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移動境界を用いた車体周辺気流の CFD 解析 *) 阪田 升 1長井 大祐 1小原 久典 1高野 公敬 1CFD Analysis for Air Flow around Vehicle Body Using Moving Boundary Technique Minoru SAKATA Daiouke NAGAI Hisanori OHARA Masataka TAKANO Moving boundary CFD technique based on Cartesian grid was applied to air flow arround vehicle Bodys. This technique can simulate the behaviers of velocity and pressure distribution arround moving vehicles in the carm air and wind. The prediction results for carve running and rnnning in crosswind are discussed. Key Words: Computational Fluid Dynamics , Numerical Analysis, Moving Boundary, Super Cartesian 1.はじめに 近年、計算流体力学(CFD)の分野においては、離散化に非 構造格子を用いる解析手法が全盛である。 確かに非構造格 子の利点である自由な形状表現や CAD データとの親和性を 考えると、あたかも非構造格子は万能のように見える。 し かし、それは本当に正しいのであろうか。 一方、構造格子は、計算アルゴリズムの蓄積や計算精度な どでで多くの利点を持ちながら、その形状表現の稚拙さのた めに産業界への応用面では非構造格子に大きく遅れをとって きた。 しかし、構造格子においても勾配面や球面を表現し うる離散化スキームが存在する。 このようなスキームを 6 面体や円柱などの基本図形のモデラーにより生成された 3 元形状やインポートされた 3 次元 CAD データと関連付けして 全体の解析形状のモデリング実現に結びつければ、非構造格 子の出来ない CFD 解析をカバーする新しいソフトウェア体系 が成立する。 本報では、直交格子をベースとした勾配面や球面を表現し うる離散化手法を説明し、その応用として、薄物構造の表側 と裏側を同時に解析できるスキームを考案した。 さらに、 この離散化手法は考え方を発展させれば、簡単に移動境界問 題の解析手法が可能となる。 この手法の有効性について、 いくつかの解析事例により検討した。 2.解析手法 非圧縮性流体の CFD の基本方程式は、流体の運動を記述す Navier-Stoke 方程式と、質量保存則を規定する連続の式であ る。 筆者らが Super Cartesian 法と呼ぶ手法では、これらの方 程式は、直交格子での各セルの体積占有率と隣接セル間の開 口率で表して式 1)から 4)のように表現される。 ・運動方程式(Navier-Stokes 方程式): (uVf)/t+uAx(u/x)+vAy(u/y)+wAz(u/z) = Vf・(-P/x+(μ/ρ)U|x+x) --1) (vVf)/t+uAx(v/x)+vAy(v/y)+wAz(v/z) = Vf・(-P/y+(μ/ρ)U|y+y) --2) (wVf)/t+uAx(w/x)+vAy(w/y)+wAz(w/z) = V(-P/z+(μ/ρ)U| +z) --3) ・ 連続の式: (Vf)/t+Ax(u/x)+Ay(u/y)+Az (u/z)=0 --4) Fig.1 Grid difinition for Super Cartesian System ここで u,v,w は各速度成分、Vf は体積占有率、Ax,Ay,Az 隣接セル間の開口率、μは粘性係数、ρは密度、P は圧力、 U=(u,v,w)Fx,Fy,Fz は体積力である。 この離散化の過程で、Fig.1 に示すように、各セル毎に任意 に斜めの面でコントロールボリューム(検査体積)を定義す ることが可能である。 しかしながら、隣接セル間の開口率 Ax,Ay,Az の情報だけでは面の勾配値が正確に決まらない上に、 *2007 10 17 日自動車技術会秋季学術講演会において発表. 1)()環境シミュレーション(101-0032 東京都千代田区岩本町 3 46 岩本町高橋ビル 7 [email protected])
6

移動境界を用いた車体周辺気流の CFD · 移動境界を用いた車体周辺気流のCFD 解析*) 阪田 升1) 長井 大祐1) 小原 久典1) 高野 公敬1)

Mar 05, 2020

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移動境界を用いた車体周辺気流の CFD 解析*)

阪田 升 1) 長井 大祐 1) 小原 久典 1) 高野 公敬 1)

CFD Analysis for Air Flow around Vehicle Body Using Moving Boundary Technique

Minoru SAKATA Daiouke NAGAI Hisanori OHARA Masataka TAKANO

Moving boundary CFD technique based on Cartesian grid was applied to air flow arround vehicle Bodys. This

technique can simulate the behaviers of velocity and pressure distribution arround moving vehicles in the carm air and

wind. The prediction results for carve running and rnnning in crosswind are discussed.

