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ワークショップ「政令指定都市」報告 公共政策フォーラム2006イン熊本 『熊本都市圏と政令指定都市』 看板 主催者挨拶 全体フォーラ 地方分権が進む中、5年後に迫った九州新幹線全線開業や道州制の問題など熊本都市圏を取り 巻く環境は大きく変化しています。そこで「公共政策フォーラム 2006 イン熊本」の一環として、 熊本大学の学生等が中心となり、「政令指定都市」や「都市圏公共交通」についてのワークショッ プを行い、これまでの大学院における研究の成果をもとに熊本都市圏の将来像や政令指定都市に ついて語り合いました。 「政令指定都市」のワークショップでは、「熊本都市圏に政令指定都市は必要か」ということに ついて、熊本大学及び熊本県立大学の大学院生等が肯定側、否定側に分かれてディベートを行い、 肯定側、否定側ともに研究成果をもとにメリット、デメリットをあげながら激論を交わし、また、 一般参加者と共に熊本都市圏の将来について考えました。 日 時:平成 18 年 7 月 5 日(水) 10 時~12 時 場 所:熊本大学五高記念館 ディベート・テーマ: 「熊本都市圏に政令指定都市が必要か」 ディベート参加者:熊本大学大学院法学研究科 大学院生 肯定側:中津海靖子、梅田美和、畑中 寛、田川春基、吉住 修 否定側:生部喜子、梅田玲子、江良正司、福田敬子 ディベート審判員:熊本県立大学大学院アドミニストレーション研究科 大学院生 当日のスケジュール ◆主催者挨拶 熊本大学政策創造研究センター 教授 上野眞也 ◆ディベート開始 肯定側立論5分(田川春基) 否定側立論5分(江良正司) 作戦タイム(1 分) 否定側反対尋問 15 分(生部喜子,梅田玲子) 作戦タイム(1 分) 肯定側反対尋問 15 分(中津海靖子)
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公共政策フォーラム2006イン熊本 『熊本都市圏と政令指定都市』 · 否定側立論 私からは7つの点について述べていきたいと思 います。

Oct 19, 2019

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Page 1: 公共政策フォーラム2006イン熊本 『熊本都市圏と政令指定都市』 · 否定側立論 私からは7つの点について述べていきたいと思 います。

ワークショップ「政令指定都市」報告

公共政策フォーラム2006イン熊本

『熊本都市圏と政令指定都市』

看板 主催者挨拶 全体フォーラムでの報告

地方分権が進む中、5年後に迫った九州新幹線全線開業や道州制の問題など熊本都市圏を取り

巻く環境は大きく変化しています。そこで「公共政策フォーラム 2006 イン熊本」の一環として、

熊本大学の学生等が中心となり、「政令指定都市」や「都市圏公共交通」についてのワークショッ

プを行い、これまでの大学院における研究の成果をもとに熊本都市圏の将来像や政令指定都市に

ついて語り合いました。

「政令指定都市」のワークショップでは、「熊本都市圏に政令指定都市は必要か」ということに

ついて、熊本大学及び熊本県立大学の大学院生等が肯定側、否定側に分かれてディベートを行い、

肯定側、否定側ともに研究成果をもとにメリット、デメリットをあげながら激論を交わし、また、

一般参加者と共に熊本都市圏の将来について考えました。

日 時:平成 18 年 7 月 5 日(水) 10 時~12 時

場 所:熊本大学五高記念館

ディベート・テーマ:「熊本都市圏に政令指定都市が必要か」

ディベート参加者:熊本大学大学院法学研究科 大学院生

肯定側:中津海靖子、梅田美和、畑中 寛、田川春基、吉住 修

否定側:生部喜子、梅田玲子、江良正司、福田敬子

ディベート審判員:熊本県立大学大学院アドミニストレーション研究科 大学院生

当日のスケジュール

◆主催者挨拶 熊本大学政策創造研究センター 教授 上野眞也

◆ディベート開始

肯定側立論5分(田川春基)

否定側立論5分(江良正司)

作戦タイム(1 分)

否定側反対尋問 15 分(生部喜子,梅田玲子)

作戦タイム(1 分)

肯定側反対尋問 15 分(中津海靖子)

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作戦タイム(1 分)

否定側最終弁論 10 分(福田敬子)

肯定側最終弁論 10 分(梅田美和)

◆判定結果 肯定側4票、否定側 1 票

◆参加者との意見交換

◆閉会挨拶 熊本県立大学総合管理学部 助教授 今里佳奈子

(ディベート討議内容)

