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104 鉱物資源マテリアルフロー 2014 1 . 1 - 1 . コバルトは主に携帯電話、ノートパソコン等に使用されるリチウムイオン電池(以下、LIB)の正極材 に使用されている。そのほかの用途は、超硬合金の接着剤、高速度鋼や耐熱鋼等の特殊鋼添加剤、 HDD 等の磁性材、家庭電化製品・音響機器等に使用されるアルニコ磁石やサマリウムコバルト磁石 等の永久磁石、石油精製時の脱硫触媒等である。 世界のコバルト需給及び鉱石生産量を表 1-1、図 1-1 に示す。2013 年の鉱石生産量は前年比 117%の 120,000t であった。世界の鉱石生産の 48%をコンゴ民主共和国(以下、DR コンゴ)が占めて おり、その他にはカナダ、中国、ロシア等の国が生産している。2013 年のコバルト鉱石生産増は価格 動向を見極めた生産調整により増加した。コバルト鉱石は、銅鉱石やニッケル鉱石と共生する場合が 多く、工業的には銅・ニッケルの副産物として採取されることが多い。 2013 年の地金生産量は前年比 111%の 85,904t であり、その生産の 42%を中国が占めている。 2012 年には中国地金メーカーの自溶炉で製造トラブルが起きたため、コバルト地金生産量が低下し たが、2013 年はその反動により前年を上回ったと考えられる。その他、コバルト地金はフィンランド、カ ナダ、ベルギー、ザンビア、豪州等で生産されているが、マダガスカルの「アンバトビー・プロジェクト」 の稼働開始も生産量増加に寄与している。 2013 年の地金消費量は 81,925t であった。最大の消費国は中国であり世界消費の 38%を占めて いる。日本は中国に次ぐ消費国となり、全体の 20%程度を消費していると推測される。 表 1-1 世界のコバルト需給 単位:純分t 2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013 13/12比 構成比 中国 8,000 12,700 12,700 13,245 18,239 25,544 35,929 34,969 29,784 36,062 121% 42% フィンランド 7,893 8,170 8,580 9,100 8,950 8,850 9,299 10,441 10,547 10,010 95% 12% カナダ 4,787 4,954 5,023 5,606 5,628 4,914 4,646 5,923 5,682 5,559 98% 6% ベルギー 2,947 3,298 2,840 2,825 3,020 2,150 2,600 3,187 4,200 5,415 129% 6% ザンビア 5,791 5,422 4,665 4,435 4,041 1,535 5,034 5,956 5,665 5,000 88% 6% 豪州 3,879 3,150 3,696 3,684 3,618 4,050 4,117 4,722 4,769 4,981 104% 6% ノルウェー 4,670 5,021 4,927 3,939 3,719 3,510 3,208 3,067 2,969 3,400 115% 4% DRコンゴ 735 600 550 606 1,049 2,950 4,182 3,083 2,999 3,000 100% 3% 日本 429 471 920 1,084 1,071 1,332 1,935 2,007 2,542 2,747 108% 3% ロシア 4,524 4,748 4,759 3,587 2,502 2,352 2,460 2,337 2,186 2,368 108% 3% マダガスカル - - - - - - - - - 2,083 - 2% ブラジル 1,155 1,136 902 1,148 994 1,012 1,369 1,613 1,750 1,653 94% 2% その他 3,094 3,965 3,766 3,781 3,787 3,878 4,491 4,942 4,096 3,626 89% 4% 合計 47,904 53,635 53,328 53,040 56,618 62,077 79,270 82,247 77,189 85,904 111% 100% 中国 8,000 11,300 12,400 14,700 14,400 16,000 20,000 25,400 29,000 31,000 38% 米国 10,000 10,800 11,000 9,600 10,700 7,338 10,000 13,500 13,500 西欧 8,200 8,600 9,400 9,800 9,500 8,000 10,000 12,750 12,000 日本 12,600 13,000 14,000 14,500 15,000 14,000 14,000 15,000 16,180 その他 5,800 6,600 7,600 8,000 8,200 6,962 7,000 8,350 10,220 合計 44,600 50,300 54,400 56,600 57,800 52,300 61,000 75,000 80,900 81,925 100% DRコンゴ 16,000 22,000 28,000 25,300 31,000 25,000 47,400 60,000 51,000 57,000 112% 48% カナダ 5,200 5,500 7,000 8,300 8,600 5,000 4,600 7,100 6,630 8,000 121% 7% 中国 1,300 2,300 2,000 6,000 6,200 6,500 6,800 7,000 7,100 101% 6% ロシア 4,700 5,000 5,100 6,300 6,200 6,200 6,200 6,300 6,300 6,700 106% 6% 豪州 6,700 6,000 7,400 5,900 6,100 6,300 3,850 3,900 5,880 6,500 111% 5% ザンビア 10,000 9,300 8,000 7,600 6,900 2,500 5,700 5,400 4,200 5,200 124% 4% キューバ 3,600 3,600 3,800 3,800 3,200 3,500 3,600 4,000 4,900 4,300 88% 4% ブラジル 1,400 1,200 1,200 1,400 1,200 1,000 1,600 3,500 3,900 3,900 100% 3% Nカレドニア 1,400 1,200 1,900 1,600 1,600 1,300 1,000 3,200 2,620 3,300 126% 3% その他 3,400 2,800 2,800 3,300 5,100 5,000 9,050 8,900 10,620 15,100 142% 13% 合計 52,400 57,900 67,500 65,500 75,900 62,000 89,500 109,000 103,000 120,000 117% 100% 出典:1)World Bureau of Metal Statistics 「World Refined production COBALT」(地金+コバルト塩類の純分を含む) 2)工業レアメタル「世界需要」 ※同データは、2012年以前はCRU、2013年はRoskillによるデータとみられ、連続性はない。 3)United States Geological Survey「Mineral Commodity Summaries COBALT」 World Mine Production 3) 2) 39,425 11,500 14% 48% 1)
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May 24, 2018

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104鉱物資源マテリアルフロー 2014

コバルト(Co)