Key Words: Computational Fluid Dynamics , Numerical Analysis, Moving Boundary, Super Cartesian

1.はじめに

近年、計算流体力学(CFD)の分野においては、離散化に非

構造格子を用いる解析手法が全盛である。 確かに非構造格

子の利点である自由な形状表現や CAD データとの親和性を

考えると、あたかも非構造格子は万能のように見える。 し

かし、それは本当に正しいのであろうか。

一方、構造格子は、計算アルゴリズムの蓄積や計算精度な

どでで多くの利点を持ちながら、その形状表現の稚拙さのた

めに産業界への応用面では非構造格子に大きく遅れをとって

きた。 しかし、構造格子においても勾配面や球面を表現し

うる離散化スキームが存在する。 このようなスキームを 6

面体や円柱などの基本図形のモデラーにより生成された 3 次

元形状やインポートされた3次元CADデータと関連付けして

全体の解析形状のモデリング実現に結びつければ、非構造格

子の出来ないCFD解析をカバーする新しいソフトウェア体系

が成立する。

本報では、直交格子をベースとした勾配面や球面を表現し

うる離散化手法を説明し、その応用として、薄物構造の表側

と裏側を同時に解析できるスキームを考案した。 さらに、

この離散化手法は考え方を発展させれば、簡単に移動境界問

題の解析手法が可能となる。 この手法の有効性について、

いくつかの解析事例により検討した。

2.解析手法

非圧縮性流体の CFD の基本方程式は、流体の運動を記述す

る Navier-Stoke 方程式と、質量保存則を規定する連続の式であ

る。 筆者らが Super Cartesian 法と呼ぶ手法では、これらの方

程式は、直交格子での各セルの体積占有率と隣接セル間の開

口率で表して式 1)から 4)のように表現される。

・運動方程式(Navier-Stokes 方程式):

∂(uVf)/∂t+uAx(∂u/∂x)+vAy(∂u/∂y)+wAz(∂u/∂z)

= Vf・(-∂P/∂x+(μ/ρ)∇2U|x+Fx) --1) ∂(vVf)/∂t+uAx(∂v/∂x)+vAy(∂v/∂y)+wAz(∂v/∂z)

= Vf・(-∂P/∂y+(μ/ρ)∇2U|y+Fy) --2) ∂(wVf)/∂t+uAx(∂w/∂x)+vAy(∂w/∂y)+wAz(∂w/∂z)

= Vf (-∂P/∂z+(μ/ρ)∇2U|z+Fz) --3) ・ 連続の式:

∂(Vf)/∂t+Ax(∂u/∂x)+Ay(∂u/∂y)+Az (∂u/∂z)=0 --4)

Fig.1 Grid difinition for Super Cartesian System

ここで u,v,w は各速度成分、Vf は体積占有率、Ax,Ay,Az は

隣接セル間の開口率、μは粘性係数、ρは密度、P は圧力、

U=(u,v,w)、Fx,Fy,Fz は体積力である。

この離散化の過程で、Fig.1 に示すように、各セル毎に任意

に斜めの面でコントロールボリューム(検査体積)を定義す

ることが可能である。 しかしながら、隣接セル間の開口率

Ax,Ay,Az の情報だけでは面の勾配値が正確に決まらない上に、

*2007年10月17日自動車技術会秋季学術講演会において発表.

1)(株)環境シミュレーション(101-0032 東京都千代田区岩本町 3-4-6 岩本町高橋ビル 7 階 [email protected])

Fluid

Solid

Ay

Surface

Incline

(l,m,n)

Ax

Vf

Ax

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セルを2つ以上の面が横切る場合の処理も不可能である。 そ

