Top Banner
PFU Tech. Rev., 25, 1,pp.19-25 (01,2014) 19 業務用スマートデバイスアプリケーションの お客様視点での社内実践 Improving Business Smart Device Applications by Conducting In-House Simulation Tests from a Customer Perspective 小坂茂樹 * Shigeki Kosaka 葛原准子 ** Junko Kuzuhara 小山紀美 *** Norimi Koyama 村山秀和 * Hidekazu Murayama 大平真生 * Masaki Oohira * PFU アプリケーションズ株式会社 第二システム事業部 応用システム部 ** PFU アプリケーションズ株式会社 第一システム事業部 応用システム部 *** PFU アプリケーションズ株式会社 第一システム事業部 第二システム部 近年,出現したスマートフォンやタブレットなどのスマートデバイスは,個人利用が先行し,業務利用では,ど のような形態のアプリケーションが有益かの解が,まだ確立されていない. そこで,PFU アプリケーションズで業務用に開発したスマートデバイスアプリケーションを PFU グループ内 の業務で利用して,その使用状況を分析することで,より使いやすく,業務に役立つスマートデバイスアプリケー ションに進化させるように取り組んだ. この社内実践の成果を今後のお客様商談での提案に有効に活かして,スマートデバイスが業務利用でも有益なこ との一つの証とするとともに,ひいては社会全体の ICT 進化に貢献することを目指している. Although the number of smart devices such as smart phones and tablet devices that are used for personal use has been increasing in recent years, ideal business applications have yet to be developed. PFU Applications Limited has been conducting in-house simulation tests using smart device applications developed for business to further improve these applications. The results of this in-house simulation testing can be used to prove the advantages of using smart devices for business purposes by effectively making proposals in business meetings and to promote ICT in society. 1 まえがき スマートデバイスの出荷台数は年々,急進の傾向にあ る.IDC(International Data Corporation)によ ると,タブレットは全世界でみると 2015 年までに PC 全体の出荷台数を上回る予測が出されている 参1) PFU アプリケーションズ(以降,PAL)では,個別 のお客様向けに業務システム(アプリケーション)を開 発,構築している.この中でも,スマートデバイスを利 用する業務システムの開発事例が増えている.特に最近 ではそれが「個人利用(BtoC 注1) )」向け(のシステム) 注1) Business to Consumer 又 は Business to Customer の 略. 企業が提供して,一般消費者が利用するサービスを意味する. から「業務利用(inB 注2) ,BtoB 注3) )」向けに変化する 傾向が見られる. しかし,スマートデバイスは歴史が浅いため,これを 「業務利用」する場合,どのようなアプリケーションを 提供すれば業務を効率良く行えるか?は,まだ確固たる 正解が確立されていない. そこで,PAL がお客様に「スマートデバイスを利用 したワークスタイルの変革」をご提案するに向けて,ス マートデバイスアプリケーションを,PFU と PAL の 注2) in Business の略.企業内で利用するサービスを意味する. 注3) Business to Business の略.企業が提供して,別の企業が利 用するサービスを意味する.
7

業務用スマートデバイスアプリケーションの お客様視点での …業務用スマートデバイスアプリケーションのお客様視点での社内実践

Aug 25, 2020

Download

Documents

dariahiddleston
Welcome message from author
This document is posted to help you gain knowledge. Please leave a comment to let me know what you think about it! Share it to your friends and learn new things together.
Transcript
Page 1: 業務用スマートデバイスアプリケーションの お客様視点での …業務用スマートデバイスアプリケーションのお客様視点での社内実践

PFU Tech. Rev., 25, 1,pp.19-25 (01,2014) 19

業務用スマートデバイスアプリケーションのお客様視点での社内実践Improving Business Smart Device Applications by Conducting In-House Simulation Tests from a Customer Perspective

小坂茂樹 *Shigeki Kosaka

葛原准子 **Junko Kuzuhara

小山紀美 ***Norimi Koyama

村山秀和 *Hidekazu Murayama

大平真生 *Masaki Oohira

* PFUアプリケーションズ株式会社 第二システム事業部 応用システム部** PFUアプリケーションズ株式会社 第一システム事業部 応用システム部*** PFUアプリケーションズ株式会社 第一システム事業部 第二システム部

近年,出現したスマートフォンやタブレットなどのスマートデバイスは,個人利用が先行し,業務利用では,ど

のような形態のアプリケーションが有益かの解が,まだ確立されていない.

