雑誌目次情報提供サービスとALISから出力され

る各研究機関図書室での雑誌受け入れ状況を組み

合わせ, 到着した目次情報の掲載号と目次情報へ

のリンク, またこの号がどの図書室で到着してい

るか, あるいは未着かをRSSによ り配信する実験

を行っている。同時に, HTMLでも提供している。

この「購入洋雑誌新着目次/到着状況配信サービス」

(http://www.affrc.go.jp/ja/rss/coinsplus.html)では,

OPACと同じデータを利用しているが,利用者の前

には直接現れない。利用者が見るのは自動処理さ

れXMLで標準的な記述がなされたデータ, あるい

はそれをHTMLに変換したデータである。

参考までに,OPACと出力したRSSについて,2005

年4月から12月末までの利用件数を表4に示す。RSS

については順調に利用が伸び,OPAC全体のアクセ

表3 URLによる出力情報の指定

図書・雑誌新着情報RSSフィード URLによる指定例

例:http://www3.affrc.go.jp/rss/RSS.rsssrv.cls?id=147&days=7&context=rdf

id 情報源識別番号  例 情報センター図書新着情報 147    情報センター雑誌新着情報 148

days 指定した日数分の新着情報を表示(最大 7 日)

context 表示形式指定  xml RSS 出力(省略時)  html HTML 出力

図2 農林水産研究情報センターホームページでのRSSフィード展開例

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ス件数の1割をRSSが占めている。

3.2 スクリプト言語によるRSSへのデータ変換

3.2.1 概要

この項では, 自作スク リプト によるRSS作成に

ついて紹介する。基本的な作成方法を紹介した後,

例として書誌情報を含むCSV形式のデータからRSS

を生成するPerlスク リプトを示す。想定している

のは, 図書館における新着図書情報のRSS配信で

ある。特にCSV形式でのデータ出力をサポート し

ている図書館システムを利用している図書館で応

用可能であろう。

3.2.2 RSSの作成方法

スク リプト言語の種別を問わず, 基本的なRSS

の作成方法は以下のとおりである。

(1) 配信したい情報を含むデータを準備する

(2) データから必要な情報を抽出・再構成する

(3) RSSを書き出す

まず(1)であるが,配信したい情報が含まれるデー

タは, 加工しやすいテキスト形式で存在すること

が望ましい。後述するが, 準備するデータはWeb

経由で取得できるHTMLファイルやCGIスクリプト

の出力結果でも全く構わない。Excelなどのアプリ

ケーション用ファイルで情報を保存している場合

は,そのままの状態では情報の加工が難しいため,

CSV形式などに変換して保存し直すなどの工夫が

必要となる。

RSSの作成で一番難しいのは(2)である。 ここで

は, (1)で用意したデータから, RSS出力に必要な

情報をスクリプト上で正確に取り扱える状態にす

る作業を行う。例えばデータがCSV形式であれば,

CSV形式をスクリプト側で解析し, 解析によ り抽

出した情報を変数に代入し, 変数を組み合わせて

RSS出力用の情報を再構成する作業を行う。 Perl,

Ruby,Pythonなど最近のスクリプト言語であれば,

モジュールやライブラリ と呼ばれる追加機能が充

実しており, 解析作業をそれらの追加機能に任せ

ることができる場合が多い。

最後に(3)に関してだが, 最近のスクリプト言語

では, モジュール・ライブラリの充実により, RSS

作成上の問題はほとんど無い。Perlであれば, RSS

のインポート・エクスポートを行うためのXML::RSS

モジュールの利用によ りXMLやRSSの文法に関す

る知識が無くてもRSS出力が可能である。

3.2.3 RSS作成に関する注意点

XMLでは文字コードを自由に指定できるため,

Shift_JISやEUC-JPをそのまま利用することも可能

である。しかし, 最近の潮流としては日本語のRSS

でもXMLの標準文字コードであるUTF-8を用いる

のが一般的となっている。RSSをUTF-8で作成して

おく と海外製のRSSリーダでも情報が読み込める

ようになることが多いため, 情報配信の対象を広

げるこ とができる。 もし問題が無いのであれば,

文字コードをUTF-8に変換しておく とよいだろう。

また, XMLでは構成要素を自由に拡張できる代

わりに, 規格によって定められた文法を厳密に守

ることが求められる。WebブラウザやRSSリーダで

は, HTMLに文法の誤りがあった場合は何とか表

示できるように補正を行うが, XMLに文法の誤り

があった場合は文法エラーとするのが一般的であ

る。すなわち, XMLの一種であるRSSに文法の誤

りがあった場合は, 利用者側で正しく読み込むこ

とができない。自作スク リプトでRSSを作成した

