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Core2Core プログラム 出張報告書 [出張者] 大野 和也 早稲田大学大学院 先進理工学研究科 生命医科学専攻 井上研究室 修士 1 [訪問先] Bonn universityLife & Medical Sciences Institute (LIMES)、ドイツ、ボン [滞在期間] 2016 9 3 ()2016 9 20 () (16 18 ) [概要] 本出張では、ボン大学の研究機関である Life & Medical Sciences Institute (LIMES)Schultze 研究室を訪れた。Schultze 研では single-cell RNA-seq の研究を wet dry それ ぞれの観点から進めている。それぞれの技術を Schultze 研の Prof. Joachim SchultzeDr. Thomas Ulas, Patrick Gunther, Kevin Bassler に教えていただいた。本プログラムの最後 には LIMES での研究についての発表および討論を LIMES や早稲田大学の教授の方々と行 った。 以下に具体的なスケジュールを記す。 2017 9 3,4 日:日本からドイツ・ボンへ移動 2017 9 517 日: Schultze 研にて single-cell RNA-seq の実験手法・解析方法の習得。 2017 9 18 日:LIMES での研究についての発表および討論 2017 9 19,20 日:ドイツ・ボンから日本へ移動。 [総括] Schultze 研究室に学びに行った目的は、 single-cell RNA-seq の一連の技術を学ぶことと、 Bioinformatics を学ぶためである。single-cell RNA-seq は大きく4つのステップに分けら れる。細胞の単離、ゲノムライブラリーの準備、シークエンス、データ解析である。細胞 の単離方法としては Seq-well というマイクロウェルに、 mRNA capture するためのビー ズと細胞をロードするという方法を学んだ。扱った細胞はヒト全血から Ficoll 法によって 遠心分離して得られた PBMC である。実際に Seq-well を行い顕微鏡観察した所、マイク ロウェルの1割程度にしか細胞がロードされていなかった。この原因として細胞を Wash する段階で細胞が段々とロスしてしまい、想定より少ない量しかロードしなかったためだ と考えられる。ゲノムライブラリーの準備の方法としては ATAC-seq というトランスポゾ ンを利用してゲノムライブラリーを作成する方法を学んだ。シークエンスについては実際
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Core2Core プログラム出張報告書 大野3d.biomed.sci.waseda.ac.jp/events/170918 19th German...Core2Core プログラム 出張報告書 [出張者] 大野 和也 早稲田大学大学院

Jan 17, 2020

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Core2Core プログラム 出張報告書

[出張者]

大野 和也

早稲田大学大学院 先進理工学研究科 生命医科学専攻

井上研究室 修士 1年

[訪問先]

Bonn university、Life & Medical Sciences Institute (LIMES)、ドイツ、ボン

[滞在期間]

2016年 9月 3日(日)~2016年 9月 20日(水) (16泊 18日)

[概要]

本出張では、ボン大学の研究機関である Life & Medical Sciences Institute (LIMES)の

Schultze研究室を訪れた。Schultze研では single-cell RNA-seqの研究を wetと dryそれ

ぞれの観点から進めている。それぞれの技術を Schultze研の Prof. Joachim Schultze、Dr.

Thomas Ulas, Patrick Gunther, Kevin Basslerに教えていただいた。本プログラムの最後

には LIMESでの研究についての発表および討論を LIMESや早稲田大学の教授の方々と行

った。

以下に具体的なスケジュールを記す。

2017年 9月 3,4日:日本からドイツ・ボンへ移動

2017年 9月 5~17日:Schultze研にて single-cell RNA-seqの実験手法・解析方法の習得。

2017年 9月 18日:LIMESでの研究についての発表および討論

2017年 9月 19,20日:ドイツ・ボンから日本へ移動。

[総括]

Schultze研究室に学びに行った目的は、single-cell RNA-seqの一連の技術を学ぶことと、

Bioinformaticsを学ぶためである。single-cell RNA-seqは大きく4つのステップに分けら

れる。細胞の単離、ゲノムライブラリーの準備、シークエンス、データ解析である。細胞

の単離方法としては Seq-wellというマイクロウェルに、mRNAを captureするためのビー

ズと細胞をロードするという方法を学んだ。扱った細胞はヒト全血から Ficoll 法によって

遠心分離して得られた PBMC である。実際に Seq-well を行い顕微鏡観察した所、マイク

ロウェルの1割程度にしか細胞がロードされていなかった。この原因として細胞を Wash

する段階で細胞が段々とロスしてしまい、想定より少ない量しかロードしなかったためだ

と考えられる。ゲノムライブラリーの準備の方法としては ATAC-seq というトランスポゾ

ンを利用してゲノムライブラリーを作成する方法を学んだ。シークエンスについては実際

Page 2: Core2Core プログラム出張報告書 大野3d.biomed.sci.waseda.ac.jp/events/170918 19th German...Core2Core プログラム 出張報告書 [出張者] 大野 和也 早稲田大学大学院

に使用する機会はなかったが、Illumina社の Hiseq1500と Nextseq500の動作原理や過去

のデータなどを教授してもらった。最後のデータ解析については Rを使った Seuratという

single-cell RNA-seq 解析用の Rパッケージについて学習した。R初学者だったため、基本

動作は推奨されたサイトや Bonn大学の3年生の講義に交じって学習した。Bonn大学の講

義に参加して感じたのは生徒が積極的だということと、授業の最後に課題を課すことで授

業内に学んだことを定着させていることである。日本の授業の大半は未だ教授が90分講

義し、最後に質問が無ければ終了となる。一方 Bonn大学の授業では生徒が疑問を感じたら

すぐに質問し、共有するという積極さを感じた。この積極さを自分もぜひ見習いたいと感

じた。基本動作を学んだあとは Seuratを用いて PBMC細胞を T細胞や B細胞、樹状細胞

などに分類する解析方法について学習した。具体的には QC(Quality Control)や Normalize,

PCA(Principal Component Analysis), tSNE(t-distributed stochastic neighbor

embedding)などを行う目的や数学的原理、グラフの解釈方法についてなどを学習した。

Bioinformatics でも用いられる多変量解析について学ぶことが出来たのはとても有意義で

刺激的だった。最終日には LIMESや早稲田大学の教授の方々とシンポジウムを行い、学ん

だことをプレゼン、ディスカッションすることでより理解を深めることが出来た。

また言語の面に関しても大きな刺激を受けた。日常的に英語を使う機会は日本ではほと

んどなく、自分自身英語に対して少なからず抵抗を感じていた。しかしドイツで研究者の

方や日常生活でコミュニケーションをとる際には英語を使わなければならず、自身の英語

力のなさに歯がゆさを覚えながらも必死にコミュニケーションを続けることで徐々に英語

に対する抵抗は少なくなっていった。LIMESの方はみんな親切でわかりやすい単語に置き

換えてくれたり、自分が伝えようとしていることをしっかり受け取ろうとしてくれ、自分

からも積極的にコミュニケーションをとることができた。まだまだ英語力を身につけなけ

ればならないという自覚を持てたという点でも本出張は大変有意義であった。

今回の経験を今後に活かしてこれからの研究も頑張っていく。以下に滞在中の写真を掲

載する。