肯定側立論5分

おはようございます。田川と申します。私は熊

本市は是非政令市を目指すべきであるという立

場から意見を述べます。まず熊本市が政令市を目

指さなければいけない理由ですが、3 点あると思

います。

1 つは地方分権の進展で国や県の役割が見直

されているということ、また三位一体の改革の影

響で市町村を取り巻く財政的な環境が激変して

いるということです。

2 つ目が、都市間競争の時代に入ったということ。それから、3つ目としましては、九州において

熊本市が拠点性を確保する必要性ができたということ、この 3点だと思っております。

もう少し詳しく話しますと、政令都市の従来 100 万人という人口要件が、国が市町村合併支援プ

ランということで70万人規模に基準を落としています。静岡市がすでにその基準で政令市指定を

受けておりますが、こうなると熊本市も射程距離内に入ってきたんじゃないかということでこうい

う話があがっております。私が熊本都市圏というときに、これは現在の熊本市というよりも熊本市

の生活圏、熊本市周辺の市町村を合わせたところで話をしております。生活圏としては一体化して

おりますし、運命共同体と考えていいのではないかと思います。そういうことで周辺の市町村あわ

せますと 101 万人程度になりますので、十分これは政令指定都市としての規模に見合うということ

になると思います。

それから九州新幹線が 2010 年度末、2011 年には全線開通ということで、博多から鹿児島までの

通過点に終わるのではなくて、熊本に是非、人やモノを降ろしてもらうということで、拠点性を確

保する必要があるということが出てきます。それから道州制の話が最近出てきておりますが、ひょ

っとしたら時期尚早かもしれませんけども、具体的に本当に話が進んだときには、それから都市づ

くりをしては遅くなりますので、今のうちから道州制の九州の州都として、熊本が九州の中央に位

置するということ、規模もそこそこあります、そういう資格があると思いますので、今、政令市に

なっておくというのは必須の条件であると思います。ぜひこれは目指したいと思っております。

それでは政令市になったときのメリットということですが、今話したことは別としまして、すで

に熊本市は中核市でありますけども、さらに権限が拡大するということ。それから、直接大臣の関

与がある、これはどういうことかと申しますと県を介さずに市が政府といろんな政策とかいうこと

について直接交渉ができるということ。それから区役所を設置して、住民への細かいサービスがで

きるようになるということ。さらにいろんな税源の委譲とか、宝くじ発行、交付金などで財政的な

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メリットがでてくるということが考えられると思います。それから非常にメンタルな面だと思いま