1.需給動向

1-1.世界の需給動向

コバルトは主に携帯電話、ノートパソコン等に使用されるリチウムイオン電池(以下、LIB)の正極材

に使用されている。そのほかの用途は、超硬合金の接着剤、高速度鋼や耐熱鋼等の特殊鋼添加剤、

HDD 等の磁性材、家庭電化製品・音響機器等に使用されるアルニコ磁石やサマリウムコバルト磁石

等の永久磁石、石油精製時の脱硫触媒等である。

世界のコバルト需給及び鉱石生産量を表 1-1、図 1-1 に示す。2013 年の鉱石生産量は前年比

117%の 120,000t であった。世界の鉱石生産の 48%をコンゴ民主共和国(以下、DR コンゴ)が占めて

おり、その他にはカナダ、中国、ロシア等の国が生産している。2013 年のコバルト鉱石生産増は価格

動向を見極めた生産調整により増加した。コバルト鉱石は、銅鉱石やニッケル鉱石と共生する場合が

多く、工業的には銅・ニッケルの副産物として採取されることが多い。

2013 年の地金生産量は前年比 111%の 85,904t であり、その生産の 42%を中国が占めている。

2012 年には中国地金メーカーの自溶炉で製造トラブルが起きたため、コバルト地金生産量が低下し

たが、2013年はその反動により前年を上回ったと考えられる。その他、コバルト地金はフィンランド、カ

ナダ、ベルギー、ザンビア、豪州等で生産されているが、マダガスカルの「アンバトビー・プロジェクト」

の稼働開始も生産量増加に寄与している。

2013 年の地金消費量は 81,925t であった。最大の消費国は中国であり世界消費の 38%を占めて

いる。日本は中国に次ぐ消費国となり、全体の 20%程度を消費していると推測される。

表 1-1 世界のコバルト需給

単位:純分t2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013 13/12比 構成比

中国 8,000 12,700 12,700 13,245 18,239 25,544 35,929 34,969 29,784 36,062 121% 42%フィンランド 7,893 8,170 8,580 9,100 8,950 8,850 9,299 10,441 10,547 10,010 95% 12%カナダ 4,787 4,954 5,023 5,606 5,628 4,914 4,646 5,923 5,682 5,559 98% 6%ベルギー 2,947 3,298 2,840 2,825 3,020 2,150 2,600 3,187 4,200 5,415 129% 6%ザンビア 5,791 5,422 4,665 4,435 4,041 1,535 5,034 5,956 5,665 5,000 88% 6%豪州 3,879 3,150 3,696 3,684 3,618 4,050 4,117 4,722 4,769 4,981 104% 6%ノルウェー 4,670 5,021 4,927 3,939 3,719 3,510 3,208 3,067 2,969 3,400 115% 4%DRコンゴ 735 600 550 606 1,049 2,950 4,182 3,083 2,999 3,000 100% 3%日本 429 471 920 1,084 1,071 1,332 1,935 2,007 2,542 2,747 108% 3%ロシア 4,524 4,748 4,759 3,587 2,502 2,352 2,460 2,337 2,186 2,368 108% 3%マダガスカル - - - - - - - - - 2,083 - 2%ブラジル 1,155 1,136 902 1,148 994 1,012 1,369 1,613 1,750 1,653 94% 2%その他 3,094 3,965 3,766 3,781 3,787 3,878 4,491 4,942 4,096 3,626 89% 4%

合計 47,904 53,635 53,328 53,040 56,618 62,077 79,270 82,247 77,189 85,904 111% 100%中国 8,000 11,300 12,400 14,700 14,400 16,000 20,000 25,400 29,000 31,000 - 38%米国 10,000 10,800 11,000 9,600 10,700 7,338 10,000 13,500 13,500西欧 8,200 8,600 9,400 9,800 9,500 8,000 10,000 12,750 12,000日本 12,600 13,000 14,000 14,500 15,000 14,000 14,000 15,000 16,180その他 5,800 6,600 7,600 8,000 8,200 6,962 7,000 8,350 10,220

合計 44,600 50,300 54,400 56,600 57,800 52,300 61,000 75,000 80,900 81,925 - 100%DRコンゴ 16,000 22,000 28,000 25,300 31,000 25,000 47,400 60,000 51,000 57,000 112% 48%カナダ 5,200 5,500 7,000 8,300 8,600 5,000 4,600 7,100 6,630 8,000 121% 7%中国 - 1,300 2,300 2,000 6,000 6,200 6,500 6,800 7,000 7,100 101% 6%ロシア 4,700 5,000 5,100 6,300 6,200 6,200 6,200 6,300 6,300 6,700 106% 6%豪州 6,700 6,000 7,400 5,900 6,100 6,300 3,850 3,900 5,880 6,500 111% 5%ザンビア 10,000 9,300 8,000 7,600 6,900 2,500 5,700 5,400 4,200 5,200 124% 4%キューバ 3,600 3,600 3,800 3,800 3,200 3,500 3,600 4,000 4,900 4,300 88% 4%ブラジル 1,400 1,200 1,200 1,400 1,200 1,000 1,600 3,500 3,900 3,900 100% 3%Nカレドニア 1,400 1,200 1,900 1,600 1,600 1,300 1,000 3,200 2,620 3,300 126% 3%その他 3,400 2,800 2,800 3,300 5,100 5,000 9,050 8,900 10,620 15,100 142% 13%

合計 52,400 57,900 67,500 65,500 75,900 62,000 89,500 109,000 103,000 120,000 117% 100%出典:1)World Bureau of Metal Statistics 「World Refined production COBALT」(地金+コバルト塩類の純分を含む)    2)工業レアメタル「世界需要」 ※同データは、2012年以前はCRU、2013年はRoskillによるデータとみられ、連続性はない。    3)United States Geological Survey「Mineral Commodity Summaries COBALT」 World Mine Production

鉱石生産3)

地金消費2)

39,425

11,500 14%

48%-

地金生産1)

0

20,000

40,000

60,000

80,000

100,000

120,000

140,000

2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013

(純分t) その他

Nカレドニア

ブラジル

キューバ

ザンビア

豪州

ロシア

中国

カナダ

DRコンゴ

図 1-1 世界のコバルト鉱石生産量

1-2.国内の需給動向

コバルトの国内需給動向を表 1-2 に示す。2013 年のコバルト供給はほぼ前年並みの 12,741t、需

要は前年比 103%の 3,640t であった。パウダーやブリケットの形状の地金のほか、地金から製造され

る酸化コバルト、硫酸コバルト、水酸化コバルト、塩化コバルト等各種の化合物が、幅広い用途で使

用されている。

コバルトの国内最大の需要先は LIB 正極材であり、酸化コバルトや、硫酸コバルト等のコバルト化

合物が主に利用されている。LIB 正極材に使用されるコバルト需要を示す統計が存在しないため、表

1-2 の国内需給には同需要の数値が含まれておらず、結果として供給が需要を大きく上回っている。

参考として表 1-3 に国内の LIB 生産量及び容量を示す。2013 年の生産量は前年比 88%の 7 億 86

千万個であった。

LIB 正極材にはコバルト酸リチウム(LCO)、三元系(NCM)、マンガン酸リチウム(LMO)、ニッケル

酸リチウム(NCA)、リン酸鉄リチウム(LFP)があるが、コバルトが使用される正極材は LCO、NCM、

NCA の 3 種である。

正極材の主力は LCO であるが、一時はコバルト価格の上昇により脱コバルトの流れから他の正極

材に対する注目度が高かったが、現在はコバルト価格の下落に伴い LCO 回帰の流れにある。また、

現在はスマートフォンにおいて容量向上を目的とした高電圧化に対するニーズが強いが、LCOはある

程度の高電圧化であれば材料との相性などを損なわずに電池特性を発揮できるため、こうしたことも

LCO に対する需要増の背景にある。ただし、安全面を考えると LCO における高電圧化には限界があ

るとの見方もあり、ハイニッケル NCM(定義はないものの、ニッケル比率 60%以上)を求める声も強く

なっている。

NCM はノート PC やフィーチャーフォン、デジタルカメラなどの民生用や車載用で採用、NCA は車載

用やノート PC、電動工具などに採用されている。

LIB 正極材に次ぐ大きな需要先は特殊鋼であり、LIB 正極材を除いたコバルト需要の 42%を占める。

特殊鋼(スーパーアロイ向け等)では主には電気コバルト(コバルト地金)が使用されているが、一部

で酸化コバルトも使用される。コバルトは耐熱耐圧に優れるため、ニッケルと同様に LNG タンクやパイ

プ等に使用されている。2013 年の特殊鋼向け需要量は自動車向けの需要が好調であったため前年

比 111%の 869t となった。

その他には超硬工具、磁性材料、板棒線等に電気コバルトが使用されているほか、触媒やめっき、

2015/3/17 \\ws-svr02\Macshar\ したく \ ジャパンプリント \ 鉱物資源マテリアルフロー \2014 年度版 \ 鉱物資源マテリアルフロー 2014.indd

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105 鉱物資源マテリアルフロー 2014

コバルト(Co)