こでは筆者らは、新たにセルを横切る面の勾配値(l,m,n)を定義

し、境界面(壁面)直近のセルの法線方向速度成分や接線方

向速度成分などを正確に設定し境界面近傍の流体挙動を、精

度良く再現可能とした。

また、セルを切断した物体境界面の内側は必ずしも固体セ

ルまたは非流体セルでなくても良く、同種あるいは別種の流

体セルと定義することも可能である。 この場合、境界面を

持つセルでは速度や圧力などの物理量を二重に保持する必要

があり、計算手続きはより煩雑になる。

CFD における移動物体の解析手法には、現在 ALE 法 1)が主

流であり、他に Euler 法,MultiGrid 法がある。 Euler 法には

Super Cartesian 法も含まれるが、元来これは構造格子向けの方

法であり、固定座標系で格子を定義し定式化も Euler 表現のみ

であって、セル毎に流体・非流体・境界面セルの判定を行う。

非構造格子で主流となっている ALE(Arbitrary Lagrangean

Eulerian)法は、固定座標系と移動物体に同伴する座標系を適宜

切り替えて問題を解く。 定式化は Euler 表現と Lagrange 表

現の両方を使う。 マルチグリッド(Multi Grid)法は、移動

可能な複数の座標系を、それぞれ固定物体と移動物体に割り

当て、物体の移動はこれら座標間の相対的な移動により表現

する。 これら解析手法の特徴を表1に示した。

Table.1 Merits and demerits between Moving object CFD

Method Merit Demerit

Euler Simple Fomulration, Less Computation Cost

Hazard of Shape Fitness ,No exist of Mesh Generator

ALE Capability for Unstructured Grid,Good Fitnes of Model Shape

Heavy Computation Cost,Hard re-allocation of womentum when remesh and rezone

Multi Grid Simple Formulation

Imposibility for moving Multi Coordinate System, Heavy Computation Cost

Super Cartesian 法は Euler 法の 1 種であるが、移動物体の表

面に対して面勾配値を持つ Cut セルと考えれば良い。 ここ

では、式 1)から 4)で定式化を示したが、これらの式中におい

て、体積占有率 Vf、及び隣接セル間の開口率 Ax,Ay,Az を時

間的に変化させ、極めて簡便に境界面の移動を取り扱うこと

が可能である。 すなわち、面の接線方向の移動については

シアー(Shear)による流体側への運動量伝達を評価し、面の法

線方向の移動については体積占有率の変化による圧力の寄与

を評価すればよい。

3.乱流計算

移動境界問題における乱流の取り扱いは、時間平均流と等

方性乱流を仮定した従来の系乱流モデルでは不可能である。

常に移動する物体の影響で大きな渦の変動が生じる可能性の

ある流れには、k-εモデルのような RANS(Reynolds

Averaged Navier-Stokes Approximation)系乱流モデルは,,定性的

にすら渦の剥離が表現できないので適当ではない。 境界面

の位置が自由に変化する移動境界問題においては、それに合

った乱流の取り扱いを考慮しなければならない。

本報では、移流項の空間離散化はハイブリッド中心差分に

Fig.2 Representative of wind tunnel experiment

Fig.3 Comparizson between Computaion and experiment

風向き0°

-1.5

-1

-0.5

0

0.5

1

1.5

0 0.5 1 1.5 2 2.5 3

風下位置

平均

風圧

係数

風洞実験(I.P.Castro,1977)

Wind Perfect(DNS)

k-εモデル

風向き45°

-2.5

-2

-1.5

-1

-0.5

0

0 0.2 0.4 0.6 0.8 1

風下位置

平均

風圧

係数

風洞実験(I.P.Castro,1977)

Wind Perfect(DNS)

Ur:10m/sec Uniform

Wind Direction : 0°

Wind Direction : 45°

Wind Direction : 0°

Wind Direction : 45°

● Wind Tunnel Exp. ― DNS ― k-εmodel

● Wind Tunnel Exp. ― DNS

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よる DNS(直接シミュレーション:Direct Numerical Simulation)

を採用し、いわゆる乱流モデルは用いていない。

この乱流計算手法の精度検証については、Fig.2 及び 3 に示

した。 ここでは風洞における立方体周りの風圧予測結果 2)