すが、私が重要だと思うのは、市としてのステータスが上がるということ。これは熊本市民、周辺

市町村の方、一緒に合併して熊本市民となった後の誇りにもつながるのではないかと思います。そ

れから拠点性は先ほど言いましたが、企業とか官公庁の支社・支局が集まるということで、人間が

集まってきていろいろな経済波及効果もあるということが言えるのではないかと思います。

もう 1 つ道州制を考えるときに、私は実は福岡の八女から通っているんですけど、八女の隣の久

留米なんかが福岡の県境を越えて佐賀の鳥栖と一緒になって九州の州都を目指すという動きもあ

るようです。それからしますと熊本市のほうがはるかに規模もありますし、十分に資格があって久

留米とかと鳥栖なんかには負けてはならんというような気持ちになってきます。まして鹿児島のほ

うが九州新幹線の影響で先に政令指定都市になるという不安もありますので、そういった都市間競

争に負けないように政令指定都市を目指していく必要があるかと思います。あとメリットとしまし

ては行財政改革が進むということが考えられます。組織の効率化等が考えられます。最終的には最

初言いましたように市町村合併ということが熊本市が政令市になる前提条件ですので、このまま合

併をせずに政令市にならないまま都市間競争に負けて埋没してしまうか、政令市になって九州のリ

ーダーになるか、今が正念場だと思っております。

否定側立論

私からは 7 つの点について述べていきたいと思

います。

まず第1に制度の本質の問題についてでありま

す。今回議論されている政令指定都市移行の問題

は、合併特例法のもとで市町村合併を支援するた

めに国が策定した支援策であって、合併を前提と

して政令指定都市の指定を弾力化するというもの

であります。したがって政令市移行はすなわち市

町村合併の問題でもあります。

また本来住民自治はそこに住む住民の目線で論議がされるべきと考えますが、そうではなくて国

の支援施策があり、住民の視線と全くかけ離れていることをまず指摘しておきたいと思います。

第2に県単位で考えますと、熊本市が仮に人口 70 万人で政令指定都市となった場合には、県内

の総人口の 37%が熊本市内に居住することになり、熊本市とその他の市町村では経済、教育、文

化、医療など格差は広がるいっぽうであります。天草や阿蘇など郡部は切り捨てにつながりかね

ません。集中と過疎、特に過疎の問題は深刻といえます。これは熊本県全体の発展という意味で

は大きなマイナスだと思います。

続いて財政の話でありますけども、都市機能が集中すると、当の熊本市におきましても合併町

村との格差是正を図るために、都市基盤整備費用や合併した町村との公共交通網の整備費用など

莫大な投資が必要であります。政令市になることによって市の財政基盤はますます悪化すること

も考えられます。

続いて行政事務ですけども、政令市になるとこれまで県で行ってきた業務が市に移管されるこ

とになります。事務の増加に伴う人事、財政、財源などの体制整備が必要になります。特に教育

行政の分野におきましては、現在、県教育委員会で一本化されている教職員が市でも採用が可能

となって市の教職員の異動は市内だけでよく、その結果優秀な人材が熊本市に集中することにな

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り、ひいては教育格差の拡大につながると思います。

続いて合併市町村の自治についてでありますけれども、政令市となるためには合併が避けて通

れない問題であります。熊本市のような大きな都市と合併するとそれまで培ってきた近隣町村の

自治や地縁、こういったものがなくなります。こういった場合、合併特例法などに基づき地域審

議会、地域自治会、合併特例区といった制度が救済措置として設けてありますけれども、特に合

併特例区は合併前の市町村を特別地方公共団体として予算の執行権もある制度で、自治を保護す

る目玉として言われていますけれども、先にこの問題に取り組みました岡山では独立王国的な自

治は全く望めない制度と言われております。

続いて住民サービスについてでありますけれども、政令市になりますと熊本市の場合、およそ 5

つ程度の区役所が設立されることになります。これまで住民は 10 箇所の総合支所や市民センター

で身近なサービスを受けております。政令市になることにより単純に考えますと住民サービスは

半分に低下するということになります。政令市は住民サービスの向上というよりむしろ低下につ

ながる可能性があるということです。

最後に区役所ですが、政令市になりますと区割りが行われて区役所が設置されるわけですけど

も、通常、区には企画、予算編成、人事、条例制定権といった機能はなきに等しいものでありま

す。またあったとしてもその権限は限られており、住民自治の行政単位にはなりえません。この

ように政令市は都市として、また行政機関として財政削減、住民自治、行政サービスに貢献する

制度とは言えないと考えますので、断固反対したいと思います。

否定側反対尋問

生部と申します。賛成派の立場の意見を受けま

して反対派のほうから反対尋問を行います。大き

く 5 つの論点にまとめて尋問をさせていただき

ます。

まず 1 つは平成 23 年の春に迫った九州新幹線

の博多鹿児島ルートの全線開通が熊本市のさら

なる飛躍の契機として、また道州制を導入した場

合の州都として九州でのリーダーシップをとる

ために九州における拠点性をさらに高めるため、

政令指定都市への移行は不可欠であるという論点。

2 つ目は政令指定都市に移行することで、市としての権限が拡大することではないかという論点。

3 つ目は政令指定都市に移行することで各行政区に区役所が設置されることでこれまでより市民

の生活に密着したきめの細かいサービスができるようになるのではないかという論点。4つ目が政

令指定都市になることでステータスが上がるという論点。最後に 5 つ目が、市町村合併をして政

令指定都市になることで新しい財源が増え、今まであった財源も増額されるために財政上もメリ

ットがあるのではないかという論点。この5つの論点に絞って 2 人で反対の尋問をしたいと思い

ます。

まず、1つ目の論点ついてですが、九州新幹線の開通によって九州における拠点性をさらに高め

るために政令指定都市への移行が不可欠であるという点ですが、九州新幹線の全線開通というのは

熊本県にとっても今後大きな飛躍の契機であるとは言えると思います。その一方でストロー効果と

いうものが心配されていまして、交通が便利になることで周辺の町から大都市に人や経済が吸い取

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られてしまうということですね。つまり福岡都市圏へ経済効果などが一極集中してしまうと、熊本