1.需給動向

1-1.世界の需給動向

コバルトは主に携帯電話、ノートパソコン等に使用されるリチウムイオン電池(以下、LIB)の正極材

に使用されている。そのほかの用途は、超硬合金の接着剤、高速度鋼や耐熱鋼等の特殊鋼添加剤、

HDD 等の磁性材、家庭電化製品・音響機器等に使用されるアルニコ磁石やサマリウムコバルト磁石

等の永久磁石、石油精製時の脱硫触媒等である。

世界のコバルト需給及び鉱石生産量を表 1-1、図 1-1 に示す。2013 年の鉱石生産量は前年比

117%の 120,000t であった。世界の鉱石生産の 48%をコンゴ民主共和国(以下、DR コンゴ)が占めて

おり、その他にはカナダ、中国、ロシア等の国が生産している。2013 年のコバルト鉱石生産増は価格

動向を見極めた生産調整により増加した。コバルト鉱石は、銅鉱石やニッケル鉱石と共生する場合が

多く、工業的には銅・ニッケルの副産物として採取されることが多い。

2013 年の地金生産量は前年比 111%の 85,904t であり、その生産の 42%を中国が占めている。

2012 年には中国地金メーカーの自溶炉で製造トラブルが起きたため、コバルト地金生産量が低下し

たが、2013年はその反動により前年を上回ったと考えられる。その他、コバルト地金はフィンランド、カ

ナダ、ベルギー、ザンビア、豪州等で生産されているが、マダガスカルの「アンバトビー・プロジェクト」

の稼働開始も生産量増加に寄与している。

2013 年の地金消費量は 81,925t であった。最大の消費国は中国であり世界消費の 38%を占めて

いる。日本は中国に次ぐ消費国となり、全体の 20%程度を消費していると推測される。

表 1-1 世界のコバルト需給

単位:純分t2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013 13/12比 構成比

中国 8,000 12,700 12,700 13,245 18,239 25,544 35,929 34,969 29,784 36,062 121% 42%フィンランド 7,893 8,170 8,580 9,100 8,950 8,850 9,299 10,441 10,547 10,010 95% 12%カナダ 4,787 4,954 5,023 5,606 5,628 4,914 4,646 5,923 5,682 5,559 98% 6%ベルギー 2,947 3,298 2,840 2,825 3,020 2,150 2,600 3,187 4,200 5,415 129% 6%ザンビア 5,791 5,422 4,665 4,435 4,041 1,535 5,034 5,956 5,665 5,000 88% 6%豪州 3,879 3,150 3,696 3,684 3,618 4,050 4,117 4,722 4,769 4,981 104% 6%ノルウェー 4,670 5,021 4,927 3,939 3,719 3,510 3,208 3,067 2,969 3,400 115% 4%DRコンゴ 735 600 550 606 1,049 2,950 4,182 3,083 2,999 3,000 100% 3%日本 429 471 920 1,084 1,071 1,332 1,935 2,007 2,542 2,747 108% 3%ロシア 4,524 4,748 4,759 3,587 2,502 2,352 2,460 2,337 2,186 2,368 108% 3%マダガスカル - - - - - - - - - 2,083 - 2%ブラジル 1,155 1,136 902 1,148 994 1,012 1,369 1,613 1,750 1,653 94% 2%その他 3,094 3,965 3,766 3,781 3,787 3,878 4,491 4,942 4,096 3,626 89% 4%

合計 47,904 53,635 53,328 53,040 56,618 62,077 79,270 82,247 77,189 85,904 111% 100%中国 8,000 11,300 12,400 14,700 14,400 16,000 20,000 25,400 29,000 31,000 - 38%米国 10,000 10,800 11,000 9,600 10,700 7,338 10,000 13,500 13,500西欧 8,200 8,600 9,400 9,800 9,500 8,000 10,000 12,750 12,000日本 12,600 13,000 14,000 14,500 15,000 14,000 14,000 15,000 16,180その他 5,800 6,600 7,600 8,000 8,200 6,962 7,000 8,350 10,220

合計 44,600 50,300 54,400 56,600 57,800 52,300 61,000 75,000 80,900 81,925 - 100%DRコンゴ 16,000 22,000 28,000 25,300 31,000 25,000 47,400 60,000 51,000 57,000 112% 48%カナダ 5,200 5,500 7,000 8,300 8,600 5,000 4,600 7,100 6,630 8,000 121% 7%中国 - 1,300 2,300 2,000 6,000 6,200 6,500 6,800 7,000 7,100 101% 6%ロシア 4,700 5,000 5,100 6,300 6,200 6,200 6,200 6,300 6,300 6,700 106% 6%豪州 6,700 6,000 7,400 5,900 6,100 6,300 3,850 3,900 5,880 6,500 111% 5%ザンビア 10,000 9,300 8,000 7,600 6,900 2,500 5,700 5,400 4,200 5,200 124% 4%キューバ 3,600 3,600 3,800 3,800 3,200 3,500 3,600 4,000 4,900 4,300 88% 4%ブラジル 1,400 1,200 1,200 1,400 1,200 1,000 1,600 3,500 3,900 3,900 100% 3%Nカレドニア 1,400 1,200 1,900 1,600 1,600 1,300 1,000 3,200 2,620 3,300 126% 3%その他 3,400 2,800 2,800 3,300 5,100 5,000 9,050 8,900 10,620 15,100 142% 13%

合計 52,400 57,900 67,500 65,500 75,900 62,000 89,500 109,000 103,000 120,000 117% 100%出典:1)World Bureau of Metal Statistics 「World Refined production COBALT」(地金+コバルト塩類の純分を含む)    2)工業レアメタル「世界需要」 ※同データは、2012年以前はCRU、2013年はRoskillによるデータとみられ、連続性はない。    3)United States Geological Survey「Mineral Commodity Summaries COBALT」 World Mine Production

鉱石生産3)

地金消費2)

39,425

11,500 14%

48%-

地金生産1)

0

20,000

40,000

60,000

80,000

100,000

120,000

140,000

2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013

(純分t) その他

Nカレドニア

ブラジル

キューバ

ザンビア

豪州

ロシア

中国

カナダ

DRコンゴ

図 1-1 世界のコバルト鉱石生産量

1-2.国内の需給動向

コバルトの国内需給動向を表 1-2 に示す。2013 年のコバルト供給はほぼ前年並みの 12,741t、需

要は前年比 103%の 3,640t であった。パウダーやブリケットの形状の地金のほか、地金から製造され

る酸化コバルト、硫酸コバルト、水酸化コバルト、塩化コバルト等各種の化合物が、幅広い用途で使

用されている。

コバルトの国内最大の需要先は LIB 正極材であり、酸化コバルトや、硫酸コバルト等のコバルト化

合物が主に利用されている。LIB 正極材に使用されるコバルト需要を示す統計が存在しないため、表

1-2 の国内需給には同需要の数値が含まれておらず、結果として供給が需要を大きく上回っている。

参考として表 1-3 に国内の LIB 生産量及び容量を示す。2013 年の生産量は前年比 88%の 7 億 86

千万個であった。

LIB 正極材にはコバルト酸リチウム(LCO)、三元系(NCM)、マンガン酸リチウム(LMO)、ニッケル

酸リチウム(NCA)、リン酸鉄リチウム(LFP)があるが、コバルトが使用される正極材は LCO、NCM、

NCA の 3 種である。

正極材の主力は LCO であるが、一時はコバルト価格の上昇により脱コバルトの流れから他の正極

材に対する注目度が高かったが、現在はコバルト価格の下落に伴い LCO 回帰の流れにある。また、

現在はスマートフォンにおいて容量向上を目的とした高電圧化に対するニーズが強いが、LCOはある

程度の高電圧化であれば材料との相性などを損なわずに電池特性を発揮できるため、こうしたことも

LCO に対する需要増の背景にある。ただし、安全面を考えると LCO における高電圧化には限界があ

るとの見方もあり、ハイニッケル NCM(定義はないものの、ニッケル比率 60%以上)を求める声も強く

なっている。

NCM はノート PC やフィーチャーフォン、デジタルカメラなどの民生用や車載用で採用、NCA は車載

用やノート PC、電動工具などに採用されている。

LIB 正極材に次ぐ大きな需要先は特殊鋼であり、LIB 正極材を除いたコバルト需要の 42%を占める。

特殊鋼(スーパーアロイ向け等)では主には電気コバルト(コバルト地金)が使用されているが、一部

で酸化コバルトも使用される。コバルトは耐熱耐圧に優れるため、ニッケルと同様に LNG タンクやパイ

プ等に使用されている。2013 年の特殊鋼向け需要量は自動車向けの需要が好調であったため前年

比 111%の 869t となった。

その他には超硬工具、磁性材料、板棒線等に電気コバルトが使用されているほか、触媒やめっき、

鉱物資源マテリアルフロー2014.indb 105 2015/03/18 13:31:20

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106鉱物資源マテリアルフロー 2014

コバルト(Co)

