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自治体 Web サイトにおける 公共事業情報の横断的比較システムの開発 日本建築学会情報システム技術委員会 33 回情報・システム・利用・技術シンポジウム セッション:都市【論文】 大阪大学 大学院工学研究科 環境・エネルギー工学専攻 ○ 福田知弘 西村善博 矢吹信喜 吉田善博 [email protected]
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Development of Information Cross-sectional Comparison System for Public Works on Municipality Web Sites (自治体Webサイトにおける公共事業情報の横断的比較システムの開発)

Jan 24, 2018

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Tomohiro Fukuda
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Page 1: Development of Information Cross-sectional Comparison System for Public Works on Municipality Web Sites (自治体Webサイトにおける公共事業情報の横断的比較システムの開発)

自治体Webサイトにおける公共事業情報の横断的比較システムの開発

日本建築学会情報システム技術委員会第 33回情報・システム・利用・技術シンポジウムセッション:都市【論文】

大阪大学 大学院工学研究科 環境・エネルギー工学専攻  ○ 福田知弘 西村善博 矢吹信喜 吉田善博

[email protected]

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0. 発表の構成

1. はじめに2. 既往の自治体 Webサイトにおける情報公開システム

の課題3. 開発した横断的比較システム4. プロトタイプシステムの試作と評価5. まとめ

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0. 発表の構成

1. はじめに2. 既往の自治体 Webサイトにおける情報公開システム

の課題3. 開発した横断的比較システム4. プロトタイプシステムの試作と評価5. まとめ

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1 .1 . 研究の背景 -1 公共事業の情報公開:事業計画における必須の条件

- 国土交通省所管の公共事業の構想段階における住民参加手続きガイドライン(国土交通省, 2003)

- 一般市民の公共事業への関心は以前より増.公共事業のアカウンタビリティ(説明責任)達成の一手段である情報公開が果たす役割は重要.

1. はじめに

95.5

83.6

30.2

17.0

15.4

11 .6

10.6

9.6

4.5

3.5

1 .9

1 .0

0.3

16.7

0 10 20 30 40 50 60 70 80 90 100

広報誌

インターネット新聞ラジオ

ケーブルテレビ雑誌

地上波テレビ

iモードなど携帯電話プロモーション(イベント・展示)

文字放送

BS,CS,データ放送( 地上波アナログ放送)DMダイレクトメール( )

BS CS・ デジタル放送

その他

N=311 (%) I CT (情報通信技術)の発展に伴い,公共事業の情報公開のため自治体Webサイトの活用は積極的な傾向.

- 公式Webサイトを開設している団体:都道府県では 47都道府県( 100% ),市区町村では 1 ,826団体( 99.9% ) 1)

- 都道府県・市区町村のWebサイトを閲覧経験のある国民は約 8割( 76.9% ) 2)

- 一般市民にとって自治体Webサイトは,公共事業の情報取得,生活情報や災害時の緊急情報の受信,自治体への意見発信のためのコミュニケーションツールとして機能.

図 . 地方公共団体の情報発信に利用されている媒体

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1 .1 . 研究の背景 - 2

Webサイト構築の現状:多くの自治体がアドホックな設計,標準化が必要.また,情報爆発の時代において,必要な情報に如何にアクセスするかも検討すべき課題

- 高木ら高 3):都市計画マスタープランの自治体 Webサイト内での公開状況について調査,より充実した Webページ作成のための指針,サイトのアクセシビリティ改善や同階層リンクなどの関連情報の提供の重要性を示唆.

- 大場ら大 4):安全・安心・快適な暮らしをサポートする情報提供ポータルを提案, Webサービスや RSS の活用可能性を示唆.

情報公開の分かりやすさの観点:一般市民が公共事業の内容を理解し評価を行うために,比較対象となる情報が必要.

- 具体的な解決策に踏み込んで提案を行った研究は些少.

地域振興情報ライブラリー 5)

- 国土交通省が地方公共団体等の協力を得て,日本全国の地域振興プロジェクト(公共事業と同義)情報を一元的に収集・整理・公開している DB (約 3万件)

- 特徴:多項目(地方公共団体名,担当部署,進行状況,プロジェクト課題,プロジェクト分野,事業の性格,背景・目的,具体的内容・事業の目的,事業の経緯,事業費,単独・補助の別,適用支援制度など)を収集.

- 課題:複数の公共事業に関する各項目情報を一つの画面上で横断的に閲覧することは不可能.

- 2010年春,システム上の問題が発見され運用停止中.システム再開は未定

1. はじめに

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1 .2. 研究の目的と方法 目的:

- 自治体 Webサイトにおける公共事業情報の横断的な比較の機会を創出することを目指し,複数の公共事業に関する各項目の情報を一つの画面上で比較閲覧可能な横断的情報比較システムを構築すること.

