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本研究は、次世代教員養成センターの教員が行っている不登校支援サポートプログラムの実践に基づいている。サ ポートプログラムは、奈良教育大学附属小・中学校の不登校の児童生徒に対して、サテライト教室や学生派遣を通して不登 校支援を行っている。今回は、特にサポートプログラム導入時のアセスメントを重視し、教員の生徒理解への支援になるこ と、さらに、学生が児童生徒に個別にサポートフレンドとして関わることで臨床力を高めることを目指した。不登校支援を 行いながら、教師や学生が生徒理解を深め、臨床力を高めていくための不登校支援サポートプログラム体制の構築を行った。 不登校支援 support for student of non-attendance at school アセスメント assessment サポートプログラム support program 1.はじめに 1998 年以降、文部科学省では、不登校とは、「何らかの 心理的、情緒的、身体的あるいは社会的な要因・背景によ り、登校しないあるいはしたくともできない状況にあるた め年間 30 日以上欠席した者のうち、病気や経済的な理由 による者を除いたもの」と定義している。 不登校の背景要因として文部科学省が平成 28 年度に出 した調査結果では、「いじめを除く友人関係」、「先生との 関係」、「勉強がわからない」などが上位を占めている。ま た、家庭的な要因も大きな割合を占め不登校の要因は多岐 にわたっていることが推察される。 また、山田ら(2008)は、「時代の変化」によって不登校の 多様化に伴って、新たに4つの要因が不登校の背景として加 わっていることを指摘している。はじめに「時代の変化」に より、学校が目標のために行く場所ではなくなり、落ちこぼ れるといった「半義務的な場所」になっていることである。 次に、子ども自身がこうしたいという以前に周囲からの期待 を押し付けられてしまい「現代の子どもは自分の感覚を失っ ている」ことである。3 番目に「子どもの対人関係の耐性が 弱い」という要因である。そして、もうひとつの要因は、「学 校へ行かなければいけないという意識が薄れてきている」と いうことである。「時代の変化」に伴い、学校を休むことに関 しての抵抗感が減った分、従来とは異なる不登校の状態が出 現している。このような不登校の要因を考えることなく、不 登校の背景にある問題を正しく査定(注:アセスメント)す る前に、不登校という現象に、対応するために、ただ登校刺 激を避け、フリースクールや適応指導教室を安易に選択して しまうなどの事例も少なくない。学校内で不登校という事象 にのみ、関係者が対策を講じようとして、安易な選択をする と児童生徒自身の課題を見過ごし、成長の機会を奪ってしま うことになりかねないと考えられる。 山田ら(2008)の指摘からもわかるように、不登校の児 童生徒へのアセスメントは、その後の不登校支援の方向性 や内容に大きな影響を与える。しかし、実際には、不登校 の要因は、一つだけではない場合が多く、学校・家庭環境 や児童生徒本人の課題などが複雑に絡み合っており、アセ スメントは児童生徒にいつも接している担任や保護者だ けの視点では、困難な場合も多い。 中村ら(2013)は、生徒が学校で適応状況に問題が発生 したとき、まずは担任による問題解決が図られるとし、そ れでも対応が困難な時は、校内支援体制の整備が効力を発 揮すると述べている。もし、チーム体制で対応する校内支 不登校支援におけるアセスメント能力向上への取り組み -サポートプログラムへの導入過程を通して- 栗本美百合・澤 京子 (奈良教育大学 次世代教員養成センター(ESD・課題探究教育部門)) 市来百合子 (奈良教育大学 教育連携講座) Improvement of Assessment Ability for Support for Student of Non-Attendance at School Introduction to Support Program Sayuri KURIMOTO, Keiko SAWA (Teacher Education Center for the Future Generation, Nara University of Education) Yuriko ICHIKI (Department of Educational Cooperation, Nara University of Education) 175
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不登校支援におけるアセスメント能力向上への取り …キーワード:不登校支援 support for student of non-attendance at school アセスメント assessment

May 21, 2020

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Page 1: 不登校支援におけるアセスメント能力向上への取り …キーワード:不登校支援 support for student of non-attendance at school アセスメント assessment

不登校支援におけるアセスメント能力向上への取り組み

-サポートプログラムへの導入過程を通して-

栗本美百合 市来百合子 澤京子 (奈良教育大学 次世代教員養成センター(ESD・課題探究教育部門))