陶磁器着色、サーミスタ等に各種のコバルト化合物が使用されている。

日本で電気コバルトを生産(国内製錬)しているのは住友金属鉱山 1 社である。同社では、ニッケル

マットおよびミックスサルファイドから電気コバルトを精製している。

硫酸コバルトの国内生産企業は、関西触媒化学、日本化学産業である。硫酸コバルトの国内生産

量・輸出入量の統計数値は無いが、少なくとも 5 千~6 千 t(硫酸コバルト量)は輸入されていると推測

される。硫酸コバルトの主要用途は LIB 正極材以外に、触媒、めっきがある。

酸化コバルトは、LIB 正極材メーカーで自社消費分を生産している以外には、国内生産はない。輸

入された酸化コバルトは、上述した LIB 正極材、特殊鋼(スーパーアロイ向け)以外に、バリスター、フ

ェライトなどの電子材料の添加剤およびガラス、セラミックスの着色剤等として利用されている。

水酸化コバルトは国内に生産企業はなく、全量が輸入されており、DIC 等が取り扱いを行っている金

属石鹸や触媒原料等で主に使用されている。

塩化コバルトは、正同化学工業、関西触媒化学、日本化学産業が生産を行っている。塗料、めっき、

インキ乾燥剤用原料として利用される。

酢酸コバルトは触媒向けで使用されている。

表 1-2 コバルトの国内需給

単位:純分t2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013 13/12比

421 471 920 1,085 1,071 1,332 1,935 2,007 2,541 2,747 108%3 70 245 426 393 336 73 63 46 54 116%

14,715 12,773 12,696 12,763 14,210 10,260 12,015 11,746 10,127 9,940 98%15,139 13,314 13,861 14,273 15,674 11,928 14,023 13,816 12,715 12,741 100%

LIB正極材※ - - - - - - - - - - -

特殊鋼 872 843 944 778 936 493 771 732 781 869 111%超硬工具 539 578 405 431 384 201 379 295 248 272 110%触媒 254 292 334 257 270 202 263 256 201 209 104%板棒線 489 450 481 425 300 225 242 275 258 193 75%磁性材料 210 161 255 171 194 141 175 192 185 116 63%その他 1,181 787 577 545 498 348 482 413 372 430 116%

小計 3,544 3,111 2,995 2,608 2,583 1,611 2,313 2,162 2,046 2,088 102%230 380 495 740 477 1,205 944 813 1,473 1,551 105%

3,774 3,491 3,491 3,348 3,060 2,815 3,257 2,975 3,519 3,640 103%11,365 9,823 10,371 10,925 12,614 9,113 10,766 10,841 9,196 9,101 99%

出典:1)経済産業省「非鉄金属等需給動態統計」

    2)触媒資源化協会「触媒資源化実績報告書」

  3)財務省貿易統計

    ※LIB正極材でのコバルト需要は統計数値が無いため、未記入。

需要

内需1)

供給

国内製錬1)

国内リサイクル2)

輸入(塊・粉(地金))3)

合計

供給-需要合計

輸出(塊・粉(地金))3)

表 1-3 LIB の国内生産量、容量

2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013 13/12比

百万個 780 877 1,002 1,055 1,189 999 1,203 1,095 889 786 88%百万Ah 1,084 1,248 1,448 1,583 1,955 1,683 2,047 1,915 2,105 2,082 99%Ah/個 1.39 1.42 1.45 1.50 1.64 1.68 1.70 1.75 2.37 2.65 112%出典:経済産業省機械統計

2.価格

図 2 に LME(London Metal Exchange:ロンドン金属取引所)のコバルト価格を示す。コバルトは 2010

年 2 月 22 日に LME に上場されている。上場時は 3months のみの取引だったが、2010 年 5 月 19 日

から Cash 取引が開始された。

2010 年時点での登録ブランドは、カナダの Vale Canada、ブラジルの Votorantim Metais、日本の住

友金属鉱山、中国の Jinchuan、ウガンダの Kasese、中国の KLK(Jiangsu Cobalt Nickel Metal)、ロシ

アの Norilsk、ザンビアの Mopani、中国の Yantai Cash の 9 社である。2011 年には中国の Nantong

Xinwei、Sichuan Ni&Co Guorun、インドの Nicomet、モロッコのCTTが、2012年には中国のGuangzhou

Yi Hao Umicore が加わった。2014 年末時点では上記以外に新たな登録者はいない。

LME での上場初日の取引量は 90t の成約があったが、その後はほぼ低調に推移している。そのた

め、価格指標としては殆ど機能しておらず、従来どおり LMB(London Metal Bulletin)価格が指標とし

て用いられている。

コバルト価格は 2013 年に入り低調に推移していたが、同年 4 月に DR コンゴからのコバルト精鉱輸

出禁止の可能性が報道されて以降急騰した。5 月に開催されたコバルトの国際会議(CDI)においてコ

バルト精鉱・中間生産物の供給がタイトになっていることが業界関係者に認識されると価格も上昇、さ

らに 6 月にはコバルト精鉱の大手生産者である Tenke Fungurume(DR コンゴ)が電力不足を理由に同

年下期の減産を発表したことで、さらに高騰した。しかし、7 月に入り DR コンゴによるコバルト精鉱輸

出禁止の猶予期間が同年 12 月まで延期されることになったことで下落、2013 年 12 月の LME 平均価

格は 26,933$/t となった。

項目 詳細

形状 cathodes、ingots、briquettees、rounds

単位 US$/MT

倉庫 Rotterdam、Baltimore、Singapore

17,000

38,252

41,641

37,497

40,180

38,743

35,514

28,825

33,230

29,468

23,514

24,037

30,530

26,933

15,000

20,000

25,000

30,000

35,000

40,000

45,000

10’

05

10’

06

10’

07

10’

08

10’

09

10’

10

10’

11

10’

12

11’

01

11’

02

11’

03

11’

04

11’

05

11’

06

11’

07

11’

08

11’

09

11’

10

11’

11

11’

12

12’

01

12’

02

12’

03

12’

04

12’

05

12’

06

12’

07

12’

08

12’

09

12’

10

12’

11

12’

12

13’

1

13’

2

13’

3

13’

4

13’

5

13’

6

13’

7

13’

8

13’

9

13’

10

13’

11

13’

12

($/t)

図 2 LME のコバルト価格(MONTH AVERAGE)

3.輸出入動向

3-1.輸出入動向

コバルトの原料、素材、製品の輸出入数量を表 3-1、また輸入数量を図 3-1 に示す。2013 年の輸

入量は前年比 98%の 11,030t、輸出量は前年比 98%の 3,498t であった。

全輸入量のうち 90%をマット・塊・粉が占めている。貿易統計上は「マット・塊・粉」となっているが、

実質上マットの輸入はなく、ブリケットや粉が主体となっている。コバルト地金の原料としてはニッケル

マット、ミックスサルファイドが輸入されている。化合物としては酸化物が 519t、水酸化物が 276t、塩

化物が 11t 輸入されているほか、統計数値はないが、硫酸コバルトも輸入されている。

なお、くずには LCO 等からのスクラップやスーパーアロイ、超硬スクラップなどが該当すると推測さ

れる。

鉱物資源マテリアルフロー2014.indb 106 2015/03/18 13:31:20

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107 鉱物資源マテリアルフロー 2014

コバルト(Co)