- Webサービス技術を応用し,比較閲覧可能なページを自動的に作成可能とする.

方法:- 既往の自治体 Webサイトにおける情報公開システムの現状と課題を整理- コア技術となる分散コンポーネント技術を考察し, Webサービスの優位性を示した上で,横断的情報公開システムの開発

- システムの実行可能性や利用可能性を考察するため,仮想自治体における公共事業を対象としたプロトタイプシステムを試作

1. はじめに

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0. 発表の構成

1. はじめに2. 既往の自治体 Webサイトにおける情報公開システム

の課題n 開発した横断的比較システムn プロトタイプシステムの試作と評価n まとめ

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2.1 . 自治体Webサイトにおける 情報公開システムの現状

自治体ごとに表現や情報の質と量の差は存在するものの,近年ではマルチメディアによる情報発信手法が広まりつつあり,一般市民がアクセスし易い,興味を持ちやすい,事業を理解しやすい情報公開手法への移行が窺える報 6)

- 3割を超える自治体:動画情報の提供動 7)

- 6割を超える自治体:携帯電話向けの公式サイトを所有所 6)

- VR ( Virtual Reality)が Webサイト上に公開され一般市民が空間検討を行いつつ事業計画に対する意見や意思の表明が可能となる情報公開手法が存在業 8)

- しかし, 7割近い国民が「情報の量や種類が豊富」「欲しい情報が手に入りやすい」「情報が分かりやすい」とは感じていない 2) .

2. 既往の自治体Webサイトにおける情報公開システムの課題

図 . 公共事業に対する国や自治体からの情報提供に対する評価

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2.2. 公共事業情報の    横断的比較システムの必要性 -1

横断的比較の必要性- 横断的比較:一般市民が公共事業の内容を理解し評価を行えるための環境づくり

- メリット:ある項目の数値情報が明らかに不当である場合への気づき,情報公開内容の差への気づきが可能に.

- 項目:他の自治体が実施している類似事業の事業費や,規模,期間等.

2. 既往の自治体Webサイトにおける情報公開システムの課題

横断的に事業情報を比較可能なシステムは存在せず

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2.2. 公共事業情報の    横断的比較システムの必要性 -2

自治体 Webサイト情報の横断的比較可能なシステムの現状- 全国都道府県の各自治体の情報を集め,横断的に閲覧することのできるポータルサイト 9)  :基礎情報や統計情報などに限られ,公共事業のような専門情報ではない.

- 個人の Webサイトやブログ 10):サイトの情報は一次情報の発信者(自治体)が直接的に提供している訳ではなく, Webサイトの管理者が一次情報の発信者情報を入手,加工,発信 ⇒ 情報の信頼性や鮮度には疑問.

- そのようなサイトでは,古い情報が掲載され続けている状態,リンク先がデッドリンクになった状態,誤った情報が掲載される状態(人為的ミス)が散見.

- 閲覧者が真に正しく,最新の情報を入手し,横断的に比較するために:一次情報の発信者である各々の自治体 Web サイトへアクセスし,公開されている情報群の中から,欲しい情報を探索し,抽出し,横断的に比較するという手間と時間を要する作業が必要.

- 既往の情報公開システムでは,公共事業に関する情報を横断的に比較可能なサイトは存在せず.

2. 既往の自治体Webサイトにおける情報公開システムの課題

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0. 発表の構成

1. はじめに2. 既往の自治体 Webサイトにおける情報公開システム

の課題n 開発した横断的比較システムn プロトタイプシステムの試作と評価n まとめ

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3.1 . システム設計

横断的比較システム:一般市民にとって事業理解や評価の判断指標となるよう,他自治体の類似事業を対象として横断的比較を可能とするシステム.既往システムでの課題として挙げた,情報の正確性と鮮度への対応を目指し,各自治体からの一次情報を対象とする.

3. 開発した横断的比較システム

フロー:複数の自治体からWebサービスによって公共事業情報が公開され,それらの情報がWebサービスリクエスタであるひとつのWebサーバを通して,一般市民が公共事業情報を横断的に閲覧可能.各自治体Webサーバは公共事業情報を格納した D B と連携

図 . 横断的情報公開システムの利用イメージ

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3.2. コア技術の検討

分散コンポーネント技術の必要性:自治体毎に分散している公共事業の一次情報を横断的に比較閲覧する必要から

- CORB A ( Common Object Request B roker A rchitecture), DCOM ( Distributed Component Object Model)等:ある程度閉じられた通信環境には適するが,データのセキュリティを確保しながら,ファイヤウォールを通過させようとすることは困難.