Improvement of Assessment Ability for Support for Student of Non-Attendance at School

Introduction to Support Program

Sayuri KURIMOTO,Yuriko ICHIKI,Keiko SAWA

(Teacher Education Center for the Future Generation, Nara University of Education)

要旨:本研究は、次世代教員養成センターの教員が行っている不登校支援サポートプログラムの実践に基づいている。サ

ポートプログラムは、奈良教育大学附属小・中学校の不登校の児童生徒に対して、サテライト教室や学生派遣を通して不登

校支援を行っている。今回は、特にサポートプログラム導入時のアセスメントを重視し、教員の生徒理解への支援になるこ

と、さらに、学生が児童生徒に個別にサポートフレンドとして関わることで臨床力を高めることを目指した。不登校支援を

行いながら、教師や学生が生徒理解を深め、臨床力を高めていくための不登校支援サポートプログラム体制の構築を行った。

キーワード:不登校支援 support for student of non-attendance at school アセスメント assessment サポートプログラム support program

1.はじめに

1998 年以降、文部科学省では、不登校とは、「何らかの

心理的、情緒的、身体的あるいは社会的な要因・背景によ

り、登校しないあるいはしたくともできない状況にあるた

め年間 30 日以上欠席した者のうち、病気や経済的な理由

による者を除いたもの」と定義している。 不登校の背景要因として文部科学省が平成 28 年度に出

した調査結果では、「いじめを除く友人関係」、「先生との

関係」、「勉強がわからない」などが上位を占めている。ま

た、家庭的な要因も大きな割合を占め不登校の要因は多岐

にわたっていることが推察される。 また、山田ら(2008)は、「時代の変化」によって不登校の

多様化に伴って、新たに4つの要因が不登校の背景として加

わっていることを指摘している。はじめに「時代の変化」に

より、学校が目標のために行く場所ではなくなり、落ちこぼ

れるといった「半義務的な場所」になっていることである。

次に、子ども自身がこうしたいという以前に周囲からの期待

を押し付けられてしまい「現代の子どもは自分の感覚を失っ

ている」ことである。3 番目に「子どもの対人関係の耐性が

弱い」という要因である。そして、もうひとつの要因は、「学

校へ行かなければいけないという意識が薄れてきている」と

いうことである。「時代の変化」に伴い、学校を休むことに関

しての抵抗感が減った分、従来とは異なる不登校の状態が出

現している。このような不登校の要因を考えることなく、不

登校の背景にある問題を正しく査定(注:アセスメント)す

る前に、不登校という現象に、対応するために、ただ登校刺

激を避け、フリースクールや適応指導教室を安易に選択して

しまうなどの事例も少なくない。学校内で不登校という事象

にのみ、関係者が対策を講じようとして、安易な選択をする

と児童生徒自身の課題を見過ごし、成長の機会を奪ってしま

うことになりかねないと考えられる。 山田ら(2008)の指摘からもわかるように、不登校の児

童生徒へのアセスメントは、その後の不登校支援の方向性

や内容に大きな影響を与える。しかし、実際には、不登校

の要因は、一つだけではない場合が多く、学校・家庭環境

や児童生徒本人の課題などが複雑に絡み合っており、アセ

スメントは児童生徒にいつも接している担任や保護者だ

けの視点では、困難な場合も多い。 中村ら(2013)は、生徒が学校で適応状況に問題が発生

したとき、まずは担任による問題解決が図られるとし、そ

れでも対応が困難な時は、校内支援体制の整備が効力を発

揮すると述べている。もし、チーム体制で対応する校内支

不登校支援におけるアセスメント能力向上への取り組み-サポートプログラムへの導入過程を通して-

栗本美百合・澤 京子(奈良教育大学 次世代教員養成センター(ESD・課題探究教育部門))

市来百合子(奈良教育大学教育連携講座)

Improvement of Assessment Ability for Support for Student of Non-Attendance at SchoolIntroduction to Support Program

Sayuri KURIMOTO, Keiko SAWA (Teacher Education Center for the Future Generation, Nara University of Education)

Yuriko ICHIKI (Department of Educational Cooperation, Nara University of Education)