を、DNS による計算結果と比較しているが立方体と正置した

場合と 45°の角度を持たせておいた場合のいずれについても、

風圧係数の一致は極めて良好である。 設定した格子幅にも

寄るが、流れの変動の再現性は非常に良いので移動境界問題

の解法に適した乱流の取り扱い方であると言える。 なお、

この手法はいくつかの建築構造物の圧力分布の評価に使用さ

れ、例えば大屋根構造物の風圧シミュレーション 3)や自動車技

術会 CFD ベンチマーク 4)などでも良好な一致が見られている。

4.静止モデルの空力解析

SuperCartesian 法による離散化を用いた CFD 解析の応用とし

て車体周りの空力シミュレーションを行った。 CAD データ

はインターネット上で入手し 5)、何の操作も加えないでそのま

ま使用した。 発生した解析モデルの領域の大きさは X 方向

6m、Y 方向 12m,Z 方向 5m で、格子数は 144×295×97 とし、

x,y,z 方向の格子間隔は解析領域中央の車両周辺で 20mm ピッ

チの等間隔としている。 格子生成に要した計算時間は約 40

秒程度であり、非構造格子よりも一桁高速である。

Fig4.Representative of car body grid for CFD Simulation

この解析モデルに車体前方から 20m/sec の一様流を設定し

て風洞を模した空力シミュレーションを行った。 結果は

Fig.5,Fig.6 に示すが、解析領域の中で面で構成された解析モ

デルが構築され、面の表裏それぞれについて保持している勾

配に沿う流れや渦の剥離などが見られることが分かり、現象

面から本解析手法の有効性が確認されている。

一般に実車の CAD データを用いて CFD 解析を行う場合、

CADデータにはボディーを構成する大きなパネルと同時に微

小な部品、ねじ穴なども存在する。 非構造格子ではこうし

た場合、微小な部品やねじ穴など寸法の小さい形状に合わせ

て格子生成をする関係上、その箇所で格子が過剰に細かくな

Fig.5 Result of velociy field arrond car body

Fig6. Result of pressure field arrond car body

りやすい。 それを回避するために、こうした微小な部品、

ねじ山などをラッパー・サーフェイス処理を行って見かけ上

寸法の大きな部品として格子を生成するのが一般的である。

ラッパー・サーフェイス処理を行う部位は人間が目視で判定

して指定しなければならないことを考えると、こうした処理

は解析の工数増加や作業期間の延長を伴う事が分かる。

それに対して本報告で使用している構造格子系の格子生成

では、CAD データの寸法に関わらず格子の寸法は常に設定し

た幅で処理が行われるため、過剰に細かい格子が生成される

心配はない。 これは CFD の利用において人手を間に介在せ

ずに格子生成を完全に自動化できる可能性を示しており、製

品の開発期間やコスト削減への道を拓くものと考える。

5.走行車両の空力解析

これまで走行中の車両の空力解析は、車両自身が動いてい

るにもかかわらず、車両を固定して走行速度に対応した風を

当てるという手法で行われてきた。 いわゆるガリレイ変換

を用いたこういった手法は、風洞実験・シミュレーションの

容易さやデータの採取しやすさなどから極めて一般的となっ

ているが、こうした手法で実際に車体周辺に起こっている流

体力学的挙動を正確に捉えられているかどうかは疑わしい。

第一には、グラウンド効果や壁面・天井面の影響が考えら

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れ、タイヤを回転させ路面を風と同じ速度で移動させたとし

ても、すぐそばにある壁面や天井面までは動かしていないの

で、実際に車体を動かした場合の流体力学的挙動とは少なか

らず異なるのは当然である。

第二には、車体にぶつかる風の上流の乱れの問題である。

静止空気中を動く車両は本来乱れの無い風が車両に当たると

想定されるが、車体を固定した風洞実験・シミュレーション

では、上流の風は相応に乱れの生じないような処置が施され

ているものの、風速が早ければ早いほど乱流化しているのは

明らかであり、ある程度の乱れ成分をもった気流にならざる

を得ない。 上流中に乱れを含む風は、物体に当たった際の

渦の剥離を減少させることが一般的に知られており、車体表

面に発生する圧力分布のピーク値を減少させている可能性が

ある。 結果として、車体を動かさない風洞実験・シミュレ

ーションは、実際に車体を動かした際の流体力学的挙動とは

異なるものを評価している可能性がある。

また、車両の静止した風洞実験・シミュレーションの根拠

のよりどころとなるガリレイ変換は直線等速度運動を前提し

ており、回転運動を含む複雑な運動においては、従来の車両

を固定した手法では定性的な挙動でさえも評価できないのは

明らかである。

Fig.7 には、静止気流中を直線走行する車両のシミュレーシ

Fig7 Result of Pressure field arrond straightly moving car

Fig8 Result of surface pressure on moving car

ョン結果を、Fig.8 には同じく曲線走行する車両のシミュレー

ション結果を示したが、それぞれの流体力学的な挙動が再現

できているのがわかる。

6.横風を受ける高速走行車両の気流解析

近、強風下において鉄道車両やトラックなど、高速走行

する車両の横転事故が多く報告されている。 しかし、強風

下で高速走行する車両周辺の流れ場の構造や圧力の挙動につ

いて解析された研究はほとんど報告されていない。 そこで

本報告では、強風の流れ場の中で車両を模した物体が高速で

移動する状況を独自の3次元移動境界CFD解析を用いて再現

し、車両周辺に発生する流れ場及び圧力場の解明を試みた。

解析は鉄道車両とトラックの2種類について実施し、流れ場

及び圧力場の構造を可視化・検討した。