から通勤や通学において福岡へと人々が吸い取られているのではないかという心配があげられま

す。そういうことからしましても熊本が単なる通過都市になってしまうのではないかという心配が

あげられます。熊本市は近年中心市街地においても貸しビルの空き店舗が増加していまして中心部

の空洞化が問題となっています。これを解消するためには都市計画の中で区画の整理をしなおさな

くてはなりません。また熊本市は市内における交通機関の環境整備がほかの県に比べて大変劣って

いるということが大きな問題とされていまして、公共機関には市電がありますが運行範囲も実際は

とても狭くて、これを拡大するとしても用地を買収したりで財政が圧迫されるということがあげら

れます。そのような状況のもとで、九州新幹線に乗って熊本で降りてくる、他の県の人々が政令指

定都市として大きくなった熊本で都市としての魅力を求めて熊本に降りてくる人がいるのかとい

うことが疑問に思いました。

次に 2 番目に政令指定都市に移行することで、市としての権限が拡大するのではないかというこ

とに関してですが、必要以上に行政事務の負担が拡大するということになります。事務の増加に伴

って制度を新しく作らなくてはいけなかったり、職員の業務の負担が増加したり、財政の見直しな

ど財政のコストが大きくなると思います。平成元年に政令指定市になった仙台市では、市への権限

移譲がされたことで国や県からの支援を受けずに単独で公共事業を行うケースが増えたために財

政が悪化してしまったというケースも報告されています。

次に政令指定都市に移行することで、各行政区に区役所が設置されることになります。これによ

って一層市民生活に細かいサービスが可能になると思われるんですけども、政令指定都市になると

熊本市の場合にはおよそ 5つ程度の区役所が設置されることになります。これまで住民に身近な手

続きというものは10箇所の総合支所や市民センターでできたのですが、区役所ができることで手

続きできる場所が少なくなったり、ほとんどの住民はこれまでと比べて手続きのために遠くまで行

かなければならなくなる、手続きの場所が遠くなるという問題があげられます。先ほど申し上げた

熊本市が交通環境が悪いという問題も後押しして住民サービスが本当に上がるのかという不安、疑

問があげられます。また区役所というものが、東京都の区役所とは違って独立した法人格というも

のがありません。結局は本庁の内部機構の一つという位置を抜け出すことができませんので権限も

制約されてしまうのではないかと思われます。区役所の区を設置しても法人格がないために区議会

は設置できません。きめ細やかなサービスを実施するという目的が住民の参加と自己決定権に基づ

いたあくまで住民本位の住民自治というものを意図しているとしたら、これをチェックしたりコン

トロールするための議会というのは必要不可欠であると思われますが、政令市の制度に関しては議

会の設置は認められていません。

次に、政令指定都市になることでステータスが上がるのではないかという意見ですが、これは都

市のイメージアップにつながるということで、大企業や進出が予想されて熊本市内の都市機能が集

積が一層進むのではないかという意見がありました。熊本市が政令市になることでいろいろな企業

や事務所などが増大するということはあるかもしれません。特に市町村合併によって熊本市になっ

た地域の方々からしてみると、新しく事業所税や都市計画税というものを支払わなくてはならなく

なり、まわりの財政負担というのも心配、不安にあげられます。

県内における熊本市への一極集中化というのもこれによって懸念されるところだと思います。熊

本県内、市町村のバランス、均衡のある発展というのが、これによって一極集中化されてしまうの

で阻害されてしまうのではないかということがあげられます。また、熊本市内においても市街地の

空洞化対策などもあって、今後もしかして中心部だけが発展してしまい、市町村合併などで新しく

市になった市街地の周辺部というのがさびれてしまう傾向があるのではないかということが懸念

されます。例えば市の中心部だけが優先的に整備されて周辺部の整備が後回しになってしまうとい

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うことで、市の範囲の中でも地域格差が生じるのではないかと思われます。格差の拡大というもの