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援体制が得られなければ、問題は解決せず子どもの学校で

の不適応状態は続くと考えられ、膠着状態に入るとしてい

る。膠着している状況を打破するためには、専門家のアセ

スメントや援助方針などを関係教員で作成することで援

助を行うことが重要であるとし、校内のマンパワーで不足

の場合は、学校外の援助資源の導入も校内の支援体制を構

築するためには重要であると指摘している。 山田ら(2008)や中村ら(2013)の指摘を踏まえて、不登校

支援をする際に重要なアセスメントを学校内だけではない

連携体制で行うことの重要性を、今回の研究の焦点とする。 奈良教育大学の附属学校内体制において不登校状況の

解決が困難である場合、次世代教員養成センターの教員が、

不登校支援サポートプログラムを提供する。その際に、大

学教員と附属学校担任や学年主任などの教員や学生と連

携を取り、一人ひとりの状況把握を丁寧に行うことで、よ

りアセスメントの質を高めていく。チームで児童生徒のア

セスメントを行うことを通して、教員や学生の児童生徒に

対する理解を深め、アセスメント能力の向上につなげるこ

とを目標とする。なお、この研究は、次世代教員養成セン

ターの教員が行っている不登校支援サポートプログラム

の実践に基づいている。

2.アセスメントと不登校支援について

児童生徒へのアセスメントは不登校支援の目的や方法

を決める際に重要な役割を果たす。しかし、児童生徒への

不登校支援だけではなく、アセスメントをすること自体に

教師が教育臨床力をつけるという副次的な効果もある。ま

た、アセスメントは、固定的なものではなく、1 回限りで

終わるものでもない。児童生徒の行動や言動、移り変わる

環境、理解の深まり等について、状況や情報を関係者が共

有し、継続的に行なわれていくものである。継続的に行わ

れるアセスメントに伴って、目標の達成度や目的の見直し

や児童生徒への対応に反映させていくものである。

2.1.アセスメントとは 文部科学省「生徒指導提要」(2010)には、アセスメン

トは次のように述べられている。 アセスメントとは-「見立て」とも言われ、解決すべき

問題や課題のある事例(事象)の家族や地域、関係者など

の情報から、なぜそのような状態に至ったのか、児童生徒

の示す行動の背景や要因を、情報を収集して系統的に分析

し、明らかにしようとするものである。硬直している状態

をいったん本人や家族の視点に立って見ることで、本人や

家族のニーズを理解することもできる。アセスメントを行

うに当たっては、校内で組織的対応を行うことが重要であ

る。例えば、暴力行為には、思春期の心理、発達の課題、

児童虐待や薬物の影響、友人関係など様々な要因が考えら

れる。その理解により指導方法が異なるので、要因を情報

に基づいて的確に明らかにすることなどが重要である。

このように、アセスメントをする場合に重要な観点は、

視点を変化させるということにある。「生徒指導提要」に

述べられているように、生徒の視点や保護者の視点に立っ

て見たりすることで、今まで見えてこなかった状況が見え

てきたり、そのことによってより児童生徒の置かれている

状況がわかり、理解が深まる可能性がある。

2.2.次世代教員養成センターの附属小・中学校へ

の不登校支援

(1) 次世代教員養成センターでは、奈良教育大学附属

小・中学校の不登校児童生徒に対して、2014 年より

サテライト教室「高畑ほっとヒルズ・アルコバレーノ」

を開室した。これは、市町村の適応指導教室を利用で

きないため、次世代教員養成センター内に、設置され

たものであり、不登校や学校内で不適応を起こして

いる児童生徒に対して、居場所づくりとして活用さ

れていた(大久保ら 2016)。アルコバレーノの入室に

関しては、小中学校の管理職、担任、スクールカウン

セラー(次世代教員養成センターの教員が兼任)のも

とで、活用の可能性のある児童生徒の選定を行い、児

童生徒、保護者の希望と同意をもって入室としてい

た。入室後は数名の小中学生の児童生徒が同室で過

ごし、奈良教育大学の大学生、大学院生 2~3 名で児

童生徒の対応をしていた。大学の教員でもあるス

クールカウンセラーが、カウンセリングを基に、アセ

スメントを行い、活動は児童生徒の希望を充足する

内容を盛り込み、活動の状況は、スクールカウンセ

ラーと大学生の中で共有されていた。 (2) 上記のプログラムは 2 年の実践を経て、担当者

が変わり、今年度(2017 年 4 月)からの不登校支

援サポートプログラムとしてサテライト教室「高

畑ほっとヒルズ・パスレル」・学生派遣「エール・