場合はW3C RDF Validation Service10)などで文法を

チェックしておく とよい。

3.2.4 スクリプトの例

例として書誌情報を含むCSV形式のデータから

RSSを生成するPerlスクリプトを作成した。このス

ク リプト はhttp://www.affrc.go.jp/ja/rss/からダウン

ロードできるので, お試し頂きたい。 このスクリ

プトでは, Shift_JISでエンコードされたCSV形式の

新着図書情報ファイルからUTF-8でエンコードさ

表4 ALIS WebOPAC 利用形態別アクセス件数(2005年4月~12月)

※海外についてはロボットによるアクセスを除く

出力情報 機関別新着図書・雑誌情報雑誌別

新着受入情報

OPAC

アクセス件数

出力形式 HTML RSS RSS HTML

農水省内 1,025 7,077 14,607 89,001

その他国内 576 4,678 1,173 12,469

海 外※ 200 2,155 38,706 11,933

合 計 1,801 13,910 54,486 113,403

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RSS(RDF Site Summary)を活用した新たな図書館サービスの展開

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れたRSSを作成している。

3.2.5 OPACなどからのRSS作成

スクリプトの例ではCSV形式のデータからRSSへ

の変換を行ったが, もちろんCSV形式以外の情報

でもRSSに変換可能である。特にOPACなどで自機

関図書館の所蔵情報をWeb上で公開している場合

は, Web上の公開情報を取り込み, 情報抽出を行

うことによ り, 権利上の問題が無い限りにおいて

現在提供しているOPACにRSS配信機能を追加する

ことが可能である。

このように, 主に取得したHTMLのソースから

必要な情報を取得・加工して利用する手法は, ス

ク リーン ・ スクレイピング(screen scraping)と呼ば

れている。本手法については,情報元となるHTML

の内容によりデータ加工の技術が千差万別である

ため詳述を避けるが, 「Spidering Hacks」 11)に非常

に詳しく紹介されているので参考にされたい。な

お, 情報センターで提供している 「購入洋雑誌新

着目次/到着状況配信サービス」 のRSS作成には

本手法が用いられている。

3.2.6 自作スクリプトによるRSS配信

このような段階を踏むことで, RSSは自作スク

リプトから作成できる。作成したRSSを利用者が

Web経由でアクセス可能な場所に設置することで,

RSS配信が可能になる。

完成したスク リプトは, ほとんどのGUIアプリ

ケーションとは異なり, cronなどの仕組みによ り

実行を自動化することが可能である。毎日更新さ

れる新着図書情報を取得してRSSに変換する作業

をスクリプトによって自動化できれば, 利用者に

提供するサービスとして組み込むことを検討して

もよいだろう。なお, CGIによる リアルタ イムに

RSSを表示するサービスも可能であるが,Webペー

ジの表示と同時にRSSを取得するため, ページの

展開に若干の時間を要するほか, 繰り返しアクセ

スするなど場合によってはRSSを提供しているWeb

サーバの負荷となることもある。 このため, アク

セス数の多いページにRSSを展開する際は, リア

ルタイムに生成するのではなく, Webサーバなど

でRSSをいったんファイルなどに保存しておく こ

とが望ましい。

3.3 アプリケーションによるRSS出力

3.3.1 WikiEngineの利用

この項では, アプリケーションを活用したサイ

ト構築と RSS の配信について紹介する。前述の

XOOPSのようなCMSを利用することで, Webサイ

トの構築, 維持管理を容易にすることが可能であ

る。 これらCMSの多くは更新された情報について

自動的にRSSを生成し配信可能な機能を有してお

り, これを利用するこ とで, 従来の静的なHTML

によ り構成されたWebサイ ト とは異なるサービス

展開が可能と考えられる。

例えば, 東京工科大学図書館蒲田分室のWebサ

イ ト(http://kamata.lib.teu.ac.jp/)はWikiEngineのひと

つであるPukiWiki Plus!12)で構築されている (図3)。

図3 PukiWiki Plus!での図書館Webサイト構築例

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情報

管理 Vol. 49 No. 1 April 2006

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WikiEngineとは, Webブラウザから簡単にWebペー