- Webサービス:特別な実行環境等を必要とせずに,インターネットの標準のプロトコルやツールを使って分散オブジェクトを実現するサービス

比較的安価 オブジェクトの開発言語に依存しないため,既存システムを活用可能 ファイヤウォールが存在してもデータを通過させることが可能 データ形式: XML ( E xtensible Markup Language) インターフェース記述形式: WSDL ( Web Services Description Language) サービス間のメッセージ形式: SOAP ( Simple Object Access Protocol)を HTTP プロトコル上で採用すること( SOA P over HTTP )でプロトコルを標準化.

Webサービスの採用- 異なる Webサーバを所有する自治体間の情報の共有を目指すシステム- インターネットを通じて外部情報を集約する必要があるため,オブジェクト開発言語やプラットフォームに依存せず,ファイヤウォールを超えることが可能

3. 開発した横断的比較システム

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3.3. システム開発環境

プログラミング言語: Java システム動作環境

- Javaプログラム: Sun Microsystems 社 JDK6.0 ( Java SE Development Kit 6.0)

- 公共事業情報を格納する DB : MySQL5.0- Javaで構築した Webサービスの連携に使用する API ( Application Program I nterface):

JDBC ( Java Data B ase Connectivity)

- Webサーバ構築: TOMCAT6.0 ( Apache Software Foundation)

- Webサービスの実行・開発環境: E clipse3.4.1 + MyE clipse6.5.1

3. 開発した横断的比較システム

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3.4. Webサービスの流れ Webアプリケーション

- システム利用者が情報を持つ Webサーバに直接アクセスし,情報を取得する.

Webサービス1. 利用者は, Webサービスリクエスタと呼ばれる Webサーバに情報を要求

2. Webサービスリクエスタが Webサービスプロバイダと呼ばれる Webサーバが公開する Webサービスの情報を取得

3. この時, Webサービスプロバイダと Webサービスリクエスタ間で受け渡す情報は XML形式.

4. XML形式で情報を受け取った Webサービスリクエスタは Webサーバ内で情報を HTML形式に出力し,サービス利用者が閲覧しているWebブラウザに情報を送信.

3. 開発した横断的比較システム

図 . Webアプリケーション

図 . Webサービス

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3.5. システム利用フロー1. システム利用者:知りたい自治体の事業情報を検索条件にのせて Webサービスリクエスタに送信する.

2. 送信された検索条件は, HTML形式で送信される.

3. Webサービスリクエスタ:検索条件が該当する自治体の Webサーバに向けて,事業情報を DB から抽出.次に,Webサービスリクエスタへと返信するWebサービスのビジネスロジックのメソッドを呼び出すための手順を XML形式で記述し, SOAP メッセージを送信.

4. Webサービスプロバイダ: XML形式で記述された SOAP メッセージを元に, Webサービスのビジネスロジックを呼び出し DB と接続. Webサービスのビジネスロジックは SOAP メッセージを元に,指定された公共事業情報を DB から取り出し, XML形式で出力.

5. 取り出された XML形式の事業情報は, SOAP メッセージとして Webサービスリクエスタへ送信される.

3. 開発した横断的比較システム

図 . 開発システムのフロー

1. Webサービスリクエスタ: XML形式で事業情報を受領し,クライアントプログラムを通じて,最終的にシステム利用者のブラウザで表示されるページを HTML形式で生成,送信

2. システム利用者のブラウザ:Webサービスリクエスタが生成した HTML形式で事業情報が閲覧可能.

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0. 発表の構成

1. はじめに2. 既往の自治体 Webサイトにおける情報公開システム

の課題3. 開発した横断的比較システムn プロトタイプシステムの試作と評価n まとめ

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4. 1 プロトタイプシステムの試作 -1

開発した横断的比較システムを基に,仮想自治体 A 市における観光交流センター整備事業を対象としたプロトタイプシステムを試作

- システムの実行可能性と利用可能性について考察するため,

- 観光交流センター整備事業を計画中の自治体として,他に B 町, C市を想定してシステム運用と仮定

4. プロトタイプシステムの試作と評価

表 . A市の観光交流センター整備事業概要

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4. 1 プロトタイプシステムの試作 -2

システム利用者- 事業内容について詳しい知識は所有しないが事業について関心を有する一般市民

- 事業担当の自治体職員

4. プロトタイプシステムの試作と評価

図 . システム利用者の属性と   システム利用の目的

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修士論文に向けての研究の展開

利用者: A市の自治体Webサイト内の事業ページから,事業情報を横断比較している,横断的比較サイトへと移動.

4.2 利用フロー

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修士論文に向けての研究の展開

横断比較サイト内で,横断比較する事業を選択.

4.2 利用フロー4. プロトタイプシステムの試作と評価

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修士論文に向けての研究の展開

比較項目は,地域振興情報ライブラリーを参考に,- 自治体の基本情報- 事業概要- 整備方針概要図- 区域地図- 事業費等

事業費の項目については,情報の階層化を行い,必要に応じてより詳細な横断比較が可能

システムを実行させたところ,問題なく動作.動作応答時間は些少.