は県全体の発展を考えれば結局はマイナスになってしまうのではないかと思われます。

今現在 15 の都市が政令市になっています。来年には浜松市、新潟市が移行を予定していて、

今も岡山市や熊本市のように、また鹿児島市なども都市間競争に向けて政令市を予定してい

るとされています。そのような中で、もうすでに 15 もある政令指定都市の中で、熊本市が今

後政令指定都市になったとして、本当に私たちが思っているほどのステータスが感じられる

のか、与えてくれるのかということがというのは疑問が残るところだと思います。

おはようございます。梅田と申します。

5番目の財政問題、果たして財政的に豊かに

なるのかということを検証したいと思います。

肯定派からは新幹線の開通を見込んだまちづ

くり、それから先行していく都市があってそれ

に負けてはおれない、それから要件緩和で 70

万人になったから政令指定都市になりやすく

なった等について論が展開されておりますが、

これはいずれも消極的な内容ではないかと思

います。そもそも政令都市として熊本市はどのようにあるべきか、政令都市になって熊本市は何

をすべきかという明確な意志とビジョンに欠けていると思います。準備が整ったところと無理を

せずに合併してというところであればいざ知らず、現在の状況は政令都市に向かう言葉を持たな

いまま周辺住民はおろか、現熊本市の市民の方々にも理解や同意は得られないと考えます。まし

て今現在の熊本市議会の動向さえはっきりしていません。ぬれぬれとよそが政令都市に向かうの

ならこの列車に乗り遅れたくはない程度の合併であれば、また政令都市移行であれば、今後予想

される財政負担を熊本市は歯を食いしばってでも本当に責任を果たしていけるのかはなはだ疑問

であります。先ほど生部が言っておりましたが、人口 100 万人の仙台市は年間予算が 4,000 億円

程度、東北唯一の政令都市です。合併による周辺西部に膨大な税金を投入した結果、現在一般会

計での市債、借金は 7,000 億に達しており、特別会計をあわせると 1 兆円にのぼっております。

それに対して基金は 1,900 億程度です。勘定があわないのではないでしょうか。7月 3 日の朝日新

聞に交付税のアンケートを出したという内容が載っておりましたが、ご覧になりましたでしょう

か。小さい自治体には身にしみる削減の波ということでありましょうが、その中に政令都市は裕

福であるという裕福論に対して約 200 万人の名古屋市の助役が「政令都市を狙い撃ちにした交付

税の削減は断固反対する」ということを国会に物申しております。小泉首相が「名古屋ももらっ

てるの」と言ったそうであります。その中で名古屋市は住民税とか地方税では増収がありました

が、03 年度に比べて受け取る交付税が半減したという記事が載っております。そうことを考えた

ときに中途半端な論議やムードで政令都市や合併というのは目指すべきではないと考えます。次

世代に禍根を残すことになりはしないでしょうか。

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肯定側反対尋問

こんにちは。中津海と申します。私のほうから

は肯定側からの反対尋問を行いたいと思います。

私ども肯定側が立論をして反対側の立論があっ

て、その後否定側の反対尋問がありました。ここ

でいろんなお話が今まで出てきましたので、今ま

での否定側の意見に 1 つだけ考えていただきた

いと思っていることがあります。

まず、熊本市は政令市のビジョンがない、政令

市のビジョンがないままにぬれぬれとこの機を

逃すなということで合併を進めて政令市にのし上がろうとしているというご指摘がありましたけ

れども、最初にご説明しましたように政令指定都市というのは法律上の要件は人口 50 万人という

ことで明文では規定されているんですけど、実情の運用としましては 80 万人以上、将来的に 100

万人を目指せる都市でなければこれまではなれなかったんですね。それが合併の支援プランの一

環として合併が絡む場合に限り人口 70 万人以上で政令指定都市に昇格できることになった。現在

熊本市の人口約 67 万人しかありません。自然増を待っていて 80 万人に手が届くまでに 13 万人増

えなければならない。これはここ数年間での熊本市の状況では増やせるものではないんです。そ

うなってくると熊本市が堂々と政令市のビジョンを語るとうことは周辺の市町村に合併をしろと

いうのを暗にバイアスといいますか、圧力をかけていくことになります。合併を決めるのは誰で

すか、これは熊本市民であり、周辺市町村の住民です。そこは確実に押えたうえで、合併を決め

るというのは住民である、その上で政令市に移行したい。合併が条件の政令市移行を目指してい

る以上、そこは熊本市としてはビジョンを語りたくても語れない部分というものはあるんです。

そこでこれは反対派に人にも賛成派の人にも考えていただきいのですが、今私たちは小泉政権の

もとで「小さな政府」を推し進めています。これは他でもない日本の国民が自民党の政権を選ん

でこういった政策を展開している、その流れの中で平成 12 年度地方分権改革が行われて、いろん

な国の機関委任事務が地方におりてきました。それで地元の市町村はそれこそふうふう言いなが

らいろんなおりてきた事務を、自治事務をさばかなければならない状態になっています。財政的

にも日本は山あり谷ありではあったんですけど一貫して経済成長を遂げてきました。そんな中で

バブル崩壊後、はじめは公共投資をすることによって景気を回復させようとした。それでも回復

しない。回復しない間に市町村が背負ってしまったいろんな借金、起債の部分がたまりにたまっ

て、国も負債をたくさん抱えていますので、結局財政的に国も市町村も都道府県もみんなやって

いけない状態になってしまっているんです。この中で考えていただきたいのは、合併をしない、

政令指定都市にならないといった選択をして 20 年後にやっていけますかということです。

皆さん、今の現状を考えられていると、今の熊本市―適度な大きさで便利よね、周辺市町村―熊

本市にも近いし、大学もあるし、病院もあるし、動物園もあるし、でも自分のお家は結構熊本市周

辺部だから地価も安いし、駐車場 3台分確保してもぜんぜん広いし、余裕だし、そういったことで

今はメリットが大きいかもしれませんけど、では 20 年後どうなるかという想像してみてください。

最初に新幹線のお話が出てきています。2011 年の春に全線開通した場合に熊本が単なる通過都市

になるんじゃないか、または福岡や鹿児島といった九州内の都市に吸い上げられるストロー現象が

起こるんじゃないかといった危惧がなされています。仮にストロー現象が起きたとして、それに対

応するにはどうしたらいいのか、それは熊本に拠点を持つことです。拠点がなければいろんな大き

な企業の支店、官公庁の支局、そういったものがなくなってしまいます。ますます空洞化が進みま

す。ということは仕事場もなくなるということです。みんないろんな支店が福岡に集中してしまっ

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て、経済も行政も全て福岡市に集中してしまったらどうなりますか。みなさんわざわざ熊本から通