陶磁器着色、サーミスタ等に各種のコバルト化合物が使用されている。

日本で電気コバルトを生産(国内製錬)しているのは住友金属鉱山 1 社である。同社では、ニッケル

マットおよびミックスサルファイドから電気コバルトを精製している。

硫酸コバルトの国内生産企業は、関西触媒化学、日本化学産業である。硫酸コバルトの国内生産

量・輸出入量の統計数値は無いが、少なくとも 5 千~6 千 t(硫酸コバルト量)は輸入されていると推測

される。硫酸コバルトの主要用途は LIB 正極材以外に、触媒、めっきがある。

酸化コバルトは、LIB 正極材メーカーで自社消費分を生産している以外には、国内生産はない。輸

入された酸化コバルトは、上述した LIB 正極材、特殊鋼(スーパーアロイ向け)以外に、バリスター、フ

ェライトなどの電子材料の添加剤およびガラス、セラミックスの着色剤等として利用されている。

水酸化コバルトは国内に生産企業はなく、全量が輸入されており、DIC 等が取り扱いを行っている金

属石鹸や触媒原料等で主に使用されている。

塩化コバルトは、正同化学工業、関西触媒化学、日本化学産業が生産を行っている。塗料、めっき、

インキ乾燥剤用原料として利用される。

酢酸コバルトは触媒向けで使用されている。

表 1-2 コバルトの国内需給

単位:純分t2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013 13/12比

421 471 920 1,085 1,071 1,332 1,935 2,007 2,541 2,747 108%3 70 245 426 393 336 73 63 46 54 116%

14,715 12,773 12,696 12,763 14,210 10,260 12,015 11,746 10,127 9,940 98%15,139 13,314 13,861 14,273 15,674 11,928 14,023 13,816 12,715 12,741 100%

LIB正極材※ - - - - - - - - - - -

特殊鋼 872 843 944 778 936 493 771 732 781 869 111%超硬工具 539 578 405 431 384 201 379 295 248 272 110%触媒 254 292 334 257 270 202 263 256 201 209 104%板棒線 489 450 481 425 300 225 242 275 258 193 75%磁性材料 210 161 255 171 194 141 175 192 185 116 63%その他 1,181 787 577 545 498 348 482 413 372 430 116%

小計 3,544 3,111 2,995 2,608 2,583 1,611 2,313 2,162 2,046 2,088 102%230 380 495 740 477 1,205 944 813 1,473 1,551 105%

3,774 3,491 3,491 3,348 3,060 2,815 3,257 2,975 3,519 3,640 103%11,365 9,823 10,371 10,925 12,614 9,113 10,766 10,841 9,196 9,101 99%

出典:1)経済産業省「非鉄金属等需給動態統計」

    2)触媒資源化協会「触媒資源化実績報告書」

  3)財務省貿易統計

    ※LIB正極材でのコバルト需要は統計数値が無いため、未記入。

需要

内需1)

供給

国内製錬1)

国内リサイクル2)

輸入(塊・粉(地金))3)

合計

供給-需要合計

輸出(塊・粉(地金))3)

表 1-3 LIB の国内生産量、容量

2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013 13/12比

百万個 780 877 1,002 1,055 1,189 999 1,203 1,095 889 786 88%百万Ah 1,084 1,248 1,448 1,583 1,955 1,683 2,047 1,915 2,105 2,082 99%Ah/個 1.39 1.42 1.45 1.50 1.64 1.68 1.70 1.75 2.37 2.65 112%出典:経済産業省機械統計

2.価格

図 2 に LME(London Metal Exchange:ロンドン金属取引所)のコバルト価格を示す。コバルトは 2010

年 2 月 22 日に LME に上場されている。上場時は 3months のみの取引だったが、2010 年 5 月 19 日

から Cash 取引が開始された。

2010 年時点での登録ブランドは、カナダの Vale Canada、ブラジルの Votorantim Metais、日本の住

友金属鉱山、中国の Jinchuan、ウガンダの Kasese、中国の KLK(Jiangsu Cobalt Nickel Metal)、ロシ

アの Norilsk、ザンビアの Mopani、中国の Yantai Cash の 9 社である。2011 年には中国の Nantong

Xinwei、Sichuan Ni&Co Guorun、インドの Nicomet、モロッコのCTTが、2012年には中国のGuangzhou

Yi Hao Umicore が加わった。2014 年末時点では上記以外に新たな登録者はいない。

LME での上場初日の取引量は 90t の成約があったが、その後はほぼ低調に推移している。そのた

め、価格指標としては殆ど機能しておらず、従来どおり LMB(London Metal Bulletin)価格が指標とし

て用いられている。

コバルト価格は 2013 年に入り低調に推移していたが、同年 4 月に DR コンゴからのコバルト精鉱輸

出禁止の可能性が報道されて以降急騰した。5 月に開催されたコバルトの国際会議(CDI)においてコ

バルト精鉱・中間生産物の供給がタイトになっていることが業界関係者に認識されると価格も上昇、さ

らに 6 月にはコバルト精鉱の大手生産者である Tenke Fungurume(DR コンゴ)が電力不足を理由に同

年下期の減産を発表したことで、さらに高騰した。しかし、7 月に入り DR コンゴによるコバルト精鉱輸

出禁止の猶予期間が同年 12 月まで延期されることになったことで下落、2013 年 12 月の LME 平均価

格は 26,933$/t となった。

項目 詳細

形状 cathodes、ingots、briquettees、rounds

単位 US$/MT

倉庫 Rotterdam、Baltimore、Singapore

17,000

38,252

41,641

37,497

40,180

38,743

35,514

28,825

33,230

29,468

23,514

24,037

30,530

26,933

15,000

20,000

25,000

30,000

35,000

40,000

45,000

10’

05

10’

06

10’

07

10’

08

10’

09

10’

10

10’

11

10’

12

11’

01

11’

02

11’

03

11’

04

11’

05

11’

06

11’

07

11’

08

11’

09

11’

10

11’

11

11’

12

12’

01

12’

02

12’

03

12’

04

12’

05

12’

06

12’

07

12’

08

12’

09

12’

10

12’

11

12’

12

13’

1

13’

2

13’

3

13’

4

13’

5

13’

6

13’

7

13’

8

13’

9

13’

10

13’

11

13’

12

($/t)

図 2 LME のコバルト価格(MONTH AVERAGE)

3.輸出入動向

3-1.輸出入動向

コバルトの原料、素材、製品の輸出入数量を表 3-1、また輸入数量を図 3-1 に示す。2013 年の輸

入量は前年比 98%の 11,030t、輸出量は前年比 98%の 3,498t であった。

全輸入量のうち 90%をマット・塊・粉が占めている。貿易統計上は「マット・塊・粉」となっているが、

実質上マットの輸入はなく、ブリケットや粉が主体となっている。コバルト地金の原料としてはニッケル

マット、ミックスサルファイドが輸入されている。化合物としては酸化物が 519t、水酸化物が 276t、塩

化物が 11t 輸入されているほか、統計数値はないが、硫酸コバルトも輸入されている。

なお、くずには LCO 等からのスクラップやスーパーアロイ、超硬スクラップなどが該当すると推測さ

れる。

鉱物資源マテリアルフロー2014.indb 107 2015/03/18 13:31:20

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108鉱物資源マテリアルフロー 2014

コバルト(Co)

表 3-1 コバルトの輸出入数量

単位:純分t2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013 13/12比

輸入 4 24 27   -   -   -   -   -   - 16   -輸出 1   -   -   - 0 11   -   -   -   -   -輸入-輸出 3 - - - - - - - - 16 -輸入 14,715 12,773 12,696 12,763 14,210 10,260 12,015 11,746 10,127 9,940 98%輸出 230 380 495 740 477 1,205 944 813 1,473 1,551 105%輸入 208 350 273 258 328 240 170 212 77 174 226%輸出 1,502 1,833 1,665 2,094 1,558 1,867 1,882 1,898 1,496 1,397 93%輸入 1,349 344 237 639 668 392 565 293 667 519 78%輸出 772 544 771 1,084 874 475 336 323 307 243 79%輸入 326 593 936 659 247 159 199 227 256 276 108%輸出   -   -   -   -   -   -   -   -   -   -   -輸入 1 1 9 6 7 4 13 15 7 11 153%輸出   -   -   -   -   -   -   -   -   -   -   -輸入 16,599 14,061 14,152 14,326 15,461 11,056 12,963 12,492 11,134 10,919 98%輸出 2,503 2,756 2,932 3,919 2,908 3,547 3,161 3,034 3,275 3,191 97%輸入-輸出 14,096 11,304 11,220 10,406 12,553 7,509 9,802 9,458 7,858 7,728 98%輸入 258 195 134 162 150 106 132 156 123 95 77%輸出 364 282 237 555 939 747 959 255 312 307 98%輸入-輸出 -106 -87 -103 -392 -789 -641 -827 -100 -189 -212 -輸入 16,861 14,280 14,313 14,488 15,611 11,162 13,095 12,648 11,257 11,030 98%輸出 2,868 3,039 3,169 4,474 3,848 4,305 4,120 3,289 3,587 3,498 98%輸入-輸出 13,667 10,649 10,208 9,355 11,516 6,698 8,776 9,132 7,669 7,532 98%