そこで,PFU アプリケーションズで業務用に開発したスマートデバイスアプリケーションを PFU グループ内

の業務で利用して,その使用状況を分析することで,より使いやすく,業務に役立つスマートデバイスアプリケー

ションに進化させるように取り組んだ.

この社内実践の成果を今後のお客様商談での提案に有効に活かして,スマートデバイスが業務利用でも有益なこ

との一つの証とするとともに,ひいては社会全体の ICT 進化に貢献することを目指している.

Although the number of smart devices such as smart phones and tablet devices that are used

for personal use has been increasing in recent years, ideal business applications have yet to

be developed.

PFU Applications Limited has been conducting in-house simulation tests using smart device

applications developed for business to further improve these applications.

The results of this in-house simulation testing can be used to prove the advantages of using

smart devices for business purposes by effectively making proposals in business meetings and

to promote ICT in society.

1 まえがきスマートデバイスの出荷台数は年々,急進の傾向にあ

る.IDC(International Data Corporation)によ

ると,タブレットは全世界でみると 2015 年までに PC

全体の出荷台数を上回る予測が出されている参1).

PFU アプリケーションズ(以降,PAL)では,個別

のお客様向けに業務システム(アプリケーション)を開

発,構築している.この中でも,スマートデバイスを利

用する業務システムの開発事例が増えている.特に最近

ではそれが「個人利用(BtoC注1))」向け(のシステム)

注1) Business to Consumer 又は Business to Customer の略.企業が提供して,一般消費者が利用するサービスを意味する.

から「業務利用(inB注2),BtoB注3))」向けに変化する

傾向が見られる.

しかし,スマートデバイスは歴史が浅いため,これを

「業務利用」する場合,どのようなアプリケーションを

提供すれば業務を効率良く行えるか?は,まだ確固たる

正解が確立されていない.

そこで,PAL がお客様に「スマートデバイスを利用

したワークスタイルの変革」をご提案するに向けて,ス

マートデバイスアプリケーションを,PFU と PAL の

注2) in Business の略.企業内で利用するサービスを意味する.

注3) Business to Business の略.企業が提供して,別の企業が利用するサービスを意味する.

Page 2: 業務用スマートデバイスアプリケーションの お客様視点での …業務用スマートデバイスアプリケーションのお客様視点での社内実践

20

業務用スマートデバイスアプリケーションのお客様視点での社内実践

PFU Tech. Rev., 25, 1, (01,2014)

業務で実際に利用し,評価することで,業務利用に適し

たスマートデバイスアプリケーションの仕様や機能を検

討した.

2 スマートデバイスの業務利用における課題と対応策

2.1 業務利用における課題スマートデバイスは,PC に比べて,価格が安く,使

用方法もシンプルであるため,手軽に導入,利用できる

イメージがある.しかし,実際に業務の現場で利用する

には,以下に示す「PC と異なる点」に留意する必要が

ある.

1) マウスとキーボードが付いていない.

2) PC には標準で搭載される有線 LAN や外部媒体

(SD カードなど)が扱えない機種があり,外部と

のデータの受け渡し手段が限られる.

3) 屋外での利用シーンが増えるため,安全安心への

配慮が必須となる.

2.2 対応策前節の「課題」に対しては,通常,以下の方策で対応

することが多い.

(1) マウスとキーボードに代わるインターフェース

スマートデバイスではマウスの代わりに,画面(タッ

チスクリーン)を指でタップ(画面を軽く叩く操作)し

て目的の画面位置をポイントする.また,物理的なキー

ボードの代わりに,キーボードの絵柄を画面上に表示

させて,キーの部分をタッチすることで入力を行う機

能(ソフトウェアキーボード)が標準で搭載されている

(図-1参照).

通常,これらの機能を利用することで,画面の操作や

データの入力を行うことになる.

(2) 外部とのデータの受け渡し手段

スマートデバイスでは,有線 LAN や外部媒体を使

用する代わりに,無線通信(Wi-Fi注4)や 3G注5),LTE

(Long Term Evolution)注6)などの携帯キャリア回線

を使った通信)でデータの送受信を行う.

(3) 安全安心への配慮

端末を紛失した際に,遠隔操作で,端末のロック

および端末内のデータ削除ができる製品が市販され

ている.これらの製品は,MDM(Mobile Device

Management)ツールと呼ばれており,スマートデバ

イスアプリケーションと組み合わせて導入,利用される

ケースが多い.