サポート」を開始した。

図 1 2017 年からの不登校支援サポートプログラム

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栗本 美百合・市来 百合子・澤 京子

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今年度は、サテライト教室を週 2 日の活動日と

した。サテライト教室の名称も、「高畑ほっとヒル

ズ・アルコバレーノ」から「高畑ほっとヒルズ・パ

スレル」と変更した(図 1―(1))。 さらに、もうひとつのサポートプログラムとし

て、学生を学校に派遣して、不登校支援を行うと

いうシステム「エール・サポート」も、導入した

(図 1-(2))。 「エール・サポート」は、学校には来れるが、教

室に入れない生徒や、放課後だと学校に来れる生徒

などを学校へのつながりが途切れないように、学校

での居場所確保と学習支援を行うシステムである。

いずれも、奈良教育大学生、大学院生を募集し、サ

ポートフレンドとして名簿に登録しておき、サポー

トプログラムの活用が決まった生徒に、アセスメン

トを通して得られた知見をもとに学生をマッチン

グして、個別の対応を行うことで、児童生徒との個

人的な関係を築き、安心できる対人関係を児童生徒

に体験してもらうことを目標にした。 (3) 新しいサポートプログラムの体制づくりや導入

と並行して附属小・中学校とのネットワークの再構

築とプログラム活用までの流れをシステム化した。 今年度より、不登校の児童生徒が、サポートプロ

グラムを活用するまでに、いくつかの段階を設け

て、児童の選定から活動内容までを、十分に時間を

かけて行うこととした。附属小・中学校と大学が生

徒の情報を共有し、協働してアセスメントを行う。

さらに、児童生徒への働きかけを大学の教員が一

緒に考えていく。そのアセスメントを個別対応し

てくれるサポートフレンドである大学生や大学院

生にも伝え、どのような視点をもって、不登校を支

援していくのかを共有する。このような一連の段

階は、不登校の児童生徒への理解や支援に繋がる

だけではなく、教員や学生へのアセスメント能力

の向上にも寄与すると考えられる。 このサポートプログラムの導入までのシステム

化のために、附属小中学校へのネットワークづく

りを行った。 附属中学校との連携では、教育相談担当の教員

にサポートプログラムのコーディネーターを依頼

し、中学校の不登校生徒の中で、サポートプログラ

ムを活用できそうな生徒の選定と担任や学年主任

との連絡調整係を担ってもらっている。また小学

校の方は、特別支援コーディネーターが連絡役と

なって、校内でサポートプログラムが活用の可能

性のある生徒の選定と担任や管理職の連絡調整係

となった。サポートプログラムのコーディネー

ターを SP コーディネーターとした。以下はサポー

トプログラムまでの流れを図式化したものである。

図2 サポートプログラム活用までの流れ

SP コーディネーターは小・中学校ともに校内で

のサポートプログラム活用可能性のある児童生徒

の選定のあと、大学へ連絡し、担任と大学とで連携

会議が開けるように日程を調整する。 SP コーディネーターは、担任に児童生徒の支援

シートを渡し、連携会議が開かれるまでに、記入し

てもらっておく(図 2-①)。サポートプログラム支

援シートは、欠席の状況、対人関係、家族間関係、

本人の長所などさまざまな情報を記入する形に

なっている。これらの情報を集めるため、担任や SPコーディネーターが前担任や、教科担当、クラブや

他学年と話をすることによって、今までとは違った

児童生徒像が見えてくる可能性がある。 小泉(2010)は、教育相談担当者の役割を「校内

で教育相談的な問題解決の方針が一連のプロセス

として共有され、援助対策のスクリーニングや各段

階における支援計画の立案と実践が円滑に行われ

るための組織化を行うことも、教育相談者の役割」

と述べている。サポートプログラムの活用における

SP コーディネーターの役割と同様である。 次の段階は、アセスメントである。大学や附属学

校内で大学の教員 2~3 名と附属学校から担任、学

年主任、SP コーディネーターなどで、支援シート

を基にこれまでの経緯や、児童生徒の情報を共有す

る。学校生活や家庭の状況、これまでの経緯などは

学校側から多くの情報が出され、大学の教員からは

心理学的な知見をもとにチームで児童生徒の初回

のアセスメントを行う(図 2-②)。この初回のアセ

スメントを活用して、サポートプログラムのサテラ

イト教室か、学生派遣かを選択するだけでなく、利