4.2 利用フロー

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4.3. 利用可能性の考察4. プロトタイプシステムの試作と評価

事業費の検討シーンについて- 既往システムを用いて A 市の事業情報のみを閲覧していた場合,比較対象が存在せず,一般市民は公開された事業費用の数値の高低について,判断が困難な状況であったと考えられる.

- 一方,プロトタイプシステムでは, B 町やC市の事業情報と横断的に比較することができ,敷地面積,建蔽率,容積率,事業期間等の情報を併せて比較閲覧することで,事業費の妥当性を検討することが可能となった.

情報公開における量や質の差が自治体間で存在する課題について- 敷地面積情報に着目すれば, B 市の公開情報には,敷地面積に加えて建物面積の情報が含まれる.一方, A 市の公開情報には,敷地面積の情報しかない.

- 既往システムを用いて A 市の事業情報のみを閲覧していた場合, A 市からの情報公開に建物面積が含まれていないことに気づかない可能性があるが,プロトタイプシステムを用いることで,一方のサイトで公開され,他方で公開されていない情報を知ることが可能となった.

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4.3. 利用可能性の考察 自治体職員が利用者である場合

- 感情的な態度や非論理的な理由をもって事業批判を行う市民や市民団体が存在した場合, A 市が公正な事業費用を設定している限りにおいては,開発したシステムを用いて類似事例を比較しつつ,客観的なデータを示しながら説明に当たることが可能.

- 本システムによる横断比較可能な事業情報の提供は,より多くの人々が事業情報を目にする機会を創出することにもつながる.すなわち,より多くの一般市民に対して,情報公開の積極性や事業運営のアピールにつながることが期待される.

課題- 実際の公共事業では比較項目が容易に揃わない事業も存在する.比較横断の際の情報の抽出方法や比較方法について今後の検討が必要.

- 本システムの実用化に向けては,各自治体での Webサービスによる XML形式の事業情報公開の際の標準化作業が必要.

4. プロトタイプシステムの試作と評価

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0. 発表の構成

1. はじめに2. 既往の自治体 Webサイトにおける情報公開システム

の課題3. 開発した横断的比較システム4. プロトタイプシステムの試作と評価n まとめ

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5.1 . 結論

自治体 Webサイトにおける公共事業情報の横断的比較に着目し,既存の情報公開システムの現状と課題を明らかにした上で, Webサービスを用いた横断的比較システムを開発した.さらに,プロトタイプシステムを試作し,システムの実行可能性と利用可能性について考察した.

開発したシステムは,分散している公共事業情報を事業毎に横断的に比較閲覧可能である.既往システムと比較して,情報を探す手間と時間の省略化につながると考えられる.

類似の公共事業を横断的に比較することで,公開された公共事業情報に不備や不足があるかどうか,発見し易くなることに役立つと期待できる.さらに,公開された公共事業情報が妥当なもので,かつ情報公開が十分である場合,感情論的な態度や非論理的な理由による公共事業への反対姿勢に対して,事業者が客観的なデータにより説明可能なシステムとして期待できる.

5. まとめ

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5.2. 今後の課題

本研究では,プロトタイプシステムを試作するに留まっている.今後,実際の事業者サイトでのテスト運用や,一般市民や自治体関係者など複数の被験者を対象としたユーザビリティ評価を通じて,本システムを精緻に検証していく必要がある.

5. まとめ

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参考文献1) 総務省 自治行政局 地域情報政策室:平成 19年度地方自治情報管理概要 電子自治体に関する指標の推移, 2007

2) 総務省 自治行政局 地域情報政策室:電子自治体推進のための住民アンケートと改善のポイント‐オンライン利用促進とホームページ改善‐, 2007

3) 高木一典他:インターネットを利用した市町村都市計画マスタープランの公開に関する研究 ‐ホームページの種類と実態‐,都市計画論文集, No.38-3, 2003

4) 大場みち子他:シチズン向け情報提供ポータルの提案,情報処理学会 研究報告,2006-DD-55, pp.13-19, 2006

5) 地域振興情報ライブラリー: http://nlftp.mlit.go.jp/shinkou/6) e都市ランキング 2008:日経 B P ガバメントテクノロジー 2008年秋号, 20087) 田村賢次他:利用者の求める情報と閲覧環境を考慮した自治体情報提供システム ‐愛知県マルチメディア・モデル市役所展開事業,情報処理学会論文誌, Vol.47 No.1, pp.152-159, 2006

8) 国土交通省:国土交通省のアカウンタビリティについて 政策レビュー結果(評価書案) , 2006

9) SB I ホールディングス株式会社:生活ガイド .com, http://www.seikatsu-guide.com/10) 都道府県別統計とランキングで見る県民性: http://todofuken.ww8.jp/