CRT ステークホルダー・エンゲージメントプログラム 各国の人権デューディリジェンス法規制 及び日本商社の人権に対する取組みの課題 ことのは総合法律事務所 認定NPO法人ヒューマンライツ・ナウ 事務局次長 弁護士 佐藤 暁子
CRT ステークホルダー・エンゲージメントプログラム
各国の人権デューディリジェンス法規制及び日本商社の人権に対する取組みの課題
ことのは総合法律事務所
認定NPO法人ヒューマンライツ・ナウ 事務局次長
弁護士 佐藤 暁子
ハードロー化の潮流法令
2012 カルフォルニア州サプライチェーン透明法
2014 EU 非財務情報開示指令
2015 英国現代奴隷法
2017 フランス人権デューディリジェンス法
2018 オーストラリア現代奴隷法
2019 オランダ児童労働デュー・デリジェンス法
➢ EU自体がルールメイキングに対して非常に積極的で、4月には、法務担当コミッショナーが、義務的な「人権・環境デューディリジェンス法」の2021年までの制定に向け検討することを明示
➢ EUの現在の議長国であるドイツも、昨年12月、主要32企業が国内レベルの強制法規の制定を支持し、メルケル首相も法制定を支持
➢ レベルプレイングフィールド=衡平な競争条件への要望
ハードロー化の潮流
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https://corporatejustice.org/news/16793-mandatory-human-rights-due-diligence-an-issue-whose-time-has-come
オーストラリア現代奴隷法
サプライチェーンも含めた事業活動内の奴隷労働への対応策として法で求められたアクションに関する、以下の内容を含むステートメントを監督官庁に報告することが必要。
Section16
1. 現代奴隷報告書発行企業の特定
2. 企業の組織構造、業務、サプライチェーン
3. サプライチェーンや子会社などを含む企業活動全体での現代奴隷のリスク
4. DDや救済のプロセスなどによって特定された人権リスクの評価・対応のために行われた対策
5. 4の取り組みの有効性
6. 子会社などとの協議過程の説明
7. その他、企業が関連性が高いと考える情報の提供
8. 取締役会など責任者の承認及び署名
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取組みの参考に
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人権リスクを検討する際の視点・セクター・業種・製品・サービス・地理的リスク・サプライチェーンモデル
人権リスクのマッピングについて・上記の4つのリスクを組み合わせて、人権リスクの高さを評価
商社の人権方針・人権DDについて
昨年夏、HRNでは総合商社7社に対しアンケート調査を実施。全社から回答を得て、これに基づき2020年3月に報告書を公表
➢ 人権方針:現在は全社が規定
➢ サプライヤー監査:対象の選定も含め、客観性の担保
➢ 人権DD/サプライヤーの把握と公開:対象とプロセスの情報公開の不足
➢ 技能実習生:不十分な把握
➢ 女性役員比率:大きな課題
➢ グリーバンス:アクセシビリティと実効性
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タイ鶏肉産業における強制労働
➢ 情報ギャップ
➢ 労働者からの聞き取りの重要性
➢ グリーバンスの重要性
➢ HRD(人権活動家)へのスラップ訴訟のリスク
→複数の商社が統合報告書等で言及
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その他アジアの事例日本企業サプライチェーンの中核
➢ 中国やカンボジアの縫製工場での労働環境
➢ マレーシアの森林伐採による先住民の権利侵害
➢ マレーシアやインドネシアのパーム油農園での移民労働者の労働環境、少数民族の権利侵害
➢ ミャンマーのティラワ経済特区による住民の生活資源侵害
➢ ミャンマーの軍によるジェノサイドへの間接的な関わり
➢ ラオスのダム崩壊による地域住民の生活資源の侵害
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アジア各国の対応
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タイ 首相のトップダウンによる取り組みの加速昨年アジア初のNAP公表漁業・鶏肉セクター
マレーシア NAPプロセス開始パーム油・材木セクター社会・環境アセスの義務化
インドネシア NAPプロセス開始パーム油・漁業セクター先住民
インド NAPゼロドラフトの公表(企業省が主導)
中国 特に環境分野では高い基準。訴訟提起も。「CSR」自体への関心は高い。
従前の「低賃金労働」ではなく、「国際基準の人権保護」が前面に
国別行動計画
National Action Plan=NAP
➢ 指導原則実施のために各国政府が既存の法律と人権問題とのギャップを特定し、国家としての対応策のロードマップを示すもの。ハードローの導入にも影響。
➢ 世界25ヶ国(人権NAPに統合されたものも含む)で既に策定済み(2020.8時点)
• イギリス、オランダ、デンマーク、フィンランド、スェーデン、ノルウェー、ドイツ、フランス、ポーランド、スペイン、アメリカ、コロンビア、チリ、ケニア、タイなど
➢ 日本のNAP
• 2016.11にジュネーブでコミットメントを表明。
• 2018.3より、ステークホルダー(経団連、連合、GCNJ、CSO、日弁連、関係省庁など)を招き、「ベースラインスタディ意見交換会」を外務省主導で実施。
➢ 2019前半に優先分野の特定・今年秋頃に公表予定。https://www.mofa.go.jp/mofaj/fp/hr_ha/page22_001608.html
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日本のNAP原案
横断的事項
ア 労働(ディーセント・ワークの促進等)
イ 子どもの権利の保護・促進
ウ 新しい技術の発展に伴う人権
エ 消費者の権利・役割
オ 法の下の平等(障害者、女性、性的指向・性自認等)
カ 外国人材の受入れ・共生
人権を尊重する企業の責任を促すための政府の取組
ア 国内外のサプライチェーンにおける取組及び指導原則に基づく人権DDの促進
イ 中小企業における「ビジネスと人権」への取組に対する支援
救済に関する取組
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ステークホルダーからの共通要請事項概要
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企業価値と競争力向上を目的のために、人権DDの実施やその結果に関する情報その他の関
連取組みに関する情報の開示を促進企業情報の開示
技能実習制度・特定技能含めすべての外国人労働者の人権の保護外国人労働者
実用的かつ実行可能なガイドラインの策定と利用促進のためのツール提供
企業のステークホルダーとの対話の取組みの促進
二国間・多国間の枠組みを通じた効果的な対話や必要な制度整備支援
人権DD及び
サプライチェーン
既存の枠組みに加え、人権を尊重する取組みを加点対象に公共調達
NCPの活性化
業界団体レベルのグリーバンスなど、民間の取組みの認知と支援
救済への
アクセス
SDGsとの関係SDGsウォッシュを避けるために
2015年9月に国連で採択
2030年までの17のゴールと169 のターゲット
途上国・先進国かかわらず全ての国が対象であり、ビジネスセクター・ソーシャルセクターへも拡大
指導原則に言及(パラ67)
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出所:国連広報局
指導原則はSDGsへの取り組みの大前提