用する児童生徒の発達課題や特性などをできるだ

け把握し、サポートプログラムの活用の目的を明確

化する。アセスメントのプロセス自体が、児童生徒

への理解を深め、今までとは違った視点で児童生徒

を捉えることができると考えられる(図 2-③)。

不登校支援におけるアセスメント能力向上への取り組み

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(4) 昨年度までのサテライト教室「アルコバレーノ」

は、生徒と学生との集団によるサポートだった。今

回は、対人関係の充実と、より個別のニーズにこた

えるため、学生を個別対応とした。大学生や大学院

生が不登校支援を必要とする児童生徒の一人と

じっくり向き合うことは、将来教師になる学生に

とって臨床能力を培う良い経験となる。具体的に

は、学生の指導として、大学の教員が活動の前後に

必ず活動内容の確認と助言を行うとともに、保護

者や児童生徒面接から得られた情報、附属学校か

らの情報などの児童生徒を取り巻く状況について

も学生に詳しく説明する。このような多角的な視

点で児童生徒を捉える機会を通して学生自身が、

児童生徒に対してのアセスメント能力が養われる

ような教育的配慮を行った。学生が、児童生徒の個

人的な情報を知ることになるので、学生にも守秘

義務を課すため、サポートフレンドとして活動す

る前に守秘義務同意書に署名をしてもらった。

2.3.サポートプログラム導入 前述した不登校支援サポートプログラムの活用までの

段階であるアセスメントによって、児童生徒への方針やサ

ポートフレンドから児童生徒への働きかけの方針が決ま

る。この方針に従って活動を進める中で、大学教員による

保護者や児童生徒への継続的な面接、および担任などから

の情報提供によって、児童生徒へのアセスメントの見直し

が順次行われる。また、学校や教室、あるいは進級進学の

動きを勘案して、児童生徒の成長につなげることが、重要

であり、このような過程をサポートフレンドとも共有する

ことが肝要である。

図3 サポートプログラムのフローチャート

3.まとめとして

次世代教員養成センターでの、今回のサポートプログラ

ムの取り組みは、児童生徒のためだけの不登校支援にとど

まることなく、学生教育や教員の教育相談体制の充実につ

ながればと考えている。 文部科学省が、平成 27 年 8 月に公表した「不登校児童

生徒への支援に関する 中間報告 ~一人一人の多様な課

題に対応した切れ目のない組織的な支援の推進~」の教育

上課題のある児童生徒に対する効果的な指導の在り方の

中に、「教員の資質向上」を挙げ、次のように記載されて

いる。「学校に通う児童生徒の現状が多様化していること

等を踏まえれば、教員養成を行う大学等において、生徒指

導力の向上を図るため、たとえば、教育センターやフリー

スクールなどの教育支援機関や児童養護施設等において

一定期間実習を行うことを奨励するなどの取り組みも有

効と考える。」本大学では、大学内に次世代教員養成セン

ター、特別支援教育研究センターなどの教育支援機関を

持っている。これらの機関と附属の小・中学校が連携をと

り、児童生徒への理解を深めるためにケース会議などを通

して、アセスメントと指導方針を立てることが、学生や教

員の資質向上に役立つのではないかと考えられる。

参考文献

中村恵子・小玉正博・田上不二夫(2013), 教育委員会の

所属する学校カウンセラーの介入が不登校生徒への

校内支援体制に及ぼす影響, カウンセリング研究,

vol.46, pp.43-52.

大久保千恵・玉村公二彦・谷口尚之・尾本潤治・山室光生・

中窪寿弥・市来百合子・松川利広(2016),「不登校児

童・生徒に対する適応支援活動の実践と「リスクール

プログラムモデル」の開―大学における支援の実践と

新しいモデルの開発―次世代教員養成センター紀要

第 2 号, pp.283-289 斎藤富由紀・守谷賢二(編著)(2016), 教育相談の最前線

‐歴史・理論・実践‐,八千代出版, 257p.

小泉令三(編著)(2010),よくわかる生徒指導・キャリア

教育,ミネルヴァ書房,102p.

山田裕子・宮下一博(2008), 不登校生徒支援における長

期目標としての自立とその過程で生じる葛藤の重要

性の検討, 千葉大学教育学部研究紀要, vol.56,

pp.25-30.

文部科学省(2010)生徒指導提要 文部科学省(2016)児童生徒の問題行動・不登校等生徒指

導上の諸課題に関する調査

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栗本 美百合・市来 百合子・澤 京子