うという選択をされる方もいるかもしれませんが、福岡に住もう、福岡の周辺に住もうという方が

増えてきます。今の市町村財政というのはどうしても交付税制度を抜きにしては語れません。熊本

市の場合、いわゆる財政力指数と言って、熊本市の収入で熊本市がやらなければならない仕事のお

金ををどれぐらい賄えるのかというのは大体 7 割程度と言われています。残りの 3 割程度は国から

交付税をもらうことによって何とか今の行政のサービスのレベルが維持できているんですけど、こ

の交付税の算定方法というのが今後大きく変化をしないとすれば、支店が無くなる、人がいなくな

る、働き口が無くなる、みんなが来なくなるというのは、ひいては交付税の削減にもつながるんで

す。先ほどの否定側の反対尋問でもありましたが、小さい町は交付税の削減が身にしみています。

それは別に小さくない町でも交付税の削減は今、身にしみているんです。仮にもらっていないとこ

ろも無いわけではありません。東京都は、ずっと交付税をもらわない不交付団体できているんです

けど、それでも平成 12 年頃にあまりにも税収が激減したので銀行税を導入しようというようなこ

とまでやったじゃないですか。本当にお金が無いのはどこも一緒なんですよ。そういった中で、今

の行政サービスが当然受けられるものとして考えているならば、20 年後それは本当に大丈夫なん

ですかということを考えていただきたいと思います。そこで今からお話しすることは、熊本市がも

っと大きくなる、熊本市が周辺市町村を飲み込む、そして熊本市が政令市になるということではな

くて、熊本市とその周辺というのは通学にしろ、通勤にしろ、住まいにしろ、皆さん非常に行き来

の激しい範囲です。生活圏としては一体化しているといってもいいと思います。そういった中で熊

本市を中心としたこの熊本の都市圏に一つの政令市を創るということを考えていただきたいと思

います。そういったことで、まず今からお話しするのは 3 点です。

1 つには、まず心配されている点としては、熊本市が政令指定都市になったら一極集中するじゃ

ないか、県土の均衡ある発展はどうなるんだという批判があります。しかし均衡ある発展というの

はあくまで県単位で考えた場合のどういったバランス、熊本市だけが何%になってしまう、熊本市

だけに人口が集中してしまう。ただ少し枠を広げて九州内で熊本はどういった位置、国内で熊本は

どういったところということを考えていくと、熊本に大きな都市は必要じゃありませんか。そこを

考えていただきたいと思います。今、熊本はそこそこ大きな都市です。政令市じゃありませんけど

も人口も 67 万人います。都市圏全体で見れば約 100 万人の人口を抱えています。だからこそ例え

ば病院があったり、大学がいくつもあったり、いろんなスポーツ施設があったり、それは熊本市民

はもちろん熊本市周辺の方、また熊本県内で熊本市によく出てこられる方、いろんな方が享受する

メリットなんです。このメリットを今後熊本市が衰退していくのをじっと眺めてて都市間競争に敗

れるのを待っていて手放すのか、それともこれをますます熊本都市圏を深化させていくのかという

ことを申し上げたいと思います。

そして政令市になった場合に最も危惧される点というのは、住民のコミュニティ維持が難しくな

るんじゃないか、それともう 1 つは財政的にもっともっと圧迫されるんじゃないかという点の 2

点になってくるのではないかと思います。

まず、住民のコミュニティ維持の問題なんですけども、これは本当に少子高齢化が進んできて、

私たちのおばあちゃんの世代みたいな大きな家族制度というのがだんだん崩壊していく中では、ど

この市町村でも抱えている問題です。このようなまちづくりの重要性というのは、都市部であれ、

町村部であれどこも課題として持っています。熊本市の場合は平成 16 年からいわゆる小学校の校

区単位で校区自治協議会を作ってコミュニティ機能の維持ということでまちづくりを進めていま

す。政令市になった場合には区役所をもちろん置くことができますけども、例えば現在の市民セン

ターは 10 箇所ありますが、そこで例えばまちづくりなどの企画的な機能は請け負っておりません。

区役所になった場合、どんな仕事を持ってもらうのかというのは、市長の裁量で決めることができ

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ます。ということはまず校区単位でいろんなコミュニティの維持活動をして、それを少し集めたと