ジの発行・編集などが行えるCMS注5)で, 閲覧も編

集もWebブラウザから行う。複数人が共同でWebサ

イ トを構築していく利用法を想定しており, 閲覧

者が簡単にページの修正や新しいページの追加が

可能である。 またHTMLの知識が無くてもリスト

やリンクを簡単に作成できるよう, 独自の, かつ

WikiEngineであればほぼ共通の記述ルールが定め

られている。 またプラグインの利用によ り, 掲示

板やカレンダー, RSSリーダの機能などもコマン

ドを本文に記述するだけで利用できる (図4) 。同

分室では, PukiWiki Plus!の持つカレンダー機能を

利用し, 通常カレンダーに記入する 「予定」 の代

わりに新着資料のタイ トル, 特集などの情報を入

力している。追加された情報は日付ごとに自動的

にファイルが作成され, また新着情報としてペー

ジ左下の 「最新の5件」 に表示されるほか, 同時に

RSSも生成される。新着資料以外にも新たなお知

らせや情報を掲載した場合でも同様である。なお,

情報の追加・更新にはパスワードを要求させるな

ど, セキュリティ面にも配慮がなされている。

3.3.2 専用エディタなどによる入力

XOOPS, Wikiといったアプリケーションなどを

利用しない場合, また図書館システムがRSSの出

力に対応していない場合, 手作業によ りRSSを作

成することもできる。 ここではInfoMakerが提供す

るHeadline-Editor注6)の利用例を紹介する。

Headline-Editorでは, まず基本の要素となるRSS

のタイ トル, Webサイ トアドレス, RSSの設置場所

などを入力した後, 実際のRSSの内容 (item要素)

を記述する。入力は, 表計算ソフトに似た形態で

入力が可能で,要素順にデータを入力した Excel形

式ファイルからコピー&ペーストして入力するこ

ともできる。入力例を図5に示す。 item要素に含ま

れるtitle, link,dc:date,descriptionの各要素がRSS1.0

として正しく出力されていることが分かる。 この

ように, RSSの各要素を自由に入力することがで

き, 既に整理されたデータがある場合, または更

新頻度やデータ量が少ない場合には有効なツール

である。

3.4 RSSを発見してもらうために

このようにして作成したRSSであるが, 利用者

はどのようにしてこれを発見するのであろう。

「XML」 「RSS」 などページ中に表記しアイコン

と共にRSSへのリンクを張るのが一般的であるが,

さらに自動的にWebブラウザに発見してもらうた

めに, Autodiscovery リンクによ りRSS の場所を

HTMLファイル上に記述する。これによりFireFox,

Operaなど対応しているWebブラウザではRSSがそ

編集画面

HTMLタグを使わず、簡易に記述ここでは取得するRSSフィードのURLなどを記述している

表示画面

RSSフィードを取得、表示

図4 PukiWikiでの編集画面と表示例

Page 9: Development of the new online library services with RSS -Road to the OPAC2.0-

RSS(RDF Site Summary)を活用した新たな図書館サービスの展開

19

のページに存在していることを自動的に利用者に

知らせてくれる。 Autodiscoveryリンクの記載例と

ともにその例を図6に示す。

4. まとめと今後に向けて- OPAC2.0の提案

以上, RSSの概要ならびに図書館などにおける

利用の現状,サービス提供の手法について述べた。

手法により難易度に差はあるものの新たなサービ

ス展開の一助となれば幸いである。

図5 Headline-EditorでのRSSフィード作成例

図6 RSSフィードのアイコン例

Page 10: Development of the new online library services with RSS -Road to the OPAC2.0-