3 お客様視点での社内実践3.1 社内実践の目的と目標

業務利用に適したスマートデバイスアプリケーション

の仕様や機能を検討する目的で,2.2 節で挙げた「対応

策」を施したアプリケーションを,PFU と PAL の業

務で利用した.その際の目標は以下の 2 点に定めた.

1) 実務利用において「対応策」の有効性を検証する

こと.

2) 社内実践の結果をお客様視点(見やすさはどうか,

操作性はどうかなど)で分析,評価することで,更

なる改善策を見つけ出すこと.

3.2 社内実践に使用するアプリケーションの概要この社内実践には,「PAL で業務利用を目的に開発

した業務用コンテンツを効率良く表示できる汎用型の

ビューワ」( 以降,本アプリケーション)を使用するこ

ととした.選定の理由は,どのような業務でも,コンテ

ンツや処理結果を「画面で見る」という行為が伴うもの

であり,そのためのツールである「ビューワ」を題材に

検証と分析をすることで,その評価結果を,より広範囲

の業務に適用できると考えたからである.

本アプリケーションの仕様を表 -1に,画面例を

注4) Wi-Fi(ワイファイ,Wireless Fidelity)は, Wi-Fi Alliance(米国に本拠を置く業界団体)によって,国際標準規格であるIEEE 802.11 規格を使用したデバイス間の相互接続が認められたことを示す名称.

注5) 3G は,第 3 世代(3rd. Generation)携帯電話回線網のこと.

注6) LTE(Long Term Evolution) は,3G のデータ通信をより高速にした通信規格.

◆図 -1 ソフトウェアキーボード◆

(Fig.1-On-screenkeyboard)

Page 3: 業務用スマートデバイスアプリケーションの お客様視点での …業務用スマートデバイスアプリケーションのお客様視点での社内実践

PFU Tech. Rev., 25, 1, (01,2014) 21

業務用スマートデバイスアプリケーションのお客様視点での社内実践

図-2に示す.特長としては,色々なお客様の多様なご

要件に応じられるように,複数の OS や複数の表示様

式に対応していることや,Android 版でも iOS 版並み

にスムーズに動作する点などがある.

3.3 社内実践の要領社内実践を実施した際のシステム構成を図-3に示

す.

データの流れは,以下の通りとなる.

1) PC からデータ(カタログや提案資料などの

PDF ファイル)をサーバにアップロードする.

2) 登録されたデータ群はサーバで,自動的に PDF

形式から JPG 形式に変換された後,ZIP 形式で一

つのファイルにまとめられる.

3) 社内の Wi-Fi 経由またはキャリア回線(3G,

LTE)経由で,タブレットに ZIP 形式ファイルを

ダウンロードする.ダウンロードされた ZIP 形式

ファイルは,タブレット側の本アプリケーション内

部で自動解凍されて利用できる状態になる.

社内実践では,サーバにはニフティクラウドを選定し

た.選定の理由は,利用費用が安いこと,信頼性が高い

ことによる.

端末には,手書き文字入力の使い勝手の良さから,

Androidタブレットである富士通製のARROWS Tab

を採用した.

以上のシステムを構築し,PFU の営業部門と PAL

の中から「社内実践」を行う部署を抽出して,3 か月間,

本アプリケーションを実際のお客様への提案活動などの

業務に利用した.

4 社内実践の評価結果と総括社内実践で本アプリケーションの使い勝手を評価した

結果,2.2 節で示した「一般的な対応策」だけでは不十

分であることが判明した.社内実践の中で寄せられた要

望と,それに対する改善策を以降に記述する.

◆表 -1 本アプリケーションの仕様◆

項 仕様

1 iOS※1と Android™※2OSで動作する.

2 コンテンツをカテゴリごとに管理できる.

3 以下のいずれかの様式で,コンテンツを閲覧できる.・左右見開き表示タイプ・タイル表示タイプ・1ページ表示タイプ

4 動画ファイルを再生できる.

5 サムネイルのタップで目的のページにジャンプできる.

6 コンテンツをメールで送信できる.

7 キーワードで検索できる.

8 スライドショー機能で,ユーザが画面を操作しなくても,一定時間毎にページの表示を自動で切り替えられる.

9 任意のコンテンツを選択して,お気に入りフォルダにまとめて登録できる.