ころで区役所単位でまちづくりをしていく、本庁では都市として都市基盤の整備を進めていく、都

市計画を進めていくといった役割分担ができることになります。

それから財政の問題は政令市になる、ならないに関わらず皆さん心配される問題ではあるんです。

確かに今、非常に財政的には厳しい状態になっています。もちろん市町村合併が進んで政令市にな

るのであれば、交通基盤の整備も必要になってくると思います。現在、熊本市は市電を持っていま

すけども、それとあわせて市営バスも持っています。市電を延伸させることには用地を買って、軌

道を作って莫大な公共投資が必要です。ただ現在持っている市営バスのネットワークを再構築する、

または市営バスを持っているということを 1 つの強みとして、バス会社と交渉してネットワークの

棲み分けをするといった、そういった政策の展開をすることによってバス網を使った交通基盤の整

備というのは、ソフト面からアプローチできる部分なんです。仮に熊本市であればそういった手段

が使えるのに、周辺の市町村単位で交通基盤を単独で整備しようとした場合、果たしてできるんだ

ろうか。財政的にも、技術的にも交渉してきちんとやっていくことができるかと考えた場合に、1

つの大きな都市圏を創る、それはスケールメリットになります。スケールメリットがあるというこ

とは選択肢が増えるということです。少し前に北海道の夕張市が財政再建団体になるんじゃないか

という記事が出ていました。どこも今市町村は財政が大変です。ぎりぎりまで自分の体力に合わな

い無理なサービスを維持し続けて最後にいわゆるハードランディング、激変させるのか、それとも

今の状態、今の国政の状態、今の財政の状態、今の住民の状態にあわせてソフトランディングがで

きるように少しずつ変化を遂げていくのか。それは私たちでもあり、熊本市民に皆さん、周辺住民

の皆さんの選択なんです。政令市になった場合にどんなメリットがあるのかということはあります

けど、ならなかった場合に後悔しないのですかということを申し上げたいと思います。

否定側最終弁論

否定側から福田と申します。肯定側からの立

論、それから反対尋問を受けまして反対派とし

ては懸念として残りました点について政令市

と合併の関係、その両面から 4 点申し述べたい

と思います。

まずは、政令市の観点からなんですが、先ほ

どこちらから申し述べましたように熊本市は

すでに人口規模では全国で 15 番目となってお

ります。政令指定都市になることのメリットと

しては、ステータスを上げる、魅力をアップさせるということがあげられると思うんですが、果た

して 15 番目の都市でこれからステータスが上がるのか保障があるかどうかについてはまだ疑問が

あります。また熊本市が政令指定都市になれば、先ほどバス交通網の整備の点がでましたが、大都

市としてふさわしいインフラの整備というのはどうしても必要になってくると思います。というこ

とは、つまりそれだけ投資的経費が必要になってきまして、財政の圧迫というのは避けられないか

と思います。そこで、政令指定都市になることで、というよりも政令指定都市にならずともそうい

った財政面での負担を伴わなくても熊本市の良さを生かして魅力のあるまちづくりを進めるとい

うことは可能ではないかと考えます。熊本市は平成 19 年に築城 400 年を迎えます。この城下町と

いう良さ、自然もありますし、森もあります、地下水もとても清冽で、そういった癒しの空間とし

ても熊本市の魅力としてはあるのではないかと思います。こういう築城4百年ですとかそういった

城下町の魅力そういったものをもっともっと伸ばしていくことも必要ではないかと思います。今は

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都市の便利さとかと快適なものを魅力と考える人よりも癒しを求める時代にきているかと思いま