6.1 横風を受ける鉄道車両周辺の気流

本計算の解析領域の大きさは 400m,600m,80m で計算格子点

数は 125×286×51 とし、車両走行領域 x,y,z 方向の格子間隔

は等間隔としている。 車両の大きさは 4.5m,24m,4.5m で4両

編成とした(Fig.9 参照)。

Fig.9 Representative of train model for cross wind simulation

車両の走行速度は 100km/時で、風速は 30m/sec 一様流とし

て走行方向に直角に設定した。 なお、車両は地面から 6m 上

がった軌道の上を走行すると仮定している。

Fig.10 Result of velocity field arround moving train on cross section

600m

400m

Cross Wind

Train

Moving

Direction

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車両の断面圧力分布と負圧部の等値面(-500Pa)を Fig10 に示す。

車両は地表面よりやや上がった軌道上を走っているため、風

は軌道側方の斜面を駆け上がりながら風速を増しており、フ

ラットな面よりも速い風が車両上方に当たっている様子が分

かる。 風上側では強い正圧が風下側では強い負圧が見られ、

強い負圧領域が主として先頭車両の風下側に大きく存在して

いることが分かる。

Fig.11 Volume Rendering of pressure arround moving train

Fig.12 Multi View of pressure field arround moving train

6.1 横風を受けるトラック周辺の気流

解析モデルは、公開されている CAD データを加工せず直接

生成し、格子間隔のみ調整した。

Fig13. Representative of track model for cross wind simulation

本計算の解析領域の大きさは 30m,50m,20m で、計算格子点

数は 95×311×68 とし、x,y,z 方向の格子間隔はトラック走行

領域で等間隔としている。 Euler 法では、物体移動は個々の

セルにおけるVf及びAx,Ay,Azの時間変化として表現される。

車両の走行速度は 100km/時とし、風速は 30m/sec の一様流と

して走行方向に直角に設定した。

Fig14. Result of velocity field arround moving track in cross wind

Fig15.Result of pressure field arround moving track in cross wind

車体進行方向に対する垂直断面の風速と圧力分布の結果を

それぞれ Fig14,Fig15 に示すが、トラック側方風上側に強い

正圧が、車体天井面と風下側に強い負圧がそれぞれ観察され

る。 また、Fig16,Fig.17 の表面圧力分布から、正圧の も

強い箇所は横風の来る車体斜め前方のごく狭い領域集中して

いることが観察され、負圧の も強い箇所は天井面や車体風

下側側方の広い領域に広がっていることが分かる。 地表面

付近には、固定車両に対して単に斜めの風を当てた場合と違

って、強い正圧及び負圧の観察される領域が存在しており、

流れの3次元的な構造が異なっていると考えられる。

Fig18,Fig.19 の車体周辺の正圧・負圧のボリュームレンダリ

ング(等値面)からは、負圧の強い領域の大きさの総計は、

正圧の強い領域の大きさの総計を上回っており、車体左側下

部を中心とする転倒モーメントに対しては負圧の部分の寄与

が大きいことが分かる。

風 8.5m

2.3m

3.4m

Moving

Direction

Moving Direction

Moving

Direction

Moving Direction

Moving Direction

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Fig16.Front view of surface pressure of moving Track

Fig17. Rear view of surface pressure of moving Track

Fig18.Perse view of volume rendering of positive pressure

Fig19.Perse view of volume rendering of negative pressure

6.まとめ

Euler 法による3次元移動境界 CFD アルゴリズムを構成し、

DNS による移動境界に合った乱流の取り扱いを示し、強風下

を高速走行する車両に発生する風圧場の解析を行った。 車

両風上側と天井側・風下側では大きな圧力差が見られ、車体

全体の大きな範囲に 80~150kgw/㎡にのぼる荷重が観察され

た。 車重や路面状態によっては、大きな横力による横転の

可能性は小さくなく、今後詳細な解析を進めたい。

参 考 文 献

(1)R.K.Chan,“A Generalized Arbitrary Lagrangeian-Eulerian

Method for Incompressible Flows with Sharp Interfaces,”

J.Comp.Physics 17,311-311(1975) (2)I.P.Castro,J.Fluid Mech, 166, 1977

(3)早川ら:日本建築学会学術講演概要集,B-1 分冊,p.151 ,2006年9月 (4)日本自動車技術会 CFD 技術委員会シンポジウム「CFD の品

質向上に向けて」低 Cd 値車 CFD ベンチマーク ,2006年3月 (5) http://www.cgdatabank.com/

Moving

Direction

Moving

Direction

Moving Direction

Moving Direction