10 各コンテンツを閲覧した時間や,注目した箇所を閲覧ログに記録して集計できる.

※1 Apple 社のスマートデバイス用独自OS.※2 Android は,GoogleInc. の商標である.

◆図 -2 本アプリケーションの画面例◆

(Fig.2-Screenshots)

◆図 -3 社内実践でのシステム構成◆

(Fig.3-In-housesimulationoverview)

カテゴリ一覧

左右見開き表示

1ページ表示

カタログ一覧

タイル表示

閲覧ログの記録

利用者解凍

1)アップロード

3)ダウンロード

タブレット

PC

2)PDF→JPG変換↓

ZIPでまとめる

ニフティクラウド

管理者利用者

PDF

Page 4: 業務用スマートデバイスアプリケーションの お客様視点での …業務用スマートデバイスアプリケーションのお客様視点での社内実践

22

業務用スマートデバイスアプリケーションのお客様視点での社内実践

PFU Tech. Rev., 25, 1, (01,2014)

4.1 社内実践の評価結果(現場からの要望と改善策)

(1) マウスとキーボードに代わるインターフェース

1) タッチスクリーン

a) 要望

画面上で目的の項目を選択する際に,ラジオボタ

ンを指でタッチする操作は使いづらいとの声が多

かった.

b) 改善策

ラジオボタンによる選択方式をやめて,指によ

るタッチ領域を大きく確保したスマートデバイス

向けのユーザインタフェースに変更した(図-4参

照).

2) ソフトウェアキーボード

a) 要望

物理的なキーボードと異なり,一つ一つのキーの

位置が分かりづらいため,文章の入力が面倒との意

見が多く寄せられた.

b) 改善策

キー入力を行う回数をできるだけ減らすため,

ユーザが一度入力した単語や短文を登録して,そ

れを選択方式で再利用できるようにした(図-5参

照).

(2) 外部からのデータのダウンロード

スマートデバイスでデータを参照する方式には,大き

く分けて以下の 2 種類がある.

① 端末内に業務データをダウンロードして参照す

る方式

② 端末内には業務データをダウンロードせず,サー

バにあるデータを直接参照する方式

②の方式では端末内にデータを保持しないため,端末

を紛失した時でも安全というメリットがある.しかし,

「業務用アプリケーション」は電波の届かない環境での

利用も想定されるため,どうしても①の方式を採用せざ

るを得ない.そのため,いかにしてダウンロード処理を

短時間に,しかもストレスなく行えるようにするかの工

夫が大切となる.

1) ダウンロード時間の短縮

a) 要望

元々,本アプリケーションでは,カタログや提

案資料などの業務データは,3.3 節に示したよう

に ZIP 形式で一つにまとめてダウンロードする方

式を採用していた.この方式は,複数の JPG 形式

ファイルを,一つ一つダウンロードする方式に比べ

て,通信処理における制御がシンプルになるため,

より短時間でダウンロードできる.しかし,現場か

らは「業務の効率化のために,もっと素早く使いた

い」との声が寄せられた.特に,ダウンロード処理

は電池も消耗するため,バッテリーの持ちの面から

も時間の短縮が必要とされた.

◆図 -4 タッチする領域を広く改善◆

(Fig.4-Improvedtouchscreen)

◆図 -5 選択方式による文章入力◆

(Fig.5-Inputfromselectedkeywords)

ラジオボタンを指で選択

領域全体のどこを触っても選択できる

ソフトウェアキーボードで入力した文章を

選択リストに登録する

リストから選択して文章を入力できる

Page 5: 業務用スマートデバイスアプリケーションの お客様視点での …業務用スマートデバイスアプリケーションのお客様視点での社内実践

PFU Tech. Rev., 25, 1, (01,2014) 23

業務用スマートデバイスアプリケーションのお客様視点での社内実践

b) 改善策

以下の三つのダウンロード方式を新たに加えた.

① 差分更新方式

まず,従来の方式である「サーバ側にある全

てのデータをまとめて一つの ZIP 形式ファイル」

にしてダウンロードする方式を改めて,サーバ側

では「データを更新する都度,別個の ZIP 形式

ファイル」を作成する方式にした(図-6参照).

タブレット側は端末内部に保持しているデータ

の最終更新日付よりも新しい ZIP 形式ファイル

(群)をサーバからダウンロードして,差分更新

する仕組みを追加した.