す。こういった地下水とか、熊本市は阿蘇とか天草にも近いですし、そういった地理的に恵まれた

条件、観光資源や熊本市の適度な都市機能を活かしたまちづくりを進めていって、住民の方にも外

から来られる観光客の方にも魅力があるようなまちづくりを進めていってはどうかというのが1

つあります。

次に先ほど出ましたが、一極集中、他の市町村との格差というのが 1 点あげられます。先ほど均

衡ある発展というのは県の中だけではなくて、もっと視点を広げて、九州、国内での拠点から見た

ときの都市圏についてどう思うかという意見が出ましたが、まずそこに住む住民の方の視点という

のを考えずにまちづくりを行うのではなくて、まずはそこに住む住民の方が住んでいる土地で幸せ

だと思って暮らしていただくことというのが大事ではないかと思っております。そう考えたときに、

熊本市、都市圏以外の市町村や地域にも目を向けなければならないと思います。熊本県内には中山

間地域を抱えておりますので、熊本市への一極集中で他の地域の方々に不利益になるようなことで

すとか、他の地域の疲弊化を進めるということは避けなければならないのではないか、配慮が必要

なのではないかと思います。

次に合併についてのデメリットの点なんですが、政令指定都市になるためにはやはり、先ほど人

口の件もあげられましたが、どうしても合併というものは避けて通れないことになります。合併さ

れる側といいますか、合併する町としてはどうしても事業所税とか、区域によりますが都市計画税

とか新たな税の負担というのはどうしても出てきてしまいます。また人口比でいいますと、単純に

計算しますと選挙の時に選出される議員に数というのは合併前に比べて減っていくのではないか。

結果として住民意見を反映するためのツールというのが旧住民の方にとって少し減ってしまうの

ではないかと。また前の町役場ですと知っている職員がいたけれども、合併していろんな役所や総

合支所、本庁などに分散されることによって、これまで顔なじみだった職員が遠くなるとか、人間

関係の希薄化などの心配の声も実際あがっております。そういった合併によるデメリットというの

は避けて通れないのではないかと考えております。

コミュニティレベルの身近な施策についてもっと充実させていくことが必要になるのではとい

うことがあげられると思いますが、合併にともなって制度が大きくなること、また区域が広くなる

ことで、そのコミュニティレベルの身近な政策形成というのは住民の方々とじっくり協議して市町

村の制度のすり合わせなど、そういった調整、協議、議論の時間というのも必要となってくると思

います。この時間の点で言いますと新幹線の開業まで平成 23 年の春になっていますが、その新幹

線の開業までに政令指定都市となってある程度拠点性を高めておく必要があると、その前に前提と

して合併が必要ということになります。時間的なものを考えると、他都市では合併から政令市移行

までに 2年程度かかっておりますので、逆算して間に合うのかという点もひとつ懸念としてあげら

れます。

最後に、合併と政令指定都市の両面に関する懸念なんですが、どうしてもやはり皆さん誰でもな

んですが、変化についてはためらいというものがあると思います。政令指定都市については中核市

から政令指定都市になるということで、どうしても行政の仕組みとか制度などが変わってきます。

町にとっては一足飛びに一般市から特例市、中核市を飛び越えて政令指定都市ということになると

いうことになります。また合併に関して言いますと、町の住民には町の住民だというアイデンティ

ティがありますし、土地への愛着というものがあります。行政サービスについても新しいサービス

に変更するという可能性があります。そういうアイデンティティが失われるのではないかという不

安など、そういう変化に対するためらいというものがあります。何かが変わるということに対する

ためらいというものがあります。今の時点だと合併政令市になるメリットに対して変化に対するた

めらいを払拭するにはまだまだハードルがあるというのが現状だと思います。以上のことから合併、

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また政令指定都市への移行には反対いたします。

肯定側最終弁論 こんにちは。法学研究科の梅田と申します。

肯定側の最終弁論を行います。

私たちは熊本市は政令指定都市を目指すべき

だと考えるのですが、これまでの議論をまとめて

その理由を述べていきたいと思います。

まず市民側からの理由ですが、一つ目は都市圏

のイメージを明確にする必要があるということ

です。現在熊本市は、先ほどから申し上げていま

すが政令指定都市並みの人口規模を持っていま

す。

熊本市だけで 67 万人、都市圏全体で 101 万人で、これは北九州市や仙台市などと同じレベルに

なります。しかし自分たちが九州や全国の中でそのような熊本都市圏を構成しているという意識を

あまり私たち市民が持っていないのではないかと思われます。政令市になると市のステータスが上

がりイメージアップにつながります。それにより市民が明確な都市圏のイメージを共有し、誇りを

持てるようになり、様々な分野で地域が活性化していくことにつながると思います。

次に拠点性を持つことができるということがあげられます。熊本市は歴史的に行政機関、学術機

関も集積しており、九州内では地位もある程度築かれてきましたが、現在その地位は他の地域との

競争の中で埋もれつつあります。例えば少子高齢化が進み、全国的に大学入学者が減少すると思わ

れますが、熊本の規模が縮小し、街の魅力が小さくなると若者離れが進み、学生は福岡や東京、あ

るいは九州内でも地元の大学を選んでしまうことになるかもしれません。そして熊大や県内の大学

の活気がなくなり、九州の大学内での相対的な地位の低下につながるのではないかと考えられます。

また、就職や進学で若者が減ると、地域の人材が不足するなど将来世代が減少し、都市の衰退が加

速するのではないかという懸念があると思います。今後地方分権の進展で、いずれにしろ国や県か

ら事務・権限の移譲が予想されますが、交付税や補助金は大幅な削減が確実となっていることから

も権限と財源が最も保障された政令市になるのが得策だと思います。また、政令指定都市になれば

企業や官公庁などの支社などが集まり、コンベンションの開催や文化的な催しも増え、それにより

雇用も増えるということになります。また、逆に政令指定都市にならなかった場合、人口規模のラ

ンキングで熊本市は全国50市の中の 1都市でしかなくなってしまいます。これまで全国35あっ

た中核市の中で堺市に次いで 2 番目に人口規模が大きかったのですが、堺市や小さな都市の合併に

よる相次ぐ政令市昇格で、熊本市の相対的地位は低下しています。2000 年に 14 位だったんですが

現在 20 位に下降しています。先ほども言われたように九州新幹線が全線開通するということで、

ストロー現象というのを防ぐためにも熊本市の拠点性をしっかりと持っておくというのが重要で

はないかと考えます。

次に住民自治という点ですが、現在の市町村で住民自治が実現していて、コミュニティが十分に

機能しているかという問題があると思います。政令指定都市になれば区制を敷き、区役所を設置す

ることができます。住民に近いところでほとんどのサービスを提供できることになるわけです。税

金、年金、住民基本台帳などの窓口業務は身近になります。大区役所制をとると区単位で保健、土

木も実施することになります。各種審議会や校区自治協議会などもつくることができます。これら

により住民の声が届きやすくなる工夫をすることは可能で、現在よりきめ細やかな対応ができ、コ

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ミュニティについても再編成をしていくことができると思います。

これまで述べたのは住民から見たメリットだったのですが、行政としてのメリットとしては、県

を通さず国と直接交渉ができるということです。知事の承認、許可、認可とかが必要な事業につい

ては知事の関与が不要になります。これは事務手続きの簡素化、迅速化、行政のスリム化にもつな

がることになります。

次に権限の拡大があります。県が処理することとされている、民生、都市計画、土木行政などに

関する事務を政令市の事務として処理することができます。これにより一体的な整備ができ、2 重

行政を解消することができます。また児童福祉行政を充実させるために、児童相談所、福祉センタ

ーを設置したり、国道や県道の管理権限を与えられるため道路網の一体的な整備が可能となります。

これにより効率的で機能的なまちづくりが推進できるということになります。

このように熊本市は政令指定都市になることで様々なメリットがあります。これを機会に住民と

行政が一体となって地域のことを考え、自治に参加していくことになれば熊本市の発展につながる

と考えられます。合併政令市になる場合、メリットは最大限活かし、デメリットは小さくなるよう

に十分合併協議会で議論し、合併建設計画に盛り込む必要があります。合併政令市移行は、行政に

とってはこれまで単一の自治体の中では改善できなかった様々な業務の整理や高度化、さらには課

題解決への取り組みを行うチャンスでもあり、生活の質を求める住民にとっては最高の公的、私的

なサービスが受けられることにつながるのではないかと思います。以上のことから熊本市は政令指

定都市を目指すべきだと考えます。

写真11(全体風景 質疑応答)