情報

管理 Vol. 49 No. 1 April 2006

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当初RSSはblogの更新通知を行う手法と して広

まったが, 図書館や学術分野においてもお知らせ

など簡易な情報から雑誌目次情報の配信,OPACや

データベースの検索結果の提供などその形態は多

岐にわたり, 今後利用が増加することは想像に難

くない。

Webベースのサービスは年々進化を遂げ, いま

や別途専用のアプリケーションをインストールし

てサービスを享受するのではなく, Webブラウザ

上で動作し利活用できるサービスが増加している

など, Webをプラッ ト フォームとしたサービス展

開がなされている。例えば, 地図サービスといえ

ば, 地図のデータがあり, それを検索するだけの

サ ー ビ ス が ほ と ん ど だ っ た。 こ れ に 対 し,

GoogleMapsでは, 単にGoogle上で地図検索・表示

サービスを提供するだけでなく, このデータを外

部から利用するための仕様を公開し, 利用者が自

分のデータベースなどとXMLで連携させて自由に

利用できる。結果, 地図上での求人検索など今ま

では考えられなかったようなさまざまなサービス

が実現されている13)。

このようなWebをプラッ ト フォームとした次世

代的なWebのあり方はTim O’Reillyによ りWeb2.0と

呼ばれている14)。現時点では, 特定のサービスや

アーキテクチャ, アプリケーションを指すもので

はないが, 情報技術を使った新しいアプローチ,

コンセプト といえる。 Web2.0にはいくつかの要素

があるが,主なポイント として以下2点を挙げてお

く。

(1) ユーザがサービスに組み込まれる

サービスやコンテンツをユーザがただ使うので

はなく, ベンダから提供されたプラッ トフォーム

を元にユーザが参加する形でコンテンツを形成,

利用する。

(2) 蓄積されたデータの開放とサービス連携

外部から利用するための仕様を公開し, 蓄積さ

れたデータを外部に開放提供する。提供されたデー

タによ り, 新しいサービスやソフトウエアが開発

され, XMLなどをベースに連携する。

この中で, メタデータを記述し配信するRSSは,

サービス, データベース間のスムーズな連携をサ

ポートし, 有機的なサービスが行われる基盤を形

成するものである。

これらの情勢を踏まえてRSSと図書館における

サービス, 特にOPACについて考えてみたい。

従来のOPACは自館の利用者に所蔵資料の機械検

索サービスを館内で提供する と ころに端を発し,

それがインターネッ ト上にサービスを広げ利用者

の利便を向上させることで現在に至っている。 し

かし, そのインターフェイスはコマンドラインか

らのコマンド投入によるなど検索に専門性が必要

であったものから, Webを利用した簡易なものに

まで進化してきたが,「キーワードを入力し検索結

果として書誌データの一部が返ってく る」 という

システムそのものについてはOPACの導入当初から

なんら変わっていない。

Web2.0といったインターネッ トサービスの変化

の状況を考慮すると, ここで欠けているのは利用

者に書誌データを開放し再利用可能とする, また

他のデータ と統合し利用する という視点である。

現状でも, EndNoteなどのz39.50によるOPAC検索

とデータダウンロードをサポートした文献管理ソ

フ トウエアは存在し, SFXのようなリンクリソル

バによる他のデータベースとの連携は行われてい

る。 しかし, 利用は主に文献収集を主に行う研究

者などに限られ, 広く一般に書誌データが開放さ

れているとはいえないのではないか。

そこで情報センターではRSSに着目している。今

まで, 図書管理システム中の書誌データは, OPAC

というインターフェイスを通じること以外で表面

に出ることはなかった。 RSSがこのデータを開放

する。書誌データのRSSは, 一般の利用者がURLで

簡易に指定し自由にダウンロードできる。 この書

誌データは, XMLによ り構造化されていることか

ら, 他のデータと組み合わせての再構築・再利用

が容易である。 これによ り, 一般利用者による多

様な情報の利用が促進されるのではないだろうか。

現に, 図書雑誌の販売を中心としたオンラインス

トアのひとつであるamazonでは, 通常のインター

フェイスを介さず外部のプログラムから自由に検

索できるWebサービス15)を公開し, 図書であれば

書名, 著者名, ISBN, 表紙画像などの商品情報を

取得し自分のblogなどで自由に利用することがで

きる。図書館において, 目録規則などによ りコン

トロールおよびメンテナンスされた信頼ある書誌

データを公開することは, ネッ トワーク上のデー

タサービスの基盤を成す公共財として利用されう

るものであり, 図書館としての新たな公共サービ

スともいえる。このような環境下では,既存のOPAC

による情報検索の枠を超え, 特定のインターフェ

イスに依存しない情報提供, そして進化した形で

の利活用が可能なOPACになると思われる。これを

次世代のOPAC と して, 「OPAC2.0」 と名付けたい

(図7)。

Page 11: Development of the new online library services with RSS -Road to the OPAC2.0-