② ダウンロード対象の個別指定方式

また,「利用者がダウンロードするコンテンツ

を選別して指定できるユーザインターフェース」

を追加した(図-7参照).これらにより,でき

るだけ全体の通信量を減らし,ダウンロード時間

を短縮できるようにした.

③ 分割ダウンロード方式

さらに,すぐにコンテンツ活用が要求される

シーンに備えて,少々,操作感は落ちるが,ダウ

ンロードしながらプレゼン業務を遂行できるよ

うに,一つのコンテンツデータを分割して,順次,

ダウンロードする方式にした.

2) ダウンロード待ちのストレス軽減

a) 要望

ダウンロードの待ち時間を物理的に減らす工夫

に加えて,利用者の「待つストレス」を軽減させる

工夫も求められた.

b) 改善策

以下の改善を実施した.

コンテンツを,お客様のところで必須な「重要

データ(そのお客様向けのご提案資料など)」と,

必ずしもなくても構わない「通常データ(カタログ

などのご参考資料)」の 2 種類に分ける管理方式に

変更した.そして,「重要データ」だけは,通信状

態が良好なタイミングで自動的にダウンロードす

る「事前キャッシュ」の仕組みを追加した.これに

より,利用者はダウンロード操作を意識することな

く,重要データを準備できることになる.なお,「事

前キャッシュ」の処理には,通信圏外の場合,通信

状態が回復するまで,内部で再試行を繰り返す仕組

みを取り入れている.

(3) 安全安心への配慮

業務の現場では,端末を紛失した際に MDM ツール

で担保される「データのセキュリティ」に加えて,様々

なシーンでの安全安心への方策が求められた.

1) 操作における安心

a) 要望

スマートデバイスにおける画面のタッチ操作は,

PC でのマウスやキーボード操作と異なり,「押し

た感触がない」ため,誤操作や誤入力の危険性が高

いという意見が出された.

◆図 -6 差分データを作成する管理画面◆

(Fig.6-Managementscreenforcreatingdifferential

data)

◆図 -7 ダウンロードコンテンツの選択◆

(Fig.7-Selectionofdownloadcontent)

Page 6: 業務用スマートデバイスアプリケーションの お客様視点での …業務用スマートデバイスアプリケーションのお客様視点での社内実践

24

業務用スマートデバイスアプリケーションのお客様視点での社内実践

PFU Tech. Rev., 25, 1, (01,2014)

b) 改善策

誤操作防止のために,「利用者に分かりやすい反

応を返すユーザ・エクスペリエンス注7)」を追加した.

例えば,タッチ操作を行った際にバイブレーション

で端末を振動させたり,画面上でタッチしたアイコ

ンをバウンス(ボヨヨン!と弾む感じでアイコンの

サイズを変化させる動き)させたりすることで,ど

のアイコンを選択したかを操作者に明確に伝える

改善を実施した(図-8参照).

2) コンテンツの安全

a) 要望

「コンテンツを守るセキュリティについては,強

度をできる限りアップしたい」という意見が寄せら

れた.

b) 改善策

以下の二つの改善を実施した.

① コンテンツの難読化

まず,コンテンツ自体を難読化して,万一,端

末からコンテンツを抜き取られても容易に読め

ない対処を行った.

② コンテンツ有効期限の仕組み

次に,コンテンツを登録する際に,「有効期限」

を設定できるようにして,その期限が過ぎると,

自動的に端末にダウンロードしたコンテンツが

消去される仕組みを用意した.

4.2 社内実践の総括今回の,社内実践での評価と,4.1 節に示した改善活

動を通じて,業務利用に適したスマートデバイスアプリ

ケーションの仕様や機能を検討した結果を以下に示す.

ポイントは以下の 2 点に集約される.

(1) 安全安心な操作性

「業務利用」においては,コンテンツのセキュリティ

が確実に確保されることは大原則であるが,それに加え

て「誤操作の危険性を軽減し,安心して操作できるため

のユーザインターフェース」が大切である.

(2) ストレスなく,スムーズな業務遂行

ゲームや音楽視聴を「個人利用」することとは違い,

「業務利用」は飽きたから利用をやめるということがで

きない.そのため,「ストレスを感じることなく利用でき,

操作感を含めてスムーズに使えるユーザインターフェー

注7) 製品やサービスをエンドユーザが使った際に経験する「楽しさ・面白さ・心地よさ」といったプラスの感情(情感)を,価値として重視するコンセプトである.

ス」も大切である.