出典:財務省貿易統計 

純分換算率:鉱石38%、酸化物64%、水酸化物63%、塩化物24%

※原料は鉱石、素材はマット・塊・粉、くず、酸化物、水酸化物、塩化物、製品は製品による。

※貿易統計上は「マット・塊・粉・くず以外」を「製品」と定義している。

原料

鉱石

製品

製品

合計

マット・塊・粉

くず

酸化物

水酸化物

塩化物

素材

小計

0

2,000

4,000

6,000

8,000

10,000

12,000

14,000

16,000

18,000

2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013

(純分t) 塩化物鉱石

くず製品

水酸化物

酸化物マット・塊・粉

図 3-1 コバルトの輸入数量

3-2.輸出入相手国

マット・塊・粉の輸出入相手国を表 3-2 に、また同輸入相手国を図 3-2 に示す。2013 年の輸入量は

前年比 98%の 9,940t であった。

輸入相手国はフィンランドが全体の 41%を占め、次いで豪州が 16%、カナダが 15%、ザンビアが

8%である。輸出は米国、中国向けが中心であり、2 ヵ国で全体の 82%を占めている。

表 3-2 マット・塊・粉の輸出入相手国

単位:純分t

2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013 13/12比 構成比

フィンランド 3,931 4,149 4,376 4,575 4,938 3,763 4,333 4,979 4,890 4,103 84% 41%豪州 3,360 2,431 2,487 2,695 2,568 2,186 2,384 1,422 844 1,629 193% 16%カナダ 2,309 2,203 1,995 1,997 2,722 2,069 1,610 2,009 1,864 1,472 79% 15%ザンビア 1,712 1,279 1,165 988 847 186 1,029 927 1,033 755 73% 8%ノルウェー 1,203 889 908 1,134 1,602 810 1,085 1,024 438 602 137% 6%米国 156 170 278 280 471 476 349 265 228 271 119% 3%ベルギー 573 593 463 428 395 161 369 317 265 224 85% 2%モロッコ 283 215 195 102 55 79 58 270 223 210 94% 2%中国 276 121 262 136 235 71 182 149 87 135 156% 1%ブラジル 55 50 37 35 60 152 325 145 63 77 123% 1%

その他 856 674 531 393 318 306 292 240 194 463 238% 5%

合計 14,715 12,773 12,696 12,763 14,210 10,260 12,015 11,746 10,127 9,940 98% 100%

米国 37 134 173 195 148 296 200 201 594 922 155% 59%中国 56 62 111 222 132 537 500 315 606 349 58% 23%ベルギー - 12 - 147 5 43 37 86 152 136 89% 9%韓国 70 74 86 41 65 76 74 63 71 72 101% 5%

その他 66 98 126 135 126 253 133 147 51 73 144% 5%

合計 230 380 495 740 477 1,205 944 813 1,473 1,551 105% 100%出典:財務省貿易統計

純分換算率:マット・塊・粉 100%

輸入

輸出

0

2,000

4,000

6,000

8,000

10,000

12,000

14,000

16,000

2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013

(純分t)その他

ノルウェー

ザンビア

カナダ

豪州

フィンランド

図 3-2 マット・塊・粉の輸入相手国

鉱物資源マテリアルフロー2014.indb 108 2015/03/18 13:31:21

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109 鉱物資源マテリアルフロー 2014

コバルト(Co)

表 3-1 コバルトの輸出入数量

単位:純分t2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013 13/12比

輸入 4 24 27   -   -   -   -   -   - 16   -輸出 1   -   -   - 0 11   -   -   -   -   -輸入-輸出 3 - - - - - - - - 16 -輸入 14,715 12,773 12,696 12,763 14,210 10,260 12,015 11,746 10,127 9,940 98%輸出 230 380 495 740 477 1,205 944 813 1,473 1,551 105%輸入 208 350 273 258 328 240 170 212 77 174 226%輸出 1,502 1,833 1,665 2,094 1,558 1,867 1,882 1,898 1,496 1,397 93%輸入 1,349 344 237 639 668 392 565 293 667 519 78%輸出 772 544 771 1,084 874 475 336 323 307 243 79%輸入 326 593 936 659 247 159 199 227 256 276 108%輸出   -   -   -   -   -   -   -   -   -   -   -輸入 1 1 9 6 7 4 13 15 7 11 153%輸出   -   -   -   -   -   -   -   -   -   -   -輸入 16,599 14,061 14,152 14,326 15,461 11,056 12,963 12,492 11,134 10,919 98%輸出 2,503 2,756 2,932 3,919 2,908 3,547 3,161 3,034 3,275 3,191 97%輸入-輸出 14,096 11,304 11,220 10,406 12,553 7,509 9,802 9,458 7,858 7,728 98%輸入 258 195 134 162 150 106 132 156 123 95 77%輸出 364 282 237 555 939 747 959 255 312 307 98%輸入-輸出 -106 -87 -103 -392 -789 -641 -827 -100 -189 -212 -輸入 16,861 14,280 14,313 14,488 15,611 11,162 13,095 12,648 11,257 11,030 98%輸出 2,868 3,039 3,169 4,474 3,848 4,305 4,120 3,289 3,587 3,498 98%輸入-輸出 13,667 10,649 10,208 9,355 11,516 6,698 8,776 9,132 7,669 7,532 98%

出典:財務省貿易統計 

純分換算率:鉱石38%、酸化物64%、水酸化物63%、塩化物24%

※原料は鉱石、素材はマット・塊・粉、くず、酸化物、水酸化物、塩化物、製品は製品による。

※貿易統計上は「マット・塊・粉・くず以外」を「製品」と定義している。

原料

鉱石

製品

製品

合計

マット・塊・粉

くず

酸化物

水酸化物

塩化物

素材

小計

0

2,000

4,000

6,000

8,000

10,000

12,000

14,000

16,000

18,000

2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013

(純分t) 塩化物鉱石

くず製品

水酸化物

酸化物マット・塊・粉

図 3-1 コバルトの輸入数量

3-2.輸出入相手国

マット・塊・粉の輸出入相手国を表 3-2 に、また同輸入相手国を図 3-2 に示す。2013 年の輸入量は

前年比 98%の 9,940t であった。

輸入相手国はフィンランドが全体の 41%を占め、次いで豪州が 16%、カナダが 15%、ザンビアが

8%である。輸出は米国、中国向けが中心であり、2 ヵ国で全体の 82%を占めている。

表 3-2 マット・塊・粉の輸出入相手国

単位:純分t

2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013 13/12比 構成比

フィンランド 3,931 4,149 4,376 4,575 4,938 3,763 4,333 4,979 4,890 4,103 84% 41%豪州 3,360 2,431 2,487 2,695 2,568 2,186 2,384 1,422 844 1,629 193% 16%カナダ 2,309 2,203 1,995 1,997 2,722 2,069 1,610 2,009 1,864 1,472 79% 15%ザンビア 1,712 1,279 1,165 988 847 186 1,029 927 1,033 755 73% 8%ノルウェー 1,203 889 908 1,134 1,602 810 1,085 1,024 438 602 137% 6%米国 156 170 278 280 471 476 349 265 228 271 119% 3%ベルギー 573 593 463 428 395 161 369 317 265 224 85% 2%モロッコ 283 215 195 102 55 79 58 270 223 210 94% 2%中国 276 121 262 136 235 71 182 149 87 135 156% 1%ブラジル 55 50 37 35 60 152 325 145 63 77 123% 1%