RSS(RDF Site Summary)を活用した新たな図書館サービスの展開

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情報センターで試行している 「購入洋雑誌新着

目次/到着状況配信サービス」 では, 通常のOPAC

の検索インターフェイスを利用することなくXML

をベースと して連携することによ り, 他のRSSや

メタデータと組み合わせ, よ り付加価値の高い情

報提供を可能にしており, OPAC2.0に向けてひと

つのプロトタイプを提示するものと考えている(図

8)。

また, RSS2.0をベースとした横断検索の実装と

して, a9.com(http://a9.com/)がある。ここではamazon

上のデータのほか, the British Library の目録や

PubMedなどとの横断検索が可能である。対応する

各データベースへの検索式の投入方法や, 結果を

RSS2.0などで返すことなどについてはOpenSearch16)

で規定されており, 検索結果をRSS2.0で返すこと

が可能であれば, 対応したサービスの横断検索が

可能である。これもまた, RSSの次世代的な利用方

法といえよう。

ただし, RSS同士や他のメタデータ との連携を

考慮すると,その記述内容については,現行のRSS1.0

に標準で用意されている要素では不十分である。

例えば雑誌論文や図書などの書誌事項を記述する

場合にはPRISM, MODS注7)などよ り詳細な記述が

図7 OPAC2.0の利用イメージ

図8 目次情報へのリンクと所蔵情報の組み合わせ例

Page 12: Development of the new online library services with RSS -Road to the OPAC2.0-

情報

管理 Vol. 49 No. 1 April 2006

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可能なメタデータ標準を使用し, RSS中のデータ

をより詳細なものにする必要があるだろう。現在,

情報センターにおいても対応すべく準備を急いで

いる。

情報センターにおいては, 今後とも国際的な動

向を見つつ他機関との協調を図り, 所有するデー

タベースのXMLによる提供, またRSSを通じて利

用者のPC上へ加工可能な情報を迅速に届けるサー

ビスを展開していきたい。

書誌データを広く開放し, データサービスの基

盤となったとき, 利用者を中心にどのようなサー

ビスが形成されるか, 想像するに楽しみである。

なお, 本稿は2005年11月10日~11日に日本科学

未来館で開催された第2回情報プロフェッショナル

シンポジウムでの発表 「RSS(Rich Site Summary)を

活用したOPACサービスの展開-農林水産研究情報

センターにおける事例-」 予稿を元に加筆したも

のである。

本文の注

注1) 雑誌, 新聞, カタログ, 書籍, 雑誌などに関する

情報を処理するためのメタデータ標準。仕様の

詳細は<http://www.prismstandard.org/>, (参照

2006-01-31)を参照のこと。

注2) ネッ トワーク上の情報資源の発見のためのメタ

データ標準。多彩な分野の情報を記述できるよ

うに共通概念をまとめてシンプルに作られてお

り, RSSに組み合わせてよく利用される。仕様の

詳細は< http://dublincore.org/>, (参照 2006-01-31)

を参照のこと。

注3) 人と人のつながりや人物情報を表現するための

メタデータ標準。人名の姓名の別や関係, 属性

(この例では 「著者」) を表現可能。Blogなどでも

用いられる。仕様の詳細は<http://rdfweb.org/>,

(参照 2006-01-31)を参照のこと。

注4) Digital Object Identifier (デジタルオブジェクト識

別子) オンラインジャーナルなどデジタルオブ

ジェクトに割り当てられるユニークな識別子で,

International DOI Foundationによって管理。DOIを

用いることで, 特定の論文に直接リンクするこ

とが可能。仕様の詳細は<http://www.doi.org/>,

(参照 2006-01-31) を参照のこと。

注5) Headline-Editor についてはシェアウエア版の

Headline-Editor Standard版と無償で配布されるフ

リー・ソフトウエアのLite版がある。本稿ではLite

版を使用しているが, Standard版はFTPにより作

成したファイルのアップロードが可能であるな

ど, よ り高機能である。詳細については<http://

www.infomaker.jp/editorstd/>, (参照 2006-01-31)を

参照されたい。

注6) Contents Management System。 Webサイトのコン

テンツを編集・管理するためのシステム。直接

HTMLやスタイルシートを記述せず,Webサイ ト

の構築をソフトウエア上で自動的に行うことが

できる。

注7) Metadata Object Description Schemaの略。米国議会

図書館 (The Library of Congress) で開発された,

XMLで記述される書誌情報を表現するメタデー

タ標準。 MARC21のサブセッ ト として構成され,

MARC21とは異なり文字ベースのタグで表現さ

れる。 Dub l in Core よ り豊富な要素を持つが,

MARC21より詳細でないのが特徴。仕様の詳細は

<http://www.loc.gov/standards/mods/>, (参照 2006-

01-31)を参照されたい。

参考文献

1) RSS の概要については, 神崎正英. “RSS―サイト

情報の要約と公開”. Web of KANZAKI. (オンライ

ン), 入手先<http://www.kanzaki.com/docs/sw/

rss.html>, (参照2006-01-31)に詳しい。

2) University of Alberta Libraries. “New Books” . (オ

ンライン), 入手先<http://www.library.ualberta.ca/

newbooks/index.cfm>, (参照 2006-01-31).