特にダウンロードなどの通信処理への配慮は重要なポ

イントの一つであることが認識できた.

スマートデバイスのアプリケーションというと,華や

かな見栄えや,ゲーム性を帯びた仕掛けを提供すること

に目が行きがちである.しかし「業務用スマートデバイ

スアプリケーション」においては,利用者に安全に使っ

ていただけること,誤操作の排除,快適な操作性を,機

能とユーザインターフェースの両面で,常に意識すべき

である.

5 営業部門から製造部門やサービス部門への展開

今回の社内実践の成果を活かし,本アプリケーショ

ンに対して更なる機能追加を行い,PFU の営業部門と

PAL の特定部署だけでなく,製造部門やサービス部門

における有効利用も考察してみた.営業部門でのコン

テンツは,「カタログ」や「提案資料」が中心となるが,

製造やサービス部門などでは「マニュアル」が使われる

ことが多い.

「マニュアル」コンテンツ用に追加した機能を

表-2と図-9に示す.この新版のアプリケーションは,

◆図 -8 操作結果を分かりやすく示す工夫◆

(Fig.8-Improvedtouchscreenresponsiveness)

目的のコンテンツをタップボヨヨンとバウンス

右方向からスライドさせることで画面が遷移したことを分かりやすく

Page 7: 業務用スマートデバイスアプリケーションの お客様視点での …業務用スマートデバイスアプリケーションのお客様視点での社内実践

PFU Tech. Rev., 25, 1, (01,2014) 25

業務用スマートデバイスアプリケーションのお客様視点での社内実践

2013 年度の PFU の IT フェア注8)に参考出展した.

今,国内の多くの現場では熟練作業員の持つノウハウ

を「マニュアル」という形に残して後継に伝承すること

が大きな課題となっている.表 - 2に示す新機能追加に

より,工場や訪問修理の現場で以降に示すようにスマー

トデバイスを有効活用できることを目指した.

注8) PFU IT フェアは,お客様の新たな取り組みやビジネスモデルの実現といったさらなる飛翔にお役立ていただくことを目的に PFU の製品,サービス,取り組みの一端を紹介するため開催しているイベント.2013 年は 6 月に東京,7 月に大阪で開催した.

◆表 -2 「マニュアル」コンテンツ用の新機能◆

項 機能内容

1 iOS および AndroidOS に加えて,Windows®※17 およびWindows8 でも動作する.

2 フリーハンドでのメモ書きができる.

3 付箋紙様式のソフトウェアキーボードからのメモ入力ができる.

4 カメラで撮影した画像や動画を取り込める.

5 スキャナからの画像を取り込める.

6 特定のページを取り出して,新しい別のコンテンツ(マニュアル)をスマートデバイス上で新たに作成できる.

※1 Windows は,米国MicrosoftCorporation の,米国,日本およびその他の国における登録商標または商標である.

◆図 -9 「マニュアル」コンテンツ用の新機能◆

(Fig.9-Newfunctionformanualcontents)

◆図 -10 現場で情報を追加,変更,共有できる機能◆

(Fig.10-Functionforadding,changing,andsharing

informationanywhereanytime)

カメラ取込み

Web取込み

付箋メモ

フリーハンドメモ

MyBook登録

スキャナ取込み

(1) マニュアルを見ながら作業をしている最中に,熟

練作業員の作業手順をカメラで記録して元のマ

ニュアルに写真を追加する.

(2) 既存のマニュアルのページに注意事項をメモ書き

してノウハウとして記録する.

(3) モバイルスキャナと組み合わせて,現場で熟練作

業員が紙に手書きしたノウハウをタブレットに取

り込む.

(4) ノウハウを追加したマニュアルは,「MyBook」

と呼ばれる個人専用フォルダに保存した後,サー

バにアップロードして,部署内の作業員の間で共

有できる(図-10参照).

6 むすび今回の取り組みで,従来ある「業務向け汎用ビューワ」

の機能やユーザインターフェースを,お客様視点で見直

し,有益な改良を数多く行うことができた.今後は,こ

のアプリケーションが世の中の多くのお客様のワークス

タイルの変革に寄与できるよう,現場の商談に活用する

と共に,更なる進化を目指して,継続して社内実践と改

良活動に取り組んでいきたい.

参考文献参1) International Data Corporation (IDC): 2013 年 5 月 28 日

プレスリリース

http://www.idc.com/getdoc.jsp?containerId=prUS24129713