その他 856 674 531 393 318 306 292 240 194 463 238% 5%

合計 14,715 12,773 12,696 12,763 14,210 10,260 12,015 11,746 10,127 9,940 98% 100%

米国 37 134 173 195 148 296 200 201 594 922 155% 59%中国 56 62 111 222 132 537 500 315 606 349 58% 23%ベルギー - 12 - 147 5 43 37 86 152 136 89% 9%韓国 70 74 86 41 65 76 74 63 71 72 101% 5%

その他 66 98 126 135 126 253 133 147 51 73 144% 5%

合計 230 380 495 740 477 1,205 944 813 1,473 1,551 105% 100%出典:財務省貿易統計

純分換算率:マット・塊・粉 100%

輸入

輸出

0

2,000

4,000

6,000

8,000

10,000

12,000

14,000

16,000

2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013

(純分t)その他

ノルウェー

ザンビア

カナダ

豪州

フィンランド

図 3-2 マット・塊・粉の輸入相手国

鉱物資源マテリアルフロー2014.indb 109 2015/03/18 13:31:21

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110鉱物資源マテリアルフロー 2014

コバルト(Co)

3-3.輸出入価格

コバルトの原料、素材、製品の輸出入価格動向を表3-3、図3-3、図3-4に示す。2013年の平均輸入価格は,

素材、製品のいずれにおいても前年よりも下がった。世界的な供給過剰の加速で2010年からジリ安が続い

ている。

表 3-3 コバルトの平均輸出入価格

単位:$/kg

2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013 13/12比

輸入 50 33 28   -   -   -   -   -   - 3,928   -輸出 22   -   -   -   - 1   -   -   -   -   -輸入 49 35 32 54 81 36 42 38 32 28 86%輸出 36 34 31 48 64 31 38 38 30 26 88%輸入 18 12 15 26 35 18 19 19 13 5 38%輸出 11 8 8 12 18 7 11 9 7 6 86%輸入 43 28 27 44 64 33 35 32 27 24 89%輸出 34 23 25 32 53 45 35 30 19 16 84%輸入 28 25 23 37 54 32 30 27 22 20 92%輸出   -   -   -   -   -   -   -   -   -   -   -輸入   -   -   - 14 20 9 10 9 9 8 93%輸出   -   -   -   -   -   -   -   -   -   -   -輸入 54 65 78 104 155 103 104 106 141 122 86%

輸出 80 90 111 109 137 77 71 157 94 90 95%

年間平均価格を示した。

素材

出典:財務省貿易統計輸出入価格は貿易統計の貿易額を財務省による年間平均為替レートにより米ドルベースに換算し、

原料

製品

鉱石

マット・塊・粉

くず

製品

酸化物

水酸化物

塩化物

0

20

40

60

80

100

120

140

160

180

2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013

($/kg)

マット・塊・粉

くず

製品

酸化物

水酸化物

図 3-3 コバルトの平均輸入価格

0

20

40

60

80

100

120

140

160

180

2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013

($/kg)

マット・塊・粉

くず

製品

酸化物

図 3-4 コバルトの平均輸出価格

4.生産者及び生産品目

日本における主要生産者及び生産品目は表4 の通りである。

表 4 主要生産者及び生産品目

電気コバルト 塩化コバルト 硫酸コバルト

住友金属鉱山 ○ - -

正同化学工業 - ○ -

関西触媒化学 - ○ ○

日本化学産業 - ○ ○

出典:矢野経済研究所作成

企業名素材

5.リサイクル

コバルトのリサイクル率を表 5 に示す。リサイクル率を以下のように定義し、触媒資源化協会会員統計から、

コバルトのリサイクル率を推計した。

2013 年のリサイクル率は 0.5%となるが、上記統計の対象外でもリサイクルが行われていることから、実際

のリサイクル率はもっと高いと思われる。コバルトは触媒、特殊鋼及び廃電池(LIB)から回収されている。特

殊鋼からの回収分は製造工程中のスクラップであり、特殊鋼の工程内で再利用されるかもしくは輸出されて

いる。廃電池から回収されたコバルトは鉄鋼メーカーが利用している。

リサイクル率 =(使用済み製品からのリサイクル量)/(見掛消費)

見掛消費 =(国内生産量)+(国内リサイクル量)+(原料・素材の輸入量)-(原料・素材の輸出量)

※ 使用済み製品からのリサイクル量とは、製品から原料・素材に戻る量を示す。

※ 原料は鉱石、素材はマット・塊・粉、くず、酸化物、水酸化物、塩化物の合計値。

※ 国内生産量は、ニッケルマットおよびミックスサルファイドからの地金生産量。

表 5 コバルトのリサイクル率

単位:純分t区分 2009 2010 2011 2012 2013

国内生産 1,331.8 1,935.0 2,007.3 2,541.4 2,747.2電池等から回収 36.0 43.0 63.0 46.4 53.3触媒等から回収 0.1 0.0 0.0 0.0 0.5

原料・素材 輸入-輸出 7,509.1 9,802.0 9,458.2 7,858.2 7,727.98,876.9 11,780.0 11,528.5 10,446.0 10,528.9

電池等から回収 36.0 43.0 63.0 46.4 53.3触媒等から回収 0.1 0.0 0.0 0.0 0.5

36.1 43.0 63.0 46.4 53.8リサイクル率 ②/① 0.4% 0.4% 0.5% 0.4% 0.5%出典:財務省貿易統計、触媒資源化協会

内訳

見掛消費量国内リサイクル

リサイクル量

合計①

合計②

鉱物資源マテリアルフロー2014.indb 110 2015/03/18 13:31:21

Page 8: コバルト(Co) - 独立行政法人石油天然ガス・金属 …mric.jogmec.go.jp/public/report/2015-03/09_201504_Co.pdf鉱物資源マテリアルフロー 2014 104 コバルト(Co)

111 鉱物資源マテリアルフロー 2014

コバルト(Co)

3-3.輸出入価格

コバルトの原料、素材、製品の輸出入価格動向を表3-3、図3-3、図3-4に示す。2013年の平均輸入価格は,

素材、製品のいずれにおいても前年よりも下がった。世界的な供給過剰の加速で2010年からジリ安が続い

ている。

表 3-3 コバルトの平均輸出入価格

単位:$/kg

2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013 13/12比

輸入 50 33 28   -   -   -   -   -   - 3,928   -輸出 22   -   -   -   - 1   -   -   -   -   -輸入 49 35 32 54 81 36 42 38 32 28 86%輸出 36 34 31 48 64 31 38 38 30 26 88%輸入 18 12 15 26 35 18 19 19 13 5 38%輸出 11 8 8 12 18 7 11 9 7 6 86%輸入 43 28 27 44 64 33 35 32 27 24 89%輸出 34 23 25 32 53 45 35 30 19 16 84%輸入 28 25 23 37 54 32 30 27 22 20 92%輸出   -   -   -   -   -   -   -   -   -   -   -輸入   -   -   - 14 20 9 10 9 9 8 93%輸出   -   -   -   -   -   -   -   -   -   -   -輸入 54 65 78 104 155 103 104 106 141 122 86%

輸出 80 90 111 109 137 77 71 157 94 90 95%

年間平均価格を示した。

素材

出典:財務省貿易統計輸出入価格は貿易統計の貿易額を財務省による年間平均為替レートにより米ドルベースに換算し、

原料

製品

鉱石

マット・塊・粉

くず

製品

酸化物

水酸化物

塩化物

0

20

40

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80

100

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2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013

($/kg)

マット・塊・粉

くず

製品

酸化物

水酸化物

図 3-3 コバルトの平均輸入価格

0

20

40

60

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100

120

140

160

180

2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013

($/kg)