3) the British Libraryと紀伊國屋書店が提携し提供し

ている目次情報配信サービスCOINSを利用し,各

試験研究機関の研究者に目次情報を電子メール

で配布している。紹介記事は林賢紀. “電子メー

ルによるコンテンツサービス(COINS)”.農林水産

研究情報センターニュース. (オンライン), 入手

先<http://www.affrc.go.jp/ja/info/news/ric/64/

64_4.htm>, (参照 2006-01-31).

4) 京都大学図書館機構. (オンライン), 入手先<http:/

/www.kulib.kyoto-u.ac.jp/>, (参照 2006-01-31)

5) 一橋大学附属図書館. (オンライン ), 入手先<http:/

/www.lib.hit-u.ac.jp/service/index_Ja.html>, (参照

2006-01-31)

Page 13: Development of the new online library services with RSS -Road to the OPAC2.0-

RSS(RDF Site Summary)を活用した新たな図書館サービスの展開

23

6) XOOPS Cube Project. “XOOPS Cube公式サイト” .

(オンライン), 入手先<http://jp.xoops.org/>, (参照

2006-01-31). PHP とDBMSであるMySQLを組み合

わせ簡易にインストール, サイ ト構築が可能。複

数の登録ユーザに掲示板等の環境を提供するコ

ミュニティサイ トの構築のほか,ポータルサイ ト

の構築にも利用できるCMSの一つ。

7) 国立国会図書館. “国立国会図書館デジタルアー

カイブポータル (プロトタイプシステム)” . (オ

ンライン), 入手先<http://www.dap.ndl.go.jp/>, (参

照 2006-01-31).

8) 農林水産研究情報センター. “MAFFIN News Feeds

Center” . 農学情報資源システム(Agropedia). (オ

ンライン), 入手先<http://www.affrc.go.jp/ja/rss/>,

(原稿執筆時点で構築中, 2006年2月15日より提供

開始).

9) 山下達夫 . “くっつきRSS” . くっつきRSS. (オン

ライン), 入手先<http://nais.to/~yto/tools/kuttuki-

rss/>, (参照2006-01-31).10) Prud’hommeaux, Eric. “W3C RDF Validation

Service”. (online), available from<http://www.w3.org/

RDF/Validator/>, (accessed 2006-01-31).

11) Hemenway, Kevin; Calishain, Tara; 村上雅章(訳).

Spidering Hacks. 東京, オライリー・ジャパン, 2004,516p.

12) PukiWiki Plus!. (オンライン), 入手先 <http://pukiwiki.cafelounge.net/plus/>, (参照 2006-01-31).

13) CNET JAPAN. “Google Maps APIを使った地図サー

ビスが次々登場―ブログ,求人,映画と連携”.(オ

ンライン) , 入手先<http://japan.cnet.com/news/

media/story/0,2000047715,20086378,00.htm>,(参照

2006-01-31).

14) O’Reilly, Tim. Web2.0とは? . インターネットマガ

ジン. 2006年1月号, 2006, p.51-63. (和訳)。原文は,

O’Reilly, Tim. “What is Web2.0.” (オンライン), 入

手先<http://www.oreillynet.com/pub/a/oreilly/tim/

news/2005/09/30/what-is-web-20.html>, (参照 2006-01-31).

15) アマゾンジャパン株式会社. “Amazon Webサービ

ス” . (オンライン), 入手先< http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/subst/associates/join/webservices.

html> (参照2006-03-3) . Amazonで販売されてい

る商品などの情報を,利用者が作成したプログラ

ムを通じてXMLなどの形式で自由に入手できる

Webサービスを提供している。サービスの詳細な

利用方法などについては, Bausch, Paul; 篠原稔和

(監訳). Amazon Hacks. 東京, オライリージャパ

ン, 2004. に詳しい。

16) OpenSearch. “OpenSearch”. (online), available from

<http://opensearch.a9.com/>, (accessed 2006-01-31).