─ 226 ─ 関西大学総合情報学部 授業計画 2015 科学リテラシー実習 (春学期、秋学期 1単位) 植原 亮 ■授業概要 現代において、科学の発展はますます加速し、そ の成果が生活と社会に及ぼす影響も非常に大きなも のになっている。したがって誰もが科学と無縁では ありえない。そこで、科学から恩恵を引き出し、そ れをさらに社会にとって有益な方向に発展させるた めには、科学の基本的な性格を正確に把握するとと もにその社会的な意味について深く考察する力、つ まり科学リテラシーが求められることになる。科学 リテラシーはいくつかの段階からなる能力として捉 えられており、この授業では基礎からの積み上げを はかりつつも、ときに応用的な内容を織り交ぜると いう方式で、初等的な科学リテラシーの習得を目指 す。まず第一に、最も基礎的な能力として、自分が 受け取った情報をうのみにせず、いったん立ち止 まってその妥当性を検討する力、つまり「批判的思 考力」の育成を図る。第二に、「一般的な科学リテ ラシー」に含まれる能力として、因果関係や実験手 法、統計、ニセ科学などに関する思考能力を鍛え、 理解を深める。そして第三に、応用的な内容として、 認知科学や脳科学の成果を正しく受容し、またその 影響について適切に考察する。ここではとくに、認 知機能に関する科学の基本的な内容が人間理解や社 会的な問題とどう関わるのか、といった問いを扱う。 ■到達目標 科学リテラシーには、科学的な思考法の大枠とい う意味での科学リテラシー(いわゆる理科系的な思 考能力)と、科学の成果を正しく受容し、またその 影響について適切に考察するために必要な能力とい う意味での科学リテラシー(科学者にも求められる 社会リテラシー)のふたつの側面がある。この両面 を一定程度、習得することを目的とする。またそれ に先立つ能力・態度としての「批判的思考」の習熟 にも時間をかける。 ■授業計画 1 イントロダクション 2 批判的思考①導入 3 批判的思考②直感を制御せよ 4 批判的思考③メディア情報 5 応用①知覚 6 一般的科学リテラシー①因果関係A 7 一般的科学リテラシー②因果関係B(+まと め) 8 応用②記憶 9 一般的科学リテラシー③実験のコントロール 10 一般的科学リテラシー④統計的思考 11 総合① 12 一般的科学リテラシー⑤反証主義A(ニセ科 学) 13 一般的科学リテラシー⑥反証主義B(科学の 社会性) 14 その他の問題 15 総合② ■授業時間外学習 授業で学んだ思考方法を日常生活でも使ってみる こと。 参考文献に掲げた書籍に接してみること。 科学を取り上げている TV 番組などを積極的に視 聴してみること。 ■成績評価の方法 定期試験を行わず、平常試験(小テスト・レポー ト等)で総合評価する。 授業内の課題(70%)、発表(20%)、小テスト (10%)。(受講者の状況に応じて変更する可能性が あります。) ■成績評価の基準 毎回の授業で与える、個人で取り組んでもらう課 題やグループ単位での発表など。 ■教科書 ■参考書 『メディア・バイアス』(光文社、光文社新書)松永 和紀 『クリティカルシンキング入門篇』 (北大路書房)ゼッ クミスタ&ジョンソン 『超常現象をなぜ信じるのか』(講談社ブルーバック ス)菊池聡 『科学的思考のレッスン』(NHK 出版新書)戸田山 和久 『脳神経科学リテラシー』(勁草書房)信原、原、山 本 『ファスト&スロー』(早川書房)ダニエル・カーネ マン 『リスク・リテラシーが身につく統計的思考法』(早 川書房(ハヤカワ文庫))G・ギーゲレンツァー 『心は遺伝子の論理で決まるのか』 (みすず書房)キー ス・スタノヴィッチ ■備考 Science Literacy (Lab.)