マット・塊・粉

くず

製品

酸化物

図 3-4 コバルトの平均輸出価格

4.生産者及び生産品目

日本における主要生産者及び生産品目は表4 の通りである。

表 4 主要生産者及び生産品目

電気コバルト 塩化コバルト 硫酸コバルト

住友金属鉱山 ○ - -

正同化学工業 - ○ -

関西触媒化学 - ○ ○

日本化学産業 - ○ ○

出典:矢野経済研究所作成

企業名素材

5.リサイクル

コバルトのリサイクル率を表 5 に示す。リサイクル率を以下のように定義し、触媒資源化協会会員統計から、

コバルトのリサイクル率を推計した。

2013 年のリサイクル率は 0.5%となるが、上記統計の対象外でもリサイクルが行われていることから、実際

のリサイクル率はもっと高いと思われる。コバルトは触媒、特殊鋼及び廃電池(LIB)から回収されている。特

殊鋼からの回収分は製造工程中のスクラップであり、特殊鋼の工程内で再利用されるかもしくは輸出されて

いる。廃電池から回収されたコバルトは鉄鋼メーカーが利用している。

リサイクル率 =(使用済み製品からのリサイクル量)/(見掛消費)

見掛消費 =(国内生産量)+(国内リサイクル量)+(原料・素材の輸入量)-(原料・素材の輸出量)

※ 使用済み製品からのリサイクル量とは、製品から原料・素材に戻る量を示す。

※ 原料は鉱石、素材はマット・塊・粉、くず、酸化物、水酸化物、塩化物の合計値。

※ 国内生産量は、ニッケルマットおよびミックスサルファイドからの地金生産量。

表 5 コバルトのリサイクル率

単位:純分t区分 2009 2010 2011 2012 2013

国内生産 1,331.8 1,935.0 2,007.3 2,541.4 2,747.2電池等から回収 36.0 43.0 63.0 46.4 53.3触媒等から回収 0.1 0.0 0.0 0.0 0.5

原料・素材 輸入-輸出 7,509.1 9,802.0 9,458.2 7,858.2 7,727.98,876.9 11,780.0 11,528.5 10,446.0 10,528.9

電池等から回収 36.0 43.0 63.0 46.4 53.3触媒等から回収 0.1 0.0 0.0 0.0 0.5

36.1 43.0 63.0 46.4 53.8リサイクル率 ②/① 0.4% 0.4% 0.5% 0.4% 0.5%出典:財務省貿易統計、触媒資源化協会

内訳

見掛消費量国内リサイクル

リサイクル量

合計①

合計②

鉱物資源マテリアルフロー2014.indb 111 2015/03/18 13:31:21

Page 9: コバルト(Co) - 独立行政法人石油天然ガス・金属 …mric.jogmec.go.jp/public/report/2015-03/09_201504_Co.pdf鉱物資源マテリアルフロー 2014 104 コバルト(Co)

112鉱物資源マテリアルフロー 2014

コバルト(Co)

6.マ

テリ

アル

フロ

コバ

ルト

のマ

テリ

アル

フロ

ー(2013)

2,7

47

t

9,9

40

t519

t

1,5

51

t243

t

276

t

0t

209

t

174

t

1,3

97

t11

t

0t

430

t

869

t

412

t

193

t

116

t

94.9

t

306.9

t

※()の

企業

は自

社消

費用

生産

※製

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量=

国内

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需要

量で

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、製

品の

輸出

入量

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慮し

てい

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※純

分換

算率

:鉱石

38%

、酸化

物64%

、水

酸化

物63%

、塩

化物

24%

製品

自動

車・家

電製

品電

気・機

械等

輸入

輸出

正同

化学

工業

関西

触媒

化学

磁性

材料

磁気

記録

用磁

性粉

日本

化学

産業

需要

国内

主要

生産

企業

炭酸

コバ

ルト

超硬

工具

国内

生産

量-

需要

輸入

量-

輸出

量-

板棒

その

他コ

バル

ト化

合物

需要

硫酸

コバ

ルト

国内

生産

量-

特殊

鋼(ス

ーパ

ーア

ロイ

等)

自動

車家

電製

品電

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械等

輸入

量-

需要

輸出

量-

めっ

き、

陶磁

器着

色サ

ーミ

スタ

等輸

出量

需要

住友

金属

鉱山

輸入

輸出

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媒石

油精

国内

生産

量-

輸出

量輸

入量

その

他材

ミッ

クス

(ニ

ッケ

ル)サ

ルフ

ァイ

くず

塩化

コバ

ルト

需要

輸入

輸出

量水

素吸

蔵合

金添

加材

国内

主要

生産

企業

水酸

化コ

バル

ト需

要量

-

廃LIB

酸化

コバ

ルト

需要

量-

ニッ

ケル

鉱石

国内

生産

量国

内生

産量

-

原料

素材

製品

・主

要用

銅・コ

バル

ト鉱

石(酸

化鉱

、硫

化鉱

)地

金(パ

ウダ

ー・ブ

リケ

ット

含む

コバ

ルト

化合

物LIB

正極

二次

電池

輸入

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輸出

輸出

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み国

内生

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り製

造フ

ロー

(国

内製

造あ

り)

リサ

イク

ルの

フロ

ー直

接の

輸出

入な

し製

造フ

ロー

(国

内製

造な

し)

1.需給動向

1-1.世界の需給動向

クロムの主要用途は消費量の95%以上を占める特殊鋼(主にステンレス鋼)であり、鉄とクロムの合金であ

るフェロクロム(以下FeCr)がステンレス原料として使用されている。その他のクロムの用途は耐熱合金(スー

パーアロイ)、各種電子機器部品、メッキ、耐火煉瓦等である。これらの製品は産業用・家庭用機器、建設用材

料、航空機、化学プラント、工業窯炉、皮革、顔料等、幅広く使用されている。

世界のクロム鉱石生産量を表1-1、図1-1に示す。2013年の生産量はマテリアルtで前年比113%の29,421

千 t であり、クロム鉱石生産量 1 位及び 2 位の南ア、カザフスタンでの生産量増加が影響した。この他、上位

国ではインドが前年比 79%と減産になっている。なお、南アは世界のクロム鉱石生産量の 46%を占めてい

る。

南アの鉱石品位(Cr2O3純分)は 50%以下であるが、インドは約 57%と品位が高い。その他の国は 50%程

度と推定される。

表 1-1 世界のクロム鉱石の生産量

図 1-1 世界のクロム鉱石の生産量

単位:マテリアル千t2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013 13/12比 構成比

南ア 7,625 7,503 7,429 9,647 10,300 6,866 10,820 10,762 11,310 13,653 121% 46%カザフスタン 3,287 4,283 4,264 4,590 4,207 4,678 5,092 5,059 3,934 5,255 134% 18%トルコ 437 603 1,016 1,248 2,206 1,565 2,461 2,901 3,295 3,300 100% 11%インド 3,584 3,357 3,865 4,837 4,110 3,711 3,978 3,783 3,297 2,603 79% 9%アルバニア 58 93 205 336 206 276 428 425 427 756 177% 3%オマーン 29 34 276 408 784 637 865 634 400 687 172% 2%フィンランド 580 572 549 556 614 247 598 693 452 500 111% 2%パキスタン 140 175 180 389 447 157 511 440 472 482 102% 2%ブラジル 594 617 563 628 664 365 520 543 473 445 94% 2%イラン 190 234 269 139 269 275 350 330 448 428 95% 1%ロシア 320 772 966 777 913 416 400 400 400 400 100% 1%豪州 243 243 257 254 127 108 181 324 452 355 79% 1%ジンバブエ 668 667 700 615 443 194 517 599 410 355 87% 1%その他 250 275 277 290 256 209 289 237 173 203 117% 1%

合計 18,004 19,426 20,816 24,713 25,546 19,702 27,011 27,130 25,944 29,421 113% 100%

出典:World Bureau of Metal Statistics 「World Bureau of Metal Statistics CHROMIUM」Mine production

0

5,000

10,000

15,000

20,000

25,000

30,000

35,000

2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013

(マテリアル千t)

その他アルバニアインドトルコカザフスタン南ア

鉱物資源マテリアルフロー2014.indb 112 2015/03/18 13:31:21